「南海の孤島に釣り人の楽園を見た!」

 ーナマジ探検隊シリーズ(嘘)クリスマス島釣行記ー

クリスマス島 

  クリスマス島という釣り場に興味を持った最初のきっかけは、たぶんテツ西山氏がアングリング誌上で紹介していた文章だったと思う。

 「釣りに絶対とか100%とかいうことはあり得ない、しかしそれに近いところはある。キリバス共和国クリスマス島だ。と欧米のアングラーはいっている。」とのことであった。

 その後もクリスマス島については度々、雑誌やビデオ映像などで紹介されているのを見る機会があり、とにかくボーンフィッシュの魚影が濃いことと、ロウニンアジについてもいつまでたっても場荒れしたという話を聞かない魅惑の釣り場として、とても気になる存在であった。

 ロウニンアジについては、成長に時間のかかる大型の捕食魚でかつ根魚にも近いような定着性のある魚なので、釣りによる影響を受けやすく、最初爆発的に釣れた釣り場も、紹介されて釣り人が殺到するにつれ釣れなくなっていくパターンが多い。モルジブなどは紹介されはじめた当時は釣り堀のマスのように釣れたと聞いたが、ネット上で桟橋にキープした魚を並べているような写真が見られるようになり、これはだめだろうなと思っていたら、案の定、すぐにアクセスしやすい場所では釣れなくなり、船中泊で遠征しないと釣りにならなくなったと聞く。にもかかわらず、クリスマス島のロウニンアジは、有名な1984年の丸橋英三氏による世界記録(35.4kg、なんと!16ポンドクラスライン)のように、かなり昔から知られているにもかかわらず、今でもネット上では「フライマンが、せっかくの機会なのでとルアータックルを借りて初めてポッパーを投げたら25キロが釣れた。」とか、「初心者が最初の1匹に50キロクラスを釣ってしまい、その後は体が痛くて釣りにならなかった。」、「ショアからでも一日何匹も釣れた。」というような、ちょっと次元の違う釣果情報がゴロゴロしている。

 もちろん、釣れなかった人間は何も書かないことが多いので、ネットで見るようなウハウハ情報が行けば約束されているわけではないのは重々承知しているが、それにしても楽園といって問題ないような釣り場でありつづけていることは疑いようはない。なぜクリスマス島だけが、釣り場としての荒廃を免れているのか不思議でならない。

 おそらく、いろんな要因があるのだとは思うが、一つには、交通アクセスが非常に悪く週1便のホノルルかフィジーからの飛行機を利用するしか無く、最短でも9日は休みが必要という事情により、訪れる釣り人の数が釣り場の許容量に対して少ないことと、もう一つ、フライフィッシングでのボーンフィッシュの人気が高く、ロウニンアジについては贅沢なことに2番人気のターゲットとなっていることも大きな要因だろうと思う。

 もちろん、ロウニンアジについて釣り人を呼べる外貨を稼いでくれる魚として、リリースが徹底されていることも重要な要素だと思う。

 

 ともかく、そういう楽園があるという話は、15年くらい前にロウニンアジ狙いの釣りを始めたときから気になっていて、2008年にこれも長年の夢であったカザフスタン釣行を果たした後は、第一希望の行きたい釣り場となっていた。

 しかしここ数年の当方は、よる年波に加え健康状態がいまいち安定せず、南の島で力一杯竿を振り回すような釣りは避けてきており、ロウニンアジ狙いについても独自の薄ーくて確率の低い情報を頼った、沖縄方面での陸っぱりの夜釣りぐらいしかやっておらず、南の島への本格的な遠征は、思えば2002年のトカラ列島遠征以来10年近くも行っていない。はっきりいって現役のGT野郎として通用するような釣りができるのかは大いに不安であった。

 不安ではあったけれど、今年の正月の目標には「クリスマス島で20キロアップのGTとボーンを釣る」ことをあげて、シコシコと道具を準備したり、腹筋背筋、ダンベルを使ったスクワット等の筋トレに励んだりして、最終的には「やめておけ」と主張する常識的な自分を無理くり押さえつけて、9月の連休に絡めて出撃した。

 

 遠征から帰ってきて思うのは、「行って良かった」という一言に尽きる。

 結果を先に書いてしまえば、目標の20キロUPのロウニンアジは釣れなかった。釣っている最中も体力の衰えを感じざるを得ず、若いときのようには体は動いてくれなかった。それでも、たくさんの魚を釣り、体力が無いなら無いなりのペース配分を考え、今できるベストとまでは行かないまでも、十分自分が納得できる釣りを展開することができた。

 遠征中に不惑の誕生日を迎えたが、40代のオッサンになっても、体力ガタガタでも、意外と自分は釣りをがんばって面白がることができるらしいと感じた。上出来である。嬉しいかぎりである。

 

 前置きはこれくらいにしておいて、そろそろ旅について語っていくこととしたい。

 

<出発、そしてハワイで一泊>

 敬老の日の9月19日の夕方、山用の古いザックとバズーカに詰め込み準備済みのGTタックル2セット、フライタックル2セット、小物タックル1セット他諸々を担いで、タクシー呼んで、予約した成田エクスプレスに乗り込むために武蔵小杉駅へ。

 成田空港に着くと比較的すいており、チェックインもほとんど待たずに終了。替えスプールとフックを外したルアー幾つかと着替え類を小さいリュックに入れ持ち込み荷物にし、預ける荷物は重量制限の23キロ以内に抑える。パスポートやチケット、予定表、本、機内グッズは釣りの時には肩掛けバックにして使うウエストポーチに入れていつでも簡単に取り出せるようにしておく。

 午後10時の便でまずは経由地のハワイオアフ島ホノルル空港へ飛ぶ。8時間ほどで現地に着くと、時差の関係で同日の午前10時過ぎになるので、時差ボケ対策には機中で寝ておくに限る。ということで機内食を食べたら、トイレに行って歯を磨いて睡眠導入剤をカッ食らって爆睡体制に。安眠グッズも準備万端だ。空気枕と耳栓、そして意外と重要なのがマスク。飛行機の中は空調が効いていて乾燥しがちなので鼻やのどが痛くなりがち。旅行会社勤務で添乗仕事も多いケン一に教えてもらった機中快適グッズだ。

機中快適グッズ(機中快適グッズたち)

 予定通り、ぐっすり眠って起きたら後1時間ほどで到着とのこと、持ってきた本も数が限られているので節約することにして、ビデオでパイレーツオブカリビアンの最新作を見る。もちろん途中で着陸になるのだが、帰りも同じJALを利用するので続きは帰りのお楽しみだ。

 

 この日はホノルル泊である。次の日の朝早い便でも予定通りのフライトだと間に合うのだが、もしホノルル着が遅れると週に一便しかクリスマス島行きの便がないのでいかんともしがたく、余裕を持って前日経由地入りとしている。

