ゆく川の流れは絶えずして、諸行無常の地曳き網

−リハビリ小遠征7月編−(2018.7.14〜7.15) 

アオサギは飛んでいく

 「方丈記」や「平家物語」の昔から、いやもっと古くから人は川の水にかぎらず万物は流転して、ご先祖様は盆に帰ってきても覆水は盆に返らないし、こぼした牛乳を嘆いても仕方がないので臭くなる前によく拭いておけねばならないことも知っている。だから、異常気象と騒がれても、毎年気象が異なるのは当たり前でそれを想定して心構えしておかなければならないのだとは思う、思うんだけど多くの命を奪った大雨の後に40度近いような猛暑が来たりすると、やっぱり「異常」なんじゃないかと思ってしまうし、そういう異常にどう対応して備えておけば良いのか、正しい答えなど良く分からなくなってしまう。

 ただ、釣りに関してはそれ程迷いはない。今年から始めてた鮎釣りはすべてが初体験で刻々と変わりゆく川やアユの状況をいちいち自分の感覚で感じながら楽しんでいるし、状況変わればそれに対応する方法を必死で考え試して改良して釣っていくだけだし、釣れなくなったらアユ一旦終了でテナガやマハゼに軸足移しても良いと思ってる。一番釣って面白そうな、心が求める獲物を狙いつづけるという方針さえあればそれで良い。

 アユはここに来て、明らかに海から遡上してきた稚鮎の段階から苔を喰むのを主体とした成長段階に移ったように感じていて、そのことは理解しやすいし予想もしていたのだけど、どうもユスリカとか水生昆虫の羽化があって水面でバシッとライズして食っていてさえ毛鉤には出にくくなってきた。オイカワがここに来て俄然元気で婚姻色もバリバリで盛んに毛鉤食ってくるのに、なぜアユは食ってこないのか?毛鉤にバンバン出てた時には「アユなんてオイカワより簡単じゃん」と不遜にも思っていたけど、ここに来て難しくなってきて俄然アユ釣りの面白さが増してきたように思う。

 正治さんを頼っての3回目の小遠征、鮎毛鉤釣りの聖地の川は先の大雨の後濁りが入って釣りにならず、やっと平水に近づいてきたと思ったら数日前の雨でまた増水してしまったようで状況は良くなく「日程延期しましょうか?」と相談があったけど、例年チンチン釣りやドブ釣りはもう少し釣れ続けるそうだけど、水面を狙う毛鉤流し釣りでアユが釣れるのは7月半ば頃までと聞いていたので、遅くなれば状況悪くなるだろうし、増水なんてのはそれこそ想定の範囲内で普通にある話で、増水時の釣り方ぐらいどうにかせねばいかんでしょ?とも思うので、というか行きたくて仕方なく延期なんて考えられない。

 川の増水時の狙い方としては、当然濁流の時は危ないし近づくななんだけど、そういう時にも釣りになるような普段は逆に水量が足りないようなショボい支流に魚が刺してきているのを狙うというのはありだし、川によっても水源地の違いや流程の長さダムなどの有る無しによって濁りやすさ澄みやすさに差があるので、大雨降ってる最中でなければ早く濁りがとれる川に移動するという手もある。ちょっと青みがかった「笹濁り」の適度な濁りと流量の増加は渓流釣りでは絶好のチャンスで、淵尻で高活性な魚が盛んに食ってきたりするし、流れの緩む岩や橋脚の裏や淵に避難して群れていた魚が腹を空かせて餌が流されてくるのを待っていたりもする。アユでも水生昆虫や流下物を食ってくる個体を狙うなら当然通用する狙い方だろうと思うし、そういう濁りが残っている増水時には効果があるだろう「アユ餌釣り」も、切れる手札になりつつあるので餌釣りが禁漁期間じゃない川で是非試してみたい。

 やってみたらアユ釣れませんでした、でも俄然高活性のオイカワは釣れるだろうし、川がダメなら2日目の海もあるということで、いつものように13日に前のりして挑んだ。

 

