○たくさんハゼが釣れたときのさばき方

−釣った魚を美味しく食べるためのエトセトラ−

 

 マハゼも刺身やら天ぷらやらにするサイズになると、骨もそれなりに硬いので普通に3枚おろしか開いて料理する。そのぐらいのサイズは数もそれほど多くは釣れてこないので何とかなる。

 しかしながら、束釣りするような小型サイズはさすがに全部3枚おろしにしていては朝までかかる。当方はタッパに入るだけ持ち帰ってそれ以上はリリースしているが、それでも50匹やそこらいるので結構な手間だ。

 というわけで、頭と腹だけ取って唐揚げが定番なのだが、最近教えてもらったハゼが沢山釣れたときの鱗の取り方が秀逸で、目から鱗も落ちる感じだったので、そのへんを含めてハゼのさばき方を中心に釣った魚の扱い方などを紹介してみたい。

 

 とりあえず、釣った魚を食べるためには鮮度保持して持ち帰るのが重要である。

 一番良いのはクーラーの中に氷やできれば保冷剤をぶち込んで冷却した塩水、いわゆる「水氷」を作って、その中に釣れた魚を放り込んでいく方法である。

 急速冷凍の方法にブライン(塩水)凍結法というのがあるのだけど、空冷式の冷凍法が冷えた空気で魚の熱を奪うのに対して、空気よりも熱伝導率が高い、つまり熱を早く奪える「水」に塩を加えて氷点下以下に温度を下げた塩水で魚の熱を奪い凍らせるという原理である。クーラーの中で魚を冷やす場合でも、同様に同じ温度なら「空冷式」よりは「水冷式」が有効で、アジサバとかの鮮度落ちの早い魚の鮮度保持には必須のテクニックだと思う。

 ある程度大型の魚なら釣れるたびに即殺して血抜きして入れていくと水氷の中で暴れさせるより鮮度が保てる。暴れた魚はエネルギー源のATPが分解されているとともに、筋肉等の自己消化による分解も早いらしい。プロの技には釣れてすぐ締めずに一旦いけすで落ち着かせてから締めたりする手法もあるようだが、流通させるわけでもなくその日か次の日ぐらいに食べるのであればそこまでこだわらなくて良いと思うのでとっとと締めちまうのが正解だと思う。逆に漁師さんが船の上で刺身で食べる魚をわざと締めずにそのへんに放置してから料理して、「すぐ食うなら血を回らせたほうが旨い」と言っていたのを聞いたことがある。暴れて「血が回った」状態だと、ATPが分解されて生じるイノシン酸や、筋肉が分解されてできるうまみ成分のアミノ酸のたぐいの蓄積が早いはずで実に理にかなっており、さすがプロという感じだった。分解が進むと腐敗に近づいていくので古ければ良いというものではないのはいわずもがなで良い案配の状態で食べるのが肝要かと思います。

 締めるときには、最近は釣具屋でも背骨に突き刺して脊椎を破壊する道具が売っていたりして、鮮度保持に気をつかう釣り人に売れているようだ。

 でもまあ、刃物で締めれば十分だと思う。

 締めるのは、暴れないように神経系を破壊するのと、自己消化を早める要素である血を抜くのを目的にしている。

 いろんな方法があるけど、背骨にはご存じのように脊髄という太い神経系が通っていて、さらに背骨の下には大きな血管が走っているので、釣り人の多くは魚を締めるときには、頭の後ろあたりで背骨ごと脊椎と血管を断ち切るのが多いのではないだろうか、釣りの本などにはそのような方法が紹介されていて、大きな魚の場合はシッポのあたりにも刃を入れるようにも書いてあって、実施している人もいるだろう。

 当方は、魚の腹側を上にして、鰓から刃物を突っ込んで延髄あたりに突き立てるようにして締めている。こうすると大きな血管を切りつつ延髄を破壊できる。背中側から締めると背骨を上手く切断するのに、関節の間に刃を上手く入れてやる必要があり、ちょっとコツがいったりする。それに比べるとエラから延髄は適当に刃を突き立ててグリグリと刃が入るところを探っていけばズズッと刃が刺さる場所があって、魚が痙攣して動きを止めるので簡単だと感じている。デカイ血管も傷つけるのでエラから血もドクドク出る。頭のうしろを切るより見た目が綺麗なので後で料理するときの見栄えも良い。しばらく放血させて水洗いしてからクーラーに突っ込むのが普通の釣り人だと思うが、当方は血まみれでも後で洗うので気にせず早めに冷やしに入ることが多い。

 で、ハゼだがいちいち刃物で締めていない。小さくて面倒だからさすがにそこまでやっていられない。やるなら指を使っていわゆるデコピンで魚の頭をはじいて締めるのが手っ取り早いかも知れない。たまに渓流魚を持ち帰るのにおとなしくさせるために使っていた手だが、意外に上手く決まって魚が動かなくなるので小型の魚には使える手だと思う。

 今のところハゼ釣りでは、ズック魚籠でしばらく生かしておいて、10〜20匹釣るごとに、クーラーの中のタッパに生きたままで移し替えて、そのまま冷やして「締め」ている。

