2023年1月14日土曜日
ついでにもひとつキャデラック
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ナマジさん、今年もよろしくお願いします。
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なんと、キャデラック系統補完計画でしょうか。自分でリスク負わずして詳細を見られるとは涙が出ます。
イラスト1点と伏せられた商品名しか手がかりがありませんが、ナマジさんは慎重ですが私はこの機種に特定していいような気がします。
私は似た機種のHURRICANE MODEL 45 SURFKING に同じく使いもしないのに手を出しましたが、フットにolympicと入っているもののドラグなんかの考え方は大森臭があり、雰囲気はバンタムなどに通じる感じがあると思います。
アトラスⅡの時期まで日本仕様もコンパック銘で流通させてたので「ダイヤモンドリール第一号」とはいってもダイヤモンド銘の個体があるとは考えづらい気がします。
このところヘビー級高脂質のコレクションで見てるだけで腹が出そうです。
この調子でセンタウレ似のハーフベールまでオーバーランしての比較検証期待してます。
2023年2月4日土曜日
ガシャーン!!って昭和ロボ感がそこはかとなく
2023年2月11日土曜日
スーパー7とはこういうのだと思ってました
まあ普通の人なら”スーパーセブン”っていったらルパン三世が乗ってたようなクラッシックカーを思い出すんだろうけど、大森熱患者なら以前紹介したゴッツいコンパックブランドのではなく、こっちの方を思い出すんじゃなかろうか(当社比)?
こっちの大森製作所「ダイヤモンドスーパー7」は、大森の歴史ではプロラインの後に作られた最後のウォームギア機だと思うんだけど、ちょっとカタログ掲載年とかわからない。つくりが”オートベール”的なので70年代終わりか80年代始めぐらいだと思ってるけど、ご存じの方おられたら情報提供ヨロシクです(※1979年発売と判明)。
ウォームギア機って使い慣れると独特の味があるように思うところ。「パワーがなくてゴリ巻きできないからダメ」とかの不平不満を、スピニングリールのなんたるかを知らん釣り人が書いてたりするけど、これまでも何度も書いてきたけど「ポンピングしろ」とだけ書いておくにとどめるとして、愛好者がわりと多いのは、カーディナル3とかが何度も復刻されることからも分かるし、PENNがパワーの必要とされそうな海のリールとして「706z」「704z」という大型ウォームギア機を復刻させたりしてることやら、ドイツD・A・M社も近代的な設計のウォームギア機「クイックレトロFD」シリーズなんていうのを今世紀に入っても新規に設計して作ってたりしたのとかからも分かると思う。好きな人は好きなんです。大森製作所にも好きな人がいたんでしょう。ハイポイドフェースギア作るようになってからもウォームギア機もしぶとく作ってました。
ウォームギア機の何が良いって、巻きが滑らかで感度が良いってよく言われてて、確かにPENNの430ssgとか使ってた時に、今時の国産機使ったら巻きが軽すぎてカスカスな感じで、まったくルア-引いてる抵抗とかが手元に来ず「こりゃ気持ち悪い」と感じたもので納得するところである。あとメッチャ丈夫らしいのも良い点だけど、色々考えていくとパワーがなくてゴリ巻きできないところがスピニングらしくてなんか気に入ってるのかもなとも思う。ぶっちゃけ巻き心地だ感度だはワシあんまり気にしてないからな。別にギアゴロ上等の丸ミッチェルとかでも使ってて嫌じゃない。むしろ好ましく感じてる。
っていうことで、ウォームギア機大好きなナマジとしては「見せてもらおうか、大森のウォームギアの性能とやらを!」と思ってたんだけど、意外と縁がなかった。人気の「プロライン」はお高くて手が出ず。「アトラスⅡ」は2台入手したけど個体差ばらつきがあって、まだ大森っぽいリールに育ちきってない気がした。そこで今回の「スーパー7No.3」ですよ。そこそこマイナーだけど、小型のSSとかは手が出ない値段に大森沼の住人が競り上げてしまうので買えないけど、今回不人気の中型機でNo.3の大きさ。ちょうど外蹴りアウトスプール版「マイクロセブンNo.3」が蔵にあるので、おそらく色々と部品共通でスペアスプール体制も組めるだろうと入札。説明振りだと「逆転防止が壊れてて効かないジャンク」となっていて、入札ワシだけで900円(税込み1001円)で落札、送料入れて2121円は送料の方が高い。
まあ、逆転防止が効かなくなってるのはグリスが固まって爪が動かなくなってる程度だろうから余裕で直せるはずで安い買い物である。またもや中型機で売れない代物だけどいまさら気にすんな。って思ってたらモノが到着してみたら温度変化で固まったグリスが溶けたとかか、なんかわからんけど逆転防止も普通に機能していて、表面が潮かぶったみたいに腐蝕してるところもあるけど、稼動品に持ってくのはわけなさそうでホッとした。下の写真なにやってるのかわからんかもだけど、中型機にタップリ巻かれた投げ釣り用の途中で色が変わるナイロンラインをそれ用の道具を使って引っぺがしてます。「ラインクリッパー」っていってバークレーから出てた商品なんだけど、電動のモーターでゴムのローラー2個を回してその間に挟んだラインを素早く引っぱがしてくれるので、デカいリールの長尺ラインの巻き替えとかには”アルトベンリ”な代物。写真では足下に引っぺがしたラインが裸でごちゃついてるけど、ビニール袋の中に出口を向けてやれば後始末が楽。
ラインを引っぺがしたら、スプールからバラし始める。やっぱりあれだ、これは”オートベールのウォームギア版”だな、この時期の大森スピニングではすっかり皆様お馴染みの作りで、オートベールと同じくワンタッチ交換できるスプールにドラグは硬質フェルト湿式3階建て、ベールアームは樹脂製でポチッと左上のボタンを押してベールを畳むことができる。ラインローラーは樹脂製スリーブ入り、同じ大きさのオートベール所有してないので比較できないけど、ローター自体がタックルオートも含め3機種で共通の可能性もありそう。っていうか多分そうだろうと思う。ギアが違うスーパー7はひょっとしたら違うかもだけど、オートベールとタックルオートとは変える必然性がないように思う。ちなみに外蹴り時代のアウトスプール機のマイクロセブンとタックル5(と同型機タックル)のローターは同規格。ハンドルは左右両用に使えるネジを切った方式のネジ込みハンドルだし、銅製の板の”簡易ローターブレーキ”も大森沼住民にはお馴染みのが付いてる。ストッパーは本体内ローター軸のギアに掛かる方式。
でもって、今回の本題であるギアはドーン!とこんなん出ました。オーッ!確かにグルグル棒のローター軸ギアに500円玉みたいに側面に歯を切ったハンドル軸のギアが重ならず並んでいて、まごうことなきウォ-ムギアスピニング。
スプール上下させるオシュレーション機構は本体裏の蓋にハンドル軸のギアから回転持ってくるためのギア2枚並べてハンドル2回転で一往復ぐらいの減速オシュレーションにしている。デカい機種だけかも?と思ったけど、写真見る限りNo.1サイズでも蓋の方がそれなりに膨らんでて、単純クランク方式のウォームギア機独特の、本体が薄っぺらくてなんか格好いい感じはなくて少しウォームギアフェチとしては残念に感じるところではある。
まあでも見た目より機能よ、引っこ抜くと真ん中写真のような感じになるんだけど、ウォームギア機の場合、ローター軸側がステン、ハンドル軸側が真鍮というのが一般的な組み合わせだと思うけど、大森ウォームギアはローター軸側が綱系(上の写真でちょい錆が見える)、ハンドル軸側は軽量化のためにアルミに芯が綱系かと思ってたけど、写真見てるとアルミじゃなくて綱系に見えてきて、グリスグッチャリにする前に磁石でもくっつけて確認すれば良かったと思ったけどあとの祭りで、バラして確認も面倒くせぇのでネット検索で情報無いかと探ったら、スーパー7では出てこなかったけど「プロラインNo.101」が”鋼のウォームギア”だという記事が出てきて(まあTAKE先生のところです)、たぶんその後を継ぐようなスーパー7も鋼のウォームギアの可能性が高い気がする。大森沼に沈んでる方でお手元のスーパー7のギアの材質確認してる方がおられましたら情報提供いただけると嬉しいです。まあ、鋼の円盤から切削でギアの歯作ってるなら「EXCELLENT GEAR」と誇らしげに表記したくなるのも分かりますね。ボールベアリング3個も入れてるけどそんなモンはもう表記するほどの価値はないってのも時代の趨勢か。
ちなみに、ウォームギア機のハンドル軸のギアが真鍮製で重いということの対応策としては、イタリア製アルチェード「2CS」では穴開けて軽量化されていて、スウェーデンのABU「カーディナル4」とかになると小さめのハンドル軸ギアになってて(瑞穂製の「C4」にも引き継がれる)、「デカくて重いけど、それがなにか?」という態度だったPENNのスピンフィッシャー710系、アウトスプール3桁の「430ss」、「420ss」も、後継機の4桁「4300ss」、第4世代「430ssg」ではカーディナルっぽく小さめなハンドル軸ギアになっている。PENNにも、軽量化の小うるさく求められるようになってた時代に、そうまでしてでもウォームギア機を残したいっていうウォームギア好きの同志がいたのだと思うと胸が熱い。
でもって、全バラしてパーツクリーナーでシュッシュのゴシゴシと汚れを落として青グリスグッチャリで組み上げてくんだけど、ここで問題発生。右巻になってたのを左巻きにしようとしたら入らんがな。この時代の大森のハンドルは同じ軸に左右のネジの山をクロスさせるような感じで切った左右共用で(この方式シェイクスピアが特許持ってたとかどっかで目にしたけど出典が分からんくなった。ゴメン未確認情報扱いです)、左にも付け替え可能なハズなんだけど、空転して入って行かない。たまに初めて左巻きにするときにちょっと抵抗があることはあって、でも力入れてゴリゴリとねじ込んでいくとキッチリ填まって、その後は問題なくなるってのがパターンだったので、今回もそう思ってゴリゴリっとねじ込もうとしたらネジ山なめったような嫌な感触を残して空転し始めて「やっちまったダ!」と暗澹とした気分に落ち込む。ただ、入り口のところで多少ネジ山舐めてても、奥の方はまだ生きてるハズでなんとか奥まで突っ込む方法はないかと、頭捻ってたら、パーツ互換性を試すために用意していた外蹴り「マイクロセブンNo.3」の左巻きのハンドルのネジでほじくって、ネジが入る道筋をつくってやってからねじ込めばどうか?と考えて真ん中写真のようにやってみたけど一発目は不発。やっぱりダメだったかと思いつつもダメ元で、ハンドルネジの方もマイクロセブンの方のギアに突っ込んでネジ山を整えてみたらどうだろう?と試して再度突っ込んでグリグリしてみたら、無事ねじ込めました。ふぅ一安心。ただ、この方式は諸刃の剣のようで、あまりお薦めできるモノではない事がその後判明する。続くときは続くモノで記事にもするつもりもない通常業務として、我が家にお迎えした4台目の「マイクロセブンC2」を整備してたら、上記と同じように左ハンドルにしようとしても空転する状態に突入。でも、左巻きの状態になってるハンドルでギア側のネジ山整えてやれば行けると学習済み!とC2の普段使ってる個体のハンドルでグリグリやって、整備する側のハンドルも使ってるC2のギアにグリグリ入れてってやってから、と思ったらそもそも入らんし。仕方ないコイツは諦めて右巻のみで運用するかとおもって、使ってた方のC2を元に戻そうとしたら、なんと逆に使用中の個体のハンドルが元通り左に付けられなくなってしまった。グハッまたやってしもた!同型機含めたら5台もあるので2台右巻個体でも大丈夫な気はするけど、これまで左右どちらでも使えてたのを片方潰したというのは精神的にダメージが大きい。ここで”損切り”して諦めるのが賢いのは目に見えてるような気がするけど、悪あがきいたしました。左右共用のネジ山が切ってあるハンドルを突っ込んだから左用に整いにくかったのではないだろうか?という薄い可能性だけど藁にもすがるような気持ちで信じたい仮説のもと、左右でネジが別の外蹴りの「マイクロセブンNo.2」で同じようにグリグリやってみた。わが家の蔵からはなんでも出てくるので助かるね。結果、マイクロセブンNo.2まで左巻きダメ個体になる予感もあったけど、なんとか元々左巻きで運用してたC2は左巻きOKに復活させることができた。新たな個体はボロいのでスプール要因にしてしまうつもりでこれ以上無駄に触って被害を広げないようにしたのは我ながら賢いのではなかろうか。ちょっと嫌な汗かいたけど原状復帰まではできて一安心。ということで、左右両用のハンドルがどちらかにしか入らないという場合に、裏技として「右用左用が別だった時代の大きさ同じ大森スピニングを用意して、グリグリッとしてネジ山を整えてやる。」というのは、上手くいくこともあるけど下手すると片側しか使えないリールが1台から2台になる可能性があると憶えておいて欲しい。
ということで、無事使用できる目処も立ったし、スペアスプール体制は組めるかな?と外蹴りマイクロセブンNo.3と部品共用具合を確認してみると、無事スプールは共通。スプールの前にはからずも確かめることになってしまったけどハンドルも共用可能。スプール交換するとちょい見た目あってないけどスペアスプールはいつも出番が有るわけじゃなしで、それが鞄にあるという安心感が大事。でもって回した感触なんだけど、なんというか大森ハイポイドフェースギアも充分滑らかなので、部屋でクルクル回した程度では取り立てて言うほどには違いが分からない。ウォームギア独特の重さも、減速オシュレーションのおかげもあってかそんなに感じない。まあこういうのは実釣で試してこそ真価が分かるというものだと思うのでそのうち出番を作ってやろうと思う。
という感じで、大森熱は昨年から引き続き終息宣言など出せるわけもないような状況で、毎日ネットオークションとか出物が無いか見回ってるんだけど、最近なんだか値段が上がってるような気がして、特に「タックル5No.1」が1万5千円で売れてたのには、こんな強気の値段でも運が良いと買い手つくんだ!と、とぼけたことを思ってたら、そうじゃなくてどうも「ギジー」っていう釣り雑誌の新春号でオールドタックルの特集があって、その中で何故か「タックル5No.1」と「オートベールNo.1」が紹介されたようで、その一瞬の商機を逃さず売りに出した商売上手が1万5千円の高値で、普段なら3千円になれば上々のタックル5を売り切ったようである。タックル5はワシも好きなリールで3台持ってて1台はまさにNo.1サイズだけど、商機はもう過ぎたようで現時点では6千円ぐらいでも入札されてない。まあ根魚遠征用に使ってるから売らんけどな。だれか、雑誌とかで”不人気実力派マイクロセブンCシリーズ”を紹介してくれやンもんかいな?全部で13台もござる。使うとしても3サイズ2台づつあれば上等で、7台高値で売れたら、また別のリールが買えるのに・・・。赤字を解消しようとかいうのは道のりが遠すぎて諦めかかっている。現在の赤字額は236,479円。
あと、最近思うのがワシそろそろ左投げ右巻もできるように練習した方が良いのかもってことで、まあ昔右手首腱鞘炎になったときにちょっと練習したことあって真っ直ぐ投げるだけならできるんだけど、歳食って万が一右手が振れんようになってもフライキャスティングのメル・クリーガー氏の逸話みたいに逆の手で同じように振れれば問題無いじゃんって話もあるし、なにより右巻専用機が使えるようになれば、ネットオークションとかで「ああこれ右巻か」と見送らずに済む。
絶対練習してはいけない気が、書いててしてきた。両手使って全力で沼に潜ってどうするよ?
2023年2月25日土曜日
ベール周りが針金一本のリールってどんなもんなのよ?
これはあれです。以前人様にお借りしたリールをいじくったときに、「バンタムⅢ」という異形の大森スピニングを目のあたりにして、ベール周りが針金を曲げてたわめたパーツでやっつけてあるリールに興味が湧いてしまい、「ナイト600」ってのを狙ってたけど意外に左巻き機が出てこなくて、同じく大森製らしいこのコンパック「シエラⅣ」に手が出てしまったのである。ちなみに送料込み4200円とわりとはりこみました。欠損とか派手な疵とかのないまともな個体なのでまあこんなモンかなと。
人様のリールをお借りして、分解してお勉強して楽しんでみるというのは、自分の持っていないリールを楽しめて非常に良かったんだけど、買わなくてイイから送料だけであんまりお金掛からんだろう、という目論見はその後の”大森熱”の悪化状況を鑑みるに、まったくアテが外れて、欲望のたがが外れて、財布の紐の縛りもほどけてしまって、という体たらく。病気になりたくてなる人間はいないけど、なるときはなってしまうものである。しかたないね。病気は憎いよね。
まっそんなこんなで我が家にお迎えしたからにはこのリール、いつものように分解整備して稼動状態にもっていき、実戦導入して針金ベールのリールの実力のほどをみてみようって目論見のもとサクサクと分解清掃。
入ってた古いラインを引っぺがして、スプール周りから見ていくとなかなか面白いドラグが入ってる。「バンタムⅢ」ではバネの役割をする曲げワッシャーの上にドラグパッドが乗ってて、ドラグ締めていくと曲げワッシャーに接する面積が増えていきそうな見るからに不安定そうな、そのわりにわりとまともに機能するドラグだったけど、バンタムⅢが1954年発売でその翌年1955年発売らしいシエラⅣはちょっと改良されていて、曲げワッシャーの代わりにクラゲのエフィラ幼生みたいな放射状に脚の出た金属部品の脚がバネの役目をしていて、その真ん中に乗ってるフェルト製のドラグパッドはいつも円状の部分と接する形になってる。エフィラ幼生状部品はスプールと同期して回転、上部の欠け金属ワッシャーは当然主軸と同期して回らない、その間のドラグパッドが適度に摩擦力を生じさる構造。これ結構まともなドラグになってて、そこはやっぱりさすが大森製作所という感じなのである。単純だけどちゃんと仕事ができるドラグになっている。ドラグにボールベアリング入れてるようなアホメーカーはこのへんのリールから勉強し直せと言いたい。 でもって、本体パカッと開けていくと”強化ナイロン”製だとかいうハンドル軸のギアがドーンと鎮座している。蓋側にだけどな。純正状態なのか以前の持ち主がぶち込んだのか、グリスグッチャリで好ましい。けど、なんか真鍮製のローター軸のギアの根元あたりにヒゲのようなモノがチョロリと見えてるので、なんだろう?と引っ張ってみたら、これスプール下に噛んでしまったラインを巻き込んで、そのままギアのあたりまで絡んでしまっている。慎重に逆回転とかさせながらほぐしていって綺麗に除去できたけど、このリールもバンタムⅢもそうだったけど、スプール上下のためにハンドル軸ギアの上面?に刺さる棒が、金属製スリーブ噛ませてあって丁寧な仕事ぶりなのはいいんだけど、ハメゴロされていて主軸が抜けない状態になっっているのでローター及びローター軸のギアが外せない。なので、絡んだままほどけなかったら致命傷モノである。この点、整備性という面はイマイチ。
でもって、強化ナイロン製のハンドル軸ギアなんだけど、ギアとしては意外と大丈夫なのか上の写真見てのとおりのベベルギアなんだけど欠けたり摩耗したりはみられず、整備後は巻きも軽くそこそこ滑らか。なんだけど、ストッパーはさすがに樹脂製ではいかんともしがたいようで一部つぶれていたりする。ミッチェル式で普段はストッパー外しておく運用なら使えるかもだけど、取り込みでタモ使うときにストッパー掛けて魚が最後の抵抗で暴れたときに、はたして大丈夫なのかやや不安な強度。どうせ金属の軸を入れるのならストッパーは金属製にすれば良かったのにとは思うけど、軽量化優先の尖った仕様だったんだろうな。バンタムⅢでも樹脂製ストッパーは欠けてたのでまあ無茶な仕様かと。 というわけで、PENNやら往年の大森スピニングやらのように丈夫なギアでもなさそうなので、グリスは耐塩性より耐摩耗性やらを重視してちゃんとしたリール用のグリスであるABU純正グリスでグッチャリグリスシーリング。主軸が抜けないのはいかんともしがたかったけど、パーツクリーナーのスプレー圧で古いグリスは吹っ飛ばして、ややストッパーに怪しいところはあるものの、稼動品で見た目もそれなりに綺麗な状態で残ってる良い状態に整備できたとは思う。
ただ、逆に状態が良いだけに海水での使用にはもったいなく、あとやっぱり樹脂製ストッパーの強度は実用上信用しかねるので、コイツはお蔵入りか売りに出すことにして、ナイト600の左巻き個体を手に入れて針金ベールのリールは一回実釣導入して使ってみたいところ。大森製にこだわらなければ、この手の針金ベールの安っぽいスピニングは「ノーマン」とか初期ダイワがお得意で中古の弾数も多めだけど、どのみち左巻き版は少ないのが悩みのタネ。ひょっとしたら大森製かも?なオリム系も同様右巻主流。やっぱり左投げ右巻きの練習するか?
ボロい個体が出てきたらもいっちょシエラⅣでぶっ壊れるまで使ってみるっていう手もなきにしもあらず。大きさ的にはバンタムⅢほど異様な小ささではなくて、比較対象に左に置いてみた「マイクロセブンDX」のような小型軽量機と同程度のサイズ感でそのあたり大きさ的にも実釣には向いてそう。スプール径はむしろマイクロセブンDXより大きめで使いやすそうにも思う。あと特徴的なのはその薄っぺらさで、ハンドル軸のギアに直接スプール上下のための溝が掘ってあるのもあってギアの厚さ分ぐらいしかボディーの厚さがなくて、主軸が収まる部分はミッチェルみたいに筒状に張り出しているだけという個性的な見た目でなかなかのもの。軽さはさすがにギアまで樹脂製にしただけあって、マイクロセブンDXも200gをチョイ切る軽量小型機だけど、シエラⅣは170gを切る軽さ。なかなかのトンガリ具合。てな感じで、針金ベールのスピニングなんていう方向にも症状が出てしまっていて、我ながら困ったモノです。再度いつもの台詞で締めておきましょうか。
アタイ、病気が憎いッ!
2023年3月4日土曜日
ややレア?大森製コンパック「カプリⅡ」サンレイ商会ってなんぞ?
