暑い国から来たナマズーCatfish from Africaー

(香港遠征:2013.9.18〜9.21)  

 

 波紋

 

 アフリカのサバンナに乾期が訪れ、湖は干上がりかけ、わずかに残ったドロドロの水たまりには、実は皮膚があまり乾燥に強くなく、昼間は水中で過ごし日差しのない夜に陸に上がって草を食うというカバたちが、押し合いへし合いしている。

 なんていう映像は動物番組などで見たことある人が多いのではなかろうか。

 でも、ナマズバカなら、そのシーンのカバの足元で、これまた押し合いへし合いしている大量のナマズたちがいることに気がつくだろう。乾期が迫り泥沼状態で水よりナマズとカバのほうが多いような水中には、ほとんど酸素が溶けていないだろうし、排泄物由来で相当水質も悪化しているはずである。肺魚なら泥の中でマユを作って夏眠してしまうところだが、サバンナのナマズは最後に残った泥水の中で次の雨季までしのぎきる。そのために、空気呼吸できる能力をもち、汚れた水にもかなり強く、餌は何でも食べて、餌のある時に早く成長し、餌のない時期にも長期間耐えることができる。実際には干上がって死ぬのもいるんだろうけど、ちょっとでも水が残れば生き残る。

 という特徴は、雨季乾季のある自然を生き抜くためにサバンナのナマズたちが進化の過程で得た能力だと思うが、水の汚れに強く、酸欠にも強くて沢山同じ場所で飼育できて、かつ餌は何でも食べて良く育ち、ナマズなので白身で味も悪くないとくれば、養殖して食糧として生産するにも好適種であり、カバと一緒に泳いでいるのと全く同じ種かどうかは自信がないけどアフリカ産のヒレナマズ科(クラリアス科)の一種Clarias gariepinusはアフリカンクララと呼ばれ、アフリカ産の魚類としてはテラピア類とともに世界中の暖かい地域のあちこちで養殖がなされている。とりあえず、アフリカにこの仲間のナマズは1種類だけというわけではないのだが、今後、この種を指してアフリカンクララと書くことにしたい。

 ヒレナマズ科のナマズは、中国あたりの東アジアからアフリカにかけて分布するナマズの仲間で、特徴としては「ヒレナマズ」が示すように、背ビレと尻ビレが長く、細長い体の上下に長く連なるヒレがある形は、ちょっとライギョにも似ている。

 中国からベトナムあたりに元々分布している種Clarias fuscusは、日本でも石垣島に帰化しているらしくヒレナマズという和名がついている。日本での科名は昔はクラリアス科としている図鑑が多かったように思うが、最近ではこの種の和名からヒレナマズ科とされることが多いようだ。現地では食用魚として親しまれているらしいが、あんまりこの種は大きくならない。30センチ前後のイメージ。

 ヒレナマズ科のナマズのうち日本でもっとも馴染みのあるのは、東南アジア原産で、観賞魚としてアルビノやら3色模様のカラフルなのが売られているClarias batrachusで、商品名としてはアルビノクララ、マーブルクララと呼ばれている。バリ島釣行の際に、同居人とちょっと小じゃれたレストランで飯を食べたところ、テラスのテーブルの足元に池がしつらえてあって睡蓮が咲き誇る中、アルビノクララがあたりまえの顔して泳いでいて面白かった。狭い水槽内だとケンカしまくるイメージだが池で多めの個体を飼うとだいじょうぶなのか、コイと一緒に平和そうに泳いでいた。観賞魚フリークには、小さい時は可愛いけどすぐに4〜50センチにはなって口に入るサイズの魚は片っ端から食ってしまうようになり、もてあます魚として認識されている。正直、この種のイメージが強く、アフリカンクララももっと魚食性の強い魚だと思っていたが、ちょっと違っていたということはおいおい書いていきたい。

 アフリカのヒレナマズ科の仲間は、アフリカンクララの他に何種類もいるらしいのだが、その辺の詳しい図鑑等が見当たらず、当方も正確な情報を持っているわけではない。しかしながら、ナイルパーチ釣りにエジプト行った人の報告に150センチぐらいの明らかにヒレナマズ科であるナマズが出てきたり、アフリカ西部の市場に水揚げされていた、長さはメーターオーバーぐらいだけど黒くてト゛太くて迫力充分のナマズも写真で見たことがある。また、昔テレビでアフリカの魚の特集をやっていてヒレナマズ科の1種だと思うナマズが、数匹の群れで水面でバコバコと捕食音のような音を出しながら小魚を浅瀬に追い上げ狩りをするシーンが出てきて、「これポッパー使ったら捕食モードのスイッチ入れられるんじゃねえの?」と興奮させられたのを憶えている。アフリカのヒレナマズ類はナマズの世界ではヨーロッパオオナマズ、メコンオオナマズ、ピライーバなんかの影に隠れてやや人気薄だが、ナマズバカ的にはいつかは1戦交えねばならんターゲットであると認識して、釣りたい魚ベスト10の6位に入れていた。

 死ぬまでに釣りたい魚とつり場 

 だがしかし、アフリカは遠い。10年以上前に一度チケットおさえるところまでいったことがあるが、現地で水辺まで行って釣りするという話をしたら、通常観光客が打つような黄熱病の予防接種に加えて、破傷風やら聞いたことない病気のワクチンやらアホのように打っていけと言われて、アフリカに行くための休暇は取れそうだったけど、病院通いの時間が取れそうになくて断念した。今は病気の流行とかの問題はだいぶマシになっているのだろうか?

 そんなアフリカのナマズへのあこがれを抱えつつ、たまたま同居人と出かけた熱帯魚屋で、アフリカンクララと初めて遭遇した。東京郊外の巨大な熱帯魚屋で、下手な水族館よりマニアックな魚がいて面白かったりするので、飼うあてが無くても見ているだけでも楽しい場所である。大型魚コーナーの怪魚たちを端から眺めつつ移動していた足が止まった。120センチ水槽が手狭に感じる80センチぐらいの茶色いナマズ。2つの水槽に1匹づつ2匹いて値段は忘れたけど「アフリカンクララ」と書かれていた。たぶん養殖用に種苗生産されたものが観賞魚ルートにものったのだろう。確かにヒレの長い感じとかヒゲが前に伸びた感じとかは見慣れたアルビノクララに似ている。が、サイズがデカイので別物のような迫力とその割につぶらな瞳とヒゲの生えた大きな口がやはりナマズ独特の愛嬌というか魅力を発していた。よっぽど物欲しそうに見えたのだろうか、しばらく魅入っていたところ、店の兄ちゃんがテクテクと歩いてきて、水槽の前に立ち止まると、アフリカンクララはご機嫌な感じで体をくねらせながら浮いてきた。兄ちゃんは水槽の蓋の隙間から、待ち構えるアフリカンクララに餌をひとつまみ与えると、こちらを見てニコッと笑いかけて戻っていった。説明やら一言もなかったが「良いナマズでしょ?」という売り込みのもっとも良い手だったことは明白で、すっかり手から餌を食うぐらいにベタ慣れしたナマズに心を奪われかけつつも、借家暮らしではこんな大型ナマズを飼う水槽は維持できないのは明白だったので、「マニア心をくすぐる商売上手な店員め!」と心の中で罵りつつ後ろ髪引かれる思いでその場を後にした。もう5年以上前の話だが、その後も憧れは心にくすぶりつつもアフリカンクララを手にする機会は無いままに月日は過ぎていった。

 ところが、今年ゴールデンウィーク頃にもらった1本のメールで事態は転がり始める。

 香港がある中国の深セン市在住の港太一さんという釣り人から、「たまたま目にした「南方大口ナマズ」の情報を知りたくて、ネットで検索していたら、あなたのサイトの「死ぬまでに釣りたい魚と釣り場」がヒットした、このナマズの情報を何か持っていれば教えて欲しい。また、香港には養殖用由来と思われるアフリカンクララが川などにいて、自分はこのナマズをルアーで狙って釣っている。」という内容だった。

 アフリカにいつか行かねば釣れないと思っていたターゲットが、お隣の国までやってきてくれた。メールを読み終わった時点で香港釣行は決意していた。異様に興奮したのを憶えている。

 釣りたいと書いておけば、実際に釣ることに近づいていくと思っていたが、それは自分の内面的な部分で書くことによって違いが生じるということを考えていたが、こういう形でターゲットとの距離が詰まるとはちょっと予想外だった。これも言霊の一種だろうか。