 ホノルル空港でアメリカへの入国手続きを受けるのだが、なんか、左手をスキャナーに乗せて指紋かなにかとられて顔写真もとられと生体情報とられた。めんどくさくなっている。預けた荷物をうけとり、とりあえずホノルルの端の方にあるホテルにチェックインするためタクシーをつかまえる。

 トカゲクン(タクシー乗り場付近の花壇にいたかわいいトカゲ。のどの綺麗な皮膜を広げたり閉じたりしていたが、残念ながら写真撮ろうとしたら引っ込めた。)

 タクシーの運ちゃんは、日系の人で日本語ペラペラだった。荷物を見てどこ行くのか聞かれたので、クリスマス島に行くので今日はトランジットでホノルル1泊という話をしたら「明日の朝迎えにこようか」という話になって、お願いすることにした。ホテルでフロントに「明日の朝10時に空港に行きたいんだけど、タクシー呼んでちょうだい。」と頼むつもりだったのだが、当方の英語は船上以外では用を足さないことが多いことを経験済みなので結構ありがたかった。何となくさい先良く「ついて」いるような気がする。

 ホテルに着くと12時頃で、チェックインして部屋に荷物を置いて昼ご飯にすることに。ホテルは結構高級な感じで、レストランはドレスコードがありそうな感じである。まあホノルルなのでいくらでも外に食べるところはあるだろうと出かける。

 今回ホノルルでは釣りはしない予定だ。ホテル近くの運河ではバラクーダの子供などが釣れるようだが、ここで変に釣り運を使いたくないし、「釣欲」を飢えた状態にキープしてクリスマス島に突入したいのでパスした。

 そうすると、今日の午後いっぱい暇である。何をしようか?ショッピングも海水浴にもあまり興味のない身としては、時間をもてあまし気味だが、事前に近くに水族館があることをチェックしてあったので、そちらにぶらぶらと歩いて行きつつ昼飯も済ませることとした。

 しかし、運河も気にはなるのでのぞきに行く。

 あまり美しくはない運河だが、日本にいるのとはちょっと違う丸っこい顔をした小さめのテラピアが沢山泳いでいる。ボラもいる。しばらく眺めながら町の外れにある水族館方面に移動していくが、レストランらしきものはない。仕方なくぶらぶら歩いて行く。

 ホノルルは首に飾るレイに象徴されるように、花の多い町だ、ホテルの前にはちょっとした花壇があり、熱帯の色とりどりの花が咲いている。花壇や生け垣には結構鳥が出入りしていて、花と鳥を撮影しながらの散歩を楽しむ。天気は良く風がさわやかで散歩日和ではある。

 雀似生け垣の中木を見上げる 空アマサギ?小型の鳩?鳩系と赤頭キジバト系黄色頭花ハイビスカス木の上の鳥椋鳥系?ヒワ系ネムノキに似ている白い花2白い花赤い花花白い花3(ホノルルの花と鳥と)

 運河から離れて海岸沿いに出るとABCマートというコンビニのような店があり、サンドイッチなどが売っていたので、オアフサンドというのと椰子の実100%ジュースを買った。ホテホテと歩いて海岸沿いのあずまやで昼食。あずまやのベンチでは中良さそうな老夫婦、本を読む女性、くたびれたオッサン、海岸には海水浴客やサーファー、沖には外洋カヌーらしき船が見える。

オアフの昼飯(ホノルルの昼飯)

ビーチ老夫婦外洋カヌー(海辺の風景)

 飯を食って、海岸沿いの、南洋の針葉樹であるモクマオウの並木道を通って水族館へ。

ホノルル水族館

 水族館、規模は小規模だが、なかなかに面白かった。水槽の上面から太陽光を取り込んで、サンゴやシャコ貝を飼育していた。シャコ貝は飼育されているモノでは最大級とかでなかなかの迫力だ。

サンゴ、シャコ貝(サンゴ、シャコ貝)

イソギンチャクとクマノミ (イソギンチャクとクマノミ)

 珊瑚礁を作る造礁サンゴもシャコ貝も、プランクトンを食べる捕食者であると同時に、体に共生させている褐虫藻という植物が光合成で作り出した生産物を利用して生きている。最近の説では造礁サンゴは捕食者としてよりも生産者としての役割の方が大きいとされている。珊瑚礁生態系の不思議に思いをはせておくのは、そこに住む魚を釣りに行くうえで直接的には役に立たないとは思うけど、その思考は心の底に沈んで釣りの楽しみに深くから染み出す喜びを加えてくれるのではないかと思う。釣りの対象のことを、その棲む環境も含めて知れば知るほど、釣りの楽しみは増すと当方は信じる。

 期待していたロウニンアジも、タマカイやサメ類とともに泳ぎ回っていた。15キロ前後だろうか。こいつより2まわりぐらい大きいのを釣らねばならぬのかと思うとちょっと興奮してくる。まっとれよ俺の20キロUP!

GT(ロウニンアジ、奥にタマカイ)

 ハワイの漁業文化の紹介コーナーも興味深かった。よくお土産にもなっている骨製や貝殻製の釣り針の他にも、木製で針先だけ動物の骨を使った巨大なサメ用フックがあったりして、鉄文化以前の時代の釣り人とサメとのファイトはどのようなモノであったのか等想像するだに心躍るモノがあった。旅行中、秋道智弥著「ハワイ・南太平洋の謎」というハワイと南太平洋の島々の文化を紹介する本を読んだのだが、それによると、これらの島々では、人の骨で釣り針を作るという習慣があったようで、戦闘などで打ち倒した強い敵の骨から作った釣り針には特別な力が宿ると考えられていたようだ。釣り具に懲りまくり、「特別な力」を持った釣り具を求める釣り人の心は過去も現代も変わらないんだなと思った。

サメ用フック(サメ用フック)

フック(フック2種)

たこ漁具(タカラガイ製タコ釣り具)

カイザーナックル(タイガーシャークの歯製の拳に装着して使用する戦闘用ナックル)

 室内の展示を見終え、外に出ると、タッチプールや現地で重要な養殖対象種であるミルクフィッシュ、なぜか常夏のハワイに生息するアザラシであるハワイアンモンクシール等がいた。

 ミルクフィッシュは、台湾でもサバヒーと呼ばれ養殖されているが、先ほどの書籍によると、驚くことにハワイではキャプテンクックがハワイを訪れた時には既にたくさんの養殖池が作られていて、かなり古い時代から養殖され親しまれていたようだ。

 クリスマス島では、ボーンフィッシュと非常に見分けがつきにくく何度も「だまされる」ことになるのだが、この時点では知るよしもないのである。

ミルクフィッシュ(ミルクフィッシュ)

