○私の組んだ竿

 

  竿つくり、ロッドビルディングはルアーメイキングに比べれば、作業自体は難しいことはありません。

 極端な話、必要な材料が揃ったキットを利用して作るなら、グリップ部分を接着して、ガイドを飾り巻き用の糸(ラッピングスレッド)で指定の位置に留めていき、エポキシ塗料でコーティングするだけです。

 ルアーのように形を削り出したり、凝った塗装を施したりというややこしい作業は、グリップ形状や飾り巻きに凝れば無くはないですが、必須ではありません。

 つくるといっても、普通の人間は竿の本体であるブランクから製造することはまず無く、せいぜい、ブランクの曲がりを考えて必要な場所で切り詰めたりする程度です。(註1)

 そのへんが、「ビルディング」、「メイキング」と、呼ばれ方が違う理由でしょうか。

 

 しかしながら、自分で竿を組んでみると意外なぐらい面白く、かつ、ガイドの位置や長さの決め方、切り方、ブランクの選定などで様々な工夫を凝らすことができることから、やり始めると独特の楽しさがあります。

 素人仕事では、思い通りにはなかなか仕上がってくれませんが、そこはそれ多少「設計思想」からかけ離れていても、苦労して組み上げた我が子のようなロッドで魚を釣れば、それだけで楽しさ倍増というものです。

 

 素人のばあい、何本もガイド位置や長さを変えた試作品を造って設計を詰めていくということはまずできないので、そういったプロが造るような竿を目指すのはなかなか難しいです。

 しかしながら、奇をてらわない素直でスタンダードな用途の広い竿は充分つくれますし、逆に1点豪華主義とでもいうような特徴を持たせた竿なら素人仕事ならではの自由さで造ることができます。

 どうも、売っている竿は流行に左右されがちで、同じ時代には同じような傾向の竿ばかりになっているような気がします。

 最近の細くて高感度で、申し合わせたようにリアグリップの中心がブランク剥き出しの竿(グリップケチっているようにしか見えない)にどうも馴染めない私は、売ってないなら造るという方法もありだと思っています。

 

 最近、竿が一本組み上がって喜んでいるところでもあり、これから私がこれまで造った竿を紹介していきたいとおもいます。

 ロッドビルディングの技術を学んでおくと、ガイド交換などちょっとした竿の修理から、古いロッドの修繕、気に入らない竿の改造などにも使えて便利です。(註2)

 

 

<5.5f 50LBクラス ジギングロッド>

 つくるに至った経緯とビルディングの工程詳細は、「工夫」の「安物買いの銭失いの竿づくり」に詳しく書いております。

 とにかく折れない、丈夫で短めのサメ用に使えるジギングロッドが欲しいということで組みました。

 アグリースティックのグラスメインでカーボンの芯が入っている構造のブランクは丈夫さが売りです。40〜60LBというトローリング用ブランクですからおいそれと折れるような竿にはならないでしょう。

 当初、グラスのソリッドティップを生かして先調子に仕上げようと思っていましたが、実際に必要な強度を求めて竿先を詰めて組んでみると、竿先はそれほど曲がってくれず、むしろグリップの中のブランクまで含めた竿全体で付加を受け止めて曲がるようなアクションになりました。5キロは余裕、10キロは竿は大丈夫だけど体的にはほぼ限界でパワー的にはだいたい想定していたレベルに収まってくれたと思います。

 さて、こいつで一発ゴツイのを仕留めたいところですが、どうなることやら。

9500ssと組ませます竿だけグリップ付近ティップ付近

 

 

<1f強? テトラ穴釣りロッド>

穴釣りスペシャルソリッドグラスのティップお花の柄の飾り巻き

 同居人のテトラ穴釣り用ロッドとして制作しました。

 当時同居人は、足下のテトラの隙間を狙うために折れてバットガイドぐらいしか残っていない竿を使っておりました。確かに竿が短いので足下の穴を攻めるには都合がよいように見えましたが、そういう「竿」とも呼べないような代物で相方が釣りしている(しかも結構釣りやがる)のは気分が悪かったので、まともな竿?を使ってくれということで自作したものです。

