顛末記「中央アジアの草原にて」5月16〜24日(実釣7日)

 

 始めてヨーロッパオオナマズがどういう魚か知ったのは、作家の椎名誠さんが観賞魚マニアには有名な熱血ナマズ野郎松坂みのる氏とトルコにナマズを釣りに行くものの結局釣れなかった「イスタンブールでナマズ釣り」を通じてだったと思いますが、ヨーロッパオオナマズの存在自体は私が幼少の頃に買ってもらった図鑑の世界の魚を紹介するページにヨーロッパを代表する魚の一種として書かれていたので古くから知っていました。

 釣りに行くことになる直接のきっかけは、たしか5年以上前だったと思いますが、私がナマズ好きだと知る友人から、「ロシアの方のどっかの国ですんげーでっかいナマズが釣れるらしいよ。行ってくれば?」という話を聞きいたことに端を発します。「どっかじゃ行けませんよ。」と聞き流していたところ、友人はその後調べてくれたのか「この前のでかいナマズの話カザフスタンだったよ、ネットで検索かけたら日本からのツアーの情報も分かるよ。」と追加情報をくれました。

 検索してみると今回お世話になったフリ−ライドアングラーズという大阪の釣りツアーの専門会社のサイトがヒットして、これまた今回の旅の手配でお世話になった同社のK氏が2mを越える巨大なヨーロッパオオナマズをゲットしている写真を見てしまい目が釘づけになりました。

 当時、アメリカナマズを釣るために、「CATFISH FISHING」で海外のサイトも検索していろいろ調べていましたので、その時ちょくちょくこの日本のナマズと同じSilurus 属で巨大に成長するナマズについてのサイトもヒットしてくることがあり、ヨーロッパでは、熱狂的なマニアもいることは知っていました。

 そういったマニアのサイトの中には、フランスのセーヌ川でこのナマズを狙っている人のサイトや、大物ナマズ釣果投稿サイトなんていうサイトもあり、釣果投稿にはスペインのダムだかで釣られたらしい3mを越える化け物サイズの写真もあり、度肝を抜かれたおぼえがあります。

 釣ってみたいとは思うものの、ヨーロッパでの個体数は多くはなく、遠征に行っておいそれと釣れる魚ではなさそうで釣りに行こうとはちょっと思えませんでした。

 ところが、カザフスタンではヨーロッパオオナマズを食べる習慣がないのか漁業の対象となっていないようで(イスラム教の鱗のない魚を食べないタブーとの関係か?)ロシアから独立してヨーロッパからの釣り客が来るようになると、そこはナマズ野郎の聖地と呼ぶにふさわしいパラダイスのような場所で、かなりの確率でヨーロッパオオナマズが釣れるということが知られるようになり、日本からもツアーが組まれるに至ったようです。これは近いうち行かねばなるまいと巡礼を決意しました。

 

 ちょっと横道にそれますが、現在、ギネスブックには世界最大の淡水魚として最大300キロ程度に成長するメコンオオナマズことプラーブックが登録されていますが、僕個人としては汽水域にも出現することもあり純粋な淡水魚ではないとされ選からもれたヨーロッパオオナマズこそが世界最大の淡水魚と考えています。記録に残る最大サイズは約350キロで5m近かったという説があります。

 他に巨大淡水魚としては湖に陸封されたチョウザメの何種類かやナイルパーチなどもメコンオオナマズ以上に大きい個体はいたのではないかと思いますが、純粋な淡水魚でないという納得できない基準で選考対象から外されています。陸封タイプは淡水魚でいいでしょうに。

 ちなみにピラルクは記録に残るのは最大3m弱で細長い体型から体重は200キロ程度しかいかなかったのではないかといわれています。まあ、記録がないというだけでホントはもっとでかい個体がいた可能性は否定できません。ナイルパーチも現在見られる大きさからは3m近くにまで育つとは信じられませんが、出典不明のやや怪しげな情報ですが2m後半の巨大なミイラがピラミッドからみつかっているそうです(これらの情報元となったサイトが残念ながら閉鎖されたのか既に見つかりません。)。

