愚者の南十字星 ークリスマス島再戦報告ー

(2014.9.22〜10.1)  

 

THE.FISH

 港に向かう航路の景色が涙でにじむ。

 釣ったときはガイドたちと「イエーイ!」とか「ナイスフィッシュ!」とか明るく騒いでいて、感涙にむせぶかもという予想は外れて、やっと釣れてホッとしたという気持ちを含みつつ単純にうれしかった。

 その後も2匹レギュラーサイズを追加してお昼頃に腰も限界っぽいので帰り航路。

 写真見てにやけつつ、ここまできた苦労、この旅もそうだけどそれ以前の苦戦の歴史を思い出したり、釣れてよかったという心の底からの安堵を感じたりしていて、これで釣り仲間や旅の手配をしてくれたKさんにも良い報告ができそうだと、みんなのことを思い出したら。涙があふれて止まらなくなった。恥ずかしいのでガイドに背を向けて泣いていたけど、感謝とうれしさとがあふれてきて、しゃくりあげつつむせび泣いてしまいガイドに優しく背中をさすられた。サンキューMr.イングリッシュ。

 本当にうれしい。間違いなく我がことのように喜んでくれるはずの仲間たちに最高の結果報告をできることがとても幸せである。

 まあ、多少の嫉妬は感じていただけるかもしれないけれど。

 (嫉妬して悔しがってもらえないとちょっと寂しくもあるややこしい男心)

 

 ブログでも取り上げたけど「努力をしても夢はかなわないことはある」ということを子供たちにも教えるべきだ、無駄な努力はいい加減なところでやめさせるべきだ、と主張する人がいて、オレは心の底から腹がたった。

 そのときもグジャグジャ書いたが、結局なにが腹が立ったかということを突き詰めると、才能のない人間に「オマエなんか努力しても無駄じゃ!」と断言するような物言いにムカついた。

 もっと言うなら私がチマチマとやれる範囲で努力して良い釣りしたい、楽しい釣りしたいと、工夫して改良して経験積んでというのを否定されるようで「許すまじ!」と感じたのである。

 

 努力しても報われないことはある。それを認めるのはやぶさかではない。一所懸命それぞれいろんな努力をしていただろう罪もない人々が津波に飲まれたのをみれば、努力ではどうにもならんことがあるのは明白である。

 でも、努力することが否定されなければならない理由など無い。あってもそんな屁理屈オレは認めない。

 今回、私の努力は「報われた!」。努力したから心の底から楽しめた、うれしかった、しびれた、むせび泣いた。

 わかった風な口をきいて、さも賢そうに努力を否定するバカ野郎どもめ、思い知ったか、という気持ちである。

 まあ、釣りに関しては「努力」なんて言ったって好きでやってるだけだけなんだけどね。

 

 今回、かなり自慢したい結果なので、申し訳ないですが、たまには私の自慢話につきあってくれるとうれしいです。

 加えて、今回「ポメラ」という電子メモを導入して持ち込んでいるので、毎日、その日あったことを日記的にダラダラ書いていて、せっかくなのでその日々の思いなんかは割とそのまま使おうと思います。普段なら帰ってから手書きメモを見ながら、頭の中で全体の物語構成を考えて書いてますが、今回とりあえずは時系列でダラダラッと書いてきます。

 正直、前半戦大苦戦してます。でも今回の顛末記はハッピーエンドです。あまりハラハラ心配せずに読んでいただければなと思います。

 ご用とお急ぎでない方はごゆるりと、「結局この魚は何キロあったんじゃい?」とせっかちに思っている人は、適当にでかい魚の写真がでてくるあたりまで飛ばして読んでみてください。

 では、前置きはこれくらいにして本編スタートです。

 

(22日出発)

 出発は夕方。疲れが抜け切れていないのか、やや体調悪く熱っぽい。電話してもタクシーつかまらず、近所のバス停まで重い荷物背負って歩く。スペアスプールが6個から入った持ち込みバックが地味に重めだが、預け荷物2個は22キロちょいで追加料金も発生しない重量に収まっている。預け入れ荷物の23キロまでというのは、要するにアメリカ基準の50lbに準拠してるんだろうけど、今から釣りに行く魚がそのぐらいの重さだと意識するとデカい魚だなと改めて思う。空港まで持ってくるだけでくたびれる重さだ。腰はまあまだ大丈夫っぽい。夜の羽田は割と静か。

 荷物はでかいミレーのバックパックをメインに、片手にロッドケース、腰にウエストポーチ、持ち込みのリュックを体の前面に背負う?胸負う?というスタイルである。

ミレーのバック

 今時、みんなコロコロと転がすバックだが、フィジーカンダブ島のような、舗装されてない道を行くことも想定すると、20キロ近い荷物を背負わない方式にするというのはいまいち踏ん切りがつきかねる。現地ではポーター使うという手もあるが、日本でタクシーつかまらないときに駅やバス停までの結構な距離をゴロゴロ引っ張るのは、バックパックで背負ってしまうのに比べると移動方法としていまいち信頼性にかけると思う。でもまあそろそろバックも壊れそうだし、考え時かとは感じる。

 ウエストポーチは辺境作家の高野秀行氏も「ダサいけど機能を考えるとこれしかないんです。」と書いていたが、大いに同感である。クソダサいのは知ってて使ってます。

 ウエストポーチと持ち込み用リュック

 

 手続き諸々完了して搭乗してシートベルトサインも消えて、前のニーちゃんが背もたれ倒していいかというジェスチャーしてきたのでOKとうなずくが、倒すとせまい。こちらも後ろの人は寝ていたのでそっと背もたれ倒して空間キープ。JAL国際線ってこんなに狭かったっけ。軽食のパンケーキ食ってから、映画をマレフィセント見初めていい塩梅に眠くなり寝る。日本時間の深夜1時過ぎだから眠いのは当然だが、意外に時差ボケ対策に夜出発便は良いかもしれない。3時間ほどしたら朝飯で起こされる。もっと寝ていたかったが容赦なかった。サンドイッチがレタスとトマトが別容器になっていてフレッシュな状態ではさんで食える。しゃらくせえと思ったが、なかなか旨かった。ハワイの有名なサンドイッチ屋の提供企画のようだ。

 飯後歯を磨いて再度寝て起きて映画見終わってぐらいでちょうど到着。映画は適度に眠れる程度に悪くもなく良くもなく。都合5時間ぐらい寝たので、これで現地時間の夜まで眠気我慢して乗り切れば時差ボケ少なくてすみそう。

 

 正午過ぎにホノルル到着でホテルにタクシーで移動。

 今回、ハワイホノルルでのトランジットの1日は太平洋の島々の文化やハワイの自然科学に関する集蔵品がすばらしいと噂に聞いていたビショップ博物館に行こうと思っていたが、今回はっきり言って、行く前が予想外に忙しすぎてクッタクタ状態だったので、ホテルでうだうだと体力回復につとめることにする。ちなみにホノルルでショッピングとかには1ペソも興味ない。

 

 ふつう我々水産業界の仕事は夏は「夏枯れ」という言葉もあるぐらいで暇なはずである。それが、予定外の仕事が発生して大繁盛。こまかい仕事はまあ想定の範囲だけど、予想外のヘビーな案件が2件発生して、毎日なんだか忙しい上に9月に出張2回でうち1回は札幌日帰りというハードスケジュール。当然全部片づいたわけもなく「休み明けに対応します」と拝み倒して休みに突入である。みんなテンパっているところに長い休みで職場には迷惑かけるが、それでもどうしても行きたいから、わがまま言って我が道を行く。

 何かを失うことなく何かを得ることはできない。等価交換であると「鋼の錬金術師」でもいってた。

ポメラ 

 「ポメラ」使って、ホテルのベットでうだうだ考えて打っているのだが、社会人として、普段から病休とか多いのに、こんなに休んで釣り行って良いのかとか悩んでしまう。良くないとして、その場合釣りが止められるのかと言えば、まったくそんなことはないので、結局釣りに行かないぐらいなら社会人やめて「さすらいの釣り人(おおむね河原乞食)」にでもなるしかないと思ったりする。

 読んでいる方は、「なにも釣りをやめなくても近所で短い休みでもできる釣りを、仕事と両立してやれば良いじゃないか?」と思われるかもしれない。それはある意味正しく、たぶんでも本質的には正しくないのではないかと思っている。

