○大森製作所ネタ その4  

  大森ネタをブログにしたときに、サイトのほうにも再掲してまとめてたんだけど、写真データが多くなると重すぎて読み込み編集できない有様になってきたので、わけてみました。その3(2024.5)



2024年1月13日土曜日

いや~ん!エッジ!!

  昨年は色々とリールを改造したわけだけど、まだ実釣で全然試験してない改造方法があって、何かと言えば大森スピニングの”なで肩”なスプール形状をFRP板とかを使って形状調整し、ピシッと下面が平らでエッジの効いたスプールにする改造である。まあ、ワシ飛距離よりトラブル防止を重視しているので、なで肩エッジで糸巻き量少なめ運用でも良いかなと思わなくもないけど、ラインがスプールエッジに当たるのが、エッジ効かせて角だけとかになると、当然発生する摩擦は少なくなり飛距離向上のほかにもラインが傷むのが遅くなる、っていうのと糸ふけが良くなるので、軽い仕掛けを落とし込むのにラインの出が良いってのが利点としてあるようで、特に後者は切り身餌にガン玉ぐらいの軽い仕掛けで落とし込んで釣る冬の良型アジ狙いや、これまたガン玉うって鳥皮で足下狙う根魚釣りとかでは、ラインが抵抗少なく出ていく利点が生きてくるのではなかろうかと思うので、実戦導入して試験してみたい。

 ということで、昨年末に年末進行でワシャワシャ分解整備していた、タックル系タックルオート系で、まずはスプールエッジにラインが引っかかりそうな酷い腐蝕がある「タックルオートNo.2」はせざるを得ない。その他、候補としては「タックルno.2」「ニュータックルNo.1」「タックルオートNo.1」「タックルオートSS」があったけど、試験してみて”耐久性ダメでした”とかの結果になるとよろしくないので全部やっちまうわけにいかず、まあ最悪FRP板とか追加した部分を引っぺがして磨き直せば良いんだろうけど、まずはせざるを得ないタックルオートNo.2に加えて、既にタックルNo.1が改造済みでスペアスプール体制が組めるニュータックルNo.1、ついでに改造有り無しの比較もするために、この春の主力機として想定しているマニュアルピックアップ化した「タックル5No.2」と、色違い同型機の「タックルNo.2」をマニュアルピックアップ化した上でスプールエッジ形状もいじる。ということで、冒頭写真の様に3台できました。というところ。タックルオートNo.1はタックル系同様の寸法で改造可能だけど、タックルオートSSはそもそもなで肩の部分が小さく、糸巻き幅もほぼスプール上下幅なので、計測した時点であんまり改造する意味なさそうだなという感触ではあった。

 逆にタックルオートNo.2は改造の意義が大きそうで、スプール上下が12mmしかないのにちょっと少なめにライン巻いた糸巻きの幅が16mmと4mmも糸巻きの幅が広くなってる。こりゃグズグズになりそう。ちなみにタックル系、タックルオートともにNo.1サイズはスプール上下幅は13mm、糸巻き幅は11mmで実はタックル系ではNo.2サイズでも同様の幅になっている。タックル系のNo.2サイズはNo.1サイズのスプール径を大きくしたような機種でスプール大きめのスピニングは使いやすいの法則にあてはまると思ってたけど、その感覚はあっていたようだ。2号ナイロンだとNo.2サイズの方がしっくりくる。ただスプールエッジ改造すると糸巻きの径が実質大きくなるので、そうなるとNo.1サイズでも2号ナイロン快適に使えそうではある。
 でもって、基本的な改造方法は前回同様でFRPを必要な大きさの輪っかに切り出す(写真1枚目)、スプールにハメて(写真2枚目)、下に糸巻きの幅の厚紙とかの”アテ”を入れて高さを均一に斜めッたりしないようにしつつ(写真3枚目)、ティッシュでつくった紙縒りを隙間に巻き付けて瞬間接着剤を染みこませて固定、を2回ぐらいやって大まかな構造を固めて(写真4枚目で、この時点でラインをなんぼか巻いて塩梅を確かめているところ)、ロッド回しで回しつつエポキシを盛ってやり、固まったらドリルで回しつつサンドペーパーでFRPの角の面取りやら上部エポキシの形状をならすなどして(写真5枚目)、最後塗装。

 ただ、3台やったうちニュータックルNo.1はサイズも同じなのでやり方前回同様なんだけど、タックルオートNo.2とタックルNo.2は糸巻きの縮小幅が大きくてスプ-ルの芯の方までFRPが入るので、輪っかが幅広くて1箇所切り込みを入れた程度ではスプールに填められない。真っ二つに切るとどう考えても平面が保ちにくいので、1/4ぐらいをピザみたいに切り出して(写真2枚目)、切ったところから填め込んで、最後切ったピザを填める形にした。この方が格段に平面に仕上げやすいし強度的にも丈夫だと思う。ただどこまで耐久性とかが稼げているかは、1箇所切り込み方式も含め、ある程度現場で運用してみないことにはどうにも分からんので、あとは実戦導入あるのみである。

 スプール上部の色は、前回は輪っか状にもとのアルミ色を残したけど、今回はタックル系は黒でタックルオートは銀で塗りつぶした。こっちの方が表情キリッとして良い気がする。まあそのへんは趣味の問題で表面滑らかになって防水防錆性が上がってればよし。やや不安だった銀色のラッカー塗料が意外にアルミに違和感ない発色なのはちょっと儲けものかも。アルミのお色直しには使えるかも。小皿にプシューッと出して綿棒でヌリヌリしてます。
 という感じで、この冬から春にかけての体制は、カマスアジ根魚等の1号ナイロン運用が、スプールエッジ形状調整済みのタックルNo.1とニュータックルNo.1、シーバス用の2号ナイロン運用が、スプールエッジ形状調整有りのタックルNo.2と調整無しのタックル5No.2でどちらもマニュアルピックアップ仕様でラインローラーはポリアセタール樹脂製。スプールエッジ調整の有り無しで糸巻き量が直径にして44mmと41mmと差が出ておりその分の”スプール大きめ効果”的なモノは期待できるし、実際に使ってみてスプールエッジの形状をいじった効果が感じられるかどうか、ボチボチと試してみてまたご報告できたらなと考えております。

