○「本のページ」第18部 −ナマジの読書日記2024−

 

 最近読む量減りましたが2024年もダラダラと更新していきます。



<2024.9.21>
 最近読んだ漫画で面白かったのをいくつか、 
○Cuvie先生の「絢爛たるグランドセーヌ」25巻、本格的バレエ漫画で今主人公は英国ロイヤルバレエスクールに留学中なんだけど、新型コロナのパンデミックで帰国を余儀なくされ、ステイホームで制限だらけでまともに踊ることさえできない中つぶやいた「踊ることが不要不急って、そうかもしれないけど・・・私たちにとってはそうじゃない」っていう台詞にあの当時を思い出さずにいられず心底共感できて胸に来た。友人の「でもエンタメも生きていくのに必要だよ、そうじゃないみたいにいわれて・・・モヤモヤする・・・」っていうのにも大いに頷くところ。Cuvie先生あの時のいやな空気に違和感感じてた人間の気持ちを上手にすくい上げてくれていて救われる気がする。漫画なんて不要不急の代表みたいに思われているかもしれないけど、絶対に少なくとも自分には必要なものであり、本作の続きも待ち遠しい。
○丹波庭先生の「トクサツガガガ」は物価高のおり経費節約で昔読んで面白かったのを再読のパターンで、主人公は特撮オタクのOLさんなんだけど、オタクあるあるが痛いほどおかしくて声を出して笑ってしまう。オタクのなかでも特に特撮関係は濃くて俗に”特撮3倍段(剣道は武器を使うので徒手格闘の武術と比べると戦闘能力が同じ段なら3倍相当という”剣道3倍段”のパロディー)”と言われるぐらいなんだけど、とにかく仕事や人間関係、日々の生活のピンチやらを特撮作品の場面に当てはめて何とかしようとする”特撮脳”がひどくて最高。たまに真理を突いてて鋭いのも良い。
○谷口ジロー先生の「犬を飼う」は、犬を看取る話で猫飼ってる自分にも身につまされる感じで心が痛い。
○オイスター先生の「新婚のいろはさん」1〜8巻、この人の「1/6ガールズ」が完結して面白かったので他にどんなの書いてるか読んだら、都会に出て漫画家になった主人公のところに幼なじみのお姉さんが押しかけ女房でやってきて、っていうホノボノした4コマなんだけど、主人公が結婚していろはさんとの生活を通じて、ひたすらに無駄を削いで漫画を描いていたのが、読者に寄り添うような漫画を描くようになるっていうところが、オイスター先生にもかぶる感じがして味わい深かった、過去作はとんがってシュールな作風のが多く、最近の作品は比べるとわかりやすくエンタメしている。作中でもそれを堕落とみるか進歩とみるかって議論があったけど、どちらでもあるんだろうなと思う。一読者的にはサービスメンテンのエンタメに仕上がってる最近の作品のほうが楽しめた。なかなかにやる漫画家さんである。   



<2024.4.8>
○サイモン・シン「フェルマーの最終定理」、ビワコオオナマズ釣らせてもらったSさんからお薦めされて、白土三平のマンガは愛読してるけど普段本はあまり読まないと言ってたし、結構長いつきあいだけどこれまで本を薦められたこともなかったので、なんでじゃろ?と思ったけど読めば分かった。たった一つの理由、それは面白いから。フェルマーの最終定理が証明されたってのはだいぶ前に話題になってたので耳ににしてはいたけど、数学のできない理系を自認するワシには縁の無い世界でありそんな難しい話チンプンカンプンだしぶっちゃけ興味なかった。本書でも難しい数学的な技術のところは丁寧な解説にもかかわらずサッパリ分からんかった。にもかかわらずクソ面白い。300年以上、あまたの天才の挑戦を撥ねつけ続けた難問を、ワイルズ博士が古今東西の数学者達の編み出した技術を駆使して8年の歳月を掛けて打ち破る。古今東西の数学者の中には重要な鍵となった予想を提唱した日本人数学者もいたし、この難問に敗れ去った天才達ももちろん含まれた。数学はもちろん様々な分野で技術の基礎となる学問であるけど、このレベルの難問となると現実的な応用云々よりむしろ人の知識欲の飽くなき挑戦の色が濃い。人は失敗しても敗れ去っても、知識を蓄え伝え、300年の時をかけてでも知りたいことを知る。その壮大な知的冒険と最後の扉を開いた天才の最後の最後の産みの苦しみ。極上のエンタメノンフィクションに仕上げた筆者の力量にも感服。釣りの時合い待ちとかで携帯で読んでたけど、最後ぶっ込んだ仕掛け放置して読みふけってた。アタリがなくて中断されずに幸いだった。
 

