○「本のページ」第7部 −ナマジの読書日記2013−

 

  2013年もダラダラと更新していきます。

 

○俺の読書15/Dec/2013


 この秋は豊漁でした。

 大都会●●の本屋を守るべく微力ながらネット書店よりも店頭で買うのをモットーとしておるのだが、この大都会でも秋の夜長を優々うっちゃれるぐらいの量を確保でき、10冊近い積読の高さは活字中毒者にこれ以上ない安心感を与えてくれてます。

 グレイ卿のフライフィッシングは恥ずかしながら未読。 シャンタラムは危うく3度目の再読に入ってしまいそうになるとこやった。


□ 「邂逅の森」 熊谷達也 文春文庫

 豊漁続きのこの秋冬でもイチ押し(いや羆撃ちに次いで2番か)。

 明治〜大正の秋田マタギを題材にしたこの小説、ひたすらマタギという職猟師の生活や猟のリアルなシーン満載なのでは、という期待に応えつつ、主人公が銃を置かざるをえなくなり炭坑夫に身をやつしたり、いち人間として女と関わっていく様が絶妙に組み合わされて小説として抜群におもしろかった。 最後の壮絶なシーンには、胸悪くなるような恐怖を感じてしまった。 毎年イワナ釣りに行く川で、昨年はじめて20mほどの至近距離でツキノワグマに遭遇したのだが、来シーズン以降、源流に行くのが恐ろしくなってしまったがな。

 次の「羆撃ち」と対で、新旧今昔の職猟師の良い本にめぐり合えただけでこの秋は心豊かになれました。


15/Nov/2013  

□「羆撃ち」久保俊治 小学館文庫

 徹夜必至の激烈超絶オモロ本。 間違いなく2013No.1確定。 もしかするとナマジに大量に貰ったか教えてもらったやつの中の一冊かもしれぬ。 1冊読み終えそうになると次の本を貰った段ボール箱漁って23冊見繕って積読しており、グチャグチャになっていて自分で見つけ出して買ったのかナマジに貰ったんかようわからん状態。

 地元小樽の大学出たあと、日本で唯一プロの羆猟師になった作者の半生記なのだが、本職のモノ書きも真っ青のものすごいリアルな自然の描写とか、ストーリー性とか、唯モンじゃねぇと思わされるオモシロさ。 愛犬フチとの出会いと羆を追う生活、モンタナのハンティングガイド学校時代、アメリカから帰国してから、と大きく三部に分けられる内容なのだが、そのどれもが北海道の森の中の匂いやアメリカの乾いた空気や羆の息遣いといったものまでがまじかに伝わってくる正真正銘本物を知るものだけにしか書けない文章力に圧倒された。

 地元のここらへんでもイノシシと鹿の猟は結構行われていて知り合いにもハンターがいて猪肉鹿肉を毎年貰う。 肉食いたいというのよりも、いっぺん銃で野生動物を仕留めてみたい、という欲求は常にある。 デカイ野生動物を追跡し、照準合わせ、引き金を引いていくときの気持ちのありようを思うとゾクゾクしてくる。 撃ちとめた時の興奮とか満足感は、釣り師の矜持は持っているつもりながらも、大物の魚を仕留めた時を上回るものがあるのでは、と想像してしまう。 でも釣りと両立するのは難しそうやしイワナ釣りでせいぜい10km歩くのとは別物の体力が要りそうで手を出しちゃイカンな、と我慢しています。 


□「いざ志願、おひとりさま自衛隊」岡田真理 文春文庫

 志願して、仕事を続けながら5日間の訓練を10回を受けて予備自衛官に任官されるまでのドキュメント。 予備といえども実弾射撃あり、25km行軍ありで、軍事ヲタクというだけでは勤まらんのは明らかで、体力に加え命令には絶対服従のバカになりきる精神力も必要だ、という辺りは実際やった人間にしかワカラン部分なのだろう。 確かに最前線で各人が「この作戦、命令っておかしいよな」みたいな疑問を持ってしまっては収拾つかんのやろけど、色んな情報入り乱れて誰もが知りえる日本なんかじゃ一番難しいところと思う。 文体はややチョケた感じながらやっていることは気合が入っている。 ヒマで読むもの無ければどうぞ。


□「雲の階段」渡辺淳一 講談社文庫

 渡辺淳一というと、文壇の中でも屈指のエロオヤジ、という先入観しかなかったのだが、嫁さんが見ていたテレビドラマを一緒に見ていてオモロかったのでドラマと並行して原作を読んでみたらこれが良かった。 映像化されるのがこれで何回目かというこの作品、時代に即してリファインされているっぽく原作よりもテレビドラマのほうがスリリングでおもしろかったのはしょうがない。 

ネタバレなのだが三郎という若者が伊豆諸島の離島に流れ着いて診療所の事務員をしているうちに人手不足から診察を始めるようになり、そのうちメスを握るようになる。 たまたま遊びで島に来ていた女子大生亜希子が子宮外妊娠(これも重要な複線になってたりする)の急患で運びこまれ、無資格医の三郎が執刀し恋仲になる。 亜希子は東京の大病院の娘。 診療所内で職場恋愛していた明子という看護婦との三角関係が始まる。 島の地元民の看護婦明子を捨て、亜希子を選択した三郎はそのうち大病院の跡取り候補としての人生を歩み始めるが、無資格医というのがバレないかという葛藤や恐怖心との綱渡りになっていく‥‥。 この三郎、とにかく流されやすいオトコで女に誘われるがままにそっちへ靡いてしまうあたりがとっても素敵。 いい女が二人いて、一方を選ぶと安心を得られるが島に一生残らざるを得なくなり、もう一方は大病院の跡取りを約束されるが無資格医がバレるリスクが高くなる、そのどちらを選ぶのか、というのがドロドロのドラマになって楽しませてくれた。


□「始末に困る人」藤原正彦 新潮文庫

 週刊新潮連載のエッセー集。 管見妄語シリーズ。 安心して読めるエッセー集。 イギリス留学が長かった筆者独特のユーモアで殆どすべての項目ごときっちり落ちがつけられているのが楽しい。 本質的には日本の今と将来を憂いる憂国の知識人の言葉を綴ったエッセイ集。


□「深海生物学への招待」長沼毅 新潮文庫

 ナマジが以前ランキングしていた今世紀の大発見の筆頭、熱水噴出孔に住む生物にまつわる話し。

 太陽光による光合成に依存する殆どすべての生態系から独立したいきものが居る、という事実をオイラのようなド素人にも分かるように説明してくれていて「とりあえず字が書いてありゃ良し、それがおもしろければ尚良し」程度の本読みでも久し振りに知的好奇心を刺激してくれた。 中盤、ひたすらチューブワームの詳しい記述に割かれている辺りはややマニアックすぎたが、序盤と終盤は一般的な素人衆でも理解できつつ知らなかったことをガシガシ知っていくという過程が楽しめた。 

 時にド素人の素朴な疑問なのだが、光合成由来ではない動物の食べ物(栄養素・カロリー源)ってあるのやろか? 塩とか水とかってーのじゃなく、米や小麦みたいにワシワシ食ってカロリー源になるもの。

(ナマジ→ケン一)

 「熊撃ち」は同居人に貸してるから自分で買ったんだと思うよ。熊谷達也は恋愛モノ以外だいたい読んでる愛読者。

 「光合成由来ではない動物の食べ物(栄養素・カロリー源)ってあるのやろか?」という問いは衝撃的だな。まさに光合成ではなく「硫化水素を酸化する」化学合成でエネルギーを得て、光合成で二酸化炭素と水からデンプンや糖のような有機物を作るのと同じ炭酸同化を行っているのが、ハオリムシやらの細胞内に共生している「硫黄細菌」で、それらをスタートに始まる生態系だから、「光合成と関係無いサイクル」と考えられていたりする。熱水噴出孔にすむ捕食者達が食べている餌ももとをただせば光合成と関係無い「硫黄細菌」由来の有機物。光合成を行う植物の葉緑体は実は昔は別の生物が共生しているウチに取り込まれたという説があり、ハオリムシに共生している「硫黄細菌」もそのうち葉緑体のようにハオリムシの細胞内小器官となって行くのかもしれない。

 硫黄細菌の他にも、昔から「化学合成」する細菌は知られていて、硝化細菌、水素細菌なんてのもあるけど、それが植物のような「生産者」の役割を果たして大規模な生態系が形成されるような事例は、熱水噴出孔が発見されるまで知られておらず、まさに「異世界」の発見といっていい生物界では超弩級の世紀の発見だったのでありましたとさ。

 熱水噴出孔では、「硫黄細菌」が光合成じゃない化学合成で、ハオリムシやらシロウリガイやら硫黄細菌自体の体やらを作り出し、それらをワシワシとゴエモンコシオリエビやらオハラエビやらが食ってカロリー源としているのである。

(ケン一→ナマジ)

まいど

酔っ払いの言葉足らずやった。

硫化水素→化学合成バクテリア→コシオリエビやらシンカイヒバリガイという動物の食い物になってるのやよな。 その連鎖がまずあって、更に、その捕食動物→そのまた捕食動物→そのまた‥‥とどんどん大きくなっていて最後はイカやカツオやマグロになって人間様の口に入ることもあるのかも、と想像しているのだが、ここまで合うとる?