 残念ながらこれも魅力的なナマズ「ナンポウオオクチナマズ」については、ほとんど情報持ち合わせていなかったので、港さんにはその旨伝えつつ、「香港行きます。可能なら情報ください。一緒に釣りに行ければ最高に嬉しいです。」とド直球の遠慮無しのお願いをしてみた。断られても単身行くつもりだったが、快諾いただいた。今考えると自分の技量では一人で乗り込んでも、短期間ではどうにもならなかったと思う。この旅はスタートから幸運だったと思う。

 時期的には、夏を中心にした雨季には魚が散ってしまうようで釣りにくく、かつ、亜熱帯で暖かいとはいえ冬には気温とともに活性が下がるそうで、春か秋が良いとのこと。6月にフロリダ遠征を控えていたので、秋にしましょうということで、9月18日から22日の予定で香港遠征釣行とあいなった。

 

<9月18日:1日目> 

 今年の夏はクソ暑く、かつ昨年から引き続き仕事が商売繁盛で結構バテバテだったが、香港遠征を目の前のニンジンに何とか夏を乗り切って秋風吹く9月18日に出発。初日夕まずめから釣りしたかったので、朝早くから起きて電車で羽田へ。前夜遅くまで準備しているのを見て同居人に「アンタが旅行直前に準備してるなんて珍しい。」と言われてしまった。通常なら1月前には1回全部パッキングして不足分を買い足したりして、出発前日は早くから床につくけど結局興奮して眠れずに、忘れ物がないか再チェックしたりという感じだが、今回前日も休みとる予定が狂って、ちょっとドタバタした。とはいえ、いつも遠征先でバッキングライン巻き始めるような人間(Oニーサン反省するように)と比べれば用意周到おさおさ抜かりないつもりではある。

 チェックイン時に、台風19号がちょっと気にかかる位置にいたので、ANAの窓口のオネーサンにどんな塩梅か聞いてみたが、やはり未来のことは予想できないという当たり前の結果で、台風で飛ばなかったら香港空港の窓口にご相談ください。とのことであった。まあ、まだ遠いしだいじょうぶだろうとこの時点では楽観視していた。

 飛行機はガラ空きで、連休がらみなのにちょっと心配なぐらい。機内食食べて、「スタートレック」シリーズの最新作を見ていたら眠くなってきたので、面白かったけど続きは帰りに見ることにして寝る。前夜寝不足もあってか移動中良い感じに寝て過ごせた。

 客が少なかったのも影響しているのか、予定より早く香港空港到着。入国審査も荷物受け取りもスムーズに終わり、これは港さんまだ待ち合わせ場所の到着出口付近に来てないかもという予想どおりで、しばらくして「もう着いてたんですか?」とベイトロッド1セット、リールもつけて髪留めかなんかで束ねて、ウエストポーチいっちょという「これから釣りに行きます。」というわかりやすい格好で港さん登場。こちらもロッドケース抱えて見まごうことなく遠征釣り師な格好。

 ちなみに港さんマンガ「稻中卓球部」のTシャツ着てて、後で聞いたら「日本人ってわかりやすいように着てきました。」とのこと、気遣いも嬉しいが、同じ世代で同じマンガ読んでたとわかってちょっと嬉しい。

 空港から、バスに乗って途中で降りてタクシーでまずホテルへ。

 道中、最近の状況や、ルアーの食わせ方など聞いたりと釣り談議に花を咲かす。雨季が長引いて今年はかんばしくないと聞いていたのだが、状況はここに来て良くなっているらしく、週末のチェック時点でいくつかあるポイントのうち「女囚川」ポイントにはかなりの数のアフリカンクララが確認できたそうである。

 「今日、もう決めちゃってください。」とのお言葉。オラわくわくしてきたゾ。

 クララのルアーへのバイトの仕方は、たぶん思っている以上に、魚食魚っぽくない控えめなモノで、流れがあるとラインに引っ張られた分ルアーが吸い込まれずにバイトしてもフッキングしないことも多いとか。ポーズは多めにとって、ポーズ時ラインを緩めて送り込んでやるぐらいの気持ちで良いとのこと。まあ、細かいことは現場で説明しますと言うことで、ホテルであたふたと荷を解いて電車でGO。

 香港は元イギリス領の経済特区で半島と島でできていて、深セン市との間にはイミギュレーション(入区管理局?)があって、人と物の流れは制限されている。観光都市香港は治安も良く外国人にはすごしやすいし、朝まずめに釣りがしたければ、基本役所であるイミグレが朝空く時間を待っていては間に合わず、香港に宿を取る必要があるのだが、一つ難点が香港の宿は高いということである。土地が少ないからか割高なのと、ビジネスホテル的なグレードの宿が無く、バックパッカーが利用するような極端な安宿か、お金持ちが利用するような良いホテルか両極端だった。今回、荷物を置いて出かけるので安宿はまずいので割と良いホテルに滞在した。ちょっと釣りに行ったドロドロの格好でロビーとかうろつくのはまずい感じに綺麗なホテルで、当方が取ったのは100万ドルの夜景が見える海側ではなくて山側に面した部屋で、何とか高級リゾートホテル的な料金ではなく、ちょっと高めのビジネスホテルぐらいの金額の部屋を確保した。でもなかなかに綺麗で快適な宿だった。イミグレ通過は人が多くて時間がかかることも多いらしく多少高くても香港側の宿にしたのは正解だったようだ。

 電車の乗り方、タクシーで釣り場近くの施設へ移動する際の、スマホで施設名の写った玄関の写真を見せて運ちゃんに頼む方法を教えてもらい、スマホも1台お借りする。駅から歩いても良い距離だが行きはいつも急いでタクシーで行くというのは納得の釣り人心理。

 川までの小道を鳥など見ながら移動。なかなか観光客は来ないようなローカルな場所でそれだけでかなりテンション上がる。異国の地にやってきましたという実感が湧く。

 アフリカンクララ釣りの条件的にはいろんな要素があるようだけど、とりあえず夕まずめ朝まずめはどんな釣りでも一緒で良いらしい。

 現場の河原の斜面を降りて、魚を探し始める。4時頃到着してそろそろ良い時間に突入するようだ。

港さん

 港さんお勧めは、シュガーペンシル。立て浮きのペンシルベイト。なるべくアフリカンクララが沢山いるところを見つけて、首振らせて止めてというのを基本にしている。魚が沢山いる場所は、空気吸いに上がってくる個体やヒレ出して泳いでいるのを目安に探っていく。見えている個体が必ずしも食ってくると言うわけではなく、むしろ見えていても食ってこない場合がほとんどで、個体差なのか活性が上がるときがあるのか、後者っぽいがよく分からなかった。

 魚はテラピアやコイなどもいるが、本命アフリカンクララも結構いる。丸いシッポが見えるときや、息を吸いに顔を出すとそこそこ遠くても他の魚とは区別が付く。当方も魚が見えるところにシュガペンを投げていく。1m近くありそうな個体が結構いるので興奮する。タックルは竿がブローショット7fでシーバスボート用、リールはスピンフィッシャー4400SS、ラインはファイヤーライン2号にショックリーダーフロロの7号。

 魚は見えるし、何度かシュボッと吸い込むようなあたりがあったがフッキングまで至らず。港さん曰く「魚の数は多くて良い状況だけど、活性がそれほど高くないのかルアーへの出方はあまり良くない。これから活性が高くなる時間がどこかで来ると思う。」とのことだった。

 ナマズだったら、夜ノイジー投げれば良いんじゃないの?とか昼でもそんなにいるのなら、バイブレーションやらスピナベやらワームやら投げたら、ペンシルより簡単じゃないの?という疑問は、当然ちょっと日本のナマズを釣ったことある人間なら考えるだろう。

 しかし、港さんが結構しつこく試した結果、夜ノイジー投げてもまず釣れない。バイブレーションなどの引き物は釣れることもあるけど、魚の多いところを通すとアフリカンクララはもちろんテラピアも含めて魚の頭や体に当たって、パニック状態で逃げられて場荒れしてしまうことも多い。ということでペンシルが一番釣りやすいというのが今のところの御当地釣法なのである。

 ナマズに夜ノイジーが鉄板ではないのは、当方も利根川水系のアメリカナマズで身に染みて分かっている。ナマズってのは完全な植物食のプレコの類から、高速遊泳する魚食魚のピライーバまで、多種多様な種がいてそれらはそれぞれ違うとともに、同じ種でも生息環境によって食性が偏ったり変化したりするのはむしろ当たり前で、ナマズ=ノイジーなんていう単純な図式は成り立たないのである。