 耐久性がそこそこあって、釣ってる間にポロッと剥がれたりしないのであれば、タックルオートNo.1のボロいのもスプールエッジ形状調整してやりたい。そのうえで同型機2台あるので、ボロいほうは替えスプール要因兼部品取り兼予備機にして、セットで釣友にあげる予定。できたらスプール調整有り無し両方使い比べてみて感想聞いてみたいと思っている。そのとき、いまタックルオートNo.1とかのサイレント化部品を開発中の御仁がおられるようなので、おそらくハンドル軸に填める樹脂製の部品と、そいつが押し上げる突起が付いた逆転防止用の爪のセットだとおもうけど、それを組み込んで消音仕様にして、スプールエッジ改良までした最強魔改造仕様のタックルオートNo.1にして渡したい。くだんの釣友は”瞬間的逆転機構”がローター内に特に防水機構もなく鎮座しているスピニングをちゃぷっと海水に漬けてしまったらその後ジャリジャリし始めたそうで「これ買ったらそれでもう買い直さんでいいトラブルもないってリールはなんなの?」ってボヤいてたので、今時のフルに防水化してある、普及機レベルのある程度の値段の国産大手機種を買うか、昔の、浸水したところですぐには不具合生じないし(何なら海中で使っても大丈夫だと思う)、後々中で塩が結晶化したりしても簡単にバラせて整備すりゃ元通りの、PENNだの大森だのの瞬間的逆転防止機構が付いてない時代の実用機を、ベールスプリングだけ予備用意して使うかどっちかだと言ったら、昔ので良いというので、大森の基本的な良さが詰まったタックルオートをチョイといじったらご要望にそえるのではないかと考えているところである。「金出すよ」とは言われているけど、1500円落札と1300円落札のボロリールで友人から金せびれるかよって話で、戦闘能力というか実用性抜群に仕上げる自信があるけどロハでいい。そうやってタダであげてでも数減らさないと、スピニングが蔵に積み上がってどうしようもないの。アタイ病気が憎いっ!

2 件のコメント:

  1. C-4のスプールに似た加工施そうと奮闘中ですが中々FRP板の接着が上手く行かずズレてしまうんですね
    まだ挑戦して「完全体」にするのは諦めてません
    エッジ処理、今回の記事で参考になりましたがまずは板を綺麗に装着するところからです
    完成すればシーバス相手に再就役予定です。
    そう言えばハンドルノブの自作には手は出さないですか?

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    1. ぬこさん おはようございます

       FRPの平面接着は下に入れる糸巻き幅の厚紙でしっかり固定してから接着するのがやりやすいです。接着剤付けてから固定するより、固定して紙縒りを巻き付けて後に接着剤を染みこませる感じです。

       ハンドルノブはたまたまPENNのT字の樹脂が剥いである個体で再建したことはあります。PENNのT字の軸が太いのが苦手なので良い感じに仕上がりました。スピニングリールで改造するなら人それぞれ指や握りが違うハンドルノブが一番有用でその次がスプールエッジかなと思ってます。次点でやる気に作用する外観ぐらいかな。
       フルベアリング化?錆びる箇所増やしてご苦労さん、って感じですよね。
       
       ちなみにハンドルノブ改造はサイトの方に昔あげてました。
      https://namazerpenn.sakura.ne.jp/kuhuu/katati.htm

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2024年3月9日土曜日

僕が考えた最強の大森タックルオート

 最近釣友が、職場の釣り好きに誘われたのがきっかけとかで、貸しボートでのカマス・アジ釣りにハマっている。昔使ってた魚探引っ張り出して、ボート用の台座自作して取り付けたり、アジの時合いにはアジ釣りマシーンと化して釣ってたり、なかなかに楽しんでいるようだ。で、その時に狭いボートの上で竿先に絡んだ道糸をほどこうとしてたら、反対側のリールが誤ってチャポンと海水に浸かってしまったらしい。一瞬チャポン程度ではどうっちゅうことないだろうという楽観視を尻目に、しばらくしたら中でジャリジャリとした感触が生じ始めた。

 「ほんの一瞬浸かっただけやで」と嘆こうが、覆水盆に返らずっていうか、今時のスピニングリールにおける諸悪の根源”瞬間的逆転機構”がろくな防水機構もなくローターの下に入れてあったら、一瞬ドボンなどもってのほか、水道ジャバジャバ水洗いなんてとんでもない、雨降っても、波かぶっても、あんなところ防水してなければ無防備状態で、しつこく書くけど水辺で使う道具なのに、水かぶった程度で不具合が生じかねない。雨が降ったら釣りに行かず、小さなミスも犯さない、リールを水中に落っことしたり、自分がコケてリール水没させたりしない人間用なのであろうか?ワシャそんなん自分がコケて肋ヒビ入らしているぐらいで、とても上手にあつかわんわい。

 釣友も「別にご大層なリールが欲しいわけじゃなくて、それ買ったら面倒がなくそれっきりで良いのってどれよ?」とぼやくわけである。彼の所持するリールにはそういう良いリールがあるにはあるけど、若き日の相棒であり、もうおいそれとは出したくないらしく、次買うときに同じような面倒な機種はウンザリだということらしい。

 手っ取り早くいくなら、大手の1万円ぐらいからの大衆機で、瞬間的逆転防止機構にガッチリ防水機構が付いているのを買うという選択。整備性は良くないけどラインローラーとかの外回りだけ気をつけてやればよさげ。あとはメーカーメンテ。

 中古で探すなら、そういう耐海水性能で強いのはPENN、整備性が良いので面倒臭くないのが大森、という感じだけど、ボートでアジやらカマスやらを狙う小型リールでとなると、PENNはちょっと弾数少なくかつお高い。大手の大衆機よりヘタすると高くつく。大森No.1サイズはボロければ値段安いし、見た目ボロくても整備すれば機能はなんら問題ないことがほとんど。ということで、どうせわが家で出番もなしに蔵に在庫しているだけなら、使ってもらった方が道具として正しい有り様である。ということで「余らしてる大森でよかったら使えるようにして進呈するよ」ということになった。

