○「本のページ」第4部 −ナマジの読書日記2010−

 

  2010年もダラダラと更新していきます。

 

<10.12.23>

○二宮正樹「本の「K−TEN」」岳洋社 タックルハウスのルアーデザイナーのブログをまとめて加筆した本。流石は重心移動システムを世に出した人だけあって、ルアーに関する諸々のマニアックな話は当方のような素人にはちょっとついて行けないぐらい深く、感心させられた。また、海の底に沈んだままゴミになってしまうルアーは作りたくない。だからバイブレーションでもハリがない状態では浮くように設計している、というものの考え方も真似はしないけどすばらしいと感じた。この人がアングリング誌に昔書いていた記事で2つ印象に残っているものがあり、一つは、釣ってきたヒラスズキを飼う際に素手で触ると、当初大丈夫そうでもその部分から腐り始めるという実験結果に基づいて、リリースはなるべく口以外を触らないようにという話と、好きな釣り以外やりたくないと思って、仕事を辞めて日雇いで最低限のお金だけを得て釣りまくっていたという話。リリースの話はブログでも再度取り上げていたようで、反響が紹介されていた。なかなかに内容の濃い釣りの本だった。

○夢枕獏「餓狼伝4,5」双葉文庫 「総合格闘技戦」にむけて様々な登場人物が絡みながら話が展開していく。5巻では猪木がモデルの「グレート巽」が若い頃に行った命をかけたアンダーグラウンドでのデスマッチのエピソードがゾクゾクするぐらい面白かった。引き続き継ぎの展開が楽しみ。

<10.12.20>

○町田康「真実真正日記」講談社文庫 どこが「真実真正」じゃ!主人公は確かに、パンク歌手兼作家なのだが、全くでたらめな「悦楽のムラート」なる小説を書き、「犬とチャーハンのすきま」というバンドでライブ活動を行ったりする、嘘の日記なのだが、それでも読ませる何とも言い難い真面目なんだか不真面目なんだか分からないおもしろさ。

○夢枕獏「餓狼伝2,3」双葉文庫 盛り上がってきた。極真のマス大山と新日の猪木がモデルと思われるキャラクターも出てきて、主人公の丹波文七を巻き込みながら、総合格闘技の新しいイベントに向かって、様々な登場人物の思惑が交錯しながら話が展開し始めた。格闘シーンが迫力あっていい。「ぐちっ!」と鼻の軟骨がつぶれたり、「めち、めち、めち」と靭帯が切れたりと独特のオノマトペがちりばめられてしびれる文体。読んでると格闘技未経験のふぬけな当方でも年甲斐もなく血が騒ぐ。

 

<10.12.10>

○夢枕獏「餓狼伝1」双葉文庫 14巻出て未だ完結していない長編シリーズに手をつけた。主人公は空手ベースの格闘家で、道場破りを繰り返す風来坊。この男が、道場破りに行って負けたプロレスラーにリベンジするために執念を燃やすお話だが、リベンジマッチの途中でこの巻は終わっている。後書きで筆者は1冊で終わらなかったので全3冊の物語にすると書いているのが昭和60年。が、その後書き続けてまだ終わっていないという有様。それだけたくさん楽しめて良いのだが、漠さん自分でも死ぬまでに完結できるのか心配と、どっかでかいていたので、読者としても一抹の不安がある。格闘シーンが迫力あってガシガシ読めるので、とりあえずあと13冊この冬に読むつもりである。

 

<10.12.09>

○梨木香歩「西の魔女が死んだ」新潮文庫 先日読んだエッセイがなかなか良かったので、同作者の映画化もされた代表作を読んでみた。登校拒否の少女が田舎の祖母のところにあずけられて生活するというのがストーリーの重要なところなのだが、「登校拒否」というとドロドロとして暗そうだが、わりと湿っぽくなく、なかなかの人物である祖母との交流が魅力的に綴られている。そして、ラストシーンが非常に切れ味鋭い感じで心地よい余韻に浸れた。後ろに短編が収録されていて、まだページ数が残っていて終わりを予感しない段階でスパンッと良いラストシーンがきたので、より鮮烈に感じた気がする。「紙の本だと残りの厚さであとどのくらい話が残っているかわかってしまう」けど、電子書籍ではそれが無い、ということを電子書籍の利点の一つとして揚げている人がいたがなるほどこういうことかと思った。

○高野秀行「腰痛探検家」集英社文庫 同じ腰痛持ちの当方としても人ごとではないが、ひどい腰痛に悩まされる筆者が、原因がなかなかはっきりしないなか、整体、整形外科、鍼、心療内科等々に活路を見いだすべく突入していくものの、なかなか改善の方向に進まず混迷する様が申し訳ないが笑いを誘う。「腰痛の原因」の多くは「不明」と聞くし、実際当方の腰痛も原因はなんだかはっきりしないのだが、筆者は実に執拗に論理的かつエネルギッシュに原因特定、治療への道を模索しており、日頃の未確認生物や辺境の地へのアプローチにも通じる情熱が感じられた。最終的には水泳と「気にしすぎない」という方法が功を奏したようであり、これからも無事「辺境作家」として活動を続けてくれそうで何よりである。

 

<10.12.06>

 疲れ気味で読める文章が軽いものに限られてくる。軽いものをということでラノベ関連いくつも手を出したが面白いのはなかなか当たらないのが実情。ここのところで良かったのは、「アクセルワールド」、「ブギーポップ」ぐらいか。

○町田康「テースト・オブ・苦虫4」中公文庫 相変わらずの浮世離れした文体で楽しませてくれる。まじめなのか偏屈なのかよくわからんものの考え方が面白い。

○梨木香歩「水辺にて」ちくま文庫 表紙のカヤックの写真を見てジャケ買い。文学的で理屈っぽいおば様が、カヤックに乗ったり乗らなかったりしながら、水辺で考えたあれやこれやのエッセイ。なかなか楽しめた。

 

 

<俺の読書 9‐Oct‐2010>


 読書量が減ってます。 電車通勤に往復3時間かかっていた独身の頃が今思えば一番読んでました。 本にかける金と暇があったのだ。 今は車で片道10分なので読書どころか音楽聞く暇もなく巷のヒット曲もまったくわからん。

 読書タイムは帰宅して寝る前に酒飲みながらか、時々は長風呂で湯に浸かりながら、というスタイルになっています。 



「酔いがさめたら、うちに帰ろう」 鴨志田穣 講談社文庫

 以前、この欄で教えてもらっていたのを本屋で発見。

 読み物としてはおもしろいのだが、アル中予備軍またはそれなりのアル中かと思われる俺にはなかなか恐ろしい体験談でもあった。 幸い、人と飲んでいるときはハイになって饒舌になり、そのうちクドくなるか店のオネーチャンとかのおっぱい揉んで叱られる程度で済んでいるが、毎日欠かさない家飲みは年々エスカレートして酒量が増えている。 本読んだりネットみたりフライいじりながら、無言で一人で飲むのがいけない。 スコッチのロックをボトル1/4程度では酔っていく感覚に至れない。 1/3でやや気持ちよくちょっと酔ったなこりゃ、という感覚になるが、翌日が辛いので1/4に留めている、といった現状。 この量を超えさせるストレスとかのスイッチひとつで、一気に文中にある「止めどなく飲んでしまう」「朝から一杯やらないと何もできない」ヒトになってしまいやしないか、という恐れをずっと抱きながら、毎日の唯一の楽しみといってもよいドボドボの濃いロック飲みながら夜更けの読書、というのはなかなか自虐的でいい感じでした。



