○なすびの花と釣りのスカ −スカ食いながらのシーバスポイント探索−

 

 昨年の橋の下パターンの発見から、派生して運河の街灯パターンでの好釣、そして平成25年3月後半現在の早春のパターンを掴みかかっている状況は、シーバス野郎として、ちょっと新しい段階に突入したと感じる。

 

 修行の果ての「覚醒」っぽい。

 

 しかも、掴みかかったパターンからさらに発展するかも知れない気配があって、なかなかに悩ましくも楽しい。何年もあるいは何十年もかかって楽しめそうな気きがしている。

 

 ダイキリさんから2月シーバス好釣だったのでご一緒しませんかというお誘いがあった時は、ひょっとしたら新しいポイントが一つ増えるかなというぐらいの期待だった。でもそれだけでも2月3月は釣果が安定せず結構苦戦する時期なので、2月に釣れるポイント一つ増えれば暁光である。この時期は小型がまだ湾奥にドカッと入っていないためか大型が狙える時期でもある。是非ご一緒させてくれと即答した。

 

 ダイキリさんは、通い込んである程度パターンを掴んでいるようで、当方出撃初回の週は釣れない条件のもと出撃だった。

 予想どおり釣れなかった。釣れなかったことと現場を見てダイキリさんの話をうかがって、「これはこの時期釣れるのは、細かい条件が揃わないといけないのではないか?」という疑念が芽生え、自分の過去データを洗い直してみることにした。

 

 ダイキリさんポイントと別パターンが出てくれば、日によってポイントの使い分けができるようになるからラッキーぐらいの軽い気持ちで、2000年以降の1〜3月のシーバス釣りに行った時のデータを整理し始めて、データが積み上がっていくたびにもしかしてという思いが高まり、一つ一つの釣行の状況を思い出しながら整理をすすめるにつれ、それは確信と納得に変化していった。心の底から震えるぐらい驚愕したし、新たな発見の喜びにわなないた。かなり普遍性のある応用の利くパターンのようだ。

 

 1月はあまりにも釣れていないので何とも言えないし、3月後半には他のパターンの影響が強くでて不明瞭になるけど、2月から3月前半、いくつかのポイントで明らかにダイキリさんの気付いた条件と同じパターンで釣れている。釣れている以上に重要なのが、条件外すとほぼ釣れていない。

 「人山」状態で沢山釣り人がいるのに、全く釣れそうな気配が無かった日があったのだが、データを見ると前日まで条件に合致していたのである。前日までは釣れていたのだろう。当方と同じように細かい条件読み切れていなかった釣り人が、今日も釣れるだろうとやってきていた、もしくは釣れたという情報に釣られてやってきていたのであると理解した。

 

 データを整理していて、どっかでこの条件を読んだような気がするなと思って、心当たりのある釣りの本を読みかえしたら、有名アングラーが既に書いていた。

 条件に気付いたうえで秘密のポイント、パターンとして各地でこっそり楽しんでいる方に迷惑かけるといけないので、ここでは条件を明らかにするつもりはないが割と基本常識に近い条件なのかも知れない(近所ポイントでの検証の時にも平日にもかかわらず少なくとも5名は確信犯が釣り場にいた。)。

 

 それでも、そういう条件を本で読んだうえで無視していたのは、一つには当方のようなサラリーマンの釣り人はサンデーアングラーの名のとおり、休みの日にしか基本釣りに行けないから、条件なんか最初から無視して、行ける休日や仕事が早く終わった日には「全部行く」のが基本だから、そんなモン気にしても仕方ないだろうという判断がまずあった。

 そうやって全部行った上で何らかの傾向に気付ければ、絞り込んでいけばいいと思っていた。

 実際そこそこ絞り込めてはいて、2月にも良い釣りした年があったりする。でも次の年同じように釣っても釣れなかったりして、2月は年によって当たり外れあるなと思っていたが、それはある意味正解なんだけど、魚側、自然側の都合ではなくて、人間のカレンダー側の都合で休日に微妙な条件が当たるか外れるかが大きく影響していたことが、今回データ整理で自分のなかで明らかになった。実に微妙な差で明確に差が出る。

 

 また、条件多少悪くても可能性0にはならないだろうから、そんなに細かい条件をつめる意味は無いとも思っていた。確かに0ではないが、積み上がったデータは、主観による補正も含めると、それが0に極めて近いことを示している。

 過去にスカ食ってデータを集めたからこそ、今回見つけたパターンにはまるポイントでは条件に合わないときは行かなくて良い、別のパターンのはまるポイントに行け、という判断ができる。

 自分の体験、経験で、自分のポイントに当てはめて納得できなければ、いかに雑誌の中で腕利きアングラーがデカイ魚を誇らしげにぶら下げてパターン解説していても、「お前がそう思うんならそうなんだろう。お前の中ではな。」ぐらいにしか思えない。