 14日朝、流し毛鉤では7月に入ってからは朝は8時頃が時合いじゃないか、というのは両名一致する意見で地域が違ってもある程度共通する傾向なのかも知れない。ということで日の出とか暗いうちからあんまり早く行っても仕方ないだろうと6時頃始める。場所は正治さんのお気に入りの実績ポイントで昨夕もっと下流で様子を見たところ水量はまだ多いものの落ち着き始めていて、オイカワかもだけど跳ねてる魚も見えたのでこの川で釣りになるだろうという読み。もっというなら増水でしばらく釣りになってなかったので、釣れ始めるドンピシャのタイミングに入れれば、腹を空かせた魚が爆釣という美味しい釣りを夢見てた時期もありました(遠い目)。

朝の川

 釣り場に入ると水色は実に良い感じの笹濁りで、増水時には水の下だったはずの石の上には、種類まで分からないけどカワゲラの抜け殻がいくつも付いていて、既に水生昆虫の羽化はあるんだなと思いつつ、とりあえずライズもないので毛鉤を沈めて浮子で流すチンチン釣りで淵尻から始めると、割とあっさりオイカワ釣れてきてこれは期待できると思ったらそれっきりで、しばらく釣れない時間が続く。

オイカワ

 上流に展開していた正治さんと合流したら流し釣りでオイカワは何匹か釣れたとのことだったので、流し釣りに替えて淵尻から早瀬の石周り狙いでアタリはそこそこあって1匹オイカワ追加したけど8時過ぎてもライズも始まらないし釣れてもこないので移動。

 釣具店の店長さんに昨日お話を聞いたときに、お盆までは雨が降るとアユは上流側に移動する、お盆過ぎると下ると言われていると教えてもらったので、上がったアユが溜まるだろう砂止めか堰堤の下に行きましょうと、砂止めのあるポイントに入る。

 ここは砂止めの下の流れ込み掘れた深みでライズがあって、もらったと思ったけどなぜか流し釣りでもチンチン釣りでも食ってこず。いっそこういう場所では底近くをドブ釣りで狙うべきなのかと5.4mの渓流竿だしてドブ釣りも繰り出してみたけど、渓流竿で扱えるような重さのオモリでは流れがきつくて底が上手くとれず釣りにくく釣れなかった。

 川底の苔は流れてしまっていて、苔食えないなら虫食いそうなモノで実際ライズもあるけど食わせられず。これはこの川の今の状況では手持ちの札では勝負にならんな、と考えて流程短く濁りがもうとれているだろう餌釣りもできる川に9時過ぎ移動を決断。

 

 この地域に3本流れている川の中では一番川幅も狭く両面護岸のショボい川で正治さんも狙ったことがない川なので上流側からアユの姿を探しつつ下っていく。水は澄んでいて増水の影響はほとんど見られない。街中にそろそろ入るというあたりで子供連れの釣り人がいて、車を止めて見に行くと、浅い流れの中にアユとかカマツカとかが泳いでいるのが見える。餌のシラスをスーパーに買いに行って、さらに下流も見ながら結局釣り人いたあたりが一番魚が濃そうだったので、やや下流側でアユの群れに手で潰して丸めたシラスをちょっと投げているとしばらくして食う個体が出始めたので餌釣り仕掛けを出して護岸の上から狙ってみることにする。

 石の周りで群れて苔喰食んでる15センチぐらいはある群れアユが釣れないモノかと期待していたけど、寄ってくるのは小さいのばかりで、しかも食いが浅くてかからんがなと苦戦してたら、そこそこのサイズのが撒き餌拾いながらやってきてあっさり食った。

オイカワ

 オイカワでした。抱卵してるのかよく太ってる。すぐにもう一匹釣れたけどオイカワの抱卵メス釣っても仕方ないなと逃がしながらアユを狙っていくけど、流れる撒き餌はたまに拾ってる個体がいるけど刺し餌は食ってこない。

 しかし上流で釣ってた正治さんは小さいながらもアユ2匹で餌では初アユらしくホッと一息。

 だがしかし、こちらは釣れない時間に突入してしまい。上流親子連れはいなくなったので上流探りに行く。アユは結構いてでもやっぱり食ってこない。自動車整備工場のオニーチャンが「釣れますか?」と様子見にきたのであんまりですね、と答えたら、毎日誰か釣ってるとか上流の橋の所でよくやってるとか教えてくれた。

 上流に歩いて行くと堰堤の下の淵尻の大きめの石に付いている20センチ弱の個体が明らかに群れアユとは違う行動していて、近づく他の個体を右に左にと追っ払っている。よく見るとその下流の石でも同じような動きしている。

