○出張準備

 

 出張中の男が、アタッシュケースをパカッと開くと中にはルアーやらリールやらが収納されている。映画「釣りバカ日誌」のワンシーンである。

 釣り人ならハマちゃんならずとも、出張にからめて初めての土地で釣りしてしまおうと考えるのは、ごく当然の成り行きでしょう。

 

 この場合、出張日程と休日がつながって出張先で休日が過ごせるなら、宿泊先に釣具ひとそろい宅急便なり郵パック(註1)なりで送付して普通に遠征釣行かましてしまえば特段問題ありません。何を釣ろうがご自由にというところです。

 しかしながら、宅急便が使いにくい海外出張や出張後すぐに帰ってこなければならず、出張期間中釣りして良いのは、早朝や夜間の空いた時間だけ、ということになると本格的なタックルを持ち込むのはちょっとはばかられます。同僚や上司の「君は何しに来ているのかね?」という視線に耐えつつ、バズーカ(註2)で長竿持って来たはいいけど実釣時間が2時間で、結局たいして釣りにならず大荷物持ってきて馬鹿をみたということになりかねません。

 かといって釣り具を一切持たずに出張に行って、ふらりと漁港なんぞ訪ねてみたら、今まさにシーズンで魚が寄っており地元民爆釣とかいう状況で指を加えてみていなければならんという状況が無いとも限らず最低限のタックルは持っておきたいモノです(註3)。

 

 ということで、私が用意するのはこの出張釣りセット。

出張セット

 

 一番やっかいなのは長モノの竿をどうするかということでしょう。他は仕事鞄にどうとでも入れていけますから竿がキーです。

 私の選択はとにかく「短くなって鞄に入る竿」ということでリョービのジョイスピン606MLをメインにたまにもうちょっと柔らかめのダイワのシルバークリークのULです。ジョイスピンは「短くなって鞄に入る」というメリットの他には特に良い点を探すのが難しい竿です。リールシートはリング2個のテネシーグリップですが、締まりが悪くてロッドベルトで固定していないとずれます。アクションはアクションという言葉を持ち出すのも恥ずかしいただの棒のような曲がり具合。短くて粘りが無く、魚が突っ走ると口切れ等でバレ気味。使い心地のあんまり良くない竿ですが、とにかく鞄に突っ込んでおくと使う機会があるので魚を連れてきてくれます。あんまり良い竿でなくてぞんざいに鞄に突っ込めるのが結果的に好成績につながっていきます。

 

 竿以外には、リール、ルアー、カッパ上下、ライト、カメラ、ジグ&ロープ、バンダナ、ペンチを用意します。リールは適当にいつも使っているようなモノで問題なし。ルアーもあまりかさばらない程度で用意すればOK。事前に情報仕入れてルアーの数は絞りましょう。カッパはスーツの上に着込んでしまえば普通に釣りに行ける格好になります。靴まではめんどくさいので防水加工の普通の革靴で釣りしてます。

 準備するのがめんどくさいモノや持って行くのにかさばるモノを持って行こうとすると、出張先に釣具を持って行こうという気力そのものが失せる原因になるので、ともかくかさばらない簡単な準備がキモです。

 ライトは夜や早朝に自由時間がとれることが多いので必須です。カメラは携帯電話にカメラが付いていれば省略してもかまいません。ジグ&ロープは大物狙いで手で投げる、わけではなく足場が高いときのギャフ代わりです。ネットが無くてもこれで何とかなる状況は多いです。バンダナか手ぬぐいは帽子代わりに頭に巻いておくのに用意した方がよいでしょう。手が汚れたときも重宝。ペンチは毒魚が釣れるかもしれないのであった方が良いです。

 

 出張釣りセットは仕事帰りのアフターファイブの釣りにも使えます。是非用意してみてください。

 

<実釣例>

カンモンハタ(奄美大島カンモンハタ)

青島クロソイ(中国青島クロソイ)

 

 

(註1)郵パックは離島でもそれほど値段が上がりません。離島に釣具を送る際には郵パックがお得です。旧郵便局は公共の利益のために国民が誰でも郵便宅配サービスを受けられるように離島であってもそれほど金額は高く設定してませんでした。簡保の民営化なんてどうでも良いけど、郵便業務は民営化すべきではなかったというのが私の持論です。離島など僻地の活力を奪い街の利便性のみを優先する政策だと思います。

(註2)ここでいうバズーカとはロケット砲のことではなく、釣り竿を収納して運ぶための長い筒のようなケース。普通、魚のイラストや釣具メーカー等のステッカーを張りまくって釣具であることを誇示しておく。そうやって釣り竿ですと説明しても過去に一度、入国時なのにX線かけられたことがある。また、サリン騒動のあった頃の国会議事堂周辺でバズーカ(ロッドケースの方の)持っていて職務質問を受けた釣り人の話も読んだことがある。村上龍の小説「半島を出よ」では、北朝鮮の工作員がロッドケースの方のバズーカに武器の方のバズーカを突っ込んで博多湾の小島に釣り人を装って上陸するというシーンがあって個人的に笑えた。

(註3)いくら釣りたくても、釣れてるときに地元民から無理矢理タックル借りるような酷いことはやめておきましょう。私が地元民の立場なら海に蹴り込みます。

 

(2008.4) 

 NEW WAVE mini pack 出張ロッドは最近こいつにお任せ。

(2013.3)

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