○最速の魚はどいつだ?!

 

 世界記録を集めた本、いわゆるギネスブックには世界最速の魚としてバショウカジキがあげられているそうです。

 

 嘘ばっかりこきやがって困ってしまいます。(註1)

 

 私の記憶が確かならば、バショウカジキを最速として認定した根拠はハリがかりしたバショウカジキが100ヤードのラインを引き出すのにかかった時間が3秒であり、時速に換算すると、91.44(メートル換算)÷3で秒速が出て、掛けることの60×60で時速109.728キロとなり時速約110キロといわれているのだったと思います。

 

 突っ込みどころが多すぎて何から突っ込めばいいのか迷ってしまいますが、肝心な点は海の魚がどれくらいのスピードで突っ走れるのかということは実はほとんど測られていないという事実でしょう。たまたま認定に価する推計値が出てきたバショウカジキが認定されているだけで、非認定でもっと早いヤツが海の中にはまだまだいるとにらんでいます。

 

 だいたい、110キロ出したときのバショウカジキはドラグテンションなりラインを引っ張っていた負荷なりがハンデとしてついていたはずで、彼も110キロでは「オレはもっといけるぜ!」と不満があるでしょう。

 

 水中でのスピードを考える上で重要な点としては、とにかく水は空気と違って抵抗が大きく粘性が高いという物理的特性を持つことでしょう。

 一般的に表面積や断面積は体長など長さの2乗に比例していきますが、体積、重さは3乗に比例していくので、水中移動中の表面抵抗などは魚体が大きければ大きいほど影響が少なくなるそうです。(重さが3乗比例で大きくなっていくと、摩擦面である表面積が2乗比例で大きくなるより影響が大きく、移動体のエネルギー量は質量に比例するから大きくなるにつれ相対的に移動のエネルギーが摩擦の影響を減じていく・・・のか?物理自信なし!!)(←ウソでした!追加注参照)

 

 後でまた触れますが、高速で泳ぐ魚の体には表面抵抗を減らすための適応が見て取れます。

 粘性という点でても、小さなアリは水の粘性にからみとられておぼれてしまうことからも分かるように、小さいモノほど大きな影響を受け、大きくなれば影響が小さくなってきます。

 こういった大きさの違いで現れる影響は、抵抗と粘性が高い水中ではことに大きいことから、単純に同じような体の形や組織や機構をもつ魚が相似的に大きくなっていくと大きい魚の方がスピードが出るということになっています。

 だからこそ、有名なアメリカで撮影されたクロマグロがブルーフィッシュを補食するシーンの連続写真(ソルトウォータースポーツアングラーズのウェブサイトの「レコードショット」の「永遠のランナー」で紹介されています)にみられるように、クロマグロは胸びれを開いて旋回性能を高めると共にブレーキを効かせて、減速しながら獲物の「スピードで劣る」ブルーフィッシュを補食するというようなことが可能なのでしょう。

 

 ということは、バショウカジキと同じ形で同じような筋肉を持った魚で更に大きな魚がいれば、単純に考えてもっと早く泳ぐはずです。

 

 バショウカジキとよく似た体型の魚としては、まずマカジキが思い浮かびます。バショウカジキが100キロ超えることはまれなことを考えると、100キロ以上に成長するマカジキがもっとスピードを出せると考えることは妥当でしょう。

 この2種は、カジキの中では身質が良く食味も良いとされていて、要するにカジキとしてはあまり筋張っていないよく似た筋肉を持っているので、筋肉の面からもバショウカジキが特別なモノを持っているとは考えにくいです。

 バショウカジキのシンボルともいえる大きな背びれも、高速遊泳時には折りたたんで収納しているのでスピードにはマイナス要素にはなってもそれが原因で速いということはなさそうです。

 

 さらに、バショウカジキやマカジキのやや扁平した体の断面と比較して、かなり分厚く筒状に近い体型になりますが、クロカジキやシロカジキ、メカジキも似た外見をしています。

 サイズではクロカジキが900キロ近い記録が残っており、他の種も大型は500キロを超える巨人達です。

 メカジキはやや深海性ともいえる性質でちょっと異質ですが、クロカジキやシロカジキはマカジキと同様、外洋の表層を回遊し、これまたスピードには定評のあるカツオなんかを捕食しているので、特にスピードで劣りそうな要素は見あたりません。