 近所の釣りがたいしたことなくて、遠征の釣りが重要だとは、私は全く思っていない。近所の釣りも重要であるし大好きだ。それとはまた「別腹」的に遠征の釣りも重要だと思っているし大好きだ。その重要なやりたい釣りのどちらかをないがしろにするというのは、やっぱり釣り人としては間違っていると思う。釣り人は己の力の限り都合のつく限りやりたい釣りをやるべきだと思う。それは基本方針であり、そのためにやっつけなければならないあれこれヤヤコシいことをやっつけるのも釣り人が力を尽くさなければならない事柄だと思うのである。

 たった一つのシンプルな理由である「オレは釣りに行きたい」。そのためだけに全力をつくさずしてなにが釣り人よ。と自己の行動を正当化してみる。

 

 夕方、涼しくなってきたので夕飯と明日の朝飯確保に街にでる。ハワイローカルのロコモコ丼とか食おうかとうろつくが、見あたらずしばらくするとなんか見覚えのあるフードパントリーというフードコートとスーパーマーケットの混ざった店の前にでた。

 前回のクリスマス島釣行のときも同じようにトランジット時にうろついて結局ここでハワイ風のマグロの刺身「ポキ」を買ってホテルで食った記憶がある。今回もそれでいこう。フードコートには寿司屋もあって地物っぽいキハダの握りとかカルフォルニアロールとかあってひかれるが、敵認定しているノルウェーサーモンが入っているののでパス。スーパーはハワイであってもさすがアメリカという感じの物量で押してくる。肉とかチーズとか青いスポーツドリンクとか。魚コーナーには地物のマグロや養殖テラピアに混じって大きな顔してノルウェーサーモン、ノルウェーサバがやっぱりあって敵ながら天晴れと感心する。世界が認める高品質。日本製は練り物が健闘していた。

 総菜コーナーには目当てのポキもあったが、チリペッパーが結構かかっていて辛いの苦手なのでパス。ポキはサイコロ状に切ったキハダなどの刺身にネギや海藻とかまぶして塩をした一種の「ヅケ」で、和風の醤油味や韓国風の唐辛子風味とかのアレンジもあって今回売ってたのは韓国風かな。初めて食べたののは同居人とハワイ島コナ沖にカンパチジギングに行った時にレンタカーでドライブ中、道沿いの小さな総菜屋さんでみつけたもの。初めてのハワイということで池澤夏樹先生の「ハワイイ島紀行」を読みつつの旅だったが、ちょうどその本でも紹介されていた「ポキ」と伝統的なハワイの主食タロイモのペースト「ポイ」を買って楽しんだ。ポイはビニール袋に入っていて、ビニールの端をかみきって穴をあけて口の中に絞り出して食べるとお行儀悪いけど食器いらずなんですよと、店の日系のお母さんが教えてくれた。ホテルでチューチュウ吸った記憶がある。ポイは主食なので味のない里芋で作ったマッシュポテトという感じだったが、塩味のポキはとても美味しかった。

 「魚釣りに来たんです」といったら冷蔵庫につるしてあるでっかいキハダとかカマスサワラも見せてくれた。たぶん同居人がキハダと並んで撮った記念写真があるはずだ。何年前の話だろうか今は昔という感じだが懐かしく思い出される。出発時にブログに人生が終わるときの走馬燈にでっかく映し出されるとびきりの1匹を釣りたいとか書いたが、楽しい思い出ならすでにたくさん持っているような気もする。ありがたいことに。

 思い出に浸りつつも、結局「高カロリー」重視で沖縄でも定番のポークおにぎり、どうってことのないチャーハン、アメリカンデブ系が好きそうなブルーベリーケーキというチョイス。遠征中は毎日腹が減るので飯をがんがん食うことになるのだが、それでも帰ってくると体重減っているぐらいに消費するので、出発時ちょっと食欲なかったけど健全な食欲が戻ってきているのでカロリー摂取につとめる。

アメリカンデブ飯

 WWEのプロレス中継などみつつ日記打ったりうだうだ。

 

 

(23日) 

 翌朝、寝たのが21時頃と早かったので6時頃目覚めてしまい、ホテルにいても仕方ないので空港で暇つぶすかと8時前にはチェックアウトしてタクシーで空港に。30分ほどで到着したらまだ搭乗手続き始まってなくて、外のベンチに寝転がってキンドルでマンガ読みつつ待つ。搭乗手続き始まって前に並んでいる人の荷物にトラウトアンドキングのタグが見えたので同じ釣り人だなと思って挨拶する。フライマンで宿も同じようだ。今回私の旅の手配はルアーのGT得意なフリーライドアングラーズのKさんにお願いしているが、前回のクリスマス島は私もトラキンさん手配で歴史あるキャプテンクックホテルに泊まった。最近、この2社に旅の手配をお願いすることが多い。どちらも担当者自体が腕利きの釣り人なのでとても信頼できる。対応もそつなくかつ丁寧で優しく、当方のようなあんまり上手でもない釣り人にも釣らせるために色々と気を使ってくれる。まかせて安心である。

(24日、日付変更線越えるので1日進む)

 寝て起きてクリスマス島。後方席だったので入管通過が再後尾。相変わらず、ただのほったて小屋のクリスマス島国際空港。

クリスマス島インターナショナルエアポート

 VIPラウンジがあるようでホノボノとうけた。このラウンジを利用できるVIPがどういう人なのか私気になります。

VIP

 同宿のAさんとトラックに揺られて今回の宿「ザ・ビレッジ」へ。ちょっと既に腰痛い兆候がいやな感じ。私のガイドはイングリッシュ氏、旅程表にガイド(イングリッシュ)となっているのを見て英語話す人という意味だと思っていたがお名前でした。

 宿は海のそばで、目の前にボーン釣れそうな白い砂浜が広がっている(実際に釣れる)。

 マイルーム

前浜

 ウェルカムドリンクとともにウェルカム刺身がでてきてワロた。日本人のマグロ刺身好きはキリバスでも有名なのか?

キリバス共和国国旗

 荷をほどくと、アメリカ様がやってくれている。中身一度出して検査されており、ロッドケースに入れておいたサブ偏光グラス破損。メインは持ち込み荷物に入れて危険分散しているからいいっちゃいいんだけどムカつく。

 

 ディナーは日本人同士ということで名古屋のフライマンAさんと、ロブスター食う。

 ここまで単身やってくるのはまあ相当な強者だろうなという予想に違わず歴戦のフライマン。楽しく釣り話などしつつ明日の健闘を祈り、早めに解散。「自然のサイクルで朝起きて釣りに行って、帰ってきて飯食って暗くなったら寝る。」ということの贅沢さと幸せを2人して共有。明日は5時起きで6時出航。腰痛いから1発で勝負決めてとっとと帰ってくるという理想のパターンを目指そう。

  腰の痛さが気になって、気分がやや沈みかかっていたけど、旅は道連れの良き仲間に巡り会い、飯で腹も膨れていい塩梅にリラックスできた。宿のシャワーお湯がでて感激。前回のクリスマスの時は水シャワーだった、使わなかったけど部屋にエアコンもついてた。今時どこの秘境でもグローバルスタンダードなのだろうかと思うとちょっと寂しい。

 ショッピングセンターもリゾートホテルもない、空港に土産物コーナーすら無い、でも、魚と鳥はいっぱいいるクリスマス島を心から愛する。

 

(釣り1日目)

 疲れているのに、興奮と腰の塩梅とかへの不安でなかなか寝付けず、眠剤2回食らってやっと眠れた。5時間ほど寝て起きて、朝飯食って昼のサンドイッチ用意していざゆかん。

 割りとでっかいアウトリガーカヌー、船外機はサブもついててもしもの時も安心だといってた(まさかこれが伏線だったとは)。

出航準備

 浜辺をジャブジャブっと乗船して、アウトリーフを目指す。リーフエッジの際じゃなくて50mとかの深いところをやるのでデカいのがくるぞとのことで「あんまりデカいの来たら腰もたへんのとちゃうか?」と、「かけてから心配しろ」ないらん心配をしてみる。

出撃

 到着時大丈夫かと不安になるぐらいの強風だったが、それほどではないがそこそこ風はあって揺れる。まあ島なので風裏とかはあるはずである。

 しばらく走って最初のポイント、サーフェスブル赤虎クロームに何投めかにボショッとでたがフッキングせず、そのあともガイドに追いが見えるのが1度あったがパッとせず移動。結構飛沫かぶる大波の中長時間移動。なんか気持ち悪いような気がする。