届いて足の裏を確認すると「OMORI S.S.(最初のOに上線)」とあり、大森製作所製のスピニングで間違いなさそう。
ちょっとネットで調べてみると、箱ありで売られた事例が目について、”箱書き”ある程度読めたんだけど、コンパック「No.86 カプリⅡ」と表記があり、製造は大森製作所、販売は「サンレイ商会」となっていて、コンパックブランドの国内販売元として、「サンレイ商会」というのがあったのかもしれない。コンパックで検索してて箱入りのモノが出てくるとたまに見る商会名(※タレコミによるとコンパックのというより大森製作所の販売店っぽい)。
ちなみに「カプリⅣ」ってのもネット検索してると出てくるけど、どう見ても茶色い「マイクロセブンDX」で、つまりコンパック89「アトラスⅢ」と同型機、なんで同じブランドで別の名前ででてるんじゃ?という混沌とした状況(※ゴメン間違い。カプリⅣは同じデラックススーパー系でもっと大きいサイズ)。
まあ、そのへんの販売上のあれこれやら歴史やらはとりあえず脇に避けておいて、このブツにはぱっと見て、非常に怪しい部分が見えているので、私気になります!右の写真をみたら、「ああこれアレっぽいな」と予想が付く方も多いのではないでしょうか。
そう、これD・A・M「クイック110」とかで見られた、ハンドルとハンドル軸ギア、ついでに逆転防止関係をまとめてズボッと抜いて、ハンドルが左右逆に付け替え可能なリールなんではなかろうか?とハンドル軸のギアが3つのネジを外せばヌポッと抜けそうなのと、反対側にその抜いたハンドル軸側の一式を突っ込んで収まりそうな穴の蓋がやっぱり3つのネジで止められているのを見たらある程度予想できる。
まあ予想どおりかどうか、分解整備していけばわかるだろうから、いつものようにスプール周りからボチボチとバラしていく。ワンタッチスプールなんだけど、なぜかエポキシで上部を固められていたりして、そいつを引っぺがして、やや堅く抜けが悪かったのは、刺さってる主軸の頭の金属板のバネを調整して正常に作動するようにしておいた。
以前の持ち主が、塩梅悪いと接着剤で固めるという悪癖があったようで、実はラインローラーを留めるナットがサイズ合ってないんだけど、接着剤で固めて落ちないようにだけされていて、グラグラで全く機能していないというジャンクぶりも早々に判明している。
ドラグは3階建てなんだけど、ちょっと意図が不明な設計になっていて、下の二枚のドラグパッドに比べて一番上の革製っぽいドラグパッドが直径大きい。当然、スプール側の穴にも段差があって、かつ2枚パットがはいるにはやや浅めで、革も赤い繊維のパッドも劣化して怪しくなってたので、パッドは交換したんだけど、下の2枚は薄くて滑りが良いテフロン仕上げ硝子繊維シートにして、一番上を2mmの硬質フェルトにして、実質フェルト1枚が仕事をするドラグに仕上げたら割と良い感じに仕上がった。ドラグパッドの直径に違いがあると、大きい直径のドラグパッドの性質が強く反映されるように感じたところ。ちなみに最初、上のパッドを百均フェルト製にしてみたら厚さが足りず、ドラグノブがスプール上面にアタって干渉してしまい塩梅悪かった。
ラインローラー周りが、ちょっと壊滅的で前述のように止めるナットがサイズ合ってないのを接着剤で固めてあるだけという、やっつけな前の持ち主の処理もあれだけど、ラインローラーについては大森製作所自体もやらかしてて、常々ワシャ水が入るこの位置に錆びる部品(であるボールベアリング)を入れてはいけないと書いてきたけど、このラインローラー、ローラーもスリーブも鉄系で固着より何より、ハズしたらボロッと崩れるぐらいに錆びてボロボロになっていた。本体内部である程度防水されているギアの芯とかが鋼製なのは、グリスシーリングで錆びるのは概ね防げる。でもラインローラーは何度も書くけど浸水しまくる位置であり、こんなところに錆びる部品を持ってくるのは愚かである。大森製作所もまだそのへん分かってなかったということか。初期の大森スピニングは前回取りあげたシエラⅣとかでもそうだったけど、なんというかいろんなスピニングの設計を手当たり次第に試してた気配があって、このあたりは模索の時期にあったのかなという気がする。 ローター周りは、この頃から既にベールアームと反対側にベールリリースの機構を組み込んで重量を分散させていて、このへんは後の大森スピニングにも脈々と受け継がれていく美点かと。蹴飛ばしが、リングを折り曲げたのではなく、本体に刺さってる別部品なのも丁寧な作り。
ちなみにローター軸のギアにもボールベアリングは使われておらず、アルミかもしくは亜鉛のでっかいブッシュがローター軸ギアにはまってて、BBB団の皆様お待たせしました、このコンパック「カプリⅡ」はボールベアリングレス機です。ボールベアリングレスだとなると、がぜん使ってみたくなるややこしい性分。でもラインローラーが無いのはどうにも処置が難しいけど、なんとかならんもんだろうか?
今シーバス用にメインで使ってるのがマニュアルピックアップ化した丸ミッチェル304なんだけど、マニュアルピックアップだいぶ手が馴染んできたけどそれでもラインを指で拾い損ねることがあるので、モタクサしてると食ってくる場所から外れてしまう超近距離戦が予想されるN川攻略の日には別のリール使った方がイイかもと思ってて、まあボールベアリングレス機にこだわるのであればPENN720zが手に馴染んでもいるし適任ではあるけど、コイツを実戦導入できたらなお楽しめるかもしれん。なんか修繕の手を考えてみたいところ。
でもって蓋を開けていくと、ドーンと鎮座しますのはアトラスⅡに良く似た感じの亜鉛鋳造っぽいウォームギア。そりゃそうだダムクイック110とかと同様のハンドル左右切り換え方式なら当然ひっくり返してもギアの歯切の方向が同じになるウォームギア方式じゃないとおかしい。でもって、予想どおり”ダムクイック方式”でハンドル、ハンドル軸のギア、その裏の逆転防止機構はセットでズボッと抜けて左右入れ換え可能なようだ。
ただ、ダムクイック110では、逆転防止のレバーは、逆転防止、フリー、正転防止と逆付けした際をあらかじめ想定して、正転防止という普段は使わないレバー位置も用意されていたけど、このリールにおいては爪とバネを一旦ハズして逆位置に付け替える必要があるようだ。
でもって、ちょっと笑ったのがハンドルの固定方法で、そこまでダムのまねせんでも良いだろ?って思うんだけど、ピンがネジじゃなくて押しこむ方式。で抜くのも千枚通しとかあてておいて、木槌でトントンというD・A・M式のお作法どおりで抜けてくれる。まず間違いなくダム社製スピニングを参考に設計したんだろうけど、黎明期のオリムピックみたいにフルコピーしたわけじゃなくて、基本的な設計思想を拝借しつつ大森独自の味ツケにしてるんだけど、にもかかわらずハンドルピンはネジじゃないんかい?ってところがツボに入った。大森製作所の技術者もダムクイックを分解するのに「ハンドルピンどうやって抜くんだ?」って苦闘したのが印象に残り、ダムクイックを手本に作るならハンドルピンはネジじゃダメ!って思ったとかだろうか?
いずれにせよ、面白いリールでラインローラーをどうするかは考えなきゃならんけど、稼動品までもちこんでなんとか実戦導入してみたくなってきた。ということで、とりあえず左巻きにして、グリスグッチャリシーリングして一旦作業終了しようとしたら、これがもいっちょ問題発生。上の写真のように、爪を右から左に移動するのは問題無くできた。これで左巻きの時に正常に逆転防止が機能するはずである。
そして、ハンドル軸のギアを突っ込んでハンドルもピンブッ刺して取り付けて、左側からそれらを突っ込もうとして、オシュレー(スプール上下)のクランクがどうにも塩梅が悪いことに気がついた。クイック110の時は、クランクは平面的で左右どちらにするときにも、ギアの上から真っ直ぐ出て、オシュレーションスライダーの両面どちらからでも固定可能になっているのでクランクは左右兼用できた。しかし本機ではクランクは写真下の様にグイッと曲がって下がってオシュレーションスライダーの真ん中へんに刺さって上からネジで留める構造になっている。対称形になってないので、ひっくり返そうがどうしようがこのクランクは右巻専用で、左巻きにするには反対側に曲がったクランクが別途必要である。強引に曲げてなんとかならんかとちょっと試すも2mmぐらいの分厚いステンレスっぽい板製なので曲がらん。箱に左用クランクとか同封されて売られてたのかもだけど現状無いモンは無い。
ちょっと困った。困ったけど、クランクはそれほど強度必要ではないだろうから、2mm厚のステンは加工できなくても、銅板ならあるいはアルミ板なら加工できるのではないだろうか?という気もするので、もがけばもがくほどどんどん沼に足が沈んでいくような感触は覚えるんだけど、とりあえずクランクは薄板加工に挑戦、ラインローラーも試したいアイデアがあったので、ちょっと頑張ってみることにしました。
なにしろ、がーんとデカいブッシュがはいってるだけでボールベアリングなしってのと、ダムっぽい凝った左右切り換え方式、そしてなによりウォームギア機というのもあって、売れるような弾では全然ないし、いじれるだけイジリ倒してなんとか稼動機に持っていって魚釣ってみたいと思って悪戦苦闘してみました。悪戦苦闘の様子は長くなりそうなので次回回しということで、珍しく”引き”終わりです。こうご期待。4 件のコメント:
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ナマジさん、こんばんは。
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これは隠しキャラレベルの激レア機ですね!
まさかここまでダムダムしいとは思いませんでした。
コンパックのネーム後ろの一桁ナンバーは世代だとは思うものの、見当たらないモデルが多く謎が深まるばかりです。
ちなみにカプリ無番は外観オービスのあれです。
デラックス期の主力ハイポイドフェースギアシリーズラインではカプリⅣは小型順に下から5番目です。
アトラス、シェブロン、デイトナ、カリエンテ、カプリ、サーフライダー、キャデラックと並びます(多分)。
14オンスとありますがⅡもそれぐらいでしょうか?
レビュワーAlanHawk氏によると ”…(世界的スピニングメーカー)ビッグ 3 を比較すると、デザイン イノベーションの観点から言えば、DAM が 1 位で、次にアブ、3 位にミッチェルが続きます。…”
当時最新鋭といえばダムだったのでしょうか、ダイワもダムを元ネタに数機種作ってたようです。
ダイヤモンドスーパー1000取説には”製造発売大森製作所 総代理店サンレイ商会”とあります。
70年フルーガー640取説には社名所在地が変わり大阪福岡の出張所が追加されサンレイ・フィッシングとあります。
福岡のダイヤモンドリールサービスセンターとサンレイ九州地区出張所は同じ所在地です。
シェイクスピア期も継続してたようですが、70年代後期には書類一切から消えてます。しかし大森九州出張所がサンレイ九州地区出張所の所在地の福岡市○○2-11広田ビル2階から福岡市中央区○○2-2-11広田ビルと見る限り一緒です。
ローラー部、軸含めてノギスでコンマ1mm程度の精度で図にするかベール部現物送っていただければ旋盤で引かしてもらいます。
険しそうですが復活期待してます。
2023年3月11日土曜日
コンパック「カプリⅡ」修繕激闘編 金切りバサミとハンドドリルとダイヤモンドヤスリ
①ハンドル左右交換に必要なスプール上下のクランク”左巻き用”が無い。
②ラインローラーが腐蝕して破損、固定用ナットも正しいものが付いてない。
という、にっちもさっちもなジャンク状態なので、ちょっと頑張って修繕してみることにして、アレコレ道具やら素材やら買ってお気楽に始めてみたら、えらい苦労してしまいました。
とりあえず、クランク作成の方は単純で簡単だろうということで、まずはそちらから手を付けてみた。まあ薄い金属板を金切りバサミで切って曲げて穴開けりゃ良いだけの簡単なお仕事です。
こちらはわりと想定どおりに事が運んで上手くいった。右巻用のクランクは厚さ2ミリあったけど、モノタロウオリジナルの金切りバサミの限界が銅板1.5mmまでとなっていたので、薄い分はテフロンワッシャーでも噛ましておけば事足りるので大丈夫だろうと銅板1.5mmを購入、したんだけど1.5mmもある銅板ってステンレスに比べりゃ堅くないにしてもペンチやら簡易な万力で挟んで曲げる程度で思うように曲げられるのか?っていう不安があってさらに曲げやすそうなアルミの1.5mmとついでに厚さ調整が上手く行かなかった場合の保険としてアルミ2mmの板も購入。使わなかった分はスプーンでも作ればいいやと採算度外視でこの時点で落札900円のゴミスピにサンドペペーパーやらテフロンワッシャーやらの小モノもゴチャッと買ったけど6,175円の追加出資。ブツが配達されてみると、1.5mmの銅板はこりゃ無理だっていう感じの堅さで早々に諦めて、1.5mmのアルミでとりあえず行ってみる。
右用のクランクから型をとって、金切りバサミで切る。この金切りバサミ、テコで倍力するタイプなのもあってか1.5mmのアルミであれば問題無く切ることができた。大まかに切り出して、角を取るように形を整えてやって、端が尖ってないようにサンドペーパーで面取りしてやる。
でもって、右用クランクと曲がりが対称になるようにペンチ2本で挟んでグイグイ曲げてやって、位置決めして釘でアタリをつけてからハンドドリルで穴開けてダイヤモンドヤスリでバリ取り。
左巻きにするにはまずオシュレーションカムにクランクをネジで固定しておいてから、ハンドル軸ギア関連一式をズポッと刺す、そのときにギアの上の突起にテフロンワッシャー挟みつつクランクの穴を突っ込んでEクリップで固定する。実際填めてみたら、スプールはちゃんと上下して良い線いってるんだけど、ちょっとスプールが下がりすぎるようで、スプールが乗ってる主軸の横棒がローターナットにあたって音がしている。クランクの曲げを大きくして穴と穴の距離を詰めてスプールが上下する位置を上にズラしてやったらちょうど良い感じになった。一番下の写真のようにハンドル回して窓からクランクの仕事ぶりを観察すると、曲げた形でちょうどハンドル軸のギアにアタらないようになってきちんと機能していて気持ち良い。左巻き用クランクの作成については合格点。
さてややこしいのがラインローラーのほうで、腐蝕してボロボロと崩れ落ちたラインローラーは、都合良くピタッと填まる部品を別のリールから持ってくるか、それができなきゃ”自作”というやや気が重くなるような作業に突っ込まざるをえない。まあ大森製のリールで似たような形式のラインローラーとかで共通のを探してみるかと、「アトラスⅡ」「マイクロセブンDX」「スーパーデラックス730」と調べてみたけどいずれも互換性なさそう。どのみち2台でパーツ共有というのも気持ち悪いので自作するしかないか、と覚悟を決める。通常、ラインローラー自体を自作するなら、真鍮を削り出してクロームメッキをかけるのが妥当だろうけど、真鍮削り出し自体はバス用のブラスシンカーで適当な大きさのを利用して、ドリルで穴を必要な大きさに拡張して、外径をベールやらの所定の位置に填まる直径に削るとともに、形状を昔やった”なんちゃってツイストバスター”みたいにドリルで回転かけつつ調整してやればできるけど、メッキは頼むとエラい金がかかるし個人でホイホイとできる技術じゃない。ので削れるのは織り込み済みで削れたら再度形状調整してやるか作り直す方向で、真鍮剥き出しというのは1つの手だろう。ただハゼ釣りチョイ投げ程度の使用なら削れて糸溝できてくるのに何年もかかるだろうから良いんだけど、ルアーでシーバス想定だともうちょっと投げる頻度も掛かる負荷も大きくて、真鍮剥き出しはやや頼りない。
でもって試してみたいアイデアが1つあった。ジュラコンスリーブの加工である。ジュラコンというのは商品名でポリアセタール樹脂とかいうのの一種らしく樹脂なのに堅い。過去、ラインローラーのボールベアリング代わりに突っ込んだりするのに穴の大きさ調整でハンドドリルのヤスリで削ったけど、異様に堅くて動画とか見ながら何十分もかけて数ミリ穴を拡張したのを憶えている。ベアリングの代わりにラインローラーの軸受け仕事をやらせて全く問題無い耐久性ってそこそこいけるんじゃないの?っていう感触があってポリアセタール樹脂を成形して作ったラインローラーっていう、樹脂は摩擦に弱く削れるという常識の盲点を突く作戦。まあダメで削れたとしても、削れるまでの期間が長ければ”削れたら作れば良い”って話で1シーズンも持ってくれれば次の出番までに新しいのを拵えて換装すれば良いことになる。
でもって、ジュラコン製でチクワ状の”スペーサー”と銘打って売ってる部品は、それなりに大きさもいろいろあるので適当なのが見つかるだろうと思いつつ、蔵に転がってる”いつか使うだろう”と買ってあったものの大きさを試しに確認してみると、あつらえたように外径はピッタリ。内径は大きいけどなんか詰め物を考えれば良さそうで、これは”ジュラコンで行け”という流れだろうと作業に入る。 とりあえず、回転式にするので元々填まってたスリーブの長さを参考にジュラコンを金ノコで切って、ハンドドリルのヤスリの棒にティッシュの詰め物をしてガッチリ填めて回転させながら、ダイヤモンドヤスリを押し当ててなんちゃってツイストバスター的な片側にラインが落ちる谷を作る。つもりだったんだけど、これが過去真鍮相手に問題無くできた工程がまったく進んでいかない。かなりの時間回しても、ちょっと溝が掘れかかったかな?ぐらいの進捗状況で全然削れねえんでやんの。逆に言えばラインで削られにくいわけで好ましいわけだけど、成形できないのではどうにもならん。これだけ堅いと刃物もとおらんよなと、思いつつダメ元でためしてみると、ナイフの刃はそれなりに堅いけど入っていくし削って成形できる。摩擦には強いけど切り削りには弱い的な不思議な物性。なのでちまちまとだいたいの形を作ってしまって仕上げだけハンドドリルで回してダイヤモンドヤスリ。お次は穴の径が大きいので、ベール側の軸を太らせなければならない。ブラスシンカー削ってスリーブ作るかと思ったけど正直面倒くせぇ。削れない程度の堅さの金属で太らせれば良いだけなら針金巻いておけば良いんじゃないの?と安直に細いステンレス線何種類か試したら割と良い太さのがあったのでグルグルと巻き付けてローラーよりちょいはみ出させて、かつ微妙に太りすぎたようだったのでジュラコンの穴の方にダイヤモンドヤスリ突っ込んでゴシゴシ穴拡張でローラーのスムーズな回転を確保。ドリルで回転させつつ押しつける程度の圧力では削れていかないけど、手で思いっきり押しつけながらだとそこそこヤスリが効くことも判明。
しかし止めるナットが無いのはいかんともしがたく、規格品では合わないようなので、ついでにこれも針金で行くかと、ベールアームから突き出したネジ山部分に細いステンレス線を巻き付けて最後ペンチでグリグリとねじりあげたら、とりあえず抜けることはなく止まるようにはなったので、ラインが引っかからないように落ちてたケミホタルの廃品利用でキャップを作って填めてエポキシで固定。これでエポキシが固化すればいっちょ上がり。
って簡単にいったら”激闘編”にはならんのよねこれがって話で、翌朝固化してラインローラーも回ってるのを確認できて「上手いこといったな」とぬか喜びしつつベールを起こしてハンドル回してリターンをカショーンカショーンと何度かやったら、キャップを止めてるエポキシが割れ始めた。エポキシ割れるのぐらいはエポキシをシリコンに変えるとかで対応できるけど、なんで割れるかっていったらラインローラーが抜けずに止まるようになってはいるけどグラグラで軸がベール返る度とかに動くからで、写真一番上みたいにグラグラして斜めってる状態だとラインローラーの隙間が片側で開いてしまいラインが落ちそうな状態になってる。これはよろしくない。キッチリとナットで締め上げて、グラつかないようにしないとだけど、ピッタリのナットの確保が難しいから針金で縛ったわけだし、元の持ち主もスカスカのナットを接着剤で固めてたわけで手に入らん。万事窮すか?と思いつつ頭抱えて唸っていると、針金をネジ山にグルグルして太らせて大きめのナットで填まるヤツを探すってどうだ?と思いついたんだけど、それってそういうネジ穴が舐めきったときの修繕用で”リコイル”っていう手法で、かつそれ用のコイルが以前使ったのが余ってるのではと出してきて、填めてみたら綺麗に填まるんでやがんの。そしてナットはM2.6の規格品がドンピシャで、余ったバネ部分の針金がナットの下からチョロリ出てくるけどそれをニッパで切り取れば、ベールがグラつかないようにしっかり締めることができた。
ふーっ、これで一件落着ってなれば良かったんだけど、これがそうはいかねんだわ。しっかり締めたら今度はグルグル巻きにした、軸の太さ調整のステンレス線の部分が太ってしまいラインローラー固定されてしまう。あちらを立てればこちらが立たず、帯に短したすきに長し、坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、ってなもんで悶絶。
まーたラインローラーの穴を削るか?って思ったけど、そろそろ谷を作った溝が穴に近づいてちょっとヤバめ。しょうがないステンの針金のもうちょいだけ細いのを買うかと思ったけど、どうせ買うなら厚みの(ということはスペーサーとしての長さも)安定しないグルグル方式の針金を買うのではなくてパイプ買おうそうしよう。ってことでアマゾンでちょうど短めの真鍮パイプの太さ何種類かのセットがあったのでスルリとマウスを滑らせてクリッククリック。1,738円の追加出資。最近読んだマンガに「博打打ちは過去の負け分まで回収しなければいけないとムキになって自滅する」的なことが書かれていたけど、ここまでオゼゼと時間を費やしておいて負けてなるものかとは確かに思う、という相変わらず”損切り”のできないワシであった。届いて、太さ確認してみるとちょうど良さげなのが一本あって「負けもここまでよ!」と何が”負け”なのかよく分からんけど安堵する。削れたら作り直しっていうのを想定すると、穴削ってしまってる一個目のに合わせたパイプでは毎回穴削る無駄な作業が出るのでローラーはまたジュラコン切って削って新規に作成。
真鍮パイプと軸の隙間は固定してしまえば削れるモノでも無いのでナイロンラインでグルグル巻いて埋めてエポキシで固定。チョイと真鍮パイプを長くしてかつ隙間にラインが落ちないようにパイプの長さをヤスリで削って微調整して、リコイル噛ませてナットで締めて固定。ちゃんとローラー滑らかに回ってる。ナットにラインが絡まないようにエポキシ盛ってやる。
って感じで一晩おいたのがこちらでございます。良い感じじゃん。ベール反転カショーンカショーンってやっても今度はヒビは入ったりせず大丈夫、グリスとオイルで回転もそこそこ滑らか。まあたまに回ってくれれば糸溝掘れにくい程度でラインが一箇所に落ち着いて転がりにくいのがラインローラーのキモだとは思ってる。 って感じで落札価格900円のゴミスピに多大な労力とそれなりの金額をつっこんで一応仕上がりはしたんだけど、結局釣り具の評価は魚釣らんと分からんってのがあるので、実戦導入してみます。苦労しただけに釣れたら嬉しいと思う。ちょい大きめの360グラム強でサイズ感としてはちょうどダム「クイック220」に似た感じなので、重いリール担当の初代アグリースティック7fと組ませてこの春シーズン超接近戦のN川担当で試してみたい。前回書いたように今期主力はマニュアルピックアップ化した丸ミッチェル「304」で行くことにしているけど、N川専属でこの「カプリⅡ」を試して、あんまり塩梅良くなければ、大森ダイヤモンド「デラックススーパー730」に継投という体制でいざ尋常に勝負勝負!最近すっかりPENNの出番がないけど、秋には714z主軸に戻そうかなとか考えてます。って書いておいて、秋になったら針金ベールのリール使ってたりして。まあ、なんにせよ楽しんでみます。
2023年4月1日土曜日
2001年と全く関係ない大森の旅