 コレは友釣りだなと思うモノのオイカワは逃がしてしまったし、正治さんの釣ったアユは既にクーラーに入っているのでルアーしかないなと、5.4mの渓流竿に0.8号ナイロン通しでルアー動かしやすいようにやや短めにシュガーディープ7センチ直結という仕掛けで狙ってみる。

 上流から流し込んで石の付近で前後させる感じでルアーをアユの近くにとどまらせる。明らかにコレまでにはなかった反応で、後ろを追ってきたり横で反転したりするのだけど、なかなか掛かるような攻撃は仕掛けてこない。それでも攻撃はだんだん激しくなっていくような話も読んでいたので粘っていると、頭突きしてきた後に掛かったんだけどすぐバレた。アユどっか行っちまったジャンよ。気を取り直して別のを狙っていくけど、やっぱりあと一歩という感じなのでルアーをパールホワイトのラパラF9に換えて重さ調整して底近く引けるようにして狙っていると、こっちの方が反応良いような感じで、一回思いっきりルアーが飛ばされるような頭突きも喰らったけど惜しくも掛からず。ただ、回ってきた群れアユにルアーを紛れ込ませると1回ちょっと掛かったけどまたすぐ外れた。うーんナノスムースコートのハリは今一な気がしてきた。もう一カ所縄張りアユみつけて狙ってみたけどこちらも似たような反応で惜しいところまで来てるんだろうけど、もう半歩ぐらいが遠い。

 正午近くなって死にそうな暑さになってきたので撤収。正治さんは粘って1匹追加していた。

 

 昼食蕎麦たぐってから、一旦正治さんちに戻って昼寝。35度を超える猛暑日で、日なたは実際には40度とか体温越える温度のはずでさすがに体が持たぬ。

 3時頃に3本ある川の午前に行ってない川を見に行って、やや増水しているモノのアユが既に苔を喰んでいるのが橋の上からも確認できて釣りになりそうに思う。再度朝一入った川のやや下流の実績ポイントを見てからどちらで釣るか決めようと行ってみると、昨夕よりも水位減ってて良さげ。手堅く行くならもう一本の川に戻るべきかもだけど、雨後の爆釣を狙うならむしろこちらだろうとバクチを打ってみる。

 正治さんは実績の砂止め直下の淵から早瀬にかけて、私は砂止め上の淵尻に入る。入ってすぐの葦の際ですぐにアタリがそれなりに出始めて小さいオイカワが釣れた。悪くない感触だとおもって淵尻を砂止めに平行に移動しながら狙っていくけど意外なぐらい反応ない。今日の毛鉤流し釣り仕掛けの打順は「青ライオン」「黄角幻影烏荒巻」「水の女王」「緑雉」「幻影雉黄角」「仇虫」「借苦ズィーロン角」で、正治さん情報で6月良く釣れてた「水の女王」は釣れなくなってきて「幻影雉」「仇虫」「借苦」あたりが調子が良いとのことだったのでこういう打線に組んでいる。

 結局対岸まで来てしまう。ただ対岸葦際ではライズがあって、これは岸際が良いのかなとやや上流までジャブジャブ上がってから岸際意識して横に投げてターンさせてちょっと下がってという狙いかたしたらターン中アタリが連発し始めた。ただアユは釣れてこない。オイカワとカワムツでサイズのいい婚姻色でたようなのが多くてまあアユ釣れてないにしてもバシッとか毛鉤に出てくれて引き味も良く楽しくなってきた。今日は暑いので速乾性のズボンにウェーディングシューズ履いて立ち込んでいるので足が冷たいのも気持ち良い。

オイカワカワムツ

 砂止めまで釣ってアタって掛からないのも多くやや苦戦したけど10匹弱ぐらいは釣っただろうか、アユは釣れていないので他の場所もみていこうと下流に移動。途中正治さんに様子を聞くと全く釣れていないとのこと。早瀬にはまだ苔も生えていないし魚が戻ってきていないのだろうか。

 であれば戻ってきていない魚たちは早瀬の下の広い平瀬に溜まっていておかしくないだろうと下流に移動。平瀬への流れ込みで何匹か小さめのオイカワゲット。そこから下流平瀬の中はライズあるけど場所が広すぎて狙いが絞れずポツポツという感じ。銀色の細長いのが上がってきてやっとアユゲットと思ったらウグイだった。まあ掛かってくれた魚に文句言うべきじゃない。