 

 さて、巡礼を決意してからですが、しばらくは仕事が忙しくそれどころではありませんでした。

 東京にもどってきた3年ほど前に一度予約を入れかかったのですが、体調をやや崩して断念。その後もやや体調に不安があり、長期の遠征は控えていたのですが、昨年の夏頃から始めたカヌーで結構体力が戻り体調もいい感じなので、ヨーロッパからの客に船とガイドを押さえられる前にと、冬の間に例のK氏に予約の相談をしました。4名以上集まったらツアーを組みますとのことで手配に入ってくれました。

 某老舗タックルショップで知り合いの店員さんと話していたところ、「うちの店員にもサメとナマズ好きなのがいるから紹介するよ」とカザフスタン経験者でやはり2mオーバーをキャッチしているS氏を紹介してもらい、旅行の手配と同時平行的に、S氏に釣り方やタックルについて丁寧に教えていただき準備を進めました。

 私は長期の遠征の場合少なくとも1月前にはタックルを一度パッキングして忘れ物がないかとかのチェックをしたり、多すぎる荷物を削ったりします。今回もアシアナ航空では預けられる荷物に20キロの制限があり道具を絞るのに苦労しました。

 結局メインに柔らかめのGTロッド「GIANT86トラベラー」と7500ss、予備タックルでマスキーロッドと975、ルアーで餌の魚を釣るためにシーバスタックルのアグリースティック7fと4400ss、フライタックル8番1セット、タナゴタックル1セットを用意しました。

タックル(今回のタックル、キャンプのベットにて)

 あれもこれも釣りたいと大物一本に絞り込まないからでかいのが釣れないのだとご指摘受けそうですが、それはその通りかもしれませんが、始めての場所に行った時、できるだけいろんな魚を釣ることは、私が遠征に出る目的の大きなものであり、そうやってその場所の生き物や自然を知ることが何よりの楽しみなので、なんといわれようがやめるつもりはありません。

 準備の方は筋トレも含め着々と進んでいくのですが、一緒にカザフまで行ってくれる残り3名の勇者がなかなか見つかりませんでした。最終的にはK氏が現地の受け入れ先に交渉してくれて1名で行くということになり、ツアーではなく手配旅行のような形になりました。しかも値段はツアー料金のままです。大変お世話になり感謝しています。

 

 そんなこんなで、準備も無事整い仕事も何とか終わらせたり終わらなかった分は人に頼んだり、後回しにしたりして16日午後成田出発、ソウル乗り換えでカザフスタン南東部の都市アルマティには3時間時差のある現地時間で夜11時過ぎに到着。その晩は現地受け入れ先のオフィスの簡易ベットで寝て、翌17日5時起きでいざイリ川デルタ地帯のフィッシングキャンプへ出発。

 アルマティは結構な都会で、おっきなショッピングセンターやホテルもあって車も沢山走っていました(トヨタ車強し!)けど、町を出るとまさに草原の国、どこまで行っても地平線が見渡せる草原。ちょっと感動してしまう島国から来た私。

草原(地平線まで続く草原)

 所々に赤いかわいらしい花が咲いていて運転手は私と同様片言英語が話せるので花の名を聞いてみると「オピウム(ケシ)」だってよ。日本人からかっちゃダメだよ。

ケシの花?(名前は分からなかった赤い花)

 かれこれ4時間ほど走ってちょっとした岡を超えたあたりから、景色が砂漠っぽくなってきたと思っていたら、運転手がGPSを取り出して舗装道路からおりて砂のダートロードに進路を進めました。

オフ?ロード(4駆でなければ走破不能)

白い馬(白い馬:牛が放牧されていて馬に乗ったカウボーイもいる)

 実は、この砂漠のようなエリアこそイリ川のデルタ地帯そのものなのでした。

 ここでイリ川について、若干説明しておくと、東の中国新キョウウイグル自治区天山山脈に端を発し西に流れカザフスタンで大きな湖バルハシ湖に注いでいます。バルハシ湖に注ぐ河口エリアには天山山脈の氷河が削りイリ川が運んだ砂が堆積したのだと思いますが、広大な砂の三角州地帯が広がっていて、その一見ちょっと灌木と草の生えた砂漠のようなエリアに幾筋にも分かれ合流し複雑に曲がりながらイリ川が流れています。

