○ボガグリップ(エスタボガタックル)
ボガグリップを初めて知ったときは、シーバスとか普段釣っている魚は口つかめばいい話だし、特に必要ないと思った。値段が100ドル以上すると聞いて、さらに買うことはないだろうという思いが強まった。
しかし、実物を借りて実際に魚をボガグリップでぶら下げた後には、購入の意思が固まっていた。
ボガグリップの機能はシンプルである。魚の口、主に下あごをはさんでつかんで持ち上げることができる。その時に重さも量れる。魚を放すときは魚をはさんでいる金具を開かせるため、金属の筒に被さった樹脂製の部位を持ってスライドさせるだけである。
ただそれだけの道具なのだが、とても良くできている。その完成度の高さ、道具としての単純な機能の中にある確かさがこの道具を愛用する要因になっているように感じている。
魚をつかまえる部分はステンレスでできたUFOキャツチャーのつまみ部分というかマジックハンドのような形の金具なのだが、これがいったん魚の口の骨の部分など引っかかりのある部分をとらえると、魚の重さでその金具が閉まる方向に力がかかり、がっちりと保持してまずはずれない。
シーバスやシイラなどばたばた暴れる魚も、ボガグリップをかけて持ち上げてしまえば、少なくともルアーがぶら下がっている口があちこち振り回されることはなくなる。
また、コイのようにどこをつかんで良いのか分からない魚や、サワラのような歯の鋭い魚をランディングしたり持ち運んだりするにも重宝な道具である。
どれだけ暴れても落としたりすることはないのに、放したいときは一発で放すことができる。
しかも、魚との接点は金具の当たっている口の一部だけであり、リリースするに当たっては、最小限のダメージで、手早く捕獲し手早くリリースできるので、他のランディング用具、たとえばネットなどよりも効果的なリリースが可能になると考えられる。
普通は下あごにボガグリップをかけるのに適当な場所があることが多いが、アメリカナマズは上あごにかけると歯の部分が引っかかって上手くいく。キハダマグロは下あごはスムースで引っかかりがなかったが、上顎横の唇に引っかけるようにしたら上手くいった。中には口に適当な部分がない魚もいるのかもしれないが、当方が釣ったほとんどの魚はボガグリップでぶら下げることができた。
当方が初めて買ったのは、2001年で15LBモデルだった。もう10年も使っているのかと思うと感慨深い。しかもまだ全然壊れそうな気配はない。
買って使ってみて、あらためて、一度かければ外れない確実なランディングを実現し、陸上での魚の取り扱いを容易なモノとし、素早く効果的なリリースの手助けとなる。ついでに魚の重さやドラグチェックもできる。というシンプルな機能がとても役立つ機能であることが理解できた。もはや手放すことは考えられない。
釣りに行くときはいつもショックコードをつないで腰あたりにぶら下げている。
その後、デカいドラドを釣ったら15LBのボガでは分厚い下あごをはさむことができず、ガイドの30LBのボガでランディングしたとの話を聞いて、大型魚用に30LBも購入している。
「ボガグリップを使うと良いよ」と人に勧めると、だいたい当方と同じパターンをたどることになる。最初100ドル以上すると聞いて、「オレはいらんわ。」という反応だったのが、実際に使って魚をぶら下げてみるとあっさり購入を決定する。
そのぐらい説得力のある実力を持った道具である。
似たような機能を持った道具は後発でいろいろでている。より軽量化、デザインを洗練した進化版のようなものから、普通にパテント料はらってまねしたモノ、パテント料を払わずにパクッたいかがわしい海賊版、違う方式で何とか同様の製品を作ろうとして苦戦しているモノ、いろいろある。これらはまとめて一般に「フィッシュグリップ」という呼び方を最近はするようだ。
一分野を形成するほど、種類も出てきたし多様化してきたけれど、未だに堅牢さや確実性でボガグリップを超えるモノはなさそうであり、こういうオリジナリティーにあふれる便利なモノを開発し作ってくれた人達に感謝して敬意を示すためにも、オリジナルを手に入れてほしいとお願いしておきたい。
多少高く、多少重いかもしれないが、一度使えばその重みを感じずに釣りをすることには不安を感じるぐらいに気に入ってもらえるはずである。
(2011.10)