夏休みin東北沿岸部被災地2012(2012.8.11〜8.18)  

 

 この夏休みのテーマは「不謹慎」である。

 

 だいたい盆休みに殺生するあたりからして不謹慎だが、それも3.11の巨大津波の被災地である三陸地方のリアス式海岸の海と川で、被災で定置網やら漁船やらが減って漁獲圧が少なくなって魚が増えているところを狙って、竿担いで(実際にはあれこれやるために大荷物になったので宅急便で送っているが)よそ者が乗り込むのである。

  「おだつなや!(ふざけるな的な言葉)」と怒られても仕方ないところだと思うが、現地では不謹慎な釣りバカ野郎を、被災前も後も変わらぬ温かいもてなしでむかえてくれた。同居人の家族、親族、釣り船、釣具屋、今回の釣行でお世話になった方々に厚くお礼を申し上げるしだいである。

 

 今回、不謹慎だと思いつつも被災地東北で釣りをしたのは、一つには純粋に釣り人として爆釣のチャンスを逃すわけにはいかなかったからであるが、もう一つには昨年末に復興ボランティアに参加して、「ああ、これはオレの役割じゃないな」となんとなく感じて、じゃあオレの役割は何だと考えたときに、社会人としては、まあ自分の勤めをしっかり果たせ、という事だと理解したが、思いっ切り釣りまくって、そろそろ受け入れ体制も整いだした東北の宣伝をするのは、釣り人として当方ができる、もしくは当方しかできないことではないかと考えたからである。

 

 11日移動日で、12日ボートアイナメルアーキャスティング、13日船カレイ、14日再度アイナメ、15日中休み、16日船ヒラメ、17日船ヒラメでどっかで夜釣りのアナゴ釣り、雨が降って船出なければイワナ釣りで18日帰京という、ハードスケジュール。

 前半、集中力のいる釣りを持ってきて、後半は半分寝ていて前アタリがあったときにあわせずに「今のあたりだっけか?夢かな?」と待って、グググと持っていってから合わせるとちょうど良いヒラメ釣りを持ってきた。志津川湾で東北時代お世話になっていたマルカノー釣具店に予約を入れたが、まだ震災後カタクチが手に入る状況でなかったので、この8月から再開予定とのことで、2シーズン近く狙われていなかったヒラメたちが当方の到着を待っているかと思うと爆釣の妄想をふくらませずにおれなかった。

 用意したロッドは7本。三陸の夏ビラメ釣りでは小さめのカタクチを餌にするため、カタクチが泳ぎやすいようにと割と細めの三陸用ヒラメ仕掛けをハリから結んで作成したり、アイナメ用のリグをしこたま用意したり、ガルプのワームをクッサイ漬け汁からパックに移したり、準備はいつもどおりしすぎるほど入念に準備した。

ガルプくさ汁

 

 

 11日新幹線で一関まで移動、レンタカーを借りて、途中同居人のおじさん宅で、津波で半壊して今はもう取り壊した同居人の実家から回収できたカレイ竿などをピックアップ、夜にはお世話になる同居人のお兄さん宅に到着。早速届いていた釣り具の段ボール箱とロッドケースを紐解き翌朝のアイナメ釣りの準備をして床につく。

 

 いつものごとく入れ込み過ぎでなかなか寝付けなかった。目覚し念の為時間差で2個セットしていたら、何気に起きた時点で1つは止めていた。危ない、2個必要だ。 

 荷物を車に積み込んで朝の気仙沼を港へ。海に近くなると、まだ取り壊しも終わっていない建物や更地が目立ち、復興にはまだ時間がかかりそうな気配。

 おかっぱりでアイナメだのカジカだのを狙った恵比寿様の像の手前で船長と合流。恵比寿様が桟橋ごと流されていて悲しい。ボート「ロックフィッシュ」とシーバスが得意なチャーターボート「トライアンフ」号。小さめで値段もそれほど高くなかったので贅沢にも1人で借りた。船長さんはバスプロ出身で東レとイマカツのスポンサードを受けている腕利きとマルカノー釣り具の専務に聞いていたので今回初めて乗せてもらった。

おしめさん小野寺船長

 