 とはいえ、港さんもまだ、パターンがわかりきるほどのデータがあるわけでなく試行錯誤の途中ということで、いろんなルアーを投げてみたらいいですよ、とのことだったので、いまいちペンシルへの出方が悪かったこともあり、フローティングのバイブレーションやスプーンも試してみた。確かにルアー当たって魚が逃げ惑うような動きが見て取れてあんまりよろしくなさそう。

 でも、ちょっと移動してしばらくペンシルを投げて、反応無いのでなんとなくスプーンに換えてみた。忠さんバイトの13g緑銀。ルアーのあるあたりでゴボッと大きな魚が動いた感じに泡とかが浮いてきて、その後ルアーを追っているような波が見えて、手元にガツンときた。

 あわせたかどうだか憶えてないが、たぶんいつもどおりビックリアワセしていたはず。バシャバシャと首を振っている。割と岸近くにはすぐ寄ってきて、岸近くでもバシャバシャやっている。ダッシュはそれほどでもなくてシーバスロッドで十分対応できるが、重量感のある首振りで結構ドキドキする。ラインがヒレにまわっていてスレがかりかと思ってしまったが、暴れたらラインがヒレから外れてハリは口にちゃんとかかっていた。

ファイト

 取り込みできるのはハシゴがある場所なので、港さんに取り込んでもらうべく横移動していく。それほど引きまくる魚ではないので寄せてくるのは簡単だけど、寄っても全然弱らずグネグネと暴れ回るので取り込みは一苦労らしい。なるべくゆっくり疲れさせた方が良いとのことだった。

 ハリがかりが口の横のかかりやすいところにかかっているのは良いんだけど、この位置にかかると口を閉じたままなのでフィッシュグリップがかけにくく、ちょっと時間をかけて何度かトライしてもらい口をこじ開けてキャッチ。

 初日に釣れたがな。

 ちょっと水面まで高さがあるので、70くらいかなと思っていたが、港さんがハシゴを登ってくるにつれ魚がでかく見えてくる。割と良いサイズである。

 草むらの上にデロンと下ろして、当方のボガグリップをかけて写真撮ってサイズを測る。90センチちょうど。充分デカい。

初アフリカンクララ顔

 ぶら下げて、抱え上げて、しばし撮影会状態。

ぶら下げて90は長い

  重い。イイ重さ。たまらん充実感。しかし空気呼吸できるとはいえあんまり長いこと写真撮ってるわけにもいかないので、ハシゴを下りてリリース。

リリース

 ちょっと、この嬉しさはどうなのよという感じと、ホッとした感じが入り交じる。

 案内人の港さんも、肩の荷が下りたと思うし、我がことのように喜んでくれた。ガッツリ握手。

 たぶん、港さんが思っていた以上に、当方にとって釣りたい魚だったし、もの凄く感謝しているということが、この顛末記の冒頭のナガーイうんちく部分であらためていくらかでも伝われば良いなと思っている。ほんとにありがとうございます。あらためて。何度でも感謝。

 

 まだ良い時間でしょうということで続ける。ひょっとしてスプーンが当たりかと思って投げ続けるが、やはり魚にあたって逃げられるのが多く、期待に反して今一。

 

 魚の水面での反応自体は良い感じなので、シュガペンにチェンジして期待を込めて投げ続ける。

 暗くなって、やや下流に移動して今度は港さんにヒット。ルアーは中国製ペンシル。結構でかいのが暴れている。ランディングは暗いので慣れている港さんがするということで、ハシゴまできてロッドを受け取ったが、直後にフックアウト。寄ってきた魚バラさんように竿持っているだけの簡単なお仕事です的なことすらできずに申し訳ない。が、フックちょっと伸ばされてました、ということで気にしないでとのお言葉。

 何度かバイトはあったがフッキングせず。今日は吸い込みが結構弱いとのこと。良い時間もそろそろ終了で反応薄くなってきたけど、最後にY字ポイントという支流との合流を攻めて終了しようとのこと。

 

 先攻する港さん何発かバイトあったとのことで、そちらに寄っていく。良い音させて当方のシュガペンにもバイト。がかからず。でもまだ出そうなので投げ続ける。も一発来た。持って行かれるのを待ってフッキング。バタバタと暴れているがすぐに寄ってきた。ハシゴまで連れていこうとするが、結構軽くて明らかにアフリカンクララじゃない感じ。港さんはハロワン(ライギョの仲間で東南アジア原産、タイではプラーチョン)だろうとのこと、引っこ抜く。43センチ。お腹がクッキリ白い。初物でこれも嬉しい獲物。

ハロワン

 この一匹で、初日は終了とした。初日から結果が出て言うこと無しである。

 

 テクテクと駅まで散歩気分を楽しみ、駅周辺の港さん行きつけらしい飯屋に入る。甘ーいミルクティーで乾杯。

 きしめん風の焼きそばと、生け簀があって、香港では堤防とかからの餌釣りでは定番の獲物であるアイゴがいたので、蒸し物にしてもらった。美味かった。もちろんひとくさりアイゴネタをかましたりして、釣り談議も途中から合流したMaboさんも加えて盛り上がるのであった。

アイゴ

 当方は、その後ホテルに帰ったが、港さん、Maboさんは、さらにルーサーさんを加えて3人で、その後、夜のパシフィックターポン釣りに突入。徹夜で釣って朝まずめアフリカンクララ狙いもやってしまうという恐ろしい釣りを展開していた。皆キッチリ釣って、港さんからは今まさにベストシーズンという宣言が出されるに至った。自分が行って「昨日まで釣れてたんだけど」なんてのはしょっちゅうだが、自分が行ってまさにベストシーズン突入というのは、ちょっと記憶にない。いやはや今回はツイているようである。

 ホテルに戻って、風呂に入って、備え付けのタオル地のガウンをまとい。なんか金持ちがブランデー回してる雰囲気で水飲んでくつろいでみた。

くつろぎのタオルガウン

 ちゅうても、ぶっちゃけ機嫌が良いので、小ネタ仕込むためにわざわざカメラのタイマーセットして、急いでポーズとってる、客観的に見るとアホな40過ぎのオッサンなわけだが、まあ今夜は許して欲しい。

 結構良いホテルなのに、商人宿よろしく風呂で洗濯してたりもするが、見られるとちょっと恥ずかしい気がしたので、次の日掃除いりませんボタンを押しっぱなしにして出かけたら、後でフロントから「ボタン押しっぱだったのでベットメイクができなかった。明日からは掃除させるように!」との指導を受けてしまった。その辺も許して欲しいところだ。

洗濯物 

 良い気分でちょっとマンガ読んで寝ようと「ベクター・ケースファイル」を読み始める。

 ケン一が旅の友とする本の条件に「面白すぎないこと」というのをあげていたと思うが、このマンガは面白すぎた、旅の友としては失格級の面白さ。今回、釣り場にはヒアリという、蜂のように産卵管が針になっていて刺すアリが帰化していると聞いていて、いろんな虫が起こす問題を主人公達が解決するというこの作品にアリ対策が出ていればと思ってのチョイスだった。日本で問題になっているアルゼンチンアリという帰化種のケースが出てきてちょっとは参考になったかもだが、止まらなくなって4巻から10巻まで読んで気付けば深夜1時過ぎだった。ありきたりな「昆虫うんちく」にとどまらず、飼育や採集の経験も豊富にありそうな作者が書くいかにもマンガらしいフィクションはそれでもどこかにリアリティーを感じさせてくれた。ヒアリ、アルゼンチンアリなど世界的に移入が問題になっているアリの多くは、群れに女王が複数いるアリで出発前にいろいろ調べていたが、書き始めるとそれだけで半日仕事になりそうなぐらい面白いので興味のある人はウィキったりしてみて欲しい。

 結果も出たし、2日目は余裕こいて朝まずめは無しで午前中寝てすごすつもりで寝た。

 

 

<19日:2日目>

 前夜、遅くまでマンガ読みふけってしまったが、興奮状態にあるためか6時過ぎには目が醒めて、二度寝しようとウダウダしていたが、寝付けず起きてしまった。今日も良い天気。

