○アメナマクッキング

 

 暑が夏いです。

 頭もダレきってこういう使い古されたくだらんつかみしかでてこないような夏バテ気味の時には、「ウナギでも食って精つけるか!」といきたいところですが、最近ウナギも偽装の問題やら何やらでいまいち信用できず、食指が動きません。自分で釣って来るにしてもウナギ釣りはなかなか難しくて疲れだけが蓄積するという結果もあり得ます。

 しかし、アメリカナマズ(略してアメナマ)なら、産卵期も終わったこの時期、私、何とか手堅く釣ってこれると思うのです。「旨い」、「川の河豚といって過言でない!」という話を耳にしますし、実際養殖物を食べる機会があったのですが、河豚とはちょっとちがいますが臭みもなく脂も結構のっていて大変美味しかった記憶があります。

 ここは一発、ナマズ丼のアメリカンでもかっくらって夏を乗り切るべきでしょう。

 

 しかし、だったら何で今まで食ってないんじゃ?と疑問を感じると思いますが、この魚「特定外来生物」とやらに指定されていて、生体の持ち出しや移植が禁止されているのです。移植などする気はさらさらありませんが、生体の持ち出し禁止となると、泥っぽいところに棲んでいる淡水魚を食べるときにきれいな水でしばらく飼っておく「泥抜き」と呼ばれる作業ができないのです。釣ったら即締めて持って帰らざるを得ません。泥抜きせずにそのまま食べてはたして美味しいのか?その辺が不安だったのでこれまで食べていなかったのです。

 しかし、真相究明のためにはいつまでも手をこまねいているわけにもいかないので、昨晩手頃なサイズが釣れたので2匹ほど現場で締めて持って帰ってきました。

締めました

 このナマズ、陸地にあげてもジタバタ暴れてなかなか締めにくいです。こういうときに限ってボガグリップを忘れていて、仕方なく指を口に突っ込んで押さえ、ナイフをエラから突っ込んで締めたのですが、さすがにいやがって暴れる暴れる。そら殺されて首落とされるのはダレでもいやでしょう。

 普通、エラから突っ込んだナイフを脳天に向ける感じで突き立てて、太い血管を切りつつ、脳か脊椎を刺して即殺するのですが、コイツは脳天あたりの上顎に咽頭歯でもあるのか骨が硬いのか血管は切れて血抜きはできたものの、なかなかとどめが刺せません。

 しかも、かなりの勢いで指に噛みついて、噛みつくと同時に首を振ったり体をねじったりするので指をボロボロにされました。おそらく普段から死んだ魚の肉などをそうやって囓りとっているのでしょう。釣っているときにも、コンッ・・・コンッ・・・という感じで鋭い魚信があった後、餌がとられていることがあり、この囓りとる食い方が原因かなと思いました。 

指首振った跡(首を振るので横にも切れる)

  一匹はなんとか横の方から骨の隙間にナイフの刃を滑り込ませるようにして完全に沈黙させましたが、もう一匹は結局頭を落とすまで暴れてました。ナイフが小さいので頭落とすときは周りの肉を切っておいてからボキッとひねり折る感じで落としました。カツオのような背骨の硬い魚でも使える方法です。

  ちなみに胃袋には、かけ損なったときに食い取られていたらしい餌のレバーしか入ってませんでした。

 

  氷で冷やして持ち帰り、翌朝調理開始です。メニューはナマズ丼アメリカン(以下「ズ丼」と略します)、とナマズのスープ。

(見た目はちょっとグロい)

  まずは、ナマズスープ用にむき身のぶつ切りを用意します。ペンチかなんかで皮の端からはがしはじめ、後は手で剥けばきれいに剥けます。ヒレはあらかじめ切っておきます。

剥きますむき身

  むき身にしてしまえばきれいな身質で臭みもない様子、後は適当にぶつ切りにして調理に使って下さい。今回はナマズの他の具としてタマネギと大豆の煮たの、味付けは塩と酒、香り付けにショウガ、胡椒、ゴマ、唐辛子、ハーブ適量を使いました。

材料タマネギ炒め

 作り方は、タマネギを塩と唐辛子、ハーブで炒めて、酒とお水を入れ、煮立ってきたら他の具を入れ、最後に塩とゴマで味を調えました。骨とかヒレもダシとして入れてます。

 ナマズスープ

  白身で臭みもなく、適度に歯ごたえもありおいしいです。冬なら河豚ちり風に鍋にしてポン酢付けて食べても美味しいと思います。冬は冬眠中で釣れませんが。

 

  さてお次はズ丼の調理。この手の魚はやっぱり皮ごと食べたいところです。とりあえず3枚におろします。

おろします

 骨とかヒレでダシを取って、そこに砂糖、みりん、酒、しょう油を加えてタレを作ります。

ダシタレ

 タレを煮詰めつつ、3枚におろしたナマズに塩をふってフライパンで白焼きにします。

白焼き

 本来なら、七輪で炭でもおこして串打ってから焼いて、タレを付けてまた焼いてという手順なのでしょうが、普通の家庭では面倒なので白焼きにした段階で、適当に切り分けてタレの中で煮てしまうと簡単です。香ばしさにやや欠けますが、その分煮アナゴのようにしっとり柔らかく仕上がります。

 煮てます

 適当にタレがからんだところで、火から下ろしてどんぶりに盛ったごはんの上にナマズの切り身を乗せ、タレをかけ回して完成。

ズドンズドン(ズドン!)

 皮に黒点があったりして皮の方を上に向けるとややアレですが、味の方はなかなかのモノ。

 皮に川魚独特の匂いが若干ありますが、これはむしろ無いと寂しいという程度のもの。充分おいしく食べられました。特におなかの部分は弾力があってオツな身質。

 「ごちそうさまでした!」

 

 これだけおいしく食べられるのに、あまり利用されず霞ヶ浦では邪魔者扱いで「駆除」の対象となっています。改めて「味覚」は偏見と習慣の産物だと思わされました。

 

 

(2008.7) 

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