 事前情報では、ややうねりが高く直近のアイナメの釣果はイマイチで、シーバス狙いに切り替えて90UPが出たそうである。東北のシーバスは夏にでかいのが出るが、ボートでガイドしてくれる船長さんはほとんどいないのではないだろうか。でもシーバスは東京湾でも釣れるのででかいアイナメがつりたいとリクエストしていた。

 この時期アイナメは浅場で釣れる冬のノッ込みシーズン程は釣れないけど、まずまずのシーズンで20〜30mくらいの根周りでカタクチを意識した釣りをするらしい。8号シンカーのテキサスリグとジギングタックルを用意。6500C4とヒロナイトウ7f、4500ssとブローショット7f。ワームはガルプのパルスワームとブラッシュホグ系で赤中心にたまにモエビ色。

 6時過ぎに出発。大島の水道を唐桑方面へぬけて大島周りを攻めていく。曇り空でうねりは収まりつつあるということ。

 魚探で沈み根を探して、最初のポイントで一投目からヒット。だが船長にだ。小さいと言いながらも30はあるのが東北の恐ろしいところ。関東以西の感覚からすると異常な世界。船長も前半は魚探すのに結構投げていて、食ったパターンとか教えてくれる。カタクチがらみのアイナメは、そこでトントンするよりリフトアンドフォールでカーブフォール気味に底切ってワームを泳がせてやるといいとの事。ワシにも釣らしてくれーと思っていたらほどなくしてヒット。30はあるんだけどこのくらいだと計りもしない。

一匹目 

 食べごろサイズということでいけすにキープ。その後しばらくして同サイズを追加して、小移動。島周りでいかにもつれそうだが、ココはイマイチな反応で、移動しようということになって走り始めてすぐに魚探にカタクチの反応がありストップして釣る。ここは反応よくてねばる。

根

 しかし、あたりはあるのだがワーム食いちぎられてばかりでコンスタントに数を出す船長をしり目に苦戦、サイズが小さいのか。やや当たってから送り込んで合わせるとかかる感じで1尾追加。船長40UPも釣っていた。まあ、あたりがあったときに、食って首振る感じで、それがプルプルという感じなら小型なので無視してもイイかもしれん。  

 移動して、水面に出た根のさらしから深みへと攻める。根と根の間から深みへと差し掛かるあたりでプルプルではなくイイ感じのゴン、ゴンという感じのあたりがある。聞き合わせしてみると乗らなかったが、そのまま誘ったら追い食いしてきてフッキング。結構良いサイズで力強く潜ってくれる。丁寧に寄せてきてネットですくってもらう。40は確実にある。計ってもらって45センチ。自己2位記録。良いじゃないですか。9時過ぎでお昼過ぎまで釣る予定なので前半戦でそれなりに良いのが釣れて幸せ気分。

45センチ 

 ちょっと移動して、さらに40ちょいぐらいの追加して見えてる根のエリアを離れる。

40ちょいな

 

 時折強い雨が降る中、浅い場所に移動して何箇所かめぐって、沈み根周りを攻める。ちょっと食い方が違うのか、2匹釣ったが飲まれてしまった。最初の2匹と合わせて4尾キープ。 

 先週あたりまではあまり思わしくなかったが、今日は悪くはない程度だそうである。当方としては、かからないのも多く反応自体は結構あって、かなり釣れている感じがあったが、船長としては、もうイッチョでかいのを釣らせたいようで50UPを目指して唐桑半島を先っちょから湾奥へ釣っていくが、1尾小さめのを追加したけど、ものすごい雨が降り始め、時間も1時近くなっていたので撤収した。

 40UP2匹含んで8匹ゲットは、まあ東北基準ではたいしたことないのかもしれないが、旅行者には十分満足いく結果であった。夏休み、スタートは快調という感じか。

 しかし、明日は同居人のお兄さん、おじさんたちとカレイ釣りだが、天気が心配、やや波高そうな予報。明後日はもう一度同じトライアンフ号で再戦予定だがどうなる事か。船出なければ、渓流行けばいいし、ゆっくり休んでもいい。夏を楽しみたい。

 キープしたアイナメは、皮目を焼いた刺身とアラは味噌汁にした。夏場でもそれなりに脂ものっていて旨い。頭の周りの身をつついて食べるのも乙。

キープ刺身味噌汁

 

 