 その砂漠のようなデルタ地帯の荒れた道を時々GPSで位置を確認しながら、ガタゴト行くこと2時間ほど、ケツがいたくなったあたりで葦の平原が見え始めたと思ったら、三日月湖と次にイリ川本流が見え次の移動手段であるボート乗り場に到着。

 夜走るのは危険なので朝出発にしますという説明を事前に聞いていたので、現在、石油など豊富な鉱物資源を元に経済が絶好調で治安も良いと聞くカザフスタンで何が危険なんだろう?田舎に行くと山賊でも出るのだろうかと思っていましたが、実際に車で走って危険の意味がよく分かりました。夜走ったら道に迷うか悪路でひっくり返ります。

 ボートに乗ること数十分でアシ葺きの屋根とテントをジョイントさせたコテージが並ぶキャンプ地に到着。船着き場はキャンプ地の目の前の池に本流から水路を掘って入れるようにしてあり、本流が増水したりしても安全なようで、よく考えられていると感心しました。

 これまたアシ葺きの屋根の見晴台のある食堂で簡単に昼ご飯を食べて、ガイドの準備が整う1、2時間待つ間で釣りの準備とさっそく船着き場あたりで釣り開始。

 狙うのは、ナマズ釣りの餌にも使う鯉科の魚食魚ジェリフとユーラシア大陸版のウォールアイという感じのザンダー。ウォールアイは開高健先生がカナダでサッシーシャッドを付けたジグスピナーで爆釣していたイメージが強いので、ガルプのワームを付けたジグスピナーをまず試してみる。開始早々船着き場の池の真ん中へんと、船着き場出口の本流との交流点でジェリフらしい魚がヒットしたもののどちらもバラシてしまう。さい先悪い・・・。

 ガイドの準備が整ったので、ボートで出撃、ガイドはニコライ。まるっきりといっていいほど英語ができない。当方もロシア語は「ハラショー(素晴らしい)」、「スパシーバ(ありがとう)」、「ニエット(無い、ダメ)」、「サブローソ(旨い)」ぐらいしか知りませんが、釣りしたい客の考えることぐらいガイドはだいたい分かるし、身振り手振りもくわえればそこそこお互い意志は通じます。特に困ることはなかったです。ウ○コしたいときも腹押さえてティッシュ手に持って振ったらちゃんと理解して上陸できるところにとめてくれました。

 最大で4人ぐらい乗れるヤマハの選外機付きのフラットボートに2人で乗り込み、まずは餌のジェリフ釣りにワンド行く、しかし、最初の場所は場所を替えながら何カ所かまわっても小さなザンダー一尾のみで餌にするジェリフが釣れないので、本流とつながった池に移動、ここで群れを見付けて30センチぐらいのジェリフを3尾ゲットしました。

ジェリフ(ジェリフ)

 今回の釣りを通じてジェリフ釣りに効いたルアーはスプーンのバイトとスピナーのパンサーとマーチン。パンサー・マーチンはスウェーデン製のサイズの割に重量のあるスピナーで物陰に付くというよりも群れで泳ぎ回りながら餌を探しているジェリフを探すのにその遠投性がものをいいました。

 餌が手に入ったので、さっそく本流を下ってヨーロッパオオナマズをねらいに行きます。

 仕掛けは、35号の錘と泳がせ用のハリ30号、ハリスにナイロンとPEの編み糸で強度があって結びもPEのように抜けないシーハンターの50号以上を使い、単純なブッコミ仕掛けで挑みます。餌はジェリフを5センチ幅ぐらいに筒切りにして使います。ガイドが餌のカットから餌付けまでやってくれます。でかく付けた方がでかいのが釣れそうな気がしますが、カットした餌の大きさはあまり関係ないというのが2m釣ったS氏からの情報でしたので私も気にしないことにしました。事実ここではでかいのもジェリフの切り身えさで釣れているようで、ガイドは他の魚じゃなくてジェリフにかなりこだわります。

