○ナマズ属与太話

 ナマズといえば、日本では黒くて頭でっかちでひげに大きな口と小さな目のユーモラスな表情のナマズ(Silurus asotus)が地震を起こすとかいう言い伝えなどもあってなじみ深く、その他のナマズの仲間であるナマズ目の魚はそれほど知られていません。

 しかし日本にも、Theナマズの他に、同属のビワコオオナマズ、イワトコナマズを始め、ナマズ科ナマズ属のナマズたちとはひれの形がだいぶ違うギギ科のギギ、ネコギギ、ギバチ、アリアケギバチ、アカザ科のアカザや海にもハマギギやゴンズイが分布していて、さらに移入種のアメリカナマズやヒレナマズ、マダラロリカリア(プレコ)なんてナマズも地域によっては定着したりしています。

 それでも、日本では特に種類数の多い仲間ではありません。でも世界を見ると、ナマズ目の魚は熱帯地方の淡水を中心に約2400種を誇る一大勢力です。

 これらについて端から語り始めるといつまでたっても終わらなくなりますので、今回は先日(08年5月)にカザフスタンでヨーロッパオオナマズを釣ってきたこともあり、ヨーロッパオオナマズ、ビワコオオナマズ、ナマズのナマズ属(Silurus属)3種を比較しながら、与太話を進めてみたいと思います。

 中央アジアの草原にて ←カザフスタン釣行記はこちら

 

 まずSilurus属のナマズの特徴としては、比較的細長いからだで背びれが小さく、臀びれが肛門から尾びれの手前まで長くつながっているということがいえるでしょう。口が大きくヒゲが上顎側に長いのが1対2本、下顎側にやや短いのが2対または1対あるのも特徴といえると思います(註1)。

 そんなのナマズなら当たり前と思うかもしれませんが、ナマズには観賞魚としてもなじみ深い南米のコリドラスの仲間のように細長くなく口が小さい種類もいますし、鰭の形は一口にナマズといっても、背びれも臀びれ同様に長く連なる東南アジアのクラリアス科のナマズの仲間やアブラビレがあり臀びれが長くないアメリカナマズのような形のものなど様々なので、Silurus属を特徴づける一番の特徴かもしれません。ヒゲは6本又は4本というのはナマズには私の知る限り多かれ少なかれヒゲがあるので数だけ取り上げると特徴的ではないかもしれませんが、上顎1対が長くて、下顎には短めのが1対か2対というその配置と長さについては結構特徴があると思います。

 

 ヨーロッパオオナマズ、ビワコオオナマズ、ナマズを比べると当たり前ですがよく似ています。基本的にヒゲや側線を頼りに、音や震動、匂いで濁った水や闇の中で餌を探し回り、生きた小動物を中心に種類によってはある程度死んだ魚なども食べるという習性が似ていて、分類的にも近い親戚のような関係です。似ているのは当然でしょう。

 それでも、種が違いそれぞれに違う点もあり、特徴的な点も持っています。

 

 まずはヨーロッパオオナマズの特徴はというと、何をさておいても巨大になることが最大の特徴ではないでしょうか。

 私がお世話になったカザフスタンのイリ川デルタのキャンプ地の記録でも270数センチというのが釣られており4人がかりで並んで抱き上げている写真が飾られていましたが、過去には19世紀のロシアで350キログラム弱、5メートル近いものが記録されているそうです。

 この手の規格外の生き物は、リンネが分類法を整理して魚の一種として分類されてしまうまでは、おそらく「水の怪物」として分布するヨーロッパを初めとするユーラシア大陸の南西部の各地で恐れられていたに違いありません。「リバイアサン」とか「シーサーペント」とかと「SILURE(フランス等での名前)」は並べられていた、と想像に難くありません(註2)。

 おそらく「ナマズ」と聞いたときに思い浮かべるイメージは、ヨーロッパでは日本とは大きく異なることでしょう。日本ではナマズ愛好家は観賞魚マニアに多いですが、ヨーロッパでは巨大な獲物を狙う大物釣り師にマニアックなナマズ愛好家がいます。ナマズ専門誌も出ています。