ハワイモンクアザラシ(ハワイアンモンクシール)

 水族館を後にして、海辺の公園でたこ足の木の下に寝っ転がって本読んだり、よってきた鳥の写真を撮ったりして時間をつぶし、ホテルにいったん戻り、テレビでプロレスなど観戦してさらに暇をつぶし、夕方、食事をしに再度外出。

たこ足の木(たこ足の木)

鳥たち(鳥たち)

 水族館と反対のホノルル中心部方面を目指す。せっかくなのでハワイらしいものが食べたい。ハンバーグがご飯にのっかったロコモコとかその辺のチープなモノが良いなと思いながらテクテク歩いて行く。コリアン系のワンプレートにおかずとご飯がのっかったものを売っている店がよさげだったが、結構混んでいるので一応覚えておいて、さらに歩く。スーパーマーケットのフードコートのステーキ丼屋が、地元民が食ってそうでよさげなので、とりあえずここで食うことにして、ハワイのスーパーを見学。魚コーナーには世界中に浸透しているノルウェーサーモンの他に、テラピアやサワラといったいかにもハワイっぽい魚種もちらほら。

 オオッ!なんと「ポキ」が売っている。ポキとはハワイの伝統料理でキハダのブロック状の刺身に塩味つけて、海藻やごま油とともにあえたモノである。

 昔、ハワイ島コナにカンパチ釣りに行ったときに、魚屋さんで見つけてタロイモを蒸してすりつぶしたポイとともに買って食べたのが懐かしく思い出される。

 これは食わずにいられない。ご飯も売っていたので、買ってABCマートで割り箸と明日の朝飯の甘そうな菓子パンを買ってホテルで夕食。ご飯が多く腹一杯になった。

ポキとライス(ポキandライス)

 出発前の数日間は、釣行前の興奮と不安、緊張が入り交じった状態でかなりテンパッていて、競走馬でいうところの「入れ込みすぎ」というような状態だったが、半日ポッカリ何もすることのない時間がとれたおかげか、少し精神がゆるんだというか、落ち着くことができたように思う。飯食った後は早々に眠る。

 

<ハワイからいよいよクリスマス島へ>

 20日朝起きて、チャッチャと飯を食って荷物を背負ってチェックアウトを済まし、約束どおり日系のタクシー運ちゃんに拾ってもらい、ホノルル空港へ。スムースにチェックイン、セキュリティーチェックは異様に厳しくなっていてうんざりした。靴も脱がされて、なんだか円筒形の小部屋の中にホールドアップして立たされた後、ボディーチェックも受ける。ビデオでご当地出身のオバマ大統領が「危機管理対策への協力」を説明しているようだったが、正直良い気分はしない。後で開封したときに、預けていた荷物のうち、ロッドケースはガムテープでふたの部分をグルグル巻いてあったのだが、剥がして中身を検査されていたことも判明。X線検査で竿と下着類しか入ってないことぐらい分かりそうなものだが、何が開封検査が必要なモノに見えたのだろうか。まあいい。出国手続きもすんで、ホノルル空港内を搭乗口までゆるゆると向かう。中庭に中国風の庭園があったり、廊下が吹き抜けだったりと開放的できれいな空港だ。搭乗口前は室内で空調が効いているが、その前の廊下は吹き抜けで、ベンチもあるので気持ちよい風を受けながら本を読んで暇をつぶしつつ余裕をこいている自分をセルフタイマーで撮影。

読書中(読書中)

 飛行機はホノルル、クリスマス島、フィジーと飛ぶようで、もっと小さなプロペラ機ででも飛ぶのかと思っていたが、座席6列のジェットだった。航空会社はパシフィックエアライン。

パシフィックエアライン

 飛行機はホノルルの街を眺めながら上昇すると、南を目指して飛ぶ。3時間ほどのフライトだ。

 途中の景色は海と雲だけなので、読書と機内備え付けのフィジーの観光案内を読んですごす。

 窓の外にクリスマス島が見えてくる。島の周りには珊瑚礁が発達していて、浅く張り出した珊瑚礁がギザギザ模様を作っている。あそこにロウニンアジが棲んで居るのかと思うと興奮が抑えきれない。そして、細長い陸地をはさんで島の内側にはボーンフィッシュがウジャウジャ居るという、浅いラグーン(礁湖)が水色に見えている。

クリスマス島が見えてきたリーフやラグーンがよく見える(空から見たクリスマス島)

 クリスマス島について、簡単に紹介しておくと、キリバス共和国にある南太平洋上の島で、珊瑚礁が造り出した環礁と呼ばれるタイプの島では世界最大のものとのことである。

 「クリスマス」の名は1774年12月24日にキャプテンクックが到達したことに由来する。

 陸地は基本的に堆積したサンゴや貝殻でできているので、海抜が非常に低い。、島の中央のラグーンを囲んで島の周縁部が陸地になっていて、ラグーンは島の西側で南太平洋に口を開けている。

 島の西側のラグーンの開口部には、鳥の楽園となっているキャプテンクック島が浮かび、北側の岬の街にはロンドン、南側の岬の街にはパリと名がつけられている。他にもパリから更に南の街にはポーランドなどと名前がついており、街の英語名をつけるときにヨ−ロッパの都市や国の位置関係にちなんでつけたものが多いようだ。

クリスマス島地図(クリスマス島地図)

 機体は高度を下げていき、クリスマス島に着陸する。しかし、何というか滑走路が1本あるだけで、フェンスも誘導施設も何もなく、すぐそばは椰子と灌木の林が迫っている。

逆噴射(滑走路)

 逆噴射かまして減速し、そろそろ到着という感じなのだが、倉庫のような建物の他に建物は見あたらず、どこが空港だろうかと思っていると、その倉庫のような建物が空港だった。国旗が掲揚されているのが唯一それらしい特徴だ。かわいらしい国である。

空港(空港)

 クリスマス島で降りる人間は割と少ないようで、当方含め10数人がタラップを降りて上陸。

上陸(上陸)

 クリスマス島は、経度はハワイとだいたい同じなのだが、キリバス共和国には元々の日付変更線の西側のギルバート諸島と東側のクリスマス島が所属するライン諸島などからなっている。キリバス共和国は独立にあたり、国の西と東で日付けが違うというのは非常に仕事がやりにくいので、西側の時間に統一している。このことにより日付変更線はクリスマス島を東に迂回することになり、結果としてハワイからクリスマス島に飛ぶと、日付変更線を越えてしまい1日日付けが進むのである。