 本流は幅30メートルぐらいでしょうか、蛇行を繰り返し深いところと浅いところがありますが、細かい砂が水中を舞っていて常に濁っています。いきなり本流ど真ん中でも砂が堆積して流れが渦巻いていてエンジンが支えるぐらい浅くなっているところがあります。両岸はアシが生えていて、えぐれて流れの変化ができているところなどで、ガイドがボートの舳先を突っ込んでアシにボートをくくりつけて、「シュッ」といいながら手を振って投げる方向を示してくれます。

 その方向によっこらせっと仕掛けをぶち込み、しばらくするとちょっと寄せてさらに待って、それでも反応無ければもう一度投げ直して、それでも反応無ければ場所移動というパターンが基本でした。反応良いところではしばらく粘ります。

置き竿で待ちます(ナマズを待ちながら)

 しかし初日は、支流にも入ってポイント探し回ったけどあたりが1、2度あったもののスカ、帰るとハンガリーからの釣り人6名と共に食事、彼らのうち数名は英語ができるので情報交換、彼らもナマズはほとんど釣れておらず1名だけ130センチをゲットしたらしく祝福を受けていました。

 事前の話では150センチくらいまではそれほど苦労せず釣れるし、2、3日でしんどくなるくらい釣れると聞いていたので、2、3日で目標の自分の身長より大きい172センチ以上のサイズが釣れて疲れてしまっていたら、残りの日々はのんびりザンダー釣りにでも精を出すかと甘いことを考えていましたが、ここに来て「坊主」くらうかもしれないというおそろしい不安が生じてきました。

 

 ちなみに夜は発電機が止まるのでキャンプ中の明かりは消えます。結構ワイルドですが、水洗トイレもあり、温水は出ないもののシャワーも完備で自分でテント派って寝ることを考えれば充分に快適で釣りに集中でき、かつアウトドアライフの雰囲気も存分に味わえるなかなか良い案配のキャンプ地でした。ちなみに釣りに行くときに使う氷にいつも枯れた葦の葉っぱとかが混ざっていたので不思議に思っていましたが、どうやら氷は春になってキャンプ地を開くときに切り出した氷を氷室で保存して使っているようです。冷蔵庫も夜は電気がないので食材を保存するぐらいしか使えないようでした。

 夜は寒いぐらいですが、寝袋も用意していたので蚊帳がぶら下げられたベットで快適に眠れました。逆に昼は暑くて朝夕の移動時にはダウンジャケットとカッパを羽織って気温に合わせて適宜脱いでいました。乾燥しているので暑くてもそれほど不快ではなく服装で温度調節さえしていればいつもさらっと快適な気候でした。

キャンプ食堂(キャンプ地)

 

 不安を感じながらも2日目の18日、餌も残り少なかったので朝7時に飯の前にジェリフを釣ろうとフライタックルを持ち出して船着き場周辺で釣りました。シンキングラインで黒のウーリーバッガーで出入り口付近を狙っているとジェリフゲット。午前中ぐらいはこれで持ちそう。

 朝食後、とにかく昨日より遠くまで下流方面行ってくれと手振りで説明して、ガソリンが無くなってもうダメだというところまでポイント探しに行きました。

 その結果かたまたまか、最初あたりがあるのに何回もフッキングミスしていたけどやっと一尾ゲット。これがまた、ヨーロッパオオナマズという種類かどうかも疑わしくなるほどの小物。50センチ切るんじゃないのかというサイズで口いっぱいに餌をくわえてあがってきました。でも嬉かったです正直いって。

最初の一尾(最初の一匹)