 「水氷はどうした?」と思われるかもしれないが、これまたやっていない。クーラーに冷却した塩水を満たして持ち歩くのはさすがに重いしこぼれるしで、電車or自転車でハゼ釣りに行くスタイルにはマッチしない。

 ということで、次善の策として、タッパに保冷剤を入れてハゼが直接保冷剤に触れて冷えていくようにしている。これまた急速冷凍の方法の一つに空気や水を媒体としない、直接冷却部を接触させてモノを凍らせる「コンタクトフリーザー」というのがあるのだが、その「直接接触方式」の適用である。ある程度ハゼの数が増えてくると保冷剤に直接ハゼが触れなくなるが、その頃には先に入れたハゼ自体が冷えていて保冷剤の替わりに直接接触方式で新たに入れたハゼを冷やしていくことになる。あっ、もちろんタッパは凍らせたペットボトル入れて保冷中のクーラーに入れていてちっちゃい保冷剤だけで冷やしてるわけではないです。

直接接触冷却

 夏場だと油断していると、結構魚の温度が上がってしまうことがあり、そうなると魚は腐るのが早いので、その日釣った魚でも腐ってしまうことがあり得る。

 

 そうやって、持ち帰った魚をさばく。まずは鱗、腹を取る下処理だが、ハゼの場合はついでに頭も落としてしまう。

 今回紹介したかったのは、ハゼの鱗取りの方法である。

 普通鱗を取るには、包丁を立てるように魚体に当ててこすって、鱗をはぎ取っていく。大きな魚の鱗を取るには、専用の鱗取りの器具を使って、台所中に鱗が飛び散らないようにビニール袋に入れて作業したりする。

 ハゼについて、50匹から唐揚げにするにあたっては、鱗取るのめんどくせーな、鱗ごと揚げちまってもカラッと揚げてしまえばたいして気にならんのじゃなかろうか。と考えていたところJOSさんが簡単に沢山のハゼの鱗を取る方法を教えてくれた。

 流し台の3角コーナー用ネットやタマネギネットにハゼを詰め込んで、水の中で揉むという方法である。

 実際にやってみて簡単に上手く鱗が取れてびっくりである。作業はかどるはかどる。

ネットに入れて揉みまくり

 イワシやらサンマは店頭に並ぶときは鱗が付いていないことが多いが、これは漁獲されるときに網の中でほかの魚と擦れて鱗がはげているのである。イワシやサンマほど鱗が取れやすくないマハゼでも、ちょっと気合いを入れてグシグシとこねるようにすり合わせてやると鱗が取れて、すぐにボールの水が黒っぽく鱗やら粘液やらで濁っていく。2回ぐらい水を替えて揉んでやれば、綺麗さっぱり鱗は取れている。なかなか楽しい作業だ。

鱗取り終了

 ちなみに、水は鮮度保持を考えて保冷剤を入れて冷たくしている。人間の体温は結構高いので手でグチャグチャやることを考えると念のためという感じ。

 鱗が取れれば、ハラワタと頭を取る。頭の後ろに包丁を入れて、背骨を切って魚体の2/3ぐらいまで切るつもりで、腹側まで切りとらずに残した状態で頭を引っ張ると頭にくっついて鰭とハラワタが取れる。しかし、はらわたの先がちぎれて、ちょっと肛門付近に残る場合が多く、まあ気にせず食っちまえという気もするのだが、肛門付近ということもあって、ややバッチイ気がする。

 頭を落とす前に一手間かかるが、肛門のあたりをちょっと包丁で切ってやってから頭を落として内臓を引っ張ると綺麗に腸の最後まで取れるのでそうしている。

 そうやって下処理していく間も、夏場の室温は高いので時間がかかると鮮度が落ちるので保冷剤の上に並べるようにしている。気にしすぎかもしれない。

 下処理がすんだら、ビニール袋にぶち込み、最初塩適量を入れてビニールを膨らませて上下に激しく振って塩をまぶす。次にメリケン粉を適量ぶち込んで、これまたビニールを膨らませて上下に激しく振ってまぶす。唐揚げの粉をまぶす方法はこれが一番粉が少なくて済むし簡単だと思う。塩とメリケン粉ではなく市販の唐揚げ粉でももちろんOK。

 鍋に油を入れて熱する。揚げ物はたまにしかしないので油の再利用計画が立たないので、油をあまり沢山使わず使い切りのつもりで、魚が浸る程度にしか油を鍋に入れない。唐揚げ程度ならちょっと強めの火加減でカリッと揚げればいいのでそのくらいでもうまく行く。油の温度もテキトーでジュワジュワ音がするぐらいなら多少高くても低くても気にしない。低温だとカラッと揚がりにくいが、熱いうちに食べれば気にならず充分旨い。

揚げる

 キッチンペーパーの上に並べて冷めないうちに食うべしというところ。

あげたて

 せっかく釣った魚を持って帰るなら、美味しく食べたいところ。そのためにはそれなりに丁寧に気をつかうところがあると思うので、ちょっと書いてみたら、割と神経質なぐらいに温度管理に気をつけていることに、我ながら意外に思った。大雑把でテキトーな性格だと思っていたのだが割に細かい。

 

(2012.9.5)

 

 

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