でもそういうんじゃなくて、ここで書いた動物というのはいわゆる本当に小麦や米食う人間や牛や馬レベルのことなのでした。

そいでもって「小麦や米みたいな」というのは、小麦米が「太陽と水とCO2をもとにした光合成由来の」カロリー(でんぷんやったっけ?)の生産者そのもので人間とかがそのまんま主食にしているけど、硫化水素とか無機分を養分?にした連鎖の一発目の生き物で、極端に言うと人間が主食かそれに準じたものとして食えるものってあるのかな?と言いたかったんやとおもうけど、これ書いている今日もすでに酔っ払いなのでうまく伝わるのかやや心配。

(ナマジ→ケン一)

まいどまいど

 質問の趣旨がわかった。

 

 確かに難しい質問で、答は本質的にはシンカイヒバリガイとかシロウリガイとかが微妙なライン上にあり悩ましく、実際はシンカイヒバリガイもシロウリガイも硫化水素の臭いで臭くて食欲がわかないしろものらしいので「無い」でいいのかもしれないけど、臭いの我慢して食うとしたら「有り」かもしれないけどライン判定が難しい。光合成や化学合成する「捕食」しなくて良いのが「生産者」で捕食して栄養を得るのが「捕食動物」と定義すると、シンカイヒバリガイもシロウリガイも加えてハオリムシも「生産者」にはあてはまらないし、「捕食動物」でもない生き物という事になる。

 熱水噴出口の明確に直接的な「生産者」は硫黄細菌で、その塊を集めて食べていると思われるオハラエビは明確に「捕食者」だと言い切れるんだけど、シンカイヒバリガイらは、硫黄細菌を捕食している訳ではなく、体内に共生させている硫黄細菌から化学合成の生産物の供給を受けて生きているといわれていて、捕食者ではなく、生産者とも言いにくいような状態。

 単に定義上の話ではなくて、光合成をスタートとした生態系の「生産者」である「植物」と比較した時に本質的にも「生産者」と「捕食者」の間ぐらいにある発展途上の生き物だと考えることができる面白い存在で、植物の葉緑体はじめ細胞内小器官は最初はシンカイヒバリガイの硫黄細菌のように体内に共生させていた別の生物が、進化の過程でどういう変化を経てかは謎に包まれてはいるモノの別の生物が「植物」の一部になって生じていったということを強く「におわせる」ような想像力をかき立てまくる存在で、たぶん最初にその事実にたどり着いた研究者は面白すぎて発狂しかけたんじゃないかと思う。現存する恐竜を発見してもそこまでは科学者は興奮しないと思う。まあ、現存する恐竜が鳥だと気づいた科学者も発狂しかけたとは思うけど。

 ちなみに、光合成をスタートとする生態系にも「生産者」と「捕食者」の間ぐらいの存在は知られていて、造礁サンゴや沿岸生のイソギンチャクのいくつか、クラゲのいくつか、シャコ貝の仲間なんかは体に褐藻類を共生させていて、光合成で褐藻が生産したものの供給を受けて生きていて、暗いところではプランクトンとか食べる「捕食」だけでは成長できず、共生している褐藻は天然で単体で存在していることが確認できておらず、どうも一体化する途中臭いと考えられている。

 

 なんて話は、我々が高校生の頃習った生物の教科書には載っていなかった話で、リアルタイムでそういう発見があった時代に生物好きとして生きて驚きと感動をおぼえることができたのはなんとも重畳であったことよ。

 

  

<13.12.8>

 「シャンタラム」超絶面白い、ケン一がオレに強く薦めていた理由がよくわかった、主人公達が生きていくなかでの議論や主人公の心の中の葛藤など、哲学的な部分が結構あって考えさせられるのだが、そういうあたりがまさにオレ好みだというのはケン一には分かっていたのだろう。今「中」の真ん中あたり読んでるが面白さが止まらない。

 という中でも、マンガは読みまくり、基本朝起きてトイレでグレイ卿「フライフィッシング」を読んで、行きの電車では割とクリアな頭でシャンタラム読んで、帰りの電車では仕事でヘロヘロになった頭ではあまり考えずに読めるマンガを読むという最近のスタイル。疲れた頭にはバカっぽいのが割とはまってくれて、「お姉チャンバラ」とでもいうようなカテゴリーの、ヒロイン達が刃物やら銃やらで暴れまわる「デストロ246」「ベアゲルター」が良かった。でも、リリカルな「魔女の心臓」も良かったし、「空が灰色だから」はちょっと衝撃を受けるぐらい深い味わいがあってこれまた良い。あまり前例がないような作風。チャンピオンからはいろんな作家が出てくる。

 

<13.11.12>

 積ん読状態のを読み始めた「シャンタラム」とエドワード・グレイ卿「フライフィッシング」が超絶面白いが、中身が濃くてなかなか進んでかない。今年中に読みきれるだろうか。読みきったら今年の本のベスト3の2つは確定しそう。読んだらまた書くことにして、同時並行で読んでるマンガでジョジョ4部再読して、また新しい発見があったりして面白かったので書いておく。

 ブログの方でマンガネタで盛り上がった時に、ジョジョ4部「ダイヤモンドは砕けない」がやっぱりシリーズで一番面白いよねとか、「クレージーダイヤモンドが好きっ!(こまわり君風に)」とか書いてたら無性に読みたくなって、キンドル版を買い直して読んだ。仗助と億安とか康一君と露伴とかラスボスの吉良とかについては、あちこちで語り尽くされていると思うので今さら当方が書くことはないのだが、ラブデラックスの山岸由香子に焦点を当てて、過去の作品のジョジョへの影響と、今の作品へのジョジョの影響あたりをチラッと書いてみたい、ジョジョには登場人物の名前やスタンド名にバンド名とかが多用されることから分かるように、パロディーやらオマージュやらといわれる手法は作者の荒木先生も好きなんだと思う。その中で、誰が書いていたのか忘れたが、山岸由香子が「シンデレラ」の能力で顔を奪われそうになった時、康一君がもし由香子の顔が元に戻らなかったら「ぼくの目を見えないようにしてください」「ぼくに見られるのいやだと思うんだ」「だからぼくが見なけりゃ済むことだろうと思うので・・・・」というあたりは谷崎潤一郎の「春琴抄」のオマージュだろうというのを読んだ記憶がある。春琴抄、原作読んでないが友和百恵版の映画は幼少時見たという記憶が今でも残っているくらい強烈な作品で、たしかにオチは違うけど着想は春琴抄からなんだろうなと当方も思う。そして今度はジョジョの山岸由香子オマージュで西尾維新「化物語」メインヒロイン戦場ヶ原ひたぎ(以下ガハラさんと書く)の「主人公監禁拘束」エピソードは書かれているんだなと、今回4部再読して「そういうことだったのか」と合点がいった。西尾維新、ジョジョトリビュート企画でDIO主人公の小説1本書いているし、作中でもジョジョネタは結構あってジョジョ好きなのは有名で、気がついてみれば当たり前だと感じるが、「化物語」でガハラさんが恋人である主人公を拉致監禁して手錠はめてというエピソードはかなり衝撃的で、主人公の口にホチキス突っ込んでガチャッとしちゃうところとか他のエピソードも含めて「こんなヒロイン見たこと無い」という驚愕をもって楽しんでいたのだが、見たこと無いわけないだろ、ジョジョ読んでンだろ、と気付いてみれば思うのである。脈々と物語は形を変え語り部を変えながらも繋がっていくのである。おそらく人間の文化の続く限り。

 ついでに小ネタも発見。「シアーハートアタック」編その,遼粗に「杜王町の住民の特徴」という記載があって引用元が<「旅行するなら日本のここベスト100」民明書房刊1500YEN(税込み)>となっていて、当時、少年ジャンプ読者だった人間なら民明書房を目にしただけでクスッとくる。分かる人には分かるんである。細かいところにも気を配っているのが分かる作品って、マンガに限らずだが、まずだいたい面白いと思う。

