○ライギョロッドの左手サミング仕様への魔改造
ライギョ釣りには、アンバサダーの6500番クラスとセンター2ピースのマスキーロッドを愛用していた。ライギョ釣りをするためにはこのタックルで不自由は感じていない。
「PETE MAINA」シグネチャーシリーズ バスプロショップス製 ←過去に書いた文章しかしながら、ロウニンアジ釣りのルアーキャスティングを想定してベイトリール左手サミングの練習をしていたら、「左手サミング仕様の怪魚ロッド」というコンセプトを思いついてしまった(詳しくは2014年10月11日のブログ参照)。
ライギョロッドってなにげに優秀で、8号PEとか使ってフルドラグ状態で、フレーム強化していないとアンバサダーの6500番台のフットが吹っ飛ぶぐらいの強烈なフッキングをかましても折れない丈夫さがあって、今みたいに各社からいろんなグレードのジギングロッドが出る以前は、ベイトジギングにライギョロッドというチョイスは裏技的にありだった。ドラグ5キロとかで20キロオ−バーの青物とやり合っても強度的に支障がないという、単にライギョのサイズだけ考えたら明らかなオーバースペック。でもライギョ釣りには実際このくらいの丈夫な竿が必要で下手なロッドはアワセで折れる。使っていたマスキーロッドはバットにバランサーのオモリが追加できる仕様だったが、ライギョ釣りでおもいっきりのアワセをかましまくっていたらその部分がメシメシに割れてしまって鉛玉突っ込んでエポキシでガッチリ固めてしまった。フッキングの際にバットエンドを突き立てる腹筋のあたりに丸くアザが残るぐらいの気合いを入れてアワセ食らわせないとライギョの堅い口にはハリはかからないのである。
宇宙旅行とライギョ ←過去に書いた文章
ということで、左手サミング仕様の怪魚ロッドをライギョロッドベースで作ってしまおうと考えたところである。対怪魚ということを考えると、アンバサダー6500番台はちょっと小さい。
アンバサダーはいろんなサイズをいじってだんだん分かってきたんだけど、大きさに比例してラインキャパが増えるだけでなく、狙う魚のサイズを想定して、全体の強度やドラグの適正値が想定されて設計されているようなのである。要するに極論すると10キロ近いようなドラグ値をかけることを想定している大物用のリールに、使いもしない1,2キロのドラグ値でスムーズにドラグが機能する必要性は無いっていうような話で、そのリールが使われるであろう状況を想定したドラグ値前後でスムーズにドラグが効くようにアンバサダーは設計されているようなんである。具体的にいえばドラグをぎゅっと締めて抵抗を感じ始めるあたりの数値がそのリールの得意なドラグ値になっていると感じている。
ドラグをガッチリしめるだけで微調整しないライギョ釣りなら、必要ならフレーム強度を高いのにあげて6500番台というのが妥当なんだろうけど、ドラグを調整して3〜5キロとかの高めのドラグ値でそこそこ走らせてファイトすることを想定すると、6500番ではドラグ値をそこまで上げるとドラグの挙動が安定しないし、3〜8号PEを想定するとラインキャパシティ的にも心細い。8号だと100mしか巻けないのでラインを出さないライギョ釣りなら問題ないとしても、走らせて取るなら倍は欲しいところ。
そうなってくると7000番台以上になってくるのだが、7000Cを使ってみると、ドラグは3キロ以上ぐらいでスムーズに効くし、フレームもフットが含まれたプレートをベースに作り上げられていてとても丈夫そう。おそらく7000番から上がアンバサダーでは「対大物」仕様の設計なのだと思われる。6500番台は5000番台とかと基本的な作りは一緒で6500番台と7000番台が設計思想の分かれ目になっていると、ABU好きの識者の方々もいうております。
アンバサダー ←過去に書いた文章となると、対怪魚用にはアンバサダーなら7000番台でとなるのだが、7000番台には一つ欠点がある。重いのである。過去のABUの記事のところの計量結果を見ていただければ一目瞭然だがクソ重い。普通に右手サミングのロッドでは、餌のぶっ込みならともかくルアーキャスティングはしんどい重さ。まあ、PENN975とかカルカッタとか他社で6500番台より大きいサイズの軽いベイトリールをという選択肢もあるが、それにせよもっと大きくなっていけば結局右手サミングでは厳しくなってくるので、どこかで引き手である左手側でサミングする方式を採用するという線引きをしなければならなくなる。左手側でサミングする方法だと、あまりリールを振り回さなくて良いので格段に重いベイトリールを使ったキャスティングが楽になる。