ウグイ

 再度、砂止め上に戻って、こちらは相変わらず釣れる感じで何匹か追加して、でもアユは釣れないのでまた下流の平瀬に行ったらライズ終わっててショボい感じで、また砂止め上に戻ったらこちらは夕まずめっぽい感じのライズとアタりかたになって、時間もあと少しだろうしここで粘って数釣ってればアユも混ざるだろうと釣っていく。

 それまで下の方の「仇虫」「緑雉」あたりが良かったけど上の方の毛鉤にも掛かりだして、上の方に掛かったときに、右手の竿の持つ位置を上にズラして抜き上げて腰に差してるタモに取り込む「変異抜竿霞捕り」もだいぶなめらかにこなせるようになってきた。タモの上で勝手にハリが外れて落ちたのも何度かあって。大きめのタモを用意してきたのが地味に役立ってて嬉しい。

 ちょっと細長いのが釣れてアユかとドキドキしつつタモに無事収めたら、これは小さいながらもアユで、渋い状況でも他の魚も釣りながら自分なりの釣りを組み立てて何とか本命スカを逃れたので嬉しい。その後もう一匹追加。複数ゲットはまぐれじゃない証明だと思っているので2匹目も嬉しかった。まぐれでも何でも良いんだけどね。

アユゲット

 そろそろ終わりという感じの19時前に良いサイズのが3発ぐらい来て、銀色なのでアユかとドキドキしたけどウグイでした。でも大きめのウグイは美味しいことが判明しているので「ハヤのひとのし」も気持ち良い釣り味だし文句はない。

ウグイ

 19時頃終了。夕まずめ正治さんも砂止め下で結構釣ったようだ。ただアユはそれっぽいのを落としたのみだったとのこと。小さいのや明らかに抱卵してそうなのは逃がして婚姻色出てるような綺麗どころをお持ち帰りする。アユどこに写ってるか分かるだろうか?鮎釣りの釣果写真じゃないよね、という感じ。

アユ釣り?

 前回解禁直後はまだ本格的には釣れ始まってない感じで、今回はそろそろ毛鉤流し釣りは終わりだなという状況で、案内してくれた正治さんとしては、良く釣れている時期に来て爆釣を楽しんで欲しかったという気持ちがあったんだろうことは凄く分かるんだけど、こういう渋いポテンヒット的な釣りも割りと好き。アユ以外は夕方30近く釣ったと思うので、来た魚全部楽しむ釣り人としては存分に堪能したし、本命もちゃんと釣ったしで実はかなり満足している。餌釣りで釣れる感覚が身についてきたのと(自分で釣ってないけど)、ルアーでの釣りが微速前進しているのも意義深かった。次回は餌釣りが解禁になる9月だな。

 

 サッカーW杯3位決定戦観て、翌15日は8時頃に起きてユルユルと磯の小物釣りに出かける。今日も暑いので2時間ぐらい釣ったら昼飯食って、テナガも釣りに行こうという予定。

 海の日関連3連休の中日とあって磯遊びのグループが沢山。前回の場所に行くとちょうど日も昇って帰り際の磯釣り師の人と入れ違いで入れた。

 始めると早速ホンベラが釣れる。

ホンベラ

 今日は直前までコマセ撒いてた釣り人が居たせいか青いスズメダイの活性が高くて餌が突かれるので、釣ったことない魚種でもあり、ハリを5号から3号に落として狙って1匹ゲット。泳いでるときはコバルトブルーに輝いているのに釣り上げてカメラ出してモタクサしていると沙羅双樹の花の色じゃないけどどんどん変わって茶色くなっていく。ルリスズメだと思ってたけど、コバルトスズメとか似たのがいるよなと帰ってから調べてみたら、コバルトスズメって昔は色の違う雄雌で名前が違ってただけでいまはルリスズメに統一されているようだ。でも尻尾の先が丸くなくて上下尖っててルリスズメじゃないっぽい。調べてみてソラスズメの尻尾があんまり黄色くないヤツだと同定した。