でもって、購入時右巻になってたのを左巻きにしてからクリクリして不具合ないか確認していくと、逆転防止が効かない。まあ何度も書いてきたけど、逆転防止が効かなくなってるのは単なる組み間違いが多いので気にせず分解清掃に入っていく。
とりあえず効かなくなってる逆転防止からみていくと、案の定外れてて填め直してはみるんだけど、填めても押しつけが弱くてカカカカッっとか掛かり切らない感じで逆転してしまう。これ明らかにバネが大きさ合ってなくて、本来なら爪の下のフリルの付いたスペーサーにクルッと巻き付くべき巻いた部分が、思いっきり軸より直径が大きくて左の写真の様に下にずれて傾いてしまってる状態で、そのままでは爪を逆転防止の歯車に押しつける力が足りない。タチウオハリス用のステンワイヤーでちょうど良いのを作っても良かったけど、面倒くせぇのでギュッと開いてやって、爪に掛かる部分が抜けないように角度キツくして填め直したら正常に機能するようになったのでとりあえず良しとしておいた。多分大きさが合ってないのは、他の機種用とかの余ってた部品を流用してとりあえず填まるからまあいいかという感じで出荷しているんだろうと思う。爪の下部にサイレント化するときのバネか樹脂パーツが引っかけられそうな凹部があるのも、多分他機種からの流用っていうか余り部品をぶっ込んででっち上げてるんだろうってのが想像に難くない。先ほど”出がらし”と書いたのはこういうこと。ヤレヤレだぜ。 タップネジがネジ山ナメりそうになってるのも安パッチいし、ベール返しの蹴飛ばしがダイヤモンドキング同様、樹脂製本体そのもので金属製のガード兼簡易ローターブレーキが無いのも残念な仕様。タップネジがダメってならキャリアーもダメッて話で樹脂製の高級機ではないリールなら、不人気実力派マイクロセブンCシリーズのように金属雌ネジ入れたりしないのも、軽量化の点では有利だしダメとまでは思わないけど、ベールアーム受けとかが、樹脂製ローターの方で受けさせてて、止めているのはタップネジってのはさすがに耐久性的に不安で安っぽいと感じざるを得ない。同じ樹脂製でタップネジ使用のキャリアーではベールアーム受けるのは専用設計のネジのネジ山を切ってない円筒部分で受けているので、樹脂で受けるより耐久性には優れていて安心設計。
とはいえ、ステンの打ち抜き2枚の安上がりで丈夫なストッパーの歯車とか丈夫そうだし、真鍮のローター軸ギアに、ネジ込みハンドルにできる鉄系の芯を鋳込んだ亜鉛鋳造のハンドル軸ギアとかは、これぞ大森ハイポイドフェースギアっていう設計を踏襲し受け継いでるし、小型のスピニングに単純クランク方式のスプール上下(オシュレーション)機構とかは、量販店の店頭で4080円で売られてたリールなら上等だろうし、ドラグが硬質フェルト湿式3階建てで良いドラグなのは、”でがらし”でもそこは大森ダイヤモンドリールなんだと感じたところ。ローター軸ギアがダイヤモンドキングと違ってスポンと抜けて整備性が良いのも悪くない印象。ベール折り畳み機構が省略になってしまったのは残念だけど、値段もそんなに高くないことと考えると、それなりに使えるリールにまとまっているのかなという気はする。ちなみにラインローラーはセラミックの直づけ回転式。ルーロン樹脂系スリーブ入りが大森熱患者としては欲しくなるけど、同様の仕様のキャリアー使ってて削れたとか不具合は生じなかったので、滑りの良いセラミックラインローラーは直づけでもあまり金属を削らないのかもしれない。 ということで、青グリスとダイワリールオイルⅡでいつものように仕上げておきましたとさ。なんだけど、小型のスピニングは蔵に豊富にあったりするので、コイツ使うならマイクロセブンCSとか、何ならダイヤモンドキングミニという手もあって、また余計なモノを買ってしまったという気がしないでもないけど、この辺の”チープ大森”はワシが書かんと誰も書かんだろうし、”大森ダイヤモンド”が消え去る間際のリール達には、なんか見てて切なくなってくるような実態もこれあり、誰も読まんとしてもせめてワシとしては書きとめておいてあげたい。丈夫な大森ハイポイドフェースギアにまともなドラグという心臓部はちゃんと継承されているし、軽さも評価はできるので、キャリアーSSは使ってみたいけど、何万も出せるか!っていう人は2,3千円も出せばまず買えるので、軽さとギアの感じだけ体験してみるのに試しに買うのはありかなと思います。逆転防止のバネだけちょいと調整必要だけど実釣で”使えない”リールではなさそうに思うところ。
で、お次は、なぜまたナマジは外蹴りアウトスプール版「マイクロセブンNo.3」を買っているのか?説明させてください。以前「スーパーセブンNo.3」を入手したおりに、マイクロセブンNo.3とワンタッチスプールが互換性があるというのは確認できて、換えスプール体制できたなと喜んだわけだけど、以前から我が家にあるマイクロセブンNo.3は初期の深緑の”グリーニー”な個体でスプールまでその色なので、イマイチ黒のスーパーセブンのスプールとしては色目的にしっくりこなかった。という状況の中、ポーンとネットフリマに2200円というお値打ち価格で1台出ていたので、黒ボディーにシルバースプールはよくある配色だし問題無かろうということで、スルッとマウスが滑って確保。分解清掃してみるとなんと、左巻き用のネジがハンドル後方?のネジ収納部に入っておらずちょっとガッカリだったけど、元々スプール要員で買ったわけだし、必要なら左巻き用ネジこっちに持って来ても良いので気にしないで右巻で整備しておいたんだけど、2箇所固着があってやや難儀した。ベールアーム反対のローターに填まる金具の固着はネジ山なめそうな気配がしたので放置しておいたけど、ローター軸のボールベアリングはシャーシャー鳴り始めてるので、現状使えるっちゃ使える程度だけど、今後ベアリング交換が必要になることを考えると固着は外しておいた方が良いなと、ボディ側からマイナスドライバー突っ込んでベアリングにあてて、木槌で小突いたらシーリング用のステンレスの輪っかはさすがに壊れたけど、ベアリング自体は外れてオープンベアリング状態でグリス盛って、固着しないように周りにも盛って整備しておいた。外蹴りで部品数少なく、丈夫で余計なモノが付いていない何度見ても良いリールだと思う。 でもって、お手入れ関連の現場導入組の2台。アズキ色のシェイクスピア「2062NL-2」はなにげに超優秀。実釣面での実力は昨年秋に証明したところだけど、整備性の面でもアメリールらしい簡単さ&放置上等で極めて優秀。昨年秋にシーズン終わって全バラしフルメンテしようと思ったけど、整備待ちのリールが片付かなくてこの時期になってしまったのに無問題。シーズン中水道水ジャバジャバ掛けて外回り注油だけだったけど、どこも錆びてないし浸水らしい浸水もしてないようで、これなら分解清掃必要なかったぐらい。日本じゃ人気ないけどこのアズキ色のリールは買って間違いない。買ったらドラグだけ純正の皮パッドが干からびてたりするので適宜入れ換えてやれば、インスプールスピニングとして最強級の実用性を発揮することを確信する。渓流には小さい方の2052系の方が良さげだけど、2062系はC4クラスでシーバスにちょうど良い。ベールアームの反対側のベールリリース周りにラインが絡んだりしないか最初不安だったけど、よっぽど糸ふけ出したりしないと絡まず普通に使ってる分には大丈夫。2062系は4台も買ってしまってるけど売る気がなくなるぐらい気にいった。
でもって、問題児のカプリⅡ。ルーロン樹脂製のラインローラーは意外に大丈夫っぽくて、一時間強の出撃3,4回では溝も掘れてないし特になんともなってない上に”なんちゃってツイストバスター”はやっぱり効果あるのか糸ヨレも気にしなくて良い感じ。わりと調子良いじゃんと思ってたら、なんか逆転防止が効かなくなってきた。最初ちょっと掛かりが悪い時があるなぐらいに思ってたら、気がついたらカリカリ鳴っててストッパーが稼動してるのに爪が掛からず常時逆転可能になってしまった。どういうこと?と分解してみたらストッパーの爪が掛かる部分がギアと一緒に亜鉛鋳造なんだけど、これが山が削れて低くなって爪があたってるけど掛からなくなってる。爪の方は鉄系の堅い素材で歯車の方が負けて摩耗してしまったようだ。写真は在りし日の正常な状態で、右側のギア裏、工場マークみたいなどっちの回転でも刃が引っかかるはずの凸部分が角が丸まって低くなってしまっていた。まだ凸が完全に平坦になったわけではないので、爪をもう少し内側に出るようにすれば引っかかりそうなので、爪の根元を削って調整したら上手くいった。ただまた同じようにカリカリ鳴らしてリール巻いてるとまた同じように削れていくのは明白なので、今後はミッチェル式でストッパーは外して使って、タモ使うときとかハンドルから手を放すときだけストッパーを掛ける運用でいかざるをえない。 2001SSは”出がらし”だったけど、”カプリⅡ”は錆びて朽ち果てる鉄系ラインローラーといい、カリカリ巻いてると削れていく亜鉛製ストッパーといい、後の大森製作所にみられるような適材適所な素材選定の部分がまだ”煮詰まってない”段階のように見受けられる。やっぱり大森製作所も最初っから我らの愛する”大森品質”だったワケじゃないってことで、いろんなリールのマネから始まって、試行錯誤繰り返してだんだん上手にリール作れるようになっていったというのが見て取れる。概ね「マイクロセブンDX」の時代(1960年代まん中頃)から「マイクロセブンC」の時代(1980年代まん中頃)ぐらいまでが、ハズレの少ない大森製作所的黄金期なのかなと思ったり思わなかったりしてます。写真は蔵ひっくり返してて出てきた1985年の大森製作所カタログで、コレ見るとマイコンシリーズが基本の樹脂ボディー”100”シリーズ、ウィスカーチタンカリ仕様の”ウルトラ”シリーズ、ツイストバック搭載の”300TB”シリーズとあり、それぞれ米国流行のトリガーモデルがあって、ついでに公式でも「フィールドの実力派」「個性豊かなダイヤモンドリールの中で、地味ながら忠実」と地味な実力派扱いのマイクロセブンCシリーズと、似たような機種の派生が増えてて若干とっちらかり始めた気配はあるといえばある。とはいえマイコンTBシリーズ(85'新発売)とマイクロセブンCシリーズはワシの”推しリール”なので、この辺までを黄金期に含めたいところ。(アレッこの時代ですでにTBシリーズ以外樹脂本体ということは、大森製作所最後の金属ボディーのスピニングはマイコンTBシリーズだったのか。UPフィットとかアルミスプールの機種はその後もあったけど金属ボディーはないよね?)結局なんでも一緒で、釣りでももろにそうだけど、最初から上手くできるわきゃなくて、上手い人の真似して、試行錯誤を繰り返して、経験踏まえて、改良加えて、ものごとって上達していくんだと改めて感じましたとさ。
11 件のコメント:
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こんばんは。
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ご無沙汰しております。
相変わらず熱量の高い文章でうかつなコメントは出来ないですね
最近はオールド系のリールに手を出していなかったのでコメント控えておりましたが、最後の大森らしい大森リールは何か探っておりました。
我が家にもdiamond 2001 Mが転がっており、こいつが最後のねじ込みハンドル大森機と思っておりました。(ナマジさんの分析通り各部タップネジはいただけませんが…)
しかし先日Silster製 Tiny20なる超小型リールを入手したのですが、こいつがねじ込みハンドルで内部機構的にも間違いなく大森、それも「korea」の刻印がフットにあったので韓国大森が関わっている様に思われます。
末期の大森がシルスター、上州屋に吸収されていったのは知っていましたが、その中にもねじ込みハンドルの大森イズムを継承したリールが他にもあるかもしれません…
今、Silsterが熱いですよ‼
2023年4月8日土曜日
ゆく川の流れは絶えずして同じ川に二度入ることはできない
釣り場から帰ってきて、苦労して修繕して釣り場復帰させた、大森製コンパック「カプリⅡ」を洗おうとして衝撃が走る。近場の釣りがほとんどなので竿にリール付けたまま2本継ぎの竿をロッドベルトで束ねて持ち運んでて、帰ってきたらそのまま外の水道でジャバジャバ洗うんだけど、釣ってるときは明かりつけたくない(魚が警戒しかねず釣り場がバレかねない)ので暗くて気がつかなかったけど、ラインがワンタッチのボタンにグルグルに巻いてしまっている。と一瞬思ったんだけどなんかそれにしては、巻いている部分が長い。ボタンそんなに飛び出てたハズがないので理解に苦しんでたけど、理由が分かってマズいことが起こっていることが判明してゾッとする。これドラグノブが無くなってる。
普通スプール押さえているドラグノブが無ければドラグ滑ってラインが巻けなくなるかスプールが落ちるなんだけど、ドラグノブが填まってた位置にラインがグルグル巻きになってるのでドラグは効いてないけどラインは固定状態で近距離は巻けるしスプールもおちないので気がつかなかったようだ。写真は普通に巻ける部分15~20mを引っぺがしてグルグル巻きに到達した状態。ドラグノブ落ちた直後にラインが巻くという不幸な偶然が起こってしまったのかと思ったけど、そんな都合の良いというか悪いタイミングでそうそうことが起こるとは思えず、逆にラインが巻いたからドラグノブが落ちたというのが正解かもしれん。ラインがドラグノブの下に潜り込んで巻いてしまい、ドラグノブを押し上げて落としたっていうほうがありそうに思う。
とにもかくにも無いと困るので探しに釣り場に戻る。途中の道も目を皿にして下を向いて探しつつ、釣り場では3つのポイント、立ち位置的には7箇所で投げたので足下はもちろん、柵から乗り出して投げてた場所もあるので、ヘッドランプで水中も照らして探したけど、足下には落ちてないのは間違いなさそうだけど、水中は暗い時間水位もあるとなんも見えんのでどうにも分からんかった。こうなっては発見は望み薄だけど、それでも一縷の望みにかけて次の日明るい時間の干潮時に行ったけど、降雨で増水してたから釣りに行ったぐらいで流れは結構あったし、アルミの軽くて小さい部品など流れてしまっただろうし、どこで落ちたのかも定かではないので覚悟はしてたけど見つからなかった。犯行に使われた凶器を探す警察のように鋤簾(じょれん)とか使って川ざらいしてしまいたいぐらいだったけど現実的ではなく、泣く泣く泣き寝入り。
なんでワンタッチの部分を接着剤で固める必要があったのか?と以前の持ち主の意図が分からんかったけど、多分こういうことがあって、落として気がついて回収できたので固めたのかもしれんと思い当たった。なんにしても手間暇掛けて金掛けたリールが使用不能になってしまいガックリ来た。モノはいつか壊れる。釣り具が釣り場で壊れるのとかはある程度覚悟して使っている。どうしても壊したくないなら釣り場に持ち込まずに棚にでも飾っておけという話ではある。とはいえ自らの不注意で落としたことに気付かず、ラインをフケさせて巻いたから起こる不手際が原因だとなると、リールに対して申し訳なくてどうにか復活させられないかと悪あがきを始める。まずはパーツ取りにできるような個体が出ていないか、普段毎朝チェックしている国内ネットオークションとかに出てないのは調べるまでもないので、セカイモンでイーベイに出物がないか見てみるも、「86カプリⅣ(デラックススーパー系)」は部品売りさえあるけどカプリⅡはない。そらそうだ、ラインローラーが錆びて朽ちる素材でストッパーが削れる素材だと、使われたらすぐに壊れて生き残った個体は少ないハズで、完品が出てくるとしたら箱入りデッドストックぐらいで、ジャンクで残ってて今さら売りに出るほど売れもしなかったんだろうというのは想像に難くない。ジャンクと部品売りは薄い可能性に賭けて今後もチェックしておきたいけどコリャダメだ感が強い。なんかちょうど良いナットでも探して填まらんかな?填まればあとはスペーサーとか使ってドラグ締めるツマミぐらい何とかなりそうには思ったり思わなかったり、既に死んだ子の歳を数えるに近いような悪あがきに突入してるけど、手塩に掛けた我が子が生きていればいくつになったか親なら数えずにいられないように、ワシも諦め切れん。
ネジ入ってる道具箱とかさらってみるも大きめのナットって在庫が無くて、ホームセンターまでひとっ走りするかと思って、ふと「待てよ、大森製のワンタッチのスプールのドラグノブならひょっとして填まるのがあるんじゃないか?」と悪あがきしてみる。大きさ的にはNo.3ぐらいかなと、先日いじったばかりの外蹴りアウトスプール版「マイクロセブンNo.3」のを試したらちょっと大きくてスカスカ。やっぱりダメかと諦めかかりつつも毒くわば皿までで一つ下のサイズの「マイクロセブンNo.2」のドラグノブを試したら、オオッ神よ!信じてないけど感謝します!!填まるしちゃんとドラグ締めてくれて機能する。相変わらず下部に隙間ができるのと見た目が致命的に全く合ってないというのは仕方ないとして、釣り場に再度復帰させられそうには思う。とりあえず今シーズンぐらいN川要員で使ってルーロン樹脂製のラインローラーの耐久性試験をしつつ、魚釣って釣り道具としての本懐をとげさせて、あとはドラグノブ外してわが家の蔵でワシが死ぬまで眠ってもらい、運が良ければ純正ドラグノブ入手して復活の目もなきにしもあらずって感じか。ということで、しばらくドラグノブは借り物で行くんだけど、浮いてるのでまたドラグノブの下にライン巻いて落としかねない。ちゃんと指でライン放出調整して糸フケないようにしておけよというのはごもっともな意見なんだけど、大きめのリールなのでアタイの小さめの手では指届きにくくてギリギリなの。許して。マイクロセブンNo.2は綺麗な個体でコイツまでドラグノブ欠品にしてしまうのは避けねばならぬ。仕方ない、ボロい個体探すか。と何が仕方ないのか全く分からんけど部品取りできそうな個体の出物が無いかネットオークションとか探してみた。なんとまさにビンゴなシェイクスピア版マイクロセブンNo.2同型機「2410」の”ドラグナット”がイーベイに出てる。しかし円安のおりセカイモン通して購入すると6千円以上となってしまい、何か別のモノ買うことがあったら送料節約できるので関税かからない額まで調整するのに買っても良いけど、さすがに部品一個にその金額はキツい。普通に中古リールが余裕で買える。かつ買うのはマイクロセブンNO.2でなくても、大森製作所の同じドラグノブ使ってる機種、具体的にはオートベールでもスーパーセブンでも問題無い。
へっへっへ上玉が見つかりやしたぜ。ジャーン「オートベールNo.2」。我が家に新品箱入り娘がいるので2台目だけど、ひーとり娘とやるときにゃ親の承諾えにゃならぬ~♪ってぐらいで、おいそれと使えないのでちょうど良い。何がちょうど良いのか自分でも分からんけど次女なら問題ない。黄色いお店のネット通販で2,657円+送料880円の計3,537円で、カプリⅡにこれまで突っ込んだ金額はだいぶエラいことになりつつあるけど、趣味で楽しんでやってるんだから良いンです。と沼の底からゴボゴボと叫んでおこう。6千円でドラグノブ一個買うことを考えたらお得!れいによってハンドル周りの銘板が片側剥げ落ちて、かつラインローラー固着ということで中古屋価格としては安めだけど、ぶっちゃけネットオークションとかで待てばもっと安いかも。だけど、今必要なので時価で買うしかない。ということにしておこう。2023年4月15日土曜日
リピートアフターミー!オートベールNo.2で学ぶダイヤモンドリールの分解整備
なになに、もっと深く潜りたいけど自分で整備するのとかちょっと取っつきにくくて、って何を言ってるんだ良い若い者が!そんなモノは安ずるより有無を言わせないでレッツトライだ!!四の五の言う暇があったら手を動かす!分かったな?
そんな諸君達にちょうどよい教材となる事例があるので、今日はしっかりダイヤモンドリールの分解整備の方法を学んでいって欲しい。なお今回学ぶ方法は独自の”ナマジ流”なので、専門的な知識のある人からみたら、やっちゃダメなこともしてるかもしれんが、でもまああんま気にするな。ダイヤモンドリールはタフだから全く問題無いぜ。気軽にリピートアフターミーすれば、沼の底の濃い仲間にカモンジョイナスだぜ!
ということで始まりました、ダイヤモンドリール分解整備講座、講師のナマジでございます。若輩者で恐縮ですが本日は皆様よろしくお願いいたします。
はい、まずは準備が大事、何事も段取り上手に行きましょう。準備で何が大事かっていえば、とにかく作業する台にする”お盆”これが無いなら分解整備するなっていうぐらいに重要。とにかく細かいパーツが転がってどっか行ってしまうのは、お盆の上に分解した部品を並べていくことでほぼ防げます。というかテキトーな場所でバラしてると組み上げたときに部品が足りなくなること必至。”ほぼ”と書いたのはそれでも”跳んで脱走”系の部品があって、バネがたまに外した途端にピョンと跳ねることもあるけど、鬼門と言って良いぐらいに跳ねるのがCクリップで、始めから跳ねることを見越して、リール本体内に跳ね落ちるような角度から外してやるのが吉。細かい部品をネジとかどこのだったか混ざってしまわないように分けるための小皿もあると便利、パーツクリーナー液に部品を泳がせるのにも小皿有用。でもって、分解するのに必要な工具、ドライバー、スパナ、六角レンチ、細かい作業用のペンチ、場合によってはトンカチなどを用意して、固まった古い油を落とすにはパーツクリーナーとパーツクリーナー用のお盆(油で汚れるので大きめの食品トレーで何回か使ったら捨ててる)と歯ブラシ、ちなみにパーツクリーナーは「モノタロウ」オリジナルのお徳な増量版を愛用。そして何はなくてもティッシュ、あとは綿棒、グリスとオイル、意外と重要なのがデジカメ、というところが主な準備するモノだけど、リールが手に入って道具達の準備ができたらハイ始めましょうとはいかない場合もあるので要注意。錆びまくってて固着が心配されるようなときは一旦CRCをぶっかけまくってビニール袋に突っ込んで結んで数日放置し固着部にCRCが浸透して外し易くなってから作業した方が良い場合もあったりする。まあ、どうにもならん固着はそうやってもどうにもならんけどな。大森だと外蹴りアウトスプールの「マイクロセブン」と同時代の「タックル5」のベールアームの反対側のローターに止めるネジと、ベールアームにラインローラーを留める、円錐に切り込み入れた形のナットが固着外せず後者はねじ切った前科あり。ここで大事な事は固着は無理に外さない、ということか。ラインローラー固定でも使えるけどねじ切ってからベールアームごと再建とか難易度高いのでヤバそうに思ったら放置。あと、購入なり落札なりしたリールが届いて、ハンドル回したりするときも注意。ここでも動かなかったら無理に回さないことが大事。グリス固まったり変なところが腐蝕して固着してたりすると回したら壊れたということもあり得ます。ということで、準備もできたのでダイヤモンドリールを代表する”標準機”だとワシャ感じている、大森スピニングと聞いて思い浮かぶような仕様がだいたい全部乗せで揃っている「タックルオートNo.2」を分解しつつ整備のコツやらその機構やらをご説明してみましょう。分解していくときに、先ほど準備するものとして意外と重要だと指摘したデジカメでバシバシ写真撮りつつ作業を進めてください。あとでブログネタにするから撮影が必要ってわけではなく、部品の填まってた位置関係、順序、特にバネがどこに掛かっていたかなんてのは、見たモノを全て記憶しておける直感映像記憶能力でも持ってなければ憶えていないモノで(我が姉が能力者でトランプの「神経衰弱」で一回めくった札は全て憶えていた)、あとでどう填めていいか分からなくなってしまうのはありがちなので、分解時デジカメで部品の填まり方とかを撮影しておいて組むときに分からなくなったら画像で確認する。コレ大事。デジカメのない時代に丸ABU分解して、ストッパーのラチェットをはさむ薄い板のついた爪をどう填めたら良いのか途方に暮れるのは、あの時代にリールをいじった人間の共通体験だったのではないだろうか?