 

<13.9.29>

 引き続きマンガも読んでいるが、そろそろ活字も恋しくなってきた。旅の友に、積ん読状態であった活字の本をいくつかチョイス、移民、移動というようなキーワードから、2冊が旅の気分にはまってくれた。

○高野秀行「移民の宴」kindle版 タイトルはツェッペリンの名曲「移民の歌」のパロディーなんだろうな。移民の歌のイントロが流れると、どうしても鎖振り回しながらブルーザー・ブロディーが入場してくる映像が脳内自動再生されてしまう。たぶん高野氏も同様だろう。日本における移民(日本は移民政策取っていないが、国際結婚やら「研修」やらで実際には「移民」は存在する。)の食生活に迫るというテーマだが、食生活ってもろに文化の権化みたいなモノだからおのずと彼等の文化的な深い部分にも迫っていく。行くんだけど、高野氏いつもの柔らかな語り口で半分酔っぱらって取材しているのもあり、全く堅苦しくなく上質の「エンタメノンフ」なのである。最近高野氏賞もとって世間の評価も追いついてきた感があり1ファンとして嬉しい。

○梨木香歩「渡りの足跡」新潮文庫 渡り鳥の飛来地をたずね、「渡り」という、生物がより良い場所を、自分があるべき場所を求めるということについて、人間の移民や開拓の話も絡めながら、深く、深く思いを馳せる。梨木先生ならではの、「生命の哲学」に真摯に向きあう文章がどうにもこうにもオレ好み。梨木先生、植物と鳥に特に造詣が深いが、オレなら先生が楽しめる魚の話ができる気がしている。先生カヤックも漕がれるが、カヤック漕ぐ時に目に見える水鳥のその下の魚たちの話、ぜひどこかの水辺で語って差し上げたいという気になる。生物好きのとても素敵な作家である。

 

<13.9.1>

 続くよマンガ読みまくり。話題になってるのやら、評価の高いのやら、お勧めされてくるのやら、続刊待ちわびてたのやら、たまたま目についたのやら乱読。続刊モノでは「ヒナまつり5」があいかわらずヤバいぐらい面白かった。一読目さらっと読めてしまい、「失速したか?」と感じたが、2読目ゆっくり味わって読んだら、1カ所ツボにはまってしばらく狂ったように笑い転げた。恐るべし。

○やぎさわ景一「特攻メイドサンダー!」全3巻 評判が聞こえてくるような話題作や、評価が高くてお勧めされてくるような作品は遅かれ早かれ出会って読むことになる。その中で評判どおりに面白いモノもあれば、高評価してるヤツの気が知れないようなつまらんものもあるけど、とりあえず読んでみれば自分にとって面白いかそうでないかはっきりするので、まあ端から読んでおけば良いだけなのだが、逆の、評判にもならない、評価も高くないような作品で面白いのがなかなか網に掛けにくくて、常に「自分の知らないところでもの凄い面白い作品が書かれているのではないか?」という不安が払拭できない。人様に評価されてなくても評価低くても自分にとって面白い作品は間違いなくある。マンガ雑誌買ってると読みたい目当ての連載以外のも読むのでちょくちょくマイナーな「自分だけの名作」にめぐりあうこともあるが、そうでないとなかなか巡り会えない。そういう作品は連載時、初版時ぐらいしか本屋(リアルでも電子版でも)に目だつところに並ばないので、ほぼ一期一会な一発勝負である。でもって、本作は全く評判にもなっておらず評価もされていない。評価が低いのではなく評価されていないという実態はキンドル版にレビューを書いて★をつけている人が3人しかいなかった、という具合のマイナー作品である。3人の評価は好意的であり、それが読むきっかけになったが、例えば比較して、割と最近読んだ評判の作品「夕凪の街 桜の国」の300件以上のレビューがありかつ★5をゲットしているような見つけやすさとは比較にならないぐらい、お宝エグった感がある作品である。両作品とも出会えたことを感謝したくなるような面白さだったが、後者に出会えたのはなぜ沢山ある漫画から、ともかくレビュー読んでみようと思うところまでいったのか、全く偶然で理由が分からない。前者がもう否定するのが難しいような万人に受け入れられる名作だとすれば、後者は波長のあう分かるヤツだけに分かるキワモノである。まったく人様にはお勧めしない。内容は、昭和のヤンキーのような特攻服来たメイドさんが家にやってきてという、聞いただけで頭痛くなりそうな設定だが、読んでいくとさらに頭が痛くなるような、ガンマンなメイドとか戦車なメイドとかも出てくる。そのへんのバカバカさというかチープなB級感も良い味出しててどうにもこうにも好みな作風なんである。一応我が家に異世界から居候がやってくる「ドラえもん型」でかつ「メイドモノ」で「ギャグマンガ」と分類できるが、そんなものどうでも良いような圧倒的なくだらなさが心地よい怪作である。こういう作品があるから、評価最低の作品や聞いたこともないマイナー作品でも自分で読まねばならんと思ってしまうのである。

 

○俺の読書 07/Sep/2013 Sat 

しっかり書いていくと長くなるし、それが原因で億劫になりがちなので手短に。

最近読んでおもしろかったのいくつか。


□ 「僕が今、死について考えること」椎名誠

 椎名誠のマジメな部類の本。 図書館で借りて読んだ。 返却して今もう手元に無いのでタイトルは微妙に違ってるかも。

 孫ができ、その孫がアメリカ暮らしで(父親はご存知、岳君)おじぃとしては年に数回会う楽しみとともに健康でいることへの意識が芽生える。 それとともに友人知人が他界していきあの椎名誠もとうとう死について考えた、というはなしなのだが、例によって恐ろしく本読みまくりの相変わらず海外行きまくりで、外国の葬儀の風習なんかの紹介が半分ぐらい続く。 友人との最後の別れのシーンなど悲しい部分もあるがさて思い出してみると椎名誠本人死についての思いはどうなんやったっけ? 手元にないし理解不足のまま返却してしもたかもしれぬがまぁおもしろかったのは確か。


□ 「ぼくは猟師になった」千松信也 新潮文庫

 京都の大学在学中に猟を始め、そのまま猟を優先できる職場に就職してサラリーマン兼猟師になったヒトの話。

 前にナマジが書いていた本かも? 

屠殺・解体シーンの写真なんかもあってよく新潮で出せたな、というのが最初の感想。

このヒト、こよなく猟師生活を愛して田舎暮らしを楽しんでいるのが伝わってきて好感持てる。

大物釣りに走ってなかったら、間違いなくオイラも狩猟の世界に走っていたと思うのだが、罠猟師は猟期中毎朝仕掛けた罠の見回りをすることや、鉄砲撃ちでも獲ったら必ずその日のうちに解体すること、などと知ってハゼやらキス釣ってきてもせいぜいウロコ落としまででそのあとは嫁さんまかせのオイラには無理、というのを気付かされた。


□「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」池井戸潤 文春文庫

 だいぶ前から平積みになっているのは知っていたけど、経済小説あんま興味ないのでスルーしていた。

 巷で「半沢直樹」なるテレビドラマがスーパーヒットしていてその原作がこの本と知って読んでみた。 めちゃくちゃおもろかった。

 「やられたらやり返す、倍返しだ!」のキャッチコピーの通り、一サラリーマンである行員の主人公がやり返す相手はその銀行の役員であったりする。 あぁオイラもこんなこと言ってみてぇな、とドラマ見て、本読んでそう感じた世のサラリーマン諸氏と多分まったく同じ感想を抱いてしまってしがないサラリーマンのなんとはなしの連帯感みたいなもんさえ感じさせらりたりするのであった。 作者、元銀行員らしく専門用語も交えながら素人でも分かり易くかつトリックも複雑すぎずでエンターテイメントとして最高でした。


□「空白の5マイル」角幡唯介 集英社文庫

 チベットにあるという幻のツァンポー渓谷なる大峡谷を探しにいくルポ。 大学の探検部時代に失敗して、普通ならそこで諦めそうになるものを就職してからもしつこく探検に出かけてとうとう発見に至るが最後の核心部は‥‥、というもの。 未踏の8,000m峰が発見されて初踏に挑む、などという分かり易いものではないだけに興味ない方には「それがどうしたん」となりがちやけどもの凄い資料の分析と数々の障壁乗り越えて現地へ何度もチャレンジする姿はそれだけで読み応えあり。


