○タ行 −ナマジの釣魚大全−
○タイリクバラタナゴ
婚姻色もバラ色で美しく見た目カワイイながらも何ともやっかいな移入種です。元々は大陸からソウギョやレンギョの稚魚を輸入したときに紛れ込んで我が国に入ってきたとか。
他の在来のタナゴ類と餌や産卵に使う貝類の競合が問題になる以上に、在来種のニッポンバラタナゴと容易に交雑してしまうことから、遺伝的な汚染によるニッポンバラタナゴへの悪影響が問題となっています。一度混ざってしまったら取り除く方法はほとんど無いでしょう。そもそも、いちいちDNAの解析でもしない限り確定的な両種の判別は難しいです。外見的にはタイリクバラタナゴには胸びれの端が白くなり、有孔側線鱗数が多い等ありますが、中間的なものなど判別つきかねます。
絶滅が危惧されるニッポンバラタナゴの生息地にタイリクバラタナゴが入り込むような、これ以上の拡散を防ぐためにタイリクバラタナゴの移動や販売を規制する必要が切実にあったと思うのですが、特定外来生物には指定されず、今でも観賞魚店などで簡単に入手できます。飼育者等が多い故、規制することにより自然界に放流されてしまうことを懸念したのかもしれませんが、同様の懸念があったミシシッピアカミミガメについては特定外来生物とされており、選定のセンスの無さというかちぐはぐさを感じずにはいられません。ニッポンバラタナゴの生態的地位がタイリクバラタナゴに置き換わってしまうことは大した問題ではないという判断でしょうか?理解に苦しむ状況です。
綺麗で釣れると嬉しい魚ではありますが、その存在のヤバさは充分認識しておく必要があると思います。
○タイワンドジョウ
ライギョと日本で呼ばれている魚には、カムルチーとこのタイワンドジョウ(ライヒー)がいるのですが、タイワンドジョウは関西、四国の一部と石垣島ぐらいにしかいないので普通ライギョ釣りというとカムルチーを釣っていることになります。
当方がタイワンドジョウを釣ったのは遠征でバス釣りに行ったときに釣ったもので、釣ったときは普通にカムルチーだと思っていましたが、その後案内してくれた方から「あそこの池におるのはライヒーらしいよ」という情報を得て、写真をよく見てみると確かにタイワンドジョウらしい特徴が見て取れました。
両種はとてもよく似ているのですが、体色が紫がかることが多いことや、黒い模様が細かくハッキリとしているところ、頭部というか顔がやや短いところなど見た目の違いも慣れればわかってきます。
雨の中釣ったのですが、流れ込み付近に数匹ウロウロしていて、一匹目は足下に落としたらグネグネと歩いて池に戻っていってしまいました。2匹目はしっかりキャッチして写真を撮ってあったため、後から検証が可能だったというところです。
原産地の一つである台湾島では、美味しいため乱獲されて絶滅寸前だとか。替わりにタイから移入したプラーチョン(ライギョの一種)が台湾の人々のお口に合わなかったのか、単に食べる習慣がないためか、リリースされていて増えているとか。ちなみに台湾ではバスは食われてあまり増えないとか。
○タカハヤ
実家の方で渓流釣りをしていたときに、この手の魚は「アブラッパヤ」という認識でいましたが、どうも調べてみると西日本に分布しているのはこのタカハヤが多いということです。アブラッパヤに比べると尾柄が太くて寸胴なイメージ。
いずれにせよアブラッパヤ同様に、ドライフライを一発で粘液デロデロにしてくれるやややっかいなお魚です。アマゴ釣り場では意外に上流域まで生息していて、淵なんかをなにげに狙うと釣れてきたりする魚です。あまり喜ばれていない魚ですが、せっかく釣れてくる魚ですから愛でてあげてください。
○タケノコメバル
ベッコウゾイと呼ばれ親しまれている東北方面はじめ北の方の魚というイメージがありますが、元々タケノコメバルという呼び方は関西の呼び名のようですし、実は九州でも釣ったことあります。
瀬戸内海あたりでは種苗放流の対象ともなっているようで、今後よく釣れるようになるのではないかと期待しています。
東北のテトラで穴釣りなどしていると25センチクラスが釣れてきて、そのぐらいの大きさの魚かと認識していましたが、釣具屋の写真や魚拓で50UPの個体もいることをしり驚かされました。
ソイの仲間としてはやや細長い特徴的な体型と大きめのヒレをした特徴的なルックスをしています。色はまさにベッコウのような黄褐色と黒褐色の模様でこれも独特。
この手の根魚は美味しいと相場が決まっていますが、中でも評価が高い魚です。
○タチウオ
なにげに釣りの対象として、食べる対象として人気の魚ですが、よく見るとヘンな魚です。何しろビローンと細長く平べったく、ウロコもなく銀色のグアニン色素で鏡のようにギラめいていて、顔は歯が鋭いエイリアン顔で、泳ぐ姿勢が基本立ち泳ぎだったりする。