まずは外し易いところから順番にという感じで進めていく、ハンドル外してスプール外して、でハンドルはこの時代のは分解できないので汚れをパーツクリーナーで飛ばして拭き取ってからグリスとオイルで適宜整備というかんじだけど、パーツクリーナーはイソヘキサンという油をとかす溶媒が主体にアルコールとガソリンという主成分のようで、イソヘキサンは樹脂に悪影響があるようなので、ハンドルノブは今のところ大丈夫だけど、細かいパーツやら接着面には使わない方が無難でCRCで磨いておくか樹脂OKのパーツクリーナーを使用するべきとのこと。ワシャハンドルとか金物と外せない場合を除いてCRCで汚れ落とすようにしている。
スプールは、裏面のドラグの”音だし”が写真撮っておかないと分からなくなりそうな構造で、バネからのびる針金部分を開いてスプール裏の出っ張りを挟んで、その挟んでできた隙間に音出しの爪の曲がった部分を刺してネジ止めしてある。ドラグ周りは、ドラグパッド留めてるCクリップさえ外れればあとは外すだけなので、特に問題はないけど、ここでも順番を写真に収めていないと間違えるかも。良く考えていけば順番分かるはずではある。スプールと一緒に回る底か耳付きワッシャー、と軸に固定される小判型穴ワッシャーが交互に来て、その間にドラグパッドのグリス漬けの硬質フェルトが来るというドラグの基本構造が分かっていれば間違いようはない。スプール座面の赤いファイバーワッシャーはドラグの一部としても邪魔しない程度に機能してるハズだけど、邪魔しないようにするならもっっと摩擦の少ないテフロンとかが好適で、かつ長い期間においては赤いファイバーシートは経年劣化するのでテフロンワッシャーに交換できればしている。この時テフロンワッシャーの枚数変えたりして厚みを調整することで、ある程度ラインの巻き形状の調整もできる。薄くするとスプールが下がるのでそのぶん”前巻き”になる。ドラグパッドもパーツクリーナーにしばらく浸して拭き取って、また浸してと2,3回もやれば古い油が抜けてくるので、乾燥後新たにドラググリスを塗ってやる。
次に本体蓋をパカッと外してやると、オシュレーション(スプール上下)のクランクのピンが主軸に突き刺さってるのを抜けば、ハンドル軸のギアも抜けてくる。ピンが抜けると主軸もローター軸のギアから抜けて、ローター周りを分解する準備も整う。ハンドル軸には力の掛かってくるギアの側に一個ボールベアリングが使われている。同時代の簡易版的なタックルオートではハンドル軸のギアは両側真鍮スリーブ受けとかで、それで小型機の巻きが重くなるとかは特に感じず、あんまりありがたみは感じたことはないけど、本体内なので錆びるような場所でもなく、あって悪いというほどではないと思っている。また大型機ではオシュレーションシステムがクランク方式ではなくハンドル軸の回転から歯車回して減速する方式らしいけど現物はまだ見たことがないので、見てみたいという症状が出かかってます。
ハンドル軸のギアをヌポっと抜くと、ローター軸のギア直上の歯に掛かる、逆転防止の爪とか、スイッチ関係が見えてくる。右が逆転防止スイッチON状態で、本体にネジ止めされた”爪”はバネによってストッパーの歯に押しつけられている。左が逆転防止をOFFにして切った状態で、下げたスイッチから繋がる銅の部品が、爪の歯車に当たるのと反対側のお尻を引っかけて下げることにより、爪は歯車から離れてストッパーが掛かってない状態になり逆転するようになる。バネの巻いた部分はネジの下にあり片方の端が爪を引っかけて歯車に押しつける方向に効き、もう片方の端は本体上部の角の方に引っかかってる。オレンジで囲んだところがバネの各端。というようなややこしい部分は写真に撮っておく感じ。
主軸も抜けたら、ローターが外せるようになるのでギア含め外していく。ここでちょっと注意が必要なのは、大森スピニングの場合、ローターを留めているナットは逆ネジがほとんどなので、正ネジのつもりで「堅くて回らないな」とグイグイ締めてしまっていると、ネジ山が飛んだりしますのでご注意を。でもってローターの下には、ベール反転蹴飛ばし関連と、ベアリング及びギアを押さえてる円盤、銅製の板を曲げた簡易ローターブレーキが見えてくる。
3箇所のネジを外して、抑えの円盤を取っ払うと、No.1以下のサイズではローター軸のギアの上部を引っ張れば、ギアがボールベアリングごとヌポっと抜けたんだけど、このNo.2ではまずベアリングを上に抜いておいてから、下の本体内部側からギアとストッパーの歯車を抜く方式。
たまにというか、ちょくちょく本体にローター軸のボールベアリングが固着してしまってる場合があって、錆が酷くなければここでも”無理に抜かない”で放置で良いんだけど、ベアリング錆々とかで抜かざるを得ない場合は、ベアリング壊して外しても規格品のボールベアリングなので本体壊さないようにだけ気をつけて、裏からドライバー当ててトンカチでどついて無理くり外したり、ドリルで穴開けて破壊してむしったりしても、新しいボールベアリングでクルックルに復活させられます。No.1、No.2サイズは共通で外径14mm、内径7mm、幅5mm、No.3サイズで外径24mm、外径9mm、幅7mm、いずれも国産のステンレスボールベアリングであれば数百円程度。ベアリング買うのはモノタロウ便利。ローターもローター軸のギアも引っこ抜けたら、本体は残ってる逆転防止関係、爪はネジ止めされてるのを外し、スイッチ関係はEクリップで留まってるので外せばガラのみになる、その後はローター関連。
まずは、固着しているという触れ込みのラインローラーだけど、実は全く心配いらない。ローラーを留めているネジなりナットが固着している場合は前述したようにヤバい場合があるけど、ラインローラーにはルーロン系樹脂スリーブが入っているので、固着しているといっても真鍮スリーブやまして鉄系スリーブのように錆びて腐蝕して分かれがたく融合してしまっているような固着は起こり得ない。ルーロン系樹脂は錆びないので、CRCぶっかけたりしてつついてみたり捻ったり引っ張ったり、それでもダメならある程度柔軟性もあるので、金属部分との間に千枚通しでも突っ込んで変形させつつ引っぺがせば、剥がれてくれる。形は元に戻る。で腐蝕して緑青吹いて太ってしまってる真鍮にクロームメッキのラインローラーの内側、両サイドを目の細かいサンドペーパーなどで慎重に削り取って、本来あるべき寸法に戻してやって、引っかかりつつも回りそうになってきたら、隙間にコンパウンド(ワシ歯磨き粉で代用してます)塗って輪ゴムでルーターと接続して回して当たりをとって滑らかな回転に仕上げておく。なんら問題無い状態に復活。グリス塗って回転が重いようならオイルをさして緩めてやってお好みの回転具合に。 ローターにはベールアーム側にベールスプリングとベール折り畳みのポッチが付いている。ベールスプリングはトーション2回巻きで、使ってると数シーズンで折れるのはいかんともしがたいところ。バネは作ってもらうか自作して用意して、折れたら交換と割り切るしかない。釣り場で折れてもアウトスプールのリールなら、投げ終わったらいちいち手でベールをキッチリ位置まで返してやるのが面倒だけど釣りが全くできなくなるということはない。インスプールだと手で返せないので難しいけど、釣り場ではしかたないので左手でローターを回しつつベールを手動で起こして釣りしたこともあるけど、それに比べればアウトスプールの場合はなんぼかましである。
折り畳みのポッチがベールアーム基部の左上ぐらいにあるのが分かるだろうか?中にバネが入ってる先がふさがった筒がローターの穴に出たり入ったりする構造で、普段はちょっと出てベールアームをライン巻く位置で止めているんだけど、ポッチをローター内に押しこんでやると、ベールアームの止めが外れてライン巻く位置を越えてパタンとたためてコンパクトで携行や収納に便利。ハンドルさえたためない今時の高級スピニングさまのようにエラそうに手間やら場所をとらせない親切設計。
ローターのベールアームの反対側には、内蹴りで”オート”にベールを反転させるための機構が入っている。上の写真がベールが返った状態で、下がベールを起こした状態。いずれも側面の蓋をハズした状態。
ベールを起こすと、ベールワイヤーのお尻の部品にある出っ張りが”リリースレバー”の棒の部分を右に押しやって、リリースレバーの下部がバネをたわませつつ下の写真の矢印のように先がローターの中心に向かって出っ張る。
その状態で、本体上部、ローターの下に入る部分の蹴飛ばしに、リリースレバー下部の先(写真×部)が回転して、まず軽くローターブレーキに当たりながら接触して、写真下の矢印と逆の方向に各部が動いて、ベールスプリングの力でカションとベールが返る。という仕組み。
ちなみに、このリリースレバーを左側に寄せているバネがあるんだけど、No.2についてたのは填めるときにちょっと苦戦した写真上のグルグル巻きタイプ。8 件のコメント:
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これさえ読めば誰でも大森デビューできますね
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布教活動お疲れ様です。
あとはスプールエッジの傷消し術もスピニングレストアの必須科目かと。
私は200→1000→2000番耐水ペーパーの後、砂消しでフィニッシュです。
私も最近浮気気味でアメリカ系チャイニーズなヴァンスタールに手を出してしましました。国産種とは別方向の系統樹上にいる珍種を発見した気分でいじり倒しています。
近年はアメリカン方面から出てる怪しいリールに興味があるのですが、値段的になかなか手が出ないです。
AccurateのTwinSpinやIRT reelsのスピニング、Camekoonなど一部メーカーは耐久性とメンテナンス性を意識した方向に回帰する気があってちょっと興味深いのですが…
2023年6月17日土曜日
大森を触るとホッとする?
なんか反動で、サクサクと分解整備できて気持ち良いスピニングが触りたいなという気分で、馴染みの大森スピニングで整備待ちのを2台ほどいじってみることにした。やっぱり大森はイイ。安定感があるっていうか、癖が分かってるってのもあるけど安心していじくれる(今思うとこんなこと考えてたのが”苦戦フラグ”)。
そんな大森スピニングなんだけど、最近またちょっと値段が上がってるように思うけど気のせいだろうか、大森アナリストとしてはそのへん気になるところ。一時全体的に値段下がってて、ちょっとボロ目のコメットとか一万切る値段で晒されてたりしたけど、また何万って値段がつくようになっている。チョット驚いたのが今回分解したうちの1台は「マイコンNo.202」という200番台の数字が振られたシリーズなんだけど、コレの小型機「No.20S」がネットオークションで2万を超える値段で落札されていたのがあったことで、様子見で2200円で入札してたけど桁が違った。あんまり話題になってるのを目にしたことがないシリーズだけど”マイコン沼”の住人には高評価のシリーズなのだろうか?ワシが買った「202」自体は、2080円落札の送料750円と3千円がとこも出しときゃ買えるだろっていう不人気大中型大森の相場価格でしかなかったので、たまたまどうしても欲しいマニアが2人居て競ったのか、200シリーズ小型機は実は人気あるのか、中堅大森アナリストのワシとしてもどう分析して良いのか判断が難しい。まあ”たまたま”かなと思う。
値段が競り上がった要因の一つとしては、弾数の少なさがあると思う。大森マイコンの系譜をたどると、元祖「マイコン」シリーズが1980年登場、そして樹脂製の「100」系シリーズが1983年登場、「200」系シリーズも同年のようで、84年カタログにはすでに掲載されている。でウィスカーチタンカリ強化樹脂を使用した「ウルトラ」シリーズとワシの愛機であるツイストバックシステム搭載の「TB300」系シリーズが1985年登場で、同年カタログには「100」系シリーズも掲載されているけど、「200」系シリーズはカタログ落ちになっている(海外では同時期シェイクスピア「Σプロ」としてまだ販売されていた様子)。その後は韓国大森になって「スペシャル」シリーズのあとはロングマイコンとか作りつつグダグダになってという感じか。つまり、国内で「200」系シリーズが販売されたのは、83年登場だとして、店舗在庫等はまた別としてカタログモデルとしては85年には消えていて、2年の短命モデルだったのである。今時の大手が3年でモデルチェンジしてて3年で陳腐化するような設計するなよな、と苦言を呈してきたけど、それよりもモデルチェンジが早い。なので中古市場に出にくく、欲しい人間は出たら親の敵を見つけたごとく討ち取っておかねばならないのかもしれん。
で、もういっちょの要因としては、なぜ「200」系シリーズが廃版になったかというと、「TB300」系シリーズとキャラかぶりなところがあって、それが本体金属製でボールベアリングは一個のシンプル設計っていう、むしろ今の大森好きなマニアが評価しそうな設計になってて、同時期の「100」系シリーズ「ウルトラ」シリーズが樹脂製本体なのに対して人気が出る要素になっているのかもしれない。ワシも当初、泳がせ用にリアドラグ機をということで想い出のTB302(写真右)をぶっ込んではみたけど、使って壊すのがちょっと惜しい個体なので代わりの同じ機種を探していて、たまたま「NO.202(写真左)」が目について、ツイストバックシステムが付いてないぶんむしろこっちの方が単純で好ましいかも?とスルッとマウスを滑らせてみたところである。実際の所はツイストバックはほとんど使わないので、あっても邪魔してるわけでもなしで、その有無はそれほど関係なくて、実際に使ってみないと良し悪し判断できんなということで、実戦投入用に分解整備しつつ、それぞれの機構の違いとかを比較してみることにした。2023年7月1日土曜日
低い確率の事象でも充分に長い時間においては必ず生じる
って感じで近所の海で狙ってる獲物があると同時に、ネットの海で狙ってる獲物もいくつかあって、もう10年は検索条件設定してあるけど1度も現れていないようなモノもあるけど、今回ポロポロッと小物ではあるけど永らく探していた”獲物”が現れて、ここであったが100年目とばかりにスルッとマウスを滑らせてダブルクリック。無事確保してホクホクだった案件が2つほどあったのでご紹介してみたい。
っていう枕で冒頭写真が、大森「タックルオートSS」とPENN「スピンフィッシャー4400ss」だと、そんなもん永らく探さなくてもすぐ出てくるだろう?と疑問に思われたかもしれない。そうじゃないんですよコレが、ブツそのものじゃなくて部品?が出てくるのを待ってたって話で、ぶっちゃけボロい個体は入手の機会ならいくらでもあって、そっから引っぺがしたら部品ぐらいわけなく手に入ったんだろうけど、そうなると部品引っぺがされた個体に、部品をあてがってやりたくなって、また部品探さなければならず、またボロ個体を引っ張ってくると、また同じことが起こってしまい、一応完品の個体がズラズラと増えても、最後一台部品欠損個体が残る状態から脱出できないのである。なので”部品売り”で欲しい部品が出てくるのを永らく待っていたのである。部品取り個体から”部品だけ取っておしまい”にできるぐらいならそいつの”スピニング熱”は症状軽くて楽でいいやね。オラできねぇダ。
ということで、まずは「タックルオートSS」。約4年前2019年にジャンク三台2束3文で購入してなんとか使える状態にした個体である。とにかくボロい個体で錆錆だったのもあるけど、ハンドルの反対側キャップ欠損、スプールがマイクロセブンC1のを無理くり填めてて、高さがあってないので酷い後ろ巻きなのを手動逆テーパー下巻きスプールでごまかしていたという有様。キャップは防水が確保できればいいので椅子の足のキャップを加工したものでも不具合は無かったけど、スプールは巻き形状的にはごまかしてはいたけど、投げて巻くのリールの基本性能に関わる部分なのでどうにかしたいところではあった。 あったけど、なかなか古いリールのスプールだけって出てこないもので、一度フレームとスプールだけの出物がネットフリマであったけど、気がついた時点で売り切れてた。使ってる人なら替えスプールは是非欲しいだろうから安いとすぐ売れてしまう。ということでそこそこのお値段の出物があったのでちょっと値段交渉させてもらって2500円(下手するとボロいの一台買えるがな)でスプール確保!キャップはマイコンSSのボロ個体をバラしてまだ使える部品に分けてネットオークションで売ってた人がいて、ハンドル本命で入札してたけどそっちは競り負けて、側板と付属するキャップとネジを確保。大森はこのへん互換性がある部品多いので”Cクリップ”がトラウマになった原因のマイコンSSは二度と我が家の敷居をまたがせない”禁制品”扱いだけど禁を破って部品密輸してしまった。ネジは既に1本利用済みと買って良かった品だけどキャップももちろん役に立つ。キャップは填めてあったエストラマ-樹脂製の椅子足キャップをハズして填めるだけ。スプールは綺麗でそのままでも良さげではあったけど、潮かぶってたりすると蔵の中で腐蝕が進んでいくので一回バラしてパーツクリーナーで洗浄後、ドラグパッドのフェルトにはドラググリス塗布し直して、スプール表面にも青グリスを薄く伸ばして塗りたくってやった。ごらんのように本体も塗装ハゲハゲのボロい個体だけど、純正部品で完全版に戻ったわけで、中身は快調なので4年越しの宿題が終わったこともありスッキリ良い気分。
お次はPENN「スピンフィッシャー4400ss」。いつも書いてるように、PENNやら大森やらの銘板が剥げるのはそういう仕様なんです!巻いて投げてのリールの機能にはなんら関係ないじゃないですか?別にいいでしょ!って話ではある。ではあるんだけど、世の中みんな物事の本質に関係ないところにこだわりくさるようで、銘板ハゲの個体は中古市場でも安く買いたたかれる。まあワシ買う方が多いから、安く買えるのはありがたいけどな。
とはいえ、あったらあったで格好いいので欲しいっちゃ欲しい。リールの機能には関係ないけど、見た目の格好良さには関係あるのは間違いなく、自分のリールが格好いい方が使ってて気持ち良いのも確か。使われてきた年月相応にボロいのはカッコ良かったりもするけど、銘板は残ってた方が望ましいように思う。いざ売り飛ばすとなった際に値段も違ってくるしな。ワシもこだわらんわけじゃない。
実は、いくらか確保してある銘板もあった。以前ジャンクな「720z」を整備したときに、部品を「ミスティックリールパーツ」さんに注文したんだけど、スペアスプールやベールスプリングの他にたまたま銘板まだ残ってたことがあって、その時に「おっ銘板剥げたスピンフィッシャーなんて蔵にゴロゴロしてるぞ」と他の銘板も買いあさろうとしたんだけど、やっぱり良く剥がれるので欲しい人は多かったのか売り切れが多く、一部の機種の右だけとかしか確保できなかった。写真左下の3枚は剥がれ落ちたのを保管してるのも含め確保済みだった4400ss用の3枚である。で、今回入手したのが写真下中央右寄りの「ギア比表示の銘板付き側板」である。これで左右揃ったので、今使ってる4400ss二台のうち、ドングリノブハンドルの方が銘板無しなので”銘板有りに復活”させた。 ”4400ss表示”の剥がれたのをとっておいたものには、茶色く干からびた接着剤の残骸がこびり付いていたのでペリペリッと剥がして汚れを拭いて下準備。側板に付いている”ギア比表示”の方は側板から剥がして移植、側板ごと交換でもたぶん大丈夫だろうけど、ひょっとして薄いシムで隙間調整とかが必要になると面倒なので、調子良い部品は換えないの鉄則にしたがって銘板だけ移植とした。これが剥がすの苦労するかと思ったけど、白い薄い樹脂シートが残って簡単に剥げてきて、シールのシートをはがさずに貼ったのか?と思ったけど銘板の裏はシールにはなっておらず、熱でくっつける樹脂かなんかのようだけど、簡単に剥がれすぎである。やる気あんのか?という感じで、パズルのピースがきちんと填まるべき所に填まったような気持ちよさを感じております。ぶっ壊れて持ち主には価値のなくなったリールが、部品にバラすと、「それがあれば1台完成するのに!」っていうような他の人には非常に価値のある”お宝”だったりするので、我が国でも中古市場で人気のある丸ABUとかの古めのベイトリールではパーツ売りは一般的だけど、長く使えるスピニングでありかつ共通部品の多いPENNや大森についても、ぶっ壊れたら捨てる前に、ジャンク品として出しても良いけど、ばらしてパーツ売りしてもらえると非常にありがたいので、捨てるまえにパーツ売り是非試してみてください。”病気の人”が数百円から数千円で買ってくれたりします。1台丸ごとジャンク品ででてくると、はたして欲しいパーツが”生きて”いるのかわからん部分もコレあり。バラで売ってくれるとその点明確になるので買いやすくありがたいです。ボロ大森、ボロPENNを捨てようかなどと考えている場合、ぜひパーツ売りを!とナマジより伏してお願いもうしあげます。
(2023.07)
2023年8月5日土曜日
大森補完計画
大メーカー様が、ヘッタクソでも問題なく使えるように技術の粋とボールベアリングをこれでもかと突っ込んで恐ろしい値段になってる高級リール様とかワシ金積まれても使わんぐらいに嫌悪してるけど、好きな人にはたまらん魅力があるんだろう。何が良いのかサッパリ分からんけど、おそらくそういう人には瞬間的逆転防止機構の搭載される前のPENNだの大森だのの良さは、ましてやボールベアリングすら入ってない原始的なベベルギア機の丸ミッチェルとか、それこそ何が良いのかサッパリ分からんだろうからおあいこである。お互い好きなモノを好きに愛でておけばいい話である。