 朝まづめには間に合わないが、夕まづめにはまだ早すぎる。適当に旅先の暇つぶしの定番である散歩でもしよか、と8時頃フラフラと出かける。

 香港に釣りに行く、と職場のS先輩に話したら、「香港でオイカワ釣ってこい」と言われたのを出かける前に思い出す。何でも香港には2種類のオイカワがいて、日本のオイカワとは微妙に顔が違うらしい。自分は香港までナマズ釣りに行っておいてどの口が言う状態なんだが、香港のオイカワ事情に詳しい魚マニアってのもなかなかに追いついていけないマニアックさだと思う。当方など、魚マニアとしては「香も焚かずへもひらず」という感じの凡庸な存在だと、もっと力一杯突っ走ってもまだまだ大丈夫だと、思わされる程度に我が職場には深い底の方に棲んでいる魚オタク達が存在する。楽しい職場だ。自分が特別でも何でもない凡庸な人間だと思い知らされる軽い失望感は、裏腹に自分は皆とそんなに変わらない真っ当な人間で仲間だって沢山いる、という暖かな安心感を孕んでいる。

窓から川が見える

 というわけで、ちょっとホンコンオイカワ探したろかと、窓から見えてる滝のある山間を流れる良い感じの川を目指して、3.3mの延べ竿と練り餌の粉含め小物釣りセットをリュックに入れて、トレーニングジムを通って、プールサイドを抜けて、さてホテル裏の道に出ようとしたら、ドアに南京錠がかかっていて出られない。ホテルの人に「釣りに行くから鍵を開けてくれ」というのを説明するのは、たとえ上手く英語がしゃべれても「パードン(ゴメン、お前なに言ってンだ)?」と言われてしまいそうなので、そもそも英語不如意でもありあきらめて、駅の方から回り込んだら行けるやろと、適当に歩き始めた。まあ、しょせん暇つぶしである。という割には、結構山道登りかけたり小1時間ほど苦労したが、結局、ホテルの裏にはたどり着けなかった。明日反対側の道からトライしてみようと、疲れないうちに駅のパン屋で昼飯買って撤収。

 ディスカバリーチャンネルで「リバーモンスター」ヨーロッパオオナマズ編を見たりして、昼飯食って昼寝して、ちょっと早めの3時頃から昨日と同じポイントでスタート。電車乗ってタクシー乗ってちょっと歩いてという道順もちゃんと憶えてて迷わず行けた。

 ちょっと早めにでたのは、ルアーで狙えるような魚が上ずってくる状態になるまえに、餌を使って底を狙えば釣れるんじゃないかというのを試したかったからである。

 タックルは餌用にとアメリカナマズ釣りに使っていたベイトタックルを持ってきていた。クリックブレーキ使ってブッコミできるので餌釣りしかしないのならベイトタックルの出番かなと思っていたけど、とりあえずルアーと兼用でそのままスピニングタックルで行く。スピニングリールにはクリックブレーキついてないので、竿を川に引きずり込まれないように、ドラグユルユルにしておいて、ドラグがチリチリ逆転しだしてからドラグ締めてフッキングというカザフスタンのヨーロッパオオナマズ釣りで憶えた方式で行く。ナツメ8号に石鯛バリ16号のブッコミ仕掛け。

 ここで問題は「餌」をなににするかですよ。

 「餌釣りなんて適当に本物の餌をハリにかけてブチこんどきゃ釣れるんだから、ルアーやフライより簡単。」なんて思っている釣り人は、モノの分かってない素人であると失礼ながら言わせてもらう。

 ちょっと想像してもらえば分かると思うが、例えば今時のシステマチックに技術体系が構築された、磯のメジナ釣りやら、堤防の黒鯛釣りやらにおいて、素人が適当に餌をハリにかけてぶち込んだところで、ろくな釣果にならないのは目に見えている。

 アメリカナマズなんてコイ釣りの外道でナンボでも釣れる。利根川水系どこにでもいる。てな与太話をあちこちで目にしたが、いざ釣ろうとして餌つけて狙ってみると、当たり前のようにスカ食うわ、釣れても最初は小さいのしか釣れないわ、そこそこ良いサイズが狙えるようになるにはしつこく通って2、3年かかった(最近行けてないけど)。

 だからこそ、餌でナマズを狙う方法にはこだわりもあったのでアフリカンクララの餌釣りでの釣り方というのも探ってみたかった。

 でも同時に事前情報から、結構難しいという予想もしていた。

 ここでも素人さんは「そんなの普段アフリカンクララが食ってる餌を使えば良いだけでしょ?」と思うだろう。そうは問屋が卸さないからオーダー抱えて小売店が困っちゃうんである。

 香港でアフリカンクララが何を食って生きているのか、地元の港さんでもよく分かっていない。アフリカンクララを一所懸命狙って、一所懸命観察している港さんが、何食ってるのか分からなくて悩んでしまう状況のようである。

 ルアーで釣れるから魚食魚かというと、どうもそうではなさそうで、確かにテラピア始め餌になりそうな小魚は沢山いたけど、クララがそういう小魚を追い回しているシーンは見たことがないそうである。ルアーへの反応が必ずしも良くないのもメインの餌が小魚という可能性を否定する材料だと思う。

 じゃあ何を食べているのか、少なくとも食べているのを見たことがあるのは、潮が満ちてかん水した時の草と死んで浮いてたテラピアだそうである。あんまり激しくないモソモソとついばむような食い方だそうである。1m前後の魚が結構沢山いてそれを養うだけの草や死ぬテラピアがいるかというと、当方も港さんも首をかしげざるを得ない。港さんは餌を食っているシーンをあまり見ないということは、見えない水底で例えばタニシなどを食っているのではないかと考えているとのこと。

 地元の餌釣りの翁には、コイやテラピアは釣れているけど、アフリカンクララは釣れず。港さんが釣ると、リリースせずにくれとせがんでくるとのこと。簡単に釣れる餌があるなら翁もその餌を使うのだろうから、餌が難問なのは釣行以前のメールのやりとりで想像がついていた。

 なので、アフリカンクララの食性について、まずは基本的な文献なりの報告を調べてみようと考えた。今時のネットは便利である。あたりをつけて必要なら学会誌の閲覧とか、めんどくさいけどせねばならんのかなと思っていたが、ポロッとキューバに移入されたアフリカンクララの食性をはじめとした生態の報告がネットに落ちていた。

 キューバでも食糧として持ち込んだのが、養殖場から逃げて繁殖して、在来の生物への悪影響が懸念される状況にあるようである。

 同じ種でも環境が異なれば食性なども結構変わるので、香港のアフリカンクララが全く同じ食性だとは思わない方が良いが、おおいに参考にはなるはずである。

 読んでまず、サンプリングの方法が、延縄、刺し網、釣りとなってるのを見て、延縄や釣りで漁獲されるということは、普通に魚の切り身とかの準備しやすい餌で釣ることができる可能性を示していると考えられちょっと安心した。

 次に、食性のデータを見て驚いた。

 308匹の胃内容物を調べて、胃に餌が入っていたのが99匹しかいなかったのも何じゃそりゃだが、その99匹の胃から見つかった餌で一番多いのは「植物」55.6%というのは、もっと意外で何じゃそりゃだった。「植物」という何とも大雑把なくくりだが、まあ水草か岸辺の草なんだろう。東南アジアのアルビノクララの「動くモノにはとりあえず噛み付く」という魚食魚っぷりがイメージにあると、おなじような姿形で1mをこえるアフリカンクララが草食ってるとは想定できていなかった。

 2番目には貝類34.3%でタニシ説は良い線行ってるのかもしれない。香港の川にもジャンボタニシ(スクミリンゴガイ)のピンクの卵がハシゴに生み付けられているのを確認しているし、他の種類のタニシ(ジャンボタニシはタニシじゃないという気もする)やシジミやカラスガイの仲間もいてもおかしくない。

 3番目は魚類で15%ぐらいで、小魚も生きてるか死んでるか不明ながら食ってはいる様子。

 結構、植物質のものも食べる雑食性というのがアフリカンクララの食性のようである。

 

 でもって、最初に試したかった餌が「草」である。

草バリ仕掛け

 香港のアフリカンクララもキューバのデータのように草を食うと考えるなら、第一選択の餌は「草」で、どなたも納得いただけるだろう。誰だってそーする、おれもそーする。

 というわけで、理屈ではそうなんだろうと納得しつつも、それでもなんか半信半疑でぶち込んだ草バリ仕掛け。割と竿先がピクピク動くレベルの魚信はあったのである。

 でも、そういう魚信は、小物が餌を食いきれずに引きちぎろうと振り回しているか、コイのようなハフハフ吸い込むように餌を食う魚が、餌を飲み込まずにハフハフしている時の魚信だと思う。ので、しっかり食い込んで竿先がグーッと入ってドラグがチリチリ鳴き出すまで待っていたのだが、食い込まないケースばかりで、シビレ切らしてピクッと動いた瞬間にアワセ入れたりもしたが、フッキングには至らなかった。