 釣り2日目の13日は大船渡の吉浜港から、栄宝丸でカレイ狙いで出船。

船出

  当方、同居人、お兄さん、伯父さん、他3名の7人で出る。昔はリアス式の湾のカレイ釣りは、養殖施設に係留して狙ったものだが、まだ養殖(にかぎらないが)本格復興していないので、流しながらと係留しての半々ぐらいで40m前後の深さを釣っていく。 

 この時期は東北の本命マコガレイにはやや遅く、ミズガレイ、ヒガレイと呼ばれるムシガレイがメイン、先週行った同居人の従兄情報ではイマイチのことだったので心配したが、珍しく2日続けて「オレが来たタイミングで良く釣れる」状態で。問題なく釣れてくる。

ムシガレイ 

 曇ってやや風があって涼しいのは有難い。

 好調なのは同居人と、お兄さん。異様なシンクロ率で片方がかけるともう一人の竿も曲がる。間に挟まれた当方は、同居人のペースが上がると、取り込み餌付けで忙しい。同居人のお世話が忙しくなると釣果に恵まれないのがパターンだが、この日は違った、釣りの神様は当方の善行(とくにやった覚えはないが)を見ていてくれたのだろうか、当地の基本パターンは着底させたら錘でトントン底を叩いてカレイの興味を引き、時に聞き合わせがてら持ち上げてからの落とし込みで養殖施設からの落下餌を待っているカレイを寄せる。まあ、食わせの間を作ることはあるが、誘い続けるのが基本で普通置き竿では釣果は出ないのだが、今日は取り込み餌付けの間ほっておいた竿にも勝手に魚が食っていて釣れ続ける。全く悪くないペース。 

 しばらく釣れ続けていたのがひと段落すると、同居人は酔い止めの眠気で爆睡モードに突入。釣れるときに釣って釣れない時は寝る。多分寝るまでの釣果は1番だったと思う。ダブルもあった。中古でそろえたカレイタックル大活躍。ダイワスマックは人気らしく、お兄さんも伯父さんもスマックでスマック一族と化していた。

ダブル

 しばらく、一人でじっくり釣れるので、丁寧に誘っていく。ムシガレイはヒラメになりかけのカレイで口が結構でかく、今回初めて使ったのだが虫餌のほかにサンマ短冊でも釣れる。食う分はもう十分釣れているので、一発目のあたりで即かけてリリースしながら釣っていく。カレイは一息で吸い込む食い方をするのでおちょぼ口のくせに早合わせがわりと正解だったりする。

 隣のお兄さんと好調に釣っていく、20匹近くまで1匹リードで釣り続けていたが、ダブルヒットで逆転されてから、ズルズルと差をつけられていった。お兄さん、伯父さんは割と最近釣りにはまってきたのだが、血筋なのかなんなのか良く釣る。

 小さめだけどマコガレイが釣れたのがうれしかった。志津川に住んでいた10数年前に釣って以来だ。三陸の海でまたマコガレイを釣ることができた。道具も当時使っていた津波に持って行かれずに同居人の半壊した実家から回収できたタックルで釣れた。なかなかに感慨深い。ダイワ早船210に同社PS2L−5B。

マコガレイ 

 好釣の気配を察知してか、同居人が起きて釣り始める、半分まだ眠っているようなやる気のない間の長ーい誘いをしているが、あまり飲まれたりせず、あたりには即反応しているようだ。ダブル2度目、マコガレイもゲット。

ダブル二回目マコガレイも

 

 それでも、当方も世話を焼く間に釣り続ける。なんとこれも小さめだけど当地人気NO.1カレイのナメタことババガレイも釣れた。

ババガレイ 

 最終的には、27匹ゲット。ちょっと釣り過ぎぐらいに釣れた。東北の海の実力は当方のようなあんまりアレな釣り手にもたんまりと釣らせてくれる。 

 竿頭は35匹ゲットでお兄さん。同居人、伯父さんは「野生の感」的な狩猟本能で釣るタイプだがお兄さんは、従兄がそうなのだが正統派タイプで、魚ばさみやら針はずし、小出刃など、「釣り周り」の道具の準備の仕方などにそつがなく、釣り師向きの工夫好きの性格だと思う。キャリアの違いを見せたろと思っていたが軽くひねられた。

 お昼過ぎに上がって、帰りの道中、行きは暗くて見えなかった高田松原あたりの、何もない夏草の生えた草原に、改めて3.11のことを思い出した。

高田松原一本松 

 