「西南シルクロードは密林に消える」 高野秀行 講談社文庫

 高野ワールド炸裂。 UMAは出てこないが、中国からミャンマーに密入国して山岳ゲリラをガイドにそのままミャンマーを徒歩・船・象!で横断、インドへもゲリラのコネで密入国、という普通の放浪ライターが考えもつかない方法で西南シルクロードなる道を辿っていくとんでもねぇルポ。 相変わらず国境で苦労したあげく密入国する話に始まって(人民解放軍に捕まったときは実際相当ヤバいと思わされた)詳細な人物描写、しっかり文献もあたっているらしいバックボーン、何でも食いどこでも寝るバイタリティ、延々インドまで踏破していく様はそこらへんの旅行記とは一線を画す濃い一冊でした。

 



「すすれ!麺の甲子園」 椎名誠 新潮文庫

 ソウル出張前に空港でなんとなく購入。 文章は「書きなぐった感」が大いにあるが、それでも日本各地の麺を「食ってみたい」と思わせる内容。 伊勢うどんも高評価。 過去に味噌煮込みうどん及びきしめんエリアのヒトに伊勢うどんのことを「なんか横着な感じ」と言われて傷ついた事があったが、淘汰されずに残った歴史や味そのものも味噌煮込みごときに負けとらんぞバーロ。 この本では東海代表が味噌煮込みになっていたりしてちょっと納得いかん。 

 文章はおちゃらけの書きなぐりだが、写真には激しく食欲をそそらされた。

 ソウルの海鮮鍋料理店では、スキヤキ鍋の中央部分がへこんで深くなっている日本では見かけない鍋で海鮮鍋をよばれたたのだが、その深くなっているDeepな部分に細めのうどんが沈んでいた。 基本海鮮のダシに韓国らしく唐辛子の味付け。 赤魚、エビ、イカ、蛸、葱、豆腐、糸コン、白菜、キノコその他諸々に隠れて最後に深みの奥底からうどん登場というシュチュエーションに今読んでいるこの本が湧き上がってきて狂喜しつつむさぼり食った。 うどん玉おかわりして黙々と食しました。 韓国の良いところは、どんな店・地方でもそれなりに食える、というところ。 日本食至上主義ではないのだが、だいたいにして海外のメシで「うまい!」というのは少ない。 その点韓国はグルメ気取りでないなら何でもウマイのがエライ。 露天商の食っても腹壊す心配も殆どない。 中国はそうもいかんのだな。 4千年の歴史とか四つ足は机、飛ぶ物は飛行機以外は何でも食う、といった中華料理賛美?の文章・声は腐るほど見聞きするけど実体験として中国本土で美味い!と思った経験は殆ど無いのだからしょうがない。 8月に行った九寨溝というチベットの入口に位置する町では好き嫌いの無いオイラでも一口食ってごめんなさい、というもの続出。 地場産のヤクだけは「おぉこれがヤクヘアーのヤクの肉なのか、お世話になっております」ととりあえず食っといたが美味いモンではなかった。 この本に感化されたわけでもないが、オイラもいろんなとこでメシ食っているのでまとめてみると極私的におもしろいかもしれぬ。



 

<10.10.30>

○賀東「コップクラフト」ガガガ文庫 軽い読み物に飢えていたおり、同作者によるライトノベル「フルメタルパニック」が面白かったことを思い出して、別の作品も読んでみることにした。作者はアニメの脚本家でもあるようで小説作品自体は多くなく、実質2作品しか出ていなかった。で読んでなかったほうのコップクラフトであるが、これも面白かった。太平洋上に現れた魔術の飛び交う異世界とのゲートを通じて、人や文化が行き来し、犯罪や諍いも生まれるという設定で、地球側の腕利きの警察官が、異世界から派遣された剣士(美少女)と組んで事件を解決するというモノ。互いの文化的素地や立場の違いから反目し合っていた2人がドタバタを通じて認め合うようになっていくという、刑事物では王道のパターンだが、エピソードも面白く文章も適度に軽く軽快でスカッと楽しめた。

 

○北尾トロ「テッカ場」講談社文庫 筆者お得意の「見てきて書く」レポート風のもの。美術品や競走馬のオークション会場や、アイドル撮影会、コミケ会場、バーゲン会場といった、人々が熱くなる現場にもぐり込んでその模様を書いている。人々の熱さが冷静な視点から報告されていてなかなか興味深かった。

 

○藤原正彦「祖国とは国語」新潮文庫 ゆとり教育やら英語教育重視やらを真っ向否定してくれて気持ちよかった。英語なんてのは使う必要ある人が一生懸命習うか、通訳雇えば済む話。必要以上に時間かけるのは無駄というのは全く同意。円周率をおよそ3とした愚行についても、簡単にわかる図まで書いてミソクソにけなしてくれていて気持ちよかった。

 後半、老いたお母さんをつれて、生地の旧満州を訪れる話が書かれていたが、筆者は実は新田次郎の息子であった。知らずに読んでいたことを恥じる次第。

 

○みうらじゅん「色即ぜねれいしょん」光文社文庫 ユルキャラやら仏像やらミュージシャンやら漫画家やらエッセイストやらよくわからんみうらじゅんの自伝的青春物語。ボブディランにあこがれる文化系童貞野郎の青春モノ。何というかおじさんは最近、自分の学生時代とかを思い出すと、いろんな思いが去来してたまらんぐらい胸が切なくなったりするようになった。歳のせいか。戻りたいとは思わないが、あの時代にしか感じられないモノや経験できないことが沢山あってそれはちょっと大事なモノだと感じたりしている。物語はギター少年の話で、釣り少年だった当方とは共通する部分が少ないけど、そんな気持ちを思い出させる青春特有の匂いがした。

 

<10.9.14>

○滝本竜彦「超人計画」角川文庫 24年間人間彼女無し、前作小説を書いてから2年ほぼ仕事も手につかずダメダメな引きこもり生活に逆戻りした筆者が、逞しい超人となり、人間彼女をゲットするために立ち上がる。という設定で渋谷でデートをセッティングしてもらったり、エロ書籍を燃やしたりと奮闘するが、結局ダメダメな感じが笑えるエッセイというか妄想混じりの体験記。ダメダメな方向に行きがちな作者を「ダメ!ゼッタイ!」と励ます脳内彼女「レイ」の存在が笑える。でも文庫後書きで結婚の報告があった。「良くできました。」

○高野秀行「怪獣記」講談社文庫 辺境作家の本領発揮。トルコのヴァン湖のUMA、ジャノワールを探しに現地ガイド、ジャーナリスト、日本人学生、カメラマンと辺境作家のチームでずんずん進む。聞きこみ調査では、VTRが偽物臭いとわかりがっかりだったが、最後の最後で本人達が湖に浮かぶ何かを目撃撮影してしまうという大どんでん返し。結局、正体不明のまま帰ってくるが今回はかなりUMAに近づけた感がある。大まじめに訳のわからないものを探し求める姿勢が相変わらず面白かった。結局、謎の物体は何だったのだろう。学者の説明にあったガスを含んだ湖底の泥というのが妥当なところか。

 