おフランス製(フランスのナマズ専門誌)

 次に釣ってみて気がつく違いは、口の形状です。

 ヨーロッパオオナマズの口は日本のナマズやビワコオオナマズほど下あごが突き出ていません。もちろん下あごのほうがやや長い受け口であることにはかわりありませんが、その程度が小さいので、下あごを手でつかんで持ちあげで頭を上方から見ると、下あごが隠れて見えないような状態になります。

むんず(下顎を手でつかんだ状態)

正面上から(それほど下あごは突出しない)

 口自体ビワコオオナマズと比べるとやや小さめのように感じます。

 同程度の大きさで比較するとわかると思いますが、ビワコオオナマズの口はでかいです。

欧州琵琶湖(107欧州大鯰vs109琵琶湖大鯰)

 普通のナマズと比べても同程度かやや小さい感じです。

 それから、口の周りのパーツにも特徴があります。

 まず、ヒゲの数が日本産の2種と異なります。ヨーロッパオオナマズにはヒゲが上に2本、顎の下に4本生えています。実はこのヒゲの生え方は日本産2種の子供のころのヒゲの生え方と同様です。日本産2種の場合成長と共に下顎の2本が消失して4本ヒゲになります。

 個体発生は系統発生を繰り返すなどという説もあったぐらいで(註3)、おそらく進化の過程で日本産2種も昔は6本ヒゲだったのが、必要なくなって下顎の2本のヒゲが無くなったのでしょう。

 逆にいうと、必要があったのでヨーロッパオオナマズではいまでも6本ヒゲをたたえているのだと思います。

 次に紹介する口の周りの感覚器とあわせて、私の推測を展開してみたいと思います。

 口の周りのパーツとして面白い特徴は、下あごの裏に下顎のカーブにあわせて点々とニキビの跡のような穴が並んでいることです。おろらくこれは水流や震動を感じる感覚孔かもしくは味蕾のような味や匂いを感じる器官だと想像できます。

裏から赤点(口の周りの感覚器)

 下顎のヒゲが日本のナマズより多く、上顎のヒゲもビワコオオナマズに比べると立派。下顎の裏っかわに何らかの感覚器官が並んでいる。

 これらのことは、ヨーロッパオオナマズが水底にある餌、おそらくウナギなど底棲性の魚のほか死んだ魚とか小動物をこれらのヒゲや感覚器官を駆使して探し回って食べていることの証拠ではないかと思います。

 実際の釣りでも、切り身餌で底狙いのぶっ込み釣りで結構好反応でした。もちろん上顎側にも立派なヒゲが生えていますし、水面の音にも反応するようで、ヨーロッパでは釣りする前に水面をカッポンカッポンと叩いて音を立てて、ナマズの注意を上方に向け活性をあげるための「カポック」と呼ばれる曲がった孫の手のような木製の器具が良く使われるそうで、上方の餌にも反応することは間違いないようです。

カポック(フナの横に転がっているのがカポック)

 とはいえ、日本のナマズ2種に比べると底の餌に依存する度合いが高いのではないかというのが私の考えです。

 その他に、ヨーロッパオオナマズの特徴として気がつくのは、日本の2種に比べると細長い体型をしているということです。そもそもが大きい魚の印象があるので、顔も口もでかい印象がありますが、同程度の大きさなら多分日本のナマズの方が頭部の幅は広いのではないかと思います。

ニョロっと(ニョロリと長い)

 一般的に、泥や水草などにもぐり込んだり、障害物に隠れたりする性質の魚ほど細長い気がしますが、今回の釣行だけではそれらしい傾向はみられず、なぜそうなのかはよくわかりませんでした。

 以上が私が釣ってみて気がついたヨーロッパオオナマズの特徴の主なものです。

 