 ちょうど、TAKE先生が「コメットG1」の逆転防止の消音化部品を売りに出したところであり、コメットはタックルオートをインスプール化したような機種でハンドル軸のギアとか設計に共通点が多く、件の消音化部品も「タックルオートNo.1」にも適合するとのことで、そのあたりも組み込んで、ワシが考え得る現時点での最強の「タックルオートNo.1」に仕上げて引き渡したい、ということになった。なったんだけど、他に良いリールはないかと、自分が使うのを想定して「面倒臭くなくて優秀なアウトスプールの小型スピニング」にはどんなのがあるか、ってのをちょっと数え上げて考えてみた。

 まずPENN勢は「430ss」「4300ss」「430ssg」あたりだろう。前2者はベールスプリングを折れたら交換する必要があるっていうほかに、欠点と言わなければならんほどの不具合はない。ただ、さっきも書いたように弾数少なく値段高いのでおいそれとは買えん。430ssgは瞬間的逆転防止機構搭載なんだけど、油グッチャリの湿式で使えるので浸水しても平気ではある。ただ寒いとグリスの粘度が上がって逆転してしまったりする。逆転防止機構を一方通行のベアリング一個に任せて単純に仕上げてるのは整備性良くて良いんだけど、欠点もある。弾数少ないのは一緒。
 お次、大森製作所なら「マイクロセブンC1」「キャリアーNo.1」「マイコン301TB」「タックルオートNo.1」「タックルNo.1」あたりか、正直海水での実用性では本体樹脂製の「マイクロセブンC1」がもってこいな気がする。けど、現在使用中の機種であり今回の選からは惜しくも外した。キャリアーも樹脂製だけど人気機種なので値段が高い。「マイコン301TB」も良いリールだけどリアドラグのツマミの隙間から浸水してドラグの調整幅出すバネが錆びがちなのでその点やや注意必要。値段という点では「タックルオートNo.1」「タックルNo.1」はクソ安い。ボロいと2千円しないことが多い。消音化パーツが出たことで「タックルオートNo.1」は若干注目が上がって値もあがるかもだけど、「タックルNo.1」など左巻のネジが失われてることが多いのが難点だけどゴミのような値段で買えるし、じっさい買って今年使用予定で整備済み。ということで、今期も今後も使用予定がなく、大森らしい軽くベールが返る内蹴り機構と簡易ローターブレーキを楽しんでもらうにも「タックルオートNo.1」が最適な機種だろうと考えた。チョイボロすぎる個体をスペアスプール要員兼部品取り個体として抱き合わせてセットで、片方をカリッカリの実戦対応モデルに仕上げて進呈しよう。いじるのは消音化はオマケで、大森スピニング最大の欠点とされる”なで肩のスプールエッジ”、”スプール往復幅より広い糸巻き幅”をレイの方法でアレしてやる。

 と方針はこの時点で決まったんだけど、この際他にも実用性の高い機種ってあるか?と続けてアレコレ考えてみた。

 ABU「カーディナルC3」は合格だろう。ドラグ含め濡れたら困る機構は本体内に収めてある。アキレス腱のベールスプリングも長寿命ベールスプリングを組み込めばだいぶ戦えるはず。ダイワ「ウィスカートーナメントSS」は、かなり良い、ルアー用小型スピニングに初めてロングスプールを採用、まだこの時代は瞬間的逆転防止機構が搭載されておらず、ラインローラーにもベアリングは入ってない。650サイズのベールスプリングは普通のトーションバネだけど、750サイズから上になると耐久性の高いグルグルコイルバネが採用されていて「樹脂ボディーの瞬間逆転防止機構の搭載される直前の機種が実用性が高い」というワシの持論に合致している。バラしにくく整備性はイマイチってことぐらいしか欠点が思いつかない。ラインを端まで巻くとドバッとまとまって出てしまうトラブルが多いらしいけど、糸巻き量減らすことで対応可能。渓流で使ってたけど気持ちよく使えていた。ダイワがトーナメントSSならシマノは「92’ツインパワー2000」が瞬間的逆転防止機構が付く前の樹脂本体機でマルチポイントストッパー方式。分解整備しただけで使ったことないけどこれは良い気がする。ベールスプリングがコイルグルグルなのはポイント高い。リョービ「サイノスXS1000ZM-T」も2000番の同型機をいじった程度だけど、マルチポイントストッパーでベールスプリングがコイルグルグル、ラインローラーに無駄にボールベアリングが入っておらず、やや樹脂で回転部を受ける構造が多いのが耐久性的にどうかと思うけど、まあそれなりに持つんだろうとは思うと上出来。で、ルー(韓国日吉)「ゴールドスピン」は使ったら良かったので、弾が少ないので入手はやや難しいけど実用性高いアウトスプールスピニングとなれば出しておかねばという感じ。他にも、ワシが知らんだけで、瞬間的逆転防止機構が搭載される前の機種で実用性の高いのはあったんだろうと思う。オリムのその時代の機種は触ったことないけど何かあったんだろうし、日本じゃあんまり見ないけど、ゼブコとか絶対アメリールらしい実用性の高いのを用意してただろう。そして、そういうのを下請けしてた韓国、中国製のリールでも丁寧に拾っていけば良いのはあるかも。

 というときに、自分が評価する項目として、重要な項目から書き連ねると「瞬間的逆転防止機構が付いていない」「整備性の良い単純設計」「必要充分な耐久性」「まともなドラグ」「適正な幅のスプール」「適正な形状のスプールエッジ」「ラインローラーにはボールベアリングではなく樹脂製スリーブ」「回転部を受ける工夫」「ベールスプリングはグルグルコイル」「本体樹脂製」「ハンドルはワンタッチ折り畳み不採用、取り付け方法はねじ込み式が望ましいが共回りも可」「ハンドルノブが長時間使ってても指が痛くならない形状」「ローターブレーキ採用」「指がスプールエッジに届く設計」あたりを評価基準にしている。いるけど、いじくってどうにかしてしまえる、あるいは外法で対応可能なら欠点は補完できると思う。 