とはいえ、大森製作所謹製のダイヤモンドリールは古いスピニングが好きな人種には評判が良く、大森沼の住人はスピニングではミッチェル沼、ABU沼に次ぐ人口を誇っている気がする(当社調べ)。
そんな大森スピニングだけど、ここがイマイチとイの一番にあげられるのが、スプールエッジの形状で、スプールの糸巻き部分上面がなだらかな傾斜になっていて、スプールいっぱいにラインを巻くと、端の方はスプール上下の幅を超えていてラインが崩れてグズグズになってラインがドバッと出ていくトラブルになりかねないし、ライン放出時に斜面に広く当たって出て行くのでラインの放出性的にも良くないという理屈である。右がその大森スピニングのスプールの例で「タックル5No.1」のもの、左が糸巻き部分上面が真っ直ぐの優等生の例でPENN「スピンフィッシャー4300SS」でPENNはやっぱり分かってるなっていう感じ。 とはいえ、実際にはラインをスプールの直径ギリギリまで巻かず糸巻き量少なめで運用してやればトラブル自体はあんまり気にならず、実際の運用時は写真の「タックルオートNo.1(スプールはタックル、タックル5と同規格)」ぐらいの糸巻き量にしてるんだけど、ワシ遠投性とか気にしない近距離戦特化型の釣り人なので困ってはいない。いないんだけど愛する大森スピニングの欠点とされる部分が解消できれば、それはそれで気分が良いだろう。スプールの形状を変えるとなると、どっかの小工房にお願いしてアルミから削り出してもらうぐらいしか手がないように思えるかもだけど、そんな金のかかる人任せなことをワシがやるわけがない。 じゃあどうするんだって話だけど、ゆうてワシZEBCO「15XRL」では割れて上部欠損したスプールを再建したぐらいで、なんなら日曜大工で樹脂素材主体にスプールそのものを作るのも不可能ではないと思っている。思っているけどさすがにそれは時間がかかるしめんどくさい。こんなもんスプールエッジの形状だけ真っ直ぐにしたいのなら、シャンプーハットみたいな輪っかを作ってスプールに填めて固定して、適当にそれっぽい形状にしてやれば良いだけじゃん。ということでおあつらえ向きにちょうどいじくって遊ぶのに良さげな「タックルNo.1」が送料込み1980円でネットフリマに出てたので確保、そのうちコイツでやっつけてみよう、と思っていたら先にいじくった外蹴りアウトスプール版「マイクロセブンNo.1」でラインローラー固定ナットが固着してるのをネジ切ってしまうという失態を犯してしまい、その時にとりあえず問題先送りにして、ベール周り両機種共通なのでタックルの方の正常なベール周りをマイクロセブンにとりあえず移植してその場しのぎしてあった。なので、ネジ切ったラインローラー周りの再建も今回やらねばならない宿題となっている。ということで、スプールエッジの形状改良と壊してしまったラインローラー周りの再建が今回のお題であります。 それではスプール改良からいってみよう。まずは何はともあれ現状把握からだなと採寸から始めてみる。今回スプール上下幅にスプールの糸巻き部分の幅を合わせるのも重要なのでまずはそこから。単純クランク方式の場合、どう考えても主軸に刺さってる棒の上下の幅がスプール上下幅のハズなので測ると約11mmというところ。スプ-ルの糸巻き部分は上端まで測ると約16mm。ちなみに直径は下のスカート部分で47mmあるのにスプール上部では42.5mmと小さくなっていて、インスプールだと下がったときにライン放出がローターと干渉しないように下の方が直径大きい必要はあるけど、アウトスプールの場合は同じで良いはずなので、これも修正するとスプール直径大きくなって”直径大きめのスピニングは使いやすい”と思っているので良い具合の改良になるはず。高さ的には5ミリ、スプール上面からスプールエッジが下にくる位置に輪っかを填めてやれば良いことになる。5ミリって大きいけど実際には現状のスプールエッジは丸く滑らかに立ち上がってるので、スプールエッジと呼ぶべきラインが当たるカド自体は2,3ミリ下がる程度という印象。
でもって、どうやって輪っかを填めるか色々悩んだ。輪っかを切らずに填めるのはワシ手品師でも何でもないので難しい。難しいということはできるのか?と聞かれれば、一旦スプールを上下に切って填めてからスプールをカスガイ使って上下くっつける方法がないこともない。ZEBCO「15XRL」のスプール再建したときの方法の応用である。でもスプールぶった切るのは強度面やら切ることで短くなるおそれやらなにやらで、あんまりやりたくない。かといって輪っかの方を何枚にも分けて貼り付けると今度は輪っかの強度面と水平の確保に問題が生じそう。妥当な落としどころとしては、輪っかに1箇所切れ目入れて捻って突っ込んでやるのが無難に思う。でもってその材料としては1mmのアルミ板でいくか、0.8mmのFRP板で行くかで検討して、捻って曲がった後の復元性が良くて水平が出しやすいFRP板で行くことにした。FRP板は薄くて丈夫なので一部ルアーのリップにも使われていて、この手の薄いFRP板は電子機器の基板に使われているので”基板リップ”と呼ばれている。我が家にあったのもまさに基板リップとして使うために買ったモノで、ハルコ「ソーサラー」の元のリップが薄くて弱くボックス内で割れてしまったのでその修理用だったけど、ほとんど余らしていたので出番があって良かった。 作成手順としては、外周はスプール糸巻き下面の直径にあわせて47mmでいくので直接スプールおいて油性ペンでなぞる。糸巻き部分が11mmにする位置に填めるには内径は35mmぐらいなので、外周から6mmの位置に点を打っていって内周を手描きする。FRP板はわりと丈夫でカッターでは切りにくいけど金切りバサミやニッパーは使えるので金切りバサミで大まかに切り出していく。
1箇所内側に向けて切り込みを入れて、金切りバサミで大まかに直線的な穴を開けた後、ニッパーでバチバチと3角形を切り取っていく感じで内周を円に近づけていく。
大まかに輪っかの形になったら、サンドペーパーでひたすら削って円形に仕上げていく。
ヨッシャできた!と捻ってスプールに填めてみたら糸巻き部分が1ミリぐらい狭い。FRP板の厚さを考慮してなかったというお粗末。まあ削り足りなかった分には追加で削れば良しで、幅5mm弱でちょうど糸巻き部分の幅というか高さが11mmになる仕上がり。
ここでちょっと迷ったのが、1箇所切れ目を入れたんだけど、これはカスガイなり穴開けて縛るなりした方が良いのか?接着剤でくっつけただけでは開いてきてしまわないか?ということだけど、カスガイにしろ縛るにしろ出っ張ると引っかかって塩梅悪いので、0.8mmの板に0.4mmの溝掘って出っ張らなくするとか面倒くせえことこの上ないので、5mm弱の幅に巻かれたラインの圧力は外側ということもあるしたいしたことないだろうということで、とりあえず接着のみで行く。開いてきてしまったらまた考える。輪っかの水平を保つために11mm幅に切った厚紙で下支えしつつ、瞬間接着剤塗って最初は細いティッシュで作った紙縒りをグルッと巻いて、瞬間接着剤塗って、隙間に合わせて太らせた紙縒りをグルッと巻いて、外周まできたらサンドペーパーで形を整えてエッジの角が立たないようにFRP板の面取りもしてから、主軸に刺して固定してロッド回しで回しつつエポキシでコーティング。スプールとFRP板の段差も切れ目もエポキシである程度ならしておく。最後黒のタッチペンで色塗ってスプールはこれで完成。
スプール共通のタックル5で試してみたら、上下幅ちょうどよくラインがキッチリと巻かれて良い塩梅に仕上がっている。
よっしゃ、スプールは上手いこといった。次は懸案のラインローラー固定ナットをネジ切ってしまっているところの再建である。以前「ラインローラー周りを再建する計画は準備していて、プランA及びBを既に立案済みで上層部(ワシ一人で現場と上層部兼任だけどな)のゴーサインを待っている状態」と書いたところだけど、プランAは機能回復というか修繕に近いんだけど技術的には難しくて失敗しそう。プランBは技術的には難しくなさそうだけど、ちょっと元と同じような機能には戻らなくて”改造”の範疇になる。プランAで失敗してからプランBに切り換えることは可能なので、いっちょ難易度高いプランAに挑戦してみる。現状は写真の様にナットが填まってたネジが根元近くで折れて、折れた残りはナットの中で回収不能になっている。どうするねんコレ?って考えて、難しそうだけど寸法的にはギリギリできなくもない。とワシが立案したプランAが、流行の?性転換モノ的な方法で、もともとはローラーが填まる軸から伸びた棒が雄ネジになってて雌ネジ切ってある円錐形ナットで締めてたんだけど、雄ねじの部分、いうなら”息子スティック”にあたる部分がもげてしまった状態なので、もう雄ネジとしては機能し得ないので、逆に穴を掘って雌ネジ化しようというものである。っていうても、ローラーが填まってる軸は2.7mmしか直径がない。穴掘ってバネを利用して雌ネジのネジ山をつくる”リコイル”で2ミリのネジを使おうと思うと、バネを入れる関係から2mmの穴では足りず2.5mmの穴を開けなければならない。整理すると2.7mmの真鍮の丸棒に2.5mmの穴を開けなければならないという、ちょっとズレたら穴が横に開いてしまいそうな危うい作業工程である。
まあ失敗したらプランBだよな、という逃げ道は作ってあるし、ローラーが填まってる軸がダメになったら真鍮パイプ利用で軸から再建するプランCも追加で試してみてもいい。
ということで”ままよ”とプランAにまずは挑戦してみる。
はじめに、余ってる雄ネジの部分を金鋸で切り落としてラインローラーの填まる円柱部分だけにする。そして、まずは細い1mmのドリルから穴掘っていくんだけど、最初のこの時に穴が真ん中に真っ直ぐ掘れるかどうかが、成功と失敗を分ける分水嶺なので、写真では電動ドリルが写ってるけど、ドリルでいきなりギュィーンッて回すと真ん中からズレることが多いので、まずはドリルの刃?単体で手で持ってキリのようにグリグリと回して、少しずつで良いので真ん中に真っ直ぐな穴の取っかかりを作ってやって、そこからは小型万力に固定して、真っ直ぐ上からになるよう気をつけつつ電動ドリルでドリドリと穴掘ってやったら上手くいった。最初で失敗したら修復はほぼ不可能。素材的には真鍮にクロムメッキなので金工用のドリルなら問題無く穴は掘れる。あとはドリルの太さを順に太くして穴を拡張する。
で、穴拡張して仕上げていくときに2mmのドリルで軸の長さぐらい穴を掘って、2.5mmのドリルの時は、その半分ぐらいリコイル用のバネが納まるぐらいの穴で止めておく。リコイルのバネで作った雌ネジを越えて雄ネジが収まるので、穴の底に雌ネジ部分があるより雌ネジ部分全部使えて、突っ込む雄ネジの長さは雌ネジ越えていい余裕があるので大雑把で良くなる。
リコイル用の道具でバネを巻いて直径小さくしてから穴に挿入して、中で巻きを緩めて2.5mm部分の底に設置。
長さ調整していない長いネジで試してみると、しっかりネジとして機能してバネが抜けてきたりもしないようだ。樹脂とかに”リコイル”を使うとバネの引っかかりが弱くて抜けてきたりするけど、真鍮だと適度に堅いのでしっかり噛んでくれるようだ。
最後、雄ネジの長さを切って調整して、ベールアームの穴よりネジがだいぶ細いので間を埋める仕掛け用パイプ切ったリングを噛ませて、ネジの頭の手前に緩み防止のワッシャー填めてネジ締めてみた。良い塩梅に締まって固定できて、ちゃんとラインローラーも回転してくれて問題なさそうで、思ったより上手くいった。なんでも試してみるモノである。
ということで、今回の大ネタは無事成功したので、いつものようにグリス盛り盛りで組んでやるんだけど、ちょっと小ネタもございます。一つは逆転防止のスイッチが欠けてるので、ちょっとお化粧直ししておきました。
まあ、欠けてても機能に問題ないっちゃないんだけど、見た目良い方がイイかなと、割れた面に2箇所1mmドリルで穴開けてステンワイヤーを刺して骨組みにして、れいによって、ティッシュを瞬着で固めてそれっぽい形に成形して、ナイフとヤスリで適当に形を整えて銀色のスプレー塗料で目立たないように塗装。雑な仕事だけどまあこんなもんで良いでしょう。
もういっちょは、今回の「タックルNo.1」はありがちなんだけど、右巻でこの時代のハンドルネジは左右別で左巻きにするには交換が必要なんだけど、そんなもん付いてないって話で、いただきものの自作「大森No.1、No.2用左右別型ハンドルネジ左」を使っても良かったんだけど、ちょうど部品売りで「オートベールSS」のハンドルが手に入ったので今回そちらを使うことにして、”左ねじ”は温存した。で、オートベールのハンドルには「2ボールベアリング」とかシールが貼ってあるし、ボロくて塗装ハゲハゲだったりもしたのでタッチペンの黒で塗装して使った。
というわけで、いっちょ上がり。今回いじったローラーを固定しているネジは念のため引っかかったり抜け落ちたりしないように、エポキシを盛ってツルンとさせておいた。ナットがなくなった分軽くなって回転バランス崩れてプルッたらオモリ追加で調整だなと思ってたけど特に問題なくクルクル回ってる。
スプール上面は”アルミ感”を残すため輪っか状に塗り残した部分を設けたけど黒一色の方が表情は引き締まるか?そのへんの美的センスはワシには欠けてるのであまり気にしないでおこう。田舎ヤンキーの改造車みたいにケバゴテしてなければ見た目なんぞ何でもイイや。
ハンドルノブの形が、大森三角パドル型になったのも案外違和感ない。ハンドルノブはどうせ”改造”するなら好みの形にしたくなるところだけど、意外にどんなハンドルノブが良いのかって難しくて、たとえば世間的に評判の良い”ミッチェルのひねりハンドルノブ”だけど、最初摘まみやすく感じて「コレがミッチェルの捻ったハンドルノブか!」と感動したけど、ワシわりとしっかり摘まむのか摘まみやすくて指の同じ所にノブが当たってると長時間の使用では痛くなってくる。たいした痛みでもないので丸ミッチェルのハンドルノブわざわざ換える気はないけど、ハンドルノブの形状は実際摘まんだり握ったりして使ってみないと評価できないもので、手の形や大きさもツマミ方も個性があるので、自分に合ったものがどういうモノかさえ難しい。とりあえず大森三角パドル型は摘まみやすく痛くもならないのでワシ的には合格なので換える必要はないだろう。
さて組み上がったし、ラインも巻いてみる。ちょい後ろ巻きになってしまってる気がするけど許容範囲。しっかり糸巻き部分の上下幅一杯つかってラインが巻けている。
ワシはトラブルの少なさ重視でラインはあまりいっぱいいっぱいまで巻かないので、この状態で直径42mmラインが巻かれている。上の方に写真がある、元のスプール形状で少なめに巻いているタックルオートNo.1の巻いたラインの直径が37mmなので、実質5mm糸巻き部分の直径が大きくなっている。スプール糸巻き上面を真っ直ぐにしたのでラインの放出性も良くなってるはずだ。スピニングリールの改造っていうと、世間ではボールベアリングの数を増やしたがるようだけど、そんなもん少なくとも飛距離にはあんま関係ないはずで、あれほど飛距離にこだわるのなら、スプール形状いじって然るべきだと思うけど、あんまりそういう改造は聞いたことがない。なんかご大層な高級リール様のようにスプールエッジには特殊な堅い素材とか使わねばならんので”いじれない”と思ってるのかもだけど、耐久性とかはともかく飛距離に関係してくるのは”形状”であって素材は滑りやすい方がイイだろうけどまあ普通に磨いた樹脂でもアルミでも上等のハズである。あとはスプールの直径、純テーパーか逆テーパーか、オシュレーションが密巻きか綾巻かとかでも放出性が違ってくるというところか?飛距離にこだわるなら純テーパーのスピニングだってあって良いのに、昔みたいな純テーパーのルアー用スピニングってとんと見なくなった。今回の改造は、ライン放出性を良くする”飛距離に直接的に効く”改良だったということは自慢できる気がしている。
しているんだけど、スプールエッジの形状について、大森のアルミの時代と樹脂製の時代のを比べたりしているうちに、ちょっとワケが分からなくなってきて、本当に今回の”改良”は自分にとって必要だったのか?という気がしてきて、改めてもうちょっと頭を整理してみることにした。長くなってるけどもうちょっとお付き合い願いたい。
ワシが大森製作所が存在した当時に愛用していたリールは「キャリアーNo.1」と「マイコン302TB」である、これらの機種は大森製作所の”黄金期”最後の方にでてきた機種で、キャリアーは本体も樹脂製だけど、本体金属製のマイコンTBシリーズもスプールは樹脂製で、これまでワシ「後の方に作られたこれらの機種はスプール上面の傾斜がきつくなくなってて改善されていて使いやすかった」的なことを書いてきた。スプールがアルミから樹脂に変わったときに金型新しく作る時に改善したんだろうなぐらいにボンヤリ認識していた。なので、今回傾斜きつめのアルミスプールのタックル、タックル5、タックルオートをいじりつつタックルのスプールを改造してみて、じゃあどのぐらい違うんだろうって、タックル5No.1、キャリアーNo.1、スプール同じだけどマイクロセブンC1、マイコン301TBのスプールを並べてみて、比較してみた。それが上の写真である。ナンジャコリャ?キャリアーもマイクロセブンCもタックル5と形状一緒やんけ!マイコン301TBのスプールだけスカートも長いし糸巻き上面の傾斜も微妙になだらかな気がするけど、キャリアーもマイクロセブンCもきっちり傾斜してるやん。どゆこと?またワシ嘘書いてやがったな!あいすんませんなぁ。堪忍したってくんなまし。
マイクロセブンCシリーズもそこそこ使ったし、写真のキャリアーNo.1とマイコン302TB、301TBは若い頃の愛機なので散々使い倒した。その時に、飛距離的に別に困りはしなかったのはワシの釣りが近距離特化型だから参考にならんにしても、ラインがドバッと崩れて出たとかのトラブルもなかったと思うし、今もちょくちょく使ってるマイクロセブンCシリーズも使いやすいリールでトラブルとかは少なくて快適なリールだと感じている。スプールの糸巻き部分に対してスプール上下幅が狭いスピニングは、巻いたラインの上下が崩れてトラブルが多いという理屈じゃないのか?明らかにその理屈に自分の感触が反している。いかに理屈から言ってなさそうであっても、現実にそうなっているのならそれが正しく、かつ、そうなる理由が隠れているはずである。その理由は何か、ここに来てパソコン椅子探偵の推理の時間である。ひょっとして、とノギス片手にライン少なめで運用しているタックルオートNo.1の糸巻き部分の幅を測ってみたら、謎はたぶん解けた。すまないが大森沼の関係者を呼んでくれたまえ。
写真では分かりやすいように、スプールが上がって下がってする1回分ラインの色を変えてあるんだけど、ワシが経験則で少なめに巻いているラインの状態で、ラインはスプール上下幅一杯11mmに巻かれているのである。それより幅が広がるところまで巻いてない。なので上下部分で崩れたりはしない。単純明快。本体タックル5だけど同じ単純クランク方式なので気にしないで欲しい。というか、ワシがさっき書いたタックルオート、タックル5,タックル、キャリアー、マイクロセブンC、マイコンTB、どの機種もハンドル一回転でスプール上下一往復の単純クランク方式で、ということは綾巻でありラインの放出性はイマイチでもトラブルは少ない方式で、かつ、少なめに巻いたラインが放出するときには斜めったスプール上面の傾斜に多く当たって出て行くのでこれもライン放出性は悪いけどトラブルは少なくなる要素。つまり、大森スピニングのような放出性の必ずしも良くない糸巻き上面に傾斜が付いているスプールに少なめにラインを巻いて運用するとラインがドバッと出ていくようなトラブルはむしろ軽減されるのである。って言うかワシはそういうトラブルは記憶にないぐらいで極めて少なかったはず。知っててそうしてたわけでも何でもないけど、自然とそうなっていったし、近距離特化型でトラブルなく使えるリールが良いリールと思ってるワシにとって、形状いじってない元の大森のスプール形状が実は合理的というか合目的的だったのである。ワシ、今回スプールの改造が上手くできた時点で、これから大森スピニング片っ端から糸巻き上面真っ直ぐに改造してやろうかと思ってたけど、むしろそのままがイイと理解した。飛距離重視の人には参考になる改造になったかもだし、ワシも勉強になって良かったけど、若干無駄骨臭がしないでもない。
よく考えれば、今時の高級リール様でも、単に放出性重視なら必要のない、糸巻き部分の上にちょろっと斜めに出たひさしのような出っ張りが設けられていたりする。要するにスプール上下減速式にして密巻きにしてたりしていて、放出性が良すぎるとラインがドバッと出てしまうトラブルとかが増えるので、ライン放出時にわざとちょっと当てて、そういうのを防ぐ仕組みを設けているのだろう。減速式は巻くの軽くなるしで高級機種では入れたいだろうし、そうするとそのままだとトラブルが多い、なので逆テーパーつけたりスプールエッジに”ひさし”つけたりラインの放出性は悪くなるけどトラブルの減る仕組みを設けているということだと理解した。
最近流行の釣りが、アジングだの管釣りの鱒だので軽いルアーを使って、かつ前者だとフロロだエステルだといったあんまりしなやかじゃないラインも使うので、放出性重視でカッ飛び仕様にしてしまうとトラブル多くて使いにくいっていうのも、今時のリールにやたらライントラブル防止のための工夫が多い背景なんだろう。まさにヘッタクソが、カッ飛び仕様までいかなくても、普通のスピニングでそういう軽い仕掛けの釣りをしたら不具合多くて困るだろうなと想像に難くない。メーカーさんある程度マッチポンプでそう仕向けてる部分もあるけど、ちゃんと釣り人の程度と釣りに合わせた道具を売ってるってことか?
