太平洋を横断して、北米大陸も横断して東海岸、大西洋側にあるニューヨークのJFK空港には成田を19日午後3時過ぎに出発して、13時間ほどかかって時差の関係で午後4時前に到着。
遠い。
機中興奮を押さえきれないながらもアメリカモノということで山崎豊子「二つの祖国」など読みつつ、着いたら港に直行して深夜まで釣りの日程なので、後半は睡眠導入剤をかっくらって無理矢理寝た。
到着するとターミナルが変更されており、大きな空港なので若干手間取ったが、無事迎えに来てくれていた正治さんと再会。春に正治さんが仕事で東京に来て以来である。今回は宿から釣り船のチョイスからマル秘ポイントのガイドからとすっかりお世話になる予定である。
早速ブルックリンという場所のシープスヘッド港に車で移動。NYでもトヨタやホンダはけっこう人気のようでよく走っている。
港近くの駐車可能な路肩に車を止めてタックル持って港のパーティーボートと呼ばれる乗合船が何隻も泊まっている桟橋のエリアに移動。
パーティーボートは何十人と乗れる大型のモノもあり基本予約制ではなく当日乗り込めばよく、各桟橋前では乗組員が盛んに「うちの船に乗ればガンガン釣らせるゼ!」と呼び込みをしている。手ぶらで行ってもタックルも長靴もレンタルがあるので観光客にも呼び込み兄ちゃんはアタックしている。
かねてから予定していた正治さんが試釣でブルーフィッシュを爆釣したという「ブルックリン号」の係船場所に行くが、船がない。近くの別の船の呼び込み兄ちゃんに正治さんがどうしたのか問うと、「ドックに入っていていないよ」とのこと、事前に19日出港するか問い合わせて確認済みなのに、このいい加減さがU.S.A.なのか?
仕方なく、同様にブルーフィッシュを専門で狙う別の船を探し、いくつかある中から大きめの一隻をチョイスし乗り込む。既に「とも」と「みよし」はとられていたので「とも」付近のまあまあの位置をキープ。土曜と言うことで混雑が予想され、あまり乗ってこないと良いのにという希望に反してドンドンお客が乗ってきた。白人、黒人、ヒスパニックに我ら日本人、若いの年寄り子供連れ、オネーチャンも結構いる。片舷に20人以上は乗ったようで50人近くの超満員状態で暮れなずむ中いざ出航。
乗組員が手際よく餌のニシンを切りまくるのを見物しつつ、沖の釣り場に向かう。こんなに混みまくって引きが強いというブルーフィッシュがかかってオマツリしないのだろうかと心配になったが、その心配は後ほど的中することになる。
さてこのブルーフッシュという魚、釣友に「ブルーフィッシュっていったいナニ?ナニに近い魚?」と聞かれてえらく困った記憶がある。
見た目は、歯のきついハマチという感じで、青物系なのだが、では青物一家のサバ科の一員かというとそうでもなく、アミキリ科とされている。科名にもなっているが日本語では日本にいないにもかかわらずアミキリと呼ばれたりしている。おそらく歯が鋭いので漁網を切ってしまうということからきているのであろう。日本の妖怪に同名のものがいる。
ナニに似ているかと聞かれると困るのだが、大西洋版のブリのような沿岸を回遊する回遊魚で親戚筋は日本近海にはいないというところか。でも大西洋だけでなくオーストラリアにも近い種がいたりする。
味は、白身で西洋人は非常に好むらしいが、「もっと遠く」で開高健先生は妙に脂っぽくて美味しくないと書かれていた。正治さん曰くカツオとシイラの真ん中へん、美味しい魚だと思うとのこと。
歯がきついが、そこから想像できるように魚食性もきついようで、非常にルアーへの反応はよく、かかってからの引きもトルクフルで5キロクラスでもシイラ竿ではもてあますほどとのこと。ジモチーはアグリースティックタイガーの30ポンドクラスの竿に新しいスピンフィッシャーとか、ベイトのグラスの竿とかのタックルが多かった。
当方はとりあえずシイラ竿と、混雑が予想される週末のパーティーボートなので、あまり遊んでいるとオマツリしかねないのでとっとと勝負決めてぶち抜くためにディープジギングに使っていたフィッシャーマンイエローテール7fも用意。
きつい歯対策にワイヤーリーダーも沢山作ってきた。ルアーはジグメインにトップも各種。チャミングしてくれるので撒き餌に群れが付くと延々釣れ続けるとか。良いじゃないですか、入れ食い、望むところ。嫌いなわけないですよということでいざゆかん。
1時間半ほどで釣り場に到着するが、最初の釣り場はイマイチで餌釣りの人にチョットと釣れたのみで、すぐに移動、次の場所で粘ることになった。
基本的に、沖で錨泊しチャミングして魚を止めて皆に釣らせるという方針のようだ。どうやってチャミングしているのか不明だったが、釣れてくる魚は口からニシンの切り身をはき出したりしていた。
最初はイマイチな反応だったが、そのうち周りでもバンバン掛かり初めた。オマツリしたりもしているが、絡まったまま強引に寄せてギャフで取り込んでもらっている。
しかし、ジグしゃくったりポッパー投げたりしている我々にはいっこうに反応がない。仕方なく「非常手段」ということでニシン切り身を付けたワイヤー仕掛けで釣り始めるが、周りが釣れているのに一向に我々だけ釣れない。