○中島らも、ミスター・ヒト「クマと闘ったヒト」MF文庫 プロレスの内幕曝露本的な対談集。カルガリーでプロレスラーとして活躍し後進の指導にもあたり、帰国後お好み焼き屋さんを経営していたミスター・ヒトに格闘技好きの中島らもが、プロレスの裏話を聞く。格闘技好きの当方としては楽しめたが、書かれたのが既に10年前で著者2人とも故人だし、話題に上るレスラーにも亡くなった人がけっこういて時の流れを感じる。一時期プロレスの曝露本はけっこう流行ったので、今更ショッキングというほどの内容ではなかったが、いろんなレスラーのエピソードや裏の顔を垣間見ることができてそれなりに面白かった。

 

○竹内久美子「遺伝子が解く!その愛は、損か、特か」文春文庫 竹内久美子版人生相談とでもいうべきこのシリーズも今回がラストのようである。生物学の視点、特に遺伝子に着目した考えかたで、浮気からハゲからスパスパと切り込んで時に脱線しつつも名回答を楽しませてくれていただけに残念だ。今回もいろいろと面白かったが、中でもメダカのオスのヒレが大きいことについて、それは産卵の時にそのヒレでメスを包み込むことに関係するのだが、当方もどこかで書いたのと同様「教科書でその理由まで教えてくれてたら生物に対する興味もさらに湧くのに」という趣旨のことが書かれているところがあって、やはり見ている人間は見ているものだと援軍を得た気持ちがした。

 

○本谷有希子「乱暴と待機」MF文庫 かなり無茶苦茶な性格設定の登場人物が出てきて、一種異様な状況のもと話が進むのだが、その異様さが陳腐にならない独特のリズムがあり、読んでいて引き込まれる。この作者独特のリズムだ。書かれているテーマに興味があるわけでもないのだが、この作者の作品はこれまですんなりと楽しめてきた。何が良いのかうまく説明できないが、波長が合うのか文体が合うのか妙にはまってしまう。今後も要注目の作家だ。

 

 

<俺の読書 05Sep2010> 

ナマジへ

こうも暑くては釣りに行く気にもなれず、部屋に篭って月末に控えたマレーシア遠征の準備をするだけの毎日です。 昨年に引き続き2度目のマレーシア、準備するフライパターンも思いっきり絞られてキャムシグラーとレニーウォラーポッパーの2種のみ、という、普通の遠征では考えられんシンプルさやけど、それでもしかし遠征前になると色々と準備するものがでてくるのですな。

 先ずは一匹、というのは当然として、生涯キャッチ10本、というのを秘かに企んでいる。 10本釣ってりゃ、少々能書きタレても許されるでしょ?

 ナマジは今年はどこ行くん?

 

  「歩兵の本領」浅田次郎 講談社文庫

 「シェエラザート」、「鉄道員」と世界各地のカジノでの奮戦記「カッシーノ」、ぐらいしか読んだことなかった浅田次郎、カッシーノでは「このおっさん只者ではないな」と思わせる、世捨て人のようなカジノでの立ち回りが書かれていたが、やはり只者ではない経歴の持ち主でした。

 元自衛隊員とは知らなんだ。 学生運動吹き荒れる時代に在籍していた、そのときのエピソードを基にしたエッセイというか短編小説。 戦争はしない、軍隊でない軍隊、という矛盾をニヒルに、かつ読むものに笑いを与えつつ書かれている。 自衛隊を含め軍隊という組織では徹底的に個というものを無くしていくものだが、かえってその裏に隠れた個性が際立ってくる、という内容でオイラ的にはオモシロ本でした。

 

 □ 「長靴を履いた開高健」滝田誠一郎 朝日文庫

 最近、オーパの完全自筆原稿の復刻版とかも出版されていて食指が動くが、遠征控えて緊縮財政なので我慢している。

 長靴を履いた‥‥、要するにウェーダー履いて釣りしてるときの開高健のことですな。

 フィッシュオン、オーパシリーズ、もっと遠くもっと広くシリーズの裏話満載で、我ら開高健を読んで育った世代の釣師には目からウロコというか、膝を叩くというのか、まぁそんな感じです。

 開高健は本当に釣りがうまかったのか、などという半ばタブー?のようなテーマにも突っこんでおったり、夏の闇の「ウンコちゃん」「ネズミちゃん」のネズミちゃんのモデルを実名で特定していたりで、ちょっとドキドキさせられました。

 

 □ 「不肖・宮嶋のビビリアン・ナイト イラク戦争決死行」 宮嶋茂樹 祥伝社黄金文庫

 くだらねぇ、けど好きなんである。 アタマパーな時でも活字だけは必要な時ってあるよな?

中身は違うが椎名誠の日記エッセイとかに通じる、お手軽読書向けの一冊。

この人だいたいいつもジャーナリストビザを取る苦労話しからなんやけど、今回は戦車の砲撃を受けるという恐ろしい体験記もあり笑ってしまいます。 巷に溢れる貧乏旅行記なんぞより数倍おもろいで。

 

 □ 「そうだったのか現代史」池上彰 集英社文庫

 池上さん、ブレークして最近テレビで露出しまくってます。 自慢するわけではないが、オイラはかなり昔から「週間こどもニュース」しっかり見ており、「学校の先生はこういう人がせなあかん!」と強く思っておりました。 日本全国数万の先生がた、池上彰より分かり易くおもしろい授業を出来るひとがおりますか?

 現代史ということで、ドイツ東西分割、イスラエル建国、中国と台湾、文革、ベトナム戦争、といった、誰でも知っている言葉にも関らず、実際は殆ど解っちゃネェ、という歴史をアホでもアル中でもわかる言葉で解説してくれてます。 しかし悲しいかな、アル中には記憶力が殆ど無いのであった‥‥。

 

 □ 「蒼き狼」井上靖 新潮文庫

 チンギスカンの生涯を描いた長編。 アル中もたまにはブンガク作品読むんです。

 めったやたらと征服しまくっていく様子は、ヤマトーンチュには理解不能。 出自に対する疑念をエネルギーにして征服していく、という骨子であるが、400頁を超える長編でもデティールまで書ききれてないのが残念。 例えば、他国への出征を「3年の月日がかかった」みたいな感じで一言で終わらせてしまっているシーンが多く、オイラとしては長征の旅の途中の細かな出来事や戦闘シーンや戦後処理まで読みたかった。

 ちなみに先週、西安に行ってきたのだが、シルクロードの出発点という、歴史ある街の貫禄を感じさせられた。 メシは相変わらずマズかったけど。

 

 □ 「世界ぐるっと朝食紀行」西川治 新潮文庫

 「世界ぐるっとほろ酔い紀行」のシリーズ。 世界各国の庶民の朝メシ体験記。

西川さん、料理研究家として60冊以上の著作があるとの事だが、モロッコやインドネシアやフィリピンやモンゴルで、庶民の朝メシ食ってホンマにウマいんか? 本当のホントのところを言うてみ。 オイラもちょくちょく海外行くが、屋台とか地元民の行く店で今までウマイな、と思ったのはマレーシアと韓国とイタリアぐらいやぞ。 一般的に美味いとされる台湾にしても屋台となると、まずゲロとウンコと唾石の混じったような臭豆腐の匂いが漂ってくるし、中国なんか国民性からしてとにかく不潔っぽくてダメ(調理場なんどか覗いたこともあるが酷いモンです)、味ももちろんダメ、アメリカやらオーストラリアやらNZは清潔さはクリアするものの料理とは言うには程遠いカロリー補給の為だけな食事やし、結局日本人には日本食がイチバン、とオヤジくさい結論に達するのでした。