ちなみに、縦で泳いでいるときと横になって移動するときとでは、音波の跳ね返り方に大きな違いがあるので、魚探上では消えたり現れたりする魚として認識されています。
当方の実家の方では干物が好まれていますが、刺身で良し、煮て良し焼いて良しのうえに、長くてぶつ切りにするとちょうどお皿にのる切り身が沢山できる便利なその体。実は韓国でも非常に人気が高い魚です。
釣り的には、沖釣りやジギングでも人気ですが、秋以降、割と深い港湾部に接岸して灯りの下で小魚を食っているヤツをルアーで狙ったりもします。
彼らは、立ち泳ぎをしながら自らのシルエットを小さくして上方を通過する獲物を待ち受けて襲いかかるという戦術をとっているようで、ルアーに襲いかかるときも真下からギラッという感じで反転しながら食いついてきます。
九州にいたときには、港が近所だったので時期になると釣っていました。下からの攻撃のみなのでフックの位置がルアーの下側にないとかかってくれませんでした。サイズが小さくリリースのみでしたが、独特のギラッと光るアタックにはドキドキしながら楽しませてもらいました。
○タナゴ
他のタナゴ類と区別するために関東では「マタナゴ」と呼ばれることも多いです。Theタナゴ。霞ヶ浦水系で小物釣りをしていると、ギル、オオタナゴに混じってこういう在来種も釣れてきてちょっと嬉しい気分にさせられたりします。
オスの婚姻色がなかなか渋くて、腹側が黒と銀になり、全体に紫がかった渋めの色彩となり、鼻先にでっかい追い星が白く出ます。
○ダイナンウミヘビ
およそ魚の常識を外れて細長い。ウナギやアナゴと比べてもさらに細長い。ウミヘビといっても爬虫類ではなく魚の方のウミヘビで毒はないが、歯が鋭いので釣り上げるとそこそこ危険。大物になると2m近くなるとか。ちょっと魚離れした化け物じみた魚。
当方はサーフでジグを投げていたところ、グネグネと細い魚が波打ち際まで追ってきて「ダツか?」と思って何とかかけて釣り上げてみたところこいつでした。
釣り上げたあとに写真を撮ろうとしていたら、シッポから砂の中に潜り始めてびっくりしました。ちなみにシッポの先の方にはヒレが無く肉質で砂に潜るのに良く適応した体のつくりになっていました。
○チカ
ワカサギに非常によく似た魚で、東北太平洋岸ではそのまま「ワカサギ」と呼ばれています。見分けるポイントは腹びれの位置ですが、東北の海にいるヤツは「チカ」だと考えて良いと思います。
冬場でも餌を活発に食うので、冬の東北では人気のターゲット。アミこませを撒いてサビキで釣るのが主流ですが、サビキには反応が悪いときがあり、その時は1本バリの浮き仕掛けでアミ餌で釣ります。冬の東北の港は透明度が高く、ケチケチとまき続けるコマセに魚が寄る様子や、ハリに付いている餌がチカの口に入って見えなくなる瞬間とかが丸見えです。ハリに付いた餌が見えなくなったときがあわせのタイミングで、そのあたりの見釣りの面白さが独特で燃えます。手がかじかむのも無視して夢中になれるものがあります。
食味はまさにワカサギと同様で、唐揚げや天ぷらで非常にオツな味。釣り場に携帯ガスコンロと小さな鍋を持ち込み釣りたてを食べたこともあります。寒い季節の楽しい想い出。
○チチブ
ハゼ釣りしていて、足場近くの捨て石周りなどで釣れてきます。頭でっかちで黒くて愛嬌のある顔をしていますが、食べではなさそうなので海に帰ってもらっています。
ヌマチチブという非常によく似た魚がいて、ハッキリいって区別かつきません。海水にいるのがチチブでもろ淡水にいるのがヌマチチブぐらいに思っていますが、汽水のはどっちかと聞かれるとウーンと唸らざるを得ません。この辺のハゼ類の分類は天皇陛下の専門分野だったと思います。
○チャンネルキャットフィッシュ
「アメリカナマズ」が標準和名になりそうなぐらい定着しつつありますが、図鑑では英名由来のチャンネルキャットフィッシュが使われています。
2000年代に入って霞ヶ浦をはじめ利根川水系で爆発的に増え始めたこの魚。今では定置網に入る漁獲物のうち重量では5割を超えるとか(ちなみに数ではブルーギルが最多)。
霞ヶ浦では食用として養殖もしていて、ハンバーガーとか燻製とかの商品開発も行われています。原産地のアメリカ南部では人気のある食材だし、食べで不味いわけではないので積極的な利用により個体数レベルを低く保つのが考え得るベターな手法だと思うのですが、なかなかこの手の新しい魚種に対する抵抗は大きく、単に味が良ければ受け入れられるというものではないので難しいところです。