 アフリカンクララかあるいはコイあたりがハフハフしていたのか、あるいは中国には草を食べるコイ科魚は結構いるのでそいつらがいたずらしていたのか、これまた移入種のプレコが囓ってたのか、水中の出来事は見えないので実際には謎のママである。

 

 あきらめて、ついでにガルプのクッサいワームもちょっと試してみたが、無反応。ガルプで良ければ地元香港の中国の釣り人もワームはよく使うそうなのでみんな使ってそうなもんであるが、そうなっていないということは釣れた実績があまりないのだろう。

 

 夕方、良い時間になって魚も上ずってきたのでスプーン投げてみる。昨日の13gよりチョイ軽めのバイト10gで底の根掛かりを避けるため浮かせ気味に引いていると、割とすぐにヒット。

 今回も元気にバタバタと首を振りまくり、たまにちょっとドラグを鳴らして走るのをエイエイッと寄せてきて、ハシゴのところまで連れていく。一人で上手くボガグリップで取り込む自信がなかったので、落としダモを使った。80センチ枠と充分デカく深い網なので、グネグネ暴れているのを網の上に誘導して、網をあげて魚を下ろして、割と上手くキャッチ成功。

 草の上に置いて写真撮ろうとするとグネグネとくねりながら歩き始めたので、慌ててボガをかけて捕捉して、おとなしくしてもらう。ヒレの感じの他にも歩き方とかもライギョに似たところがあって、90UPの個体はライギョマンとしては嬉しい感じのする迫力ボディーである。94センチ。

ネットイン94バイト10g

 

 ライギョ用のマウスオープナーをつかって、口をこじ開け、口腔内を観察するとともに、胃内容物調査を試みる。

ハーイお口を大きく開けてクダサーイ

 上下の顎の前のほうには歯の並んだ堅い部分があり、ここにはフッキングしないとのことで、フッキングポイントは口の両脇付近と歯の奥の部分などとのこと、口腔は空気呼吸のためだと思うが容積が大きくて、上顎裏にはヒゲのような棘のような突起があって、表面積を増やして空気中の酸素を取り込みやすくしているのかもしれない。ちなみにヒゲは上4本下4本の8本。

 口腔内の容量が大きいせいで、口から胃までが遠くて胃内容物の調査は難航した。

 胃の中に何があるか挟み出そうと、ロングノーズのプライヤーでなんか入ってないかとつまもうとしたが、そもそも胃の奥まで突っ込めずカラぶった。

 次に、マッチザハッチなフライマン御用達のストマックポンプ(エエ、このために買っていきましたよ)で、胃に水を送り込んで吸い出そうとするが、これもポンプを一所懸命に口腔内まで突っ込んでもパイプの先は胃の奥まで届いている感触はなく、なかなか何も吸い上がってこなくて苦戦した。でもちょっとゴミのような破片が入っていたのがようやく確認できた。

 よく見ると片方は葉脈が見て取れて「植物」らしい、もう一つは黄色っぽい破片でなんだか分からなかった。ノドの咽頭歯でかみ砕いたタニシの破片っぽく見えるのは先入観からだろうか?

胃内容物調査後

 胃内容物調査はいまいちうまく行かなかったというのが正直なところだが、やっぱり「植物」は食っているようだ、ということぐらいは分かったように思う。

 調査に協力いただいた個体に感謝してリリース。いじり回してゴメンね。

 

 夕方良い時間になってきてもいたので、引き続きスプーン投げる。

 わりとすぐにヒット。元気に飛び跳ねまくっている。ハロワンだ。ハシゴの近くでかけたので、昨日のよりちょっと大きかったこともあって抜き上げずハシゴ降りていってボガをかける。

ハロワン53

 53センチとこの種としてはまずまずのサイズ。60センチぐらいが大型とのことで、タイワンドジョウと同程度のサイズらしい。タイワンドジョウもたまに小さい個体が泳いでいるのは見かけた。

 これは、今日こそスプーンで爆釣かと期待したが、その後はやっぱりルアーに驚いて逃げられるパターンで、シュガペンにチェンジするも、昨日同様魚は沢山いる感じだが、バイトもなく活性は昨日よりも低い感じ。

 

 そうこうしていると、ルーサーさん登場。朝まずめアフリカンクララ2ゲットと好釣をうけ、夕まずめも来たそうである。前日徹夜釣行も含めて釣り場に入り浸っていて「釣れてる時に釣りまくる」という真っ当な釣り師のお手本のような方だった。すでに対岸上流の方で1匹ゲットしたとのことで情報交換しつつ、一緒に釣り始める。

 しかしルーサーさんも「魚多いのに食ってきませんね」という感じがつづき暗くなったあたりでルーサーさんは撤収。

 

 当方は引き続き、シュガペンで釣りたいと居残り。昨日も暗くなってすぐぐらいに良い時間帯がやってきたので、その再現を狙う。そういえば昨夜はちょっと下流の方で港さんが中華ペンシルでかけてたなと、下流へ移動。

 移動して2投目ぐらいに、バシュっと派手に出て、水面でバシャバシャ首振りまくり。ちょっと横に走ってまた首振りまくり。結構ドラグ鳴らしてくれて、バカデカいのかと期待したが寄せてくると、たぶん首振った時に口にかかってたリアフックが外れたんだと思うけど胸びれのチョイ上ぐらいにフロントフックがかかっている状態で元気よく泳ぎ回っていた。でもサイズ自体も悪くない。黒ッポイ体色の個体。

 下流側のハシゴのしたには流木が流れてきていてちょっと取り込みしにくく、1回落としダモに入れ損なってロープの間をくぐられて、ロッドをロープの間くぐらせて仕切り直し。2度目で成功。

 1mぐらいありそう。ドキドキしつつ計測すると「惜しいあと2センチ」という感じの98センチ。16ポンドは7キロぐらいか。シュガペンで良い出方してくれたし満足の1匹。

9898の顔

 写真撮ってリリースして、しばらく投げるが反応無くなったので、最後昨夜と同じようにY字ポイントで締めることにする。昨夜同様Y字ポイント活性上がっていて4発ぐらいバイトしたがフッキングせず。反応しなくなって、8時半頃に撤収。今日も好釣の余韻を楽しみつつ最寄り駅までテクテク帰る。

 ホテル近くの駅のファミレスみたいなところで夕食にしよう思ったら、9時過ぎて閉まってた。付近に他に手頃な飯屋はなく、コンビニでサンドイッチ買ってホテルの部屋で食す。エビの味が一瞬だけしか感じられなかったエビコーンサンドとカニカマ味のカニ&メンタイサンドは、なかなかにチープでこれはこれで味わい深かった。

 ぶっちゃけ魚釣れたら、何食っても「メシウマ」状態である。

 この日着ていたグレーの長袖Tシャツは、写真のように袖口やら襟元やらが剥げ剥げのボロッちい小汚いかんじの1着だが、これ着てたときに結構釣れた記憶があるので、あまりゲンを担がない方の釣り人だが、気合いの入った日には着ることが多い。そろそろ捨てたいのだが、今日も釣れてしまったしまだ捨てられそうにない。

リールとTシャツとルアー

 さすがに疲れたのか、10時頃ベットに入ったら即、眠りに落ちた。2日目も好釣であった。

 

 

<20日:3日目>

 朝、7時頃に起きてお散歩。駅の反対側からホテル裏に回り込もうとするが、今度は道がどうも自動車専用道みたいな感じで、ちょっと歩いたけどこりゃダメだと引き返す。窓から見える川にはたどり着けず、ホンコンオイカワ釣獲ミッションは断念した。S先輩ゴメン。

 部屋に戻ると、港さんからスマホに連絡が入る。今日は朝から昼頃にかけて、釣行前にメールで情報交換させてもらっていたフライマンの「レフティー」はまさんが女囚川ポイントに入っているという。ルアーでは夜狙うことが多いイセゴイ(パシフィックターポン)を、はまさんはフライマンらしく、テーリングとかを見つけて釣るために明るい時間帯にフライロッド振ってるらしい。

 早速、ポイントに向かう。到着してしばらくウロウロしてはまさんを探していると、上流側から歩いてこられた。今日は朝からテーリング待ちしていたが、良い時間を過ぎてもあらわれないのでそろそろ帰る予定だったが、「せっかくなので」と当方の釣りにしばし同行してくれることになった。