「何故だ?」という疑問と焦りの中釣っているが、特に我々の右隣の背の高いニーサンが群を抜いて爆釣している。かけてもオマツリで取り逃したりもあるがコンスタントにかけまくり、普通船のスタッフがギャフもって高い舷側に引き上げてくれるのだが、アグリースティックタイガーのゴッツイスピニングロッドでガンガン寄せてカツオ一本釣りのように4,5キロのブルーをぶち抜いている。
アグリースティックはこういう荒っぽい使い方のためにティップセクションが丈夫なグラスソリッドなんだなと納得。日本製の竿ならまず折れてる。
親切なおニーサンで、我々にも釣り方を教えてくれた。適当に沖目に投げたあと、ラインを繰り出しながらじっと待つのが大切だとのこと。
前回正治さんが爆釣したときは、動きのあるルアーに反応よく、船べりまでジグを追いかけてくるのが見えたとのことだったが、今回の魚は落ちていく撒き餌に反応しているのでラインを繰り出して仕掛けを自然な感じで沈めてやるのが大事なようだ。
同じ魚なのに全く日によって反応の仕方が違うようである。そういえば開高先生も、爆釣したあと別の日に惨敗をくらって、ブルーの気まぐれ加減を嘆いていたように思う。
早速我々も教えられたとおりに沈めてみると、難なくヒット。200グラムのジグでディープジギングするような強めの竿だけど結構ブチ曲げて走ってくれる。が、遊ばせるわけにはいかないので結構強引に寄せてくる。スタッフがギャフをガッツリかけてくれるのでぶち抜かなくて済むが、魚は血まみれで暴れ回るので甲板も釣り人も魚も血まみれに。
1発目は80弱ぐらいで、10ポンドをチョット切るサイズ。初めての魚で感動。話に聞くとおりすごい歯。引きもカンパチとかの青物に似ているけどサイズの割りには更に強い気がした。
2匹目も程なくしてゲット。チョットこちらの方が大きくて10ポンド80センチ強ぐらい。
正治さんも2匹ゲットして、2人でルアーに再度挑む。落とし込む途中で食ってくるということで正治さんはストームの魚型ワーム、当方はジグやらワームやらバイブレーションやらで落とし込んだり引いたり。
正治さんがワームで2発かけて1尾ゲット。新しく買ったツナミロッドでぶち抜いていた。
当方はジギングで1尾かけたがシイラロッドだったので走られてオマツリして上がらず、ひょっとしたら他の人に掛かっていた魚にスレでフッキングしたのかも。
とりあえず、その後もルアーには反応イマイチで深夜1時過ぎタイムアップとなりました。
2匹ですが、けっこうな引きの魚で舷側が高くファイトしにくいこともあり腰に来ました。とりあえず初物の引きを楽しんで満足。
しかし帰りの船中、隣に座った爪に絵が描いてあるようなオネーチャンに何匹釣ったか聞かれて「2匹」と答えたら、「私も2匹釣ったわ。」というお答え。
ジンバルまでフル装備で気合い入れていたのにレンタタックルの素人のオネーチャンとおんなじかよ?とチョット自尊心を傷つけられたりもしましたが、まあ、女性に痛い目に遭わされるのは慣れていることである。いつものことである。
ちなみに隣の上手いおニーサンは最後に数えたら17匹ゲット、数えながら釣っていたわけではないので故意じゃないけどレギュレーションの15匹のリミット越えてファールしてた。まあ二匹しか釣っていない当方と相殺して許してあげて欲しい。
さすがに眠い、正治さん宅には4時頃着いた。マンハッタンの街中は夜遊び帰りの若者や仕事帰りの水商売のオネーサンが散見された。お宅に着いてびっくり。マンハッタンのけっこうなビル街の中のおしゃれな高層アパート?でドアマンがドア開けてくれたりする。窓からはマンハッタンの夜景が見える。
とりあえず何とか1日目がおわり、苦戦しながらも目的の魚を釣った心地よい興奮の中眠りについた。
2日目は昼近くまでゆっくり眠り、起きて昨日キープして持ち帰ったブルーフィッシュ2匹を捌く。
フィレーにした身の感じは、血合いの入り方といい割れやすそうな白身の柔らかめの身質といい確かにシイラに似ている。
正治さんちでは、皮も内臓も余さず食べるということで各パーツも別途取り置き、頭も当方が「かぶと割り」にした。
男二人でキッチンに立つ様子はチョットNYゲイカップルっぽいが、両名とも女性のパートナーがいます。
正治さんのご家族は、奥さんと男の子2人、内1人はこの夏生まれたばかりで正治さんのお母さんが子育て応援に来ているところ。
朝昼ご飯でさっそく捌いたブルーフィッシュの刺身とナメロウ、朴葉焼きをいただく。
美味いやん!味はシイラに似ていて、少しサワラっぽいところもある。
シイラもそうだけどこの手の身質の魚は足が速いから開高先生が食べたのは鮮度がイマイチだったんじゃないだろうか?ちなみにシイラもイマイチ人気がないが、鮮度が良いと美味しい魚である。
昨夜釣ったのを活き締めにして持ってきているので、まだプリプリした身は適度に脂の乗っている部位もあったりして上等のお刺身である。当然ナメロウなども美味しい。
当方、1週間ぐらいは米の飯を食えなくても平気なタイプだが、NYでこれだけ美味しい魚料理が食べられたのは願ってもないことであった。
ニューヨークのマンハッタン島の北東にはロングアイランドと呼ばれるその名の通り細長い島があって、その島の大西洋側は砂州が発達していて、浜名湖のように砂州の切れ目から陥入するような形で湾が沢山存在する。