 次のポイント、立ち上がってすぐに一口ゲロ。

 釣り始めるが揺れるしボートポジションは決まらないしで、少なくとも釣り人が私である限りどうもならんのを見て取って再度長距離移動。

 この場所は穏やかでイルカも遊んでいる。しばらくルアー変えつつ投げるが反応なく、風でふけたラインに結び目ができてしまったので直そうとしていると、おもいきり気力分が悪くなってきて、ゲロゲロと吐いた。久しぶりに苦い汁まで吐いた。

イルカイナイカ

 これで完全にグロッキーで、まだ11時頃だったけど「ビレッジに戻ろう」と船長に伝える。

 一路波をかき分けて進むのだが、途中で止まる。エンジントラブルで予備エンジンと付け換えに小1時間かかって帰着したのは1時頃。朝の予備エンジンの件のフラグを回収してしもた感じ。

 明日は波の少ないインリーフでやろうということだが、船に弱い人のレッテルを貼られてしまい悔しい。

 船の上で寝転がっていた時間が長かったのが、適度にマッサージになってほぐれたのか腰は悪くない状態。魚かけてないし、そもそもキャスト数が少ないので肩もどうってことない。まだ初日であと5日あるからまだ焦る時間じゃない。今日はゆっくり休んでおこう。

タックル干し場

 南の島でよく見る、ブラインドカーテンみたいな角度を変えられるガラス窓を日本語でなんたら言うんだよなと気になっていたが、思い出せずに帰ってきて検索した。「ルーバー窓」(←「鎧窓」がビンゴ2016.7)。 

ルーパー窓

 昼寝した後、夕飯まで「大江戸釣客伝」読んでたら、18時半頃、強かった風が怖いくらいになったと思ったら、スコールが来た。魚が釣れてないので不安と焦りが胸にあるが、南の島で窓越しにスコール眺めるなんてのは風情がある。まあたのしめや、と自分に言い聞かせる。

 19時過ぎに雨もやんで食事、Aさんは30くらいはボーン釣ってジェットラン堪能したとのこと。あすからフラットのGTにチャレンジしようとのこと。「僕より先に大きいの釣っちゃったりして」とフラグをたてたりしつつ、明日のお互いの健闘を祈る。

 

 

(釣り2日目)

 2日目は眠剤使わずとも割とスッと眠れて7時間睡眠ぐらい。

 朝一勝負だぜと出港するがすぐにエンジン止まる。幸先悪いったらない。後から出発のAさんの船に引かれていったん戻る。

 小さめのルアーがいいということなので、ロウニンアジ飽きるぐらい釣ってしまった場合用に念のためマグロ用として持ってきていたローデッド18センチとかを部屋に取りに戻っている間にエンジニア呼んで修理。これってサブエンジン死んでるのを積んでるのかしら?南の島の「いい加減さ」を知っているのでちょっと不安。

 クリスマス島は島の真ん中がでっかいラグーンになっている。その入り口の北の岬がロンドン、南がパリという地名。今回ラグーンの入り口のドーバー海峡にあたるあたりを攻めた。

 基本白い砂底に、島のように隆起した珊瑚の瀬があり、朝の潮の高いうちは瀬を越えて、昼ぐらいに干潮になると珊瑚の手前のかけ上がりの深みをねらった。

 

 スタートして程なく、ブルポッパークロームサンマにドカンと追い食いしたけどかからず。サイズも10キロは余裕である感じだったので、まあ10キロクラスだけど数はでるのかなと思ったら。そんな考えは田舎の煮魚より甘かった。

 ちっさいカスミやらクィーンフィッシュっぽいのやらは追ってくるしマンタも泳いでいるが、ロウニンアジなかなか反応無く、一カ所ガイドが何匹か見つけた場所があったけど無反応。半分も自分の目では確認できなかった。

マンタ

 10時すぎて日が高くなってからはポッパーやめてローデットのみ。黒く見えてる沈み根っぽい珊瑚の脇でやっと1発かけたが、掛かりどころが悪かったのかすぐばれた。サイズは10キロ無いくらい。

 結局それが最後の反応で昼過ぎて最干潮からあげ始めても変化無いので、早めに撤収。

 

 明日は風が収まるならアウトリーフにいきたいとリクエストしたが、風裏のロンドン、パリ沖あたりは近いので魚すれててダメだ、ショアからGT狙えるところがあるので明日は陸路をトラックで行こう。ということになった。

 ショアGTは難易度高すぎるだろうという気がするが、船のエンジンも不調だし、近場のGTは反応薄いしで、GTスカ食ったら帰りにボーンやることにして、とりあえず明日はショアGT。

 今日の最後のポイントでベールが返るキャストミスをしたら、ストッパーがいかれた。ペンスピンフィッシャーの場合、ストッパーが通常のとクリックモード用と2つついているので、とりあえず通常のストッパーいかれてもクリックモードでは使えるが、換え部品持ってきているし後で部屋で直した。石垣島で同じトラブル起こしたときにフィッシャーマンの店員さんに教えてもらいつつなおしてもらった記憶がある。

工具ローター内部下が新品パーツ

 ちなみに、7500SSと750SSの2台体制なので最悪修理不能でもなんとかなる。大事なものには予備が必要だ。

 

 2時ころ部屋に戻ってきて、さすがに2日スカで調子に乗れてないので、シャワー浴びる前にゲンなおしに宿前の浜辺でハゼ仕掛けつけた白滝2.4mをもってたち込む。

 餌は昼飯のサンドイッチのハムを残しておいた。

 白い浜に、黒い石なのかサンゴなのかが沈んでいるところが見えるのでとりあえずその周りをねらってみる。

 ワラワラと追ってくるのがいるが、おもり食ってるのかフッキングしない。江戸前小物釣り師モードでも惨敗なのかと落ち込みそうになったが、ハム大きめにつけてクルクルさせたらヒット。

 記念すべき今釣行1匹目はチビカスミ。

チビカスミ

 次に来たヒメジ系を落として、もういっちょカスミの後に、ややサイズアップしたと思ったらロウニンメッキ、白い砂に色を合わせているのもあってか、鰭に黄色も黒も乗らないので真っ白に見える。ロウニンアジゲットだぜ。トホホ。

小ロウニン

 次に来たのはえらくダッシュ力がありちょっとオットットと歩いていなさざるを得なかった。サイズがあがったのかと思ったらそうじゃなくてボーンだった。キスサイズでもジェットランしやがるとは流石や。

ボーン

 その後、カスミ数匹追加して終了。いい感じに気分転換できた。明日こそジャイアントを手にしたい。

 

 自分の写真がほとんどない。何日目の写真か分かりやすいように、帽子や日焼け防止に使う手ぬぐいは毎日組み合わせを変えているが、撮る機会無いじゃんよ。

 フェイスガード、昨年のターポンの時に使って案配よかったので今回も持ってきているが、でかいポッパー投げてるときは息苦しい(とこの時点では感じていたが後半慣れた)。ずらして口まで出すと鼻が焼けるので、前からやってる手ぬぐいで鼻から下覆う方式の方がしっくりくる。

 夕飯ステーキぎゅうぎゅう食ったった。Aさん、ボーンはもう飽きたかもとのこと、GTもキャストチャンスあったけど食わなかったとのこと。明日はGTゲットを報告しあえるようにと健闘を誓いあう。

 

(釣り3日目)

 ショアGT狙いのはずだったが、ボートでいこうということになった。風が相変わらず強く、ショアGTポイントは波で危ないのか、ボートのトラブルが復旧したのかわからんが、正直ショアでかけても穫れる自信がないので歓迎である。

 だって、ボートでかけたら必死のパッチでサンゴの根から離しにかかるのに、ショアから釣るならサンゴの根の上に立って、かかったらそっちに寄せてくるって、まるっきり別の技術体系の釣りだと思う。

 寄せてきて魚が潜りすぎててラインの角度が根と擦れる角度なら、再度走らせて浮かせ直すとか磯釣りのレポートで読んだことあるけど、読んだこと一発でできるほど器用でもないし、そんな甘か無いだろうってところ。 

 フライタックル用意したので、朝GTやってその後ボーンという日程にする。

 

 とりあえず出て今日もドーバーあたり。珊瑚の瀬に波がぶつかってサラしているところを狙う。

さらし

 数投目に落ちパクで出たが、ラインスラッグ回収したら乗ってなかった。Sポップ青。今日こそバコバコかと気合いを入れるがその後反応無いパティーン。まだ前半戦だがルアーがぜんぜんへらないし、なにが良いという情報が得られるほどの芳しい反応もない。