 今日は、昨日からのアフリカンクララの餌釣りの続きを明るいうちにやる予定。「草」でダメなら「魚」でしょ。ということで、昼飯兼用のパン買って、パン撒き餌しつつ、延べ竿かパンフライでライブベイトになりそうな小魚か、切り身で使えそうな中魚をゲットして、ブッコミ仕掛けの餌にするという、アメナマ釣りで良くやった「わらしべ釣法」である。

 釣り談議に花を咲かせつつウダウダと釣るが、最初のポイントではパン餌ののべ竿仕掛けに大型テラピア臭いヒットがあって、0.6号のハリスぶっちぎられたのみ。反応薄いので、はまさんが下流の排水処理施設からの流れ込み付近にはテラピア始め魚は多いので移動しましょう、ということで小移動。

 たしかに、テラピアはじめ、いろんな魚が泳いでいて見てるだけで面白い。50センチぐらいのレンギョやタイで同居人が釣ったハンパラっぽいの、コイ科魚らしい高速で泳ぎ回っている15センチぐらいの魚、コイ、錦鯉、たまに空気吸いに上がってくるのはプレコにアフリカンクララ、コロソマっぽい魚も見える。混沌とした魚種構成だ。

 排水には「ホントにちゃんと処理してんのか」というぐらいにゴミが混じって流れていて、はまさんも「こういうちょっと汚い釣り場ってどう思います?」と気にしているようだった。

 「汚いと言えば東京湾も最近キレイになってきたとはいえ汚いけど、栄養豊富なぐらいで、釣り場としてはすごく魅力的だし、多少汚くても魚沢山いたら良いと思う。水があればどこでもある程度生態系ができて、魚は釣れるはずだし、ルアーフライの対象となる捕食者だっているはずだから、どこにいたって釣りは楽しめるはずです。」てなことを話したような気がする。

 当方は、以前にも書いたけど、手つかずの大自然の中で行う釣りにはもちろん魅力を感じるけど、なぜか都会の虐げられたような自然の中で、それでもしたたかに生きている魚を釣るのにも正直かなりの魅力を感じる。

 都会の釣り

 南太平洋の美しい珊瑚礁の海での釣りと同等以上に、生活排水流れる東京湾や香港の川の釣りも楽しいと思う。むしろそう思えない釣り人の嗜好は偏見にまみれて楽しみを自ら狭めていて可哀想、ぐらいに思っている。

 移動した釣り場には、ラッキーにも干上がりかけたフナが落ちていて、それを切って餌にしてぶち込みつつ、パン撒いてパン餌で浮き釣り。

カットフナ

 フナ餌良い塩梅の腐れ加減で臭いが効いてそうで、事実、結構魚信があるのだが、これがまた、昨日の草バリの再現かと思うような、竿先がプルプルするだけでいつまでたっても、グググと食い込んではくれないあたりなのである。

 ハフハフついばまれてしまっているのか、小さい魚に遊ばれてるのか。

 という感じで、ブッコミ仕掛けのチェックが忙しいので、延べ竿の方ははまさんにしばし任せる。

 大量にいるテラピアのど真ん中に流しても、パン餌食ってこない。撒き餌のパンもほとんど食われない。アフリカンクララもたまに近くを泳いでいて、ヒゲを前方に伸ばして水面の餌探しているような行動してるのも見えたけどパン食わない。ちなみにこの状態のアフリカンクララの目の前にルアー通すとヒゲに当たった瞬間ビックリして逃げるらしい。

 よほど「栄養豊富」な排水のおかげでプランクトンやら付着藻類やらが多いのか、まるで近所の排水前のボラのように、餌にもルアーにも反応してくれない魚が多い。

 でも、パン撒きながら「沖縄のテラピアはパン好きで」「子供の頃沖縄すんでたのでパンでテラピア釣ってました」「九州のソウギョは草も食うけどこれまたパンが好きで」「ハワイの釣り禁止の桟橋でパン撒くとボーンフィッシュもパン食いに来ます」とか、楽しくパン談議などしていると、ポツポツと小物が釣れてくる。

 セベラムっぽいシクリッド、カワイワシ、あとやっぱり小さめのテラピアも釣れてた。

セベラム?カワイワシ

 選手交代で、当方も小物狙い。テラピアは世界中で釣れるので、できればそれ以外。

 カワイワシ(たぶんHemiculter leucisculusかその近縁種)はコイ科の日本ならワタカに近い魚で、サイズは20センチ弱ぐらいなのに、フライにもルアーにも好反応らしく、ひそかに釣ってみたいと思っていたが、パンにも好反応で浅棚でパン見ながら釣っているとスーッとやってきてためらいなく食う。食うんだけど魚体が大きくないので一口で食いきれなくて合わせてもすっぽ抜けが何回かあったが何とかゲット。3.3mののべ竿で釣るにはちょうど良いサイズで走り回ってくれて楽しめた。

カワイワシと私

 はまさんものべ竿小物釣りは楽しんでくれたようで、シーズンオフとかに海でアイゴ釣りとかもやってみようかなと言っていて、最近のべ竿小物釣りの楽しさを伝道していかねばという使命感を感じている当方としては嬉しい限りであった。

 金かけなくても、安いのべ竿一本でも、釣りって結構かなり相当楽しいんである。

 

 足元に放置しているフナにも、パンにもアリがたかっている。

ヒアリ

 これが噂のヒアリらしく、テーリング待ちの間、川辺で座っていることが多いフライマンのはまさんはランアンドガンで移動が多いルアーマンよりヒアリの被害を食らうことが多いらしく、今日も刺されたというお腹の赤い2センチぐらいの腫れを見せてくれた。痛みが1週間ぐらい取れないらしい。ズボンの裾から這い上がってきて内ももやら股間やら刺されると最悪なので、ズボンの裾は靴下に入れておくという対策を教えてもらった。事前情報でも港さんからそのためにハイソックスを用意しておくよう言われていたので慌てて靴下を裾の上に引き上げた。

 

 しばらくして、はまさんがちょっと興奮して「来たかもしれない」と水面を見つめている。視線の先を見ていると、とがったヒレが水面から出た「ターポン!ターポン!」。

 はまさん自身が話していたようにテーリングを見つけて「我慢できない」状態に突入したらしく、いそいそとロッドを継ぎ、クレイジーチャーリーをリーダーに結びキャストを始める。

 まだ、群れはいるようでたまにテイリングしているのが見える。

 当方もフライタックル持ってきていたが、魚の移動が速いのとそこそこ距離があるので、インチキフライマンではどうにもならん感じだったので、はまさんのお手並み拝見としゃれ込んだ。

 後ろの排水の流れだしの橋下スペースを利用して、そっちを向きながらフォルスキャスト背中側にシュートという、ちゃんとキャスティング練習やってる感じと、このポイントに手慣れた感じが、やるなという感じだった。

 バイトはあるけどフッキングしないというのが何度かあったあとヒット。スパンとキレイに高く跳んだ。今年は大西洋と太平洋のターポンのジャンプを見ることができたと自虐的なネタを書いておく。

 無事キャッチ。このポイントでテーリング見えて群れがまわってきたらターポン釣れる、ということがウソじゃないと示せてホッとしましたとのこと。

イセゴイ

 

 時間も3時近くなっていたので、午前中の予定だったはまさんは撤収。当方は居残りだが、ちょっと暑くて疲れたこともあり、夕方良い時間に備えて土手を上がって木陰で休憩に入る。

 土手の上は舗装されていて、アリもごくたまに小型の黒いヒアリじゃなさそうなのがいるだけで大丈夫っぽいので、手ぬぐいを敷いた上に頭を乗せて仰向けに寝転がって、空をちょっと眺めたり、目を閉じてサイクリングやジョギングの人達の行き交う音を聞きつつうつらうつらとする。

青い空

 風が吹いて気持ちいいなと思っていると、パラパラと小さな砂のようなモノが降ってくる。目を明けるとお腹の上に小さな花が散っている。見上げる木にはよく見ると花が咲いていて、そう思って意識してみると栗の花のようなツンとした香りも漂っている。

花

 「ムシゴヤシが午後の胞子を飛ばしている」という台詞が頭に浮かぶ。オームの抜け殻を見つけて目の部分を苦労して切りだして、それをかぶって昼寝していた映画版ナウシカのシーンを思い出した。幸福感に包まれて寝そべっている上に植物の生の営みが降ってくるという共通点からの連想だろう。

 昨年は田辺聖子先生の案内する百人一首やら今昔物語などの千年前の文学を集中的に楽しんでいて、旅先でもふとした瞬間に三十一文字が頭に振ってきたりしたが、今年はマンガ読みに集中していて、21世紀現在のマンガアニメ系の連想が多い。まあナウシカは20世紀の作品だけど。