<13.9.1>

 まだまだマンガ読みまくり。

○寺沢武一「コブラ マジックドール編」 コブラは大好きな漫画なので何度も読んでるが、機械が魔法で生物化するマジックドール編は久しぶりに読んだ。コブラやっぱり格好いいと思う。このへんの感性は、コブラ読んで育ったから、今コブラ読んで「武一センセ−格好いい!」と思うようになったのかもしれず、卵が先か鶏が先か(この慣用句は「獲得形質は遺伝しない」という常識を前提とすると答が「卵が先」で決着している)的なマッチポンプ的な要素があるのかもしれない。今回、人形遣いのマリオの使う人形が人間になるんだけど、人間化が進む中で毒で死にそうなコブラを見て涙を流す仲間を見て、「私も泣けたらいいのに」と言う台詞があって、最後に、切れば血も流す人間になってコブラとキスシーンでめでたしめでたしなんだけど、この辺のアンドロイドや人工知能はどこからが「人間」なのかというテーマはキカイダーの良心回路のさらにもっと、ゴーレムとか神話の時代まで遡れるであろう昔からあるテーマだと思うけど、「泣ける感情があるのが人間の証明」というのは、陳腐かもしれないけどやっぱり大本命の回答だと思う。

○奥浩哉「GANTZ」 ある日気がつくと、えらいことになっているというのは、カフカ先生から戦国自衛隊からごまんとあるけど、なかでもどこかで目覚めると不条理に謎の敵と戦わされるというパターンは「GANTZモノ」といっていいんだと思うぐらいの代表的作品だとおもうけど読んでなかった。読んでなくてもそういう設定だという知識が普通にオタクの常識として勝手に入ってくるほどのメジャーな作品。ヤンジャンで連載されていた作品だけど、正直ヤンジャンとヤンマガのちょっとお色気と暴力強化した低脳DQN向けッポイ雰囲気は好みじゃなかったので、スルーしていたが、最近37巻で完結したこともありキンドルでも出血大サービスのセール中でなんと期間限定6巻まで無料ということで読んでみたら面白かった、続きが気になるひきのうまさで、ここ2日ほどで15巻まで読んでしまった。まんまとセールの策略にハマったが面白ければ良し。ヤンジャン連載作品も偏見の目で見てはいかんなと反省して、他にも読んでみようと「極黒のブリュンヒルデ」というのも読んでみたがこれも面白いジャン。何事も先入観、偏見を持たずに良く目を見開いてみよということか。いつもそう思ってはいるけどなかなか実行は難しいのよね。

 

<13.8.15>

 キンドルでマンガ読みまくりが止まらない、ここまで続くと完全に頭もマンガ読むようにチューニングがあってしまっているのか、文字の本が読みにくくなってきた、たまに積んである本やら手を出すが、途中でイマイチペースに乗れなくてマンガに戻ってしまう。でもマンガはバリバリ読めるので今はマンガを読むべき時と割り切ってワシワシ読む。5作品ぐらい読むと1つは面白いのがあたる感じ。とにかく興味の湧いたのを1巻だけ買って試し読み,、面白ければ続きを読むというのを繰り返す。

 ここ最近で面白かったのは、「少女ファイト」「オールラウンダー廻」「夕凪の街 桜の国」。

○日本橋ヨヲコ「少女ファイト」1〜10巻、はスポ根バレーモノ。クドいぐらいのベタな王道ストーリーで「アタックNO.1」の時代から基本フォーマットは変わっておらず、これまでどれだけバレーマンガって書かれたのかわからんが、それでも今連載中のこのバレーマンガも過去の名作バレーマンガ達に勝るとも劣らずまったくもって面白い。主人公の姉は全国大会決勝前に交通事故で亡くなっていてトラウマ、彼氏は難病でもうすぐ失明のおそれ、チームメンバーも、喘息持ちで長くプレイできないキャプテン、ヤクザの娘、女優の娘などなど、設定聞くだけでお腹いっぱいな感じのクドさだと思うが、これが面白くなるのがマンガのノリというモノだろうか。まあスポ根モノなので、個性溢れるチームメイトやライバル達と友情、努力、勝利的なストーリーが展開されるわけだが、この作品の売りの一つは台詞の熱さだろうか、結構痺れる名言が多い。「お前がそう思うんならそうなんだろう、お前のなかではな。」なんていうのは既にネットスラング化しているが、ネタ元はこのマンガである。他にも「どうにもならない他人の心は諦めて、どうにかなる自分の気持ちだけ変えていきませんか」「特別な人間なんていねえんだよ、そいつが何をやってきたかが特別なだけだ」とか劇熱台詞が連発されてて、スポ根マンガをよむ至福の醍醐味を感じずにいられないのである。

○遠藤浩輝 「オールラウンダー廻」1〜11巻、は総合格闘技ものでこれまたスポ根モノだが、主人公のライバルのタカシがクールで格好いい。同作者のSFマンガ「EDEN」はハラワタやら脳漿やらが飛び散るサイボーグやら人造生物やらの戦闘シーンが素晴らしかったが、その「EDEN」にもケンジというタカシとイメージ重なるキャラがいて、生身の体で(後に腕を叩き切られてその部分機械化した)戦闘能力の高いクールな殺戮マシーンなんだけど、脳以外全身サイボーグ化した女性キャラに母性的な愛を求める寂しげな一面もあるところのギャップがまたクールさを際立たせるというかスイカに塩的な良い塩梅だったのだが、タカシも育てられた養護施設の先生に密かに想いをよせる懐古エピソードとかがあって、これまたぜんざいに塩昆布的な良い味が出てた。先生は先輩と駆け落ちして苦い初恋に終わるんだけど、その時タカシを別の女の先生が励まして「地味目眼鏡っこでオッパイ大きい女は実は人気なのよ、フェラーリよりカローラのほうがよく売れるべ」とかいう台詞はなかなかに納得させられるものがあった。最近テレビでもボクシング以外の格闘技見る機会が無くて不足気味だった「格闘技成分」を補充できた。

○こうの史代「夕凪の街 桜の国」、は広島原爆の話。夏には戦争と平和について考えておいて悪くないだろうと思う。原爆が落ちて、沢山死んだ中で「生き残った方」だと思っていたら原爆症で死んじゃう話。といえばありがちな話だが、ありがちだしいっぱいあったんだろうけど、読めば「ありがち」の一言ではすまされないしんどい話である。

 日本も右傾化が進んでいて、特に中韓とは領土問題もあり軍事行動を含んだ強硬手段に出るべきだとお気楽に主張する声も聞こえるが、「それって、お前が自分で行くつもりなんだろうな?」と聞いてみたい。覚悟とか想像力とかあった上で主張してるのかはなはだ疑問である。自分は行かないでいいジジイどもはえらそうに口開くなと思う。ぶっちゃけ、漁業資源はとりあえず漁業協定があって国境の議論は棚上げできているし、まだモノになるかどうか分からん海底鉱物資源と軍事的な縄張り拡大とせいぜい示威行為のためぐらいの理由で人死にが出るような強硬手段に出るなんて割に合わないとしか思えないんだけど、そのぐらいわからんのかね?オレはそんな下らん理由で死にに行く気はないぞ。だいたいたいした利益もなくて割に合わんから中国ですら軍艦は出してこなくて、せいぜい水鉄砲の撃ち合いでお茶濁してるのはお互いそれなりに馴れ合って賢く立ち回っているように見えるんだけどどうなんだろう。人が死んだらしんどいというのは、津波で身にしみた。知り合い程度の関係でも、人が寿命をまっとうせずに亡くなるというのは、耐え難い悲しみ。心に傷がつく。捨て置いた場合の被害が、軍事行動とった場合の被害より大きいなら、やらざるを得なくなる状況に嫌でも追い込まれるだろうと思うが、捨て置いて現状維持できるなら捨て置けばいいと思う。とりあえずお互い唾だけつけて様子見の睨み合いの問題先送りで全く問題ないように思う。自分の命を差し出してでも、もしくは家族や仲間の命を差し出してでも、守らなければならないモノがあるなら守れば良いと思うが、今そんな差し迫った状況にはみえない。中韓との関係なんて上手に牽制しとけば事足りると思う。国境問題なんて世界中で解決つけられずに棚晒しのまま小競り合いしている状況が普通で、血を見てまで白黒つけなくて良いと考えるのだが。まあ極端なこと言ってるのは一部だとは思うけど、右傾化をともなう資源ナショナリズムの動きとかは世界的な流れなので、ノルウェーのテロみたいなのが日本ででてこないことを祈る。

 