ソラスズメ

 その後、はニシキベラ、メジナ、クロホシイシモチ、キタマクラ、クサフグといつものメンバーで特にニシキベラの活性が高くて結構良い引きしてくれるので楽しめた。

ニシキベラ木っ葉グレクロホシイシモチキタマクラクサフグ

 ソラスズメ良い色のを写真に収めようとカメラ用意して釣ってすぐに撮ってなんとかこのぐらい。自分の釣った魚の中でも最も美しい部類だと思う。婚姻色のオイカワもそうだけどなんでこんなに美しい必要があるのかなと不思議に思わずにいられない。オイカワとかはオスだけの晴れの装いなので、生存に不利でも目一杯着飾ってメスを魅了しようとしているのかなと分かりやすいンだけど、ソラスズメとか熱帯魚系の美しさって、多様な種類が暮らす中で同種を見分けるために明確な差をつけてるのかもしれないけど、それにしても普段からあんなに派手にする理由は何なんだろうか?普段派手だけど寝るときや逃げるときには地味な色にパッと変えて敵の目を欺くとかそんなんだろうか?でもそれだと色変わらない魚にはあてはまらない。まあそれぞれの魚にそれぞれの戦略があって、いろんな要素があってきっと不思議な色にも人間がちょっとやそっとかしこぶって考えても分からん理由があるんだろう。

ソラスズメ

 

 11時頃にあがって、昼ご飯久しぶりにおかわり自由の店でおかわり堪能して、ヒラテテナガ釣りに繰り出した。増水前には結構歩き回っている個体がいたということでチャンスなのかも知れないけど、正直過去2回の挑戦で、個体数は都市河川のテナガエビほど多くはなさそうだし、石の下に隠れ気味で、かつ上流域のテナガということで高水温には弱そうで夏はダメな種類かもと諦め気味である。

 でも前回のような垢ぐされで渇水気味によどんだ感じではなく、アユも元気に苔喰んでるけど水量多めで、なんというか酸素豊富な感じで状況悪くなさそう。

 始めると割とすぐに岸際の石の下から出ているハサミ脚発見。ドキドキしつつ餌を下ろすとオモリ挟んで石の下に引き込んだので、しばし放置後聞きアワセするとスルッと出てきて、でも餌囓ったような汁気の抜けた感じになっていて食ってはきたようだ。再度餌をセットして放置して正治さんの方を見に行くと歩いてるのがいたけど沖の方に行ってしまったとのこと。

 戻ってあげてみると食ってない。その後も置き竿して他の場所も探りに行ったりしたけどスミウキゴリとヌマチチブが元気に餌を食ってくれる他には反応なく、手詰まりなので、正治さんが歩いているのを見たというのが淵尻である程度流速があったので、その辺りの流れのある場所を探るかとオモリ追加して川に入って行く。

ヌマチチブ

 中州に流れがぶつかってるあたりの石の重なりの間にいた。デカい個体で間違いなくヒラテテナガのゴツいハサミ脚が付いてる。モショモショ歩いてる感じなので食ってくるかも知れないという期待でドキドキのなか、流れで餌を上手く目の前に落としにくいけど体の横に落としたら触覚がピコピコ動いて狭い石の隙間で後ずさりしながら食ったような動きをして止まった。はやる気持ちを抑えつつも、でも抑えきれずにそろそろ良いだろと上げてみたら食ってたけど掛からなかった。早すぎるってばいつもながら。

 再度餌を近くに持っていったらまた食った。心の中で30数えてソッと聞きアワせしてみると重さが乗ったのでチョイと手首を返して持ち上げると掛かった。ゴッゴッゴッという感じの重々しいエビバック。他のエビが逃げるのも視野の隅にとらえつつ、ここでバラしたら一生の不覚とエビ引っ張りながら中州にかけ上がり浅瀬に下ろして、目の前にいるおっきなエビがホンマに釣れたんだと酔っ払ったようなフワフワした感覚の中、正治さんに向かって雄叫びを上げ写真を撮る。

ヒラテテナガエビ

 デカさが分かるようにと手に乗せて撮ろうとしたら思いっきり挟まれて、ハサミ脚が太いだけあって痛いんだけどそれすら嬉しい。手のひら越えてるので20センチはある。後で測ったら23センチ。一匹目が大型個体というのもまた嬉しい。