 次に、日本の誇るオオナマズ、ビワコオオナマズについてその特徴を整理してみましょう。

 ビワコオオナマズは普通のナマズと比べると大型になるのが特徴ですが、ヨーロッパオオナマズと比べると、まあサイズ自体は大したことありません。

 しかし、そのでかい口は結構迫力ものです。ビワコオオナマズ最大の特徴ではないでしょうか。

 取り込みのときには、ざらざらのヤスリのように歯が並ぶ口に手を突っ込んで下顎をつかむのが確実ですが、さすがにこのでかい口に手を突っ込むのは、手袋をしているとはいえちょっとビビリました。

 ビワコオオナマズは、琵琶湖の沖合でアユを捕食するために適応した種だとされています。(註4)沖合をアユを追って泳ぎ回るために、頭の形は横から見るとくさび形というか薄く抵抗のない形になっており、逆に幅はアユを捕食するために大きく口が開くようにだと思うのですが幅広です。幅広で薄めのシャベルのようなでっかい頭部がビワコオオナマズのきわだった特徴だと思います。

顔アップ(突出する下あごと扁平な上顎)

 このように魚食のために特化したビワコオオナマズは案外底の餌を食べるのは苦手なのではないかと思います。ヒゲも成魚では4本で下顎側のヒゲが途中から減ります。また、逆に水面の餌もアユを追い上げて食うことはあるかもしれませんが基本的にはあんまり狙っていないような気がします。このことについては普通のナマズの上方の餌を探すための適応との比較で後ほど整理したいと思います。

 それから、小型のビワコオオナマズを見て気がつくのは、同じサイズでも普通のナマズとは体色のイメージが違うのでずいぶん異なった印象にみえるということです。

 ビワコオオナマズは基本黒っぽいのですが、普通のナマズに比べると金属光沢があってややムラサキがかった色をしていることが多いです。

 おそらく、マグロ類などの外洋の捕食者が、太陽光を反射し、下から見ると明かりに紛れやすい銀色をしているのと同様に、沖合で月明かりの中アユを捕食するのに適した色調なのでは無いかと思っています。

 その他にビワコオオナマズの特徴としては、尾びれの上端の先が下端より長くなっていることがあり、普通のナマズと見分けるポイントとなっていますが、これについてはなぜそうなっているのかよく分かりません。ひょっとすると、扁平な頭とあいまって沖合の中層を泳ぎ回るための揚力を発生させているのかもという考えも浮かびますが、浮くためには下端が長い方が有利なはずでうまい説明になっていません。サメの尾びれも極端に上端が伸びていますが、流体力学的にはどういう理由でそうなっているのでしょうか?知っている方がいたら是非教えてください。

 

 最後に普通のナマズについて書いてみたいと思います。

 普通といっても、我々日本人が一番良く目にするというだけで、この魚が基準でもなんでもないので、結構よく見ると特徴的な魚です。

 普通のコイだのスズキだののいかにも魚らしい魚と比較すれば、ヒゲやニョロッと長い体などがそもそも特徴的ですが、それはナマズ属では普通の特徴なのでさておき、ナマズ属の中での特徴的な事項について説明したいと思います。

theナマズ(ナマズ写真)

 写真を見て気付かれる方も多いかと思いますが、ナマズの側線のパターンは実は結構特徴的です。

 ヌルッとした体表に割と側線が目立ちます、ちなみに体表には鱗がないように見えますが、実はそのとおりで鱗がありません。(註5)

 側線は普通の魚のように体側に一直線に走っているものの他に、それをつなぐ形ではしご状に背中にも分布しています。

 これが、ナマズの補食行動にかなり関係しているように私は思います。

 ナマズといえばジッターバグ(註6)というぐらい私はナマズ釣りにジッターバグをよく使いますが、ともかく夜釣りでのナマズの水面の音に対する反応の良さは特筆ものです。

 上方をうるさいものが通ると我慢できないという感じでバシャーンと派手な捕食音を立ててルアーに襲いかかり、しかも多くの場合で食い損ないます。でも、同じところにルアーを投げるとまた食ってくる確率が高いです。