 珊瑚礁の内側の浅い海域はラグーンとか礁湖と呼ばれていて、ちなみにクリスマス島は世界最大の環礁で広大なラグーンには珊瑚の砂でできたフラットと呼ばれる砂州が鱗のように折り重なるように存在している。ラグーンのあるインナーリーフと呼ばれる浅い海を出ると海の色が中島敦の書くところの「乳に溶かした翡翠色」からブルーウォーターと呼ばれる深い青色をした深い海に出る。

ブルーウォーター 

 Sポップとブルポッパーで投げていくが反応無く、そうこうするうちに恒例のエンジントラブル。ポイントの上なのでデカいの来ても追っかけてもらえんなと、掛けてから考えろな感じのいらん心配。

S−POP、サーフェスブル 

 しばらくしてエンジン復活。次のポイントはミルクフィッシュのようなのが浮いていて、チョットやる気を出してルアーあれこれ変えたりしてみる。せっかく持ってきたのだからと黒のロングペンを風に乗せて遠投して高速ポッピング敢行してみたら意外と良いリズムでひける。

黒くて長い

 調子よく投げていたら、ガイドがチェイスと言っている。後ろついている結構なサイズ。食いきらせることができずに再度投げるがもう反応はなかった。しばらくやって腰もしんどいので、ボーンやりにいこう、ついでにトリガーフィシュもやろうということで移動。

 

 が、しかしまたもエンジントラブル。なんとかならんのかといらつき始めるが、ここは南の島でイラついても仕方のない場所だと思い直して、フライタックルの準備したりトリの写真撮ったり。歳とって気の短さが多少ましになったような気がする。失うものもあれば得るものもあるということか。等価交換。

 エンジン修理

 しばらくして復旧。燃料がどうもダメだとか何とか謝っている。まあいいさ。

 

 わりと近くの沖側のフラットに入る。最初、魚は見えんわ、キャストは我ながらどうにかならんのかというレベルだわで苦戦した。まさか世界でもっとも100%に近い釣り場と呼ばれるクリスマス島のフラットでぼうず食らうか?と焦ったが、程なくゲット。サイズはそれほどではないがシステム2のやかましいクリック音を楽しんだ。バッキングまでは出なかった。今回タックルは同居人用クリスマスタックルとして購入したリールのサイエンティフィックアングラーズ社システム2とロッドがカベラスLST9番である。教員している同居人とは休みがあわなくなって遠征は一緒に行かなくなった。同居人がクリスマス島に来ることはなさそうなのでタックルだけ連れてきた。

ボーンゲットだぜ

1匹目

 沖側なのでサンゴが結構ある。

 ハワイのボーンがサンゴにつっこまれたりして難しいとは聞いていたが、クリスマスのサンドフラットの砂底でしかやったこと無かったのでピンときてなかったが、ちょっと納得できた。チッチャイのでもボーン走り始めは制御不能でえらい広範囲を走りまわってくれるので、サンゴが点在しているとすぐに根ずれで切れる。何本か切られてしまった。

ブルースカイ 

 でもまあ、魚も見えはじめると普通に見えるようになってきて、キャストも魚が寄ってくる場所に立たせてくれるのでそれなりになってきた。5mぐらいの近距離が結構多い。投げても15mくらいまででたいした距離は投げなくてよい。

 一度、5キロぐらいのロウニンアジが小魚追い回しながらフラットにあがってきたが、風上だったので全く届かなかった。

 

 2カ所目はさらにサンゴが多い。その分トリガーフィッシュが多くて、頭を下にしていわゆる「テーリング」で底の餌をついばんでいるのだが、ユラユラと水面近くで揺らめくヒレがラフレシアとかの不気味な花の赤黒い花びらのようで妖しい美しさがある。

 何度か狙ってようやく小さめのを掛けた。

 モンガラカワハギのたぐいなんだが、引くという噂は聞いていたがフグみたいな見た目なので正直なめてた。

 びっくりするダッシュ力。一気に沖に出てくれたのでアワくって竿掲げながら走り回ってサンゴは回避できた。寄せてきて魚が見えてきたらガイドがフラットの真ん中へ行けと身振り手振り付きで言っている。何のことかわからずにいたら再度ダッシュ。寄ってきてもまた行くタイプなのでサンゴのない場所へ寄せれるときに寄せろということらしい。運良く2度めもサンゴかわして、今度は寄せたついでにフラットの奥へ引っ張っていく。そこで何度か周りを走らせてガイドがランディング。

キヘリモンガラ顔

 この手のモンガラ系って産卵期に縄張りに侵入しちゃうとダイバーにでも向かってくるヤツだけど、和名何だッたっけと思い出せなかったので写真撮っておいて帰ってから同定。キヘリモンガラのようだ。こいつとゴマモンガラが気の荒いモンガラの双璧のようだ。

キヘリモンガラ

 なかなか興奮した。これの倍ぐらいのサイズのもいるが、サンゴ周りではなかなかとれんのと違うのだろうか。

 

 その後はチビカスミ、フエダイ系も加えて、ボーンも何匹か釣ったりばらしたり。サンゴの根ずれを怖がるとなぜかバラしが増える。まあ5、6匹ゲットした。サイズのいいのがほしいところだが、まあまだチャンスはあるだろう。

カスミアジレギュラーサイズ 

 ボートが先回りしてくれているので楽だが、それでも疲れている。疲れが抜けてくれていない感じがする。

 

 ドーバーの真ん中へんに本名忘れたが(後で確認したらMOTUTABU島だった)バードアイランドとよばれている島があって、近いしランチはそこで食って鳥の写真でも撮るかと聞かれたので、是非にということでバードアイランドへ。

バードアイランドへ 

 近付いていくと、海岸の黒いゴミのようなのがすべて鳥で驚く。

海岸の黒いゴミのようなモノがすべて鳥

 いつも見る頭の白いアジサシ(クロアジサシかな?)が木に営巣している。ちらほらシロアジサシも見えるし、カツオドリやカモメの仲間も見えるし、赤いしっぽのネッタイチョウもいた。

営巣地クロアジサシシロアジサシとまってる

 サンドイッチ食ってから上陸して写真撮るが、警戒して頭の上を飛んだりするのだが、釣りが冴えてないときは写真も良いタイミングで撮れない。まあしゃあない。結構疲れて集中できてないなと思ったので、切り上げて帰る。

  でも、帰って写真見てみると割ときれいに撮れてるのもあったりする。どうです?鳥見に行くだけでも価値あると思う海鳥の楽園ぶり。

 シロアジサシ

 明日も同じパターンで朝一GT、その後ボーンとする。後3日このパターンでいって、チャンスを拾うしかないだろう。疲れて弱気になっているのがふがいない。

 

 腰がジクジク痛む。部屋の蛍光灯が切れた。嫌な雰囲気だなと思っていたら蛍光灯復活。オレも復活したい。吉兆と思うことにしよう。

  夕飯は外でバーベキュウ、歌とミスクリスマス島のポリネシアンダンスのショウ付きで、ミスクリスマス島のフレキシブルかつパワフルな腰をワシの腰に移植してくれんもんかなとか思ってたら、みんな一緒に踊りましょうということになって、高校の体育際の出しモンでウェストサイドストーリーのダンスシーンを踊って以来の人前での踊りを「旅だから」と踊ってしまった。おもいっきりアメリカンなノリで楽しんでるアメリカンを横に、いまいち乗り切れずにいたらミスクリスマスがつきっきりで踊ってくれた。気遣いありがとね。腰痛かったけどキミと踊れてよかったよ。

 

 今日はAさんが、フラット立ちこんでフライでGT20ポンド、30ポンド2発キャッチと爆発していた。あの強風の中、12番ででっかいフライ投げるって、はっきり言って尊敬に値する。レベルが違いすぎてあまり嫉妬する気にならなかった。チョット羨ましい程度。

 Aさんと、飯食いつつ釣り話や開高健ネタで盛り上がった。「カイコウ・タケシじゃなくてカイコウ・ケンですよね!」。

 私よりちょっと上の世代の先輩だがパワフルな釣り人だ。オレもやれるだけ後3日やろう。腰が痛いのは如何ともしがたいが、それでもどうすればいいか考えて、最後まであきらめずに、そして楽しもうと思う。