 おそらく、500キロを超える巨大なカジキのダッシュの速度を海中で測定するなどということは実際問題無理にちかいので計測されていないだけで、こいつらが海中で最も速く泳ぐ魚であろうという推定は最有力な説ではないかと思っています。

 

 ということで世界最速の魚はカジキの中でも最大級の「クロカジキ」です。めでたしめでたし。

 

 とは終わらないのが、私のしつこいところで、どうもカジキが一番速いという整理に、なぜか頭の中で違和感がつきまとって離れません。

 

 あんな、頭にツノ生えているような魚が最速なのか?速さを追求したら、もっと流線型でシンプルな砲弾みたいなデザインになるんじゃないのか?

 という疑問が湧いてきます。もしあの形が速いのなら、なぜ多くの高速で泳ぐ魚はツノが生えていないのでしょうか。

 カジキのツノやバショウカジキの背びれは、体が大きいことからスピード的には餌の魚より充分速く泳げるので、「スピード以外の要素で餌をつかまえやすい仕組み」として発達してきた器官で、スピード的には良くて影響なし、へたするとスピードを殺す要素となっているのではないかと想像してしまいます。

 

 という風に考えて、もっともシンプルなスピードのみを追求したような体型で、かつ巨大な魚はいないものかと考えると、やはりそれはクロマグロだということになります。

 マグロ類は、紡錘形の体型、鱗を減らし弾性に富み粘液質で水の抵抗を減らした皮膚、折りたたんで収納できるヒレ、発達した血管網である奇網により筋肉の温度を高く保つシステムなど、高速で泳ぐために「進化」という名の神が作りたもうた最高傑作の一つといって良い魚です。

 中でも、クロマグロは太平洋を横断して回遊するという大回遊をやってのけ(註2)、巡航速度で60キロ、最大速度は本のタイトルにもなった時速160キロという説もある海洋のスピードスターです。

 先ほど重要視した大きさについても、最大で700キロ近い個体の報告があり、900キロのクロカジキとどちらが速いか、もし海の中で競わせることができたらどれほど血湧き肉躍るバトルになるでしょうか。

 

 クロカジキが本命とすれば、対抗クロマグロといったところでしょうか。

 

 さて、本命、対抗とくれば、穴馬も当然いてしかるべきでしょう。しかも私がもしどれが一番速いか賭けるとするなら、穴馬一本狙いで行きます。(註3)

 

 ここまで、「カジキ」と「マグロ」という2群の高速回遊魚について述べてきましたが、そこでキーワードになっていたのは、「高速回遊魚」でありかつ「巨大である」ことだったと思います。

 高速回遊魚というイメージがあまりないためか話が硬骨魚類に終始していましたが、巨大ということでは軟骨魚類のサメ族を忘れてはいけません、しかもサメの中には高速回遊魚といってもよい種が何種類もいます。

 

 そもそも、サメの仲間の原型が現れたのは、約4億年前(註4)で基本設計変わらず、マイナーチェンジでメジロザメの仲間など今のサメの形がだいたいできたのが1億5千万年前のジュラ紀とかです。

 マグロの属するサバ科魚類とカジキ科魚類はどちらもズズキ目サバ亜目に属していますが、わりとニュータイプの魚であるスズキ目魚類の出現は6千万年前と比較的新しく、これらの魚族は高速で泳ぐための進化の最先端にいるといって過言ではないと思います。

 

 しかしながら、これらのニュータイプの魚に古いタイプの魚といって良いサメが劣っているかというと、イヤイヤこれがなかなかどうしてサメからすれば、「マグロ君カジキ君、君たちまだ進化なんてことをやっていたのかい?ボクはそんなの1億年以上前にとっくに済ませてきているよ。」とでもいいたくなるような高速で泳ぐ魚としての適応ぶり、完成度をある種のサメたちは見せてくれます。

 

 代表的なのはアオザメ、ネズミザメそしてサメ界のスーパースター(註5)でもあるホホジロザメなどのネズミザメ科の一族で、マグロも持っている熱交換により体温を高く保ち活発な運動を行うための「奇網」をやはり備えています。冷血な殺し屋のイメージのあるホホジロザメも実は海水温より体温を高く保っている熱血漢なのです。