 つまり、20日のお昼にホノルルを出発して15時頃にクリスマス島に到着すると、その15時は21日の15時なのである。

 なぜここでグチャグチャと日付けのことを書いているのかというと、21日は当方が不惑をむかえる誕生日だったからである。私の不惑の誕生日は、どの時点で日付が変わるのか微妙で、日図気変更線を越えた時と取るか、入国審査が終了した時点と取るか等々はっきりしないのだが、感覚的にはタラップを降りてクリスマス島の地面に足をつけた15時過ぎから始まった。誕生日を15時間ほど損した気分である。

 まあ、そうはいってもやっとこさフィッシングパラダイスと称されるクリスマス島にやってきたのである。心浮かれながら、入国審査を済ませ、50ドルを払って釣りの許可証を発給してもらい、荷物を受け取り無事空港の外に出る。

パーミット(許可証)

 空港の外には何台か荷台に屋根(ロッド用の穴あり)とベンチを設けたトラックやバンが来ていて、とりあえず近くのトラックの前にいる人に「キャプテンクックホテル」と言ってみると、あっちだと別のトラックを指さされる。そちらのトラックに行き、荷物を積んでもらい自分も乗り込む。ガイドらしきオッチャンが名前の確認にきて、この1週間はキャプテンクックホテルの釣り人は君一人で他は観光客だと聞いた。ポイント独り占めか?「ラッキー!」と喜んでおく。

トラック

 他の客は荷物だけトラックに積んで別の乗用車で、当方はガイドさんと話しながら、トラックに揺られていく。

トラックからの風景

 ガイドさんはキャプテンクックホテル所属のチーフガイドでNAREAU氏、発音教えてもらったが、日本人にも簡単に発音できる名前だったにもかかわらずすぐに忘れてしまい、英語表記からは全然それらしい名前が思い出せない。年を取ると忘れっぽくて困る。

 今回の釣行においては、釣りの結果は昼食時やホテルに戻ってから忘れないようにメモを取りまくっていたが、朝一の釣果が昼にはあやふやになっていることもあった。

 昔は、その日の1匹目から最後まで鮮明にビデオ再生のように思い出すことができたのに困ったものである。まあ、記憶に残らなかったことは重要なことではなかったのだろう。と割り切ってみる。不惑だもんね。あんまりぐちぐち惑わずに割り切っていかなきゃ。

 トラックで椰子の木の間の道を揺られながら、ガイドから説明を受ける。夕ご飯は18:30分に共同の食堂ラウンジで、朝食は朝5時からで、朝食後、パンとハムや野菜の具材が用意してあるので自分で昼ご飯のサンドイッチを作って用意すること。6日間の釣りで3日はトラックでポイントまで、3日はボートでポイントまで行く。明日の初日はトラックで行くポイントの釣り。とのことであった。

 トラックで岸からトレバリーを狙えるポイントに行くことは可能かと聞いてみると、可能とのこと。明日は一応、フライタックルとGTタックルを1本ずつ持っていくことにする。

 ほどなくして、ホテルに到着。ニッパヤシの葉で屋根をふいた趣のあるコテージ。嬉しいのはすぐ前が海で、リーフをはさんで南太平洋の波が砕けている。

宿(宿)

部屋の前(宿の前の海)

 4時頃だったので食事までにはまだ2時間以上ある。急いで荷物をほどいて、ダイビングシューズを履き、腰に膨張式の救命浮き輪をセットしルアーをいくつかリュックに放り込んでGTロッド担いで出撃する。

いざ出撃

 ちょうど干潮で、リーフの端の波が砕けているあたりまでジャブジャブと歩いて行くことができる。

 とりあえずさらしができているようなポイントや珊瑚礁のスリットめがけてサーフェスクルーザーを投げていく。

 しかし、向かい風で飛距離が出ないのが原因か、全く反応はない。しかも、すねぐらいの深さまでしか入っていないが、それでもたまに股ぐらいまでは波が来て怖い。

 来る前にYOUTUBEでクリスマス島でのショアGTの映像をみたが、腰まで浸かって、頭まで波しぶきを受けながら釣っており、掛けたあと根ズレで切られるたびに釣り人は後ろに転んでいた。それでも彼は最終的に10キロくらいのをゲットしていた。根性ある釣り人である。

 干潮時ならその映像ほどは怖くないだろうと思っていたが、実際やってみると充分怖く、もう少し先まで進んで沖に投げるべきなのだろうけど、腰が引ける。

 釣りに人生の、ある程度までを賭けることは厭わないが、命まで賭ける気はさすがにない。リーフに立ち込んでのショアGTはあきらめるという判断にした。

 クリスマス島ではラグーンの中にも大型のロウニンアジが入ってくるようで、白い砂浜をバックに30キロもありそうなロウニンアジを抱えている「フライマン」の写真などもネット上では散見する。そういうラグーン内でのロウニンアジ狙いのチャンスがあったら陸っぱりも挑戦してみよう。

 1時間ほどで撤退。釣りの神様からの誕生日プレゼントがひょっとしてあるんじゃないかと期待していたが、そんなに甘くはない。

 6時過ぎにラウンジに行き、釣果の写真やクリスマス島の地図などを眺めて夕ご飯を待つ。さすがに、デカイの釣っている写真が多い。うらやましい限りである。でも当方にも釣れるに違いないと心ときめかせる。

記録デカGT

 食事は、ロブスター(ゴシキエビとかニシキエビとかかな?)もマグロの刺身もあり、長粒米だけどご飯もあって、日本人にもなじみやすい味だった。というか、結構旨い。

初日のディナー刺身

 昔々はキャプテンクックホテルの飯はまずかったそうで、ボーンフィッシュ釣っている間にもミルクフィッシュやフエダイ系の魚を釣って焼いて食ったという話も聞いていたが、それは何10年も前の話で、クリスマス経験者のJOSさんに聞いたときも飯は旨かったとのこと。

 当方、1週間や10日は米の飯なしでも全く問題ないが、やはり長粒米でもご飯が食べられるというのはありがたくはある。がっつり食ってしっかり釣らなきゃ!である。

 腹もくちくなり、部屋に戻って明日のタックルを準備した。大きな棚が、壁面に備え付けてあって釣り具の整理がしやすくて良かった。

棚(棚)

 壁はよく見ると、丸い形のサンゴの死んだ骨格を利用していてなかなかに趣がある。

壁壁の素材(壁、壁の原料)

 明日は5時起きなので10時には寝ることにしてシャワーを浴びる。シャワーはさすがに水だけだが、まあ問題ないだろう。ついでにシャツなども洗濯してしまう。今回というか旅ではいつも、下着類は3日分しか持っていかない。3日分を洗濯しながらローテーションするとちょうど良く着回せるというのが、仕事で一時期船に乗っていたときの経験から導き出した最適解だ。2日分では予定外に汚したときに困るが、4日分だと余る。