ただ、そう考えると、そんな極端な軽いルアーを使わないシーバスとかでは、今時の高級機種やその機構を真似した下位機種では、トラブル少ないのは良いけど放出性良くなくて飛ばんがな、って遠投派のシーバスマンは思ってしまうかも。そういう人は今の逆テーパーのスプールじゃなくて投げリール由来の純テーパーが付いてた時代のスピニング、たとえばダイワの革命機「ウィスカートーナメントSS」とか今こそ出番じゃなかろうか?そこまでじゃなくても、スプールエッジの角がキリッと立ってるミッチェルとか飛距離的には優秀なはずである。たしかに丸ミッチェルはプラナマチック入ってなくても良く飛ぶように思うところ。スプール径大きめも効いてるんだろうけどな。逆に、ライントラブル防止策で、ライン少なめに巻いた大森スピニングをライトタックルの釣りに使うというのもありではないかと思えてくる。なにしろ、さっき書いたようにスプールエッジに大きな”ひさし”が付いてる状態だし、綾巻でもありライントラブルに強いのはワシ実感してきたところ。
ついでに、PENN4桁スピンフィッシャーでも4400SS以上のモデルはぬこさんが”原始A-RC”と書いてたように、真っ直ぐな糸巻き上面にちょっと”ひさし”が突き出てる形状になっていて、純粋なライン放出性よりトラブル防止をやや重視している感じ。まあ昔っからこの手の工夫はあったって話で、スプールエッジ、糸巻き上面の形状は各社各時代で想定する釣りやら釣り人やらによって適切と考える形状を選択してきていたようで、釣り人はそれらの違いを認識しつつ選べる程度には各種スピニングがこれまで世に出ている。まあワシ認識あんませずに経験則でトラブル少ないリールをトラブルおこさないように使ってきたわけだけどな。あと細かい話だけどラインの放出性の良さが即飛距離向上を意味しないっていうのもある。何じゃそれ?って話かもだけど、例えば固定重心のミノーとか投げるときに、ある程度放出性が悪くてラインの抜けが悪くてルアーがライン引っ張って飛ぶ形になると、ルアーの飛行姿勢が安定して飛距離が出るとか、そういう細かい例外もチラホラある。という感じで、まあ道具っていうのは、それを使う人の好みや技術はもちろん、使う状況や仕掛け、調整具合、重視すべき要素なんてのが種々絡んで、一筋縄ではいかず、最初に戻るけど「釣り具と釣り人の関係は一期一会」「相対的なその釣り人にとっての最高の釣り具というのはあり得ても、全釣り人共通で絶対的な一番の道具などというモノはあり得ない」って話で、少なくともどういった機能がどういう理屈で働くようになっているのか、自分の釣りに必要とされる機能はどういったモノか、というのをなるべく理解していないと、フォーミュラ-カーで山道登るようなアホな道具の選択になりかねないので、皆さんよく勉強しておきましょう。
ワシも今回、スプール糸巻き部分上面が斜めってるのは必ずしもスピニングリールにおいて欠点だとは限らないってことを理解できて、蒙を啓かれる思いで大変勉強になりましたとさ。
2023年8月12日土曜日
プランBは時にプランAより良かったりする
2023年8月26日土曜日
苦労をともに
根本的に人が他者を認め、愛するという行為において、他者の本質が機械仕掛けだろうと何だろうと結局のところあんま関係なくて、自分がどうその他者を認識しとらえるかの方にこそ根源的な理由というか原因があると思う、と書くとちょっと飛躍と皮肉が過ぎるだろうか?
ワシャ釣り具は”相棒”だとモロに感じている。物言わぬ道具に過ぎないけど、それでも頼りにして特別な絆を感じたりもする。要するに自分と共に何かを為す、そのために自分が何らかの働きかけをして使うと、相応の機能を発揮して仕事をこなしてくれる。そういう入力と出力的なものが伴う点では人間相手と一緒と言えば一緒、自分と他者との関係という大枠では変わらんがなと雑に考えている。
人間は、太古に生まれた生命から脈々と引き継がれた遺伝的な情報と、生まれて育てられ学んだ文化や知識的な情報を元に、何らかの働きかけに対して、その情報に拠って答を出しあるいは反射的にその時々の反応を返す。物言わぬ道具であっても過去から改良を加えられつつ作られ調整されてきた、様々な”情報”で構成されていると言える存在であり、その情報に拠ってこちらの働きかけに対して然るべき機能を果たすところは、蓄積された情報が対応を決めるという点で同様である。といえばもう少し丁寧な説明になっているだろうか?ちょっと哲学的というか屁理屈じみているかもしれないがご容赦願いたい。
投げて巻くだけの簡単な機能しか持たないリールでさえ”相棒”だと感じるのに、思いっきり人間くさくなってきたAIが人間の相棒たり得ないわけがない。”愛”についても、人はピグマリオンコンプレックスなんて言葉があるぐらいで人形に恋することさえできる、いわんや人型で受け答えができるアンドロイドおや、というところだろう(”いわんや~おや”の構文なんて使う機会滅多にないけど使い方これであってるか?)。
でもって、今年の春のシーバスシーズンを相棒として共に闘った丸ミッチェル「304」マニュアルピックアップ版と大森製コンパック「カプリⅡ」を、遅くなったけど、304は来期も使うつもりで分解フルメンテ。カプリⅡは蔵で眠ってもらうべく内部浸水させてはいないので分解は無しで表面塗装が腐蝕しないようにグリス塗ってドラグノブを借りていたオートベールNo.2に返しておく。
この春のシーバスは苦労した。なにせ最大が40あるかないかでセイゴしか釣れんかった。304はコレからも使うのでまた機会はあるだろうけど、カプリⅡはボロさ加減からいってこれ以上使うのは難しいので最後に良い魚釣って”釣り具”として生まれた本懐をとげさせてあげたかったけど、不甲斐ない使い手でセイゴしか釣らせられずに申し訳ない限りである。でも2台とも苦しい釣りを共にしただけに、愛着も湧いたし、何というか戦友感がそこはかとなく漂ってきている。304は今後もしっかり働いてもらう予定だけど、カプリⅡは売れるような個体じゃないし蔵に眠ってもらってたまにクルクル回して、ワシが死んだら中古釣具屋にでも流れていくんだろうけど、釣り場に出ることはおそらくもうないだろう。静かに余生を送らせてやろう。
でもって、304なんだけどワシ雨が降ると喜んで釣りに行くタイプのシーバスマンなんだけど、304は雨の日の釣りにはあんまり向いてない。あきらかにローターの下部の本体との隙間から水が入る。しかたないのでその辺りにもミッチリ青グリスぶち込んだけど、水と混じって白く濁ったグリスが雨の中釣ってるとドロドロッと流れ出てきたりして塩梅悪かった。来シーズンから雨上がりとか専用にしてザンザカ降ってる最中は避けて使おう。今年は思いっきり雨の中使ってたので浸水しまくりで、途中で一回グリス入れ換えたけど、丸ミッチェルの良いところは極めて単純で整備性がすごぶる良いところで、全バラしでグリス入れ換えてもたいした手間じゃない。
ということでパカッと開けると、元々青かったグリスが真鍮の部品から出た緑青で緑に変色したうえに水が混じって白濁している。まるいベベルギアの外側に白濁していないグリスが残っているのがお分かりいただけるだろうか?ギア抜いたところに入ってる逆転防止関連も真ん中写真のようにグリスに埋まってて発掘してやる必要がある。これぐらいガッチリとグリスシーリングしてあると、グリスに水が混じったので長期的にはどうか分からんけど、わりと鉄系の部品も多い丸ミッチェルだけど、ほぼ錆びは出ていない。ほぼと書いたのは実はハンドルノブのネジが鉄にメッキなんだけど、そこはさすがにグリスが落ちて注油はそれなりにしていたけど頭のあたりが若干錆び始めていた。ということで、内部に錆は認められなかった。というわけで防水性は良くないけど、整備性の良さを生かしてグリスまめに交換してやれば腐蝕対策は充分できるように感じた。実用機として問題無い程度には塩水での使用に耐えると評価できるんじゃなかろうか。
分解するとこんな感じだけど、部品数30個もない。ベールワイヤーやら反転機構を取っ払ったマニュアルピックアップ方式にしてあるし、あと取っ払って省略できそうな部分って、逆転防止ぐらいか?って感じで、逆転防止は指でスプール止めても何とかなるけど、それ以上はもう省くところがないぐらいに単純な設計である。待てよ、ドラグも省略してブレーキはハンドルで調整するという”ダイレクトリール”にしてしまうという手がまだあるか?さすがにそこまでやると手先の技術に頼る部分が大きくなりすぎてちょっと扱いきれる自信がなくなってくる。
っていうぐらいに原始的で単純で、でも魚釣るのに不快な問題としては、雨の日にグリスが水と混じって漏れ出てくるぐらいで、あんまり生じず、使ってて非常に気持ちの良い、使い心地の良好なリールである。なんだろベベルギアの巻き心地ってザラついてるけど力強くて独特の良さがあるように思う。ひとシーズン使ってみてかなり気に入った。ということで、来春も頑張ってもらうためにグリスグッチャリで仕上げておく。
中身も青グリスグッチャリだけど、外側もグリスチョイチョイとつけてティッシュで塗り伸ばして腐食防止策としてるんだけど、塗ってると指もグリスでヌラヌラになってくるので、最後の方は手でヌリヌリとリールにグリスを塗ったくってやった。カプリⅡにも感謝を込めて塗ったくってやる。ドラグノブ落っことしてすまんかったな。
2台とも、春シーズンお努めご苦労さんでした。苦戦続きだったけど良い相棒と一緒だったから頑張れたよ。ありがとう。
2023年9月23日土曜日
針金ベールリールの系譜ーパソコン椅子探偵オリムピック「MOVADO」編ー
ただ、バンタムⅢは借り物でシエラⅣは程度が良すぎて使いづらいので、多少ボロい出物がないか探してたんだけど、これがなかなか出てこない。針金ベールのリール自体は珍しくも無いんだけど、昔の日本市場のスピニングは右巻仕様が多く、左巻きがなかなか出てこないのである。やっと出てきて値段も手頃だったので、このオリムピック「MOVADO」を入手したのはこれもだいぶ前の話である。そこそこ錆も出てたのでCRC「666」をぶっかけて、他の整備待ちリールと共に封印してあったのを打順が回ってきたのでいつものように分解清掃し青グリスグッチャリで仕上げてみたんだけど、このリール実は大森製作所製の”オリムピック”リールなんじゃないかと疑っていたので、そのあたりも検証してみた。
オリムピックについては、国内では一時圧倒的なブランド力と販売網を持っていて、大森や日吉といった埼玉勢はもちろんのこと、長野の松尾工業にも下請け仕事でリール作らせていたようで、そう考えると同時期のリールでも妙に味の違うリールがあったりして、製造元が違うならそらあたりまえか?と納得するところである。ワシ、オリム製インスプールスピニングでは「トゥルーテンパー727」はしっかり作ってあって好みのリールなんだけど、ヘドンにも同型機をOEMで提供していた「エメラルド350」はなんかスカスカした感触で今ひとつピンとこなかった。作ってた工場が違うならそういうこともあるだろう。まあ、この2機種についてはなんの裏付けもないので案外同じ工場で作ってたのかもしれんけどな。
というオリムピックのお家事情のなかで、大森製の”オリムピックリール”はどれなのか?というのには興味があった。以前コメント欄で教えていただいたオリムピック「83」のフルベールモデルはコンパック「キャデラックⅢ」と同型機でかつ大森製作所作成の最初の機種なのではないかとパソコン椅子探偵としては推理しているところではある。
そのほかの大森製”オリムピックリール”の容疑者として、以前から「MOVADO」には疑いの目を向けていて、今回そのあたりもパソコン椅子探偵としては検証してみたいと思っている。ローター周りの処理が写真で見ただけでも似ているし、ハンドルの軸方向への丸い出っ張りとかも大森っぽい。バラしてシエラⅣと比較していけばさらに証拠は集まるだろう。写真右のアズキ色ボディーのがシエラⅣ。どちらも針金ベールのスピニングだけど、その針金の”ベールアーム”に相当する部分の曲げ方が直線的ではなく、「7」のように曲線をえがく形状に曲げられており、非常に”癖”が似ている。このことだけでも、疑うには充分であり探偵としてはマークせざるをえないところだろう。どちらかがどちらかを見本に真似したという可能性も充分あるけど、まあここ以外もしっかり隅々までみて真実をあきらかにしていこう。真実はいつも分かったような分からんようなモノでしかなかったりするにしてもだ。
まずはスプール周り、スプール外すと両機種の板金ローターの形がそっくりなのが見て取れる。これ同じ型じゃないかと思ったけど、微妙に大きさが違っててスプールの互換性とかはない。でも色こそ違えど、本体に乗っける部分が盛り上がってる形状とか、ベール基部の金具を留める処理方法とか癖が一緒。ドラグが、シエラⅣともバンタムⅢともまた違う構成で、シェイクスピア「2103」で見たのと同様に一番下にフェルトパッド、その上に曲げワッシャー、一番上が1方向切り欠きありのワッシャーとなっている。曲げワッシャー一番上に持って来たいところだけど、2130でもそうだったけど、なぜかこの単純な構成でいちおうドラグとしての機能は生じさせており、パッドの直径も小さく良いドラグとは言い難いけど使えと言われれば使える程度ではある。まあ使うつもりなんだけど、シーバスならいけるでしょ?って感じ。
でもって本体パカッと開けてまずは、ハンドル軸のギアが樹脂製じゃなくて亜鉛製なのに安堵する。芯に鉄系のが鋳込んであって丈夫そう。逆転防止のストッパーはギア裏に入ってる。樹脂製ギアはギア自体は何とかなるのかもだけど、ストッパーが過去2台見たどちらも潰れたりしてたのでもたない気がしている。亜鉛ストッパーも削れた例は見てるけど、普段はストッパー外してミッチェル式の運用なら何とかなるだろう。
ロータ軸のギアも亜鉛っぽくてここはシエラⅣ同様の真鍮にして欲しいところ。亜鉛亜鉛の組み合わせは若干不安。
ギアの素材自体は違うけど、シエラⅣと設計自体は似ているというか、ほぼ一緒なんだけど、微妙に違うところが今回突破口につながった。スプール上下(オシュレーション)のピンが主軸に刺さってるんだけど、シエラⅣではハメ殺しっぽくて抜けず、ローターを外すことができなかったけど、MOVADOでは填まってるカラーを外したらピンの頭がマイナスネジになってて、外すことができた。外せば主軸は抜ける。
すると、次に外せそうなのは写真一番上の矢印の位置の小さなネジで、これを外すと真ん中写真でちょっと浮き始めてる一番上部に襟が付いてるスリーブが、主軸が刺さってた部品なんだけど、ローターとギアごと抜けてくる。このスリーブの上部の襟とロータ軸のギアの上端ローターにナット留めされている部分に隙間ができるように、小さなネジで留めて、ローター軸のギアとスリーブとが接する形で回転している。というわけで、あたりまえだけどボールベアリング不使用機。
ローターからスリーブを抜けばローターにギアを留めているナットも外せるので外せば分解終了。ちなみにローターにギアを留めているネジが逆ネジなのは地味だけど大森っぽい癖だと思う。オシュレーションのピンもなぜか逆ネジ。
ここまで分解して、シエラⅣにもスプール外すと上部に襟付きのスリーブが見えているし、小さなネジでそれを留めているのも見えるので、構造ほぼ一緒と思う。これハメ殺しだと思ってたオシュレーションのピンもペンチで摘まんで回したら外れるんじゃないかと試したら外れた。そして同じようにスリーブを留めてる小ねじを外せばスリーブ抜けてギアごとローターも抜ける。
一番下の写真はスリーブがどんな感じに入ってるか、ローターを外して本体にスリーブ刺してみたところ。見えている小穴が本体の穴のあるところまで差し込まれて、小ねじで留める構造。
ここまで設計が似てる、というか同じだと、製造元は同じと考えるのが自然というモノだろう。
そんな複雑な設計じゃないので、ミッチェルのフルコピーを高精度でやっちまえるぐらいに技術力があったオリムピックなら真似するの自体は簡単だったと思うけど、自社の海外販売先でもあるブランドで出てたシエラⅣを真似する意味がないというか、シエラⅣをコンパック側(コマースパシフィック社)に納入してたの自体はオリムのはずで、大森は孫請けという関係だっただろうから、他にネタ元があるとかもあり得るけど、少なくとも この2機種においてどちらかが模倣されたとかいうことは考えにくい。普通に考えて同じところで作ってるんだろう。となるとシエラⅣについては大森公式が「うちが作ってました」って言ってたので、どちらも大森製というのが今回のナマジの推理。
他にも細かい所だけど、足の裏が三本線入ってるとか、大森沼の皆さんなら「ああこれは確かに大森臭いな」とご納得いただけるだろう。ということで、大森沼の関係者を集めてくれたまえ。
”オリムピック「80MOVADO」は大森製作所製です”
ここのところ、パソコン椅子探偵ナマジ、迷宮入り案件続いてて負けが込んでたけど、久しぶりに探偵らしい仕事したかなと。まあ、実際にどうだったかはわかんないもんだけど、状況証拠的には、なんか真実に近いようなところまでこぎつけたかなと思っちょります。
ということで、分解整備も済んで青グリスグッチャリで仕上げたし、3:1ぐらいの低速機なので、使うならシーバスなということで、2号ナイロンで運用の予定。針金ベールは削れて糸溝できそうではあるけど、そこはそれ複雑な部品じゃないのでステンレス硬線でも曲げてたわめて自作できるんじゃないかと思うので、とりあえずどっかで余裕ができたら、今年のシーバス戦線の不調具合を鑑みると出番作れるか不透明だけど、一度どんなもんか使い心地を試してみたい。
使ったらまた、釣行顛末記とかでご報告いたします。
2023年11月25日土曜日
斜にかまえたNo.5
左「マイクロセブンNo.5」、右「オートベールNo.5」、双方600gを越える、糸巻き量6号240mの大型機である。大森製作所のリール的にはNo.6サイズがあるので最大ではないにしても大型で、PENNなら糸巻き量的には6500SSぐらいの大き、見た目の大きさ的には糸巻き量考えるとコンパクトで5500SSよりちょい大きいかなってぐらい。
大森の小型機は人気機種ではなくても、それなりに情報がネット上にも転がっている。でも大型機に関してはその人気の無さ、注目の薄さを反映してか情報たいして出てこない。むしろロシアのオッチャンが外蹴りマイクロセブンを激賞してたってぐらいで、シェイクスピア版で馴染みのあった海外の釣り師の方が詳しいかもしれない、日本語サイトの情報は限られている。
そんな中、興味深い報告をされているのが、以前ギブスのルアーネタのときに書き込みいただいた、米国製海用ルアーを投げている方で、ブログを読ませてもらっていたら、「タックルオートNo.4」を愛用されていて、かのリールには「ストローク減速機構装置」というのが搭載されていて、スプール上下のオシュレーションカムが斜めになってるのがそれではないか?と書かれているんだけど、おそらくストローク減速機構装置自体は、ハンドル軸ギアの回転からギアを介して回転を持ってきて、ギア比によってハンドル1回転で1回スプール上下するのではなく、ハンドル数回転でスプール上下1回とかにスプール上下を減速するという、一般的な減速式のオシュレーション機構そのもののことだろうなと思う。このあたりの大森スピニング、外蹴りアウトスプール「マイクロセブン」「タックル5」はNo.3の大きさまで、「タックルオート」や「オートベール」もNo.2の大きさまでは、単純クランク方式でハンドル回転1回転でスプール上下が1往復で、使ってて特に問題は感じていない。それ以上の大きさになってくると、ハンドル軸のギアからギアを介して回転を減らしたいわゆる”減速オシュレーション”となっている(タックルオートNo.3はクランク方式ではないけど減速してないのかも?確かめたくてまた物欲が・・・)、減速オシュレーションにする理由としては、デカいスピニングになるとまずはスプールからなにから重いので、減速して軽く巻けるようにというのがあるだろう、ギア付きの自転車で坂道で低速ギアに入れるようなモノである。デカいスプールがハンドル1回転ごとにガションガションと上下してる様は迫力ありそうで見てみたくはあるけど、実釣的には巻きが重くてどうもならんだろうな。さらに、減速式にすると、巻きが綾巻気味から密巻き気味に変わるので、投げるときのラインの放出性は良くなるだろう。その分綾巻のトラブルの少なさは削られるのは行ってこいの関係で、そのへんは良い塩梅の減速比率で仕上げるのだろう。けどまあ、大型リールで減速無しはあんまりないぐらいでそれが使いやすい妥当な設計なんだろうと思う。
なので、オシュレーションカムが斜めになっているの自体は「ストローク減速機構装置」そのものを指しているのではないんだろうけど、ここで興味深いのが、タックルオート(たぶんオートベールでも)でNo.3サイズではオシュレーションカムが水平なんだけど、No.4からNo.6サイズでは斜めになっている。これは何の意味が効果があるのだろうか?私気になります!