 

□ 「麦酒泡之介的人生」椎名誠 角川文庫

 「むは」シリーズの改題本。 電車通勤のお供にどうぞ。

 

 □ 「勝負の極意」浅田次郎 幻冬舎文庫

 やはり只者ではなかった。 自衛隊出身にしてサラ金取立て屋を経て競馬で食ってた、とのこと。

その間もずっと「自分は小説家になるもの」として毎日欠かさず小説を書いていたというからその執念も只者ではない。 小説家になるまでの修行時代と、競馬の指南書からなるエッセイ。

 オイラは競馬も麻雀もパチンコも博打と名のつくものは一切しないが、釣りは殆ど博打のひとつだと思っている。 遠征釣行なんかその最たるもので、ウン十万かけて行ってみたは良いが海やら虫やら天気の状況悪くほぼスカ、というのは何度も体験している。 これを博打と呼ばずに何と呼ぶのだ。

「私は根がマメなうえに性格がセコイので、20年以上馬券の収支明細と必要経費も帳面につけている‥‥」というくだりには同志を見つけた気分にさせられた。 告白するまでもないが、オイラも根がマメ?で性格がセコイので、ここ4年ほど、ちょっとしたきっかけで釣りにかかる経費一切をエクセルに付けているのだった。 続けざまに「一般人が競馬に使ってよい金額は、年収の10.2%まで」だとか、「道楽と呼べるのは年収のせいぜい一割」とくるのだが、その説でいくとおいらの釣りはとうに道楽の範疇を超えているらしい。 競馬知らないオイラが読んでも、充分楽しめた一冊。

  

□ 「いちばん危険なトイレといちばんの星空」石田ゆうすけ 幻冬舎文庫

 「行かずに死ねるか95,000km自転車世界一周」の続編。 続編というか、そのとき感じた色々な世界一を書き綴ってあるエッセイ。 巷に溢れる放浪記、の類で、可もなく不可もなく。 中国のメシやらトイレといった語り尽くされた話題もしっかり載っていて西安行く時に読みました。

 

<10.8.25>

○鴨志田穣「酔いが覚めたら、家に帰ろう」講談社文庫 アル中もの。アル中ものでは中島らもの「今夜全てのバーで」が大好きだが、鴨志田氏のもなかなかであった。多くの人間は酒でなくとも何かに依存していて、わかっちゃいるけどやめられないという部分はあると思う。その辺から来る、わかっちゃいるけど飲んじまう主人公へのシンパシーというか「どうしようもないな〜」感が心地良い。結局、血を吐いて死にそうなアル中状態で入院するのだが、退院は検査でガンが発見され余命幾ばくもないことが明らかになってというのが切ない。漫画家の西原理恵子と元夫婦で2人の子供があり、籍を抜いてからもあれこれと心配してくれたり家族としてつながっている様が暖かい。

 

○藤原正彦「若き数学者のアメリカ」新潮文庫 開高健がNYについて、「若い時に来たかった」と書いていたと思うが、若き筆者の感じたこと見たことが書かれているのを読むとその言葉がなるほどと思われる。一数学者として無様な様は魅せられないと気負った様子や、異国の地でなぜか愛国心に目覚めたりする様子など、若い筆者の張り切りようが伺える。また、いろんな文化が入り交じった「アメリカ」という文化の包容力の深さとその逆の差別意識の実例なども見て取れる。筆者の力一杯の奮闘が心地よい。

 

○賀東招二「フルメタルパニック 7〜12」富士見ファンタジア文庫 ラノベについてはそろそろ発掘し尽くした感があるのですが、これは面白かった。例によってネットアニメで6巻までの内容を視聴、その後を本でというパターン。ちょうど最終刊の12巻が出たところであり、感動のエンディングまでゴンゴン読み進んだ。内容はSFロボット学園ものとでもいうような感じで、パラレルワールド的な割とハードSFな設定で、ヒロインかなめを含む一部の人間には兵器の技術に関することなど特殊な知識が「囁かれる」というのが大きな伏線になっていて、かなめが軍事組織からその知識を狙われたため、世界の紛争解決のために作られた傭兵組織ミスリルに所属するアフガンゲリラ出身の主人公ソースケが、高校に転入しかなめを警護するというお話。学園では、戦争バカのソースケがあちこちに地雷を埋めたり、不審物を爆破処理したりと全くズレた行動でかなめにハリセンやスリッパでシバかれたりけたぐりまわされたりするというドタバタコメディ。非常時には主人公は人型のロボットに乗って格好良く活躍し、戦闘シーンもなかなか迫力があって良かった。

 後半、敵組織アマルガムにかなめがさらわれるのだが、「悪魔の城にさらわれたお姫様をナイトが救い出す。」という古今東西おなじみの王道路線でガッチリ楽しませてくれた。何度もぎりぎりで救出に失敗した末に大円団を迎えてめでたしめでたしなのであった。

 

○滝本竜彦「ネガティブハッピーチェーンソーエッヂ」角川文庫 なぜか毎晩チェーンソーで襲いかかってくる不死身の怪人と戦う美少女と、ボンクラ高校生が出会って話が展開するというややシュールな設定のお話。引き籠もり体験を元に書いた「NHK(日本引きこもり協会)にようこそ」という同作者の別小説がアニメ化されており、視聴したところ面白かったので、デビュー作であるこの作品も読んでみたところである。設定は不思議な感じだが、お話自体は青春時代の漠然とした不安が良く表現されていて、ボーイミーツガール的な要素もあわせて青春時代を思い出しながらなかなかに楽しみながら読めた。

 

 

<10.7.19>

○「とある魔術の禁書目録(〜20巻)」電撃文庫 面白かったんで勢いに乗って既出の全巻読んでしまいました。アニメ2期作成も決定したとか。まさに少年ジャンプのノリで、だんだん敵キャラがインフレ気味に強くなったり、初期の敵が味方になったりと王道をいく展開でした。20巻時点で第3次世界大戦始まっちゃってえらいことになってます。主人公の説教臭いぐらいに熱いノリとバランス取っているのか適度にギャグパートが楽しく散りばめられているのもポイント高い。他にも面白いライトノベルはないかと本屋でペラペラ探しているのですが、美少女キャラが前面に出てくる、もろオタク対象っぽいのがほとんどでなかなか良いのに当たるのは難しそうです。

 

○関野吉晴「グレートジャーニー4」角川文庫 いよいよアフリカまで行くのだが、人類発祥の地を、家族の痕跡の移籍があるラエトリとしたところが意表を突いた。化石の発掘現場だと次々に新しい(より古い)ものが見つかったり、諸説入り交じっていたりするのでこういう選択になったのだろう。アフリカの人類の祖先としてはルーシーと呼ばれる女性の化石が有名ではあるが。

 とはいいつつも、アフリカの旅は意外に短く、それよりもチベットの聖地を行く様子の方が詳しく紹介されていた。イスラム圏も越えていくので、国境を両側から攻めねばならない状況などもあり、政治的にも困難な旅だったようである。いずれにせよ旅の一応の完結を祝福する。よくやったものだ。

 