 夕方、14日もお世話になる予定のトライアンフ号の船長に電話、船長曰くうねりが結構大きい予報で、うねりは根魚にはよくないようで、出船するかどうか迷っているとのこと。6月7月と仕事もそれなりに忙しく、疲れがたまっていたのもあるのだと思うが、腰の状態がよくなく、体もしんどい感じなので前半好調だったこともあり余裕もあるので、無理せず14日は中止とした。 

 当方と同居人は途中からハリ飲まれない限りリリースしていたが、それでも結構な数がお兄さんの家に集まり、メインの煮付けのほかに、冷蔵庫で作る干物を仕込んだり、配ったりしてさばいた。

大漁

 カレイの煮付けうまい。

 カレイの煮付け

 

 

 14日は、体の調子がよければイワナ釣りでも行こうかと考えたが、腰の具合をはじめイマイチ調子悪いので、寝てすごし、夕方仕事で帰る同居人を一ノ関駅まで送り届けて、マルカノー釣具千厩店で専務さんと茶飲み話。

 釣り情報と共に、なかなか進まない復興の話など。

 残念なことに、ヒラメ釣り今年は再開できそうにないとのこと。まだイワシを活かしておく生け簀が無いらしく、定置へのイワシの入網具合も不安定で餌が確保できないとのこと。今年はカレイ釣りメインで行くという事だが、カレイはしこたま釣ってしまっていたので、また来年ということにした。

 

 

 15日体調悪化。どうも風邪のようだ。ノドが痛く鼻水も出る。葛根湯と栄養剤を飲んでおとなしく寝る。前半釣れているので割と余裕で心安らかに寝ていられる。

 夕方、おじさんの家の庭で親戚一同でバーベキュー。この家はとても趣のある木造の農家で、山から引いた冷たい水にスイカが冷えていたりする。

 炭火起こしたりして準備していると、同居人従兄弟と静岡のおじさんが、前を流れている川からアユ竿片手にあがってくる。好釣だったようで「船」には良い型のアユがピチピチしている。

 わいわい話しながら、ご当地B級グルメの「気仙沼ホルモン」やら釣りたてのアユやらを楽しむ。たらふく食った。

 天然アユなんて、何年ぶりだろうか。サンマともイワシとも違う、はらわたの苦さがたまらない。金では買えない贅沢な食べ物という感じがする。炭はおじさんが焼いた炭だが、炭で焼くと良い塩梅に魚も肉も焼けて別格の焼き加減。ヒグラシからコオロギやらに切り替わるBGMも夏気分で素敵だ。

アユアユアユアユ

 カブトムシが飛んできたので、チビスケどもに取ってやろうと、ジャンプ一発華麗にキャッチ。のつもりが、ほんの数センチ足らず結構悔しかった。

 

 

 16日体調はまだ悪い状態だが、夕方からお兄さん、おじさん、おじさんのお隣さんでアナゴ釣りの予定。

 行けるかどうか心配いただいたが、多少の風邪は釣りに行ってアドレナリン出れば治ると言ったら笑われた。

 昔、JOSさんと釣りに行く約束していて、風邪ひいて当日の朝「風邪みたいです。今日は家でおとなしく寝ています。」と言ったら「風邪?!そんなモン魚釣ってアドレナリン出れば治る、迎えに行くから準備しとけ。」とか言われた記憶がある。その後、多少の風邪は釣りに行ってアドレナリンで治すように心がけているが、治るときが半分、悪化するときが半分ぐらいで勝ったり負けたりである。 

 夕方、出発時には治っていないけど、悪くもなっていない感じ。車1台で釣りの話などしながら越喜来湾の港を目指す。

 おじさんは今回の釣行のために、材木屋に頼んでまな板を新調したとのこと。当地ではアナゴは「ハモ」と呼ばれて京料理で有名な標準和名ハモと紛らわしいが、1m越えるようなデカイのが釣れるそうで、それを捌くには普通のまな板では3本ぐらいに切ってから捌かねばならないので、長いまな板を用意したのである。「取らぬ狸の皮算用」にならぬと良いのだが。