また、特定外来生物に指定されているので「活魚」で流通できないというのも利用の妨げかなと思います。泥臭い場所で釣った場合、泥ぬきができないので「食べる」という選択肢が無くなります。
釣りの対象としては、今現在異常に繁殖していることから最高のターゲットで狙い時だと考えています。年々釣れるサイズが大きくなってきているのにも期待が膨らみます。
特に、ブルーギル等を餌にした泳がせ釣りは、いかにも大物狙いの雰囲気がたのしめて気に入っています。蒸し暑い夜、じっと待っていると、いきなり竿を引き倒すようなあたりがきて、かかるとドラグ逆転させてグリグリとトルクフルに走っていき、止めようとするとガクガク首を振って暴れます。
日本記録の12キロ弱は現実味はあるのではないかと思って密かに狙ってます。ちなみに今のところ5キロぐらいまでしか釣れてませんがまあこうご期待というところでしょう。
○ツバメコノシロ
港で小アジを釣っていたら、口が体の下についていてヒレがヒゲのようになっている変な魚が釣れた。ツバメコノシロでした。独特の見た目なので一度覚えれば間違うことはない。知人が「サーフで口が下の方についている魚を釣ったけど何という魚かわからない。」と聞いてきたときにも、「多分ツバメコノシロ」と答えたところあたりだった。
オーストラリアの方にはこれの仲間で大きくなるスレッドフィンサーモンというのがいて釣りの対象として人気だそうだが、日本のツバメコノシロはマイナーであまり知られていない魚というところ。
○ツムブリ
黄色と青のラインが美しいブリをもっとスマートにしたような回遊魚。英名はレインボーランナーとか。
このツムブリ、釣り上げてもバタバタと暴れ回ることでも有名。沖縄のパヤオ周りで釣っていたときに、スイベルにフックを付けてハワイアンスナップでジグを連結していた釣友が、ツムブリ釣る毎に釣り上げたツムブリに首を振りまくられてジグを吹っ飛ばされて周りの爆笑を誘っていたのが思い出されます。
船の魚艙に入れると同じ方向に回り続けるので「トリカジマワシ」というと徳島の船で聞いたのですが、ネットで調べると「オモカジ」という別名も出てきたりして、いったいどちらに回るのかよく分からなくなってしまいました。
○テッポウウオ
パラオに行くと沢山いる。離島の港にも普通にいてミノーなんかに食ってくるが、特に多いのはマングローブの河川。当時その川にルアー持って入り込んだのは2組目とかでほとんどすれていないメッキやらがバコバコ釣れた上に、テッポウウオもガンガンつれた。テッポウウオは流れの緩くなったような場所のマングローブの中に多くいて、マングローブの根っこの間にぶつけるようにしてルアーを投げ込むと群れでルアーを襲ってきた。ミノーの他にバイブレーションも良く効いた。
もう一度いく機会があれば、是非フライを持って行ってフライで釣ってみたい。どこかのブログでフライマンが、わざとマングローブにフライを乗せて、テッポウウオに水鉄砲で落とさせて釣ってみたいと書いてるのを読んだ記憶がありますが、まったくその気持ちはよく分かります。
○テナガダコ
干潟に穴を掘って棲んでいるらしいタコで、韓国で生きたままたべるあのタコと同じ種類だと思うのですが、九州ではちょっとした干潟周りや河口の港で夜、餌の蟹などを探してウロウロしているのがいます。潮が満ちてくるのにあわせてフワーッと泳いできたり、岸壁をそろそろと這い回っていたり、意外とあちこちで目にできます。これを餌木やらタコジグやらを使って釣るのですが、見えているとガバッと襲いかかってくるのが見えて最高に楽しかったです。
韓国に行ったときに、生きたままぶつ切りにした足をごま油と塩で食べましたが、うあ顎に吸盤がくっついたりしてちょっと驚きますがなかなか美味しかったです。
○トビヌメリ
いわゆるメゴチの仲間。実はこの仲間も色々とあって見分けるのが難しいが、トビヌメリは臀ビレに特徴があり他と判別できます。
同じ研究室の人間がこれを対象に卒論を書いていたので、サンプリングにつきあってさんざん釣りました。けっこうハリを飲まれたりもしましたが、無理に外さずにハリスを切って持ち帰ると、そのうちハリをはき出したりして助かる個体も多く、リリースをする上での参考にもなりました。
体をくねらせず腹びれだけを使った独特の移動方法でちょこまかと動き回る様はなかなかにユーモラスで和ませてくれました。
○トラギス
釣ろうと思って釣れる魚ではありませんが、投げ釣りなどでたまに釣れてくる魚。近縁のクラカケトラギスとかとあまり気にして区別していない気がします。
沢山釣ったことがないので食べたことはありませんが、天ぷらにするとかなり美味しいとか。
○ドロメ
ハゼ釣りの時に、良くこんな小さい魚がかかってきたなと感心するような魚。
(2010.8,9)