 2人して、釣りして飯食って寝てって、最高の生活だよね、と話していたが、その最高の生活のまさにただ中にいて、場所も再訪したくてしたくてたまらなかった釣り天国クリスマス島である。あんまり深刻になりすぎずに、腰痛ければ休み休み、それでも釣りを楽しんで行こう。それ以外にここで今釣り人がやることなんて無いはずである。

 

 (釣り?4日目)

 と書いてからも、「なんでこの大事なときに腰痛なんだ」とかうだうだ思ってしまい寝るまで悶々として、寝ても浅い眠りで起きても疲労が抜けてない。風もチョットやんできたが腰も痛く、4日目は思い切って釣りを休んでコンディションを整えることにする。朝Aさん出撃を見送って部屋でマンガ読んだり。小説読んだり。 

 朝、今日は釣りは休むと言ったときのAさんの「それもいいんじゃないですか」という一言が、だいぶ焦る気持ちを落ち着かせてくれた。

 本は「大江戸釣客伝」読み切った。面白かった。「釣りは外道の道なり!この道に生き、死して悔いなし。」ってカッケーじゃんよ。獏先生の狂気にとりつかれたように物事に打ち込む人間の描写は胸に来るものがある。

 高野秀行、角幡唯介の早稲田大学探検部先輩後輩対談「地図のない場所で眠りたい」も面白い。角幡氏の書いたもの読みたくなって帰ったら買おうと思ったらしばらく前に「空白の五マイル」を買ってキンドルにぶち込んであった。準備は本のチョイス一つとっても上手くいってるのだが。肝心の釣りが上手く回ってくれない。

ホテルの庭のカニ部屋で食う飯 

 

(釣り5日目)

 朝、腰は昨日の休みがよかったのか割と調子良い。ロウニンアジ何匹かゲットできるぐらいには回復したとおもう。

 今日も風は強く、2日前と同様、ドーバー海峡サンゴ隆起の瀬のサラシからスタート。反応なし。

 

 少し沖に移動して、やや深いところなので時間をかけて投げまくってGTを浮上させるとのことである。やり方はまず一流し目に、派手に泡しぶき出すタイプのポッパーでボカンボカンとポッピングしまくる。その後同じところを2回3回と流して、ダイビングペンシルの割とゆっくりとした誘いで食わせるとのこと。GTをウェイクアップ(目覚め)させろとのこと。

 なんかバス釣りでオレがバズベイト引いていると、追うけど食わん奴をケン一がミノーとか投げて釣っちまうというムカつく技を思い出した。

 ホントにそんなうまいこといくんかいな?と思っていたが、派手なピンクのGT2でたたいた後、2流し目、旅の手配をしてくれたKさんの餞別であるダートベイトを、フィジーのジョーに教わった方法で竿を左右に振りながら、バスルアーのレッドペッパーのようにダイブさせて首を振らせる。フィジーでのスカの経験もここで役に立ったりしている。

 あんまり期待せずにいたが、バコンと派手にでた。が、フッキングせず。

 程なくさらに同じようにバコンとでたがまたかからず。マジで出るやんけ!なんか釣れそうな気配がしてきたんじゃないの?どうなの?

 それほど大きくない魚なのかもしれないけど、でかいシングル2本だとフッキングいまいちかなと、2流し目終わってスタート地点に戻る時に、トリプルにフック交換。

 

 3流し目、しばらく投げて、さすがにもうでないかとあきらめかけたときに、バゴーンと水しぶきを盛大にド派手にあげて出た。ギラリと見えた銀色の面積が大きい。ガイドが「ビッーク!」とか叫んでいる中、ラインスラッグを回収して、オラオラオラオラ!という感じのしつこいフッキング。

 走り出した。水深深いのですぐに止めに入らなくても大丈夫そうなので、そのまま走らせると6キロドラグ引き出して10か20mぐらい走ったが、船も追い始めてくれたのでラインはすぐに回収でき始める。

 でも、すぐに寄ってくるような気配はなくてラインちょっと出して走られたり、その分回収したりという感じだが根につっこむような感じではなく、船と基本併走して船下を泳いでいる感じ。

 これは無理して止めたりせずとも、時間かけて寄せれば勝ちのパターンに入ってくれたと判断。

 よっぽどのことがなければ、というやつだが、よっぽどのことは、昨年のフロリダのように、えてして起こってしまうのが魚釣りという遊び。

 それが身にしみてわかっているから、胃がひっくり返って口から出そうな緊張感を覚える中、ちょっとずつ距離を詰めていく。これをキャッチすればすべてが結果オーライなだけに丁寧に丁寧に行く。

 自分のファイトシーンを写真で見ると、自分がとても華奢で「GT」を釣るような体型に見えないことに加え、腰のコルセットが痛々しい。

竿ののされかたに注目 

 10分ぐらい走らせた頃からだと思うけど、明らかに寄り始めて、ラインが回収できる。勝利は近い。

 ファイトタイム15〜20分ぐらいだと思う。自分のロウニンアジとのファイトではもっとも時間がかかったケースだと思うけど、その甲斐あって見えてきた銀色の魚体はデカい。20キロははかる必要もないぐらい明確に越えている。それ以上っぽい。 

 ショックリーダーが入って、ガイドがギャフを用意して、リーダーもって寄せて口にギャフが入る。ガイドがえいやと船内に魚を取り込む。写真やTVでは見たことあっても、目の前では見たこと無いサイズがそこにいる。ガイドもデッキハンドも当然私も、口々に喜びの声をあげている。写真で見ると7500SSが小さい!

船底に転がる獲物 

 口の横の蝶番の良いところにフロントフックが刺さっていた。理想的なフッキング位置。

 

 ルアーはずして写真撮影の用意だが、とてもじゃないが持ち上がらない。ガイドが「そこに座れ」というので座ると膝の上に乗せてくれた。幅が広くて膝上で横にならずに立つ。顔もデカいし口もデカい。

 写真バシバシとってもらいつつ、どのくらいの重さか聞いたら「80ポンド近い、約35キロ」とのこと、まあリップサービスで1割がたアップしてくれていたとしても30キロは問題なくありそうに見える。一応一割減で31.5キロとしておくか。まあ30キロオーバーということだ。

31.5キロ

 秤も持っていたが、20キロ以上でありさえすればあんまりこだわるつもりはないので、計量せずにリリースした。一舜横になったので「写真撮るのに時間かけすぎたか?」と心配したが、次の瞬間、失神から目覚めたような感じでギュンと泳いでいった。

 

 釣れるときは釣れるもんである。深場で走らせていい余裕の状況だったので、もう少しデカくても同じ状況ならやれそうではあったが、まあ限界近いファイトだった。

 ワタクシ、20キロ、30キロなら穫れます。と公言していただけにそれを証明できてよかった。まあ、オレがオレである証明にもなったと思う。

 うれしくてすごいことが起こっているのは何となく理解していたが、それでも今日の活性ならまだ釣れる気がして、ちょっと休憩して4流し目に入った。

 

 4流し、5流し反応無く、一回休憩でクック島で10時頃早めのランチ。きれいなビーチで飯がうまい。飯がうまい。ただのサンドイッチなのに。

 クック島

 ランチタイム終了後、浅めのポイントをやろうということで、パリ沖に移動。ロングペン黒で高速ポッピングやって反応無いので、その後Sポップ投げていたら、後ろデカいのが追ってきた。最初ガイドも「ビックGT!」と言ってたが、近づいてきたらサメだった。当然「サメも狙ってみたい」とリクエストしたら、これででっかくゆっくりポッピングしろと、ピンクのGT2を指定されたので、ルアーチェンジして投げてみるがサメはこなかった。

 サメはこないんだけど、カスミが追ってきたりしてサカナっけが多いなと思っていたら。ラインスラッグ回収中で浮いてるGT2にドカンと出た。大きくないし引きが弱い。バラクーダだった。寄せてきてランディングどうしようと思ってたらばれた。

 

 まあ、魚の反応があるのはいいことである。投げつつける。

 

 またドカンと出て食いそこねかかからず、でも追ってきてるのでポッピング続けたらもう一度出て、今度はしっかりフッキングも決まった。最初ちょっとだけドラグ出たがほぼライン出されずに勝負がついた。10キロちょいのロウニンアジである。こいつもフックはフロントが口の横にしっかりかかっている。釣れる日はこういう掛かり方するような気がする。

2匹目 

 ちょっと休憩して、もう一流し。今度は浮いてたルアーにドカンと出た。フッキングもガシガシ決めて、ファイトも余裕のサイズで難なくゲット。これも10キロあるかないか。いい塩梅に楽しんで、ちょっと腰も痛くなるかなという感じだったので、昼過ぎに撤収。

3匹目 

 ほぼ天国に、今自分がいる、という実感がある。

 

 6日もあれば、なんか魚の状態がいい「釣れる日」がそのうちやってくるだろうとは思っていたが、こちらの腰やら疲労やらの具合をいい状態に持っていって、その日にマッチさせることが今回難しかった。でも、思い切って1日休みをいれたのが、ばっちり作戦としてハマってくれて、そのあたりは実力という以上に幸運だったと感じざるを得ない。

 腰の塩梅見てあすはもう一度GTやるか、それともデカいボーン釣ってないのでボーンを真面目にやるか。どちらでも良きにはからえな感じの余裕の釣り人である。最高や!