 ということで、本題の「タックルオートNo.1」の改善に取り組んでいこう。タックルオートNo.1を上の評価項目で評価すると、「適正な幅のスプール」「適正な形状のスプールエッジ」「ベールスプリングはグルグルコイル」「本体樹脂製」「ハンドルノブが長時間使ってても指が痛くならない形状」以外は問題なしである。つまりこの5項目のうち対応可能なものに手を付けようという方針。ベールスプリングはグルグルコイル式に改造できないか考えたことはあるけどなかなか難しい。むしろトーション式のベールスプリングの自作で対応する方が簡単なので、まあ定期的に交換か予備を用意しておくことで対応してもらおう。本体樹脂製じゃないけど、整備性の良さと逆転防止機構まで本体内に入れた、ある程度防水性がある設計でカバーできるので耐海水、耐腐蝕的には充分対応可能だと思う。釣りから帰ったらジャブジャブ洗って、から拭き乾燥。たまにラインローラー、ハンドルノブ、スプール外して主軸の根元に注油程度で問題生じないはず。ハンドルノブの形状については、一概にこれが良いという話ではなくて、釣り手のツマミ方、握り方、手の形大きさで変わってくるので、なんとも言えんところで、ワシは大森の三角パドル型は摘まみやすいし痛くなってこないので好きである。一応マイクロセブンCシリーズのウッドノブ型と2つ用意して使いやすい方をという選択方式にする。で、のこった「適正な幅のスプール」「適正な形状のスプールエッジ」についてはれいによってFRPの板を使って、スプールエッジの形状等調整をやってしまうという方針。あとせっかくなので消音化部品も組み込む。

 まずはだいぶ慣れてきた感のあるスプールエッジの形状等調整。No.1サイズの場合、スプールの幅が約13ミリにたいしてスプール上下幅は約11ミリなので、11ミリの高さの厚紙の下駄を履かせて、填まるように切り出したFRP、8ミリの板をズレないように填めておいて、隙間にティッシュの紙縒りをクルッと入れて瞬間接着剤を染みこませて、その上にさらに紙縒りを重ねてまた瞬間接着剤。という感じで大まかな形状を整える。その上でハンドドリルに填めてエッジの面取りをしてティッシュも削ってある程度滑らかにしたうえで、エポキシで隙間とか窪みを埋めつつロッド回しに刺してコーティング。固まったら銀色のラッカー塗料でヌリヌリで完成。
 でもって、消音化部品の組み込み。消音化部品は樹脂製で出るかと思ったけど、樹脂製だと温度差とかで作動が安定しないとかで、バネ的部品でハンドル軸の回転を拾ってそれを、金属製のカムに伝えてカムの隙間にストッパーの爪を入れて正回転時にラチェットから遠ざけるという仕組み。チョイ面倒だけど金属製なのは丈夫そうで悪くない。

 写真上左が元のストッパーで矢印の位置に爪がない。で外して消音化部品と並べたのが写真上右、右の爪付きのストッパーに交換して、ワッシャーで高さ調整の後、写真下左のように金属製カムを隙間でストッパーの爪をはさむように設置。チョイ見づらいけど写真下右のようにハンドル軸のギアの軸にバネ的部品を填めて、その出っ張って曲げてある部分を金属製カムの隙間の反対側の凹部に填めてやるという手順。そんなに難しくなく、想定していないだろうぐらいにグリスグッチャリなので滑りすぎると上手くいかんのでバネ締め直しとか調整必要かと思ったけど、一発で決まって問題なく機能してくれた。

 カリカリ鳴るの嫌いじゃないけど、たしかにラチェットに当たるごとに抵抗は発生しているわけで、ラチェットに当たらず音が鳴らないようにしてみると、ボールベアリング一個しか使ってない、でもハンドル軸をアルミの本体で直受けにしたりせず真鍮スリーブを入れているという、丁寧な仕事ぶりが光る大森スピニングの真骨頂的な滑らかな回転が味わえる。さすがの大森ハイポイドフェースギア。回転の滑らかさとか、わりとどうでも良いとワシ思ってるにしても、これはこれでたしかに良いものだと思わされた。そりゃ今時の高級スピニング様はもっと滑らかに回るのかもしれん。しれんけど、そのためにどんだけボールベアリング突っ込んで面倒くせえことになってるのかって話。実用上充分以上に滑らかな回転をボールベアリングたったの一個でやっつけている、同時代のボールベアリング2個入りのオートベールと比べても下位機種なのにこの仕上がり。無駄が無くスッキリしてて良いリールだなと改めて思うのよ。って感じでいっちょあがりが下の個体。スプール調整済み、消音化部品組み込み済み。グリスグッチャリ整備済み、ハンドルは純正のまま。対して上がローターが一部欠けてたようなボロ個体で整備済みではあるけどやや回転の滑らかさとか損なわれている。スプールはそのまま(可能ならどちらも試して比較してもらいたいところ、その後追加でスプール形状調整も承ります)。ハンドルはマイクロセブンCSのを付けてあるので、どちらかお好みのを付けて使ってください、どちらにも付けられます、という感じ。結局、リール改造用の部品とか各種売ってるけど、買って価値あるのはスプールとハンドルぐらいで、あとはだいたいにおいて自己満足程度かなと思っている。スプールは同じ替えスプール買うだけでそのリールの戦闘能力が格段に向上するし、形状やら糸巻き量の適正化やらいじれる要素も大きく、スピニングの飛距離とかトラブルの少なさとかスプール上下の方式とかも関係してくるけど、大きくはスプールの形状で決まる話で、ベアリングの数増やして空回ししたときクルックル回るようになったところで戦闘能力はあがらんのでそれは無駄な金の使い方だと思うし、そんなもんよりスプールに金かけろだろ。そしてハンドルはノブの形状とかが手に合わん痛くなってくるヤツだとつらいモノがあるので大事。見た目より何より使ってて痛くなってこないのが良いハンドル。こればっかりは使ってみないと分からん。