 釣りの好みも、読む本の好みも、当方の好みは「雑食」である。面白ければ何でも良い。一つのことを極めることは無いけれど、何でも興味を持って楽しめているというのは、良いことでもありそうでなくもあるんだろう。

 映画ではその後、ナウシカの昼寝はキツネリスを人の子供と間違えてムシから助けようとしてムシの怒りを買った剣士ユパが追われる気配に妨げられるのだが、当方の昼寝はチクリとする腹の痛みに妨げられた。

 「ヒアリにやられたか?」と慌ててシャツをめくると、小さい黒いアリがいた。払い落として、刺されたところが腫れてこないか様子を見たが、チクッとしただけで特に腫れたりはしなかった。ヒアリじゃないアリが噛み付いただけのようで一安心。

 

 1時間ほど休憩して頃合いも良し、再度土手を降りて出撃する。餌の腐れフナを落ちてたペットボトルを切った容器に入れて、初日、2日目と魚が多かったエリアに移動。アフリカンクララが呼吸するために上がってくるのが確認できた場所を中心に、ぶっ込んで魚信を待つ。

 だがしかーし、ここでも状況は好転せず。ツンツンというあたりはあるけど食い込まないのよね−。「遠慮せんとガツンといったらんかい!」と苛ついて心の中で毒づくが、思っただけでは何も変化はない。

 対岸上流にはルーサーさんらしい釣り人がいるので、手を振ってみたらやっぱりルーサーさんだった。釣れてる時の釣り場に徹底して出撃しまくる様はまさに釣り人。やはり釣り人は釣具屋で道具いじって小理屈こねてなどいないで、釣り場に出てナンボでっしゃろ。香港の釣り人の気持ちの良いぐらいの健全で旺盛な釣欲に喝采を。

 見てるとぶっ込み不調の当方をよそに土手を川面に降りて取り込みしていて、今日もしっかり釣れているようである。

 結構、我慢を重ねて粘るが、根がかって仕掛けをロストしてぶっ込み続ける気力が切れた。とりあえず当方の力量では餌でアフリカンクララを狙って釣るのは無理っぽい。もっと夜間含めた長期戦やタニシ餌とか特殊な餌の扱いに慣れたコイ釣り師の技術とかがあれば、打開する方法もあるのかもしれないが、とりあえず今回準備した手はほぼつき果てた。生き餌の泳がせはまだやってないが、小さな魚が思ったより釣るのが難しいし、香港のアフリカンクララ思ったほど魚食性は強くなさそうな気もしていて、あまり良い戦術でもなさそうなので残りの日程はルアーで攻めることとする。

 とりあえず、シュガペンとバイト10gのローテーションで釣っていく。バイトの方は魚に逃げられることも多いが、2回ほど明確なアタリがあった。たぶん咥えて首を振った時の感触だと思うがガツンという感じの衝撃を感じた。

 暗くなってきて、ルーサーさんも合流してしばらく釣るが2人とも反応無しなので、「そろそろ帰ります。」と挨拶して、テクテク下流側に歩いて行く。昨日釣ったあたりで、そういえば初日もその場所では港さんが中華ペンシルでかけていたし、最後にいっちょ投げとくかとバイト10gをぶち込むとびびった魚が逃げた。やっぱり魚がつきやすい場所なんだろうなと思って、さらに下流にもう一投。

 引き始めてガツンと来た。首振りまくって元気に暴れてる。取り込みをルーサーさんにお願いして、ハシゴのところまで移動する。

 寄せてきて弱らせて無事取り込んでもらった。

 なかなか劇的な幕切れで盛り上がった。97センチとサイズも良い。

97

 すっかり満足して、2人して駅までだべりながら帰る。初日に食べた食堂で夕食をご一緒する。甘いアイスレモンティーが渇いたのどに美味しい。蝦餃子入り汁ビーフンも美味しかった。

 ここまで大活躍のスプーン「バイト」について、熱く語ってしまった。

 「バイトを初めとする常見忠という釣り人が作った「忠さんスプーン」は取り立てて他のスプーンより高機能だとか高性能だとかいう感じではないけど、ベーシックな性能を備えたスプーンで、名付け親の開高健が「オーパ!」シリーズで使っていたし、職場の先輩はアルゼンチンのドラドを爆釣してた、沖縄のミーバイやクチナジにも効いたし、オホーツクのカラフトマスも釣った。九州で明るい時間のナマズのサイトフィッシングにも有効だった。世界中どんな魚にも使えると信じられる魂のこもったスプーンだと思って投げている。忠さん数年前に亡くなって作っていたセントラルフィッシングというメーカーも無くなったみたいで、今の手持ちを大事に使っている。」

 てな内容だったと思う。帰ってきて調べたら忠さんスプーンはアートフィッシングというメーカーに引き継がれて作られているようで、早速街に出て10gと13gを15個ほどまとめ買いしてきた。

 「魂」という言葉を使ったので、誤解の無いようにちょっと説明しておきたい。

 当方は人の霊魂とかオカルティックなものを全く信じていない。だから別にバイトには忠さんの霊験あらたかな魂がこもっていて不思議な力で魚をつれてくるというような意味で「魂」がこもっていると言ったわけではない。

 「魂」とはなんぞやという問題はほぼ「人間」とはなんぞやという問いに近似している。

 偉い学者が「我思う故に我あり」「人間は考える葦である」等と言っているように、思考し、記憶し、感じる能力こそが人間の本質の一つであり「魂」はなんぞやという問題の回答の一つでもあると思う。ただこういう問題は答があるようでないようなモノで考え続けて変わり続ける認識もまた答の一形態であるように思う。

 反例を一つ具体的に考えると、まず、「考えないなら人間ではない」というのは、感情的になかなか納得できないモノがある。脳死状態で家族がベットに横たわっている時、今の生命倫理上は「それはもう考えてないんだから人じゃなくなって死んでるんですよ、魂は抜けちゃってるんですよ。」ということで整理している。でも心臓脈打って温かい体があるのを目の前にしてそんなに割り切れるかというところ。体もやっぱり人間の一部だし、魂もそこに混ざっていてそんなにスッキリ割り切れないだろうとも思ったりするのです。

 でも、そこそこ「思考能力・記憶」が「魂」であると思える具体例も思いつく。ようするに、コンピューターとか人工知能に自分の思考能力と記憶をまるごとコピーしたら、その人工知能は間違いなく自らを「自分」だと認識し、なぜ自分の視覚がカメラからの入力になっていて、どうも「体」がなくて、考えることはできるけど、五感はカメラやマイクなどのセンサーからの入力情報に置き換わっていて、出力はスピーカーから声が出せるけど手足が無いという状況に戸惑うだろう。カメラで見る映像にもう一人の体を持った「自分」を見つけて自分は人工知能に「自分」をコピーしようとしていたはずなのに、自分がコピーだったと気付くというのがSF的な展開だ。

 「思考能力・記憶」が「自分」であり「魂」であるとして、じゃあどこまでその「思考能力・記憶」を削ったら「自分」でなくなるのか、逆にどこまでコピーしたら「魂」の写しができるのか。考え始めると意外に線引きが曖昧なことに戦慄する。

 記憶を完全にコピーしていなければ「自分」でないのなら、今日の昼ご飯に何を食べたのか忘れた時点で、厳密にはそれまでの「自分」ではなくなってしまう。そんなことはみんな思わないだろうけど、でもおばあちゃんが痴呆症を発症してしまい、子供時代の記憶以外忘れてしまったという時にはどうだろう。おそらく人によって感じ方は違うのではないだろうか?それでも間違いなくおばあちゃんだと考える人もいれば、おばあちゃんではなくなってしまったと考える人もいるだろう。

 そう考えてくると、「魂」というものが、もっと広い意味で「モノの考え方」「記憶」なんていう一部分だけでも存在するっていうのもアリではと思えてくる。例を挙げれば小説家のそれこそ「魂」込めた力作とか、画家の作品とか、そのへんには少なくともその作者の「考え方」や「主張」等の「魂」的な大事な部分が感じられるぐらいのモノがあり、裏返すと「魂」を感じる側の感性にもよるところが大きいんじゃないかと思っている。

 そういう作品として、「バイト」には忠さんのスプーンとはこうあるべきだという主張、考え方がこもっているように思えて「魂」を感じるし、当方がバイトにまつわる他の釣り人の物語や自分自身の記憶も含めて知った上で信頼を置いてキャストする時、そのキャストにも「魂」がこもっているのではないかというふうに考えているのである。