 どうも、音に反応して近づいてヒゲに何かが振れればその瞬間に反射的にその辺の水ごと獲物を吸い込もうとするのではないかと思っています。

 いずれにせよ、伝統的なナマズ釣りの方法にも「ポカン釣り」というカエルを餌に水面ををピチャピチャと音を立ててナマズを誘う釣法があることからも、ナマズは水面の餌に良く反応することは疑いありません。上方の餌を捕らえやすいように口はご存知のとおりの笑ったような受け口です。

 ナマズの棲むのは池や川で、産卵するのに水草や沈水した植物を利用するので、そういった植物が多くはえているところ、少なくともそういうエリアとつながった水域が生息に適しています。

 昔、田んぼと河川の落差が少なく川から田んぼに容易に上がれた時代には田んぼでも良く産卵していたようです(註7)。さらに昔は河川が氾濫してできた氾濫原といわれる水浸しになった草原のような場所で産卵していたといわれています。

 そういう環境では、もちろんたくさんの種類の魚がナマズの餌になると思いますが、そういう田んぼや川辺の風景を思い浮かべると魚以外の、奴らの鳴き声が頭の中に響き始めます。

「ゲコココココココッ」と、

ヌマ子(我が家のヌマガエル)

 そうですカエルです。こいつらを食うために、ナマズは上方に反応するべく器官や行動を発達させてきたのではないでしょうか。

 もちろん底の方から中層を泳ぐ魚を襲うのにも上方の音や震動に敏感なのは役に立ちますが、それなら同様の背中の側線が魚を襲うビワコオオナマズにも発達していて良いはずです。(註8)

 また、夜ナマズを釣りに行って観察していると、昼間のイメージとは違ってどうもナマズはそれほど底に張り付いてはいないようで、まるでイワナのような位置取りで流れ込み直下の水流の中にいたり、逆にごく浅い岸辺で餌を待つように潜んでいたり、うろうろしていたりして、私が接近するとあわてて逃げていったりします。

 カエルがどのくらい重要な餌かは不明ですが、ナマズがカエルが多い日本の、もうちょっと範囲を広げると東アジアのモンスーンの影響を受ける地域の田園地帯にうまくマッチした魚なのだということは、産卵に関する生態とあわせて信じるに価します。

 ナマズがいる水辺は良い環境が保たれているのではないかといつも思います。ナマズもナマズがいる水辺も私はとても好きです。そういう良い環境がこれからも守られて、ナマズ釣りが楽しめるようにしていかなければと思います。

 

 もう一つナマズといって忘れてはならないのは、「地震」との関係です。

 他の種類のナマズについてもある能力かもしれませんが、よく知られているのはTheナマズについてです。

 ナマズが地震を起こすという言い伝えのたぐいは行き過ぎとしても、ナマズが昼間良く釣れる、水面で暴れるなど普段と違う行動をするのは地震の前触れというのは、どうも全く根拠がない話でもないようです。(註9)

 いくつか説があるようですが、地震が起きるときにプレートがずれると震動や音の他に電気も発生するようで、この電気的な変化を感じているか、若しくは電気による磁場の変化をとらえているのではないかというような説が有力だとテレビでやっていたように記憶しています。

 淡水魚の研究者である知人とナマズ話をしていたところ、彼は職場で見聞したナマズの能力から、ナマズの地震を予知する能力はきっとあると言っていました。

 そのナマズは実験に使った結果目が見えなくなってしまったのですが、不憫に思ったのか研究者が餌を与えてペットとして飼っていたところ、しばらくすると目が見えないにもかかわらず、餌をピンセットでつまんで水槽に入れると隠れ家から出てきてピンセットから餌を食べるようになったそうです。

 目が見えないのになぜ餌が分かるのだろうかと、研究者魂に火が付いたのか条件を変えて餌を差し出して反応の仕方を観察したところ、いつも使っている金属製のピンセットではなくプラスチックのピンセットにすると餌を差し出しても食べに来なかったそうです。