ということで、自分でいじくってみんとあかんなということで、買いました。なんで2台あるねんって話は、れいによって予備スプール体制が組めるからで、実釣に持ち出す予定もないのに予備スプールもクソもあるかよ、という気もするけど気にしない。欲しけりゃ買うんです。
マイクロセブンの方はクソ安くて1000円落札+760円送料、オートベールは出物が少なく、ちょっと高いけどコレ買わんと次がないかなと、3980落札+980円送料とボロ個体に張り込んだけど、その後綺麗なのが3000円即決で出ててジイさんちょっとガックリ。まあ綺麗な個体はコレクター氏の棚に、ボロい個体はワシのところで整備して良い状態に、ってことでこれで良かったんだと思っておこう。
ということで、わが家に来たからには分解整備。
先に見た目ボロいオートベールから、まずスプール周り、ドラグがちょっと面白い。この時代の大森スピニングはフェルトの湿式ドラグパッドが標準装備で、この大きさでも基本は一緒なんだけど、3階建てのドラグで3枚のパッドのうち1枚が赤いファイバーワッシャーになっている(写真上列右)。このあたりの大型リールの国内での用途としては、投げ釣りが主に想定されるのでドラグとしての性能よりもしっかり締まって、投げたときにドラグが滑って指を切らないというのが求められていたのかなと想像するんだけど、ドラグパッドを一枚摩擦の大きい繊維性のドラグパッドにしてそのへんの”締まり”を確保しているんだと思う。3階建てドラグでドラグパッドの材質やらを変えるとき、変える枚数に応じてドラグの性能が調整できるってのは以前実験したとおり。さすが大森製作所、わかってらっしゃるという感じだ。 あとは、簡易ローターブレーキがついた内蹴り機構、真鍮のローター軸ギアに鋼を鋳込んだ亜鉛のハンドル軸ギアのハイポイドフェースギア、ローター軸直上の鉄系のストッパーあたりのいつもの大森方式なんだけど、さすがに大物用のリールという感じがするのは、主軸が5.6mmもあるステンレス系なのと、小型機だと樹脂製のベールアームがアルミっぽい金属製なところとかで、このあたりガッチリ強化すべきところは強化されている。ローター軸のギアもゴン太で、ギア比は4.2:1とやや低速だけどスプール径もデカいのでこんなもんでしょ。 でもって、問題のオシュレーションカム、確かに主軸に対して垂直じゃなくてちょっと斜めっている。なんで斜めになっているのか?オシュレーションカムの形状をS字にすると、だいたいスプール上下が等速に近くできて、ダイワとか最近の機種は高級機種でも丸ABUの平行巻機構に使われているようなクロスワインド方式じゃなくてS字カム方式だそうで、オシュレーションカムの形状いじると、当然スプール上下に何らかの影響が出るはずで、なんのためにそうなっているのかは、後ほど考察してみたい。
とりあえず、全バラしするとこんな感じで、ボールベアリングが2個も入ってる高級仕様だけど、無駄なモノがついてるわけじゃなく単純明快な設計になってて整備性は良い。ただ、デカいのでお盆にバラした部品が乗り切らないので、お菓子の箱を用意して適宜作業が終わった固まりからそちらに移したりして作業した。
デカいリールは当然ながらグリスぶち込むにしても必要なグリスの量が多く、こういう海で使うしかないだろって機種こそグリスグッチャリにしておきたいけど、リール用高級グリス様ぶち込んでたらいくら銭があっても足りまへん。芋グリスでも良いぐらいにギアとか丈夫なので、まあいつものマキシマの青グリスぶち込んでおく。
ただ、ぶち込む前に、ちょっとばかしお化粧直しはしてやりたい。ワシそっち方面苦手だけど、ちょっとずつ練習していこうと思ってるので、今回は塗装ハゲハゲで地金が見えてるところを、黒の車用タッチアップペンでごまかして、奇跡的に全部揃ってる銘板を、一旦剥がして貼り直しておく。銘板は、パーツクリーナーかけた後にマイナスドライバーで突っついたら、いとも簡単にペリッと剥がれる。この時代の接着剤に期待してはいけない。
色は本当は黒じゃなくて濃紺みたいな色なんだけど、黒でもごまかせるだろうエイヤァという、やっつけ仕事。タッチペン付属の筆でペタペタ塗ると確実に塗ったところが段差になって物理的にも雰囲気的にも浮くので、いったん小皿に出して綿棒でポンポン叩いて乗せたり、シャッシャと薄く汚す感じで見えてる地金を隠したり、あんまり塗り直したところがあからさまにならないようには努力したつもりだけど、銘板もコニシのSUではりつけて仕上げたけど、まあ新品同様とはいかんのはいかんともしがたい。
それでも、いつものことだけど、大森スピニングのギア等内部構造はまったくガタなど来ておらず、ベアリングも今回錆びておらず、機能的にはクルックルの絶好調に仕上がったので良しとしておこう。
当時の国内では、大型のスピニングは糸巻き量が必要な投げ釣りが主な使いどころで、正直、キスだのカレイだの釣るのにこのリールの性能は必要ないというか、対大物用の性能が活かされていたのかはなはだ疑問ではある。そもそも大物用には両軸使えって話ではあるけど、このリールの想定しているナイロン6号、8号あたりって、ポンド換算でいえば22ポンド、30ポンドぐらいなわけで、PENNでいえば6500SS、7500SSで狙うような、必ずしも両軸にお出まし願わなければならんほどじゃない大物に使うなら、その実力を発揮しえるだろうなと夢想する。
続いて、マイクロセブンNo.5の方も分解整備していく。古いリールなのでグリスがネットネトになっていて、最初エラい重いのでやや不安な立ち上がりだったけど、鬼門のラインローラーナットも固着しておらず無事外せて、グリスをパーツクリーナーで洗浄したら、ギアも当然健在でベアリングも錆びておらず、スプール裏とかに多少砂が残ってたけど、大事に使われていたのか、はたまたこの青い塗装は強いのか、見た目的にも表面塗装のハゲとかは少なく、小さな置き傷とか擦れはあるけど、比較的綺麗な個体で、外蹴りでオートベールよりもさらに単純な設計なのでサクサクとバラしてグリスグッチャリで仕上げた。うーんどうにも格好いいな。小型の機種については、最近も代打で登場願った「マイコン301TB」で感じたんだけど、ベール反転が内蹴り式で軽いのは使っててすんごく気持ち良いってのはある。ワシ、昔はスピニングは全部左手でライン放出調整してそのまま左手でベールを返す方式でやってたけど、インスプールスピニングも使うようになって、最近は小型スピニングは基本どおり右手人差し指でライン放出調整してハンドルでベールを返すようになっててベール反転が軽いことの重要性が腑に落ちてきてはいるんだけど、一方なぜもともと左手でライン放出調整してたのかといえば、デカいルアー投げると右手人差し指ではライン放出調整しきれないので、そっちにあわせてたんである。ということは内蹴り式でベールをハンドルリターンした時の感触はオートベールに軍配が上がるけど、大型機では左手で返すからハンドルリターン時の感触は関係なくて、となると単純な設計の外蹴りマイクロセブンのほうがワシ向きかなという気もしてくるのである。
ドラグの方式は、オートベールと同じくパッドが1枚赤い繊維性のワッシャーで、スプールの互換性もあり。オシュレーションカムが”斜め”ってるのも同じで写真は引っこ抜いて溝が見やすいように裏向けたところ。基本オートベールは外蹴りアウトスプール版の「マイクロセブン」に内蹴り機構をぶち込んで、本体の形状をやや曲線を帯びたデザインにあらためた後継機だという認識で良いんだと思っている。
マイクロセブンにも大型機ならではの強化が施されていて、ローターのベールが付く”腕”部分に斜めに張り出した補強部分が設けてあり、いかにも大物仕様といった雰囲気が醸し出されている(訂正:小型機でも補強されてました。嘘書いてゴメン)。やっぱり格好いいぞ。写真はベールアームと反対側のベールワイヤー支持部で左側にはみ出してる部分がそれ、もちろん向こう側のベールアーム側にも同様の補強部分がある。そして背景に見切れている主軸はこちらのも太ましい。まあスプール共通からして設計同じだろうからあたりまえか。
でもって、今回の大きな疑問である”なぜ大型機でオシュレーションカムが斜めになっているのか”についてだけど、頭から煙噴くぐらいに考えたけど、コレっていうしっくりくる答にはたどりつけなかった。たぶんこうかな?という推定はしてみたけど、正しくその設計思想が読めた方がおられましたら是非、私めにも教えてください。
まず、前提条件としてワシ頭の中でイメージ図を動かすことが苦手というかほぼできない。なので、そういうのが得意な人からしたら「なにやってんだコイツ?」かもだけど、そういう人なので四苦八苦してるところはお見苦しくともご容赦願いたい。とりあえず、疑ったのは”斜めにすると平行巻に近づくのではないか?”ということで、これはマイクロセブンNO.5に最初巻かれていたナイロンラインが、そこそこ綺麗に巻かれているようにもみえたので、きっとそうだと期待してしまった。
なんだろ、オシュレーションカムの端まで棒が来て折り返す”死点”の前後で上下動のスピードが落ちるのが平行巻にならず端が盛り上がる原因だけど、斜めにすることで死点が上下動の一番上と下とズレるとかか?と思って、頭の中でイメージが動かせないので、現物でとりあえずと考えてる作業風景が、マイクロセブンの分解整備作業の写真でオシュレーションカムを溝が見えるようにひっくり返しているものである。正直斜めの角度も緩いので良く分からん。ということで、次にこれはTAKE先生がS字カム方式のときに書いてたような略図を書くしかないなと書いてみたのが、写真上の図なんだけど、適当にフリーハンドで角度を決めて点を打ってるので精度が全くアテにならず、死点を越えてから下がってるのか上がってるのか良く分からんかった。つぎにじゃあ実際に回転する時におこるイメージを視覚的に追えるようにしてみようかと円書いて、仮想の主軸位置(紫)と仮想の傾きを紙に書いて、その上に重ねられるようになんかの蓋だったプラのシートに仮想のオシュレーションカムの溝(オレンジ)+仮想の主軸(これも紫)を書き込んで、プラに書いた主軸を上下させて、死点を越えて主軸が上がったり下がったりするのか確認したところ、「しない」「速度が死点前後で落ちて、上下動は両死点の高さの間」だとワシャ判断した。誰か同じようなこと調べてないかなと思ったら、インスプールのカーディナル33とかは、クランク方式だけどクランクを回してるハンドル軸のギアの一番上と下から斜めにずれて死点が来る点で似ているようで、じゃあスプール上下の動きはどうなるのか?っていうのを考察されている方がいた。その方は、ワシみたいな”数学が苦手な理系”というアホとはちがって、三角関数つかってグラフ書いて同じような結論にたどり着いていた。彼我の理系的頭の良さの差を思うと泣けてきた。サインコサインは役に立たない数学的知識の例として歌にまで歌われていたけど、知ってると機械の働きとか理解するのに役に立ったりします。じゃあなぜ、オシュレーションカムを斜めにしているのか、死点間の高さでスプールが上下動するので、運動エネルギーがその分節約できる。っていうのはスプール上下幅減るのと行ってこいの関係で、それをやるならオシュレーションカムを上下させてる歯車の径を小さくすれば良いだけで、そのほうが軽量化にもなるだろう。
って考えてって、スプール上下のためになにか寄与してる、っていうのではなさそうだなと思う。じゃあなんでって考えて、本体内の配置とか見ていると、どうもオシュレーションカムを真っ直ぐにしてしまうと、ハンドル軸と干渉してしまいそうに思う。単にそれを避けるためという配置上の都合であったのではないかというのが、今のところの私の考察。たぶん、No.4サイズから設計していったので、同じように設計しようとしたら、大型化するに際してカムの肉厚とかも増したら「入らんがな」ってなって、回転する歯車の上のカムに刺さる棒をもっと中心に寄せて回転する径を小さくするか、カムを斜めに下げて干渉をさけるか、どちらにしてもスプール上下幅が小さくなるけど”致し方なし”として後者としたのではなかろうか?これら2台より後発になってギア形式の違いから設計やり直しができた「スーパー7No.3」では素直にもう1枚歯車を入れてハンドル軸からオシュレーション上下の歯車を遠ざけている。その際にカムは斜めではなく真っ直ぐになっていて、斜めにすることでラインの平行巻に寄与するようなことがあれば、後発機でもそうしてそうだけど、スーパー7はまだNo.3サイズで直接比較にはならんのかもだけど、他に「マイコンNo.6」でも斜めではなく、やっぱり平行巻への寄与はなさそう。設計上スペースが無かった、っていうショボい理由が案外正解かなと思っちょります。「こういう利点があるんですよ」というのが分かった賢い方がおられましたら、是非とも教えてください。ワシのピンボケた頭ではこのあたりが限界でした。
なんで、あんまり巻き上がりが凸凹してないのか不思議な感じである。れいによってスプール上下幅より糸巻き部分の幅を大きく取ってごまかしてるのかと思って、スプール上下にともなってどこまでラインが巻かれているか、ラインの色を変えて確認してみたところ、写真の様にわりとキッチリ上下幅一杯にラインが巻かれていて、なかなかヤる感じになっているのである(この写真で見ると真ん中へんが若干くぼんでて平行巻にはなってないなという気はする。ちなみに減速比はギア比4.2:1でハンドル一回転で4.2巻きと考えると、片道6巻きになってるからだいたい1/3弱ぐらいに減速というところか?) というところも含め、2台いじくって感じたのは、大森のこの時代の大型機はなかなかやってくれそうだということで、90年代ぐらいにルアーキャスティングの世界でPEラインが使われるようになり始めて、ロウニンアジとかが対象魚として注目されるようになったんだけど、当初国産の大型機はお話にならなかった。ほぼPENN一択。なぜならそれまで国内向けの大型スピニングは前の方でも書いたように投げ釣り用が主で、ドラグもろくなもんじゃなかっただろうし、強度も不足していたはず。なので、ルアー用の大型スピニングを、ってなっても作り慣れてないので、最初の頃はダイワのトーナメントもシマノのステラも、PENNユーザーが鼻で笑う程度のデキだった。ファイト中に瞬間的逆転防止機構が壊れる、ドラグはウィンウィンと音を立ててしゃくる、ハンドルノブのベアリングが錆びて潮かぶると一発でキコキコ鳴き始める。そこで反省してPENNみたいなスピニングを作っておけば良いのに、そうならずに逆転防止機構の改良やら防水、あつものに懲りてドラグにボールベアリングまでぶち込んで、ベアリングも防水してってやって、アホみたいな価格の高級リール様が誕生するに至っている。もし、あの頃に大森大型機を投入するという発想があったら、案外すんなりロウニンアジぐらい釣れたんじゃないか?っていう気がするのである。オートベールNo.5で”釣力”17kgとなってて、これは最大ドラグ値(あるいは耐破壊強度のほうか?)と同じような意味だったはずで、手持ちのスピニングタックルでドラグ値10キロ以上に上げて使えるマッチョな釣り人など希有なぐらいではあるけど、そのぐらいの負荷に耐えうる強度は確保してあるっていうことで、実際ワシを例に出すならPENNの7500ssでドラグ値6~7キロで運用してたんだけど、そのぐらいのドラグ値なら大森大型機はまるで平気な気がする。主な購買層が投げ釣りで、性能の良いドラグも、大物と渡りあえる”釣力”も必要とされていなくても、大型のスピニングリールならば大森製作所はそれが必要だと考えてたんだと思えてくる。ただ、大型スピニング用のドラグパッドとしてフェルトはどうなんだろう?とかドラグノブ樹脂製なのはドラグキツめで突っ走られたときに摩擦熱で溶けたりしないだろうか?っていうのは、ちょっと不安なところではある。ただ、ドラグ周りは難しい機構じゃないので好きにいじる余地はある。パッドはたぶんアクリルとかの化繊であるフェルトよりは、フライパンの表面加工にも使われるぐらいの耐熱性があるテフロンや、大型リールでは定番のPENN方式といって良いかも?なカーボンシートやらのほうが良さそうだし、ドラグノブの摩擦熱対策は、ドラグノブと一番上のワッシャーの間に、熱伝導率の良くないパッドを断熱材として挟んでやるとか工夫はできそうである。逆に言うと不安なのはドラグ周りぐらいしかなく、何しろギアやら本体枠やらはガッチリ作られていて頑丈で、設計も複雑なところがなく壊れる要素も少ない。90年代始めには大森製作所はなくなってしまったので、100g超の大型ルアーのキャスティング向けとしては誰も目をつける人はいなかったけど、もし使ってたら多少の改造でアッサリ必要な性能を確保できてたのではないかという気がしてくるのである。なので、遅きに失した感はあれども、この冬ちょっと手を入れた対青物仕様の大型大森スピニングっていうのを考えて、遊んでみようかなと考えている。実際の青物釣りは、この地で岸からだと試行錯誤して遊んでる余裕はないので、実釣はPENNで行くんだけど、魚掛けなくてもドラグテストとかは可能なのでちょっと頭の中に試したいことがいくつかあるので、暇をみて試してみたい。
タイトルに使うにあたって”斜にかまえる”という言葉を検索して意味を確認したところ、実はこの言葉はもともとは剣術の用語に由来するようで、剣を斜めに、つまり中段にかまえて、相手の動きに即応できるようにかまえることから、本来「真正面から気合い入れ直してかかる」的な意味だったようだ、現代では逆に「正面からとらえず、皮肉な態度をとる」と反転している。
大森製作所が、オシュレーションカムを斜にかまえたのは、まさに”斜にかまえて”設計上の問題に即応したんじゃないかと考察したところであり、適当に語感の良い言葉を並べただけのタイトルなんだけど、なんか意味深長な感じになってるやんけ、とほくそ笑んだところである。
2 件のコメント:
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Masahiro2023年11月29日 23:39
ナマジ様 いつもブログを楽しく拝読しています。しかも今回は、私の拙いブログに言及してくださっていて、驚きました。そして、まるで、よくできた推理小説を読んでいるような趣きがありました。「オシュレーションカムを真っ直ぐにしてしまうと、ハンドル軸と干渉してしまいそうに思う。単にそれを避けるためという配置上の都合であったのではないか」というご考察を読んで、目から鱗が落ちるとはこのことか、と思っています。とても楽しく、また、とても勉強になりました。
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2023年12月2日土曜日
あらためてキャリアー
ちなみに自称大森アナリストが今が買い時だと思ったのは、また値段が上がって高く売れると思ったからではない、単純に欲しかったから。それがたった一つの理由。
でもって、C1と比較しつつ分解清掃なんだけど、C1の今使ってる個体は銘板片ハゲ個体で、そいつを出すとスカがほとんどないぐらい滅茶苦茶働く個体なんだけど、ハゲててもかまわんとは思ってたけど、なぜか買った記憶がない銘板が部品棚の大森用のジップロックに入ってて、耄碌ジジイどこでいつ買ったのか、まとめ買いとかしたときに入ってたのかわからんけど、とにかく働きに対して褒美をあげるのにちょうど良いなと、銘板を貼り付ける作業も同時進行で行った。どうせもう剥がれそうになってるだろうと、ついでにまだ剥がれてない側も針先で突いて隙間に突っ込んでペリペリ剥がして、残った接着剤のカスを爪でこそげ落としてアルコールで汚れを拭き取って、さらについでに整備するキャリアーの銘板も両側剥がして改めてコニシのSUで接着。C1はハンドルの塗装ハゲもタッチペンでごまかして綺麗に、とまではいかないにしても良い感じのお化粧直しになった。 そしてキャリアーNo.1の分解整備に着手、いつものようにスプール周辺から。スプールはC1のとも互換性のある樹脂製スプール。裏面に音出しと、ライン留めがネジ留めしてあるごく普通のものだけど、ドラグはテフロン3階建てで、金属製ワッシャーのスプールと同期して回る1枚は、良くある耳付きじゃなく6角形で、2箇所だけで支える耳付きより樹脂のスプールに”噛み”にくくしてるんだと思う。テフロン3階建てのドラグの優秀さは「マイクロセブンCS」でボラ釣って身に染みて理解できた。ドラグが良いのは大森の伝統だなと改めて思う。必要充分で無駄なくデキが良い。今時安リールでもまともなドラグぐらいついてると思うけど、1980年代終わり頃にワシが買ったときは新品投げ売りで3千円台だったと思うけど、86年の発売で定価5300円と決して高級品ではなく、当時同価格帯のスピニングでこれほど実用性の高い使えるドラグがついてた国産品はなかったと思う。85年登場ダイワ「ウィスカートーナメントSS」はさすがにドラグも良いけど2万近い値段の高級品だしな。ちなみに86年の大森カタログには”CAREER”「カーボンボディを装い、伝説の名機復活。」とあり「軽快なフォルムと信頼性の高いメカニズムで、国内はもちろん海外でも圧倒的に支持された名機タックルオートが復活しました。」という感じで、樹脂版の「タックルオート」というのは公式見解でもあるようだ。左の写真は3枚ともC1で、蓋固定用ネジに金属製の雌ネジが使われているのと共に、ストッパーに掛ける爪が押さえつけられる部分に金属製のつっかえ棒的な”棚”が補強で入ってて、2枚目の写真の矢印の部分が爪をズラして棚を見えるようにしたところで、3枚目写真矢印は銘板の下に確認できる、棚に繫がる金具を本体に穴開けて固定してある、そのお尻が見えているところ。キャリアーでは樹脂本体から張り出した樹脂製の棚でつっかえ棒をしている。本体内で”補強を入れるならココ”っていうのが分かってるのが大森製作所のエラいところで、アワセの時など竿しゃくったときやら魚が突っ走ってストッパーがガチンと働いたときに、ココに爪が押しあてられて負担が来るはずなので納得である。以前にも書いたけど「エギングはしゃくりまくる釣りなのでヤワなギアだとすぐにダメになる」とか言っちゃうような、しゃくって負荷が来るのはストッパーだろ?フケた糸回収してるだけでギアに負担が来るかよ、なアホとは違うということである。
ローター周りは、大森沼住民にはお馴染みの方式、というか後述するラインローラー関係以外はC1と共通だろという感じ。ローターナットは大森は逆ネジなのに注意して外すと、ローターナットが乗る部分は四角い金属ワッシャー?が樹脂製ローターにハマってて、間に樹脂製ワッシャーが入ってる。ローター外すとベアリングの蓋と銅製の”簡易ローターブレーキ”が入っていて蹴飛ばしになっているのもいつもどおり。内蹴り方式もいつものグルグル眼鏡型ネジとL字の金具を使ったもの。いつも”簡易ローターブレーキ”と書いてる部品は”トリセツ(学生時代買ったときのが残ってた)”の「部品見・部品表」で確認すると「ベール返しブレーキ」となっていて、「(2)オートベールシステム」の説明の中で「さらに投餌の際,回転してベールが返らないようブレーキ装置が内蔵されています。」となっていて、実際効果あるのか、ワシあんまり遠投しようと竿ぶん回したりしないからもあるかもだけど、大森スピニング使用時は意図しないベール返りは少ないように思う。ローターブレーキの付いてないPENNの4400ssとかだとたまにベール返りあったので適切に機能してる気がする。キャリアーの場合は樹脂製ローターの”蹴飛ばし”の保護にもなっている。 樹脂ローターの”樹脂で直受け”については”蹴飛ばし”以外にも、ベールアームとベールワイヤーの支持部を直受けにしてタップネジで留めているリールについて大森「ダイヤモンド2001SS」とかPENN「パワーグラフ2000」とかで「大丈夫か?」と疑問を呈したところだけど、キャリアーはその点ローター部分は上位機種のマイクロセブンCシリーズの流用ぽいので、樹脂で受けてなくて、ネジの腹の部分で受けている。写真上の段がベールアーム、下の段が反対側のベールワイヤー受け、そしてそのネジ自体もタップネジじゃなくて雌ネジも金属製のを使ってしっかりしたものになっている。写真じゃちょっと分かりにくいかも。本体蓋は3箇所長いタップネジで間に合うだろうけど、起こして返してを繰り返す場所であり負荷のかかるベール周りはタップネジじゃダメというのがこの時代の大森製作所の整理なんだろうと思う。あと、ついでに写真右上でベールアーム取っ払った後に見えてるアルミの棒はなんだろ?と思うかもだけど、大森の場合ベール反転機構はベールアームと逆側に入れているのでこの時点ではなにコレ?だけど、蓋を外すとベールをたたむスライドスイッチにつながってて、普段はこの位置にあってベールアームを止めてるんだけど、スイッチで棒を左に倒すとベールアームの凸部が右側を通れるようになってベールアームがたためるという、電車利用やリュックに詰めて自転車乗ってっていう釣り人には収納性良くベールワイヤーが曲がったりするのも防止できてありがたい機構。マイコンシリーズからこの方式で、それ以前のタックルオートとかはバネ入りのボタンがポチッとローターの”腕”から飛び出ててベールアームを止めていた。そっちの方が単純な仕組みで組むときも簡単だったけど、新方式のメカメカしい感じも悪くはない。 ここまで見てきたように、キャリアーはローターより上はマイクロセブンCシリーズの流用、本体はタックルオートの雰囲気とギア関係を残しつつ樹脂化して簡素に仕上げてるって感じなので、ラインローラーの素材がマイクロセブンCシリーズはルーロン樹脂スリーブ入りのクロムメッキ真鍮製だったのを、キャリアーでは当時流行だったセラミック製(おそらく酸化アルミ系)のモノをスリーブ無しで入れている。でもラインローラーが刺さる棒の径は同じだろうから、ラインローラーは樹脂スリーブごと交換したら互換性あるだろうと思ったけど、意外なことにセラミック製の方が若干長さが長く、径も微妙に違ってて互換性無かった。セラミック製ローラーが他社用とかの半既製品があってそれに合わせたとかだろうか?変える必要性が良く分からんけどとにかく互換性はなし。セラミックラインローラー直受けについては、キャリアーでもダイワ「カーボスピンGS700ーRD」でも削れてきた経験がないので、滑りが良いので金属で受けてる面を削らず問題無いのかも?ついでに互換性の確認でキャリアー関係ないけどマイクロセブンC1出したので、C1とマイコン301TBのハンドル軸のギアは互換性あるだろうと思ってたので、301TBボロ個体(2000円落札+送料780円)がちょうど整備待ちだったので整備しつつ確認してみたけど、写真下のようにクランクとギアのサイズ自体はあってて入るんだけど、軸の長さかなにかが違うのか、填めて蓋締めてハンドル回そうとすると回らない。調整可能かもしれないけど今回そこまで詰め切れなかった。 って感じでキャリアー分解は余計な部品がない単純設計なのでサクサク終わって整備性はとても良い。スプール座面の赤い繊維性ワッシャーだけテフロンワッシャーに変えて、ドラグにPENN純正グリス、その他は今回樹脂製なので本体とかには盛らなかったけど、ギアとか金属はすべからくマキシマ青グリスでグッチャリ、あとは適宜ダイワリールオイルⅡで仕上げておいた。
キャリアーNo.1には想い出も、思い入れもいっぱいあるけど、それを差し引いても、軽快で、単純明快で面倒臭いところがなく、樹脂製で錆に強く、整備性も良く、ドラグも良い、使ってて不具合を感じることなく使える非凡なリールだと思っている。ベールスプリングが折れるのはこの時代のトーション式スプリングでは仕方ないとして、他に不具合が生じた経験がない。でも、とりたてて特殊な機能や機構が付いてるかといえば、そういうものはない。カタログスペック的に誇れるのはこのサイズで220gという軽さぐらいだろうか?ゴッチャゴッチャ新機能を付加していってカタログスペックで釣り人を釣るようなリールの真逆で、自社のマイクロセブンCシリーズから引き算できるところは引いて、無駄をそぎ落としたようなリールだと言えるかもしれない。削りすぎて”ハンドル軸を樹脂製本体直受けで大丈夫か?”とか危うそうな部分もあるけど、樹脂素材の選定が丈夫なモノを選んであるので何とかなってるように見える。とか、これ以上削ったら破綻する際まで攻めているんじゃないだろうか。その結果、SSサイズだと200gを軽く切って170gという今時の小型軽量機と勝負になるレベルの軽さを得て、えらい中古市場で人気が出たんだろう。
ただ、中古市場で値段がつこうとつくまいと、不人気実力派といつも書くマイクロセブンCシリーズも、最後の金属本体大森スピニングかもしれないマイコンTBシリーズも、使えば分かる良さがある。コレクターズアイテムとして値段がついたり逆に値が下げたりとかはあるんだろうけど、それとリールの使いやすさや”良さ”とはあんまり関係がない気がする。今時のスピニングに慣れていて瞬間的逆転防止機構がなければ手に馴染まないとか、釣具屋に洗脳されてラインローラーにもドラグにもボールベアリングが入ってないと不安になる、っていうかわいそうな人とかでなければ、大森スピニングは高かろうが安かろうが買って不満の出るようなリールじゃないと、自称大森アナリストとして断言してお薦めしておこう。2023年12月9日土曜日
パチモン?ゲットだぜ!