 今回の旅ではシュガペンを投げる時にも結構「魂」こもっていたと思う。港さんのシュガペンを投げてアフリカンクララを釣ってきた「物語」に感化されて、いつもは信頼しているレッドペッパーを投げる時よりシュガペンを投げる時の方が、釣れそうな気がしていたし、そういう心の動きが「魂」的な部分に大きく関わっているのだと感じた。

 あんまり「魂」こもった殺気だったキャストより、緩いリラックスしたキャストの方が良いのかもしれないが、当方は「魂」こめて丁寧に釣りをしたい。

 てなことも考えたりしている。

 「作家が死んでもその作品が残る限り彼の魂は生き続ける」「人は死んでもすぐには無に帰さない。その人の記憶が皆から無くなった時に人は完全に消滅する」なんていうことは昔から目にしていたが、若い頃はピンとこなかった。「「コギト・エルゴ・スム」で答は大昔に出てるでしょ?人は脳が機能しなくなったら「人間」で無くなるんでしょ?」ぐらいに単純に思っていた。

 いま、加齢とともに記憶力が減退しまくって、かなり昔の「自分」から欠けた人間になっているが、それでもまごうことなく「自分」は「自分」であると認識しているし、ひょっとすると、ケン一とかの親しい人間の頭の中にも一部「自分」が存在しているのではないかと思ったりもする。変化しながら他者との関係性も含めて「魂」は存在しているのではなかろうかと今は思う。

 

 ホテルに帰ってきて、港さんに釣果を報告する。毎日良い結果報告ができて嬉しい。

 今回の旅は、当方が香港深セン釣り人チームに客人というか遠来の遇客としてむかえられたような形であった。

 客人なら、一宿一飯の恩義を返さねば義理がすたるし、遇客からは新しい情報やモノや「種」なんてのがもたらされるからいろんな文化圏で大事にされてきた。

 今回当方は、何かをもたらす良い客だっただろうか。

 釣りの技術・情報的には面白いネタ話はまあ楽しんでもらえたと信じるが、アフリカンクララ釣りの技術的には、 ̄造把爐襪里呂笋辰僂蠧颪靴ぁ↓活性高い魚がいる時間と場所をルアーでテンポ良く探っていくのが効果的、5の活性が高く数が多ければペンシルベイトが効果的、ぅ好廖璽鵑盖の密度が低ければありかもしれないが、魚に当てると逃げられる。ぐらいのまあ、すでに皆さんご存じのことの再確認の域を出なかったように思う。違う人間による再確認はそれなりに意義があったと思いたいところ。

 でも、一緒に楽しい釣りを共有したというのは間違いないと思う。

 というようなことを考えたのは、香港に限らないとおもうけど、アフリカンクララを始め水の中にも、ヒアリのように陸にも移入種が沢山いて、そういう生物について、やはり思いをはせざるを得なかったからである。

 人でも生物でもモノでも文化でも、遠来からの客は利益をもたらすことばかりでは無く、時に敵国のスパイだったり、病気を持ち込んだり、もとあったモノを駆逐してしまったりという不利益の面もあったはずで、生物に関しては外来種問題、移入種問題という形でそういったマイナス面ばかりが強調されがちだが、ホントにそうなのかと疑問に思っている。

 最終的には程度問題なんだろうけど、利益があるから連れてきた生き物も多いはずだし、意図しないで入ってくるのを完全に防ぎたければ、国際的な物流を否定しなければならないだろうし、あんまり極端なことを言ってくれるなよとエコロジスト的な人々には言っておきたい。

 

 

<21日:4日目>

 旅の枕にも馴染んできて、よく寝て起きた。

 港さんから、朝まづめ釣行して2ゲットの報告。仕事後夕方合流できるとのこと。

 

 今日は40ウン才の誕生日やし釣ったるでー!と気合いを入れつつ、なにげに天気予報みていると、明日明後日と雨の予報である。明日帰りだけど駅まで行くのに濡れるのイヤだなと思いつつ、ふと「そういえば台風19号ってどうなったっけ」とスマホで台風情報のページを開いて青くなった。香港直撃コースで飛行機飛ぶか極めて心配な状況。

 ANA香港空港窓口に電話すると、電話が大変混雑しておりますのでだいぶ待たされて、オネーサンから明日飛ばない可能性アリ、明後日が一番やばいというような情報をゲット。

 明後日飛ぶなら余裕こいて今日夕まずめ釣って延泊でOKだが、さすがに火曜に帰るのはまずい。仕事は正直当方のようなボンクラがいないぐらい問題無いとは思うのだが、そうは言っても自分の中でしめしがつかんのと、休み明けいきなり職場復帰は体がきつい。そういうオッサンの体力・精神力も勘案して、わざわざ連休最終日は家で寝つつ顛末記書く日程にしていたのである。

 まだ、今日の午後便は空席有りと言うことで、もう22日の帰り航空券は発券しており払い戻しもきかなかったが、ここは札びら切っても良いので「勝ち」も確定しているし逃げどころと踏んで予約を入れて、港さんに事情を説明、ホテルのフロントにお借りしていたスマホを預けて、タクシー飛ばして空港へ。

空港へジャッキーチェンが居そうな交番日本語誰か指導してやってくれ

 最後慌ただしかったが、無事機上の人となり「スタートレック」の続きもちゃんと見て、久しぶりに活字の本、高野秀行「移民の宴」を読む。あいかわらず高野秀行面白い。テーマもなんかこの旅の内容にマッチしていたし、なにしろ初体験を遇客婚で済ました作者自体今回の旅には「気分」であった。

無事飛びました

 

 羽田から、同居人にメール、JOSさんとケン一に電話。帰宅して無事帰ったことをF師匠と港さん達にもメール。ブログに「勝利」の報告。

 

 旅の終わりはいつも少し寂しいが、今回はそれにもまして嬉しかった。

 

 どこかで書いたかもしれない。

 釣りをオセロにたとえると、釣りを始めた時点で端っこに白が並ぶ、その後黒星が続いても最終的に白星がつけば、その間の黒星はすべて必要だったこととして正当化され、白にひっくり返る。

 今回の白星で、ここ数回の海外遠征黒星は白にひっくり返った。結構へこんでいた部分も正直あったけど、この釣りのために必要な道筋だったと今は思える。

 

 これも今まで書いてきたことの繰り返しだが、釣りにおいて結果は重要でこだわるべきだけど、結果に至る過程も大事だと思う。

 今回、結果も良かったが、過程もクソ面白かった。一本のメールから話が転がり始めるスタートも新しい体験だったし、都会の釣りを東京ではなく遠征でしてしまうというのも面白かった。香港の人混みに紛れ竿持って電車乗ったり、観光客の絶対足を踏み入れなさそうなローカルな釣り場に、案内人のサポートを受け分け入ったり、釣り旅としても総合的に面白かった。

 釣りの内容も、アフリカンクララの情報を集めて、いろんな釣り方にトライして今自分のできる最良の試行錯誤ができたと自分では思う。餌釣りの結果が出なかったのは残念だけど、てらい無く挑戦した満足感がある。

 シュガペンでも良いバイトを取って最大魚をゲットしたし、バイトについては自分の中で新しい物語を追加できた。

 ひそかに、のべ竿でカワイワシ釣ったのも江戸前小物釣り師的にはポイント高いと思っている。

 

 永遠に幸せな種族「釣り人」として正しく釣りを楽しんだという幸福感がある。

 

 様々サポートいただいた、港さん、はまさん、レフティーさん、Maboさん、「今度はちゃんと釣ってこいよ」と日本で気にかけていただいてた皆さんに、厚く御礼申し上げます。

 

 最後はいつもの台詞で、

 

 また、どこかの水辺でお会いしましょう。再見、多謝!

 

−終劇−

 

 

(2013.9.23)

 

 

(参考文献)

○「キューバ・サパタ湿地における移入ヒレナマズClarias gariepinusの生態」山本 悠・Andrés M. Hurtado Consuegra・中村洋平・久保田賢・山岡耕作 

 

(リンク)

  スカッとしない釣り道中 in 深セン お世話になった港太一さんのブログ。香港釣り情報満載。

 Lefty Hama's in action これまたお世話になった、レフティーはまさんのブログ。香港からの海フライ系。 

 BITE 常見忠さん亡き後、バイトはセントラルフィッシングから広島のアートフィッシングという会社に引き継がれて作られているようです。バイトはまだ買えそうで安心です。 

 

 2013年 後半

 

 HP