挟まれた

 流れを渡ってクーラーの所まで戻ってハリを外してフラシ魚籠に入れたいんだけど、手が震えてハリがつまめない。多分今年一番の興奮。しかたないのでハリス切って魚籠に入れて、逃げてた個体がいるぐらいだからあの付近かあのぐらいの流速が多分良いんだろうと、正治さんと再度釣れたあたりを狙いに行くと、さっき釣れたあたりの石の間で2匹が喧嘩している。結構いるんだ。

 正治さんに狙ってもらう。最初喧嘩中は食ってこなくてダメかと諦めかけたけど、喧嘩終わって良い場所取った大きい方が食ってきた。1回掛け損なってでもまだ食ってくるので2回目で無事ゲット。これも大きかった。

 喧嘩負けた方もいるはずなので、さらに同じ場所正治さんに狙ってもらって私は流れが同じぐらいある場所をというのを念頭に対岸に向かって探りに行く。すぐ近くの石の下で片手の個体を見つけて食わせたけど掛からず、こいつは石の下に潜ってしまって反応なくなったので、けっこういるんだとさらに歩を進めるけど、そこからは全然いなくて、戻ってきたら正治さんがやや小さめのを追加した。

 さっきいた片手の個体もう一回食ってこないかなと、石の際に餌を放り込んで写真を撮ってしばらくしてあげてみると掛かった。やっぱり片手の個体。

石の下片手

 15時くらいで他に食ってきそうな個体も見つからないので大満足して撤収。

 

 この嬉しさが分かる釣り人が、テナガエビ釣り好きな人間でも別の種類も釣ってみたいなんて人種はほぼいないだろうからあんまりいないだろうことが残念でならない。結構自慢したいんだけど「へぇそうなんだ良かったね」ぐらいの反応しかなさそうでアタイ悔しいッ!

 釣り方もナニも分からない情報もほとんど出てこないような未知の獲物を、3度目の正直で仕留めるって自分の中ではほぼ最高に近いでっかいホームランなんだけど、分かっていただけるだろうか。釣り方分かってしまえば大したことない釣りモノなのかも知れない。でも五里霧中のなか苦労してやっと辿り着けた初めての経験は、いくつになっても手先や膝が震えるほどの喜びをもたらしてくれる。正治さんありがとう。エビも魚も川もありがとう。

 釣りって結局、釣れる確率を発生させて釣り場に立つというのがその方法の根本で、確率を上げることと、なるべく沢山釣り場に立つのとが良い釣りするための絶対方針だと思っていて、技術とか道具とか工夫して確率上げるのも大事だけど、愚直に何度でも挑戦することの確かさを改めて認識させられた今回の小遠征である。一度や二度の失敗で諦めてちゃ、三度目の正直には出会えねェぞってことだと思う。と気分良くエラそうなことをのたまうのであった。

 正治さんちに戻って、写真撮って素揚げにして食べる。「ヒラテ(平手)」な感じがおわかりいただけるだろうか。

集合写真ヒラテ

 ただ、この「ヒラテ」の部分が堅くって食うのには適さない。中の身をほじくって食べたけどほじくるには身が少ない。尻尾とボディーはバリバリ食えたけど、普通のテナガエビよりはやっぱり堅めで、強い流れの中で石の下とかに棲んでるから装甲厚いんだなと感心した。味は天然テナガエビなので不味いわけはなく、米国南部のザリガニ料理とか参考にすれば美味しく食べられるかなと正治さんは言ってた。ややザリガニ寄りの上流域に棲むテナガエビというところだろうか。なんにしても楽しめました。

 

 という感じで、アユ釣りは渋かったけど、まあ釣れ始める前から通い始めて、釣れなくなるまで釣るというのは王道で、間の釣れてるところは近所で楽しんでたわけで何の不満もなく、最後に逆転さよなら本塁打も夏空にかっ飛ばして今回も大満足の小遠征であった。

 しばらく暑いあいだアユは雨降った後狙って餌釣りの詰めを進めつつ、友釣りおよびルアー釣りも釣れそうな状況が見えたら挑戦して、釣れないようなら無理はせずにテナガとハゼ釣っとけという感じだろうか。

 そして、体力もだいぶ戻ってきた気がするので、秋には職場復帰を目指しつつ、再度鮎毛鉤釣りの聖地で今度は餌釣りに挑戦してみたい。正治さんまたよろしくお願いします。

 

 夏が暑い!

 

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 六月小遠征顛末記

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  2018年 後半

 

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