2日目はそのロングアイランドのフリーポートのチャーターボート、「シーログ号」で午後3時から夜9時くらいまでストライパーを狙う予定。
その前にチョット時間があったのでNY観光としゃれ込んだ。
しかしそこはそれ、一般的な観光にはさっぱり興味のない当方のために、正治さんがスペシャルコースとして中華街の魚屋見学コースを設定してくれた。
NYの中華街は大きくて、この街で中国語しか話さず一生を終える中国系の人も多いとか。しかしまあ、食の世界における中国人の探求心には目を見張るモノがある。
魚屋だけでも何軒もあって、ストライパーやブルーフィッシュ、タイ系のスナッパーやポーギー、根魚系のブラックフィッシュやシーバス(日本のシーバスには似ていない別物)など、当地で元々食べられていた魚を取り込むのはもちろん、おそらく外来魚でアメリカではミシシッピーなどで駆除の対象にもなっているレンギョも並んでいるし、タウナギやドジョウ、クラッピーやブルーギル、パンプキンシード、養殖物の活けのバラムンディーや南部名物のご存知アメナマことチャンネルキャットフィッシュの本場物やスッポンにウシガエル、ソフトシェルのブルークラブ(ガザミ系のカニ)にワニ肉までありとあらゆる水の中のモノがならんでいて見ているだけでも充分楽めました。
時間もおしてきたので、マンハッタンの街の中を抜けてロングアイランドへ向かう。
途中、マンハッタンの街中には道に煙突のようなモノが生えていて、そこから煙が出ているのに気付く、そういえば大槻ケンヂがエッセイで、NYに行ったときに、マンホールからモクモク煙が出ているのを見て、映画「タクシードライバー」にそういう場面があったのを思い出して感動したと書いていた。そう思って見ていると、確かにマンホールからも湯気が出ているところがあるし、黄色いタクシーも沢山走っている。
しかしながら、何故モクモクしてるのかは?正治さんは複数のビルで共用しているセントラルヒーティングシステムの熱かもしれないと言っていたが詳細は不明。
港の船着き場で「シーログ号」のボブ船長と合流、早速ストライパー狙いで出撃する。作戦としては、明るい内は沖の根回りでブルーとストライパーを狙いつつ、根魚釣りなんかもしながら、鳥山があればジグを投げる。暗くなったら湾内に戻ってクラム(ハマグリ系の二枚貝)を撒き餌にしてストライパーを狙うということであった。ボブ船長は「ハマグリストライパー」が自信のある得意技の様子だった。
ストライパーという魚、ストライプドバスとも呼ばれ、日本ではシマスズキと訳されたりもしている。スズキ亜目のモロネ科という科に整理し日本のスズキとは姿形は似ているが、科レベルで違っているのでスズキ科のスズキとはタイ科のマダイと同じくらい離れているとする説と、スズキ科の一員としてそれなりに近いとする説とがありハッキリしないようだ。
ただし見た目が似ているということは、生態が似ていることを示しており、回遊魚と根魚の中間的な性格を持った魚食魚で、小魚からエビカニ、多毛類、貝類までなんでも利用するといった幅広い食性と、川にも遡れば沖合で回遊魚と一緒に小魚を追い回しもするといった行動の幅広さはよく似ている。さらに陸封タイプもいる。
日本のスズキのルアー・フライによる釣りは、アメリカ東海岸のストライパー釣りをお手本としたところが大きく、シーバス黎明期のルアー等はそのままストライパー用のものが用いらて伝説的なヒットルアーとなっているモノも多い。ロングA、レッドフィン、スポット等々。
サイズは普通に釣られているモノは、日本のスズキと似たようなサイズで、5,60センチから大きくて1mというところだが、日本のスズキより最大サイズははるかに大きく、30キロ、1.5m以上という妄想膨らむサイズも釣られているようだ。
日本では大型ルアーというとロウニンアジ用のトップウォータープラグが最右翼だが、そのロウニンアジ用として、国産のルアーがあまりなかったころ値段も安く重宝されたのが、巨大なストライパーを狙うためのトップウォータープラグで、コットンコーデルやレーベルの大型のペンシルポッパーやギブスのポラリスなどのポッパーなどがある。今でももちろん使えるルアーだ。そういった歴史あるストライパー用デカルアーの中で、日本のヨーズリサーフィスブルがジモチーに高い評価を受けているのはヨーズリファンの日本人としては鼻が高い。今回の旅でも4本ほど用意した。
ストライパーという魚、近年は保護活動の成果もあって資源量は増加傾向で釣果も上向きということは釣り人にとってはありがたいことです。
しかし、この魚、実は行き過ぎた自然保護活動の誤りの例として良く出てくる魚種で、釣り人が、実際には環境面での影響が主原因でかつ自分たちの釣る量の方が大きいにもかかわらず、資源量が減ったのは漁業者のせいだとして圧力団体化し、漁業者を廃業に追い込む内容を含む規制を成立させたという経緯がよく紹介されています。
実際の原因は、私の知る範囲では2説あって、産卵する河口域の水量がダムによって減ったこととされているのと、酸性雨の影響と関連して環境中の汚染物質の濃度が上がり稚魚の発生が妨げられたという説の2つです。どちらも現在では対策がとられており状況は好転しつつあるように聞きます。