なので、カヤックシーバスタックルで練習しつつ、出番のあるライギョロッドクラスで一発左手サミング仕様のロッドを作ってしまってどんな塩梅か試してみようと考えたところである。
ライギョロッドを怪魚ロッドとして使う場合、強度的には問題ないものの携帯性という点で問題がある。グリップジョイントで7fとかの竿は携行時でも5〜6fぐらいの長さにはなってしまい不便である。ロッドケースに入れて運ぶ際に自分の身長を超えるとあちこちぶつけたりして極めて不愉快なお荷物になる。持ち運んでいる際にロッドケースの上端が自分の目線より下にあるとぶつけるのを避けやすく、格段に持ち運びのストレスが減る。具体的な数字を出すとだいたい150センチまでで、チャーマス北村氏が遠征用のロッドはセンター2ピースで9Fが取り回しが楽と書いていたのとも9Fの半分4.5fが135センチだと考えるとだいたい感覚的にあっているように思う。センター2ピース10fだと竿自体は携行時5fで150センチだがケースはもう少し長くなるので邪魔くさくなり始める。
ということで、携行性を考えるとマスキーロッドベースで最初っから2ピースのブランクスで作ってしまうというのも考えたが、メーカーから怪魚ロッドとして出ている竿にバレーヒルの現行版ガンガン70のグリップジョイント仕様というのを見つけた。あんまり曲がらないバット部分にジョイントを持ってきて全体の仕舞寸法を短くしているのだけど、それを見て、昔同じようなコンセプトのスタージョン(チョウザメ)ロッドをヨーロッパの釣りの本で見かけて格好いいと思った記憶がよみがえったので、この方式でいこうと思って、ネタ元に敬意を払って昔のガンガン70を中古で入手した。現行の怪魚仕様ガンガン70を買ってグリップだけ改造しても良かったが、自分の中でどうしても今時の竿って「軽く作っている=薄くて弱い」という疑念が拭えないので、あえて古いのを探してみた。
まずはティップ側が4.5fぐらいになる位置でノコギリでぶった切る。
ルアーでのライギョ釣りの創世記を飾った銘竿をゴリゴリ切っちまうのはやや心理的抵抗があったが仕方あるまいて。
切ってて明らかにブランクスの厚さが厚くて、普通のロッド切るより時間がかかるし抵抗がある。
断面図を見れば明らかだが分厚い。普通の丈夫なソルトウォーター用の竿より厚いぐらいで、この竿の厚さといったら惚れ惚れしちゃう。男がブットいPEラインでドラグガッチリ固めてフルパワーでフッキングかますためには、このくらいの厚さが欲しい。天晴れな分厚さ加減。
天晴れなんだけど、ちょっと問題である。分厚いので中心の空洞の直径が小さいというのもあって、インロー継ぎにする時に中に突っ込むジョイント用の心棒があまり太くできない。その中でどう強度を確保するべきかというのが悩ましい。
もちろん心棒が上下のブランクスより弱ければ心棒から折れる。普通にインロー継ぎの心棒として使われるソリッドのカーボン素材で間に合うか不安。ソリッドグラスなら同じ太さでも折れにくさ的には上だと思うが、ネット情報で調べてみると心棒が折れなくてもブランクスより心棒が曲がると、ブランクスが曲がりに耐えられず破損する危険性があるらしい。
これは、ステンレス棒とか金属しか無いなと思うのだが、金属を研磨して必要な太さに加工する技術はさすがに持っていない。ので、普通に中空のブランクスにステンレス棒を突っ込んで強化したモノを心棒として用意する方針とした。
とりあえず、折れたオフショアスティックのブランクスがちょうど良い太さの部分があったので使う。電動ドライバーの回転を利用して必要な太さにサンドペーパーで削って太さを調整していく。