 東北在住時から、三陸でデカイ「アナゴ」が釣れると聞いていて、港から夜釣りで狙ったりしていたがデカイのは釣ったことが無い。おそらく東京湾で「アナコンダ」と呼ばれているクロアナゴ(ダイナンアナゴというのもいるらしい)だとながらく思っていたが、みな口をそろえて「マハモ(マアナゴ)」のデカイのだという。図鑑ではマアナゴは確かに最大1mと記載されているのは知っていたが、そんなの見たこと無いしにわかには信じがたい。「うっそー」という感じだが、まあ確かめてみたい。

 思いっ切りお盆休みに魚釣りという「殺生」をしに行くことについては、皆さんそれぞれ家族にチクチク言われてきたようで、「なーぬ、東京から来たお客さんが18ぬちぬはけーっぺから、ハモ釣ってもらわねばだめなのっしゃ。まず、しかたねえっちゃ。」と当方をダシにしてもらったようだ。こういう時の釣り人の「いいわけ」は全国共通だと思う。当方としては連れていっていただいて感謝するのみである。

 港について、船に乗り込む。船の名前忘れた。4人ぐらいが釣れる小さめの漁船タイプで船頭さんは「川さん」。

 先に帰った同居人に新幹線の通路用に座椅子を貸してしまっていたので、港の瓦礫置き場で椅子になりそうなモノを探していると、船頭さんが、椅子ならこれを使えと瓦礫から回収してきたらしい椅子を貸してくれた。たぶん誰かの想い出が詰まっているだろう、学習机の椅子。背もたれもついていて、ロッドホルダーも取り付けると極めて快適なファイティングチェアーになった。

ファイティングチェアー 

 当地のアナゴ釣り仕掛けは、両天秤仕掛けが基本で、ハリス短めで絡みを防止すると共におもりをそこに付けた状態で、カレイ釣りの「小突き」の要領で天秤を上下させたときに餌も踊るようにセットするのが良いらしい。

 ケミホタルは付けた方が良いという説と無い方が良いという説の両方あった。当方は経験上、夜釣りで仕掛けにケミホタルは、釣れるときは爆発するけど、嫌われるときは全く食わなくなることもあるので、とりあえずはホタルなしで天秤も片天秤のシンプルな仕掛けで行くことにした。竿はアイナメ用に持ってきていたバスタックル流用。餌はイカ短冊をフにまぶしたモノとサンマ短冊を用意。イカの方が餌持ちがよく良いとのこと。

仕掛けと餌

  港から出てわりとすぐの水深50mラインでアンカーうって釣りスタート。まだ完全に日が落ちておらず。最初、当たり始めるまでしばらく時間がかかるという事で、のんびりムードで始まる。直近情報では、入れ食いだったとか。釣れるときは何10本も釣れるとか。あんまり大量に釣れても捌くの大変そうだなと取らぬ狸の皮算用。 

 日が落ちて、小一時間ほどたつのだが、いっこうに当たりが出ない。ボチボチ「おかしいな」という声が出始めて、船頭さんはホタルが嫌われているのではないかとの見解で、海水につけると通電してフラッシュを放つタイプの明るいホタルを外したりして、それでも釣れなければ場所移動だなということだったが、ホタル外したおじさんにヒット。しかしバラした。その後ほどなくして、ホタル外さず粘っていたお兄さんにヒット。柔らかめの竿だがそれにしてもよく曲がっていると思ったら、結構デカかかった。

 太い。後で測ったら81センチもあった。側線の白点が大きくどう見てもみんなの言っているとおりマアナゴだが、サイズが異様だ。バンジョウ(篭)の中で暴れ回るのをナイフで延髄切って締めるがグネグネと暴れ回る。

格闘中

 是非釣ってみたいモノだと思うが、なかなかアタリが遠い。釣れ始めると連続で来るようだが入れ食いとはほど遠い。しかし、お兄さんだけ好釣に追加していく。最初ほどではないがそれでも60、70越えているような良型揃い。

 おじさんも小さめ、といっても東京湾とかなら普通のサイズをゲットし、当方も仕掛けを両天秤に変えてケミホタルを片方のハリスに付けて、やっとアタリがあった。

両天秤仕掛け

 最初コツコツと小さな前当たりがでるが、そのあと持ち込んだときにあわせろとのことだった。最初の前アタリはシッポで叩いているのであわせてもかからないと当地では言われているようだが、おそらく最初のアタリはくわえてバックしている状態で、ここであわせるとすっぽ抜けるが、持ち込んだときには向こうむいて走っているのでここがアワセのタイミングになるという事だと理解した。ウナギ飼っていたことあるが、餌をシッポで叩くことはない。しかしバックは得意な魚だった。アナゴも同様の捕食行動をとると思う。