 とにかく短くて足下が釣れることが必須条件。かつ、竿先部分はグラスソリッドのティップで食い込み重視、バットは折れたカーボンの竿を利用してグラスのティップセクションにかぶせるようにして接続してあります。バットパワーがあるので強引に穴から根魚を引っこ抜けます。実際の使い心地は「もうちょっと穂先が柔らかいと食い込みがもっといい」とえらそうなことをいっておりましたが、折れた竿使ってた人間が何をえらそうにという感じ。

 特徴的なのはピンクのスレッドと、バット部の花柄の飾り巻き。

 花柄の飾り巻きはそういう柄のリボンをクルクル巻いて最後をスレッドで巻き留めてエポキシで固めてあります。

 

 このロッドは、ある年の同居人への誕生日のプレゼントとして作成したもので、彼氏手作りのカワイイロッドは大いに喜んでもらえるものともくろんでおりましたが、反応イマイチ。

 その後何年にもわたり「誕生日のプレゼントに自作のロッドとか釣り道具を用意するバカ」とことある毎に罵られております。

 ちなみに、ほかにも誕生日のプレゼントとしてウェーダーとシューズ、フィシャーマンのGTロッド等の年もあり、自分でいうのも何ですが素晴らしいセンスで選び抜いていると思うのですが、いずれもイマイチな反応でした。いったい何が気に入らないというのでしょうか?

 

 

<約5f 変則テレスコピックフローターロッド>

全景ソリッドグラスの部分が透明移動ガイド収納時収納時全景

 アグリースティックの7F2pcのブランクスを入手したところ、想像していたよりパワーが無くイメージと違ったので、しばらくほったらかしにしていました。

 フローターでバス釣りするようになって、通常のロッドで問題ないといえば問題ないのですが、短くて竿先に手が届く長さだと、竿先にラインが絡んだりといったトラブルにフローターのうえで対応しやすく、かつ至近距離からの釣りになることが多いので短めで取り回しの良い竿があると良いなと思うようになりました。

 そこで、眠っているブランクスを使ってスピニング用のショートロッドを造ってみようということになりました。さてどう組んでいこうかと考えると、竿先の柔らかさはちょうど良い感じなのですが、単純にバット部分を切って1&ハーフのような繋ぎ方にするとバットパワーが全然たりないグニャグニャな竿になりそうです。バス釣りですから障害物周りから引きずり出すだけのバットパワーは必須でしょう。かといってバットを生かしてティップを切るとアクションもクソもない単なる棒のような竿になってしまいます。

 あれこれ考えていて、ふと「バットを半分くらいに切った太い方にティップ側を突っ込んで変則的な振り出し竿にしたらどうだろう?」と思いつきました。

 ブランクスをいじりながら、それぞれの直径などを測ったり、バットからティップを突っ込んでみたりしているうちに、うまくいきそうだという感触を得ました。

 エイヤとバット側を2つに叩ききり、太い方にティップを突っ込んで振り出してみると長さもちょうど良い感じだし、曲がり具合も良い感じで接続部分に過度の負担が来るような極端な感じではなく、割とスムースに曲がってくれます。もともと、ソリッドティップの部分が良く曲がる先調子の竿だったのでうまくはまってくれたようです。

 さて、ではガイドを付けようと曲がり具合を見ながら位置を決めていくと、リールシートの位置から考えてどうしても、一番バット側のガイドは当初予定していたバットのブランクの先端では近すぎて上手くいきそうにありません。

 悩んだ末、切って残っているブランクを使ってティップ側のブランクの適切な位置にスライドしてはまるようなガイドを作成しました。真ん中の写真に写っているのがそれです。

 あとのガイドは、通常の位置決めで問題なくバットガイドだけが誘導式で、かつ、バット内に少しだけティップセクションが収納できるという変則的なテレスコピックのロッドができあがりました。

 使い心地は非常に良く、ほぼ思惑どおりの竿に仕上がったと思っています。

ジョンボートにて

 この竿を造ってからはフローターの釣りではこの竿ばっかり使ってました。

 