あまり削りすぎても強度が落ちそうなので、適当なところで上下のブランクスをさらに少し切って、インロー継ぎでちょっと隙間のできるぐらいに調整。曲がるので隙間をつくるのは必須。まあステンレス心棒はあんまり曲がらないし、もともとライギョロッドのバット部分自体曲がりは少ないが、曲げまッセという気合いの分隙間を空けたというところか。
切り口はドリルにヤスリアタッチメントを付けたので綺麗にしておく。
ステンレス心棒は、金属部品メーカーでネットで小売り可となっているサイトを探して、必要な長さに切ってもらって送付してもらった。ステンレス棒自体は25センチで千円しないが送料が千円からかかった。
先の方の穴がが7mmだったので直径7mmのものを買って、元の方の隙間はスレッドで調整したうえでエポキシでガッチリ隙間を充填しつつ固めた。
心棒にステンレスという堅い素材を使ったので、ブランクスが曲がったときに心棒が勝ちすぎてブランクスを破損してしまわないように、ブランクスをスレッドで補強する。スレッドはナイロンの太いの。ガイドラッピング用のスレッドってグデブロッド社とかのがルアーロッド用にはよく使われているが、今回強度重視で磯竿とかに使われているイカリ印のわりと男らしい太さのを使った。これでも同社の竿補修糸としては「極細」というクラスらしいが。
昔、石垣島のフィッシャーマンのお店で、店番しつつ店員さんがロッドラッピングしてて、回転速度調整が足踏み式で可能な「ロッド回し」でキュイーンとロッド回しつつ素早くラッピングスレッドを巻き付けているのを見て、直接手巻きでグリグリと竿回している身分としては、プロの道具は良いなあとあこがれていたのだが、割と近いモノがハンドドリル(最近はインパクトドライバーというのか?)で実現可能である。竿の片側をロッド回しの台に乗っけてもう片側のはしにロッドに突っ込める棒をはさんだハンドドリルを接続してやると、ハンドドリルはトリガーの引き具合で回転数の調整ができるので、ラインにテンションかける指が摩擦で火傷しそうなぐらいの早さでクルクルッと簡単にスレッドを巻くことができる(スレッド巻く位置が回転させているブランクスの端から手が届く位置にある必要はあるが)。
最初ちょっと隙間が空いたりしたが慣れると綺麗に巻ける。
スレッド巻いたら、エポキシでコーティング。漆塗りとかの場合、薄く何回も塗っていくようだが、おそらく一気に厚く塗ると液が垂れるからとか揮発する成分を飛ばすためにそうしているのであって、低速でロッドを回して均一にエポキシが固まるようにしてやれば、むしろエポキシは重ねると剥離したりするので一発で塗った方が良いと思っている。エポキシは2液の化学反応で固化していくので揮発とか空気との接触もあまり関係無い。10番のフライロッドはKさんが組んだ竿なんだが非常に綺麗に仕上がっているのでロッドのスレッドにエポキシかけるとき重ね塗りしているか聞いた時にも、「そんなの関東一発塗りでOK!」と言ってた。関東の釣り人は宴会締めるときの「関東一本締め」からだと思うが、「関東一本」系のゴロは好きで、オフショアのフライリーダーをテーパーリーダーじゃなくて40ポンドのモノフィラとかにするのも「関東一本取り」とか言ってた。フライが重いと問題無くターンする。
というわけで、これは回転といってもハンドドリルで高速回転させ続けるわけにはいかないので、それ用の低速にギアが調整された「ロッド回し」を使う。エポキシは1日でだいたい表面は触って大丈夫なくらい固化する。
エポキシ混ぜるのにもハンドドリル大活躍。エポキシは2液をよく混ぜないと硬化不良を起こしてベタベタしてしまったりする。手でやるときはスキヤキの時の卵かき混ぜるように割り箸でカチャカチャやるのだが、割り箸を先を平に削ってハンドドリルに装着して回転させてかき混ぜるとかなりの速度で混合できる。混ぜた後は気泡が抜けるようにドライヤーで少し暖めて10分ぐらいしてから使う。
グリップの加工は、まず、リールシート位置を他の左手サミング仕様のロッドとの比較と、自分で竿握って確かめてみて決める。真ん中が加工前のグリップ。
コルクはバリバリとニッパーで剥いでいく。
リールシートも再利用したいぐらいだが、エポキシで接着してあるのでノコギリで斜めに切り込みながらバキバキと剥がすしかない。