 なんにせよ、基本設計がしっかりしている機種に不足している機能を足していく、あるいは必要な調整を施すのは比較的容易に対応可能。でも基本設計に”瞬間的逆転防止機構”なんていうクソがデデンと鎮座していると、防水性とセットでそこは外せないのでどうにもならん。スピニング作ってる各社は早く外せっての。

 とはいえ、しばらくは瞬間的逆転防止機構の流行はおさまらないんだろうから、ワシそういうのはクソだとネットの片隅で叫び、レジスタンス運動に身を投じつつ、クソが鎮座していない時代のスピニングを愛でていきたい。

 てなことやってたら、大森熱がぶり返して「大森スピニングが整備したい!」ってアタイ苦しかったの。でもご安心くだされ。わが家には整備待ちの大森スピニングぐらいたーんとござる。

 ブッコミ泳がせに使ってる「マイコン202」が調子よくてずいぶん気に入ったんだけど、そうなると替えスプールが欲しいなという症状が出てきて、すると出てくるんですね中古市場にポロポロッとボロ個体が2台、2台とも競りもせず確保。まだマシな方を整備して剥げてた塗装もお化粧直しして、すでに現場投入済み。そして、ワシが整備してやらねば燃えないゴミになりそうなジャンクな「マイクロセブンNo.1」のグリーニーな個体。ハンドル後方の左右交換用のネジ入れに格納されていた左用のハンドルネジが赤さびまみれになっていて泣きそうになったけど、ダイヤモンドヤスリでネジ山を復活させてなんとか使用可能な状態に復帰。てな感じに今期も楽しく大森沼にズブズブと潜っております。皆様もご自愛くださいませ。アタイ病気が憎いっ!

2 件のコメント:

  1. 防水がプアな近代的大衆機種、土砂降りで釣行強行すると異音が出るしベイルリターンが
    極端に悪くなる症状が出ます。
    分解整備すると綺麗に治るからマシですが、
    その整備に3時間くらい掛かってかなり面倒くさいですね。
    極細PEの為にシマノ大衆機種入れてますが、
    後始末に困りますので
    雨天決行はあまりやりたくないです。
    2020年代から防水改善して開放されたかに見えますが、トルクスネジに変更になり部品点数大幅に増えたから
    雨天決行は相変わらずPENN頼みは変わってません。

    ナマジさんが今シーバスに回してるダイヤモンドリール、
    仕様をみると最強状態ってのがわかります
    外蹴りリターンモデルをベイルレスにしてスプールの泣き所解決してますし
    大森の美味しい所取りだと思います


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    1.  アチャー大手大衆機ならいまどき防水しっかりしてるから大丈夫かと思ったけど、面倒くせぇ手間はかかるんですね。

       今使ってるベイルレスのタックルNo.2は良い感じですよ。ほんと余計なモノが付いてなくて単純。しかもストッパーオフで使うので、消音化せずともカリカリ鳴らず大森のギアの滑らかさが素直に味わえます。
       魚さえ掛かってくれればドラグの良さも楽しめるのに、状況が良くないのが残念です。

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2024年5月4日土曜日

三体+α

  見てのとおりの、ひでえ状態の大森が3台。良くこんな”ゴミ”を買ったなと思うかもしれないけど、これ一台いくらだと思います?

 なんとそれぞれ1円スタートで、3台とも入札者ワシだけ開始価格で落札。送料もまとめてもらって900円強がところで、丁寧に梱包してもらってあったのが申し訳ないような品である。見た目潮吹きまくりの緑青出まくりの酷い表面状態でベール周りの部品も腐蝕して使えるか不安な状態、可動部はほぼ潮噛みでギシギシとまともに動かずとトホホな”ゴミスピ”達だけど、「マイコン202」についてはスペアスプールだけでも手に入れば300円程度では安すぎる、実際樹脂製のスプールはすぐに使用可能なことが確認できて、既にチャチャッと掃除してライン巻いて釣り場に持ち込んで活用している。他は「オートベールNo.3」が2台だけど、とりあえず左右両用のNo.3サイズのハンドルが2本確保できれば、その時点で1台約300円はこれまた安いぐらいで、かつナンボ外観がボロくても内部のギア等は平気なことがほとんどなのが、逆転防止まで本体内に収める設計の大森スピニングの良いところであり、2台の良いところを寄せ集めて”ニコイチ”して1台稼動機にもっていって、1台は替えスプール要員兼部品取り、というところまでは持ち込めそうにも思う。そこまでいけたら万々歳の部類だろう。だめでも使える部品がガサッと手に入るはず。