<13.7.15>

 マンガ読み好調。元々のこのコーナーの読者であるケン一への面白い小説情報発信という機能を完全放棄してしまっているが、勢いづいて止まらなくなっているのでカンニンしてほしい。ちなみにドリフターズ3巻まで読了後、1週間で読んだマンガを列記すると、「私がもてないのは・・・4巻」、「アラクニド1巻」、「ノブナガン1巻」「龍RON 1〜23巻」、「蒼き鋼のアルペジオ4〜6巻」「バトル・ロワイアル1〜15巻」、「Fate/zero黒」、「ウィッチクラフトワークス1〜5巻」、「銀の匙6,7巻」、「シドニアの騎士1〜10巻」、「BLAME!1巻」、「海街ダイアリー1巻」、「放浪の家政婦さん」、「狼の口1巻」と66冊も読んでる。1冊だいたい20分ぐらいで読むとして、22時間かかっているはず。しかも、シドニアの騎士は2周しているのでさらに読んでる時間は長いはず。ちなみにキンドルで買った本は現在までマンガ小説その他諸々で412冊。

 とにかく、キンドルでは新しく売りに出されたマンガをチェックして、ちょっとでも心に引っ掛かるところのあるマンガは1巻を買って、続きを読むか決めるという作業の繰り返しが、結局面白いマンガにぶち当たる近道のようだ。どこに面白いマンガが転がっているか分からない、自分にとって面白いかどうかは読まなきゃ分からないということが最近分かり始めてきたので何でも読んでみる。なかには、1巻でまあいいやとなってしまうのもあるが、数打ちゃあたるで面白いのもヒットしてくる。こんなこと紙の本でやってたら、すぐにそこらじゅうマンガの山になるが、キンドルはその点便利きわまりない。

 この一週間で、特に面白かったのが、小池田マヤ「放浪の家政婦さん」と、なんといっても弐瓶勉「シドニアの騎士」。後者は宇宙からの謎の敵害生物とロボットに乗って闘うという王道「本格SF」という紹介ぶりだったが、今さらこんな古くさい設定で面白い漫画なんて描けるんかいなと、やや懐疑的に醒めた目で、暇つぶしになればいいやぐらいで読み始めたけど、ゴメンナサイすごく面白いです。オレが悪かった反省してますという感じ。以下ネタバレしつつ、ゴリゴリッと書きます。

 ガウナとよばれる、宇宙生物に太陽系を滅ぼされ、新しい恒星系をめざしてガウナと戦いながら何世紀も宇宙を行く、大型の宇宙船シドニアが舞台。ストーリーのフォーマット自体は古典的といって良いぐらいで目新しいモノはないのかもしれない、でも当方にはめちゃくちゃ面白くてマッチした。どこが面白い要素なんだろうと考えた時に、たぶん2つあって、一つは細かい設定やら描写やらのセンスがどうにもオレ好みということで、シドニアの中の居住区の猥雑とした感じや、戦闘服がツギがあたっていてボロッチイ感じもリアルに感じられて実にいい。戦闘機やらにツギがあたっていたりするのは、宮崎駿作品で有名だと思うけど、この作者も宮崎作品からの影響は受けているような画風で、主人公の名前「谷風」は「風の谷」から来てるんじゃないかと推察。武器やら、独特の物理法則の設定も細かくて楽しめる。特に戦闘服というか宇宙服が内側は粘膜状の人工組織でできていて人工的な細菌が繁殖していて臭いとか、長時間作戦時の排尿のためだと思うけど、着用すると自動的に膀胱内に入ってくる生体カテーテルとか、ちょっとエッチくフェティッシュな感じに凝っていて作者解説で否定していたけど、そういうのお好きな人なんだろうなと思う。作者、自画像をノコギリクワガタにしていて、作中でもノコギリクワガタ出てきて、当方同様、クワガタはノコギリ至上主義のようで、そのあたりのセンスが分かる人間同志すごくわかり合える気がする。ヒラタなんて太ったコクワだし、オオクワなんて滅多にいないから金額高いだけで、格好いいのはノコギリですと私は常々思っているのである。単にくの字に曲がるだけではない、立体的にもS字にうねるようなあのノコギリ大型個体の大顎のデザインの格好良さが分かる作者とは、対面すればたぶんとても気が合うか激しく憎み合う事になるだろう。

 そういった、細かい設定的な面白さの他に、もう一つ当方が楽しめた要因は、ぶっちゃけヒロインが可愛いという、そんなこと大まじめに書き始めたら不真面目に思うかも知れない要素である。しかし、分かるでしょ?大事なところだっていうのはネ。昔観たハリウッド版スパイダーマンのヒロインがえらく不細工で、ストーリーとか面白いのにヒロイン出てくるたびに「そんな不細工なヒロイン助けずに捨てておけ」と思ってしまい映画鑑賞に著しく支障をきたした記憶がある。ハリウッドにはいくらでも美人はおるだろうに何であの娘を選ぶかな?という感じだが、たまたまオレだけが好みじゃないのかもと、不安になって「スパイダーマン ヒロイン 不細工」と検索したら、不細工と思っているらしい人が思いっ切り多いようでちょっと安心した。ということで、今作のヒロインだが、これも良くあるパターンだがダブルヒロイン体制で、いつもそばにいて主人公を見守るイザナ君と、主人公と絶体絶命の危機を例の生体カテーテルネタが伏線になっていて、2人で生還し、基本エースパイロットでもてまくりだけどスットコドッコイで、他者からの気持ちに鈍感な主人公と両思いになったのに、それは死亡フラグであえなく戦死しちゃった可憐な星白さんの2人である。星白さんは、明らかに作者も可愛く描いていて、死んだ時には「テメこの作者、ナニしやがんだ!」とぶち切れかけたが、これが、後々の伏線になっていくんですわ、その辺もオモロいんですわ。星白という名前はひょっとしてジョジョのスタープラチナ(星の白金)由来か?で、星白さん亡き後、正ヒロインの座は安泰でもないんだけど、イザナ君。なぜヒロインなのに君づけかというと、「中間性」という男にも女にもなれるし、単為生殖でクローン産むのもできるという変わった性(アレッスよ、「11人いる!」のフロルみたいな感じッスよ、たぶん作者も意識してるッスよ)の持ち主で、一人称が「僕」のボクッ娘だからである。名前のイザナは日本版アダムとイブのイザナギ、イザナミ由来で男でも女でもなくそのどちらでもあるというあたりからのネーミングか。見た目はやや下ぶくれ系のノペっとした顔で、中性的というか特徴に乏しい顔でそんなに見た目は可愛いというキャラクターじゃないんだけど、中間性の不思議な魅力と、とにかく主人公に対してヤキモチを焼きまくるシーンが多くて、そのあたりが可愛らしいキャラクターである。主人公に生体カテーテルネタでデリカシーのないことを聞かれて殴り飛ばしたりもしている。9巻ぐらいから体が女性になり始めて、主人公との仲を上官にからかわれている。

 アニメ化決定ということだが、それより何より11巻以降の続刊が楽しみでならぬ。

 

<13.7.8>

 キンドルでマンガそろそろ飽きてきたと書いたけど、まだまだマンガメインで読んでる。チョコチョコ文字の本もキンドルで読んだけど、アタリはマンガが多い。最近のマンガ「蒼き鋼のアルペジオ」「ドリフターズ」がおもろかった。前者はSF兵器と人型のインターフェイスを持つ人工知能を搭載した艦隊と戦う潜水艦モノ。後者は島津豊久、織田信長、那須与一が異世界で活躍するこれまたSFなのかファンタジーなのかという感じ。新しい面白いマンガがドンドン描かれている嬉しさよ。

 

<13.6.8>

キンドルでマンガそろそろ飽きてきたけど2連続で面白い少女漫画読んだ。

○東村あきこ「海月姫」〜10巻kindle版 途中まで読んでいたのの続き。以前読んだときも書いたけど面白いから何度も書く。主人公は眼鏡を外すと可愛い地味めの女の子、主人公に想いを寄せるのは、純朴・まじめな眼鏡の兄と奔放で型破りな弟という、少女漫画ではありきたりという感じのテンプレートな王道設定だが、そのテンプレ的物語をどうオリジナリティー持たせて面白く書くかというのが腕の見せ所なんだろうけど、東村あきこ先生さすがと唸らされる面白さ。主人公含めオタクな女子ども「尼〜ズ」の誇張されつつも「あるある」な感じとか、そのキャラクター達の弾けっぷりに腹を抱えて笑わされる。「尼〜ズ」の中でもアフロのばんばさんが特に好きだ。目さえアフロヘアに隠れて書いてもらえない非「萌え」キャラだが、オレのツボにはスボッとはまる。まだ完結していないので続きを楽しみに待ちたい。しかし、オレも水生生物全般に強いつもりだが、作者のクラゲマニアぶりには驚かされる。アカハラウリクラゲとかしらんかったぞ。今YOUTUBEで見たけど確かに綺麗やな。ウリクラゲの仲間ははクラゲっちゅうても、クシクラゲっちゅうて有櫛動物やからマイナー中のマイナーやけど。まあ普通有櫛動物なら昭和天皇が採取されたエピソードで有名なコトクラゲがメジャーかなと思ったりしている。