 コツコツという小さめの前アタリをあわせそうになるのを我慢して、船がうねりで持ち上がるのと同期してグググーッと重くなったので思いっ切り大あわせ。ドラグがズルッと滑ってフッキング完了。急いで底から剥がすべくグリグリとリールを巻く。結構重く、時にガンガンと引き込む。船がうねりで持ち上がっていくときにはドラグが滑る。船が下がるタイミングで巻き取る感じでじっくり引きを楽しみながらあげてくる。

 どのくらいのサイズか初めて船でアナゴ釣るので見当つかなかったが、あげてみると結構デカイ。後で計測すると75センチあった。重さは2ポンドぐらいで1キロ前後というところか。満足の太さ。

75

 バンジョウの中でグルグルと回転しやがって、仕掛け思いっ切り絡みまくった。あげたら速攻でハリス切ってしまうのが良いかもしれない。

ローリング中

 アナゴ用の魚ばさみではさんでしめようとするのだが、パワフルなのでハサミでおさえきれずに苦労するが何とかしめて、次を狙う。

結構な大きさ長い75センチ

 

 しばらくして、再度同じようにコツコツと魚体の割には小さいアタリが来て、グーッと重くもたれるような本アタリで大あわせでフッキング。

 1匹目よりはちょっと小さいがこれも太くて立派。しげしげと眺めるが測線の白点が大きくやっぱりマアナゴにしか見えない。顔もクロアナゴはアナコンダっぽい大きな顔だが、割と小顔。写真判定用にアップで撮影。写真では測線の白点よりはまばらだが測線の上方にも1列白点が確認できて間違いなくマアナゴのようだ。

白点が2列並ぶ

 

 その後は、しばらく反応無く、ドンコ(エゾイソアイナメ)が釣れ始め、当方にもアタリはあったがかからず。ドンコが釣れ始めるとアナゴの時合いは終了らしく、10時前に撤収。 

 竿頭は5匹ゲットのお兄さん。デカイのが多いのでかなりの大漁のような感じがする。当方も2匹とも良いサイズだったので極めて気分がよかった。気分がよくないのが、デカイまな板まで新調したのに小型のみにおわったおじさんで、帰りの道中ボヤくことしきりであった。まあ、釣りは釣れたり釣れなかったりするのであまり気にしないように、と言っても割り切れるモノではないだろうし黙っておいた。 

 おじさんの家のたたきの台所で、新調したまな板でアナゴを捌く。教えてもらいながら、久しぶりに長モノを捌いたが、デカ過ぎて加減が分からないのもあってちょっと失敗して骨に身が沢山ついてしまった。学生時代、漁港でアナゴ釣ったり置きバリ仕掛けてウナギを釣ったりして捌いて食ったのが思い出される。

まな板の上のデカアナゴ 

 お兄さんの家に戻って、シャワー浴びてそろそろ寝るかというときに、ちょっとアナゴ味見してみようということで、グリルで白焼きにしてわさび醤油で食べてみたが、これが旨いのなんの、釣りたて捌きたてなのでプリプリしたところもあり、腹側アタリは柔らかくふっくらしているところもあり、脂ののりも適度にあってちょっと感動的に旨い。 

 翌日、白焼きにしてから甘辛く煮て煮穴子にしたのもフワフワで美味しかったし、翌々日には同居人のお母さんが天ぷらにしてくれたのだが、熱々を天つゆに下品にジャバジャバとつけて食べると、衣がサクサクとして、アナゴはこれまた肉厚の柔らかい白身が迫力ある食感で文句なしに旨い。歳くって食が細くなって昔ほど大量にカッ食らうことができないのが悔しいぐらいだ。思い出してヨダレが出てきた。何にしても旨くて驚くばかりだった。あまりデカイとマアナゴは値段がつかないようで地元にしか出回らないようだが、地元の民宿とかでは食べさせてくれると思うので、東北に行ったら是非リクエストして食べてみて欲しい。秋になると釣りも食味も旬をむかえるようだ。数ある東北の海の旨いものの中でもいきなり上位にランクインさせてしまうほど旨かった。

 

 