活躍したタックル達

 毎日、釣りから帰ってくると、タックルの水洗いをすませ、シャワーを浴びつつ足で踏んで衣類の洗濯をするのだけど、今日のシャワールームは抱いたときのロウニンアジの粘液で魚臭かった。最高にいい匂いだと思う。ムフフ。

 

(釣り6日目)

 最終日は腰も完全復活とはいかないので、さくっとボーンを釣って終わろうかという予定にしてフライタックルだけ持って出撃。

  最初入ったフラットは、サイズはそれほどでもないけれど数は多くて、10時くらいまでやって15ゲット。

 キャッチ1匹目

ニゴイのような顔

 雲がかかると見づらいが、お日様でてるときはかなり魚が見えるようになった。デカいのはたまにいるが食い気がない感じ。デッカいトビエイ系がフラットを横切っていったり、小さめサメが泳いでいたり。狙えるタックルではなかったのでジャストルッキング。

フラット

何匹目か忘れた平均サイズクレイジーチャーリー

  いったん休憩で潮待ちでまたバードアイランド上陸。この辺でも釣れると言われて浅瀬に乗り上げてるボートからキャストしたらボーン釣れた。ボーンは本当にたくさんいる。

鳥鳥鳥 

 

 1時頃、潮が引いたら入れる大型ボーンのポイントということで、ロンドンの港の沖ぐらいの結構珊瑚があるフラットへ。

 腰ぐらいの深さがあって、ガイドは魚見えてるようだがこっちは全く見えない。曇るとガイドも見えずにブラインドで投げる。たまに追いがあって近距離までくると見えるが確かにデカい。60はありそう。

 しかし、結構粘ったがトリガーフィッシュ追加のみ。

トリガーフィッシュ

 トリガー釣れてくると言うことは珊瑚が多いということで、もう1種ムラサメモンガラもゲット。ガイドが「フムフム」という名だと教えてくれた。確かハワイでもそんな名前で呼ばれてたなと帰国後調べると、ハワイでは「フムフムヌクヌクアプアア」と呼ばれ州の魚になっているようだ。なんとなく南の島っぽい楽しい呼び名だ。見た目もユーモラスかつ前衛芸術のような美しさ。

 フムフム

 次のポイントもカンモンハタが釣れたけどボーン不発で、宿の沖ぐらいまで戻ってきて最後の一勝負。ここも珊瑚が結構あって、やっとかけた1発目は根ずれで切られた。砂のフラットと珊瑚混じりのフラットではぜんぜん難易度が違う。

 黒いのがサンゴ

 しかしその後1ゲット。50ぐらいはあるか。珊瑚につっこまれるといやなので、けっこうドラグしめたがそれでもバッキングまで出て寄せてからも何度もつっこまれて楽しめた。

 良型

 その後珊瑚のエリアにブラインドで投げてたらフエダイ系連発。尾丙が黒いんだけど種名がわからん。ちょっと粘って移動。

 フエダイ系

 船に向かいつつ見つけると釣っていく。そこそこサイズ2匹追加後、2匹でやってきたうちのデカい方が食ってくれて、これぞジェットランという感じの突っ走り方をしてくれた。バッキングまで出されてやったりとったりを楽しんで、サイズもたぶん今回最大だと思うので、これにて終了。3時過ぎぐらいにあがる。

ガイドのミスター・イングリシュと最後の1匹

 やっぱりクリスマス島にきたらボーンもつっとかなきゃね!という感じである。やや腰も肩も痛いけど後は帰るだけだ。

 

 いい釣りしたという気がする。

 

 クリスマス島はやっぱり釣り人の天国だと思う。

 

 

(移動日、帰国)

 翌日早朝から移動。帰る日になって風が止みやがったが、まあ釣れたので良し。

 旅も終わりに近づいているが、クリスマス島やっぱり遠い。遠いところまできたもんだと思わされる。クリスマス島からハワイまでは日付変更線またいで1日戻ったりするけど3時間ちょいなのは良いとして、そこから8時間のハワイ〜羽田便が長い上に乗り継ぎよくなくて空港で6時間ぐらい待つことになる。名古屋便のAさんはもうちょっとましなようだったが、さすがにホノルル空港ついたのが6時間前とかで搭乗手続きも始まってなくて、ダメもとでJALの人に聞いてみたら、今手続き中の便の人たちが片ついたら手続きしてあげるとのご配慮いただいた。

 デカい荷物抱えていると飯もトイレもままならんので助かった。ありがとうJALの人。

 デカい荷物預けて空港内入ってしまえば、座るところも飲み食いするところもあるので、いかようにも時間は過ごせる。フライトは日が暮れる夕方18:40発。

 ホノルル空港に日が暮れる

 

 空港での待ち時間に、帰りの機中で、顛末記書いたり気づきの点を書き留めたり。

 

(そなえよつねに)

 今回、釣りは苦戦したし、腰やら体調管理は上手くいってなかったけど、物質面での準備はかなり上手くいったとおもう。釣り関係も不足無く準備できてたと思うけど、遠くに旅するときに重要な、暇つぶしグッズの充実ぶりはなかなかのものだった。

 宿ではたまたま日本人の釣り人がいて、釣り人同士楽しい釣り話には事欠かなかったのも重要だったけど、キンドルとポメラがいい仕事してくれた。どちらも電源1回交換のみで乗り切った。

 キンドルには、マンガ20冊弱と開高健、中島敦、高野秀行あたりをぶち込みまくってあって、特に開高先生ものの古くて再販かからなかった文庫で手に入らないようなものとかが、電子書籍では紙の本を刷らなくていいので結構出てて、そういうのも買いまくったし、「私の釣魚大全」とかも読み直しだけどやっぱり今読んでも面白いし、開高節としか言いようのない文体が、どうにもこうにもやっぱり好ましい。

 

 「電子書籍」のキンドル以上に活躍したのが今回初導入の「電子メモ」のポメラで、暇があるとパチパチ打っていて、この文も帰りの飛行機の中で打っていたりする。空港での待機時間もかなりポメラでつぶせた。

 「無人島に持っていく本」問題で、中島らも先生が「なにも書いていない原稿用紙の束」というような回答をしていたが、なるほどと得心した。

 書くのもいい暇つぶしになるのだが、書いた奴を読み返すのがこれまた、魚が釣れたこともあって、いい塩梅の娯楽になるのである。

 入っている日本語変換ソフトの「ATOK」がやや古いバージョンなのか若干「癖」があるが、だいたい慣れてストレス無い程度には打てるようになった。

 

 道具では、なんといってもスピンフィッシャーの故障しそうなパーツの予備を持って行ったのがドンピシャで役立った。逆転防止周りの故障がパーツ交換で復活。復活後に大仕事をしてくれた7500SSは30キロ超えるロウニンアジとのファイトでも何の問題も感じなかった。

 用意したパーツは、逆転防止機構周りのほかにベールアームを起こすバネ。フィジーでラインローラーのネジがゆるんで落っことしたことがあるので、ネジに後ではずせるタイプのゆるみ防止用接着剤をつけて固めるとともに、ラインローラー含めベールアーム1式予備を用意していた。

 ついでに、ポンピングせずにゴリ巻きすると壊れるんだと思うので、基本ポンピングで竿で稼いだ分しか巻きとらない私は壊さないパーツだと思うハンドルも念のため予備を用意していた。

 ちなみにスペアスプールは2台に対して6個用意。船上でノット作りなおしてる暇なんて無いので、弾数用意してます。

 

 行く前に悩んだ「靴」については、結局ボーンフッシュと「リレー」で釣る場合にはサンゴの砕けた砂でできた「フラット」の上を歩くためのダイビングシューズをボート上でも履いていて、ボートシューズは最初のころしか出番無かった。