 どうも、匂いや音ではなく金属製のピンセットなら生じる電気的な、あるいは磁場の変化を感じていたらしいとのことです。まだどういった仕組みで電気なり磁気なりをナマズが感じているのかは明らかではないようですが、ナマズにはそういった能力があることは信じて良いようです。

 

 地震に関する言い伝えや、そのユーモラスな姿形、意外とおいしい味などから、日本人にはなじみ深く、ルアーへの反応も良く身近で魅力的な魚ナマズ。

 何万年もかけて鮎を食べるためにシャベルのような頭を発達させた琵琶湖の主ビワコオオナマズ。

 ユーラシア大陸の雄大さをその巨体に取り込んだかのような怪物的な巨魚ヨーロッパオオナマズ。

 ナマズ属3種はいずれ劣らぬ魅力的なナマズです。

 

 これからも興味深く釣ったり、見たり聞いたり読んだり調べたりしていきたいと思います。

 

西岡ナマズ(ナマズグッズ)

生け贄(風呂場で泥ぬき中)

 

 

 

(註1)他のナマズ属の資料があまりないので詳しく確認できませんでしたが、少なくとも3種には共通の特徴。韓国にすむヤナギナマズについても見つけた画像では4本らしくみえる。

 

(註2)属名「Silurus」の由来はこのあたりのラテン語系の国での名前から来ていることは想像に難くありません。英語圏では「Wels」

 

(註3)人間の胎児にも発生の途中までシッポがあったり、エラのようなものがあったりで、このヘッケルの有名な説はある程度正しいように見えますが、かといって卵細胞が原核細胞で始まるわけでなし、途中からミトコンドリアが共生し始めるわけでもなく、個体発生は系統発生を完全に繰り返しているわけではないようです。

 

(註4)最近は沖合でアユを捕食するのではなく、沿岸で数を増やしているブルーギルやブラックバスを寝込みを襲って捕食しているビワコオオナマズもいるようです。京都大学の研究者が発信器を付けて調べた調査結果が報告されています。

 数年前に琵琶湖でコイヘルペス病が流行ったときに、琵琶湖にはコイの死体があちこちに見られたようですが、これらをビワコオオナマズがあさったという話は聞いたことがないので、やはりビワコオオナマズはあまり底に落ちた餌を食っていないのではと思います。

 逆に、霞ヶ浦ではコイヘルペス病で死んだコイは片っ端からアメリカナマズが片付けたという噂がまことしやかに流れていたりします。奴らは完全に上顎の方が長く底の餌を食うのに適しています。

 

(註5)同じようにヌルッとしているウナギは実は小さな鱗が皮下に隠れているそうです。よくウナギとナマズのどっちに鱗がないのか混乱します。今回も間違えかけて確認しました。

 

(註6)パテント取得の独特のカップをボディー前面に持ち、水面でバタバタと左右に体を振り「ピポパポポコペポ」と独特の音を響かせながらナマズを誘う、元々はバス用にフレッドアーボガスト社が発売していた歴史あるノイジータイプのルアー。ダンスの「ジルバ」はJitterbugをネイティブスピーカーが発音するとそう聞こえるので、日本ではジルバと呼ばれている。元々は同じでジッターバグがどういう虫かよく分かりませんが、ジタバタする様がダンスの名前になって、それが腰を振りまくるルアーの名前に採用されたのだと思います。

 様々なサイズバリエーションの他に、プロペラの付いたジッタースティックもありこれもナマズには効果的。

 

(註7)琵琶湖などで、田んぼをこういった増水期の水生植物や沈水植物で産卵する魚たちの産卵場所として利用する取り組みが始まっています。

 

(註8)実は、ナマズのはしご状の側線について、触れられている図鑑を見つけることができませんでした。側線というのは体の横にまっすぐに走っているものだけをさす言葉で、はしごの横棒にあたる背中の部分は単なる感覚孔として整理されているのでしょうか?