 17日、体調は微妙に悪いままだが、寝ているほどではないので午後3時から4時頃に雷雨が来るという予報なので、その後の増水で活性のあがったイワナをやって、夕まずめヤマメのライズを釣ろうという事で、沿岸部のP川の支流に入る。上流部の堰堤上はイワナの川で堰堤下が上のほうにイワナがちょっといてヤマメ、ウグイの釣れる支流である。本流との合流点近くは津波が上がったようで昨年見たときには河原に瓦礫が引っ掛かっていたが、今は夏草に覆われている。 

 現地到着すると、激しい雨と雷が。いつもの釣具屋で日釣り券を購入。支流ごとのアユやらヤマメやらのセシウム測定値が張り出されている。

 あちこちで聞いたが、津波のことは仕方がないことだと思うしかないが、原発だけは腹が立って仕方がないという意見が多かった。全くその通りだと思う。子供達に川で釣ったアユを食べさせてやるのを断念せざるを得ないというのは、業腹である。

 科学者が大丈夫だと言っていた原発があんな最悪な事故を起こした後で、どれほど科学者が科学的に心配ないと言っても、何の説得力も持ち得ないのは当然だろう。低線量の被爆によるリスクは喫煙の健康リスクより低いと言われているが、前例がデータが隠蔽されていたであろうチェルノブイリぐらいしかない中では、「もし」という可能性を考えざるを得ない。「もし」低線量の被爆でも無視できない程度の健康被害が生じてしまった場合、そのときになって後悔しても取り返しがつかないのである。まあ、当方のようなある程度長生きした人間は、いまさらそれほど気にしなくても良いという考え方はあるが、これから長く生きる子供達のことは神経質にならざるを得ないだろう。

 そもそも原発自体も事故が起きれば取り返しがつかないことは今回のフクシマの事故で明らかになったはずである。なのになぜまだ原発を回そうとするのか。当方には全く理解できない。ミスを犯さないことを前提としたシステムは、人間が管理していく以上は、必ずミスが生じて破綻する。難しいことを考えなくてもそれだけ分かっていれば良いだけなのに、世の中にはバカが多すぎる。バーカバーカ、お前のカーちゃんヒョウタンツギ!

  ひとしきり激しく振った雨も小降りになったので、上流部に入る。

 支流

 良い感じに濁りが入っているのだが、予想どおりの渕尻やら流れの真ん中にイワナが出てきていない。というか全く追いもない。通常、濁りは笹濁りから膝くらいの深さでシューズが見えるぐらいの濁りなら、イワナの活性は高いはずだが、追いもないという事は釣りきられて魚が居ないという可能性大だ。

 一旦仕切り直して堰堤の下流に移動。広いプールでスプーン逆引きしてイワナ一尾ゲット。

イワナ

 その後つり上がるが、チビヤマメが何匹か。

チビヤマメ

 下流エリアに移動するまえに用を足そうとしたら、護岸のパイプにアシナガバチの類が巣をかけていた。気付かずにナニを出して近づいたら刺されていたかも知れない。

ハチの巣 

 しかし雨が上がりはじめると、死ぬほど暑い。カッパはゴアテックスだが、メガネ曇るぐらいの熱気が胸元からあがってくる。

  下流部は、落差の小さい葦原を流れる里川で、いかにもな堰堤下は地元民が釣っていて魚が少なく、膝ぐらいの深さの長めの瀬や、カーブのぶっつけのえぐれを遠投で狙っていくのがこのポイントの攻略法である。ヤマメはあまり得意ではないが、ここでは尺物を釣った想い出がある。

 雨降って好活性を期待したが、反応イマイチで苦戦した。アユが多く瀬の中でコケをはんでいるのが見える。ぶっつけで1尾20センチ台後半の良型が食ったが惜しくもかからず、小型のヤマメ1尾のみで、そろそろ夕まずめなのでフライタックルを出してさらに下流のポイントへ移動。

 下流部は堰堤やらが津波で壊されて昔と比べて平坦になってしまっていてイマイチポイント絞りにくいが、ボチボチライズも始まってプライムタイム突入。だがしかし、チビヤマメが多く、数はそれなりに釣れるのだが、サイズが上がっていかない。

チビヤマメ

 フライで初めてアユを釣った。マシなサイズはウグイのみ。まあ、反応は多くて面白かったのだけど、良いサイズはかけ損ねたりして、腕がなまりまくっていてちょっとショック。暗くなって撤収。

