○ペラジック・スプリットリングプライヤー(サンスイ)
−これだ!決定版スプリットリングプライヤー−
釣りをしていると、釣りを快適に楽しむにはいわゆる「釣り具」のほかにも、あると便利な道具が様々ある。釣り具メーカやら、アウトドアメーカやらの製品や、時には釣りにはあまり関係していないメーカーが釣りを念頭に置かずに作った製品にもお世話になったりもする。
今回は、そんな釣りで使う道具の中でも最近ではプライヤーと呼ぶほうが多いのだろうか、いわゆる「ペンチ」についての話である。
釣りにおいてペンチは、魚の口からはりを外す、はりの返しをつぶす、ラインを結ぶときにラインを挟んで締めこむ、ニッパー部分でラインを切断する、ヒートンのねじ込みやルアーのラインアイの左右調整による泳ぎの調整等々の役目を果たしてくる。
また、スプリットリングの交換にはそれ用の、リングの隙間をこじ開けるための工夫がこらされている、スプリットリングプライヤーというものがあって、いろんなタイプが存在している。
当方は普段のシーバス釣りあたりでは、安物の普通のいわゆるラジオペンチを1本伸びるコードにつないでウエストポーチに入れている。コードにはペンチの他にラインクリッパーがぶら下がっている。ペンチはステンレス製ではないので、赤くさびているが、気にせずCRCぶっかけながら使っている。特に不満はない。スプリットリングプライヤーはシーバスルアーについているもの程度なら爪でこじ開けて外せるので特に持ち歩いてはいないが、部屋ではまとめてたくさんのルアーのフックを交換するときなど作業がはかどるので小さなスプリットリングプライヤーを一つ使っている。シーバスルアー用程度のスプリットリングであれば、このスプリットリングプライヤーでまったく問題なく快適に使っている。
しかし、長年不満に思っていたのが、200LBとか300LBとかの大型のスプリットリングを外したり、ぶっといフックのアイにはめたりするための、スプリットリングプライヤーだ。専用の物を持っていたのだが、これが、いまいち使いづらい。大型のリングを太いフックのアイに装着するには3ミリぐらい隙間を開ける必要があるのだが、かなり力を込めて握らないといけないうえに、ふとした弾みで力が抜けると、せっかく開けた隙間が閉じてしまう。いくつものGTルアーや重いジグにフックを取り付けた後には握力が無くなるぐらいの疲労がつきものだった。しかもそうやって力を込めて握っていたところ、グリップのラバーがずれて外れてしまうようになって、接着剤でくっつけたものの、その後も外れやすくすなり力がかけにくいことこのうえない。何とかならぬものかと思いながらも、使い続けてきていた。
先日のクリスマス島釣行においては、ルアーとショックリーダーとの接続を、それまで使っていた強力なハワイアンスイベルから、金属打ち抜きの丈夫なリングをショックリーダに結んでおき、スプリットリングでルアーと接続するという方法に変えた。この方法のほうが、接続金具が軽くできるのでルアーの動きを制限しないと考えての変更だ。
変更後の方法ではルアーの変更にはスプリットリングを開いて、ルアーから外し次のルアーにつけてやるという方法になるため、スプリットリングプライヤーが必要だ。従前から使っている物は前述のように使いにくいので、新たな物を買って遠征にのぞんだ。
ラパラブランドで、片方の先端がスプリットリング交換用に曲がってとがっており、根本の部分はPEラインを切断するためのハサミにもなるようで、これ一つでいろいろ間に合いそうな機能がついていた。
しかし、この製品は結果としては大失敗。ラウリ・ラパラが草葉の陰で激怒していそうなぬるいデキの製品だった。
大型スプリットリングを開こうと、隙間に曲がった先端を入れて力を込めていくと、途中までは開いていくのだが、ある程度以上力がかかるとあっさりと先の方のつまみ部分が歪んで左右にズレてしまい、開きかけていたスプリットリングを離してしまう。つまむ部分の剛性が不足しているようだ。慎重に開いていけばルアーのアイにスプリットリングを装着するぐらいはできるが、ちょっと力を入れすぎるとリングを離してしまい失敗する。釣り場でイライラした。ましてや太いフックのアイにリングを取り付けるなどとうてい無理で、結局、以前からあるスプリットリングプライヤーを持ち出してきて、力を込めてはめてやるしかなかった。
しかも、プライヤーとしてもちょっとフックが口の奥にかかっていると、ロングノーズタイプではないので役に立たず、はり外しには結局、はり外し専門の道具であるエイリアンペンチに度々登場してもらっていた。エイリアンペンチはマニピュレーターのような、マジックハンドのような、細長い器具で手元のハンドルを握ると、先端の金具がハリをつかんでくれるというもので、歯のきつい魚や、ハリが口の奥にかかった場合には大変便利なハリ外しのスペシャリスト的道具だ。
