○長編おまけ「視聴中の2011年秋アニメについて」

 「今時のアニメはヒット作の劣化コピーばかりで末期的だ」というような意見を目にするが、当方、先に書いたようにまったくそうは思っていない。今期(10月〜12月の秋期)も2期ものや長期物も含め、毎週8作品を視聴している。数えてみたら自分でも驚くぐらい多い、一日1作品以上だ。ちょっとどうなのよと思うオタクぶりだが、事実なので仕方ない。

 確かに、ある種のパターンというか、フォーマットにのっとった似たような設定や見たことあるようなキャラクターが出てこないこともないのだが、それでもそれぞれの作品の売りとなるような特徴ある魅力的なポイントがあり、それぞれ面白い。だいたい、物語のテーマやストーリー展開なんて言うのは、神話の昔におおかた原型は出てしまっていると言って過言ではないくらいで、まったく新しいオリジナルなものなんて人間の理解できる範囲ではそうおいそれとは出てこないだろう。同じテーマでも違う切り口、見せ方があるから物語は星の数ほど生み出され楽しまれていくのだと思う。

 もちろん面白くないと思って視聴を最初の数話で切った作品もあるし、そもそも見ようとも思わなかった作品もあるが、それらの作品もそれぞれ多かれ少なかれファンを獲得しており、当方にとって面白くない作品がダメな作品であるわけもない。

 ここでは当方が、面白いと思って視聴しているアニメをパターン分類しつつ、それぞれのもつ強み特徴を並べて評価してみたいと思う。いかにパターン分類されてしまうようなアニメが多いかということと同時に、それでもいろんな「あの手この手」があるものだなと理解していただけるのではないだろうか。

 

○友情努力勝利、熱血スポ根型

 漫画、アニメの中では王道中の王道である。スポ根を代表する野球ものだけ見ても「巨人の星」「ドカベン」「キャプテン」「タッチ」「メジャー」「ルーキーズ」「大きく振りかぶって」etc.etc.いくらでもある。主人公が個性あふれるチームメイトとともに様々な障害にぶつかりながら強敵と戦っていく中で、友情、努力、勝利的なものを勝ち取っていくという、まさにテンプレ、こてこてのパターンものである。しかしこの熱血スポ根型がこうも沢山あるのは、それがそれぞれ面白いからに他ならないと思う。

 今期視聴中のアニメでは「ちはやふる」と「ベン・トー」がこれにあたると思う。

 「ちはやふる」は、原作は少女漫画誌掲載で競技カルタというマイナーな競技を扱っている。はっきり言って競技カルタは一般的な認識ではスポーツではないと思う。しかし、多くの「漫画読み」が指摘しているように、この物語はまごう事なく熱血スポ根ものの系譜に並べられる作品である。主人公のちはやは、小学生の時に競技カルタの永世名人である祖父に鍛えられた転校生、新(アラタ)と出会いカルタの魅力にとりつかれ、なんじゃかんじゃあって高校でカルタ部を作って全国大会を目指すのだが、そこに様々な障害が立ちふさがるも、幼なじみのイケメン秀才君や、新たな仲間と苦楽をともにしながら邁進していくというストーリー。ちはやのひたむきさと、耳が優れていて、人に先んじて読み上げられる言葉を聞き分けることができるという才能や、イケメン君の何でも人並み以上にこなせるが、カルタでは天才エリートの新や耳が良いちはやに勝てないなかでも、カルタが好きという気持ちで向かっていく姿が、他の良い味出している登場人物とも絡み合いながら、ダイナミックに王道スポ根ものの友情努力勝利を盛り上げていく。最初の数話でもう面白いことが分かり切ってしまうぐらいの面白さ。

 「ベン・トー」は、ライトノベル原作。半額弁当を巡る戦いを描いたストーリーということで、何じゃそりゃと思って視聴してみたのだが、スーパーの半額弁当を奪い合うバトルが、架空のルールに基づいて行われていて、その半額弁当バトルの同好会に入った主人公と仲間たちの物語だった。といっても見ないとやっぱり何じゃそりゃだと思うけど、なんというか馬鹿馬鹿しいあり得ない設定を無理矢理通して、それに基づいて王道スポ根ものならあるであろう、友情努力勝利的な盛り上げ要素がきっちり盛り込まれていて、パロディーなのか何なのかよくわからないが、バカっぽさにあきれつつも勢いにのせられて視聴している。熱血スポ根ものでもこうゆう表現もありかというアイデア賞もの。

 