<2024.4.7>
○鳥山明「ドラゴンボール」全42巻、鳥山明先生が亡くなられてキンドル版購読済みなので再読したけど、やっぱり面白い。まあ説明いらんよね。鳥山先生には楽しい時間をありがとうという感謝しかない。安らかにお眠りください。
○はまじあき「ぼっち・ざ・ろっく!」1〜6巻 アニメ超面白かったので原作マンガも読んでみたけど、原作の段階で既に面白すぎる。だいぶアニメ制作陣の腕が光る感じで原作はそれほどでもないかなと思ってたけど失礼しました。良い原作を良いアニメ制作陣がアニメにしたからこそのあのデキの良さだったということか。
○大武政夫「JM」は「ヒナまつり」の作者の少女と殺し屋がオレがアイツでアイツがオレでな喜劇。もう「こういうんで良いんだよ」っていう感じのコテコテのギャグが相変わらず腹筋を崩壊させにくる。
○Kashmir「百合星人ナオコさん」OYSTER「超可動ガール1/6」「超可動ガールズ」なんて言うことはないんだけど、何度も読み返してしまうマンガってあってそういう作品。自分でもなぜか分からんけど好きなんだろう。


<2024.1.24>
 ○祝「ダンジョン飯」完結、最初ロールプレイングゲームの世界の迷宮で魔物を料理して食べるという、九井諒子先生独特の感性の変なグルメマンガとして始まったのが、レッドドラゴンを倒すあたりから本格的なファンタジー冒険モノとして覚醒し、最後までクソ面白いまま走りきった。「ただひたすらに食は生の特権であった」という締めくくりは、この物語が内包する結構深めの題材を端的に表しているようで感慨深い。個人的には猫娘イヅツミの猫々しさがいたくお気に入り。あとポリコレをおちょくったような真っ黒エルフのフラメラのキャラクターデザインも秀逸だと思う。デビュー当時から独特の感性で天才の呼び声高かった九井先生の堂々の代表作となった。アニメも良い感じに始まっててどこまでやるのか何期でやるのか楽しみである。
 ○「勇気あるものより散れ」〜5巻、出世作「ガンスリンガーガール」では、サイボーグ化され洗脳されて諜報機関で運用される寿命に限りのある少女達の、限られた命だからこその「生」を描いた相田裕先生が、桃源郷の一種である”化野”で不老不死を手に入れ、それ故に権力者に利用され続けてきた一族の「死」を描く。不死の少女シノとその眷属となる戊辰戦争の生き残りの元会津藩士”鬼九郎”の2人を中心に様々な陣営の思惑が錯綜する群像劇。シノは長い間、不死の兵を産むためにその任を受けた男と交わらされ続け心を病んだ母の死を願う。副題に「She know why kill」とあるのは「なぜ彼女は殺すのか?」という問いであると同時に「シノはなぜ殺す(べき)か知っている」という、90年代っぽいダブルミーニングであることに気がつくとちょっと嬉しい。先生の作品では青春群像劇「1518!」も面白かったけど、やっぱりこの人の描くバトルシーンは特筆モノであり、剣劇シーンが今作では多いので人の生と死という重い題材も楽しめるけど、単純明快に格好良くて痺れる面白さがこれまた醍醐味。滅茶苦茶面白くなってきた。

 

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