 アタリを待つ間はスピニングリールのドラグをゆるめておき、アタリがあると竿を持ってラインのテンションを一旦フリーにしてナマズに餌を食い込ませて、ラインが持っていかれて重さを感じれば、スプールを左手で押さえるか、余裕があればドラグを締めてから合わせをくらわせるのですが、どうもアタリがあっても持っていかなかったり、フッキングが決まらないのは小物が餌を半分ぐらい囓っている状態のような気がしました。アメリカナマズでもなかなかかからないアタリを苦労してかけると小物で良型はほっといても竿倒しながら仕掛け引きずっていくような餌の食い方をすることが多いです。ちなみにフリーで食い込ませて即合わせを食らわすにはクリックブレーキのついたベイトリールの方が便利かもしれません。スピニングだとドラグをゆるめた状態からあわせた時にドラグをしめるのにやや手間取ります。まあドラグ締めている間ジージードラグがなるのを聞くのも悪くないです。障害物にすぐ潜り込まれるような場所でなければ特に問題はないと思います。

 その後は調子が出たのか、午前中だけで93センチ、60クラス、やっとこさのメーターオーバー103センチと計4匹釣って昼飯に帰ると、ナマズ釣れていたのは私だけでハンガリー旅釣団から祝福と称賛を受けつつ飯を食いました。まあメーターオーバー釣れれば渋かったとかいっておけば何とか私の面子も立つかなと安堵しました。釣り人ですから釣れなかった言い訳ぐらいいくらでも考えますし、釣れないことがあるのが釣りだということも充分分かっているつもりですが、カザフまで来て坊主とかあんまりひど過ぎる成績では帰れないという見栄はありました。

103(103センチ)

 昼飯後は出撃までチームハンガリーのヨーロッパ風のフナ釣りを見学。パンと粉餌の団子を撒き餌して付け餌はコーンでした。タックルは磯竿のような穂先の細いスピニングでヘラ釣りの仕掛けに浮きが磯で使う棒浮きのような感じでした。30前後のフナの一種とコイ、ジェリフなどが調子よく釣れていました。

フナ(イリ川産フナ、婚姻色出てますね)

 午後は一旦餌を釣りに前日の池に、今回は割とあっさりザンダー1尾とジェリフ2尾をゲット。

ザンダー(これがザンダー、スズキでいえばセイゴサイズ)

 その後、午前中調子よかった下流エリアにGOしました。引き続きアタリはかなりあって、数的には好釣で94、107、60クラス2尾と4匹ゲット。

107(107)

 キャンプに帰って夕食、余裕が出てきたのか今まで味わう余裕もなかった飯も旨く感じます。基本的に料理はヨーロッパ風とでもいうのか、朝は目玉焼きとパンとかおかゆのようなオートミールとか簡単なもので、昼と夜はスープと一皿の上にパスタか米、麦など炭水化物系と肉やソーセージを料理したものが乗っかっていて、たまに別皿でフナやソウギョなど魚のフライもでました。また、こちらの名物料理らしいギョウザのようなものも出て同じく草原の国モンゴルとのつながりのようなものも感じました。ちょっと日本人には油が多いかなと思いましたが、滞在期間を通じて料理はとても美味く楽しみにしていました。

 ちなみに泥臭いといわれがちなフナやソウギョなどの淡水魚も小骨は多いけどまったく泥臭くありませんでした。イリ川は綺麗な水質であり砂底で泥などあまり無いので考えてみれば当然かもしれません。

フナフライソウギョフライ(魚料理、フナ、ソウギョ)

スープメインギョウザ風(料理写真)

 チームハンガリーは午後もナマズはいまいちな成績だったようで、好釣に釣ってきた私は「やるなコイツ」という感じで認められたようでだいぶ仲良くしてもらいました。釣り人同士片言英語でも結構楽しく会話できました。彼らはナマズ求めてイタリアやフランスにも遠征しているようです。

 かなり楽しくなってきましたが、しかし琵琶湖で釣ったビワコオオナマズ109センチは抜いておきたいなと、目標下方修正しつつ寝ました。

 

