○PENN インターナショナル975
釣り仲間の間で、「アンバサダーは普段国内でバスやらライギョやら釣っている分には申し分ないけどドラグの性能が今時のスピニングと比べるとイマイチ。締めすぎるとロックしてしまうし、ユルいとズルズル出てしまう、海の釣りや淡水でも海外の強烈に引く魚をやりに行くときに、ドラグの良いベイトリールを選ぶとすれば何が良いだろう?」ということが話題になりました(註1)。
まあ、シマノのカルカッタが妥当かなというところに落ち着きましたが、PENNにもレベルマチックの他にキャスティング用のベイトリールが出ていて、これも結構ドラグは良いらしいという話も出ました。
PENNのホームページ(註2)で調べるとトローリング用で有名な「インターナショナル」シリーズのキャスティング用という位置づけのようです。
調べているうちに物欲が盛り上がってしまい、使う予定は当面無かったのですが1台ほしくなりました。
しかし、値段が定価で5万円近くする高級リールなので「アンバサダーで何も困ってないでしょ。」と自分に言い聞かせ我慢することにしました。
ところがしかし、しばらくして中古釣具屋の棚で1万円を切る値段のインターナショナル975を見付けてしまったのです。これは即買わねばと思いましたが、いくらなんでも値段が安すぎると思い調べてみると、逆転防止機構が故障しておりドラグを締めてもダイレクトリールのようにハンドルが逆回転してラインが出て行く状態でした。
でもよく考えると、PENNのリールはアフターサービスも充実しておりパーツ交換であれば数千円で済むし、上手くすれば逆転防止機構の修理ぐらい自分でできるかもしれません。おそらくリールオイルが入って滑ってるとかの簡単なことだと思いエイヤッと買っちゃいました。
家に帰って、分解してどこが壊れているのか調べ始めます。
ハンドルを外してスタードラグを外して、ドラグを締めたときに徐々に締まるように重ねたシンバルのような形状になったワッシャー2枚を外すと、ハンドルの根元には、アンバサダーならドラグワッシャーが何枚か入っているはずの位置に、逆転防止の部品が入っていました。逆転防止機構関係の部品は、一方方向にしかまわらないベアリングに筒が突っ込んであるような形状(註3)で、突っ込まれた筒を両方向に回すと、回ってはいけない方向にもズルスルと滑り、ほぼこのあたりに不都合があることは間違いないようです。シンバル型のワッシャーはこの筒と接しており逆転防止機構はドラグを締めても締め付けられない構造です。
(右の写真では筒状の部品をちょっと引っ張り出してあります)
とりあえず逆転防止機構の部品を外して、洗剤つかって洗って油抜きをしようと、本体のメインギアが入っているところのカバーを外しました。
(メインギア(一番大きなギア)の上に金属のワッシャーのようなものが乗っている)
逆転防止機構の部品が外れたのは良かったのですが、疑問が生じました。アンバサダーならドラグワッシャーが入っている部分には逆転防止機構関係の部品しか入っていません。ではドラグはどこに入っているのでしょうか?まさかシンバル型の2枚のワッシャーだけなのか?それはないと思ったので、ドラグを締めたときシンバル型ワッシャーが押さえつける筒が次に何を押さえつけているのかしげしげと眺めてみると、どうもメインギアあたりを押さえつける構造のようです。メインギアの押さえられている部分は見ればワッシャーのような金属板で外れそうなのでドライバーでめくってみました。
すると、中からカーボンシートでできたドラグパッドが出てきました。
(メインギアの中にドラグパッドがはめ込まれています)
さらにめくると金属ワッシャーともう一枚カーボンのドラグパッド、金属ワッシャー、最後の一番下のドラグパッドはメインギアに貼り付いています。
(右端が一番最初に見えていたワッシャー)
ドラグの面積と枚数は多いほど良いとも限らないのでしょうが、明らかにアンバサダーの小さなドラグワッシャーよりこちらの方が効きが良さそうです。