 潮風にさらされるので、そこいらじゅうの金属という金属は腐食していて、シャワールームのドアの金具のネジがさびて腐ってズレており、ドアが閉まらない状態。何とか閉めようといじくっていると金具がポロッと落ちた。エポキシ系接着剤で補修しておく。人様のためになることをしたので、良い釣果に恵まれるのではないかというようないじましい思いが胸に去来する。

ドア修理(ドア補修)

 潮風があって、それほど暑さを感じないのだが、寝ようとすると体が潮でべたつくような気がして、今年始めてエアコンを使用した。

 明日の釣りが気になって眠れないかもと心配だったが、割とあっさり眠りにつくことができた。明日から本格的な釣りのスタートである。

 

 

<22日:トラックでの釣り1日目>

 朝起きて、寝間着代わりの短パンTシャツのままラウンジに行く。まだ暗く、空には南十字星。トーストとカリカリベーコン、卵はスクランブルエッグでと、イングリッシュブレックファースト風の朝飯で腹ごしらえをし、サンドイッチを作ってオレンジをもらって部屋に帰り、便所、歯磨きを済ませ、顔、首、耳、手と日焼け止めを塗り込んでいく。釣り装束に着替えて道具を部屋の外に出して施錠、トラックの迎えを待つ。待つ間にストレッチとラジオ体操第一。

 ガイドと運転手さんの2人でトラックはやってくる。後ろに乗り込み朝焼けの中出撃。いっちょ噂のボーンィッシュのジェットランを味わってみたろうじゃないか。

 ホテルを出て、トラックは一路、島の東方面へ一本道を行く。途中太平洋が見えたり、鳥が見えたり。

朝の幹線道路灌木地帯(朝の風景)

 しばらく走って、島の中央に向かう方向の小道に入る。

ラグーンへの小道(小道)

 道には結構大きなオカガニがいて、車にビビって灌木の根本の巣穴に逃げていく。鳥も何種類か飛んでいるのを見たが、コンパクトデジカメの3倍ズームではなかなかいい写真は撮れない。

カニ(カニ)

鳥鳥鳥鳥鳥鳥(鳥)

 しばらく走ると、浅いところが白くて深くなるにつれて水色に変化していく、これぞラグーンという感じの風景が見え始めた。

ラグーンの風景

 いかにも釣れそうに見えるのだが、良いポイントがあるのか、ずんずんと進んでいく。ほどなく車を止めて、さあ始めようかということでてくてくとガイドについて歩いて行く。頭の上を鳥が旋回しているので、写真撮りつつポイントへ。

カツオドリ系2羽一羽(カツオドリ系?)

 最初のポイントは、二つのラグーンがくっついてくびれている所の浅い瀬のような場所で潮通しが良い感じ。接近していくとガイドがミルクフィッシュが居るという。たしかにザワサワと泳いでいる魚たちが見える。それとは別にやや黄緑色っぽいのがいて、ボーンは緑色に見えると聞いていたので、ガイドに竿で指し示して「あれはボーンか?」と聞いてみると、「NO!HUGU〜」とのことであった。当地でも食べられているようで「OISHI〜」とか言ってる。深いところからまわってくるボーンを狙い撃ちできるように風上ポジションを取って魚を探す。

 待つほどもなく、ガイドが方向を指さして、30フィートとか距離を言ってくる。正直最初は全然見えなかったので、ガイドの「ストリップ(引け)」、「スロー(ゆっくり引け)」、「ウェイト(待て)」の指示どおりにやっていた。フィートもとっさに距離感がつかめず、頭の中で3賭けてメートルに直して投げていた。風が強くて投げにくいが、さいわい遠くても50フィート(約15m)ぐらいしか要求されないので当方のへなちょこキャストでも何とかなった。

 2回ぐらいキャストするも逃げられていたが、3回目ぐらいでヒット。重みを感じたのでラインを引いてあわせて竿をたてる。ラインが絡まらないように気をつけつつ回収。結構なスピードで魚は走っていくので、ライン回収したらいよいよバッキングまで引っ張り出されるのかと思ったが、そこまでは走らない。ドラグは鳴ったが、フライラインの範囲内でかたがついてしまった。

 あげてみると、40センチ前後でそれほど大きくない。さすがにこのサイズではいかなボーンといえども、シイラやカツヲを釣るのにも使っている10番タックルだとそうそう走られることはないようだ。

初ボーン(初めてのボーン)

 その後も、順調に魚はまわってきて、3つ4つ釣ると、魚も見え始めた。ミルクフィッシュよりも底の方にいてやや黒い影のような感じで見える。フライを見つけると割と動くときは素早く泳いで、ぴたっと止まったりという動きをしている。

 ガイドは特に何も言わないと速攻でリリースしてしまうので、写真撮りたいときは早めにリクエストする必要がある。

リリース(リリース)

ファイト(ファイト)

 少し反応が悪くなってきたようなので、フライを自作のオレンジから、JOSさんにもらったクリーム色に変えた。

 同じようなサイズを1匹追加して、今日の6匹目。ちょっと今までのとはサイズの違うのが食った。フッキングしたときガイドも「グットサイズ」と言っていた。

 手元の余分なラインが速攻で出て行くので絡まないように左手でさばく。余分なラインが出きってリールが逆転し始める。ティボーの「コーーッ」というドラグ音とラインがガイドにすれる「シューッ」という音が気持ちいい。バットエンドは、胸に当てるとあばらが痛いので一番上の段の右腹筋に当てると具合が良いようだ。右手でグリップ上部を左手でロッドのブランクを軽く保持して耐える。みるみるラインが彼方に伸びていきバッキングラインを1色、2色、3色と出していく。

 これはすごいわ!

 4色目に入ったあたりで突然、抵抗が軽くなりばれたのかと焦って「フックアウト?」と聞いてみたが、ガイドは「ばれてない、こっち向いてるだけ。巻きまくれ。」とのことだったので巻きまくる。たしかに抵抗は軽いが、フライラインの先は水中に刺さっているので魚がついているのは間違いないようだ。ラインをほとんど回収して魚が見えてきた。正直もっとクソでかいのかと思ったが、60センチぐらいである。そのままランディングできるかと思ったら、こちらに寄ってきた頭の向きそのままに今度は反対方向にダッシュ。回収したラインがまたバッキングまで出されてしまう。ラインが出て行くときは何もできずに竿を保持して、ドラグの音を楽しむぐらい。ただダッシュが終わると頭がこっち向いてするすると寄ってくる。2回のジェットランでさすがに疲れたのか、おとなしくなってランディング。堪能しました。

初日良型ボーンボーン(良型ボーン)

 その後、1尾40前後の平均サイズを追加して移動。

 珊瑚礁の島なので、陸地にはサンゴのかけらや貝殻が堆積している。

貝殻(貝殻)

