○リルタビー ストーム 

 リルタビー

 大きな目をした顔の表情と、おそらくプラ素材そのものに着色がなされていると思われる独特の色の感じから、製造元が一目瞭然のストームのクランク。(註1)既に廃盤のちょっと懐かしいルアーです。多くのルアー好きの方も指摘するところですが、このころのルアーたちにはメーカー毎に顔や雰囲気に独特のものが感じられて好ましく思います。

 

 ストームのクランクにはフアッツ・オーというルアーがありこちらの方がなじみがあったと思います。ファッツ・オーはストームらしい造形と多彩なカラーバリエーションが特徴ですが、スタイル自体はオーソドックスなクランクです。(註2)

 それに対し、リルタビーは普通のクランクのおしりの部分が途中でちょん切れた感じの形状で、その代わりに付属のワームの素材製の尻尾が装着できるようになっています。

 この尻尾が、何匹か釣ったりギルに囓られたりすると切れてしまい、予備シッポも使ってしまうと、尻切れトンボの本体だけが残って困ってしまいます。

 しかしある時、開高先生の「オーパ、オーパ!!」のカリフォルニア篇「扁舟にて」でサクラメント川デルタ地帯の「プロのタックル・ボックス」の写真に、おしりにワームではなくフラスカートが装着されているのをみて、はたと膝を叩きさっそく試してみたところこれが良い塩梅でした。

 それまでも自分でワームを切って装着するための隙間に突っ込んでみたりしていましたが、いまいち上手くセットできる形に整形できず、強度的に問題がありすぐに外れてしまったりして使い物にならなかったのです。

 しかし、フラスカートは根元のゴム管の部分が太くなっているのがちょうど隙間の狭くなっている部分に引っかかってくれて実にしっくりハマるのです。全体的なボリュームもアップしてアピール力も向上、ポーズさせているときもユラユラフラスカートが揺れて魚を誘ってくれました。さすが本場アメリカのプロの方法だなと感心したものです。

 

 このルアーには強烈なバイトの思い出があります。

 大学生の頃、良く通っていた野池で、あるとき夕方岸際のブッシュに定位しながら、近くを通りかかるギルの群れなどがあるとダッシュしてアタックを繰り返しているバスを見つけました。40UPの良型です。その日は当時のその池のヒットルアーとされていたレッドペッパーに一瞬追いましたが、その後は無視して相変わらずギルだのオイカワだのを狙っています。ワームもミノーも無視。

 あきらめきれずに、次の日早朝、授業の前に出撃。相変わらず同じ位置に定位していました。気合いを込めてレッドペッパーをキャスト。最初の一投でやる気満々で追ってきて「食いそう!」と思いましたが、直前でターン。その後は何度か追うがやる気無い感じ。ミノー投げたり、ワーム投げたりしても前日と同じで無視してベイトを襲っています。

 つり場で知り合った人がやってきて、「どう?」という挨拶。「結構良いサイズが居るんですけど、本物食ってるけどルアーは最初だけ反応してたけど無視されてます。」と説明、ちょっと一息ついてボイルを眺めながら情報交換して、頭を切り換えて「いっそアピール重視で派手なの投げてみますよ。」と宣言して、リルタビーにチェンジしてブッシュのチョイ沖にキャスト。

 2人の目の前で、ルアーの着水前にブッシュからバスが飛び出してきて、着水と同時に派手にバイト。私も知人も「オオーッ!」と声上げてしまいました。空中のルアーに反応して着水点に回り込む魚には衝撃を受けました。

 フッキングも決まって興奮しまくりながらファイト。護岸の上から釣っていたので、寄せてきてから池に飛び込んでランディング。(註3)あきれている知人に手を引っ張ってもらって護岸の上にあがりました。

飛び込みランディング後 

 リルタビー、これまた思い出深いルアーです。

上と同じさかな 

 

(註1)ストームといえば、特徴的なのは立体的な大きな目ですが、なぜかリルタビーは立体的ではなく書いた(吹いた)目です。でも顔はどう見てもストームに見えるところがこの時代のルアーの持つ個性ということろでしょうか。

 

(註2)ファッツ・オーのディープタイプとでもいうべきモデルにウイグルワートがあり、リルタビーのディープ版にDDTがあり、さらにDDTの小さい版のリトルタビーもありました。

 リルタビーのパッケージ内の広告には、リルタビー、DDT、リトルタビーでTUBBY’S(タビーズ)と紹介されています。ちなみにDDTというネーミングは「ディープ」、「ダイビング」、「タビー」の頭文字をとっているのだと思いますが、今では安全性の問題から使用禁止になっているノミ・シラミ用の強力な殺虫剤の名前でもあり、「効き目抜群!」てな感じを出しているのだと思います。

 

 

(註2)こうしてパチパチ文章打っているということは、池は浅かったということです。

 

 

(2008.10)

 

 

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