 ということで、しばらくは各部にCRC666ぶっかけて浸透させて放置だなと、202のスプールだけ早速実戦投入しつつも、他は粉吹き状態の潮やら緑青やら拭き取れる部分はザッと拭き取ってやり、ハンドルやらスプールやら外した状態でネジ部や隙間にCRCをぶっかけて、個別にビニールに突っ込んでいつもの油漬け保管箱にて漬け込んでおいた。ハンドルやらスプール外した時の感触では、中身は問題無さそうではあり、問題ありそうなのはベールアーム、ベール支持部、逆転防止切り換えスイッチ、スプールといった外回りの酷い腐蝕で、これは錆を削ってエポキシ肉盛りやティッシュを瞬間接着剤で固めて穴埋め成形とかで対応可能なのか心もとない。あと見えているネジが潮と緑青に埋もれているのが多く、果たして固着を外して整備に持っていけるのか、ぶっちゃけ本体蓋が開かないとギアが生きてても部品取りもままならない。まあその時は本体関係は捨ててネジをドリルで破壊して蓋を開けるしかないか?塗装、銘板はいつものことで、使えそうなら適宜お色直しは最低限必要だろう。
 と、まあスプールとハンドルは外せることが確認できた時点で、それだけでも儲けもので、後はなんぼか部品が取れただけでも良しだな、と思っていたら、”縁は異なもの味なもの”とはよく言ったモノで、このタイミングで米国製塩水系ルアーの使い手であるMasahiroさんから、「オートベールNo.3」1台と、オートベール、タックルオートのNo.3,4あたりに使える部品をもらってくれないかとの申し出、なんとメールに添付された写真には、ちょっと修復苦戦するかもと思ってたベールアームも写っていて「いただけるのなら喜んで。という以上に天の采配を感じます。実は、オートベールNo.3の腐蝕が酷いジャンク個体が2台整備待ちで、部品の中にベールアームとか使えそうなのが見えてるので喉から手が出るぐらいタイムリーに欲しいです。」と返信、入れパクで食いついてしまった。ホント計ったようなタイミングでドンピシャ欲しいものが手に入ってしまう幸運。ありがとうそしてありがとう。これは”大森の神”の”3台とも稼動状態に直せ”とのご意志の現れだろう、という神託に基づき3台現役復帰を目指すこととあいなった。ちなみに小袋に分けて送られてきた部品をざっと並べてみると写真の様な感じで、2台から使えそうな部品を回収してあるようだ。大森分解整備ももう何回やったかわからんぐらいなので、部品見ればどこのナニか分かるぜワシ。そして、一緒にもらったタックルオートNo.3は整備の必要もないような綺麗で快調な個体。単に1台稼動品が必要というならこの1台で話は終わりなんだけど、そうじゃないだろ、ワシが調整してやらねば良くて部品取り個体、悪くて”複合ゴミ”の3台を、天の采配で部品も手に入ったことだし、見た目ボロいのはある程度は仕方ないけど、機能的に復活させるのはもとより、これまでの経験とちょっと試したいアイデアをぶち込んで、なんなら純正状態復活より戦闘力上げて仕上げてしまって、実戦導入して武勲を立てさせてみたい。などと鼻息荒く思うのですよ。
 ちゅうわけで、まずは「マイコン202」からいってみますか。

 本体蓋の塗装ハゲがたいしたことないように思えるほど、ベール周りが酷い。

 樹脂製のベールアームはもちろん大丈夫なんだけど、ベールワイヤー支持部は腐蝕して凸凹だし、ベールスプリングのところと、逆側ベール反転機構のところの”アルミの蓋”が酷い状態。左下のベールスプリングの蓋に穴が開いて隅の方に塩の結晶が析出して溜まってるのも酷いけど、写真右下のベール反転機構のアルミ蓋の下1/3ぐらいがボロボロに腐蝕して錆落ちてしまってるのは、さすがに始めて目にする惨状。我々塩水で釣りする連中が、帰宅後水道水ぶっかけたり、なんなら釣り場近くのトイレの水道でジャブジャブとか、とにかく塩気を水圧掛けてでも素早く取り除きたくなるのは、塩気は金属を滅茶苦茶腐蝕するからである。アルミに塗装もしてあってもこんなもんです。釣行後の塩抜きがいかに大事かお分かりいただけるかと。ほんと塩気はちょっとでも残すと腐蝕に繫がるので神経質にならざるを得ない。といいながら、塩抜きして袋にしまってあったカマス釣るのに使ってるフライリールのサイエンティフィックアングラーズ「システム2m78」がこの冬出した時にチョコチョコ腐蝕して塗装がはげ始めててオノレの注意不足を反省した。釣り終わってリール袋に入れて帰ってきてリール洗って袋に入れてしまってたけど、よく考えると釣り終わって塩水が付いているリールをリール袋に入れると、リール袋に塩気が残ってしまう。Oニーサンは袋は信用ならんので、竿とかは現地で真水洗いしてからメッシュ状の筒に入れて持ち帰るようにしていた。っていうぐらい塩気は金属部品の敵なのである。PENNとか異様に塩気に強いリール使ってると、そこまで細かく気をつけなくても平気だったりするけど、PENNが特別なだけだと思っておいた方が良い。真水でジャブジャブ洗うのは最低限必須だと思っている。それすらやらんとPENNでも錆びる。

 でも蓋ぐらいなら、蓋してそれこそ塩水があんまり入ってこないようにしてあれば良いので、強度はそんなにいらないので、プラの板と紙とテッシュと瞬間接着剤で蓋として機能するように穴を塞いでおいた。

 左のベールスプリングとベール折り畳み機構の入ってる方は、穴が大きくないので、とりあえず紙で穴を塞ぐように瞬着で貼って、その裏側を補強するようにティッシュを瞬着で堅めながら成形して蓋として機能するように厚さと形状を調整。右のベール反転機構が入ってる方は、蓋の下がごそっと落ちているので、適当なプラの板を切って、とりあえず紙を使って瞬着で平面になるように接着、そして裏面をティッシュと瞬着で補強しつつ成型。後は黒く塗れ。

 本体塗装も、腐蝕しているところから塗装が浮き始めているので、マイナスドライバーとかサンドペーパー使って剥がれるところは剥いでしまう。結構乱暴にガリガリやってます。

 パーツクリーナーで油やら汚れを落とした後、車用のタッチペンでヌリヌリと塗ったくって、腐食防止兼お色直しって感じ。ベールワイヤー支持部の凸凹はサンドペーパーで腐食部をなるべく削って、エポキシで凸凹ならして色塗っておく。

 とまあ外観は腐蝕だらけでボロボロだったんだけど、固着も無く、中身はなんにも問題無くてグリスも固化してないどころか濁りもなく、全体的に綺麗な状態でサクサクと、同機種も3台目なので慣れたもので、いつものようにグリスグッチャリで仕上げておいた。

 使用中のスペアスプールを填めてみて、巻きやらベールの返りやらドラグやらの感触を確認してみると、本体内部の調子は2台目のややボロ個体よりは良いぐらいで、ドラグもこちらの方がより滑らかな気がする。ボロい方2台で適当に交代させながら使っていけば、老い先短い我が釣り人生ぐらいは持ちそうでちょうど良いのかもしれない。なんにせよ1台目は無難に復活できてまずは良し。

 次はオートベールNo.3のマシな方からやりたいところだけど、甲乙付けがたいボロさで、ベールアームの腐蝕が激しいほうは再建がややこしそうだなと、ハンドルキャップが無くて、見えてるハンドル軸が錆びてる方(だからあれほどハンドルキャップが無くなったらゴムでもなんでも良いからキャップを付けておきなさいと言うておるのに)から手をつける。