開高先生はサントリーの宣伝では結構良いサイズの釣っていましたが、「もっと遠く」ではサーフからねらってスカ喰らってます。備前貢さんは個人宅の裏からビーチに出るようなローカルな釣り場に通い込んで、イカナゴパターンでジモチーに混じってフライで釣りまくった濃密な釣りの様子をフライの雑誌に「ストライパームーン」と題して報告しています。
当方としては、両先人にならって岸からトライしたい気持ちもあったのですが、限られた日程でやるにはちょっと情報が少なすぎるので、遠征の釣りの常でガイド付きのボートをチャーターすることとなった次第です。
ということで、タックルは、まあ通常のフッコサイズを想定してベイトの強めのバスタックルをワンセット、やや大きめのスズキサイズ及びジギングを想定してシイラタックル。そしてあわよくば巨大なマンサイズをやってしまえとブルー釣りにも繰り出した30ポンドクラスのフィシャーマンイエローテール7fの3セット。
ルアーはシーバス用のミノーやバイブレーションやら、ジグ各種、シイラ用のポッパーからGT用のサーフィスブルとロングペン、ワームも押さえにいくつかというところ。どんな状況にも応じてみせる心づもりで鼻息も荒い。
湾内は穏やかで、干潟と湿地帯が広がる自然豊かな景観。
砂州の切れ目の橋をくぐって沖に出ると、マンハッタン方面の沖の方に向かう。遠くビル群も見える。
30分ほど走って、水深が20mくらいから6mぐらいにグッとせり上がっている根の上にアンカーをうつ。ほかの遊漁船も付近に何隻かいて鳥も飛んでいる。
ワイヤーの付いたフックにサバの切り身を付けてオモリは無しでフカセで流していく。
程なくして、当方にあたりがありフッキング。今回は二人だけなのでオマツリの心配も少なく充分引きを楽しんでゲット。サイズは80弱か。さい先良い。
その後、船長が当方のベイトのバスタックルに胴付き仕掛けに二枚貝餌を付けて投入、あたりがあった竿を渡してもらい上げると、なんか黒いブダイのような魚。ブラックフィッシュという魚で大変美味しいそうだが、禁漁期間にあたるようでリリース。
底釣りも面白そうなので、ストライパー、ブルー狙いの竿を置き竿にしてバスタックルで釣ってみる。魚信は始終あるのだが、ハリがでかくてなかなかフッキングしない。
しかしフッキングして釣り上げてみるとキーパーギリギリのポーギーというタイ系の魚、おそらくフックを小さくすると小さなノンキーパーの魚が掛かってしまうのだろう。
置き竿の方にもたまに魚信があり、60くらいのやや小さいブルーを追加。
底釣りではポーギーを2尾追加、1尾はノンキーパーの小型。
正治さんも底釣りでシーバスと呼ばれる細めのハタ系の魚や、ブラックフィッシュをゲットしている。
ブルーのあたりもちょくちょくあるので、バスタックルをシイラタックルに換えてジギングしてみると、やっとルアーで一匹かけた。サイズは50くらいだが、最近餌釣りも多いが一応ルアーマンの当方としては嬉しい一尾。
夕方6時頃そろそろ暗くなってきたなという時間帯に、置き竿に良いあたりが来た。フッキングも決まって引きを楽しんであげると、最初のと同サイズくらいの良型ブルー。
その後は反応無く、暗くなって湾内に戻る。
細い砂州の切れ目をくぐり、砂底の湾の水深5m前後の岸からやや深くなり始めるあたりを、魚探と流れを見ながらボブ船長慎重にアンカーうつ場所を決める。
アンカーをうって、やおら1キロぐらいの冷凍クラムブロックを籠に入れて舷側から水中に吊す。籠はカニ籠にしては小さいしナニに使うのだろうかと疑問に思っていたが、撒き餌用だった。
湾内に流れが差してくる時間帯でおそらく、溶けたクラムが潮に乗って流れていくのだろう。
その流れていく撒き餌の中に紛れ込ませるように、フカセ仕掛けでクラム餌を付けた針を流し込んでいく。
二枚貝の撒き餌でスズキ系の魚を釣るというのは、なかなか独特で面白い釣り方だ。
下流のストライパーが撒き餌に寄せられてくることを期待しつつ、仕掛けを流しては回収して、絡んだ海藻を外してという作業を繰り返すがいかんせん反応はない。
たまに重くなったと思うと、コブシガニを大型化させたような奇妙なカニがしっかり餌を挟んで上がってくる。
しばらく粘ったが、場所移動。湾内に散在する島と島を結ぶ橋桁を2カ所ほど狙う。潮がガンガンきいていて、橋の上には灯もありシーバスならここで喰ってくるでしょう。というような場所だったので。当方はバイブレーション、ペンシル、ミノーなどを投げて、正治さんがクラムをオモリを付け足して沈ませつつ流す。
しかし反応無い。いかにもな場所だったのだが、どうしたことだろう。ボブ船長曰く「ストライパーにはまだちょっと早いのかも?」ということだったが、既にシーズンとされる時期ではあり、釣れないときはナニが悪いのかはよく分からないものである。
最後、ルアーを投げている当方に釣らせるためだと思うが、水路の流れ込みでベイトが集まるというポイントに寄ったが、ここでも反応無く、9時過ぎに当方の集中力も切れてきたので残念ながらあきらめて船着き場に戻る。