 2カ所目は、ラグーンの浅い岸寄りを歩きながらボーンを探していき、3尾ゲット。1尾60弱ぐらいのまあまあサイズがバッキングまで引き出すジェットランを見せてくれた。しかしここでは魚が見えない。ガイドに聞くと、日が斜めから指している朝の方がボーンは見つけやすいのだそうだ。加えて日が昇ると風が出てきて風波が白い砂を舞上げ「ミルキー」な感じに濁ってしまうのも見えにくい原因かも知れない。それでもガイドは魚が見えているようなのはさすがと言うべきか。

2カ所目(2カ所目)

まずまず(まずまずサイズ)

平均サイズ(平均サイズ)

 帰り道、浅瀬に見えている珊瑚のような障害物を狙ってみるとフエダイ系がつれた。「イエロースナッパー」と呼んでいるようだ。ガイドが、スナッパーなら、あっちでいくらでも釣れるぞということで、珊瑚の硬い地盤がえぐれたようになっている場所に案内された。たしかにバンバン同じ魚が釣れた。5匹ほど釣って移動。

イエロースナッパー

 3カ所目も2カ所目のようなラグーンの浅瀬、しかしここはスカ。

トラックへ帰る

 12時過ぎたので昼ご飯。水は肩掛けバックに入れて持って行っているのでこまめに飲んでいたが、結構甘い物に飢えていたのかクーラーボックスで冷えたオレンジが甘くて美味しい。

昼ご飯

 4カ所目はちょっと広めの浅場がラグーンの深場へと続いている場所。風が強くなっていてかなり白っぽく濁っていた。ガイドもなかなか魚を探しきれないようだ。

 なにげに適当に前方に投げてゆっくり引いてブラインドで釣っていたら食った。ここの魚は小さめで40から小さいのは30弱のキスかと思うような肘叩きサイズまで釣れた。フライは自分で巻いた、パール系の小さいのが良かった。6尾追加。

やや小さめ

 アタリが遠のいたのでガイドの指示でフライチェンジ。パール系の結構モジャモジャに巻いたボリュームのあるやつ。

 しばらく投げていたらヒット。結構な重みがあるのだが、しかし走らない。水面でグリングリンと暴れている。フグや!喜んでランディング。たまに反応することはあったのだが、食うところまではなかなかいかなかったので嬉しい。フグ釣った時の写真がこの日一番のいい顔で笑っていて我ながらあきれる。種類の同定は難しいけどモヨウフグあたりか?

フグ(フグ)

 その後はアタリ無く、フライを重めのオレンジに変えるも反応もなく、歩いて移動。その途中で、ガイドが浅場でテイリング中の大型ボーンを見つける。明らかにデカイ。70くらいありそうだ。こちらにゆっくりと向かっているので少し手前にフライを落とししばし待って、ガイドの指示に従って誘いをかける。追ってきた。少し止めて待ち、寄ってきたところでまた誘うと食った。ラインに重みがのったので竿をたててジェットランに耐える体制を取る。しかし魚はゆっくりと深い方に向かう。ダッシュが始まる前にラインを回収してしまおうとリールを巻いていたら、ポロッとフックアウト。まだ魚は見えていたので投げろとガイドに言われて狙うが、反応せず行ってしまった。確実に今日一番の大物だったのに悔しい。しかも、テイリング中のを見つけてもらって典型的なサイトフィッシングでかけたのにもったいない。まあインチキフライマンの実力ではこんなもんなのか。

 移動して、珊瑚のガレ場の向こうに深めの水道が川のように流れているところで、深くフライを沈めてブラインドで狙うようにガイドに指示されるが、アタリもないのでガレ場そのものを狙いたくなり、狙ってみる。ここは赤いフエダイ系「レッドスナッパー」が入れ食いだった。10弱釣って迎えに来てくれていたトラックに戻る。

ガレ場ポイントレッドスナッパー

 トラックで移動してもう一カ所、ラグーンの浅場をボーン探してさまよったが、魚が少なくヒットまで持ち込めずスカ。

 時間もストップフィッシングの予定の15時を過ぎたので終了して帰路につく。

 デカイのバラしたのは痛いが、まあ初挑戦で16尾ゲットして、それなりに良いサイズも釣れたので上出来だとは思う。

活躍フライ(今日の活躍フライ達)

トラック1日目ポイント(今日釣ったのは青で囲ったあたりか?)

 

 明日は、ボートの釣りだ。スピンキャストでトレバリーを狙いたいとガイドに伝えておく。できれば20キロオーバーを釣りたいのだと。

 ホテルに戻って、使った道具の塩抜き、洗濯、シャワー、明日の釣りの準備を済ませて、夕飯まで、海を見ながらデッキチェアーで読書。

デッキチェアー(読書)

本(この夏の5冊)

 この旅には、北杜夫「南太平洋ひるね旅」新潮文庫、池澤夏樹「叡智の断片」集英社文庫、梨木香歩「裏庭」新潮文庫、秋道智弥「ハワイ・南太平洋の謎」光文社文庫、本谷有希子「グ、ア、ム」新潮文庫をチョイスした。南の島っぽい本と、読み応えありそうな池澤、梨木両作家の本を1冊ずつ。

 しかし、これだけでは読み物が無くなりそうで心許ないと思っていたが、ラウンジに本棚が2つあり、日本語の小説と漫画が沢山あった。これでかなり手持ちの本は節約できそうだ。漫画と軽い読み物を毎日借りて読む。

本棚

 「釣りバカ日誌」とかの途中の巻が10数冊とか「バガボンド」が飛び飛びにあったりして、明らかに旅行者が残していったモノというよりは、入港(島影に錨泊か?)した日本のマグロ漁船あたりから払い下げられたような雰囲気である。

 

 2日目の夕食からビッフェ形式で、食べ放題となった。パンが焼きたてで結構旨い。チキンスープも旨いのでおかわりする。ご飯もおかわり。

2日目ディナー

 デザートはいつもアイスクリームで、それにプラスしてケーキがついてくる日もある。外で遊び回った後には、甘い物が妙に美味しい。

アイス&ケーキ

 明日はいよいよ、ロウニンアジ狙いである。デカイのが釣れそうな気もするが、同時に釣れなかったらどうしようと心配でもあり、体が持たないのではないだろうかと言う不安もよぎり、ちょっと寝付くのに時間がかかった。8時過ぎにはベットに入ったが、トイレに行ったり、明日の道具をいじってみたりと結局眠れたのは10時ちょっと過ぎ。

 

<23日:ボートでの釣り1日目>

 今日は、GTタックル2セットとルアーその他をルアーバックと防水バックに入れてトラックで港に向かう。

 港は島の西、ラグーンの開口部の北側の岬ロンドンにある。ボートは現地で「スキフ」と呼ばれている片舷にアウトリガーを設けたやや大型のカヌーの一種。エンジンはヤマハだった。