 しっかしボロい。こちらはベールアームの腐蝕はたいしたことないけど、ベールワイヤー支持部は全面的に腐蝕でボロボロで、外すと割れるんじゃないかと不安になるレベル。スプールの腐蝕も酷いし、当然銘板とかちょっとマイナスドライバーでつつけば剥げる。

 本体蓋のネジとかもネジ山に緑青詰まってて外せるのか?と不安になったけど、千枚通しの先で緑青ほじりだしてから回してやれば普通に外せた。腐蝕が酷いベールワイヤー支持部もネジは問題無く外れて、一応強度的に問題無い程度には支持部も金属部分は朽ちずに残っている。本体内部はハンドルキャップないし浸水して酷いことになってるかも?という不安は杞憂で、特に固着も腐蝕も無く綺麗なモンである。ハンドル軸はキャップ外れてた左側だけ錆びてるけど、ハンドル突っ込んだらちゃんとネジ山は生きているようなので機能的にはどうにかなりそう。

 中身はだいたい良さそうなので、とにかくボロい外回りをどうにかしていく。

 腐蝕して粉ふいてるような所は、マイナスドライバーでこそげるだけこそぎ落としてサンドペーパー掛けておく、特に腐蝕が酷いベールワイヤー支持部はガリガリ削って地金を露出させておいて、凸凹をならす感じでエポキシで肉盛りしてラインが引っかからないような滑らかな形状に整えておく、ラインローラーは固着したまま使用されていてクロームメッキが剥げて糸溝デキてたので、早速いただいたスペアパーツが活躍。本体は腐蝕を削り落として、銘版貼り直したら塗装してお色直し。ベールワイヤー支持部と逆転防止機構のスイッチは銀のラッカー塗料でその他は黒のタッチペンで仕上げる。

 スプールがこの後追加の改造の予定で腐蝕剥がした程度だけど、全体として機能的にはほぼ完品状態に復帰させることができて一安心。

 ハンドルキャップがこれまたいただいた部品に1個入っててドンピシャに役立った。

 ハンドルノブが外せるタイプだけど固着してたのでこの時点ではとりあえず無理して外さずそのままにしておいた。

 実物を近くで見れば、色塗り直しまくりの、凸凹穴埋めまくりのボロ機だけど、こうやって写真で見るとなかなか良い感じに仕上がっている。

 自分でボロくしてしまってるのは、手入れがデキてなかったり、道具を大事に扱えてなかったりというのを表しているので恥ずかしいけど、ボロいヤツを入手して使えるように整備した機体の見た目のボロさはまったく恥ずかしくない。むしろ古い機種ならボロい方が経てきた年月相応の重厚さが出て格好いいぐらいに思っている。そして機能的には全く問題無く復活しており、ベアリングさえ錆びておらず大森ハイポイドフェースギアは、さすがボールベアリング2個も入ってる上位機種であるオートベールだぜって感じに滑らかに回り、ハンドルでベールリターンも軽くカコッてな感じの良い感触で返ってくれる。気分良いゼ。

 いい気分になったところで、この調子でもういっちょいこう。

 残りの1台もボロいけど、特に酷いのは前述したようにベールアームが腐蝕して崩れ落ちて、もはや形状が変わってしまっているところで、これは果たして修繕可能なのか怪しいところだけど、幸いにもいただいた部品類のなかに同型のベールアームがあったので、修繕しきれなかったら交換という手が使えるのは僥倖。ベールワイヤー支持部もボロいけどさっきの1台よりはマシなので何とかなりそう。こちらはハンドルキャップは残っていたので本体内に特に腐蝕等はなく、前の持ち主が”追いグリス”したのか、グリスグッチャリで状態は悪くない。

 ということで、問題のベールアームだけど、調べた感じ幸運にもラインローラー固定ネジがしっかり締めるられる程度には金属部分が残っているので、あとはラインが引っかからないように凸凹をならして、引っかかりのないようにエポキシを盛って成形してやれば良さげ。単純にネジを填めた状態でやや固まりかかったぐらいのエポキシを盛ってやって、時々ひっくり返したり角度調整したりして、良い感じの曲線になるように固める。固めたら、ネジを回してネジとエポキシを剥離させる。エポキシは表面ツルツルの金属や樹脂にはしっかりとは着かないことが多く、接着が主な目的なら接着面をサンドペーパーで荒らしておいた方が良いぐらいで、逆にツルツルの面からは剥離しやすいことを利用して、型にエポキシを塗布して割れないように剥がして必要な形にエポキシを成形するという小技は何かと使える手なので憶えておくと便利。ベールワイヤー支持部も凸凹削ってエポキシでならして、銀色に塗って、ベールアームは黒く塗って、使用可能な状態には修繕できたので、いただいたベールアームは温存しておける。
 このへんの予備パーツ、これさえあれば直るのに!っていう場面は結構あるかと思うところ。今回いただいた部品に限らず、使わなそうなモノや予備に余裕のあるような部品なら、送料と、モノによっては実費相当ぐらいで融通することもできると思うので、必要な部品が見つからなくてうちの蔵にありそうならご相談ください。可能な範囲で対応させてもらいます。

 あとは特に問題無く、いつものようにバラしたらパーツクリーナーで洗浄、銘板貼り直したり、塗装のはげをお化粧直ししたりして、グリス盛り盛りで無事終了、っていかなかったんだなこれが。