 アディダスのボートシューズは特に問題なく船での釣りのみならこれでとりあえずよさそう。

 ニューバランスの水遊び用シューズは、かかとを踏んで履けるのでスリッパ代わりにもなり、宿でも飛行機の中でも重宝した。たぶんこいつも船上でも使えそう。

 

 昨年のフロリダから紫外線対策として導入の「フエイスガード」だけど、慣れると息苦しくも暑苦しくもなく快適。見た目砂漠の民みたいになるけど、砂漠の民も強い日差しから肌を守るためにやっているのだと思うと、似たような見た目になるのは当然か。日焼け止めはもちろん塗っているんだけど、汗で流れたりするのでまめに塗り直す必要があるけど、フェイスガード使うと朝塗れば塗り直さなくて済んだ。ただ、フェイスガードと帽子の隙間になる目の横だけきっちり焼けた。

 紫外線対策にこだわるのは、40過ぎのおっさんなので、当然「美白」とかは関係なく、日焼けって要するに火傷の一種なので、日焼けすると体力著しく消耗してしまうので必死になって対策しているのである。

 ガイドとかもみんなフェイスガード使っていて、流行というのもあるんだと思うけど、それ以上にすぐれモノなんだと思う。

 日本手ぬぐいを同じように使う方が、顔面への布の密着度は低いのでフェイスガードに抵抗ある人は試してみてはいかがでしょうか。オシャレではないかもしれないですが実用的ではあります。

 基本、写真撮るときははずしているけど、今回わざと着用したままの写真も撮っています。こんな感じという事例として参考まで。

手ぬぐい2匹目砂漠の民のように

 

 

(今回釣ったロウニンアジについて)

 帰りの機中、暇なこともあり、心にうつりゆくよしなしことを、ポメラに向かいて書いてみる。

 

 ロウニンアジの20キロオーバーについては、自分の中のどうしても釣らなければならないターゲットとして、もう15年以上も(確認したら18年だった!)しつこく狙っていた魚であり、狙っていたよりさらにサイズも良かったし、とても自分にとっては重要な1匹だったと思う。

 まだ、釣った直後でもありどのぐらいの価値があったのかはかりかねている部分はあるけど、行く前のブログで書いた「死ぬ前にみる走馬燈」に現れてくれるのは確実だと思う。特に写真には残っていないけど、出た瞬間の水しぶきと銀色の大きな魚影。

 

 結局、自分にとって釣りたい魚はいろいろたくさんいるけど、絶対釣らなければならなかった魚は、カヤックで釣った1匹めの80のスズキと今回の30キロオーバーのロウニンアジの2匹だという気がする。

 スズキは日本各地で釣れる人気の釣りモノだし、ロウニンアジも太平洋、インド洋各地で釣れる人気の釣りモノである。

 だからこそ、ある程度釣り人の技量をはかる指標になると思うし、それを釣らずして先には進めないと思っていた。

 ロウニンアジの20キロオーバーも釣れない人間が、たとえばデカいサメを釣ってきたところで、「サメなんて」と言われるのは目に見えている。ある程度指標になるロウニンアジのそれなりサイズを釣った人間が「GT以上に難しかったッス、面白かったッス」と言えばそこそこ信憑性も出るだろうと思う。まあ、わかる人はそんなことは気にせず面白さとかを理解してくれるだろうし、わからんやつにはなに言っても分かんねえんだろうなとは思うので、まあ、いつもの自己満足の世界である。

 だいたい、近頃じゃGTなら30キロでもあんまり大きいという評価はされないような状況である。30キロでも20キロでも一緒だけど、実際にはなかなか釣れないサイズだと思うのだけど、これもまたわかる人は分かってて、わからんやつにはわからん世界かしら。

 まあ、評価はひとそれぞれで、30キロがデカいのかそうでもないのかについてはおまかせするにしても、自分としては、とても満足のいく一匹で、釣れて正直ホッとしている。旅の前半の絶望感といったらちょっとしんどいモノがありました。ヤレヤレだぜ。

 明日死んでも、とりあえず必須の宿題はもう終わっているので安らかに死ねる気がする。

 

 てなことを、機中で書いていたら、日本語じゃなくて英語で日本人の客室乗務員のお姉さんが話しかけてくるのだけど、オレってどっからみても日本人だと思うんだけど??いい意味にとるべきなのかどうとるべきか?

 

(PENNスピンフィッシャーについて)

 話を戻して、客観的な事実として、PENNスピンフィッシャー7500SSが、塩水で使うのに全く問題ない性能を有していて、修理のしやすさや替えスプールの安さとかを考えても、とても「実用的」なリールだということは、再度念押ししておきたい。30キロのロウニンアジとファイトしてなにも問題なかった。残念ながら同じリールは廃盤だけど、スピンフィッシャーはまだ日本で手に入るSSMシリーズも割と使えるリールだと思うし、「V」もSSMと似たような性能でルックスが今時っぽくなっているだけのように見受ける。PENNだと「バトル」も実用的なリールだという評判を目にするし、PENNに限らず各社フラッグシップモデルじゃない実用機って出してると思う。

 もっとドラグテンションあげられるとか、もっとハンドル丈夫にとかが必要なパワフルな釣り人はいるんだろうけど、まあ普通の釣り人はPENNスピンフィッシャーとかのドラグ性能以上にドラグ値上げられないし、ポンピングなしでハンドルごり巻きで勝負なんてのもできない。

 そうすると10万円近くする高級リールの性能は少なくともキャスティングのGTの釣りでは多くの場合不用であると思う。別に性能高くて困ることはないので好きな人は使えばいいと思うけど、私がおすすめするのはくそ高いリールを買う余裕があるなら、リール本体のグレード下げてでもスペアスプールに投資した方がタックル的には実用的だし、もっというなら遠征費用、船代に金使った方が釣果に直結する。

 てなことも、一匹それなりにいいサイズを釣って、PENNスピンフィッシャーの性能を証明した後なので、偉そうに書いておきたい。

 どうにもスピンフィッシャーが好きだという気持ちは、ますます強くなっている。一生スピンフィッシャー使い続けることになりそうである。

 

 

(10月1日帰宅)

 帰国して、荷物待つ間に同居人にメール、ケン一に電話。

 アメリカ様が帰りもやってくれてやがった。蓋の他にロッドケースの長さ調節の部分を外して開けてやがって、かつ蓋だけ閉めて長さ調節の留め金締めてなくて、荷物がレーンに出てきたときにロッドケースがレーンの縁に当たって「ガション!」という感じで縮んでいるの見てゾッとした。

 あわくって中身確認したら折れてなくってよかったものの、どうすればアメリカ様に意地悪されずにすむのか対策が立てようがない。

 帰り道のタクシーで御嶽山が噴火して大惨事になってると知って驚いた。大地の怒りの前に人間はまたも無力であると知る。ご冥福をお祈りするとしかいいようがない。

 帰宅してとりあえずブログに「勝利」の報告。何本かメール。

 夜中帰宅で、次の日午後から出勤で実に慌ただしい感じで「釣り天国」から日常に戻っている。

 

 

(バカがみる南十字星)

 前回、クリスマス島釣行時にやっとコマシな釣果がでて余裕ができて夕闇の空を見上げたら大きく南十字星が見えて感動した的な事を書いた。恥ずかしげもなくガラにもなくロマンチックに書いた。

 

 だがしかし、このネタには後日譚があって、釣果は最大魚がねらいのロウニンアジではなくキハダとはいえ割と見栄えがする魚で、帰国後、気分良く釣果報告などしていて、「落ち込んで下向いてたら見えなっかった南十字星が、釣って上向いたらドーンと見えてましたよ。釣り人なんて現金なもんですね。」とか話してたら。

 とある先輩が、「クリスマスぐらいの低緯度で低い位置じゃなく見上げる角度に、しかもはっきりどーんと見えたってことは、ナマジ君それたぶん南十字星じゃなくて、いわゆる「バカがみる南十字星」だよ。南十字星は天空の真南にあって動かないのが航海の目印として重宝されているけど、見た目は地味だよ。」と衝撃の事実を教えてくれた。

 ショックではあったが「愚者の南十字星」これほど私に似つかわしい星座もないような気もしている。

 本当は何座かも調べておきたい気もしたが、俺の南十字星はコレだと思っておけばいいやと投げやりになっている。

 