剥がしてリールシートの位置を確認して、リールシートの下に三カ所ぐらいスペーサーテープを巻く位置を決める。今回隙間が大きかったのでコルクテープも使った。リールシートはエポキシでガッチリ固定。
リールシート接着した段階で、一度接着前のインロー継ぎ部分も組んでみて5キロ負荷を試してみたが、問題無いようだったので次の作業に進む。
次はグリップ加工で一番手間のかかる、コルクの穴あけと接着作業。この作業が手間なので、作業後、テストしたら折れましたトホホこれまでの苦労が・・・という被害を軽減するために、その前にテストしたのである。
まずはグリップの長さを想定して横にコルク並べて必要なコルクリングの数を決定する。コルクは今回買ったのはB+とかいうグレードだったけど結構良い値段する。Aグレードとかはワインの栓になるそうで、まあ竿のグリップなんぞ握れりゃ上等で、市販の結構高級な竿のグリップのコルクも穴を埋めた跡とかが目だつようなグレード使っていることも多く、コルクグリップはコストがかかるというのがみてとれる。最近のグリップの間がブランクスむき出しになっているロッドのデザインはモロにコルクのコストを削っているんだなと竿組んだことある人間は思ってしまう。
左手サミングで、腹にグリップエンドを突き刺すようにしてフォアグリップを握ることを想定すると、けっこうフォアグリップは長くせざるを得ず元あったグリップジョイントの部分の上のほうまでグリップになる。
コルクリングは買った状態では小さな穴が空いているだけなので、この穴を削ってブランクスの太さにあわせていく。人力でこれを棒状のヤスリでシャコシャコ削るのは楽しくも手間のかかる作業で時間がかかるのでGWの竿の準備を正月明けからしていたところである。
これが、ハンドドリル使うとアッちゅう間に終わってしまう。三角錐の形のヤスリ一つでカタがつく。
まず上からドリドリと穴を広げて、
左手で持って、反対側から貫通させて、あとは穴の側面に回転するヤスリを押しつけて、そのままお好きな直径に穴を拡張。
10個でも20個でも小1時間もあれば加工できる。メチャクチャ作業効率が上がった。ちょっと物足りないぐらいだ。
エポキシで上から重しをかけながら接着。エポキシ垂れてリールシートのリングが固着したりすると取り返しがつかなくなるので、テープなどでマスキングしておく。
エポキシ固まったら、サンドペーパーで凸凹をならす。
お次にインロー継ぎの部分の組み上げだが、心棒の加工がキモでその部分はすでに終わっているので、基本的にはエポキシで接着するだけで、あとは補強でスレッド巻いたりぐらい。
上がバット部分で下がステンレス入り心棒。
心棒とバット部分を接着してバットのブランクスをスレッドで補強。
バット部分の下部のジョイントをエポキシでグリップに接着。
接着したバットのかなり上の方までコルクをはめていく。最後の部分は円錐形に仕上げる必要があるので、3個コルクリングを連結したモノを用意して、大まかにカッターで削ってから、ドリルのヤスリを突っこんでコルクを回転させて成形した。
割と上手くいって、コルクの最後のワンピースをエポキシで接着してチョットその上をスレッドで補強してロッド回しで回している。
あとは、エポキシが固まったら、サンドペーパーをかけてコルク表面をならして完成である。
(15.3.15午後時点)
あわせるリールの方も手に入れた。7001Cが欲しかったが、現行モデルは「i」となっていて、「i」はインスタントアンチリバースのようで、アンチリバース入れるためにハンドル軸をちょっと伸ばしたような、どうにも許せないデザインなので、中古で探したけど7001Cって元々無いのか弾数少ないのかみあたらず。でも、赤い7001が手に入ったので、軽いフロッグ投げるにはボールベアリングは欲しいのでベアリングだけブロンズベアリングと交換してこいつで行くことにした。よろしくたのんまっセ。
(15.3.15)
コルクを削ってパンパカパーン!完成で〜す!
つなぐとこんな感じ。まだ新しいコルクが馴染んで無いのはいたしかたない。
ついでに、70から100センチまでの目盛りも書き込みました。メーターオーバー来ても撮影大丈夫。
早く、どんなもんか試してみたい。
(15.3.29)