 組み立てていく過程で、ベールスプリングの所の蓋をネジ留めしようとしたら、キュッと締めたらポロッとネジの頭が落ちた。ここまで来てそれはないだろう、って焦りまくり。外すときに固着しててネジ切るのならまあ想定の範囲内であきらめもつくけど、外せたネジを締めるときにネジ切るってどうなのよ?なんとかならんのか?としげしげ眺めていると、なんか折れて残ってしまってるネジの頭が一部尖っている。この尖ってる部分をペンチの先で引っかけるようにして摘まんで回せないかという、薄い可能性にすがってみると、グリス塗って滑りが良くなってるので、尖りに引っかけてちょっとずつ回すことができる。ちょっとずつ回していってネジが摘まめるぐらいまで穴から出てきたらしめたもので、ペンチの先で挟んで回して無事抜けた。そして、ネジはもらった部品に同じのがちゃんとあったんですねぇ。よかったよかった。規格品のネジが合えばいいけど、リールのネジってインチ規格だったり古い規格だったりで、意外にネジ一本とはいえ無いとどうしようもないこともあったりして、部品詰め合わせはほんとにもらっておいて大助かりだった。

 てな感じでオートベールNo.3、二台目も良い感じに復活。こちらもスプール関係はまた別途改造予定だけど、元の機能は問題無く取り戻すことができたと思う。

 オートベールNo.3は、いまルアー青物狙い用で運用しているPENNの「スピンフィッシャー4500ss」の代わりに、PE3号ぐらい巻いてスミスの「ブローショット10f」と組ませる予定。なので、スプールはれいによってスプールエッジの形状調整と糸巻き幅のスプール上下幅との適合をやってしまって、ついでにドラグ回りを青物視野にいじってみようかと思っちょります。スズキぐらいまでなら純正のフェルトドラグパッドは調整幅も広く安定性もあって非常に優れたドラグなんだけど、岸から釣れるワラサ(ブリの若魚)とかの青物想定なので、そこそこの速さでドラグ回されそうであり、パッドが熱に強いカーボンの方が良いだろうとか、念のためドラグが熱をもった時を想定してのアレコレとか、着想はあるので試してみる予定。まあ、早くても秋までに間に合えばいいので、のんびりやる予定だけど、やる気と時間があれば前倒ししてやってしまうかも。

 その前に一つ、やっぱりちょっと気になったのが、オートベール2台のハンドルノブのネジ固着で、固着しててもここは普通ハメ殺しなぐらいで放置でも良いンだろうけど、削れたのかやや隙間が空いてカタカタするので、ちょっと気持ち悪い。

 固着を無理矢理外そうとするとネジ山が舐めたりネジがねじ切れたりとろくなことにならないので、放置が吉だとは思っているけど、マイナスネジを突っ込む頭の溝がかなり深いので、ネジ山舐めることはないだろうと、持ち手を横にしてテコで回すのがデキるドライバーなので、その方法でグイグイ回してみたら2台とも固着無事外れたので、隙間を埋めるのにちょうど良い厚さと大きさのジュラコンワッシャーを填めてカタつかないように調整。

 よしこれで、後回しにしたスプール以外は機能的に完璧な調整仕上がりぶり。実に良い感じである。

 というわけで、無事3台とも実釣可能な状態まで復活させることができて満足である。3台で9百円強だけど、これだけの戦闘能力のある機種を普通に揃えようと思ったらナンボ掛かるかって話で、実にイイ買い物だった(まあ、大森中型機で揃えりゃ安く上がるけどな)。

 それにしても、ボロ大森の”何とかなる率”の高さは素晴らしい。今回は予備部品をいただいたおかげで、糸溝ついたラインローラーやらねじ切ったネジのような修復不能な部分があっても対応できたというのはあったけど、ともかく本体内部がやられてることはほとんどない。腐蝕してないのもそうだけど、ギアの摩耗してるような個体にあたったことがない。外側は今回も苦労したように腐食しやすかったりする部分もあるけど、ちゃんと塩抜きして使ってれば大丈夫って話で、こういうリールこそ”100年使える”リールだろうと思う。オートベールで1979年発売、45年も前の設計のリールだけど、今でも普通に使えて、かつ面倒くせぇところもないから手入れとかも楽。多少手を入れたり修理が必要になるかもだけど、基本設計がしっかりしてて単純明快なので、あと55年ぐらい使えてもなんら不思議じゃない。

 残念ながら、ワシがあと55年も生きていると思えないので、それを見届けることができないのはいかんともしがたいけど、気候変動やら第3次世界大戦やらで人間の文明が崩壊していない限り、55年後の未来でもワシらの後輩の”スピニング熱患者”が「やっぱり大森のリールはイイ」ってクルクル回しているような気がするのである。

4 件のコメント:

  1. オートベールの方はまたベイルレスになると思って読んでましたが
    ベイルスプリング無事だったのですね
    塩害に対しては欧州勢より大森の方が良さ気な感じがします。
    画像の塩鮭みたいな状態で中身があんなに綺麗なのは驚きました

    Mitchellは整備性でカバー出来ますが
    純海水だと毎回整備しないと非常にヤバいです。

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    1.  中身がまるで大丈夫なのには驚かされます。

       焼くと塩が析出するしょっぱい塩鮭も我ら昭和世代じゃないと知らんかもですね。お握りに入れるのはあのぐらいの塩気のが良いのに最近は何でも甘塩で、って言いながら私も干物は甘塩で作ってます。時代は変わったということか。

       ミッチェルの整備性の良さは一つの方向性で実用度高いですよね。
       そこに濡れたら困る部品入れちゃだめだろって設計のくせに整備性まで悪いと道具として不合格とダメ出ししてしまいます。

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  2. ナマジさん、とても楽しく拝読いたしました。ナマジさんに引き取ってもらった大森のパーツがさっそくお役に立ったようで、喜んでおります。これからも楽しみに読ませていただきます。ありがとうございました。

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    1. Masahiroさん お礼言わなきゃならんのは私で逆ですよ。
       とはいえ、分からなくもないです。脳の活動を調べて最も”幸福”を感じているのはどういう人のどういう状態かというのを調べた報告を読んだことがあるのですが、その報告によると金やら名誉やらのありきたりな欲望が満たされてもたいした幸福は感じていなくて、最も幸福を感じていたのは他者に奉仕する時の宗教家の脳だそうで、人は人のためになることに幸せを感じるようにできていて、それは人の社会の繁栄に寄与しているようです。宗教嫌いなのでケッとも感じましたが、金金うるせぇ奴らの得る幸福がたいしたことないと知ってザマミロではありました。

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(2024.05)


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