2023年12月16日土曜日
ハンドル長者
常々感じているところだけど、過去に分解清掃したことのある機種は、バラし方も組み方のコツも憶えてるので、仕事が捗る。初めての機種でややこしい機構が入ってたりすると当然その逆で手こずる。というわけで、馴染みのある機種だけまとめてとっとと片づけてしまえば、より直近の記憶でやり方を憶えているだろうし、回転数上がるんじゃないかと、今積んであるスピニングのうち、大森外蹴りアウトスプール関連、具体的には「タックルNo.2」、「ニュータックルNo.1」×2、「タックル5No.2」、「マイクロセブンNo.1」を連続して、っていっても一日で全部できるわきゃないので一台やっては飯食って、もう一台やっては次の日にとかやってくんだけど、とにかくこの5台をやっつける。
やっつけるんだけど、目ざとい読者の皆様なら「ナマジまた右巻き買ってやがるけどどうすんの?」というところに引っかかるだろう。タックル5No.2は左ハンドルが付いているし、マイクロセブンNo.1はハンドルに左用のハンドルネジが収納されているので大丈夫だろうけど、その他の3台は左用のネジごと購入できたのでなければハンドル左にできないだろうと思った皆様、その通りです。なにしろ安いのが出たら条件反射的にスルリとマウスを滑らせてクリッククリックしてたので、右巻のに左用ハンドルネジが付いてくるわけはない。
ご心配にはおよびません。ジャーン、大森No.1,no.2共通サイズ、左右両用ハンドル~。って感じでハンドルが手元にございますのよオホホホホ。金持ちケンカせず、衣食足りて礼節を知る、左右両用ハンドル備蓄充分、右巻大森機恐るるに足らず。我ながらアホかと思うけど、最初左の3本がイー○イに出てて、セカ○モンでお買いモンのときに、関税掛かる手前までなんか買っとくかというときに見つけて、こりゃ良い!あっても困らんだろう。と買ったすぐに、ヤ○オクでバラで2本出てきて、入札しておいたらどちらも落札という感じで、ヤフオクも1本千円ちょっとしてたし、セ○イモンも送料分足したらそのぐらいにはなるので、このハンドルが必要となるような外蹴り大森小型機って、タックルだろうがニュータックルだろうがタックル5だろうが、タックルが雑誌で取りあげられて一瞬値が上がったことがあったけど基本は3千円も出しときゃ買える。ボロ個体なら持ってけ千円台ってことが多く、そんな安リールに割高なハンドルつけてどうするよ?って気はするけど、綺麗なヤツはともかくボロ個体はワシが一旦回収して使えるように整備して、かつハンドルも左右イケるようにしてやるぐらいしないと、ゴミ箱行きが避けられないように思う。まだ使える大森スピニングをワシャ救いたい。まったくそんな必要も義理もないんだけどそう思ってしまうから仕方ない。
ということで、5台ワシワシと分解整備していきます。
まずは、一番酷い状態のニュータックルNo.1。とにかくボロい。ハンドルが回らんぐらいに錆がキツく、コイツは稼動状態に持って行けるか怪しいぐらい。でも過去同程度に酷かった「タックルオートSS」は、わりとアッサリ復活したので、何とかなるだろうとCRC666ぶっかけて、ビニールに他のジャンクリールと共に寝かせてたのを引っ張り出してきても、やっぱりハンドルはハンドル外してCRCぶち込んだのにほとんど回らん。大丈夫かコレ?ちなみにタックルとニュータックルの違いはベールアーム。金属製ならタックル、樹脂製ならニュータックル。でも箱書きにしか「ニュー」と付かないのでネットオークションとかでは「タックル」として売られていることが多い。
いつものようにお盆を用意して分解開始するんだけど、これ思った以上に状態が悪く、過去の事例でコレより酷かったのは丸ミッチェル「314」の最初の個体ぐらいか?
とにかく錆が酷くて、その錆が粉状に剥がれてティッシュでぬぐうとジャリジャリとした嫌な感触。ハンドルも回らんわけである。ハンドル外すとなんか錆なのか砂なのかわからん黒っぽい粒子がみっちりとハンドル軸と本体のハンドル根元の筒状の部分の間に詰まってる。なんじゃこりゃ?スプール外したローターにも茶色いこちらは錆っぽい粒子がジャリジャリに付着している。
のわりには、本体蓋パカッと開けたら、ギア周りとかは普通に固まった古いグリスぐらいで、このぐらいなら珍しくもない。
上から4枚目は、ベアリングが片面シール型なんだけど、そのシールを止めてるCクリップを針で突いて外してシールも外した状態。今回ベアリングは交換だろうと思って、苦労して固着気味のベアリングをローター軸のギアごと抜いたんだけど、ベアリングはギア周りと同様、あんまり錆びてもいなくて、シール外して古いグリスとかも落としたら普通に使える状態になった。
外回りがやたら錆びまくってるけど、中はそれほどでもないという落差。どういう経緯でそうなったのか分からんけど、大森式で本体内にストッパーまで入れて防水防塵性をあげる設計は意外としっかり機能してる気が改めてしている。浸水したらしい丸ミッチェルはさすがに本体内も錆で酷かった。大森もハンドル軸やら主軸に鉄系の素材を使ってるので、ステンレス多用のPENNほど腐蝕には強くないけど、本体内部はある程度守られているので、致命傷にはなりにくい気がしている。
とはいえ、外回りはあちこち錆はきていて、ベールアームのお尻のローターへの固定ネジは腐蝕して固着していて外せなかった。幸い、”ニュー”タックルはベールアームは樹脂製で錆には強いので、大森金属製ベールアームで良くあるラインローラーナット固着からの”ねじ切り”はなく、ローラーもスリーブ入りなので問題無く外せた。主軸とハンドル軸が鉄系なのでやや錆びてるけど、これは使ってれば滑らかにはなるだろう程度。ちょっと手こずったのがさっき書いたローター周りで、まずはローター自体が抜けてくれなくて、コレ抜けないと交換予定だったボールベアリングに手が出せないので、コレで壊れるなら寿命ということで部品取り個体に、という整理で「ええい、ままよ!」と木槌使ってカンカンやって外した。
と、だいぶ苦戦したので分解に掛かった時間は約40分、単純な設計のリールのわりには時間食ったけどボロいとどうしても固着外したりとか汚れこの時点で拭けるだけティッシュで拭き取ってとかやってると時間を食うのは仕方ない。
次にパーツクリーナーと歯ブラシで汚れをシュッシュゴシゴシと落とす作業だけど、これも錆や汚れが酷いと、時に竹串やらマイナスドライバーやら爪やらでこそげ落としつつ進めなければならず時間がかかる。パーツクリーナーは揮発性のある薬剤を使っているので台所の端の作業ブースや横着してコタツで作業するわけには行かず、換気しやすい玄関の三和土から階段に上がるところに小さい椅子を置いて階段に物を置いて作業している。
ギア周りとかの内部は普通に汚れたグリスの除去という感じなんだけど、主軸の台座周りとか、本体と蓋のハンドルの穴周りとかがジャリジャリの汚れが酷くて、このジャリジャリが他に回らないように、部位ごとに分けて混ざらないように気をつけて作業する。
小さい部品もティッシュで拭き拭きしつつ、ここでしっかり汚れを落としておかないとマズいのでかなり手間暇かかった。約50分ほど。ただココをしっかりやっておけば後の組む作業はボロかろうがそんなに手間は変わらないはず。
とはいえ、今回はコタツに入って動画見ながらというか聞きながらではあったけど、全ての金属部品と摩擦面にはグリスをグッチャリとを基本に、主軸とラインローラー、ハンドルノブにはオイルも注すという丁寧な作業はそこそこ時間はかかった。1時間ちょっと。ということで、ハンドルも左に付けて、1台目は都合2時間半ほどのお仕事でございました。流石に新品同様の滑らかな回転とはいかず、錆びてる軸が擦れるのかコーッという感じの音がしていてやや重いけど、手に来る気持ち悪い振動が出たりとかはなくて、使ってて慣れると同時に錆びた面が滑らかに磨かれていけば特に使うのに不快なことはなくなりそうで、現時点でもワシなら気にせず使えそう。大森ハイポイドフェースギア自体は特に削れたりしてないようで滑らかなので、軸から一定して出てる小さな異音ぐらいは聞かなかったことにしておける。海なら波の音に負ける程度だろうしな。2023年12月23日土曜日
中身が大事だけど外側もそれなりに大事
結果、ポキッと変なハンドルが折れてくれて、軸からはみ出した部分をカナノコで切って左巻き専用ギアとして無事救出できたんだけど、これ今考えると、ポキッといったのが左に填めた大森純正ハンドルでなくて良かった。最悪軸の左右両側のネジ穴がふさがってるというダルマギアにしてしまうところだった。最初から安全策でカナノコで切っておくべきだったんだろうけど、結果オーライではあった。
あとは、前回5台まとめてやっつけたタックル系統に設計的にはベール反転の内蹴り機構が追加されている程度なので、基本的な構造は似ていてサクサクと分解整備が進む。似たような機種をまとめてやっつけるのはやっぱり効率的ではあるな。とはいえ、元の持ち主にはハンドルの件も含め説教くらわしたくなるんだけど、塩水かぶってもろくに洗ってもなかったのか、スプールが酷く腐蝕している。内部は糸抜いて保管してないとどうしても腐蝕してしまうとかはワシもやりがちなんだけど、スプールエッジってそうは腐蝕せんぞ?かつ、ココが腐蝕しているとラインが引っかかって出が悪いし傷つくしでそのままじゃ使えん。これはあとでアレしてしまうことにしてとりあえず今回は放置して暫定的に組んで片づけることを優先して、グリスグッチャリでいっちょ上がり。
次も、同じタックルオートNo.2でこちらの方が見た目も綺麗で回転やらも変なところはないので、サクサク進むかと思いきやラインローラーが固着してしまっていた。しかし、ここは樹脂製スリーブが入っているので、まず外れないことはないので、強引にペンチで摘まんで引っこ抜くとかはローラー割りかねないので、CRC666液に浸るようにジップ付きのビニールに入れて一晩おいて手袋填めてゆっくりグリグリと捻ったら無事取れた。ルーロンスリーブがラインローラー側に固着してたので、千枚通しで引っぺがしてやった。このチューブ状のルーロンスリーブは変形させても後で軸に刺せば元通りになるのでぺちゃんこになっても気にしなくて良い。という感じでバラしても部品数こんなモンなのでパーツクリーナーかけてグリス盛って2ちょあがり。 サクサクいくぜと次はNo.1サイズ。コイツは見た目がボロい。塗装剥げまくり。回転は問題無いし、ベールの返りが悪いのは錆びてるからだろうぐらいで、お化粧直しだけは面倒だけど楽勝だろうと思ってたら意外な落とし穴というか、これまた元の持ち主説教案件。まずは分解とさくさく作業を進めると、ストッパーの爪がラチェットにガチンと噛んで凹んでて驚く。ラチェット鉄系で、爪はステンの板の打ち抜きのはずで、相当な負荷にも耐えうる丈夫な大森設計の逆転防止機構なのに、どういう力のかけかたをすればステンの板が凹むのか想像できない。
でもって、ローター外したらローター軸のギアの填まる俵型穴になってる筒状の部分が割れてやがった。ココは下はボールベアリングで上をローターナットで挟んで締めてという構造なので、割れていても固定はできていてまともな回転はしていた。とりあえず瞬着で接着してズレないように細いステンレス線で巻いて締めて固定して実用上問題無い程度には処置したつもりだけど、そもそも割れる力がかかるにはローターナットで固定してあるローター軸のギアとローターがズレて、内側のローター軸のギアの俵型の部分がローターを割らなければならず、そんなにズレることがやっぱり想像できない負荷の掛かり方で、ドラグが、それも優秀なのが付いている大森小型機で、どんなラインを巻いてどういう無茶をすればこうなるのか、責任者一回説明しにこい!っていう感じである。インスプールのベールを手で無理矢理起こす”熊の手”の持ち主が理解できないとTAKE先生は嘆いていたけど、これは次元が違う。世の中にはオッソロシイ熊以上の手を持ってる愚か者がいるようだ。PE巻いて根がかり相手にスプール握り込んで走ったとかか?分からん?まあ、とりあえず使えるようには復旧できたので良しとしておこう。接着剤で留めて針金巻いたぐらいで大丈夫か?と心配される方もおられるだろうけど、そもそもさっきも書いたように、ローターとローター軸のギアはロータナットで締めて一緒に固定されていて、どう使ってもズレて力が掛かる構造ではないハズなのでまず大丈夫なんである。壊す方がよっぽど難しい箇所。
なんにせよちょっと驚かされた。ほかにもベールの返りが異様に悪いのは、ベールワイヤーのお尻の金具が錆びて太ってるからだと思ったら、どうも微妙にお尻を止めるネジとベールアームを止めるネジは長さが違うようで、逆に組まれていて正常に作動しなかった様子。まともに組めないんならバラさんでくれと切に願う。なんとか分解修繕してパーツクリーナーかけてからタッチペンで塗装。まあ新品同様とはいかないけど、充分実用に耐えうる状態に復活させた。見た目もこんなもんだろというぐらいにはお化粧直ししてやったつもり。
このぐらいボロい個体だと、なんとか復活させることができると、わが家に来てもらって良かったと思える。普通に使えばあと何十年と使える状態にはなったと思う。ウチに来てなければ燃えないゴミの日に出されててもおかしくない。生きてる部品は回収しておけば使えるけど、日本の中古市場では特定の機種を除いて部品売りってあんまないので曲がりなりにも単体で稼動品だというのは意味と価値があると思いたい。
最後のSSサイズも、一見調子よさそうだけど分解したらエラい目に遭うとかないだろうな?と疑心暗鬼になるも、コイツは良個体でサクサクバラして掃除してグリス盛って組み上げて終了って感じでホッとした。スプールの銘板がれいによって剥げてるけど、こっちの方が全体的に状態は良いのでもう一台からスプール持って来てこちらに付けても良いかも。基本ボロい部品は1台に集中させてそのボロい個体から使い潰していきたいんだけど、これが大森スピニングは普通に使ってると潰れないんだわ。まあ末永くよろしく、もしくは売りに出して稼いでもらうか?いずれにせよ悪くない買い物であった。 ちょっと、元の持ち主なに考えてたんだって個体もあって苦労したけど、基本大森スピニングはボロいの買っても、分解整備してやれば快調に復活してくれるので、整備のしがいがある。タックルオートなんて、内蹴りで簡易ローターブレーキもついてて、ボールベアリングは一個だけど回転も滑らかで軽くて、本体もアルミ製で軽くて丈夫、ドラグはもちろん良いしで、アウトスプールのスピニングに求められる性能はかなり高く保持していて実用機として堂々の実力派である。ベールスプリングは交換用の予備をバネ屋さんにでも作ってもらうなりして備えるとして、スプールエッジの形状もアレしてしまえば良いだけで、それほど中古の相場も高くないし超お買い得である。まあ、マウスが滑ったのは遺憾に思うけど、この4台並べて眺めて「アアァッ!良い!!」と悦に入ることができただけでも、銭つこうた価値があったというモノである。ということにしておこう。
これで、だいぶ整備待ち渋滞解消にむけ進捗した。整備待ちリストにある機種の中には珍しく新品箱入りなんてのもあって、そいつらは当時のまま残す方向で分解はしても古いグリスのままでも良いかなとか、ある程度割り切ってあと20台前後、この冬中に終わらせてしまおう。あぁそうしよう。
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2023年1月7日土曜日
アメ車っぽいけどアメ車じゃないキャデラック
ということで、今年の”スピニング熱”関連一発目は「キャデラックⅣ」からいってみたいと思います。今年もご用とお急ぎでない沼の底の皆様にお楽しみいただければ幸い。とりあえず結果からいっときましょうか。
この個体の部品を使って「スーパー7」を稼動品に持っていくことはできませんでした。
はい、終了解散。
ってわけにもいかないので、負け戦の解説なんていう言い訳がましいことを読んでいただきましょう。
まあ、特に変わったところはなく、気をつけるところとしては、ローターがナットの他にギア上部に切ったネジで締められて止まっているので、本体側のローター軸のギアの底に切り欠きがあるのでそこにリール付属品のドライバーなど突っ込んで固定してローターを回して外してやる。外してやると玉が転がり出てきて、スラストベアリング機であることが判明。玉をなくさないように気をつけましょう。というぐらいか?特にビックリするような機構はなくてわりと単純にまとまってて、それはそれで良い。良いんだけどちょっと気になるのはローター軸のギアが真鍮の芯に亜鉛のギアをあわせているように見えるけど、強度的に大丈夫なのか?ハンドル軸のギアも同様でギア自体は亜鉛かアルミかっていう見た目。最終的に組み上げてグリス盛り盛りにして回してやると、わりとギアゴロ感強めで、スラストベアリングの締め付けがキツすぎたのか、ギアが摩耗してしまってるのか、それともベベルギア系ならスパイラルベベルギアでもこんなもんなのか?正直良く分からんところ。まあ気にすんなか?ワシが気にせんかったら日本ではほぼ気にする人間はいないはずだ。
とりあえずラインローラーが腐蝕して固着してるのは取れそうにない。早々に諦めた。そして、ラインローラーに落ちるラインの輪っかをしごくワイヤーのガードを止めているネジがこれまた固着していてねじ切れて頭が取れた。こちらはワイヤーガードを固定することができれば足りるので、ベールアーム側に残ったネジをほじくるようにドリルで穴を開けて、ちょうど穴に入る200LBのナイロンショックリーダーを炙って頭を作って固定、反対側で切ってちょっと炙ってウレタン系接着剤でシーリング。ローターに固定式のベールアームでベールワイヤーだけが反転する方式とともに、ラインローラーに落ちる前にラインを一回しごくのはこの時代のデカ大森の”売り”だと思うので頑張って補修してみた。ベールアーム反対側の巻き数多いバネを使ったベール反転機構も、これで3度目なので外してグリス塗って難なく填めることができる程度には慣れてきた。
折れてる足だけど、竿のシートにそのまま填めようとすると、竿のシートに刺さってた部分が残る形でポキッと折れたんだろうなというのが良く分かる。試したのはFujiのパイプシートだけどほぼ折れた側は刺さらないので”ダメだこりゃ”感が漂うけど、どうにかせんとゴミが増えただけという結果になってしまうので、まだ残ってる部分をシートにねじ込めるように加工する。まあ角を金ノコで落としてから、サンドペーパーで削って尖らせてという力技の工作。ゴリゴリ切ってガリガリ削る。
おかげさまで、Fujiのパイプシートは足を樹脂でしっかり保持する感じなので、浅めに入るようになっただけでかなりしっかり固定はできる。無理矢理削っていけばもっと深く差し込めるようにはなるけどまあ今日はこのぐらいにしといたるワ。
まあ、ここらで手を引くのがこれ以上傷口を広げないためには得策で、だいぶお金も時間も情熱も突っ込んでしまって引っ込み付かなくなってきてたけど、投資でいうところの”損切り”でここら辺で一旦終了としたい。したいんだけど多分このベールアームがローターに固定されたインスプール大型機の最終形であろう「シェイクスピア2250」あたりがポロッとネットオークションとかに出てたら、自動的に手が滑ってマウスをクリックしてしまうんだろうなという予感はしてたり、してなかったりする。
”スピニング熱”はもう持病であり完治しない気配がアリアリとする。今現在整備待ちのリールが、ブログネタにするつもりがないPENN714Z、マイクロセブンC2×2の他に、大森関連が3台、その他ボロリールが5台と溜まってしまっているので今年もスピニング熱ネタはボチボチと書き続けてみたいと思います。沼の底の皆さま、ご期待ください。
関係ないけど、キャデラックもスーパー7も車に同名のがあるけど、この時代は商標権とかそのへん大丈夫だったんだろうか?スーパー7はともかくキャデラックとかもろ米国製だしどうなんだろ?