 3日目19日は朝飯前に餌の確保のために前の池でバイトを投げていると45センチくらいのこれまでより大きめのジェリフゲット。午前中の餌ぐらいはこれで行けそうなので、フナも釣ってみようと、垂直立ちのペンシルベイトを浮きにしてハリスとフライフックで単純な仕掛けを作り、小物釣り用に持ってきた練り餌「グルテンワン」で狙います。フナ結構簡単に釣れました。15センチから30センチくらいまで5匹ほどゲット。

 それから、水路にどうもタナゴ臭い小魚がなわばりを作って婚姻色が出てヒレが黒くなったオス同士がケンカしているのを見付けました。朝食の時間が迫っていたので断念しましたが次は小物仕掛けも試したいところ。

フナ(フナ写真)

 朝飯後ボートで出撃。我がガイド「ニコライ」は優秀なのか相変わらずアタリが結構あって午前中は60クラス2尾、80クラスと105センチと4尾、数は相変わらず好釣に出ます。この日は砂州が終わって深くなっていく斜面での反応がよいと感じていましたが、ガイドも同じことを感じているらしくしっかりそういうポイントを集中的に狙わせてくれました。いわゆるパターンフィッシングができるガイドのようです。昔インドネシアで過去の実績ポイントをまわるだけのクソガイドの船に乗せられて、結局自分でポイント指示して1尾釣って3日のうちの3日目をキャンセルした経験があります。今回のガイドは非常に良かったです。

砂州(砂州の上で記念写真)

 

 昼食後、小物竿を出して例のタナゴらしき小魚を狙いますが、船の出入りがあると警戒してしまうのか、船の波で濁っていて見えにくいこともあり餌への反応が悪く釣れませんでした。しかし船に腰掛けて釣るとコブナとハヤのような魚が結構釣れました。

小鮒(小鮒)

 このコブナを餌に、ジェリフを釣ってやろうと例のペンシル浮き仕掛けにシングルフックを付けて背掛けにして投入。しばらくほっておいて反応無いので回収していたら食いました。今回最大のジェリフ53センチ。良い引きしてくれました。群れがまわってきたのだろうということでさらにマーチン投げて45ぐらいの追加。ジェリフは最も良い餌らしいのでチームハンガリーに一尾進呈。

53ジェリフ(ジェリフ53)

 

 午後のボートでの釣りは相変わらずアタリはあるものの小物が多いのかすっぽ抜けが多く集中力が切れた感じでした。それまで蚊は多かったものの、防虫スプレーで問題なかったのですが、この日あたりから非常に小さなヌカカのような虫の襲撃が始まり、こいつらの攻撃は眼鏡のツルの下など叩き落とせないところや、髪の毛に潜り込んだ場所などをねらってくるので、これにも集中力をそがれました。普段は牛とかを相手に血をすっているので当然なのかもしれませんが髪の毛に潜り込まれていたときはビビりました。それでも80クラスと60ぐらいをゲット。

 

 4日目の20日の早朝、タナゴタックルでタナゴらしき小魚を狙いました。なかなか餌取りが上手でハリがかりしません。餌が悪いのかと、雨が少ないので軒下ではなくそのへんの地面に巣を作っているアリジゴクをちぎって餌にしました。

アリ地獄(アリジゴクの巣)

 ヨーロッパ系のタナゴは餌取り上手だなと思っていましたが、釣り上げてみて納得。タナゴではなくモツゴのたぐいの魚でした。フナと同じで日本のモツゴより婚姻色は派手目に出ています。モツゴだと思ってよく見るとなわばりを作っている場所は産卵場所になるアシの根っこ周辺でした。納得。その後ハヤ数匹釣って朝食。

モツゴ系(モツゴ系の小魚)

 