 

○萩尾望都「バルバラ異界」全4巻kindle版 「少女漫画の神」はいささかの衰えも無く、ますます健在という感じだ。2005年完結の割と最近の作品。2005年の作品が割と最近と感じてしまうぐらいのオレが生まれる前から漫画書いてる先生得意のSFもので、大きなテーマとして個として限りある命を生きるのが幸せか、個を融合させて全体として永遠を生きるのが幸せかという、諸星大二郎先生の「生物都市」やらエヴァの「人類補完計画」やら、SFではおなじみの哲学的テーマを含みつつ、「今あなたが生きているその世界は、誰かがみている夢ではないのか」というこれまた、哲学的なお題が絡みつつ、話の展開の上手さや味わい深さも、少女漫画の創世記から書き続けている「神」ならではという感じで痺れまくった。年を重ねたその年輪的な良さももちろんあるんだけど、栴檀は双葉より芳しという感じで、萩尾先生若い頃から面白い漫画書いてた。「11人いる!」はSF漫画の歴史に残る名作だという評価が定着しているが、全く異論はない。去年放送されたアニメ「氷菓」のなかで、漫研所属のサブヒロインが、「誰もが読めばそうだと分かる名作はある」と主張したときに、例として出したのが「11人いる!」で文化祭ではフロルのコスプレしてて、まあ、原作者が同世代なんだろうなという無粋なメタ視線は無視してマヤカちゃんの意見に激しく同意したものである。萩尾先生の作品結構読んでるけど、代表作の一つに数えられる「残酷な神が支配する」を読んでないのだが、ちょっと内容がヘビーで精神的ダメージ食らいそうで読むのをためらっていたが、どうも読まねばなるまいという気がしてきた。

 

<13.5.13>

 もう何ヶ月も紙の本を読んでいない気がする。気がするだけで実際はシリーズもののラノベとかはかかさずチェックしているが、シャンタラムやら梨木香歩やら池澤夏樹が「積ん読」状態。しかし、キンドルでマンガ読みまくりはまだしばらく続きそう。そんな中、キンドルならではの「アタリ」マンガを引いたので書いておく。キンドルでマンガ買う時は、条件かけて検索するのだが、あんまり上手く検索かけられると売りたい本を見てくれるチャンスが無くなるからか、キンドルストアは検索機能があまり充実していない。「〜を除く」というNOT検索が無いので、やたらと売っているハーレクインロマンスシリーズとかを除いて検索したいのだが、しかたなく割とマメに新発売を端からチェックしている状態。ネットでデータ販売というのは、現物の本を刷る必要がないので、売れなくて在庫抱えてしまうというリスクがないため、こんなもん売りに出すレベルじゃないだろというような、同人誌のようなモノも売っていたりしてうざくてムカつく。でも、逆にそういうマイナーなモノでもダメ元で売りに出すことは出来るわけで、紙媒体あまり売れなかった作品を思い切ってロープライスで売り出して、知名度あげて逆転狙い、というような作戦だと思われる値引き商品がちょくちょく売られているのを目にする。作者はともかく出版社としては、あまり電子版が売れると、紙の方が売れなくなるので二の足を踏むのかも知れないが、その辺は紙の本の在庫とかとの折り合いとか大人の事情があるんだろうとは思う。そういうディスカウントされたお勧めマンガは、いくつか買ってみたが、まあそれなりに読めるけど全巻買おうとまでは思わない程度のそれなりのしか当たらなかった。が、今回大ヒット。これはオレが読んで面白いと思うと同時に、たぶん今のマンガ市場で売れると思う。やくざの部屋に超能力少女がやってきて騒動を起こしたり起こさなかったりするギャグマンガなんだけど、ちょっと人情モノ入っていて、その辺のギャグと感動のバランスが実に良いうえに、今時のマンガ読者のボリュームゾーンであるオタク層には、ヒロインが中学生でヒロインのライバルやら同級生やらかわいらしいキャラクターがどしどし出てくるのがポイント高い。オタクどもは基本YESロリータ、NOセクシーダイナマイツであるからしてドストライクのはずである。

○大武政夫「ヒナまつり」ビームコミックス1〜4巻である。ビームコミックスの「ハルタ」なんていうオレでも知らんドマイナーマンガ誌掲載でなければ、もっと早くメジャーになったはずのクオリティー。まだメジャーブレイクしていないが、たぶんアニメ化して「このマンガがすごい」とかにも遅からずあがってくるハズ。

 途中からヒロインであるヒナちゃんの超能力少女という設定忘れたかのように、じゃりン子チエと浦安鉄筋家族を掛けて平方根を出したような人情味あふれかつはちゃめちゃな展開でとばしまくる。ヒナちゃんはもとより、ライバルのアンズちゃんや同級生の瞳ちゃんもとてもキュート。絵は今時の萌え萌えした絵柄じゃないけど、実に良い塩梅。クソ笑ったのが、瞳ちゃんは成り行きでバーでバイトするハメになるのだが、それを同級生に見つかって、しらを切ろうとして切りきれずにばれて、委員長っぽいメガネの同級生に「「私は中学生のくせにバーテンダーをしています。」とゲロさせられ復唱させられ、もっと心を込めてアイドルの自己紹介風にと言われて「私は中学生のくせにバーテンダーをしていま〜っす」と言わされるエピソード。電車の中で吹きまくって恥ずかしかったッス。

 このテンションで10巻まで続けば間違いなくアニメ化やらなんやらでブレイクすると思う。素人目にもわかるくらい頭抜けた面白さ。作者初連載だそうだが、気合い入れてチャンスをものにして欲しいところだ。次巻も買います。 

 

<13.3.24>

 キンドルで完結まで読んでなかったマンガを読み切る作業続行中。昨年のクリスマス頃に手に入れたキンドルで既に100冊以上読んでいるが9割マンガ。まだ読みたいマンガが「欲しいモノリスト」にいくつか登録してあるので、今年はマンガを読む年になりそう。

 最近読んだので面白かったのは「仁」と「ブラックジャックによろしく」。たまたまどちらも医学モノ。

○村上もとか「仁」は、連載中に西原理恵子先生だったか伊藤リサ先生が、村上もとか先生に対し「そろそろ引退してもいい年なのに、ここにきて、また面白い漫画描きくさっていい加減にしろ、後輩の立場も考えろ」的なやけくそな尊敬のこもったコメントを書いていたように記憶している。あんたエッセイマンガ書きだからジャンル違いの村上先生に嫉妬せんでもエエやろ、と思わなくもなかったが、嫉妬してしまうのも納得の面白さ。村上先生の「龍」も読んでないので読まなきゃである。どうでも良い情報だけど村上先生「むさしの剣」から読んでいるが、今回ウィキで調べるまで女性だと思ってた。

○佐藤秀峰「ブラックジャックによろしく」は、作者が出版社と大げんかして版権引き上げて、他誌に連載移って「2」として再開するとともに、元の出版社が儲けられないように、著作権料とらずにタダで公開している。キンドル版も安かった。大手出版社なんていうのは、今の日本の電子書籍化の妨げになっている状況を見ても分かるとおり、既得権益にあぐらをかいたいけすかねえ部分を含んでいる。沢山本読ませてもらって恩義もあるが、いい加減にしろよと思うところもある。そういういけすかねえ納得いかない部分に作者は現実でも真っ正面から異議を唱えているのだが、その姿勢そのものが主人公の新米研修医に投影されている。医療を取り巻く既得権益の絡んだ体制に真っ向からはむかう。人を巻き込んで傷つけて、独りよがりに、確固たる答えがあるわけでもなく、揺れて間違えて、痛い目に合い、正直ウザい暑苦しいうっとおしいキャラである。でも、賛同できるしもっとやったれ、と声援を送りたくなる。

 小説は、最近ちょっとSFが面白いと感じている。最近の日本文学って私小説か前衛芸術っぽいのに偏っていて、割と王道の「人間とはなんぞや」「生きるとは」というのは、SF小説ぐらいしか扱わなくなっている気がしている。まあ、今出ている小説全部読んでいるわけではないのでたまたま目にしてないのかも知れないが、あと、ケン一お勧めの「あぽやん」はキンドル版あったので読んだ。面白い。「2」もあるようなのでポチらねばなるまい。あと紙で「シャンタラム」と「インパラの朝」は確保した。百田尚樹も読みたい。零戦モノには「大空のサムライ」という古典があって、読んでないならお勧めしておく。戦記物なので反戦主義者に怒られそうだが、それでもやっぱり正直言って面白いと思う。オレってバリバリの反戦教育を受けた世代だし、戦争反対だとも思っているけど、戦争物の映画や小説は結構好きだし、戦闘機やら戦艦やら銃器やらの人殺しの道具も格好いいと思ってしまう。そういうのって思ったとしても隠して良識ある大人のフリをしておくべきなのだろうかと悩んだりする。