 いずれにせよ、背中の側線のように見える部分はナマズには明確に認められるものの、ビワコオオナマズには無いように見えます。本当は見えにくいだけでナマズと同様という可能性もなきにしもあらずですが、見えにくいぐらい小さいという差がある程度にナマズに比べて発達していない、ということはいえると思います。見分けるポイントにもなる気がします。

 

(註9)ナマズに限らず、他の野生動物も地震の前に異常な行動を起こす事例が観察されています。何かを感じているのでしょうね。ちなみに我が家の水槽のナマズの仲間の熱帯魚2尾は地震が起こって水槽がさんざん揺れてから隠れ家から驚いて出てきました。いつになく動き回っているので「これは地震の前兆か?」と警戒したときは結局何もおこらず、どうも腹が減っていただけのようでした。地上3階では地震の前触れはキャッチできないのか、それともペットの地位に安住して野生の能力を失ってしまったのでしょうか。

 

<参考>

「魚の分類の図鑑」

「巨大動物図鑑」HP

 

(2008.6)

 

○2014.5.24のブログから再掲

Book of the namazu, by the namazer, for the namazer.


 ナマザーによる、ナマザーのための、ナマズの本が出た。
 前畑政善「田んぼの生きものたち ナマズ」農林漁村文化協会である。

 前畑先生は主に琵琶湖でナマズを研究している研究者だそうで、10数年にわたって研究してきたナマズについて、その研究成果を含め、ナマズについて田んぼとの関わりから見えてくる生態や、食文化や信仰などナマズ文化的なものまで、広くわかりやすく紹介してくれている。
 田んぼに登って産卵行動を行う様子は豊富な写真で臨場感たっぷりに説明されていて、断片的に知っていた知識もあったけど、おかげで1つながりの生命活動の流れとしてイメージを持って頭に定着してくれた。

 ナマズについて、「ナマズ属与太話」で疑問に思っていると書いていたような当方が知りたかった知識も、いくつも回答が示されていた。
 ナマズの背中にハシゴ状に並ぶ測線は「大孔器」というそうだ。
 ナマズがどこで電気を感じているのか、是非知りたかったが、表皮の「小孔器」で感知するといわれているらしい。やっぱり電気は感じていたんだと思うと、ある種予想どおりだが、それでも不思議で驚きにあふれていると感じる。

 THE「ナマズ」のみならず、他のナマズのことも書かれていて、ビワコオオナマズは産卵期にウィードエリアで釣れるので、当方はてっきり水草に産卵するモノだと思い込んでいたが、実は岩に産卵するのであった。ルアー投げてる足元の石組みのあたりをウロウロと2匹で泳いでいるのを見かけたことがあるが、まさにこれから「合体」するところだったわけである(ビワコオオナマズもナマズも雄が雌のお腹に巻き付くようにしてイタします)。
 ビワコオオナマズ、江戸時代の文献には9尺(2.7m)のものがいたとか書かれていて、さすがに先生も「魚だけに’尾ヒレ’がついてると思いますが」と書いてますが、いやいや意外にそんな化け物サイズも昔はいたのかもしれませんゼ。

 ナンポウオオクチナマズというナマズは、ほとんど情報が出てこない謎のナマズで、中国深センで釣りをする村田さんが、どこかに情報無いかと検索かけてたどり着いたのが、当方のサイト(でもたいした情報持っていなかった)という、当方が香港に釣りに行くという縁がこのナマズから始まった魚なんだけど、このナマズの中国湖南省での養殖の様子の簡単なレポートがありました。養殖対象となって種苗が生産されているから観賞魚ルートで日本にも流れてきて、当方はマニアックな熱帯魚屋のネット上のカタログでその名を知ることになったという事だったようである。日本のナマズの仲間であるナマズ(Silurus)属のナマズではヨーロッパオオナマズに次ぐ大物なので、今後もナマザーなら要チェックのナマズだぜ。