 また、これらの3種はサメ独特の上方が長い尾びれが、ほぼ上下同じ長さになっており、高速遊泳に適応しています。カジキの体表面が粘液質でありそのことによって水の抵抗を軽減していることに着目し、その機能を取り入れた水着を日本のメーカーが開発したことは記憶に新しいと思いますが、それ以前にサメの鮫肌の由来である、トゲトゲした鱗(歯と起源が同じ)がじつは、体表面の水流の乱流を押さえ高速遊泳に役立っており、その機能を取り入れた「鮫肌スイムスーツ」も開発されていました。そして、ダイバーを魅了する官能的に美しい流線型のボディ、戦闘機がサメっぽくペイントされていることがありますが、流体力学的に優れたデザインが似ているということでしょうか。

 サメもまた、高速遊泳のために神が作りたもうた最高傑作の一つといってよいと思っています。

 調べてみてもそれほど高速で泳ぐという数値が出てこないのですが、きっと本気で泳いだところを測られていないだけだと思います(贔屓の引き倒し)。

 また、大きさという点ではネズミザメは3m程度、アオザメも最大で4m程度と、クロカジキ、クロマグロに負けてしまいそうですが、ホホジロザメについては、平均的な個体が5m、1t前後と圧倒的な巨大さを誇ります。ホホジロザメの高速遊泳力がマグロ、カジキに比して遜色ないものであれば、水中での大きさがスピードに及ぼす意味を考えれば、圧倒的にホホジロザメが速い可能性すらあり得ます。

 実際に、ホホジロザメがかなりの高速で泳ぐことは、南アフリカでアザラシだったかを真下から急浮上して襲うホホジロザメが、海上高く飛び上がるという事実からも明らかです。

 1tを超える巨体を空中に舞いあげるにはいったいどれほどのスピードが必要なのでしょうか?誰か物理得意な人が計算してくれないでしょうか。ネット上では55キロとかいうスピードが出てきたりしてがっかりします。そんなモンじゃないんじゃないの?

 また、アオザメについてもフックアップすると、数百キロの巨体ですざまじいジャンプをかますと聞いていますので相当なスピードを出しているのは間違いありません。これまた、資料にあたると70キロとかいう控えめな数字しか出てこずガッカリです。

 

 どうも今のところの説では高速遊泳のサメたちはマグロやカジキに負けているようですが、案外、しっかり測定する手段が開発されれば、穴馬がぶっちぎるのではないかと期待しています。

 

 もう一点忘れてはならないのは、サメの仲間には、ホホジロザメ以上の巨人が何種かいるということです。最大のジンベイザメなどは10トンを超える怪物です。プランクトンを求めてゆっくり泳いでいる印象が強いですが、実は本気で泳いだら速いという可能性は無いのでしょうか?

 サメ界No2の巨人であるウバザメもプランクトン食で沖合の表層をのんびりと泳いでいたりするので「バカザメ」と呼ばれ、昔、三重県の波切漁港には最高級のフカヒレと肝油を求めてウバザメ突きん棒漁という勇壮な漁があったと聞きますが、波間でプカプカしていたウバザメもモリで突かれると、一気に800mほどロープを引き出して深みに潜っていったと聞いています。

 その時の「一気」が15秒以内なら、190キロ以上、200キロ近い時速で潜っていっていることになります。残念ながら今はもう無い漁業なのですが、どのくらいの時間で800mのロープを深海に引き込んでいったのか、元漁師さんにでも話が聞けないモノかと思います。

 ウバザメの本気のダッシュのスピードなんておそらく測られたことはないでしょう。マグロやカジギがいくら高速で泳ぐといったって、体重比較では数100キロ台と10トンオーバーで桁違い、その違いは大人と子供です。ウバザメはサメの中でも高速遊泳では名門のネズミザメ科の一員でもあります。大きさが水中での遊泳速度に及ぼす有利さを考えると案外ウバザメ最速はあり得るのではないでしょうか?