スキフ(スキフ)

 今日は北西の風が吹いている。7時過ぎに港を出たボートは北上し、島の北東側、風表を目指す。風表のリーフを狙うという狙いだろう。セオリー通りというところか。

 途中、鳥やイルカやミルクフィッシュの群れを横目に見つつも結構な時間リーフエッジ沿いにボートを走らせる。

鳥(鳥)イルカ(イルカ)

 8時前くらいに鳥山を見つけてそこで始める。鳥自体は結構小さくてベイトも小さいのかも知れない。そうであっても魚っけがあるのは間違いなく、気合いを入れつつ最初は朝一ということもあり派手目のオレンジ黄色のGTPを投げる。

鳥山(鳥山)

 ロッドはフィッシャーマンGIANT8.5(8.6だったが穂先を折ってしまいつめている)トラベラー、リールはPENNスピンフィッシャー7500SS、ラインはメインラインがスパイダーワイヤーウルトラキャスト80LB、ショックリーダーはダイリキの200LBひとヒロ、スペーサーにシーハンター25号をふたヒロ入れている。

 シーハンターはナイロン系のブレイデットラインだが表面がザラザラしていて、下手をすると結びがすっぽ抜けがちなPEラインとの接続にも、しっかり食いついてくれる感触があり安心して使える。スペーサーに単繊維(モノフィラメント)のナイロンを使うと腰がありすぎて飛距離が出にくい気がするので、シーハンターは編み糸系で腰がない点も気に入っている。

 沖から投げ始めて船を風を受けてやや西に寄りながら岸方向に流し、15分ぐらいしてリーフ際に近づくと再度沖に戻すというパターンを繰り返して攻めていく。ルアーアクションはジンバルにロッドエンドを突っ込んで、シャクってポッピングしてゆるんだ分のラインを回収してまたポッピングというあまり体力を消耗しない省エネ型オッサンポッピングでいく。キャストもなるべく力を入れず竿を頭の上でスムーズに半回転させるだけの脱力型オッサンキャストでいく。

 ひと流し目は反応無かった。鳥山あるうえに朝一良い時間に何の反応もないというのは不安を覚える。ルアーの選択が間違っているとかだろうかと考えてサーフェスブルGTの青銀にルアーチェンジ。2流し目を始めるとほどなくしてヒット。フッキングかましてファイトに入る。それほどデカそうではないが、風波があり足下が揺れるのにまだ慣れていなく対応できていないのと、緊張しているせいで体か堅いからか、いまいちうまくファイトできない感じ。テンションがゆるんだ隙に突っ込まれたりして結構ひやひやした。

 よせてくると細長い魚体が見えた。バラクーダだ。ガイドがショックリーダーつかんで引き上げてくれる。あまり大きくはないがとりあえず魚か釣れたのでホッとする。80センチくらいか。ボガグリップかけて持ち上げて記念写真。

バラクーダ(バラクーダ)

 3流し目はチェイスはあったがバイトには至らず。4流し目、割と船に近い位置で横っ飛びにバイト。魚体がギラリと光る。最初潜っていかずに横走りしたが、寄せてくるとかなり強烈にダッシュして潜りつつ沖へ向かう。エンジンかけて追いかけてもらう。かなり引くが、ちょっとロウニンアジっぽくない。船の下についたのでポンピングでちょっとづつあげてくると魚体が見えた。マグロや!ガイドも「TUNA!MAGU−RO〜」とか叫んでいる。サイズは10キロは越えていそうだ。船縁まで寄せてきたがダッシュして潜っていく。再度寄せるがガイドがギャフを入れる前にまた潜っていく。なかなかにタフな魚でオッサンはすっかり息が上がりかける。4度目ぐらいの寄せで何とかガイドがお尻のあたりにギャフを打ち込みランディング。

 ちょっと背ビレと尻ビレが伸び始めているのでキハダだろうと思い、写真を撮る。

キハダと私

キハダ(キハダ)

 キハダとメバチの幼魚、若魚は判別が結構難しい。2種類並べれば胸びれが長く魚体が太くて目が大きいのがメバチと分かるが、単独だと悩ましい。とりあえず今回のは尻ビレ背ビレの長さでキハダと思ったのだが、一応帰宅後、写真で再確認してみた。下腹にでる白点の並びが斜めに入っているように見えるし、側線が第二背ビレの下あたりで下方にググッと曲がっている感じもあるのでキハダマグロで間違いないと思う。判別し慣れている方、どなたか正解かどうか教えてくれると助かります。

 ボガグリップを口の脇にかけて、ボガごと20キロバネ秤で量ってみると16〜17キロ、ボガの重さが500グラムくらいあるので16キロというところか。長さは1mをちょっと切るぐらい。5キロぐらいまでしか釣ったこと無かったので当方のキハダレコード余裕で更新である。かなり嬉しい。

 ギャフの傷もたいしたことなさそうなのでリリースして良いかとガイドに聞くと、結構な勢いで否定された。トレバリーはオールリリースだが、マグロやバラクーダは持って帰って食べようとのこと。バラクーダリリースしちゃったのは当地の流儀に反していたのかな?

 9時をまわって日も上がってきたのでルアーチェンジ。黒のSポップ150に。

 次の流しではヒットしたもののフッキング後すぐにばれた。かかりどころが悪かったか。

 その次の流しでもヒット。あまり大きくなさそうだが、それでも上手く一定のテンションをかけられていないのか時々突っ込まれたりして手こずる。結構ヘトヘトになりながらあげると10キロ無いぐらいの小型ながらやっと本命のロウニンアジ。

初GT(クリスマス島初ロウニンアジ)

 最近は40キロとか50キロとかの写真や映像も珍しくないので小さく見えると思うけど、こんなんでも結構引くんですよ。

 というか、ファイトが下手くそになっているような気がする。要らん力が入っているので疲れるうえに、体が硬くなっていて上手く魚の動きについていけなくて突っ込まれて反撃食らったりしているように思う。

 とりあえずひと流しごとに魚の反応はあるし、ドンドン釣って慣れていくしかないなと思ったが、その後一回バラして、10時を過ぎて日が高くなると、何度かチェイスはあるものの食わなくなる。ルアーをチェンジしたり早引き系にアクションを替えてみたりしても全然食わない。

 2mを完全に越えたデカイサメが追ってきたときはちょっとビビッたが、幸いにもというか残念ながらというか食いはしなかった。

 釣れねーなーとか思いながら投げていると、後ろから黒くて大きいモノが追ってきた。何だろうとガイドに聞くと「セイルフィッシュ」とのこと。黒い部分は背ビレだ。一所懸命誘いをかけたがやる気なさそうに去っていった。