アユウグイ

 チビヤマメが多かったのは、昨年は震災で放流できなかったので、釣りの対象となる2年目の個体が少なかったという事だろうか。今の釣り人の数を考えると放流をメインに考えるのは仕方ないという気もするが、味気なくもある。

 少なくとも、放流していないような支流のイワナを釣りきるようなことは、いい加減やめてもらいたいと思う。

 既に、天然で繁殖し続けている個体群とかは貴重になっているので、そういう魚が居る支流はいっそ禁漁でも良いと思う。禁漁にするエリアと、バンバン放流して釣らせるエリアを両極端に置いて、その間のバリエーションも含めて、川を良い状態に保つためにどういう釣り方がふさわしいのかそれぞれの川の実態に合わせて考えるべき時期に来ているように思う。川に限らずかも知れないが。

 

 

 18日、朝一釣りに行くという選択枝もあったが、充分釣ったし、体調も微妙に悪いので昼近くまで寝て、そのまま帰路についた。

 長い休みの終わりはいつも寂しい気持ち。名残を惜しんで、道の駅でお団子とかを買って北上川の大きな橋の下で昼ご飯。アマガエルの隣に座って夏の山と川を眺める。

橋の下から

アマガエル 

 

 

 釣って食って、東北の釣りを存分に楽しんだ。夏休みが終わってしまうのが寂しい限りだが満足ではある。

 もっとものすごく釣って「被災地でなにやってるんだ」とひんしゅくを買うぐらい釣りたかったのだが、まあ当方の実力どおりで、それなりの釣果である。本人がそう感じるぐらいなので客観的にはそこそこ以上に釣れたんだと思っている。もっと釣れるポテンシャルのある釣り場なので、是非とも皆さんに釣りに行って欲しいと思う。釣り船とかの電話番号も問い合わせいただければ対応いたします。

 

 ボチボチ復興にむけて歩み始めているので、仮設飲み屋街やら津波の語り部やら観光地としても面白いことが始まっていて、是非支援の意味でも訪ねていってもらいたいと思います。

 現地で、何人かの口から聞いたのですが「もう、東京とかでは被災地のこととか忘れかかっているんだろうね。もう復興したと思ってるのだろうか?」と言ってました。つまりまだ、ぜんぜん復興までの道のりは遠い感じです。

 高台移転もぜんぜん進んでいません。新しい都市計画に基づく住宅地がなかなか造成にはいらないので、内陸部に移り住む人も多いようです。

 都市計画自体が、なかなか住民総意でとなると難しく、調整に難航しておりほぼストップしているように見える状況もあるようです。その上、土木屋は10mとかの堤防だかが必要だとか言っていて、やっぱり地元でも大ひんしゅく買っていて、そんなモンに使う金があったら早く地盤沈下した海沿いの商業地域のかさ上げとかしてくれという意見が出ているようです。

 港も、まだ壊れたままのところが多く、応急処置でとりあえずいくらか復旧していますが、これから漁業者も減る中で、どこの港を優先的に直していくのか、そもそも直すべきかどうかも含めて調整難航中で、復興は5年先とかの話ではないかとか。

 

 暗い話題ばかりでもなく、当然といえば当然ですが、復興に伴って、建設関係は仕事いっぱいあって景気が良いようです。家立てようとしてもなかなか業者がつかまらない状態のようです。

 その影響か、慢性的に人手不足で、同居人の実家は商売をやってる家なんだけど、求人をかけても人が集まらないのだとか。

 今時、仕事が無くてクビ吊らなければならないこのご時世に、人手不足の地域があって、たぶん少なくとも5年やそこらはその状況が続きそうだという事は、今仕事が無くて困っている若い人なんかは、もう骨を埋めるつもりで東北に行くべきではないだろうかと思う。

 どこに住もうが良いところもあれば悪いところもあり、東北が天国のような素晴らしい場所だと言うつもりもないが、少なくとも飯は旨いし、自然は豊かだ。仙台やらは充分都会だし、田舎でも今時はネットと車があればそれほど不便ではない。アウトドア系の趣味の一つも持てばかなり天国に近くなることは保証する。

 

 是非、皆さんに釣行、観光、移住をお勧めしたい。いいところだよ。

 

 

元に返しておきました 

 −FIN−

 

 

 

  2012年 後半

 

 HP