 この本には、グレイトなナマザーである前畑先生の「ナマズ愛」が随所に感じられる素晴らしいナマズ本であると、ナマザーナマジが世界中のナマザー達にお勧めする1冊である。

 ナマズの「大孔器」の説明に使われている写真は実は「釣り人ナマジ」提供となっている。農林漁村文化協会の担当者さんから、当方のサイトをみて「このナマズの写真を使わせてもらえないでしょうか」と連絡があったときは、ナマザーとして当然協力させてもらいますよとお答えした。むしろほんのチョビッとだけど、この素晴らしいナマズ本に参加させていただき、ナマザーとしてとても光栄に感じています。

 

○2018.8.18のブログから再掲

ナマズ業界激震!第四のナマズ属襲来

 「滋賀県立琵琶湖博物館と北九州市立自然史・歴史博物館は17日、国内で57年ぶりに新種のナマズを確認したと発表した。(by毎日新聞)」
 との情報が昨日流れ、既にナマズマニアの間では噂になっていたようだが、恥ずかしながら寝耳に水でめまい起こして気分悪くなるくなるぐらい興奮した。

 クッソおくれをとったぜ、ナマザーナマジ一生の不覚。というのも、このナマズ我が故郷東海地方の比較的上流域に棲むらしく、和名としてはタニガワナマズというのが提唱されている。
 おそらく標準個体の標本取った水系で釣りしたことあるうえに、その川で夜釣りに行ったらものすごい数のナマズがいて網ですくえたという話も聞いたことあったのである。
 ナマズが産卵のために用水路とか遡上するのはよく見られる行動で、上流の方に遡ってきて堰堤とか魚止めの下に溜まっていることはありがちなので疑問にも思わなかったけど、その夜釣りに行った場所って結構上流のはずで上に行っても産卵に適した水生植物とかの多いところに辿り着けない。
 ナマズにしてはへんなのがいると気付いていて然るべきだったのかも知れない。ぬかったとしかいいようがない。

 詳しい生態とかはまだ不明らしいけど、どうもイワトコナマズに近いらしいので、岩の下とかに産卵するのかも知れない。というか逆にタニガワナマズの方が広く分布していて実は一般的で、上流域で岩の下に産卵するタニガワナマズが琵琶湖と余呉湖に閉じ込められて湖の岩礁域で産卵するように分化したのがイワトコナマズなのかも知れない。
 そういえば東北時代、ナマズ釣れる場所探していて「ここでナマズ大釣りしたことある」と聞いた場所がヤマメ釣るような渓流でちょっと違和感感じたこともあったのである。今のところ生息地は東海地方とされているようだけど、これ多分関西以北ぐらいの広い範囲に棲息しているような気がしてならない。いずれにせよ今後の調査・研究の報告に期待したい。

 とりあえず見分け方としては、腹にまで模様があるというのもあるようだけど、色や模様は個体差大きいのでわかりにくい。確実そうなのは「上顎後方歯帯が2枚に分かれている」というやつで、上顎の歯のうち前の方の口幅一杯に並んでる歯の後ろの二列目のやや小さめの歯の並んでいる部分が、真ん中で分かれるか分かれないかで、イワトコナマズも分かれているのでイワトコナマズの生息地以外で上顎二列目の歯が真ん中で分かれていればタニガワナマズということになりそうだ。

 ナマズなんていう自分のハンドルネームの元になったような親しい魚に実はまだ知られていない種が紛れ込んでいたなんて驚くとしかいいようがない。

 ちなみにコレで日本のナマズ属はナマズ、ビワコオオナマズ、イワトコナマズ、タニガワナマズの4種になりそう。
 ついでにナマズ目ならくわえて、ギギ、ネコギギ、ギバチ、アリアケギバチ、アカザ、ハマギギ、トウカイハマギギ、オオサカハマギギ、ゴンズイと移入種でヒレナマズ、マダラロリカリア(プレコ)、アメリカナマズぐらい。

 ああっ!タニガワナマズ探しに行きたい。

 

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