 

 さらに加えるなら、自然界はそんなに単純じゃなくて、結構普遍的なパターンと言っても、それなりにポイントになる条件が難しくて、かつ、パターンのはまり方も若干ポイントごとで異なるようだ。ついでにやっぱり釣りに100%はあるはずもなく、自信を持って挑んだ条件に合致した日のダイキリさんポイントでのリベンジマッチでスカ食ったりもしている。

 今現在、近所ポイントと、それ以外にも手持ちのポイントでいくつか目星は付いているが、それ以外のポイントや今まで駄目だと思っていたポイントなどもこれから足を運んで検証する必要があるという状態で、実際には12年前当時に情報も何も無い状態の当方が、その条件だけ聞いたところで手も足も出しようがなかっただろうという事。

 

 自然界のややこしさに起因してもういっちょ。パターンなんて言ってもそう簡単に割り切れるわけではなく、複数のパターンが同じポイントに併存しているらしいことが、3月後半のデータや4月の釣りの記憶からもあると思う。「当方の得意なバチパターン」の中にもこの新しく気付いたパターン、実はバチパターンの1種だが、が混ざっていることに今回のデータ整理と考察の中で気付かされた。

 同じバチパターンでも、バチのタイプが違っていて、なまじ4月以降本格化する方のバチパターンが得意なだけに、その知識が邪魔をして、今回見つけた「別のバチパターン」の発見を妨げ続けていた。ダイキリさんがきっかけをくれなければさらに気付くのは遅れただろう。ナマジだけに。

 で、その「別のバチパターン」で実際に魚を釣ってみて、釣れた異様に太った個体を見て、パターンに当てはまる日だけバチを食っているだけではこうはならないはずで、そうじゃない日にも、いかにも泳ぎにくそうなこの体でもとらえられる遊泳力の小さい餌生物を飽食し続けているのでは、という疑いが当方の頭に生じている。バチかアナジャコかアミ類か、ひょっとして貝か。

腹ボテ

 当方は今回発見したパターンを含め、2つのバチパターンを知ったことになるが、それ以外のバチパターンがあるという可能性がどうも臭いような気がする。近所ポイントは当方に馴染みのある4月から本格化するバチパターンはハマらない川なので2つのバチバターンとは別のパターンがあるはずだと想像している。

 2月ぐらいからの時期には、バチパターンにからめてほとんど水面か水面直下しか狙っていない、全く当方的にはノーマークのたまに小耳に挟む水底近くを流れるバチのパターンが近所ポイントでもあるのではないか。さらに今回発見したパターンの「裏」に相当するようなパターンもちょっと思いついている。引き続き検証していきたい。

 

 今回、ダイキリさんと、過去の自分には感謝するとしか言いようがない。2人が食らったスカは全く無駄ではなかったと思う。

 2000年から2013年3月10日時点でのデータでは、当方は1〜3月に計80日シーバス釣りに出撃し、うち60日スカを食っている。3月後半に釣果が集中しており実際には3月前半までに絞ればさらに惨憺たる有様である。ケン一はデータを見てスカの数が「半端じゃない」と評していた。

 自分の技量の拙さを表しており恥ずかしい限りではあるが、それでもどこか誇らしい。

 

 むかし、何の釣りだったか忘れたけど、虎ファンさんと当方だけが、まわりは釣れてないのに釣れていて、虎ファンさんの「何で俺らだけ釣れてるンやろな?」というつぶやきに、「食らったスカの数がちがうんです」と答えた記憶がある。

 釣れなかった時のデータは正直何が原因かよく分からないので、釣れた時のデータほど役に立たないと思っていたが、今回過去10年分以上のデータを整理してみて、スカから「釣れる条件と釣れない条件の境界線」が浮き上がって見えてくるように感じた。

 なすびの花と釣りのスカは千に一つの仇もないのではないかと思えるようになった。

 

 単に釣れれば良い、あるいはデカイ魚が釣れれば良いだけなら、シーバス釣りなら迷わず腕の良い船長のシーバスボートに乗ればいい。実際そうした時期もある。そしてデカイのが釣れて嬉しかった。

 

 でも、もっと貪欲に楽しみたいのなら、自分の足でポイントに通い、ひたすら魚や海や川や、目に入る自然や聞こえる音や、吹く風やすべての感じるモノを感じ、釣友からの信頼できる情報からネット上の与太話まで含め、手に入った情報をとことん考え抜いて楽しんだ方が良いと思う。

 10年やそこらでは楽しみ尽くせない、複雑怪奇でめんどくさい楽しみがそこには待っている。

 

 スカを恐れず立ち向かうすべてのシーバス野郎どもと共に、当方も歩んでいきたい。

80枠のネットと共に

 

(13.3.17)

 

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