 

 以上、あれこれと考えつつ楽しんでみましたが、実際のところどうなんでしょう?マグロやカジキにそれほど劣らない高速遊泳力をサメが持っているかどうかが、一つのキーポイントだと思いますが、残念ながら当方はウバザメはもちろん、アオザメやホホジロザメともファイトしたことはありません。

 ただ、相模湾で良型キメジ狙いの時に、クロトガリザメが混じってくる状況で釣り人の反応を観察した結果からいうと最初のダッシュの時はマグロかサメか判断しかねているようなので、サメの方が大型の場合が多いことを考えると、ややマグロのほうが速い程度ではあるものの、桁が違うほどの差は無いように感じます。

 ただし、その後延々とマグロは走りつつづけるので、ある程度でとまるサメとは引きの違いで判別できるようです。タフさではマグロに軍配が上がるようです。まあ、キメジとクロトガリザメの一事例に過ぎず、アオザメとかはもっとタフなのかもしれません。いずれにせよ一般的に、高速で泳ぐタイプのサメは同サイズなら多少マグロより遅くとも大きさのもたらす効果でカバーする可能性はあると想像しても良いのではないでしょうか。

 

 「サメ最速説」案外大穴的中するのではないかと思っています。最近はタグに計測機器や通信機器を付けて追跡するデータロギングと呼ばれる技術が発達してきていますので、どの魚が海洋最速か?という疑問にもそのうち終止符が打たれるモノと期待しています。

 

 

 

 

(註1)常々「マンボウは3億個の卵を産む」というフレーズには、腹にたくさん卵があるからといって、それを全部産むかどうかも、逆にそれ以上生み続けるかもわからんだろと突っ込んでおりましたが、そのマンボウの抱卵数(お腹に一度に入っている卵の数)が3億個という有名なギネスブック記録もおかしいと指摘しておきましょう。

 この根拠になったマンボウの個体は北隆館の魚類図鑑によると1.3m程度のサイズだったそうです。マンボウで1.3mは普通サイズであり、デカイのは3mにもなり、体重1tを超える超巨大魚です。ジンベイザメとか巨大な軟骨魚類の陰に隠れがちですが、密かに硬骨魚類では最重量を誇る巨人です。1.3mの若造が3億ならもっとデカイ個体は1桁違う抱卵数でもおかしくないでしょう。と常々思っていましたが、どうもマンボウには太平洋産と大西洋産の違いの他に、1.5mぐらいになる比較的小型のタイプと1tにも達する巨大タイプがあり、場合によると4種に分かれるかもしれないとの説が出てきております。同じ種でもデカければ単純に卵も沢山抱卵するかどうかは疑問のある点ですが、種が違うとなるとなおさら巨大タイプは単純に1.5mの小型タイプの延長線上で考えて良いのか分からなくなってきます。

 と思ってネットで調べていたらやっぱりデカいマンボウの卵巣はデカいらしいです。境港でとれた1tオーバーのマンボウの卵巣は20〜30キロあったそうです。

 漁師さんの言い伝えでは、マンボウが産卵するときには付近の海面一帯が白く染まるということです。どなたか知的好奇心に溢れる研究者の方、巨大タイプの抱卵数について論文一本書いて私をすっきりさせて下さい。

 

(註2)よくカツオやメジをリリースしても、これらの回遊魚は泳ぎをやめると死んじゃうぐらいの魚だから、結局死んで無駄になるとの見解を聞いたりします。

 研究者がせっせとクロマグロを日本近海で釣り上げて、お腹に記録式のタグをぶち込んで放流したところ、無事太平洋を泳ぎ切りアメリカ側で再補されたことによってクロマグロの大回遊が証明されました。リリース大丈夫みたいです。

 クロマグロの大きいのを掛けると「こいつはどこまで泳いでいく気なんだ?」と恐ろしくなるような引きをするそうですが、ひょっとするとアメリカまで泳いでいく気なのかもしれません。

 リリースは手早く、なるべく触らずやれば相当の生存率が期待できるようです。

 

(註3)穴馬として、実はもう一タイプ別の魚群が思いつきました。白身の筋肉を持った根魚です。魚のスピードを考える上で、エンジンである筋肉について考えると、長距離を泳ぐマグロのような赤身の筋肉と、ハタやヒラメのように短距離を瞬発的に泳ぐ白身の筋肉の2種類に大きく分かれます。