○石川直樹「全ての装備を知恵に置き換えること」集英社文庫 若い冒険家のエッセイ集。読んでいると今更ながら若さに嫉妬を覚える年になったことを痛感する。豊かな才能ともちろん努力もあるのだろうが、世界の高峰を攻め落とし、写真の個展を開き、冒険家、芸術家と交流し、飯を食い酒を飲み、新しく熱気球に挑戦したりとその活躍にはうらやましさを覚える。年のせいにする自分の心のありようにふがいなさを感じる今日この頃。

 

<10.6.5>

○町田康「猫にかまけて」講談社文庫 町田氏が飼う猫との交流。思い通りにならない猫との日々が独特の文体で楽しく紹介されているほかに、病気や老衰で死んでしまった猫とのエピソードも詳細に書かれている。氏と奥さんは、病床にある猫を最後まで看病して看取っている。生き物を飼う、生き物とつきあうのに必要な真剣さを思い知らせてくれる。安易なブームで同じ犬種ばかりが目立つようになったり、飼いきれないペットが捨てられて問題を起こすような状況が多々見受けられるが、生き物を飼うというのはそういう軽いものではないと思い起こさせてくれる。猫好きが猫を猫ッかわいがりする様が書かれた本。

○宮田珠己「旅の理不尽」ちくま文庫 タマキングのデビュー作の再文庫化だそうだが、デビュー作から氏のなんだかよく分からないふざけたようなものの書き方、視点は健在で笑わせてくれる。アジア方面の旅の紹介なのだが、おもいっきりボられたり、たかられたりとさんざんな目にもあっているが、独特の文体はからっとしていてそれすら笑いに昇華している。

○藤原正彦「遙かなるケンブリッジ」新潮文庫 ケン一おすすめの、数学者による、イギリス在住時の様子を綴ったエッセイ。異文化との衝突から、溶け込み親しむまでの過程が、割とおっとりとした文体で語られており、読み進むと筆者同様、イギリスという国やケンブリッジ大学の一見取っつきにくくも暖かい雰囲気や、歴史の重さ等を好ましく思うようになる。他の著作も読んでみることとしよう。

○鎌池和馬「とある魔術の禁書目録」電撃文庫(7巻〜) またまた、ネットでアニメ視聴、その続きのライトノベルを購読というパターン。まだシリーズ継続中で20巻まで出ているので続きが楽しみ。ライトノベルには「剣と魔法のファンタジー」の世界を扱ったものが多くその手の作品はハッキリ言ってオジサンはついて行けず苦手なのだが、この作品は半分魔術もの半分超能力ものという感じでファンタジー色よりSFフレイバーが強く何とかその世界観に馴染めた当方としては珍しい事例。内容は魔術も超能力も打ち消す右手を持つ主人公の少年が、様々な事件に巻き込まれるバトルもので、カワイイ女の子キャラや敵キャラをはじめ多くの魅力的なキャラクターが出てくる。要するにドラゴンボールとかジョジョとかのジャンプ系少年誌マンガのノリです。ライトノベルをいくつか読んでみて、その位置づけが何となく把握できてきた気がします。まさに少年誌マンガの小説版と考えれば良さそうです。ヒットするとすぐアニメ化するところや、極端なエログロは自粛されているところ、人気シリーズは長期化することなど、非常に似ています。本屋でライトノベルの棚を見ていても、なかなかついて行けなさそうな作品が多いですが、読めるシリーズ1つみつけると外伝含めてシリーズ全体で10巻以上というような物もざらにあるので、今後もよさげなモノを探したいと思います。

 

 

<10.5.22>

○桐野夏生「東京島」 新潮文庫 遭難して、ほとんど人の来ることがない南の島にたどり着いた、1組の夫婦と、その後に何度かたどり着いた人間とが、極限状態で繰り広げる生活と疑似社会と、人と人との関係。それがドロドロと描かれている。

 ほとんどの期間、唯一の女性であった最初の夫婦の嫁ハンの方の視点がメインで進むが、その他にも、発狂した者や、仲間はずれにされたものの視点も交錯して、えらく人の心の醜くたくましい部分がえぐり出されているように感じた。特に嫁ハンのなんとしても生き延びて島を脱出してやろうとする執念深さ、少しでも自分の立場を有利に保とうとするあざとさが、たくましく感じられるほどに書かれていた。なかなかに読み応えのある1冊だった。

 

○椎名誠「麦酒泡之介的人生」角川文庫 こちらは、読み応えサクサクの椎名誠の日記っぽいエッセイ集。体調悪かったりして疲れている脳みそにも優しい読みやすさで助かる。本の雑誌に連載していた関係から、椎名誠おすすめの本とかが沢山出てきて買いたくなるのだが、けっこう大判の高そうな本や古くて入手しにくい本も多くて指をくわえるのみの場合が多い。まあ、文庫本の帯に「椎名誠氏絶賛!」とあれば迷わず買おう。当方引っ越しが多いのであまり大判の本を増やしたくないのである。文庫本を心から愛する。

 

○関野吉晴「グレートジャーニー4」角川文庫 今回はシベリアからゴビ砂漠まで行く。ロシア少数民族のシャーマンのことが書かれていて、現在ではシャーマンの治療は西洋医学がカバーしきれない、ストレスの緩和など心因的な部分や、患部のみでない全身的なケアなどの部分で西洋医学と連携しつつ行われているようだ、ちょうど漢方や針灸と西洋医学との関係を想起させる。モンゴルでは遊牧民の少女と知り合いになるが、悲しい結末が待っていた。砂漠のラクダ行では、砂の侵入を防ぐ目や鼻の作りなどラクダの砂漠への適応が興味深かった。これからアフリカまでもいろんなコトがある長い旅になるのだろう。

 

○石田衣良「夜を守る」双葉文庫 20代の若者4人が、上野の街を舞台に、放置自転車の整理やゴミ拾い酔っぱらいの介抱などを中心に街を良くするためにできることをやるためのチームを組んで行動する。地味ながらも人々にちょっと感謝されたりしながら、時にトラブルや事件にぶち当たり、何とか自分たちの答えを見つけていく。夜の街と若者ということで、著者の代表作「池袋ウエストゲートパーク」にちょっと雰囲気が似ているが、こちらはこちらでなかなか良くできていてそれぞれ面白かった。石田衣良の書く若者像は、捨て鉢だったり虚無的だったりはせず、迷いながらも地に足を付けて歩んでいく姿が心地よい。現実の若者がそうでなくなりつつある、そうで無くならざるを得ない情勢だからこそ心に響くものがあるのかもしれない。

 

<10.5.6>

○垣根涼介「真夏の島に咲く花は」 垣根涼介といえば「南米マフィアの血なまぐさい抗争」、「改造車のハイスピードアクション」等々のイメージがあったので、クーデター下のフィジーが舞台ということで、反政府軍のメンバーによる息詰まるハードアクションが展開されるのかと思ったら、意外なことに、クーデターといっても割とのんびりとした展開の中での、若い男女の青春群像とでもいうような内容だった。フィジーのクーデターは、働き者で富裕層のインド系住民とのんびりしていて経済的には恵まれないフィジー人の対立から起こったようだが、その対立を背景に、登場人物達が悩み、傷つき、大きな時代の流れに流されていく。その中で日系人である主人公の親友フィジー人のチョネのいかにも南の島の住人らしい、どっしりとあるいはおっとりとしたかわらなさが印象に残る。