○沖方丁「マルドゥック・スクランブル」は、カジノでのマネーロンダリングのために、車ごと焼かれた少女バロットが、万能兵器として開発された金のネズミ「ウフコック」と共に闘う話だが、何というか翻訳SFもののテイストをかもしだしていて、例えば、最初に登場人物の紹介があったり、英語で韻を踏んだ台詞回しにカタカナ英語のルビがふってあったり、そのあたりもなかなかに楽しい。

○上田早夕里「魚舟・獣舟」、短編いくつかと中編。遺伝子操作でつくり出されたクリーチャーやらがでてくる割とオーソドックスなSFだけど、独特の空気というか個性があっていい。ちょっとやるせない無情感が漂う。名前から女性作家っぽいけど、割とハードボイルドな作風である。桐野夏生といい最近は男性がナヨナヨしているので女性作家がハードボイルドな物語を書く時代なのかも知れない。

○新野剛志「あぽやん」は、空港業務ネタのサラリーマン小説。サラリーマン小説やらサラリーマンマンガあたりを読んで、「上昇志向」とか植え付けられるような糞のような大人にはなりたくないなと思っていたが、「あぽやん」はそういうオレが毛嫌いする糞みたいなサラリ−マンモノではなく、サラリーマンあるある的な、社会人10年20年やっている人間なら絶対共感できる内容。どんな仕事でもトラブルはつきもので、それを何とかやっつけるには、チームワークだったり地道な作業だったり、ちょっとした幸運だったりという話。そうやってめんどくさい仕事をなんとかかんとかやっつけていると、たまに気持ちの良い成功やら心の温まるようなエピソードやらも落ちているという話。上昇志向なんて糞だと思い続けてある意味不真面目に働いてきたが、あぽやんで共感できるぐらいには真面目に働いてきたらしいということも手前味噌で恥ずかしながら認めても良い事実のようで、ちょっと誇らしいかもしれない。働いて飯食うって若い時はかなり「ビジネスライク」に醒めてみていたけど、意外に重要なことなのかもしれないと最近は思ったりする。

 

 

○俺の読書 17/Feb/2013 (久しぶりのケン一の俺の読書)

今年の冬はやたら寒く庭の睡蓮鉢にほぼ毎朝氷が張っていて小学生の頃を思い出す。 感覚的には30年前の正しい冬の姿が戻ったというとこやけど、寒いの大嫌いなオイラは休日も家の中で鬱々と過ごす時間が長くなり精神衛生上よろしくない。本読むくらいしかやることが無い。

□「永遠の0」 百田尚樹 講談社文庫

 雛壇にお笑い芸人並べてオノレらだけで楽しんでるような番組ばかり目に付いて苦々しく思う昨今だが、そんな番組で大阪出身のお笑い芸人がこの本のことを「終盤の50ページぐらいはグォオオオッと滂沱の涙なくして読めへんかった‥‥」などと紹介していた。

 とりあえず読んでみた。 滂沱の涙は流れんかったが良かった。 

一流の腕を持つゼロ戦乗りが「娘に会うまでは死ねない」と言って最後まで生きる事に執着しながらも最後は終戦直前に自ら特攻で散っていく。 そのゼロ戦乗りの孫が当時のおじいちゃんを知る戦友にインタビューしていく、という形で話しは進んでいく。

最初にインタビューした老人の「あいつは臆病だった」という回顧録で読者におよよ?と思わせておいて次々とインタビューを重ねるうちにおじいちゃんの姿が浮かび上がってくる。 戦闘機マニアでなくても引きこまれるゼロ戦の話しとあいまってぐんぐんと興奮のクライマックスへと持っていかれた。

「イスラムの自爆テロと同じ」などと言う左巻きの新聞記者なんかも登場させて、現代における特攻への評価に対しての筆者なりの論を展開していたりもする。 

本書には出ていないが、鹿児島の知覧の特攻記念館にいくと膨大な数の遺言の一部を見ることができる。 お国のために、というものよりも両親や兄弟姉妹、我が故郷を思う気持ちが行間にこめられていて、いつも目頭を熱くさせられる。 若い人はもちろんやけど、自虐的な歴史観を植えつけられた中高年こそこの手の本を読むべし。

 

□「ボックス!」上下 百田尚樹 太田出版

 ずいぶん前から平積みになっているのを見かけてはいたが、百田尚樹なる作家なんか知らんかったし、あまり上手いとは言えんイラストがなんともそそられ感のない表紙で今まで手にしてなかったが「永遠のゼロ」でこの作家なかなかえぇんとちゃうの、てなことで読んでみた。 高校アマチュアボクシングを題材にしたスポ根もの、と言ってしまえばそれまでやけど「永遠のゼロ」で流れなかった涙をこの「ボックス!」では何回も流してしもうた。 勉強は一切ダメやけど天才的なボクサーカブちゃんとその親友で優等生のユウちゃんの青春物語を、ユウちゃんと顧問の耀子先生の語りで進んでいく。 優等生のユウちゃんはイジメられっ子で、同級生の女の子とのデートの最中に不良グループに絡まれその屈辱感をバネにボクシングを始めるのだが、その分かり易いというか小説にしてはストレートすぎる導入部も、この世の格闘技をやってなかった男性すべてが深く共感できると思う。

 ファイトシーンの描写もいいし、天才肌で練習嫌いのカブちゃんと学校で3本の指に入る優等生で運動神経なさそうやったユウちゃんの対照的な成長と挫折と高校生独特の苦悩みたいなんがしっかり出ていて高校生モノでは生涯ベスト3に入る徹夜必死のオモシロ本であった。 ちなみに高校生モノベスト1は文句なしに村上龍の「69」。


□「インパラの朝」中村安希 集英社文庫

 開高健ノンフィクション賞受賞作を文庫で見つけてようやく読んでみた。

 ユーラシア・アフリカ大陸を2年かけて放浪するという、まぁどこにでもありそうな放浪記で、巷にあふれる旅ルポ、エッセイとそんなに代わり映えせんのになんで開高健賞?という疑問が残った。

 巷のと違うのは少々哲学的な表現があったり、ちょっと賢そうな考察があるだけで別にどうってことはない。 高野秀行とかのほうがずっとかディープでオモロイと思うのはオイラだけか? 



□「あぽやん」新野剛志 文春文庫

 航空会社系の海外専門の旅行会社(社名は出てないがJALパックやな)の主にセンディング担当の成田空港支店に勤務する主人公の周辺で起こるトラブルを面白おかしく小説に仕立てている。   

 オイラも近い職種といえど業務とそれにまつわるトラブルの内容はかなり違っていて空港ならではの専門的なエピソード満載、知らなかったことも多くて結構楽しめた。 ちなみにタイトルのあぽやんとは、スリーレター(昔はテレックスなる機械を使った名残で航空・旅行業界では頻出単語はたいがいアルファベット3文字で表す)で表した空港=APOで従事するプロフェッショナル的な人のことをいうらしい。 そういう雑学も含めて誰でも楽しめると思う。



□「シャンタラム」GD・ロバーツ 新潮文庫

 再読。 上中下3冊からなる大長編。 とんでもなぇ人生送っているヤツが世の中にはいるのですね。 小説の体裁とっているけど殆ど作者の自伝らしい、というのは作者紹介欄を見れば分かるのだが、それにしても激しすぎる。 

オーストラリアの刑務所を脱獄して偽造パスポートでインドに着いたその日、空港にたむろする客引きのプラブに出会うところから物語はスタートし、謎のスイス美人カーラやマフィアのボスとの関係に続きアフガンまで戦争しに行く。 大まかなあらすじだけでも書こうと思ったが3ページくらいかかりそうなんでやめとく。 しかし強烈な個性の持ち主の各登場人物との関わりとインドの詳細な描写と時に哲学的な内容もあって一気に引きこまれる。 全編通してのテーマは、喪失感と自己確認と人間愛なのだとオイラは思ったのだがどうだろう。 読んだら是非読後感聞かせて欲しい。

 