ボブ船長はストライパーを釣らせることができず申し訳なさそうであったが、まあ釣りというモノは魚のご機嫌が麗しくないときはどうにもならんことも当然あるわけで、1回だけ乗って釣れなかったからといって誰のせいでもないことは明らかで、ブルーや根魚釣りでずいぶん楽しませてもらったので、船長にお礼を言って帰路についた。
さすがにチャーターボートは餌も付けてくれるし、仕掛けもセットしてくれるし、リクエストにも答えてくれて融通も利くので、ちょっと贅沢だけど極めて快適に釣りができた。
この日で船での釣りは終わりの予定だったが、ストライパーが釣れていないのでやはり釣り人としてはあきらめきれず、翌日は終日正治さんの見つけた淡水の秘密ポイントを攻める予定だったけど、その予定を午前中だけに短縮して、夕方からもう一度ストライパー狙いのパーティーボートに乗ろうということにした。12時過ぎに就寝。
3日目、7時頃に起きてカロリーメイトを朝飯に持って車で出かける。
午前中は、正治さんが仕事前に一釣りしたりして楽しんでいる、とあるNY市内の公園の池でバスやクラッピーなどを狙う。
公園内なので、植物が植えられている場所などは柵がしてあって進入禁止だが、岩場など所々に釣りして良いスペースがある。ちなみにバーブレスフック使用、リリースオンリーが掟である。
高層ビル街も間近に見える意外な場所だが、正治さんは最大52のラージマウスバスや日本では馴染みのないブラッククラッピーやらも釣っている。なかなかユニークな釣り場である。仕事前に50UPというのは聞き捨てならぬ「オレにも釣らせろ!」と思っていたので楽しみにしていた釣り場である。
具体的な場所はわかる人にはすぐわかると思いますが、いつものとおりあえて場所は明かしません。まあジョン・レノンも歌っていたように「IMAGINE(想像)」してください。
公園近くに車を止めて、広い園内をテクテクと池に向かう。なかなか美しい公園で、市民の憩いの場となっていて、ビキニのオネーチャンが芝生で甲羅干しなんかしているのと共に、鳥やらリスやらも沢山いた。
リスはどこまで接近して写真取れるか試してみたが、ビキニのオネーチャンに接近する蛮勇はなかったので写真がないことをご容赦願いたい。雀っぽい鳥はカロリーメイト食べていたら屑を狙って向こうから接近してきてくれた。ほかにもカモの類や大きなアオサギ系の鳥、ハチドリなんかも居た。カメも日本でもおなじみのミシシッピアカミミガメが沢山いた。正治さんの話ではカミツキガメの類もいるとか。
釣りできるポイントが限られているのと、公園内の散策路が結構複雑で迷いかねないので正治さんの先導で実績ポイントを回っていく。
最初の2ヶ所ぐらいはクラッピーの居るエリアと言うことで、6番フライタックルでマドラーミノーとウーリーバッガーを投げる。2ヶ所目の岩場の崖のポイントでは水面もじるような魚の行動も散見され、5センチぐらいの魚が追ってきたりもしたのでしばらく粘ったが不発。
粘っている間に正治さんは駐車したエリアが1時間のみ駐車OKの場所だったので車を移動しに行く。ちなみにNYの街中の駐車事情は、基本的に道路脇には駐車して良いけど、店舗の出入り口やバス停付近、消火栓付近や狭い道路などは駐車禁止で、禁止場所に止めてあるとすぐ違反切符を切られるとのこと。
時間帯を限って駐車可能な場所などもあって柔軟に駐車スペースを確保する努力が成されているようだ。ヨーロッパでも似たようなシステムらしいと聞いたことがある。
それでも駐車スペースは不足気味で探すのに苦労していたが、日本のような駐車が許可されたスペースが少ないために、結局、邪魔な路駐が多く取り締まりし切れていないという不条理・無秩序な状態よりはだいぶんマシなように見受けられる。
正治さんがいないときにバードウォッチャーっぽいオバハン二人組にからまれる。どうも「こんなところで釣りしてはいけない。」というようなことを言っているようだ。
NY来てまでそういう話かいな?とうんざりだが、拙い英語で「公園のウェブサイトで確認済で問題ない。」と説明したが、なんやらまだまくしたてているようだが、当方のヒアリング能力を超えていたので「私は英語があまり分からない。問題はない。」とだけ言って無視しておいた。どっか管理施設にでもたれ込みに行くかもしれないが、それはそれでけっこう。公園内の看板にも釣りの規則は明記されているので釣りはしても良いということがはっきり分かってもらえるだろう。
自由の国USAでも、権利は戦ってもぎ取らねばならないようだ。ナマジの戦いはつづく。
正治さんも戻ってきて、バスの実績のあったポイントを巡る。とりあえずクランクで広めに探り、そのあとヘビーテキサスリグのワームで底の地形を把握しつつ回っていく。
水辺に降りていけるポイントはイヌが行水していたり、岩場で観光客がタバコふかしてひなたぼっこしていたり(正治さんは「ウミイグアナのよう」といっていた)、カップルがいちゃついたりしていたが、隙を見てもぐり込んでキャストを続ける。
基本的に浅めで障害物の少ない地形のようだ。ということで岸沿い植生などの障害物をワームで丁寧に打つのと、広くクランクとバイブレーションで探っていくのをローテーションさせていったが、一度岸際でルアー後ろで反転したように見えただけで反応無い。