 

○柴田哲孝「DANCER」 読んでいる間中「DNAに記憶はやどらないでしょ!」という突っ込みが頭から離れませんが、その部分をまあ、そういうことも有りとして読むとなかなかに面白かった。本人がモデルと思われる有賀シリーズの第3弾で大きくなった息子との親子の絆有り、いつものハードボイルドな有賀の行動有りで、大学の研究室から人を殺して逃げ出した謎の生物ダンサーを追いかけていくストーリー。退屈せずに読めた。

 

○西尾維新「傷物語」講談社ボックス 今回もネットでアニメ視聴、その続編部分のライトノベルを購読というパターン。アニメは「化物語」という題名で、主人公の少年アララギ君が、怪異に困っている美少女達を怪しい専門家の助けも借りながら助けていくというお話。で、ゲゲゲのような妖怪退治のバトルものというよりは原因を取り除いたりして解決していく。ストーリーも面白いが、軽易即妙な言葉遊びの部分が特徴でなかなか洒落ていた。主人公はなぜか傷の治りが早かったりする能力を持っているのだが、その原因となったエピソード「化物語」の前日談が「傷物語」になっている。読み始めてすぐは主人公の独白説明調のシーンでイマイチつまらなかったが、「化物語」でも重要なキャラクターだった委員長ちゃんが出てきたあたりから加速度的に面白くなっていく。会話のやりとりが言葉遊び的に洒落ていて面白いのと、委員長ちゃんのスカートが風でめくれてパンツが見えたシーンの詳細な説明、妄想あたりのエロ要素もなかなかオジサンもドキドキさせられるし笑えた。主人公は吸血鬼に噛まれて吸血鬼化して、吸血鬼ハンターとバトルしまくってそのあたり少年誌の漫画のようで楽しめる。最終的に大円断というよりはちょっと悲しい結末で、主人公はちょっと吸血鬼の能力を残したままになるというお話。

 

○西尾維新「偽物語(上・下)」講談社ボックス 勢いに乗って化物語シリーズさらに読む。今回は主人公アララギ君の妹がメインの話だが、メインストーリー以外の、おなじみの登場人物とのギャグのやりとりが妙に面白くツボにはまる。また、上巻では主人公が彼女(凶悪なツンデレ系)に後ろ手手錠で監禁されて、ぬらした指をなめるという変態的な水の飲み方を強要されたり、「トイレはどうするの」という問いに、結局開放されて使わなかったモノのおむつを使用されそうになったりというエピソードが強烈だった。下巻では衝撃の歯磨きプレイが!歯磨きプレイとは他人に歯を磨いてもらうのをどれだけ耐えられるかという我慢比べのようなものであるが、歯磨きというどうということもなさそうなものだが、実は他者の手で体内粘膜をシャコシャコしてもらうという行為には非常な快楽が伴い、気持ちよすぎて耐えられないという話。ほんとかどうか知るよしもないが、ともかくその部分の描写が変態的な面白さに溢れ笑えた。全編通して作者自身ノリノリで楽しんで書いている雰囲気がありありで笑いながらずんずん読めた。面白いシリーズだ。まだ続きが出るようなので期待したい。

 

<10.4.26>

関野吉晴「グレートジャーニー3」角川文庫 今回は旅の最難関「ベーリング海峡越え」があって、なかなか苦戦していた。その後は、ロシアの湿地帯を馬で渡ったり、ロシアの原住民とクジラやセイウチを狩ったりと楽しそうな模様。巨大な獲物を仕留める快感はやっぱり特別なものがあるんだろうなと想像。旅の続きがまだまだありそうで続編も楽しみだ。

○支倉凍砂「狼と香辛料」電撃文庫 9,10,12,14巻  しばらくこのシリーズにハマって、途中の外伝的な巻を除いて出ている巻は読破しました。基本的なストーリーは、行商人ロレンスと狼の化身で普段は耳とシッポはあるけど人間の少女に化けているヒロインのホロが、遠い昔に後にしてきたホロの故郷を探して、いろんな街で騒動に巻き込まれながら、道連れも増えたりしながら旅ゆくお話。だんだん故郷に近づいてきてもうすぐシリーズ完結する予感。

 しかしながら感心するのは、男と女というか男とメスの話でかつメインの話ではないものの2人の関係も重要な要素なのに、一向に男女の仲が進展しないというか濡れ場(ああ下世話なオッサン丸出しの単語)が無いこと。今時の中高校生はこんな健全な話で納得してるのか?逆にネットでもなんでもあからさまにスゴイエロなものが溢れているから、逆にこういう純な感じが受けるのか?そのへんオジサンにはよくわからんが、けっこうオジサンもやきもきしながらコトの進展を注視して楽しんでいる。14巻では主人公、無理矢理押さえつけてチューして殴られてた。頑張れ。

○大沢在昌「氷舞」「灰夜」光文社文庫 新宿鮫シリーズの2冊、このシリーズは10年ちかく前に何冊か読んだが、その後読んでなかった。本屋の棚を見るとシリーズ脈々と続いているようで久しぶりに読んでみた。主人公の一匹狼の刑事がハードボイルドな格好いい活躍をする。ちょっと格好つけすぎの感があるが、巨大な敵に単身挑んでいく様は気持ちいい。難しく考えずに読めるヒーローもの。

 

<10.4.6>

○椎名誠「海を見に行く」新潮文庫 フォトエッセイ集。海の写真とそれに関連する文章からなる。椎名誠は油断していると写真が上手いことに驚かされる。昔モンゴルの紀行文を読んでたときに写真はオーパシリーズの高橋昇あたりだと思っていたら写真も本人撮影でびっくりしたことがある。今回の海の写真もなかなかよかった。文章は昔読んだ「岳物語」からの抜粋なんかが懐かしかった。写真多めで文字数少なく値段高めなのでケン一にはあまり薦めない。

○東野圭吾「容疑者Xの献身」文春文庫 このミステリーがスゴイだかで1位取って直木賞も取ったそうな。最後のトリックの種明かしを読むと唸らされる。このトリック思いついたとき作者はその時点で「勝ち」を確信しただろうという見事なトリック。参りました。トリックにたどり着くまでの文章もドキドキ展開を読みながら飽きずに読める。いろんな賞とったのも納得。でもなぜだかミステリーって苦手意識があって、この作家のほかのシリーズも読んでみようという気が不思議と起きなかったりする。

○桐野夏生「I’m sorry,mama.」集英社文庫 ヒロイン無茶苦茶。置屋で誰の子供ともうやむやなまま育てられるという愛を知らない育ち方とはいえ、気に入らないヤツには灯油かけて火を付ける、ホテルで働いていたときには事故死と見せかけて客を殺して金品強奪。万引き、売春当たり前、都合が悪いやつは殺して埋めるといった「鬼畜」ぶり。いっそのこと小気味良いぐらいだ。誰もがそういう「悪」の部分を持っているから魅力的な作品になっているという解説は当を得ていると思ったが、心の中でそういった殺意なり敵意なりを持つことと、それをむき出しにして行動することとはかなり差があるだろう。こういう話を面白かったと書くと人格疑われるかもしれないが、楽しめました。

○支倉凍砂「狼と香辛料」電撃文庫  いわゆるライトノベル「ラノベ」というヤツに分類される小説で、当方の偏見としては「ラノベ」なんぞは、中高生の腐女子がキャッキャと喜んで読むもので、大人の男が読むもんではない。と思っておりましたが、思わず読んでしまってます。  