遠征から帰ってきて思ったのは、結局何にでも使える道具は何もかも中途半端であり、持ち歩くのではなく船の上に荷物を持ち込める釣りであれば、何も道具を減らすために1つでいくつもの役割を果たすような道具を選ばなくても、エイリアンペンチのようなスペシャリスト的な道具をそれぞれ用意して持ち込めば良い。その方が作業ははかどるし快適に釣りができる。ということだった。
早速、帯にもたすきにもならなかったラパラペンチの果たしていた役割を担う道具をチョイスすることとした。ハリを外す役目は引き続きエイリアンペンチに担ってもらう。ラインカッターとしては、家で作業しているとよく分かるのだが、切りにくい太いPEラインでも爪切りでバチンとはさんでラインを横に滑らすように切ると割とたやすく切れる。クリッパータイプではなくテコの原理で爪を切る、よくある爪切りがいい。これはアマゾンで良く切れそうで小型、かつリングをつけてなくさないようにチェーンにでもぶら下げられるような穴があいているものを見つけてきた。「木屋」というところの製品だが、なにげに良く切れる爪切りで、試しに爪も切ってみたところ刃がまるで柔らかい羊羹にでも刺さっていくかのごとき感触で爪が切れていく。ラインカッターとしての性能は問題ないようだ。ただ、買った後で気付いたのだがステンレス製でないので錆びやすそうなのが難点か。錆びが酷いようならステンレス製のを買い直すつもりだ。
あとは、スプリットリングを開いて着脱するスプリットリングプライヤーが必要だ。スプリットリングプライヤーで、ハリの返しをつぶしたり、ノットの締め込みのときにラインを引っ張ったりもできるだろう。
これが、結構迷った。
ウェブ上で検索してみたりするのだが、当方がいつも苦労しながら使っていたやつと同様の物か、最近流行のアルミ合金でできた、軽量化のためか穴が開いていてブルーとかに着色された小ジャレた感じのプライヤーがほとんどだ。前者はもういやだ。後者は趣味じゃない。後者のアルミ合金製のプライヤーは出始めた当時は、1万円以上と高価で手が出にくかったが、最近はデザインをパクッたような似たような商品がわんさとでてきて、3千円とかで売っており、そうなると逆にすっかり安っぽく見えるようになってしまった。買うならオリジナルだが、安っぽく見えるようになってしまっては1万円も出して買う気が失せる。
そんな感じでいまいちしっくりくる製品が無くて困っていたが、ルアーなど買いに行ったサ○スイで、ついでにプライヤーのコーナーを見ていて、ちょっと変わったプライヤーを見つけた。ラジオペンチの先端を片方だけ長くのばして、のばした部分を90度折り曲げてもう一方の先端にかぶせたような形をしている。
パッケージには「300LBSスプリットリングも楽々オープン!」とか「開けすぎないように注意」とか挑発的ともとれる宣伝文句が踊る。
気になったので、顔見知りの店員さんに、「このスプリットリングプライヤーって、ほんとに楽々なの?」と聞いてみた。
店員さんは、道具箱からそれと同じスプリットリングプライヤーを取り出すと、無言でレジ前にディスプレイされていた大型ルアーのスプリットリングを外し始めた。様子を見ようと近づこうとしたら、もうリングは外し終えられていて、リングをプライヤーにはさんだままで一言、「握ってみてください」と問題のプライヤーを渡された。プライヤーの先にはスプリットリングが、曲がった先端と、短い方の先端ではさまれているようだった。
握ってみて驚いた。
軽く力を入れただけなのに、ほんとに楽々とリングが開くのである。衝撃的と言っていい感覚だった。すごいプライヤーだ。驚きと賞賛の言葉ぐらいしかでてこない当方に、店員さんは、「このスプリットリングプライヤーはサンスイオリジナルである。」「結構古くからあるが、しばらく作っていなかったが復刻した。」「大型スプリットリング用としてはこれが圧倒的に使いやすい。」と説明してくれた。
実物を使ってみた瞬間、「あっ、これは買わなきゃダメだ。」と確定したのは、「ボガグリップ」以来のことである。実に衝撃的な出会いだった。他のスプリットリングプライヤーとはスプリットリングを開くという性能において比較にならないデキだ。モノが違う。
後で家で試しにどこまで開くかやってみたら、開きすぎて戻らなくなった。
裏面から、
スプリットリングプライヤーについてもう迷わなくて済む、と礼を言い購入した。
見た目は飾り気もなく普通のラジオペンチのようで、値段も3,360円と普通。しかし性能は桁違い。大型ルアーのスプリットリング交換で手に豆を作っておられる貴兄に是非手にしてほしい逸品だ。たぶん、サンスイオリジナル・ペラジック・スプリットリングプライヤーでサンスイに問い合わせれば通販も可能だと思う。
こうして、当方の大型ルアーを使うオフショアの釣りには、今後エイリアンペンチ、木屋の爪切り、サンスイペラジックスプリットリングプライヤーがお供してくれることとなったのである。
試しに、太い7/0のシングルフックも含めルアーのフック交換をやってみたが、全く余裕の鼻歌作業だった。手に豆作って作業していたのが馬鹿臭く思える。いい買い物だった。
(2011.10)