正治さんもポイントが限られているので最初は遠慮してみていただけだったが、2人でパターン探した方がよいだろうということで途中から参戦してもらった。が、やっぱり反応無い。
1つめの池は最後にクラッピーポイントをフライで再度攻めてあきらめ、別の池に移動。
2つめの池は、やや小ぶりだが、一つ目の池がアオコっぽい植物プランクトンで濁り気味だったのに比べ透明度が高くさらに水生植物がわりと豊富である。
背の低い葦のような植物のエリアで子バスらしい魚の追いがあり粘る。黒のウーリーバッガーを植物の茂みにぶち込んで引っ張ってきたら茂みから出た辺りでヒット。可愛らしいのがバシャバシャと跳ねている。よっしゃUSAバス初ゲット。
手のひらに乗るぐらいだが、これで「僕、アメリカにバス釣りに行ったことあるんですよ、サイズはたいしたことなかったですけど釣れましたよ。」とエラそうなはったりをかますことが可能になった。もちろん公園の造られた池なのでどこかからもってきて放されたモノが起源だろうが、本場USA産ラージマウスバスには違いない。フッフッフやったぜオレ。
あまり釣りができるポイントがないのだが、次にカモに観光客が餌やるような場所で釣る。ちなみに公園の鳥に餌をやるのはNYでもマナー違反だ。
なんかいるかなと、足下から攻めると、いきなり何匹かで追った。これは釣れるパターンや!と興奮しながら、クラッピーかパーチかとドキドキしつつウーリーバッカー沈めたりチョンチョンしたりして釣ったが、かけてみるとブルーギルだった。
「僕、アメリカにギル釣りに行ったことあるんですよ、まあまあ良いサイズのが釣れましたよ。」とエラそうに言っても、とくに感心してもらえそうにないのがギルの哀しいところだが、個人的には好きな魚であり、本場USAで釣ったというのは私的にはかなりポイント高い。サイズも手のひらオーバーの20センチ強で引きも楽しめた。今回の旅の写真で一番機嫌良さそうに見えるのは気のせいか?
その後も同じポイントでポポポンと5匹ぐらい釣れた。ちょっと投げてみて子バスも1尾追加。
なかなかに楽しめたし、昼ご飯は正治さん一家と南部料理のレストランで食べる予定だったので午後1時前ぐらいに適当に切り上げた。
正治さん宅に戻る前に、食料品買い物がてらイタリア系のスーパーマーケットに寄り道。
NYで良い魚を売っているのは中国系とイタリア系の店が双璧だそうで、正治さんの家では魚はどちらかで買うそうだ。イタリア系の店では中国系とちょっと品揃えの傾向も異なっていて、ヨーロッパからの輸入の養殖タイセイヨウザケやホッキョクイワナなどのサーモン系や、日本産のハマチやご当地産らしいキハダやマコシャークなど切り身系、ヘイクなどタラ系が人気のようだった。
マコシャークはアオザメのことだが、売っているところをはじめてみたが、皮付きの切り身で身質は透明感ある白身でいかにも美味しそうだった。アメリカでは人気というのもうなずける。そのうち食べてみたいモノだ。残念ながらスーパーマーケットは中国系のような個人商店と違って撮影禁止。
買い物も済んで、正治さんちに帰る途中でブロードウェイのミュージカルの劇場が集まっている辺りを通った。実は正治さんの住まいは、ミュージカルなど演劇の本場ブロードウェイのごく近くで、東京で例えれば「歌舞伎座の裏辺り」ぐらいの立地だそうだ。
でも、ミュージカル見に行ったのは1回だけとのこと。演劇好きに言ったら怒られそうな話だが、まあ興味なければそんなもんでしょう。海のそばに住んでいても釣りしない人がいるのと同じようなもんでしょう。
うちの近所にも「中野ブロードウェイ」という中古漫画屋を中心としたサブカルチャー系の商業施設と安い生活用品の店が混沌と集まっていて人気のスポットがあるが、本場ブロードウェイはさすがにだいぶ様子がちがう。
次々と聞いたことあるような有名なミュージカルの看板が車窓に見えてくる。
マンマミーア、ウィキッド、シカゴetc、etc
そんな中でいきなりドカンと大きく虫の絵が書いてある看板が出てきた、これもSFモノかなんかのミュージカルなのかな?。題は「NYベットバグ」というらしい。
が、よく見るとその虫はどうもナンキンムシにしか見えないし、電話番号がデカデカと書いてあって「あなたのシーツを守れ!」てなコピーが見える。
「???ひょっとして南京虫の駆除業者の宣伝看板か?」と思って正治さんに聞いてみると、そのとおりとのことで、NYでの生活についての情報のサイトでもナンキンムシ対策の書き込みはちょくちょくあるぐらいNYでは身近な害虫のようだ。ちなみに被害にあった人間からは「全ての家財道具を処分して引っ越ししない限りヤツらから逃れることはできない。」という激しい書き込みがあるくらいたちの悪いムシのようだ。
大阪名物カニ道楽の「カニ看板」に匹敵するインパクトのある看板だ。残念ながら平面媒体なのだが、これをカニ道楽風に立体看板にして脚がワサワサ蠢くようにすればNY名物になることは間違いない。どうですかNYベットバグ社の社長さん。是非検討してみてはいかがですか。
帰宅して家族の皆さんと合流して、近所の南部料理屋さんへ。