<4.9f 14LBクラス グラスソリッドジギングロッド>

全景グラス竿飾り巻き

 この竿は、沖縄のパヤオに行ったときに、船で借りたショートロッドがジギングしやすく気に入った同居人が、「短いジギングロッドが楽で良い」と言いはじめたことに端を発します。そんなモン200gとかのジグで100m以深やる訳じゃないし、パヤオやシイラ船でのジギングならシイラ竿でシャクッとけば十分じゃ、と突っぱねておりました。が、うだうだうるさいので、こんなモン短ければいいんだろ、ブランクの重量も気にしなくて良いし、丈夫で安いソリッドグラスでいいだろうと、3000円くらいのブランクを買ってきて、チャッチャと適当に作りました。

 いい加減で安っぽい作りが見た目にも明らかなためか最初は同居人も小馬鹿にしておりましたが、使ってみるとショートロッドの利点である、軽いしゃくり心地はしっかりおさえられた竿になっていて、お気に召していただけたようである。

 この竿なら多少荒っぽく使っても折れそうにないし、魚も勝手にかかるヌルい調子なので釣果も上々。サワラがかかったときは、えらいしつこくフッキング繰り返すなぁと思っていたら、かかっているのが分からずしゃくり続けていたようです。

 80のサワラがガンガン竿先絞り込んでいるのにかかっているのが判らないレベルの人間にボコスカ釣られるとムカつくのひとことです。

サワラ 

 

<7f 20LBクラス 2pcシイラロッド>

センター2ピースのシイラ竿飾り巻きの部分

 スミスのオフショアスティックを同居人に使わせると、シイラ船で当方は使う竿がないということで、1本シイラ竿を作ることにしました。これが初めてのロッドビルディングでした。

 センクロイ製の20LBクラス7Fのブランクスをカベラスでゲットして、ガイド位置などはオフショアスティックの真似。飾り巻きなんかもいっちょまえに施して、気合いを入れて作りました。

 淡水でも使いたかったので、黒に青のスレッドで渋めのカラーリングに仕上げました。

 特に際だった点のないどうということのない竿ですが、使いやすく用途も広く重宝してます。このクラスのシイラ竿は現在グリップでジョイントする形式が一般的で、電車や飛行機で運ぶには長くて邪魔。真ん中分けの2pcは持ち運び便利だしアクションも素直で使いやすいと思います。

 シイラ竿として作ったので、もちろんシイラ、カツオなどを釣るのに活躍していますが、同居人のライギョロッドとしても大活躍しました。当方、これで河川のビワコオオナマズもゲットしています。船でイサキ釣ったりもしました。最近の竿は他との差別化をするためにいろんな特徴を打ち出してますが、ベーシックな竿が結構使いやすかったりします。

太いライギョ釣りやがって琵琶湖中ナマズ

 

 

(註1)ブランクスはカーボンなりグラスファイバーなりのシートを金属の芯に巻き付けて圧力かけて焼きあげて製造します。ブランクス造っているメーカーにオリジナルのブランクスを発注するには最低30本単位だと聞いたことがあります。

 竹ならまだ素人でも手が出そうな気がしますが、そこはそれ職人技の領域でまともなものができるかどうかとはまた別の話。

 

(註2)アメリカナマズ用に愛用している、アグリータイガー7fなど、ガイドが気に入らず交換、次にグリップが気に入らず交換ということで、改造の結果、元から残っているのはブランクスだけというほぼ最初から組んだのと同じような竿もあります。

 

 

 

(2009.6)

 

 アカエイ釣りのために竿を新調した。1m×3の3mのダイワの古いグラスの胴付き竿がガイドが腐って105円でたたき売られていたので、ガイド総とっかえで使えるように修繕。トップはローラーガイドがついてた。

元

 エイとのファイトで重要なのは、ゴミ袋持ち上げるような鈍重なファイトにもへし折れない、もしくはへし折れても惜しくない竿。さらに3ピース1mの仕舞い寸法は自転車や電車での釣行にも便利。

 トップガイドは、太いグラスの穂先に合う太いガイドが入手できず、逆にグラスの穂先にはめ込む形でガイドを突っ込んでエポキシで固定。フォアグリップはテニス用グリップテープ巻いただけだが、グラスの太い竿なので充分。

ガイド、フォアグリップ全景

 2〜3キロドラグで良い感じに腰まで曲がってくれる。テーパーもクソもないような全体調子。

負荷テスト待機

 この竿がメシメシ軋むほどのアカエイが釣りたい。 

(2013.8)

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