カルカッタユーザーに聞いたところによると、カルカッタもドラグは基本的にはアンバサダーと同じような位置に入っているようです。となるとドラグの単純な面積比較ではPENNインターナショナルの方が大きく、ひょっとしてドラグはカルカッタよりインターナショナルの方が良いんじゃないかという期待が膨らみます(註追加)。
さすがは海で鍛えられたトローリング用の高級リール、PENNインターナショナルの名を分けられたリールだけあります。ちょっとシビレました。
修理の方は、しっかり油抜きをしたにもかかわらず状態は改善されなかったので、部品交換だなと思いメーカー修理に出したところ、部品交換ではなくあっさり「メンテナンス」だけで帰ってきました。
どこをどうメンテナンスしたのだろうと確認したところ、「押してもダメなら引いてみな!」とは昔の人はよくいったもので、オイルを逆に注入してありました。よく考えればリールオイルを他の部分には差すのにそこだけオイルが入らないようにするのは無理ってモンです。はじめからオイルが入った状態で機能するように設計した方が確かに理にかなっています。
それにしても、メンテナンス料は3千円程度で済み、他の部分もちゃんとグリスアップされて帰ってきて嬉しい限り、本体含めて1万2千円強。思いっきりお買い得品でした。PENNに関してはスピンフィッシャーでだいぶ目が肥えているので私の鑑定眼もなかなかのもののようです。
さて、無事メンテも済んで実釣編ですが、アンバサダー6500C4のかわりにアメリカナマズ釣りで実戦投入。
最初、キャスティング時の遠心ブレーキの利き具合がイマイチ気に入らなかったのですが、ブレーキブロックの4つあるうちの2つを外したら良い感じになりました。何のことはない普段使い慣れているアンバサダーはブレーキブロック2つでその感じに近づけたら使いやすかっただけのことです。
肝心のドラグ性能ですが、アメリカナマズは日本のナマズとしっぽの形を比べてもらえばわかると思いますが淡水魚にしては結構引く魚です。
しかし、我がインターナショナル975のドラグの限界性能を試すほどではありませんでした。ドラグは滑り出しもスムースで、微調整もバッチリ効きます。是非、海の魚など引きまくる魚を相手に実力を発揮させてあげたいものです。
ドラグ性能の良いベイトリールをお探しの方、PENNインターナショナルキャスティングシリーズはちょっと値段は高いですが、いいリールだと思いますよ。お薦めしちゃいます。
(註1)ベイトリールの場合、ドラグゆるめにしておいてサミングでブレーキ調整するという手があるので、腕に自信のある場合はアンバサダーでも結構いけるのではないかとも思います。その場合親指の皮の厚さに自信がない場合は手袋しないといけないと思います。
(註2)当時はペンリールジャパンのホームページで、今は丸ごとエイテックのホームページのPENNリールのコーナーに移植されています。このホームページでありがたいのは扱っている機種すべての展開図がPDF形式のファイルで提供されていることで、部品番号で部品注文するときなどに大変便利です。
(註3)言葉では説明しにくいですが、ダイワのインフィニットアンチリバースと基本的に同じような仕組みです。ベアリングのボールに当たる部分が比較的細長い円柱状の部品になってます。
(註追加)その後、シマノのホームページのパーツ注文のところでカルカッタ400の展開図を確認したところ、現行カルカッタにも同様のでかいドラグパッドとワッシャーがやはりメインギア内に入っていることが判明しました。カルカッタと975のドラグシステムは似たような構造と大きさのようです。優劣は直接使い比べたこと無いので正直私には分かりませんが、この感じだと同等程度ですかね?
さらに、「もしかして・・・」と不安になり、昔のと比べて妙にドラグの効きの良い最近のウルトラキャストデザインのアンバサダー6500C4を分解して、今まで気にもとめなかったメインギアをよく見てみると・・・「ドラグ入ってるやんけ!」。カーボンシートのドラグパッドが薄くてぺらぺらですけどそこそこ立派な大きさのが3枚も入ってました。ちなみに逆転防止機構も975と同じような位置に配置されてます。
(メインギア内にドラグ関係のパーツが6枚重なってます!)