 ひょっとして、瞬間的な速度を比べるなら、ダッシュの効くこれら根魚系が速いという可能性はないだろうかとも思いましたが、水中では水の抵抗が大きいので、初速はどんなに頑張ってもあまり早くできず、逆に泳ぎ始めれば慣性で推進する分も出てくるので、ある程度加速していった後のほうが速いだろうという推定と、ともかくクロマグロやらカジキやらサメやらに匹敵するほどの巨大種が思いつかないので外しました。

 白身の筋肉の根魚系の魚で最大はおそらく南洋の巨大ハタであるタマカイでしょう。300キロくらいにはなるようです。図鑑の写真で周りに群れている小魚のようにみえる魚が、40センチくらいはありそうなコガネシマアジだと気付いたときには鳥肌立ちました。

 英語ではその名もジャイアントグルーパーと呼ばれています。「タマカイ」という名前は南太平洋の島々から伝わってきたようで、南洋の島々でも日本でも「タマカイ」で通じるようです。

 

(註4)クラドセラキ(最近はクラドセラケと呼ぶようです)とかいうのが有名。現存するラブカがこれに近い特徴を持っていて「生きた化石」と呼ばれています。

 

(註5)サメというと「人食いザメ」のイメージも強いかと思いますが、何度も人を襲った記録があり危険なサメといわれているのは、海産ほ乳類食という珍しい食性を持つホホジロザメと雑食性で大きな餌でもなんでも食う、イタチザメ、オオメジロザメ、ヨゴレぐらいです。それでもサメに襲われることはニュースになるぐらいの珍事です。

 多くのサメの鋭い歯は潜在的に危険ですが、釣り上げて不用意に口元に手を持って行くなどしない限りは危なくないと思います。

 つり上げたときには、頭を横にしか振れない硬骨魚類と違ってある程度頭をもたげるような動きもでき、かつ顎が飛び出すようにして食いついてきますのでご注意を。

 一般的にサメとマグロを比べれば、釣りの世界と食の世界では「マグロ」が圧倒的な人気を誇っていて、サメは人気薄な気がします。

 サメがかかると「外道」扱いで殺されて捨てられたりしています。食の世界でもフカヒレこそ中華の高級素材として人気ですが、サメ肉本体は実際には必ずしもそうではないにもかかわらずアンモニア臭いとかいうイメージで語られがちです。

 しかし、水族館の展示や映画では、サメもかなり善戦しています。人気者といって良いでしょう。その人気は「人食いザメ」というような恐怖のイメージをともなったものかもしれませんが、いずれにせよサメという強烈なキャラクターに人は惹かれるのだと思います。

 ダイビングの世界では、マグロは目にする機会も少ない魚なのでサメの方が圧倒的に人気があるように思います。やはり大きな魚の魅力に加えサメ独特のキャラクターがダイバーを魅了するのだと思います。

 私自身も「サメ」の魅力にみせられた人間であることはいわずもがな。

 

(番外註)いわゆる「マグロ」はスズキ目サバ亜目サバ科マグロ属の魚で、クロマグロ(2種に分かれそう)、キハダマグロ、メバチマグロ、ビンナガマグロの4種の他にもミナミマグロやコシナガなどがあります。イソマグロはサバ科イソマグロ属でありイメージとしてはマグロではなくハガツオのデカイヤツ、かじき類は「カジキマグロ」と呼ばれますが、マグロとは科も違ってマカジキ科とメカジキ科(まとめてメカジキ科とする説もあり)の魚が含まれます。

 

(追加註)ご覧いただいた方から、物理関係のご指摘いただきました。魚体が大きくなると速くなるのは代謝率の関係だそうです。どっかで書かれていたことを鵜呑みにしていまいち自分でも納得いかないまま書いていましたが、間違いが分かって良かったです。ご教授ありがとうございました。

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HPを拝見させていただいて、少し気になったのですが魚雑文の、最速の魚は誰だ!という所で

>一般的に表面積や断面積は体長など長さの2乗に比例していきますが、
>体積、重さは3乗に比例していくので、水中移動中の表面抵抗などは魚体が大きければ大きいほど影響が少なくなるそうです。