○オレには特別な能力が、超能力バトル型

 これも、神話の時代の神々の特殊能力あたりが原型でバビル2世のむかしから、アニメ、漫画に限らずSFモノとして沢山存在している。「ペルソナ4」は、ゲーム原作。真夜中のテレビに映った人物が殺されるという殺人事件に端を発して、主人公たちが、テレビの中の世界に入り込んで、自分の内面から生まれるペルソナという分身を用いて、謎の敵の正体を暴き戦っていくというストーリー。まあぶっちゃけ、ペルソナは大ヒットジャンプ漫画「ジョジョ」のスタンド能力に似ている。この作品の特徴はなんだかオシャレな感じがするところで、学生服のデザイン一つとってもなかなかにオシャレで凝っている。キャラクターもストーリーもありがちと言えばありがちなのだが、主人公もクールな感じで独特な雰囲気でみせてくれる。

 

○群雄割拠の中の生き残り、バトルロイヤル型

 三国志から、戦国絵巻から、もっと昔から、この手の物語はいくつも書かれてきた。様々な特徴ある登場人物が、時に共闘、時に裏切り、あの手この手で他を蹴り落として最後の勝者となるべく戦う中で生まれる、駆け引きやエピソードの面白さ満載の群像劇。

 今期当方視聴中アニメの中では、「Fate/Zero」「未来日記」がこれにあたるだろう。

 「Fate/Zero」はゲーム原作かな?あらゆる願いが叶うという「聖杯」を巡り、魔術師7人が、7人の伝説上の英雄?を使い魔として召喚して戦うという話。それぞれの英雄のキャラクターが魅力的に造られていて楽しめる。特に最強のセイバー(剣士)として期待して召喚したアーサー王が少女だったという設定には「んなアホな」とあきれたが、このセイバーがかなり格好いい。こういうアニメ見るときには中学2年ぐらいの精神年齢に戻って見ているのだが、そういう中二心が快さいを叫ぶ活躍ぶり。普段はシークレットサービス風の黒スーツで決めているのだが、戦いが始まるとスカートデザインの鎧甲冑姿にチェンジして見えない剣を手に、他の英雄たちと切り結ぶ。豪快な征服王イスカンダル(アレキサンダー大王)が現代社会の文化に興味津々で、ネット通販で買った世界地図がデザインされたTシャツ着て喜んでいるあたりのお茶目さもなかなかに楽しい。

 「未来日記」は漫画原作。神が選んだ12人を戦わせ、生き残った者を次代の神とするという設定で、選ばれた12人はそれぞれが書いていた日記に未来の情報が自動的に書き込まれるという「未来日記」の所有者になり、未来を予測しながら敵と戦う。日記の形態も携帯から手書きから、内容も犯罪日記から逆の捜査日記、飼育日記など様々あるのだが、とにかくこのアニメで見るべきはただ一つ、ヒロイン「我妻由乃」だ。彼女のもつ未来日記は、主人公で、他者とのコミニュケーションが苦手で、暇なので携帯に見たことを10分単位で書いているというさえない少年雪輝の行動を粘着的に記録した愛の「雪輝日記」である。彼女は雪輝曰く「超ストーカー」でその常軌を逸した雪輝への愛は、完全にキチガイのそれである。雪輝に対しては、自身の日記で雪輝の日記を補完すれば戦いに大きなアドバンテージとなるので「ユッキーは私を利用すればいいんだよ。」と献身的な盲目の愛を捧げるが、その雪輝に向けられる恋する乙女の瞳は、一端雪輝に危害を加えようとする者が現れると、狂気に血走り、包丁を斧をナイフを容赦なく敵に突き立てぶった切っていく。アブなくて、でも目が離せない魅力的なヒロインだ。第1話の導入部分で雪輝が青酸カリを飲み由乃がおろおろしている短いシーンが挿入されているので、どうも最後は2人になった時点で雪輝が死ぬようだが、そうすると神は由乃になるので、であればそうなるのかなと最終話の予想をしているのだが、はたして正解かどうか。いずれにせよ最終回まで楽しんで視聴できそうだ。

 

○宝を求めて幾千里、冒険記型

 このタイプの古典かつ大傑作はなんといっても「西遊記」だろう、西遊記自体実写ドラマもマチャアキ版、香取慎吾版、アニメ化も複数、小説もいろんな人が書いたバージョンで楽しまれているが、そこから派生した「ドラゴンボール」「西遊妖猿伝」「珍遊記」などの名作も数多い。「珍遊記」が名作かどうかの議論は受け付けない。同じ題材を基にしても、いろんな魅力のある作品が生まれ得るということの好例ではないか。

 「ハンター・ハンター」は当方世代には「幽遊白書」が懐かしい冨樫義博原作の現在も少年ジャンプで休み休み連載中の超ヒット漫画が原作。アニメ化は2度目らしいが、続編ではなく最初から始まる。