 私は、効率的にまっすぐ目的地に向かおうとは、あんまり思っていない。釣りでも人生でもである(仕事では思った方が良いのかもしれないが)。

 まっすぐ効率的に目的に向かわなかったから、今までの釣人生で寄り道や「間違った方法」でたくさんの思い出深い釣りを経験してきた。

 南に行こうと愚者の南十字星を目指して航海したら、きっとあちこちジグザグと迷ってばかりになると思うが、素早く目的地にたどり着けない代わりにいろんな出会いや発見が待っているだろう。

 時に迷うかもしれないが、「人生なんてどうせ死ぬまでの暇つぶし」と田渕義雄が「フライフィッシング教書」で書いていたと思うが、歴史に名を残す偉人にもならなければ、犯罪史上に名を残す極悪人にもならないだろう私の人生など、まさにどうせ暇つぶしでしかない。

 だったら、急いで目的地なんてたどり着く必要性はない。

 愚者の南十字星を見上げながら、あっちヨロヨロこっちヨロヨロと面白いことを見つけながら、死ぬまで暇つぶして行けばいいさと、そう思うんである。

 すくなくともこれまでそうしてきて面白かった。

 そして今回、18年もかかって目的地であるロウニンアジ20キロオーバーにたどり着いた。サクサク釣れていたら得られなかったであろう、深い満足を味わっているところである。

 

 旅の終わりはいつも寂しいが、今回それよりも幸福感と「早く帰ってみんなに自慢したい!」という気持ちが大きかった。

 いい旅だった。いい釣りだった。

 

 これからも愚者の南十字星を目指して、あさっての方向におもいっきり突っ込んでいきたい。

 

 では、またどこかの水辺で。

 シロアジサシ

−FIN−

 

 

 

(おまけ)

 

○これまでの対ロウニンアジ戦績と私

 

@1996年 パラオ

 初の海外遠征。現在の職場のボスであるH氏と2人で。

 結構でるけどまだラインシステムとか詰め切れてなくてあわせ切れ結構あり。結局10キロ無いぐらいの小型だけどロウニンアジ1ゲット。同サイズのカスミアジもゲット。

 

A1997年 パラオ再訪

 前回不発のH氏リベンジマッチに燃える。リベンジ成功し、150くらいのサメもゲットしてた。サメ、オレも釣りてー!とこのころから思っていた。私も13キロほか順調にゲット。目の前で食ったでかいのには切られている。このときはジャングルの川にボートで遡ってテッポウウオとか爆釣。楽しい遠征だった。漢同士で南の島って、レストランとかでは仲良くコウモリとか食ってたりもして、たぶんどうみてもホモカップルにしか見えんかったと思う。

 

B1997年 石垣島

 鮎迷人と漢同士。フィッシャーマンの鈴木文雄氏が当時はガイドしていて、割と小さなフラットボートタイプの船で石西礁湖とかを攻めた。2日で2人とも4、5バイトあって、私は11キロキャッチ。後にも先にも国内で釣ったロウニンアジ(メッキ除く)はこいつだけ。鮎迷人は昼休みに釣ったオジサンだけで、オジサン時価20万円は彼のもちネタとなった。

 

C1999年 パラオ

 同居人と2人旅。当時はまだ同居してなかった。天候悪くインリーフしか攻められずスカ食った。それでも同居人はバラフエダイ2尾ゲットし勝負強さの片鱗を見せる。小物釣りはニッコーホテルの裏の桟橋でメッキ爆釣。

 

D2000年 オーストラリア グレートバリアリーフ

 同居人と2人旅。2000年の正月をグレートバリアリーフで迎えた。初日から爆発。同居人ダブルヒットを含む6ゲット、私も6ゲットで良型ヨコシマサワラもゲット。翌日から船中泊で1泊トリップ。自己記録の18キロほか初日ほどではないが順調にゲット。同居人最後のポイントで20キロオーバーに食わせるが、掛かりどころ悪かったのか最初のダッシュでばれた。18キロはガイドは20キロ以上と言ってたのにわざわざ計って18キロだったので、この後20キロを求めての旅が延々と続いたのである。計量しない船では、だいたいガイドは1割り増しで言ってくれるのが相場。

 

E2000年慶良間諸島

 沖縄本島の有名船宿「寄宮」で船仕立てて、ケン一、Y、Oニーさん、同居人、正治さん、ビワコオオナマズ釣らしてくれたSさん、鮎名人でパヤオ1日、カンパチandGT1日とかで遠征。釣果はカンパチは釣れてたけど(オレを除くみんな)GTは船中上がらず。

 

F2001年慶良間諸島

 前年とだいたい同じメンツで、1日目のパヤオはそれなり。2日目はGTメインに狙うも船中スカ。

 

G2001年インドネシア

 同居人と休みの日程調整が手間取って、当初予定していたポナぺの便がとれず、当時大型GTが釣れて話題となっていたバリ島への釣行となった。しかし、ガイドが最近日本人が来るから始めたという感じのクソガイドで実績ポイント回るだけで釣れそうにないので、あの岬に行けとか指示して10キロクラスゲット。しかしその後もこちらのリクエストにはこたえないし、自分が船の先頭でルアー投げやがるしで、3日予定の3日目をキャンセルした。ゴムボート川下りなどという観光を初めて経験した。まあクソガイドの船に乗ってるよりはゴムボート乗ってる方が面白かった。

 

H2002年トカラ列島

 有名な「マリンチャレンジャー号」乗り合いで正治さんと参加。ジギングと半々。ロウニンアジは船中ヒットなし。ジギングはでかいのみんなかけるが獲れない。私もイソンボにケブラー切られた。ユカタハタのみ。

 

I2007年慶良間諸島 ショア

 離島旅の際の同居人情報でケラマの某島の港で地元民がアオリイカ餌ででかいの釣ってるということで、狙ったが当然そんな甘くはなくスカ。カヤックでリーフの小物釣りは爆釣でおもしろかった。

 

J2009年沖縄本島 ショア

 本島のいくつか目星をつけた河口で夜トライ。これまた甘くはなかった。小物釣りはちょっと前に旅行がてら単独で探り入れてた同居人の案内もあってレディーフィッシュとか好釣。

 

K2011年クリスマス島 1回目

 最大17キロまで。1日8ゲットは最高記録。最後ドカンと逆転20キロオーバーはキハダでした。

 

L2012年フィジー カンダブ島

 普段は1日に50発ぐらいバイトがあるという場所で、スカ食ってしまう。しかしこの時習得したダイビングペンシルの使い方が、次の釣りに生きるのであった。

 

M今回 クリスマス島再訪

 念願の20キロオーバーっていうか30キロオーバーを渋くゲット。やっと目標にたどり着きました。苦節18年。年1回いけるかどうかの遠征の釣りがそんなにすぐに上達するわきゃないが、それにしても長い旅路だった。

 こうして振り返ってみると、いかに釣っていないかが白日の下にさらされる。私、ロウニンアジ釣りの才能もないし向いてもいない。でも好き。

 

 

○今回のタックルデータ

 

ロウニンアジ用

 ロッド:フィッシャーマン社ジャイアント86T(リペア)、同社イエローテール7

 リール:7500SS、750SS

 メインライン:アバニTUNA6号85lbとスパイダーワイヤーステルスブレイド80lb

 リーダー:バリバスナイロンリーダー100lb2ひろと200lb1ひろ、メインとの接続は「電車FGノット」、ルアーとの接続は打ち抜きリング+スプリットリング

 ルアー:クラフトベイト社ダートベイト、GT2

      フィッシャーマン社:Sポップ、ロングペン

      デュエル社:サーフェスブル、ブルポッパー

  (ダイビングペンシルはリアルベイトだと思って最初そう書いていたけど、釣れたので1票入れるつもりで買いにいったら同社のダートベイトというルアーだった。謹んで訂正。)

 

ボーンフィッシュ用

 ロッド:カベラス社LST9f9#

 リール:サイエンティフィックアングラー社システム2

 フライ:クレイジーチャーリー(オレンジ多用)

 もう1セット、8番もサブで携行

 

小物のべ竿

 白滝2.4m

 

 

 

 2014年 後半   

 PENNスピンフィッシャー7500ssの逆転防止機構周り修理 ←なぜSSメタルボディーにはクリックモードがあるのか

  恵まれていない者、汝は幸福である ←過去に書いたネタ

 死ぬまでに釣りたい魚とつり場 ←1つ片付きました

 

 HP 

(2014.10)