と書かれておりますが、これ自体は正しいですがこれが最高速度に影響するという解釈は間違っています。
これはいわゆる舵が効きにくくなる、ということしか意味しません。

魚が出せる推進力も筋断面積、つまり二乗に比例してしか大きくなりません。
そして最高速度は
受ける抵抗(表面積”一辺の二乗”×速度×速度)=推進力(筋断面積”一辺の二乗”)
となる点で決まりますので、魚体の大きさにさほど関係しません。
(実際は代謝率の問題で体重10倍で一割程度の増加は見込めます。またメダカレベルに小さいと話は別です)

ご迷惑な無粋な突っ込みだったらすいません。

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<参考>

ウェブ

・サメの海−進化するサメサイト−  

・マンボウが旅に出る理由

・ソルトウォータースポーツアングラーズ

 

本など

・矢野和成「サメ−軟骨魚類の不思議な生態−」

・「ZIN vol.1」八点鐘

・「チャーマスバイブル」エイ出版社

・ギネス世界記録2008(日本語版)

・中村幸昭「マグロは時速160キロで泳ぐ」PHP文庫

・「魚類大図鑑」北隆館

・「魚の分類の図鑑」東海大学出版会

(2009.7)  

 

○最速の公式発見か?

 2017.7.18時事通信によると、

「一部の動物の走る、飛ぶ、泳ぐスピードが他の個体より速い理由を説明する公式を発見したとの研究論文が17日、発表された。

 この「スピードの公式」によれば、最高速度は筋力だけで決まるのではないという。なぜなら陸生哺乳類、鳥、魚などが加速を維持できるのは、筋肉組織に蓄えられた利用可能なエネルギーを取り出せる時間内に限られるからだ。

 チーターやハヤブサ、マカジキくらいの中間規模の体の大きさが、筋力とエネルギーの出力との間で最高の結果が得られる「スイートスポット」を捉えるのに最適であることを、研究チームは発見した。

 体が小さすぎると、筋肉組織の量が足りなく、大きすぎると、質量が過剰になる。

 動物の体重と動物が移動する媒体(水中、空気中、地上など)が分かれば、その動物の最高速度を90%の精度で予測できることが、今回の研究で明らかになった。

 米科学誌「ネイチャー・エコロジー・アンド・エボリューション(Nature Ecology and Evolution)」に掲載された論文によると、スピードの公式は古代にさかのぼって恐竜でも成り立つという。

 論文の主執筆者で、ドイツ統合生物多様性研究センター(German Centre for Integrative Biodiversity Research)の生物学者のミリアム・ヒルト(Myriam Hirt)氏は「最も大型の動物が最も速いわけではない。この事実に科学者らは長年、頭を悩ませてきた」と話す。

 ヒルト氏はAFPの取材に、重要となるのが筋肉だけだとすると「ゾウの最高速度は時速約600キロに達するだろう」と語った。

 だが、実際はそうではなく、ゾウの最高速度は時速約34キロだ。

 つまり、大型動物は理論上の最高速度に達する前に、筋肉から供給される「無酸素性エネルギー」を使い果たしてしまうわけだ。

(略)

 知られている中で海での最速記録を持つ魚のクロカジキは、時速130キロの超高速で水中を移動する。

(略)

 ちなみに、今回新たに発見された魔法の公式は「k=cM^d-1」なのだという。」

だそうな。デカけりゃいいってもんでもないようで、クロカジキ最速説が今のところの答えか。

(2017.7.18)

 

○最大のクロカジキ

 クロカジキの情報でコレまで目にしたなかで最大の記録が出てきたので備忘のため書いておく。

 ヤマリアの前身である山下釣具の創業者山下楠太郎著「新しい釣り漁業の技術」に250貫のクロカワというのが写真付きで紹介されていた。どこまで正確な数値か250というキリの良い数値からは疑問も残るけど、250貫はおおよそ937.5キログラムなので900キロオーバー、ハワイの釣り宿で二人がかりで釣ったので記録申請できなかったけど2000ポンド(約907.2キロ)越えてたというブルーマーリン(クロカジキ)の写真を見せてもらったことがあるけど、それ以上のようで写真付きで確認できた中では最大。1トン以上の魚食魚はいないという私の中の定説を覆すのにあと少しで惜しいサイズ。サメならいるんじゃないの?と思うかも知れないけどホホジロザメは1トン余裕で超えるけど魚食性なのは小型の時だけで大きくなると海産哺乳類食になる。

(2017.11.10) 

 

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