店の中にはカントリーが流れ、ワニの絵が壁に書いてあったりしていかにもアメリカ南部を感じさせる雰囲気。南部いったこと無いけどね。
南部料理といえば、ザリガニとアメリカナマズということで、当方はザリガニとアメナマ狙い。残念ながらシーズンではないのでバケツで供されるという噂のボイルしたザリガニはメニューになかったが、サリガニポップコーンと名付けられている、ザリガニのシッポの身に衣を付けて上げたものと、アメナマソテーのザリガニバターソースとでもいうものを頼んだ。
みなさんは、その他にジャンバラヤとか、ナマズとザリガニも入った本日のスープ、チキンを南部風に料理したものなどを頼んでいた。
トウモロコシ粉で作ったマフィンのようなモノを食べつつ待っていると順次頼んだ料理が運ばれてくる。
ザリガニポップコーンは、マヨネーズ風味のソースにつけて食べると、まあ面白くないぐらいに普通にエビのようで美味しい。ザリガニは味的には「エビ」とみて間違いないようだ。美味美味。田んぼで取ってきて食べたくなるが、いかんせん一匹一匹は以外に小さくて食いでがないことと、泥抜きする間飼っておくスペースの問題があるので実行するのは意外に手間を食いそうだ。日本で食べるなら霞が浦周辺の川魚料理屋で出してくれるところがあるので、そこで食べるのが妥当かな。
アメナマソテーも結構なお味でした。熱々のナマズの白い身はちょっと淡水魚独特の香りもして、ウナギを思い出させる風味。アメリカ南部風のバターと野菜たっぷりの濃厚なソースにからめても白身なので良くあってくれる。
ジャンバラヤなどもちょっとずつ分け合って食べた。カイエンペッパーが効いていてちょっと辛いけどどれもなかなか素朴な味わいがよかった。長粒米のぱさぱさしたご飯も汁気のある料理をかけたり混ぜたりするのには向いているような気がする。ジャンバラヤも混ぜご飯のような料理である。
お腹一杯になって帰る途中、辛めの料理だったこともあり、咽が渇いたので道ばたの屋台でスポーツ飲料を買った。
かねてから、公園や街頭の屋台、スーパーの棚に並べられている飲み物で「G」と書かれた、蛍光黄色や緑、青といったおよそ口に入るモノには似つかわしくない毒々しい色の飲料があるのをみて気になっていたので、一番えげつない青を買ってみた。味の方はスポーツ飲料にトイレの芳香剤を隠し味として入れた感じというかなんというか、飲めなくはないが、体に悪そうな気がして落ち着かない飲料であった。
ちなみにGは日本でも売っていたゲータレードのGだった。
昼寝後、最後の戦いのために初日にも行ったブルックリンのシープスヘッド港へ、途中町中道が混んだが、川沿い走っているとちょっと遠くに自由の女神がみえた。
頭の中でトランペットが鳴り響く。もちろん「アメリカ横断ウルトラクイズのテーマ」のパーラーパラーララーーという例のメロディーだ。
ストライパー狙いの船も何隻もあるが、激しく呼び込んでいる割にはまだ誰も乗っていない船はあやしいのでパスして、正治さんがこれとにらんだマリリン・ジーン号に決めた。
わりと小さい船だったが、平日ということもあり乗客は、どうゆう経緯でNYにいるのか聞きにくかったがシリア人のお父ちゃんと息子二人、地元のニーサン、当方たち2名の6人とプラス釣りするのは乗組員が1名の7名と少なかったので今回はゆったりと釣ることができた。
暗くなり、港を出て30分ほど走って釣り開始。多分場所はハドソン川河口の沖あたりで、ハドソン川に架かる橋がライトアップされているのが見える。
釣り方は、大きなゴカイ、20から30センチの小さめのウナギ、バークレイガルプのイールのいずれかを胴付き仕掛けにつけて、潮に流れていく船からラインを繰り出してやや離しつつ、底をオモリで叩くようにして餌を踊らせるという釣り。
船で買った仕掛けにはごついマスタッドのひねり入りのフックが付いていて、いかにも質実剛健な大物用仕掛けという感じでグッときた。
開始早々、ゴカイで乗組員がホウボウゲットし、その後ほどなくしてジモチーがガルプのイールで60弱のノンキーパーだが本命のストライパーをゲットし、俄然やる気が出たが、その後反応無く、しばらく場所移動して流してを繰り返した。
正治さんは一度、ジグヘッドに付けたガルプのイールを食いきられた。ブルーフィッシュじゃないかとのこと。
ウナギが良さそうな気がしていたので、ウナギで釣っていたら隣で釣っていたシリアのお父さんがヒット。結構でかそうでお父さんは、ポンピングせずベイトリールを慌てず一定のゆっくりしたテンポで巻いている。魚が見えてきた良いサイズである。船員さんのタモ入れも決まって無事ゲット。
74センチのキーパーサイズであった。写真撮らせてもらって観察。
やはりコイツはスズキに近い魚ではないかという気がした。形が似ているだけならともかく、鱗や皮膚の質感や暴れ方、全体からうける雰囲気が非常にスズキに似ている。スズキ科説に私は1票入れたい。
魚は少ないモノのチャンスはあるということで、こういう状況の時は、いかにダレずに丁寧に釣りを続けチャンスを待ち続けられるかが勝負だと思ったので、ガルプのイールを付けて丁寧に底をトントンして魚が食ってくれることを待った。
しかし、その後船員さんが再度ホウボウゲットしたほかに反応無く11時半頃タイムアップ。当方のNYの釣りの予定は終了であった。