いやはや参りました。私の知らないうちにベイトキャスティングリールのドラグはこの形式が標準になっていたんですね。最近のリールはみんな良いリールやということでしょうか。オッサンさすがに自分の歳を感じてしまいガックリです。もうワシは時代遅れの釣り人なんやと痛感。今時の釣り人がこの文章読んだら「オッサン何アホなこと書いとるんや?」と思うことでしょう。
(見直したゼ、6500C4)
さらにさらに、ホントは私が知らないだけで、「もしかしてもしかすると・・・80年代のアンバサダーも実はメインギアの上のワッシャーを外すと同じようなドラグが入っているのではないか?」と心配になり、久しぶりに5000を分解してみました。
結果、メインギアの中にドラグワッシャーとパッドは入ってませんでした。ハンドルの根元に金属製のワッシャーが入っておりこれも記憶通り。ちょっと安心。
しかしメインギアをずらしてみると、裏側に大きなカーボンシートの薄いドラグパッドが貼り付いていました。これがメインのドラグパッドなんですね。ガキの頃はドラグなんてどういうものか知らなかったのでずっと金属製のワッシャーがメインのドラグなんだと思っていて、そのまま今まで私は生きてきたようです。いやはや重ねてお恥ずかしい限り。
(あら!こんなところにドラグパッドが)
ちなみに、写真の上の方やや右の歯車を挟む形のパーツは、古いアンバサダーの逆転防止のためのパーツですが(写真ではわかりにくいかな?)、始めて分解した後にこのパーツの薄い板状の部分を広げて歯車にはめる手順が分からず困ってしまうというのが当時の釣り少年のお約束でした。
反省のため、この文章はあまりいじらず(註)の追加のみにして晒しておきます。
(註:恥の上塗り)
上記の追加註をみたツーテンの虎ファンさんからご指摘を受けました。
「80年代のパーミングカップモデルにも同じ場所にパッド入ってるよ。サビ浮いてるし固着してるのと違うか?」とのこと。
さっそく確認すべく、再度分解。やはりくっついてるので虎ファンさんにメールで教えてもらい、隙間にマイナスドライバーを入れて方向を変えながら何度かコジってみました。
外れました。キャーーー恐ろしいことになっています。20年の眠りから覚めたグリとグラじゃなくてグリスとサビとが練り合わされて固まったようなモノがびっしり。ドラグパッドがどういう形で何の素材なのかもこのままではよく分かりません。
メインギアを外してドラグパッドを外すと、どうやら土星の輪のような形のカーボンシートのようです。
CRCを吹きかけて、綿棒で表面をふき取る作業を何度か繰り返すと、ようやく茶色いモノが取れて黒い本来の状態に近づいてきました。完璧とは行きませんが、とりあえず固着状態を脱出して再度グリスを塗ってセット。
組み立てて、ドラグの効きを試してみるとだいぶスムーズになったような気がします。
さて、思い出してみましょう。この男(私ことナマジ)はこのページの最初の方でこんなことを書いていました。
「アンバサダーはドラグの性能が今時のスピニングと比べるとイマイチ。締めすぎるとロックしてしまうし、ユルいとズルズル出てしまう」
20年もドラグの手入れしていなければ、そりゃーイマイチだったでしょうね。
「結果、メインギアの中にドラグワッシャーとパッドは入ってませんでした。」
なんてことも書いてます。そりゃー20年もほっといてがっちり固着してればワッシャーも外れないわな。
PENNのページでは、えらそうにこんなことも書いてますよ。ハァーたいそう立派なご意見ですな。
「どういう仕組みで機能しているのか分解バラバラにして理解していることが私にとってはとっても重要なことなんです。」
20年も愛機のドラグをほったらかしにしておいて何が「理解していること」じゃボゲェ!片腹痛いわ!
ということで、アンバサダーにはゴメンナサイという気持ちで一杯です。
これまで釣り人として築き上げてきた、信用とかがガラガラと崩れていったような気がします。なんか立派なこと書いても「でも彼、20年も・・・」とか「ドラグの位置ぐらい・・・」とか思われてしまいそうです。アアアアッお恥ずかしい。
明日からまた、真面目にコツコツと釣りにはげんで信頼を回復したいと思います(最初から信頼などされていないという可能性もある)。
(2008.4)
○ハンドル交換
左手サミング練習でカヤックのシーバス釣りにアンバサダー6600CLロケットというのを買ったが、これが軸ズレ不良品。仕方なく975を導入。
アンバサダー 975は重くてギア比が1:4.5と巻き取りスピードが遅いモノの、左手サミングなので重さは問題にならず、巻き取り速度の遅さも、バイブレーションやミノーを使ってシーバス釣るにはそれほど問題はなかった。
しかし、1点予想していなかった問題が発生。ハンドルが割と長いシングルハンドルなのだが、これが邪魔でキャストする時右腕に当たって、クラッチがつながってしまうという事態が結構発生する。
左巻のリールにすれば簡単に解決できるのだが、元々の目的がロウニンアジ釣りで大型のベイトリールで左手サミングでキャストして右手でゴリゴリ巻くということを想定した練習なので、左手で巻いちゃう方向に行くのは本末転倒である。ロウニンアジ用に想定しているPENN545GSのハンドルでは同様の支障は生じない。なぜならハンドルまわしてもクラッチがつながらず、レバーをもどすとクラッチがつながる手動方式だからである。自動にしてくれよと思っていたが、手動でないとトラブルが生じるので理由があってそうなっているのだと理解した。
いずれにせよ975については対策を講じなければならない。たぶん同じ規格だろうということで一つ小さいサイズの965についているコンパクトなダブルハンドルを入手したが、これが穴が小さくはまらないんでやがる。
仕方ないのでネットであちこち探して、金属加工の町工場で注文に対応してくれるところを見つけて、郵パックでモノを送って加工してもらった。
なかなか良い感じに仕上がってきた。加工費送料込みで5千円ほど。
(2012.12.26)