<13.2.6>

 キンドルの便利さにすっかりはまっている。小説も3つ4つ読んだが、なんといってもマンガが全10巻ぐらいは余裕の容量という事が分かったので、途中まで読んで完結まで読んでない作品やら、最近話題になってるのやら、まあまだ品揃え少ないので探すの苦労しているのも事実だが、それでもマンガ読みまくり。中でも良かったの2つ。

○岡本健太郎「山賊ダイアリー」イブニングKCキンドル版1,2巻 岡山の新米猟師のエッセイ風マンガ。獣を殺して食う話は、当方はとても興味があったが、普通の人には興味はないだろうと思って「世界ト畜紀行」も「僕は猟師になった」も売れずに文庫化されないことを見越して、珍しく単行本で読んだのだが、意外や意外、両作とも結構売れたらしく文庫化されている。いま、生き物の命との関係性が希薄になった、スーパーに行けば切り身の魚も調理済みの肉も買える時代に、「ちょっと待ってよ、もう少し他の生物の命を奪って生きていることの意味を考えようよ!」という流れが確実にあるように感じる。大いに流れてくれ。本作も、初めて罠にかかったイノシシを殺すのに「イノシシだから殺すのがかわいそうではつじつまが合いません」と涙ながらに撲殺するという真面目でウブな新米猟師の心の葛藤が共感を呼ぶ。そりゃ四つ足の獣殺すときは残酷だしかわいそうだとは思うけど、釣った魚やスーパーの豚肉と何が違うのさ、というところ。ガケを落ちそうになって手をついた木がトゲトゲのタラノキというのは、アウトドアあるあるネタで笑った。獲物の嗜好がカラスとかヌートリアとか普通のハンターが狙わないものに目が行きがちでその辺も妙な共感を呼ぶ。狩猟に理解のある女性を見たことがないと嘆いていたが、同居人は全く狩猟OKな女である。おじさんの撃ってきた鹿、冷凍してあったのを半解凍で刺身にして食うとき、皿に溶けた血が流れてちょっと凄惨な食卓になるのだが、「鹿うめ〜」といいながら、ショウガ醤油で2人してワシワシ食っていた。おじさん病気して狩猟はやめて久しく、鹿肉もご無沙汰である。刺身と煮込みで超旨いのだが、日本では人気無くて駆除してももてあますんだとか。おれんちになんぼか送ってくれ。

○岩明均「寄生獣」アフタヌーンKCキンドル版全10巻 連載始まったとき、吃音の少女が店番をする喫茶店での暖かな人間の心の交流を書いていた作者が、何をとちくるって、人の頭が飛びまくるような血みどろスプラッタなSFモノを書き始めたのかと唖然としたが、速攻で物語に引き込まれた。当時有名になり始めていた、「利己的な遺伝子」的な考え方をも視野に、人間って何なのか?という根源的な問いをガッツンガッツンストレートに書きまくっていた。連載途中でアフタヌーン購読をやめたのでラストシーンまで読めていなかったので、今回最初から読んだが、めちゃくちゃ面白かった。人間とは何なのか、答えは読んでも分からないが、1度読んで考えてみるのは悪くないと思う。ちょっとグロいけど万人に読んで欲しいマンガ。人間の脳に寄生して人間を食う謎の宇宙生物?と脳を乗っ取られずに右手にその寄生生物を宿した主人公との戦いと友情とその他諸々。敵の女?が最後、実験のために宿主の腹を使って生んだ子供を守って銃に撃たれるシーンでは不覚にも泣かされた。作中もっとも人間らしい行動だと思った、子供を守ることが人間らしいのではなく、人間としてあろうとする、人間を理解しようとすることが、たまらなく人間くさいと思った。それまでに30人以上殺しておいて今さら赤子一人助けて何の罪滅ぼしになるかというところだが、そういう理屈に合わないところこそが人間くさい。

 

<13.1.12>

○荒木飛呂彦「スティールボールラン」ジョジョ第7部全1〜24巻kindle版 冬休み中かかって読み切ったけど、やっぱりジョジョ面白い。今回の舞台はおそらく、今深夜にアニメがやっている1部2部と同時代ぐらい19世紀頃のアメリカ、でたぶん1部、2部とはちょっと違う平行世界(パラレルワールド)もので、賞金(と謎の遺体)がかかったアメリカ大陸横断レースで基本、チキチキマシンというかマッハゴーゴーというか、デスレース2000というかキャノンボールというか、というかんじのレースバトルモノ。で3部からお馴染みスタンド能力による超能力バトルモノ。以下ちょいネタバレ。

 DIOもちょっと違う能力の敵として出てくるが、後半ラスボスの能力でザワールドの時を止める能力を持ったDIOも召還されてきて、時を止める能力とどう闘うかの3パターン目(パターン1:スタープラチナザワ−ルドで時を止め返した、パターン2:ゴールドエクスペリエンスレクイエムで自動防御カウンター)が、結構「そういわれれば、その通りやな!」という割と単純な方法で示されていて面白く、かつ4つめのパターンもジョジョの最後に覚醒した能力から出てきて「決着は止まる時よりも早くつく」という感じで、時を止めるという反則的な能力も絶対ではないところが、このマンガの面白さ。鉄球使いのジャイロ・ツェペリをメインに話は進んでいくのだが、やはりこの物語はジョジョが主役で後半はジョニー・ジョースターが痺れる憧れるゥな感じで決めてくれる。能力がアクト4まで覚醒に覚醒を繰り返して進化していくからね。あと、最初にでてきて一瞬主役かと勘違いした、ネイティブアメリカンのサンドマンの散り際の潔さも良かった。

 8部は終わってからまとめ読みすべきか、今出ている巻まで読んじまうか悩んでしまう。

○「悪の華」1〜6巻押見修造kindle版 メインヒロインの変態っぷりが上級向け過ぎてついていけないという評判を目にして、ちょっとエッチな笑えるマンガを期待して読み始めたが、良い意味で裏切られた。これはあれだ、自意識が肥大した思春期の人間とかが「主人公を他人とは思えない」と思ってしまうパターンの物語だ。ようするに、世の中には「人間失格」に共感できる人間とそうじゃない人間がいて、これは「人間失格」側の人間が読むべきマンガだ。以下ちょいネタバレ。

 主人公は自分はボードレールとかの詩を理解できる人間で他人とは違うんだと信じたいけれど、ホントは中身の空っぽな平凡な人間でしかないということも分かっている痛々しい少年で、メインヒロインの仲村さんに弱みを握られて、クラス1の美少女の体操服を服の下に着込んでデートさせられたりして最初は振り回されるのだが、同じようにコノ世の中はクズばかりだと感じて、クラスメイト、教師、親、警察に手当たり次第「クソムシ」「ゴミクズ」と毒を吐く孤高の存在であり、かつ自分と同じように空っぽな仲村さんに心酔し、同情し、親近感を憶え、おそらく惚れて、仲村さんを満足させることを目的に、仲村さんが「変態」と認めてくれるようなことを実行する。ただ、仲村さんの求める「変態」はまったく性的な意味での「変態」ではなく、主人公が当方のような言葉や知識で武装するタイプの自意識過剰な人間なのに対し、仲村さんは超実戦派の理屈抜きの人間なので、彼女の「変態」という言葉は、むしろこの世界すべてに対する破壊衝動を満たしてくれる行為を指しているように思う。仲村さんの手加減抜きのキレっぷりには惚れ惚れする。当方が主人公と同じ立場だったら、やっぱり仲村さんに隷属せざるを得ないだろう。

 全6巻と勘違いして買ったけど、まだ完結していないので続きが早く読みたくて困ってしまっている。

○「イスラム飲酒紀行」高野秀行kindle版 「イスラム」で「飲酒」って、アンタたいがいにしとけよという感じだが、もう高野秀行はあいかわらず面白すぎる。開高先生は釣り竿を魔法の杖に、外国の人々の間にスルスルと入っていっていったけど、高野氏にとっての魔法の杖は「未確認生物」と「酒」のようである。まあ想像すれば、外国人がいきなり日本語で「私は日本にヒバゴンを探しに来ました」とか言い始めたら、それはウケずにはいられないし、「このあたりでしか飲めない美味しい酒が造られていると聞いたのですが」と言われたら悪い気はしないだろう。イスラムというと「ジ・ハード」なイメージが先行するけど、普通に人々は楽しく生活しているし、いい人達がいっぱいいるというのが、素直に理解できるのは高野氏の肩肘張らない文章(というか人柄か)のおかげだろうか。同じようなテーマの池澤夏樹「イラクの小さな橋を渡って」も良かったけど、高野氏の視点はより地べたに近いというか、路地裏感が強いという感じでこれまたとても良かった。 

 

 

 

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