悔しくはあるが、やることはやったし仕方あるまい。
正治さん宅に帰って、ちょっとお腹が空いたので夜食を食べる。夜は船の上で鯛飯ならぬ、当方が釣ったポーギーで作った、ポーギー飯のおにぎりだったが、おにぎり作った余りのポーギー飯が残っていたので、ブルーフィッシュの胃、肝、皮等のボイルをポン酢和えにしたものをオカズに食べた。大きな魚の内臓は美味しいと正治さんお薦めであったが、たしかにホルモンのようでブルーの胃はコリコリとして美味しかった。皮や肝はよく食べるが、胃など他の内臓は結構捨てていたので今度から我が家でも食べることにしよう。
その後勢いづいて、当地でシーバスと呼ぶ魚の刺身も食べた。これが、白身でプリプリとして甘みもあってなかなかに旨い魚だった。正治さんはアイナメに似ているといっていたが、たしかにそんな感じで更に甘みがある身だった。
荷物を整理して片づけて就寝。
翌朝は、昼過ぎの便だったので、ゆっくり起きて、釣った魚のアラの煮付けなどで朝食を取り、正治さんが仕事で午後から出勤となったので、奥さん運転の車でJFK空港に送っていってもらう。
帰りの飛行機は寝て帰ればいいと楽観視していたが、疲れてもいたので乗って早々から6時間寝たが、まだ半分も来ていない。アラスカの上空あたりである。残念ながら雲が厚くアラスカは見えなかった。残りの8時間近くを読書と、機内食とうたた寝でなんとか消化し、銚子あたりが眼下に見えたときにはやっと帰ってきたんだとホッとした。
電車とバスをのりついで我が家に到着。NY釣行予定終了である。
とあるサイトで「辺境」とは、必ずしも地理的な条件で決まるものではなく、その人の心の持ちようで決まるというような議論があった。当方もそう思う。当方にとって大都会NYは、昨年行ったカザフスタン以上に自分から遠い辺境の地である。およそ自分の生活や興味の対象から遠く離れていて、魅力的な魚がいなければ、案内してくれる人がいなければきっと訪れなかった場所である。
いたずらに地理的な一般的に「辺境」とされる場所のみを求めることだけが、まだ見ぬ世界への扉を開ける方法ではないと思う。NYに限らず、地元の東京湾でも新規開拓を志して釣りに行くたびに新たな発見と出会えたりもする。もちろん今回のNY釣行も新鮮な驚きにと喜び満ちていた。
「辺境」が心のありようで決まるように「楽園」もまた心のあり方や、そこに住む(時に、というか多くのケースで影響を及ぼす外部の)人々の取り組みで決まるように思う。南海の楽園と呼ばれるような島であったとしても、どこかの先進国のおかげで沈んでしまうような状況ならもはやそこは楽園たり得ない。
釣り人にとって「楽園」とは、魚が楽しく釣れるところだということは疑う余地はないが、そのためにはおそらく大きな魚が沢山いたほうがよいだろう。
そういった「楽園」を求めて、だれも行ったこともないような場所をもとめて出かけていくのも「楽園」にたどり着く方法の一つだとは思う。しかし今回NYに釣りに出かけて強く思ったのは、実は前々から考えていたことだが、「今いるところを楽園にしてしまえばいい。」ということだ。そう思っていたからこそ、各種レギュレーションなど資源保護により魚たちを厳正に守っているNYの釣りについて、情報を調べていく段階で強くひかれるものがあったのだと思う。
NYのストライパーに関するレギュレーションは、72センチ以上1日2匹までというかなり厳しいものである。これは釣れた魚のほとんどをリリースしろといっているに等しい。
しかしながら、そのレギュレーションをはじめとした資源保護の取り組みのおかげでストライパーは増えて、残念ながら今回当方はスカ食ってしまったが、釣り人はその恩恵を受けることができる。
20世紀の釣り名人は「楽園」を探し出す能力を求められていたけれど、21世紀の釣り名人には「楽園を創り出す能力」が求められているのではないかという思いが強くするのである。
まあ、いくらたくさん魚がいる楽園でも、短期間の旅行者がドンピシャの時期、時間、ポイントにたどり着くのは容易ではないということだったのだと思う。東京湾のシーバスでもあれだけ魚はたくさんいるのに、釣るには地道なデータの蓄積や優秀な船長さんの助けが必要である。そのことは理解いただけると思うが、そうであっても、思いどおりに釣れなかったら、そこが楽園ではないということにもならないように思う。今回NYでは一緒に釣りを楽しむ気心しれた釣友が心を砕いて案内してくれ、海でも淡水でも、ブルーフィッシュやらブルーギルやらなんやかんやと魚が釣れて、ストライパーについてはちょっと悔しいながらも、NYならではの釣りや旅を楽しむことができたと思う。
今回、NYの自然とキャプテン達、それからいろいろと骨折りいただいた正治さんとご家族には特に深く感謝します。しばし楽園に滞在することができました。
ありがとうございました。またどこかの水辺でご一緒しましょう。
普段は釣行記は簡潔に、楽しかったことを楽しかったとシンプルに書くことを心がけているけど、今回はやや「釣り」以外の周辺の事項やメッセージが多めの釣行記となっている気がします。たまにはこういうのもありでしょう。