 20日の午前は、防虫ネットをかぶって出撃。虫の攻撃はこれでほぼガードできました。最初いまいちで60ぐらいのしか釣れていませんでしたが、昼食近くなってキャンプ近くのこれまでも何度かやった場所で、ラインを送り込む暇もなくジージードラグをならして走り出すいい感じのあたりがあり、スプールを左手でロックしてあわせをくらわすと、ガクンガクンと首を振り暴れる。今までにない首振りの幅。ドラグをあわてて締めつつファイトに入る。結構良い引きするもののそこは使っているタックルがGTタックル。ドラグ5キロ弱ぐらいで暴れながらも寄ってきました。あまりファイトさせずに寄せてきたのでボート際で暴れまくってボートの下に潜り込む。やや焦りつつも竿先を水中に突っ込んで対応。ガイドは舟底をドンドンと踏みならしてナマズを船の下から外に誘導。浮かせてガイドが口にタオル巻いた手を突っ込んでランディング成功。こいつが今回最大の125センチでした。ヨーロッパオオナマズとしてはそれほど大きくなくても、普段釣っている魚と比べればかなり大きいです。興奮させてくれました。写真取りまくってリリース。

125(125)

125ボート上(125タックルと共にボート上)

 さらに、「もういっちょいっとけ!」という感じでガイドが投げるようにジャスチャーをしたので、再度同じ場所に投入。すぐに同じ様なかんじであたりがあり今度は122センチゲット。なかなか良いじゃないですか。どうも、同じ様なサイズがある程度まとまっていてしかもずっと同じ所にいないで移動しているようでした。

122(122)

 良く考えると、この2匹は昨日小ブナで釣ったジェリフを餌にして釣っており、小ブナがジェリフにジェリフがナマズにとわらしべ長者のようにして釣った魚でした。

 御機嫌で昼食へ。

 

 昼食と昼寝後、ボートで今まで行かなかった上流へ行くが、あたりも少なくスカでした。根がかりも下流エリアより多くいまいちな感じでした。

 

 5日目の21日、朝飯前に餌のジェリフを確保しようと小ブナ、ハヤを釣って泳がせ釣りしましたが不発。そろそろルアーも含め私の釣り方は池のジェリフには見切られてきたようです。

 

 午前中、ジェリフがないので前釣れた池に釣りに行きますがザンダーのみで結局あきらめて、現地でコクローゾと呼ぶフナをチームハンガリーに分けてもらって釣るもののあたりは結構あるけどフッキングミスが多くスカ。

 

 昼休みにハヤを釣って、泳がせ釣りで本流への出口付近を釣りますがザンダーのみ。

 

 午後ボートでジェリフを釣りに行き何とか1尾確保、70クラス3匹ゲット。やはりジェリフ餌の方が釣れるのか。

 

 釣りの最終日の予定の6日目22日、朝ハヤを釣って泳がせでジェリフを狙うものの、ザンダーバラシのみ。とりあえず餌用にフナをゲットしておく。

 

 午前中、昨日のジェリフの残りとフナで60くらい、100センチ、106センチをゲット。しかし、上流の支流に入ったチームハンガリーは良い釣りだったようで、特にトミーは170、160を含む4尾と爆発していた。

 トミーにお祝いを言った気持ちは、一緒に釣りしてきた仲間としてウソではないけれど、一方で良い群を引き当てた彼をうらやみ、自分がそのサイズを釣れていないことを悔しく思う気持ちは抑え難く、昼飯食べて自分のテントに戻ったら涙が出た。他の釣り人の幸運をうらやむような人間の小ささが釣れる獲物のサイズにも影響しているのでしょうか?

 

 昼寝後、心機一転、最後のチャンスにかけるべく気合いを入れ直して出撃しましたが、ジェリフがなかなか釣れない。しかたなくフナで釣り始めるが、こんな時に限ってフッキングの時に連続して餌だけ取られてしまい、ついに餌が底をつく。再度ジェリフ釣りに行ってやっとのことで1尾確保して釣りを続けるも、時間は少なくいくつかあたりがあっただけで終了。

 

 最後まで集中して釣りきった満足感と、ちょっとセンチメンタルな気分を抱いて夕焼けの中キャンプに戻りました。

夕焼け(美しい夕焼け)

 サイズという結果については正直悔しい気持ちがありましたが、準備して釣るために努力を続けた過程については、今できる限りのことをやったという充実感がありました。

 待つ時間が多く、ルアーの釣りよりは体への負担が少ないとはいえ、日本から遠く離れた地で6日間集中して釣り続けられたことは、体長崩す前にだいぶ戻ったと自信をもてるものでした。