 ちょくちょくネットでアニメのタダ見を楽しんでいるのですが、面白いお勧めのアニメとしてアニメ版「狼と香辛料」があがっていて、見たら面白かったので、ストーリーの続きを小説版でも読みたいと4,6,7,8巻と買ってしまいました。  

 内容は、中世の行商人の青年が、村で長い年月豊穣をもたらす神として扱われていた狼の化身の少女と、ふとしたきっかけから行動を共にし商売しながら旅をしていく、というファンタジーもので、剣も魔法も出てこない異色のファンタジーと紹介されています。そのかわり中世の商売人の商いをめぐる駆け引きがスリリングに描かれており、それを軸に耳付きシッポ付きの狼娘「ホロ」と商人のロ レンスの恋の手前あたりのやりとりが絡んできます。が、そこはそれ大人向けではないので全然まったくやっちゃったりせず、小説だと5巻あたり、アニメは最終回でやっとチューしてました。40前のオッサンである当方も逆に新鮮でドキドキしてしまいました。アニメ版では特にですが「ホロ」がかわいらしく描かれているので、こっこれが「萌え」という感情か!と新たな感覚を開かれる思いをしました。

 たまには普段読まないジャンルも読んでみるモンですな。面白かったです。ライトノベルには挿絵がいっぱい入っているのも新鮮な発見でした。

 

<俺の読書 06mar2010>byケン一

□「全ての装備を知恵に置き換えること」石川直樹 集英社文庫

 若くて行動力があって写真や文章の才能もある若い人というのが日本にも自分が知らないだけで結構いるのですな。 2001時点で7大陸最高峰の最年少登頂記録保持者という著者紹介欄と、冒頭部分のイボン・シュイナードとの交流に惹かれて読んだ。 山だけに限らず、ホクレア号をはじめとする計器に頼らない伝等航海術に関ったりが、肩の力の抜けた淡々とした筆致で好印象。 

 題名の「全ての装備を‥‥」は知恵と技術を身につけることで、自然の中に入って行く時に身軽でいられる、という意味。 以前メールした「サバイバル」でもまったく同じこと言っていたな。

□「遺伝子が解く!万世一系のひみつ」竹内久美子 文春文庫

 理科がまったく不得手なおいらでも相変わらずおもしろすぎる。 遺伝子が解く!シリーズには必ず出てくる、シンメトリー・免疫力・エストロゲン、テストステロンというキーワードを意識しながら周りを見てしまう今日この頃です。 



<俺の読書 24mar2010>byケン一

俺の読書滞っているがもちろん読んでいないわけではまったくなく、読後感を書けてないだけ。 一冊読んだらその都度書きゃいいのにどんどん溜まってくると仕事と一緒で後まわしあとまわし、になりがち。 

というわけで、読後感はまだ書いていないので、予告と言うか、報告なのだが、藤原正彦ゆう数学者の書いたエッセイ、めちゃくちゃおもろいです。


早朝に中部空港で仕事を終えて、くるま運転しながら普段あまりつけないラジオをナニゲに聞いていたら対談でこの数学者のおっさんがしゃべっていた。 数学には美的感受性が必要、自然とは基本的に美しい、ニュートンのりんごも松井秀喜の大ホームランも結局はF=maで現され数学的美しさと一致している。 とか、本来日本人にはもののあはれや、はかなさや夕日や虫の声や四季のうつろいを慈しむ感性が備わっている。 日本人がモノ造りが得意なのは(工業製品であっても)、より美しい造形物を追求していく精神性をもつ民族だからだ、というような語りに朝焼けの高速を走りながら涙流してしまった。

「若き数学者のアメリカ」 新潮文庫

「遥かなるケンブリッジ」  〃

 「祖国とは国語」 〃

 「日本人の矜持」 〃

 「国家の品格」 新潮新書

と立て続けに読んだが、どれも間違いなくオモシロ本でした。

 教育実習生とか新任教師はもちろん、着任して数年で組合に染まってしまうバカ教師ども全員こころして読め、と語気荒くして言いたい(我らがふるさとの県教組は全国的にも悪名高いんで子を持つ親として今から心配である)。 


□「戦争を知っていてよかった」曽野綾子

 夜明けの新聞の匂い、シリーズ


□「グレートジャーニー 1・2」

 以前、新書で出ていたのは人文関係のウェイトが強すぎて少々難儀したが、文庫化されてこなれた感じ。 東南アジアあたりを貧乏旅行して文章かいてる奴らとは次元が違うな。


□「世界ぐるっとほろ酔い紀行」西川治 新潮文庫

 最近の椎名本で同じような「世界の酒飲んで酔っ払った日記」みたいなん読んだが(本どこかになくしてしまった)、椎名ファンとして申し訳ないのだが、西川治のこの本の方が読み物として上。

 椎名本のは多分雑誌掲載で一回ごとの原稿に制限があったと容易に推測される書きなぐりかた、尻切れトンボのような章も多かったが、西川本ではなかなか酒飲みのツボを突いた文章で「そこへ行って、飲んでみたい」と思わされる文章多数。 酒飲みでなくても楽しめるはず。

 

 

<10.3.17>

○大槻ケンヂ「ロコ思うままに」角川文庫 待ちに待った大槻ケンヂ本の文庫化。今回は短編集で、「オレは、責任も持ちたくない、わがままでいたい、赤ちゃんのような存在でいたい。」、「ロックこそ神が与えてくれた最上のプレゼントだ。」、「たとえ何が待っていようと立ち上がり進め」、というような、いつもエッセイで書いているようなテーマに沿ってそれぞれの短編が紡ぎ出されている。不条理に人を殺してしまう話2編がちょっと違和感感じたが、その他はサクサクと心地よく読めた。詳しい内容は既に思い出せないのでまた近いうちに再読しよう。

○椎名誠「どうせ今夜も波の上」文春文庫 日記のようなエッセイシリーズでなんと700回を数えるそうだ。シリーズだいたい読んでいるが、日記のような内容なので、ほかの紀行モノなどの裏舞台が読んで取れる。どうということはない話がメインで頭を疲れさせずに読めて快適。

○垣根涼介「君たちに明日はない」「借金取りの王子」新潮文庫 発注を受けて企業のリストラ事業を専門に行っている会社に努める主人公が、様々な事情を抱えた社員を自主退職に追い込んだり、たまに追い込まなかったりするというストーリー。短編の連作という形式で電車で読むには好適。主人公や登場人物の仕事への熱めの思いに、やや仕事に疲れ気味の当方はしらけたりもするが、基本的にこれらの話に含まれる「人情」的な部分に当方含め日本人は弱いような気がする。特に2冊目のタイトルにもなっている「借金取りの王子」の話はベタだとは思ったが、それでも泣きそうになった。けっこう人気のシリーズのようで、ドラマ化もしたようだ。

○東野圭吾「探偵ガリレオ」「予知夢」文春文庫 とあるアンケートの結果、日本の現代作家で最も人気のある作家になっていた東野圭吾。一度読んでみようということで、ドラマもやっていたのを目にしたことがある、ガリレオシリーズとやらを読んでみた。一見不可能な状況での犯罪を主人公の物理学者が、怜悧な頭脳で解決していくというシリーズ。サクサク読めて暇つぶしには好適。物理や科学の知識を利用したトリックもなかなか新鮮でよかった。基本的にミステリーを書く人のようで、あまりミステリーは得意でない当方の中では一等賞をあげるほどの作家ではないように思う。