 原作は長編漫画なので現時点では、行方不明になった父親の職業である、秘宝財宝珍獣魔境摩訶不思議を追い求める「ハンター」になるべく、少年ゴンがハンター試験に臨み、仲間とともに難問奇問に挑戦しているところ。まだ導入部で今後ハンターとなったゴンや仲間たちが、様々な冒険をしていくのだと思うが、現時点でも十分面白く、つかみはOKという感じだ。いかにも少年ジャンプな王道路線を飽きさせないキャラクターの魅力やストーリーの展開はさすが冨樫大先生というところか。

 

○家に異世界からの居候がやってきた、ドラえもん型

 平凡な一家に、異世界から同居人がやってきて、その交流が巻き起こすドタバタな日常を描くというパターンを、藤子F不二雄作の国民的漫画に敬意を表してドラえもん型と呼びたい。

 「侵略!?イカ娘」は少年チャンピオンに連載中の漫画が原作。今回2期目で1期で予想外?に健闘し人気が出たので2度目のアニメ化である。1期放送時にはヨッチャンイカとのコラボ企画やら、イカ娘の語尾「〜イカ」「〜ゲソ」がネット流行語の銅賞受賞やらとすごいんだかショボいんだかよくわからない盛り上がりを見せた。

 海を汚す人間に怒りを覚え、地上を侵略すべく上陸したイカ娘が、初期の目的を忘れ、ダラダラと海の家レモンで壊した壁の修理費を稼ぐべくバイトをしつつ巻き起こすエピソードがゆるい感じで描かれる。

 吉田戦車のギャグマンガにおける衝撃をリアルタイムで味わってきた当方にとってはイカ娘の世界の極めてぬるいギャグはいまいち物足りないが、まあこの手のアニメはそういうゆるさを愛でるものでゲソ。

 

○謎は解けた、ミステリー型

 ミステリーというのは、いつの時代も一定の人気を獲得していて根強い需要がある。漫画アニメでも「金田一少年」、「コナン」やら人気作がある。

 今放送中の「UN−GO(アンゴ)」はそんな探偵もののミステリーアニメとしてはちょっと変わり種で、「堕落論」の坂口安吾の探偵小説をベースに、時代背景を近未来に移して再構築したというもの。SF探偵モノという感じで、主人公の探偵新十郎を中心に、人に何でも一つだけ本当のことをしゃべらせる能力を持つ助手の因果、ある事件の被害者?で途中から助手になったAI(人工知能)の風守などが、難事件を解決したり、メディア王にもみ消されたりというストーリーで、当方はなかなかに面白いと思うのだが、いまいち受けていないようでネット上では「ウンコ」とたいがいな書かれかたをしている。

 

○芸術は爆発だ、前衛的芸術型

 新たな境地を目指して、時に表現者は実験的・挑戦的な作品を世に問う。

 「輪るピングドラム」はアニメオリジナル作品。次の展開が、結末がまったく読めないよく言えば前衛的、悪く言えばわけがわからない作品だ。でも面白いことは確かでネット上でも推論、深読み、あれやこれやと話題に上ってくる。カンバ、ショウマ、ヒマリの兄弟妹が一応メインの登場人物で、妹のヒマリが不治の病に倒れて死んでしまうのだが、水族館で買ったペンギン帽子を被らせたところ復活、というか何者かが乗りうつって、気がつくとカンバ・ショウマは異世界に手錠で拘束され連れて行かれており、ヒマリに乗りうつった何者かに「ピングドラムを手に入れろ」と告げられ、衝撃的に物語は転がり始めるのだが、ストーリーは2転3転、ピングドラムとおぼしき日記の所有者リンゴやら、リンゴのストーカー相手、その恋人、カンバの元恋人?やら何やらが入り乱れて、ストーリーは混沌とし、実はカンバたちの両親は地下鉄での薬物テロを起こした団体の幹部で、リンゴの姉がその時に死んでいるというあたりから物語は核心へ迫っていくのかと思ったら、またどんでん返しがあったりして、「生存戦略」「運命の至る所」などの謎のキーワードとあわせ最後まで何がおきるかわからない目の離せない物語になっている。たまに挿入されるギャグパートには不意を突かれてツボにはまる。はたしてどういう結末になるのだろうか?

 

と、まあ試しに今期視聴中アニメの分類解説をしてみたのだが、面白さがちょっとでも伝わっただろうか。同じような作品ばかりでは決してないと理解いただけただろうか。アニメは週30作品ぐらい放送されているので、きっとどなたにも1つや2つや3つや4つぐらいは楽しめる作品があると思うのである。

 しかし最近の当方は、小説やら漫画、アニメは熱心に楽しんでいるが、ドラマやら映画やらの実写はほとんど見ていない。いくつかみたい映画もたまっているので、来年はそのへんもチェックしていきたい。全く本の話から脱線しているがまあいいだろう。