 

 その夜の夕食の時に、チームハンガリーから思わぬ申し出がありました。

 チームハンガリーの私に良く話しかけてきてなにかと世話を焼いてくれた、ボウズ頭の巨漢釣り師(発音難しくて名前忘れましたゴメン)が、トミーに美味しいところを持っていかれてトサカに来ているらしく、チームハンガリーは明日の朝早出して出発ギリギリまで延長戦をやる。ついては君も参加しないか、との嬉しいお誘い。

 

 やっぱ、釣り人は他人がデカイの釣ったら、頭きて延長戦やっちゃうぐらいガッツがないと本物じゃないよねと、昼とは逆のことを思いつつ、かなり疲れ切っていたのと終わったつもりで頭と道具を整理し始めていたのでちょっと迷いましたが、延長戦参加決定。ここまで来てチャンスを逃がす手もないでしょう。

 

 7日目23日延長戦。トミーのボートに同船させてもらう。彼のメインロッドはペンの「ネバークラック」というたのもしそうな竿、リールはシマノ。ちなみにチームハンガリーのタックル、リールはシマノが多くその他、ミッチェル、シルスターといったところで、竿はドイツ製、イギリス製が多かったです。

 トミーはガイド達も勧める切り身餌のブッコミではなく、おそらく地元でも得意としているであろう生き餌の泳がせにこだわっていました。

 15から20センチ位のフナやコイを一尾背掛けにして、葦の根本がえぐれたようなポイントをタイトに狙っていました。

 同じ様な場所を私が狙うと根がかりが多発して釣りになりませんでしたが、針が魚の背中にある泳がせ釣りは根がかりしにくいようでした。

 最初の1尾を沖目のかけあがりを狙っていた私がゲット。1m弱ぐらい。同サイズくらいの2匹目をトミーがゲット、その後いくつかポイントをめぐったあと、トミーが気合いの入ったフッキングをかますと竿が大きく曲がる。かなりデカそう。障害物に巻かれないようにパワーファイトで寄せてきた獲物は昨日と同サイズの170センチ。お見事!完敗でした。

トミーファイト中

 彼だけが大きいサイズを釣ったのは単なるラッキーではなかったようです。ガイドが勧める切り身餌では攻めにくい、プレッシャーがあまりかかっていないと考えられる岸際のポイントを自分の得意なスタイルを貫いて釣ってこその結果だったようです。

 ヨーロッパのナマズ野郎の心意気をしっかり見せてもらいました。

 改めて、釣りにはそれほどラッキーは転がっていないということを思い知らされた気がします。釣るべき人間は釣るべくして釣っているということでしょう。

 時間も迫っていたので、記念写真を撮ってキャンプに戻りました。

 

 道具を片づけて、昼飯取って、ガイド達とも集合写真を撮っていよいよキャンプともお別れです。

集合写真 

 楽しい釣りの日々でした。来た道を延々戻って、受け入れ先の事務所で久しぶりに温水のシャワーを浴びて、食事して空港へ送ってもらい、機中泊でソウルへ、ソウルから成田へ成田から日常の待つ東京へ。

 

 カザフスタン、ナマズ釣りに行かなければほとんど何も知らない国でしたが、雄大な自然を持つ美しい国でした、魚以外にもイヌワシやオジロワシ、白鳥にペリカンにキジの一種にカッコウなど鳥類たくさん、その他とかげ、カエル、ジネズミやちょっと迷惑な大きいと14番フックぐらいもある蚊達やそれを食べにやって来るトンボなどもとてもたくさん見ることが出来ました。

 またきっといつか行けるチャンスがめぐってくると信じています。その時は是非、自分の背丈よりも大きな魚を釣れるような釣り師になっていたいものです。

 

以上

(2008.5.25)

 ナマズ属与太話  ←ヨーロッパオオナマズと日本のナマズ2種を比較してみました。

 形あるものはいつか壊れる  ←今回の釣行の後日談とか修理の話とか。

(2008.6)

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