○関野吉晴「グレートジャーニー2」角川文庫  2では、南米の北端あたりから中米通って北極圏まで行きます。今回の旅でいろんな少数民族を訪ねていくのですが、いずれも欧米文化との接触により、本来の文化が失われていっている過程のようです。民族固有の文化の中には、長い歴史の中で培われた知恵や幸せが詰まっているとも思うのですが、やっぱり欧米の圧倒的な物質文明を目の当たりにして、それに影響されないわけはないというところか。それでも各地で自分たちの文化を守る活動を行っている人々もいてその様子がレポートされていた。いわゆる「未開」の人が「文明化」されることにより、必ずしも幸せになれるかというとそうでもなさそうなのは薄々想像できるのだが。物質的に豊かになればそのために働く必要や、貧富の差が生まれる。開高先生の紹介していた小話が思い出される。

 −あるアメリカの大金持ちが、アマゾンで原住民をガイドにやとって釣り三昧を楽しんで言った「働きまくって金持ちになってこうしてアマゾンで思う存分釣りするのが夢だったんだ。」、それを聞いてガイドの原住民「何だアメリカで金持ちになることなんて案外つまんないんだな、そんなことならオレはガキの頃からやってるよ。」−

 

<10.2.15>

○熊谷達也「氷結の森」集英社文庫 日露戦争後あたりの当時の樺太とロシアを舞台にした物語で、主人公の男が、本土からの追っ手から逃れつつ、過酷な労働に精を出しつつ、おなごに惚れられつつ、時代の流れに翻弄されていく話。導入部のニシン漁のシーンの迫力に魅せられて一気に物語の世界に引きずり込まれた。長編だがグイグイ読ませる迫力に満ちている。しかし最後の方で何かグジュグジュと終息してしまったような読後感がありやや残念。

○本谷有希子「江利子と絶対」講談社文庫 当方にとって2冊目の本谷本、短編3つからなる。この人の書くモノは人間のひねくれてグチャグチャとした内面が描かれているのと、ポンポンと飽きさせないで物語を展開させていく書き方が特徴のようだ。読んでて引き込まれる。表題作は引きこもりの少女のエキセントリックな前向きさの話、3本目はホラーっぽい話で、いじめっ子といじめられっ子の心理描写が秀逸。一番面白かった2本目は、ハチャメチャに破綻したストーカーの女と、その女のストーキングの対象者の隣部屋に住んでいたがために生活に、心に土足で女に上がり込まれて振り回される冴えない男の話で、女の壊れッぷりと、妙にリアルな男のみじめっぷりに笑わされた。筆者の初期短編集であるらしく、後書きで良くこんな話を文芸誌が載せてくれたと本人も呆れている。文芸誌に載るような内容ではないとは思うが、中身が面白いことには満足しているような書きぶりに読めた。なかなかにしたたかな人であるとみた。

○関野吉晴「グレートジャーニー 人類5万キロの旅1」角川文庫 文庫化を待ってましたという感じで早速読みました。人類がアフリカで生まれアジアに進出し、ベーリング海峡が陸続きの間に北米に渡り南米の先端まで広がっていくという、人類発生から世界中への分散の歴史の最長コースである「グレートジャーニー」を人力で逆にたどろう、その途中でいろんな文化や人々にふれていこうという壮大な旅。今回は南米最南端からペルーまでの南米編。航空機の発達で世界は狭くなったといわれるが、人力で行くとなんと困難なことよ。椎名誠氏はたいがいの冒険記の帯で「激賞」しているが 、今回は「驚嘆」し、また解説も担当している。続きも早く読みたいモノだ。  

<10.2.10>

○本谷有希子「腑抜けども、悲しみの愛をみせろ」講談社文庫 愛読している漫画誌モーニングの後ろの方でエッセイを連載している劇団主催者にして小説家の代表作で映画にもなってます。エッセイではいつも適当におちゃらけた雰囲気を醸しているが、時々グチャグチャとした人の心理の裏側をなにげにつくようなことを書いているので、この人の小説はひねくれていて面白いかもと思い読んでみた。なかなか面白かった。劇団主催ということで戯曲を書くことも影響しているのかもしれないが、展開がドラマチックでダレるシーンが少なく一気に文章のリズムにもってかれた。期待通りグチャグチャとした人の内面が描かれていて楽しめた。それぞれのキャラクターが個性的で良かったが、兄の純真と妹の邪心が特に印象的。他の作品も読んでみたい。

○ 柴田哲孝「RYU」徳間文庫 哲ちゃんにはどうしても「バラムンディー」に始まる素人臭い釣り人のイメージがついてまわるが、小説は想定外に面白いことに気付かされ最近何冊か読んだ。「RYU」は沖縄が舞台で、UMAの記事を書いて生計を立てている風来坊ライター有賀の出てくる話で、沖縄中部の基地そばの小さな村で起こった「竜」による騒動を解決する話。釣り有り、生物の話あり、魅力的な女性有り、男の友情有りと単純明快に楽しめるエンタメ小説。出てくる釣具がシマノではなくアンバサダーなのと登場人物全員が酒飲みなのはさすがは大藪春彦賞作家という感じ。酒飲みといっても間違ってもワインを飲んで蘊蓄をたれたりはしない。ビールもしくはバーボン、沖縄では泡盛も可である。

<10.1.31>

 押し入れの本を処分するモノととっておくモノとに分けていたのだが、気になる本があると再読し始めたりするので作業が進まない。椎名誠の「にっぽん・海風魚旅シリーズ」講談社文庫が、再読してなかなか面白かった。椎名誠が海沿いの町に出かけて旨い魚を食べたりビール飲んだり地元の人と交流したりという諸国漫遊記のようなものだが肩の力を抜いてさくさく読める。この人の文章はあんまりごちゃごちゃせずに素直に響いてくるのがいいような気がする。

 そのほかにも新しく読んだ面白かったモノ何冊か。

○日高敏隆「セミたちと温暖化」新潮文庫 新潮文庫の日高先生追悼企画で文庫化されていた。「春の数え方」からの新潮文庫の一連のエッセイ集のラストとなってしまった。読み終わるのを惜しみながられいによって目から鱗を落としつつ読んだ。

○湯川豊「夜明けの森、夕暮れの谷」ちくま文庫 この人の「イワナの夏」も読んだが、それほど記憶に残っていない。今回の方がかなり心に残った。特に、釣り荒らされて失ったお気に入りの渓を夢に見て「ただ記憶の中にだけ」流れている。と語るあたりは同じような経験があるだけに胸にぐっときた。久しぶりに味わいのある読み物だった。ちなみに新宿のSスイで買ったのだが、ご本人ちょくちょくいらっしゃるそうでサイン本であった。ちょっとした宝物気分。

○末広恭雄「魚の博物事典」講談社学術文庫 お魚博士として知られていた末広博士の博物事典というよりは、毎回違う魚をテーマに取り上げたエッセイ集のような楽しめる読み物。今となると古い知見もあるけど魚への愛が深く感じられる好著。大昔にでっかいやつを図書館で眺めたことがあるが文庫版になって親しみやすくなった。

 

 

(2010.1) 

HOME