 何かいろいろいる海だなあと感心するが、肝心のロウニンアジの釣果が少ない。こんなもんじゃないはずだろうと思うのだが、反応が無くなりいかんともしがたい。

 12時過ぎてランチをとって、その後ひと流ししてもまるで反応がないので移動。

 島の西のラグーンの開口部、ロンドンとクック島の間、クック島の周りのリーフの上で投げ倒したが3時のストップフィッシングまで反応無し。体も疲れたが、精神的にも結構こたえた。

2日目ポイント(今日攻めたポイント)

 明日もボートで、今度は島の南側をやろうというガイドの提案。風向きとか考えずに単純に逆サイド行って釣れるのか?とやや疑問符が頭に浮かぶが、かといって長年この海に親しんでいるガイド以上の良策を思いつくわけもなく従うことにする。

 ガイドの態度にも今日の釣果が不本意なモノであり、明日こそ挽回するという思いでいることはうかがえたので、普通はもっと釣れる釣り場なのだということは推測できる。では何が今日はいけなかったのか?釣れない理由ほどわからないものはない。季節か潮か、ルアーの選択かアクションのつけ方か、答えは出るはずもない。

 帰りのトラックの荷台にはマグロがゴロリと転がっていた。久しぶりに当方的には大きな魚を殺したのでちょっと頭の中でドナドナが流れているような気分。マグロ釣って食うのは当然と言えば当然だが、ロウニンアジ釣りではかなりリリースに気をつかって釣りを進めるのですぐには気持ちが切り替えられない感じだ。ホテルに持ち込んで料理してもらっても良かったが、良い釣りさせてくれるようにとの願いを込めてマグロはガイドに進呈した。チップは別に渡しているのだが、釣れるも釣れないもガイド次第といっていい立場なので貢いでおくことにする。

ドナドナ状態(荷台のマグロ)

帰り道(帰り道)

 キャプテンクックホテルはさすがに釣り人御用達の宿だけあって、釣り人向けの気配りが心憎い。部屋の横の空き地にロッドを乗せる台があり、ホースでジャブジャブ真水をかけて洗えるようになっている。

ロッド台(ロッド洗浄台)

 夕食食って、明日の準備をして、ストレッチなどしているとかなり体が疲れているのが感じられ、あちこち痛いので不安になる。特に腰に違和感があるのがやばい感じだ。実は最初の一匹のバラクーダの突っ込みを耐えたときに、ちょっと腰にピリッと痛みが走り腰ヤッてしまったかと思ったのである。しかし、その後は特に何ともなかったので釣りを続けていたのだが、宿で落ち着いてアドレナリンの効果も薄れてくるとちょっと嫌な感じの痛みがある。本格的に腰を痛めてしまっては、重い荷物を担いで日本に帰ることさえ苦難の道のりになる。というか車いすでも用意してもらって、ポーターでも雇わねばなるまい。

 フィッシングパラダイスに来たというのに思うように釣れていないということの精神的負担も加わって、心はドヨドヨと沈んでいくのであった。オレこれからどうなるんだろう?

 とにかく明日は、腰の様子を見ながら慎重にやるしかない。疲れもたまっているので無理せず早めに切り上げるオプションも念頭に置いて、小物釣りの道具も用意しよう。と考えを整理しベットに横たわると、疲れもあってすぐに泥のような眠りの中に落ちていくのだった。

 

<24日:ボートでの釣り2日目>

 朝、昨日と同じようにロンドン港にトラックで、ボートに乗ると今日は一路南を目指す。風は昨日と違って東風になっていて島の南側でも風裏では無い。

 ズンズン進んで最初のポイントに到着。横風を受けながら岸と平行に流れながらキャストしていく。昨日活躍したサーフェスブルGT青銀。いきなり2,3投目でデカそうなやつがバイト。しかしかからず。同じ場所を再度狙っていると同じ個体かどうかは不明だが再度バイト。しかしまたもかからず。

 少し流れて、3発目のバイト、波の向こう側にルアーがある時に出たが、水しぶきが波を越えてあがったのであわせた。6キロドラグで少しラインが出たが、船をバックしてリーフから引き離してくれるので、しばらく耐える。魚はうまく横に移動しはじめ、しばらくすると沖側に向かって泳ぐ形で頭がこっちに向いてくる。寄せにかかる。それほどデカくはなさそうだ。これは獲れるなと思った直後、ポロリとフックアウト。ガックシと膝をつく。ガイドに「まだ沢山チャンスはあるから投げろ。」と励まされる。たしかに今のところ活性は高いようで今日はいけるかも知れないと思うが、しばらくバイトが遠ざかる。

 頭の白いカツオドリが、ルアーを追うのは良いのだが、キャストしようとしている時にもルアーが気になるらしく、頭の上でルアーがぶつかりそうな低さを飛びやがって投げにくい。「ゲラウェイ!ゲラウェイ!(Get away!=逃げやがれ!)」と叫んで竿を振り回してみるが、あまり動じない。そのうち4羽、5羽と数も増えて頭上を舞い始めた。

 何となくアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」のエヴァ弐号機が、量産型エヴァシリーズに食い散らかされた後、エヴァシリーズが頭上をグルグル舞うシーンが頭に浮かんできてちょっと不吉な感じだ。そういえば今のっているスキフボートは、もろに赤とオレンジという弐号機カラーだ。これからこのボートを心の中で「弐号機」と呼ぶことにする。

 しばらくバイトが無く、嫌な雰囲気に飲まれそうだったが、ルアーを緑系のSポップに替えてヒット。ばれないようにグシグシグシグシとあわせまくる。結構暴れられたので良いサイズかと思ったがそれほどでもない。でも10キロはあるだろうか。あまり大きく見えないと思うけど、これでも結構ひくんですよ。

2日目1匹目(2日目1匹目)

 その後もわりとすぐにヒット。だいぶ体がほぐれたのか楽に寄せてきたが、ちょっとサイズアップ。持ち上げて写真取ってる時間も体力も惜しいので甲板に転がして写真撮って速攻リリース。すぐに次を狙いキャストしていく。

2日目2匹目(2日目2匹目)

 しばらくして、横っ飛びにデカイのがドカンとでたが、フッキングはすっぽ抜け。20キロあったかもというサイズ。もったいない。ガイドからは「いきなり竿をあおらずに、まずリールを巻いてからあわせろ。」とアドバイスを受ける。しかし当方30年来、でたら即あわせのいわゆる「びっくりあわせ」でやってきた男である。今さらすぐには変われないのである。

 その後はまたセイルが現れたほかには、一回追いがあっただけ。どうも9時くらいまでにアタリが集中して、10時を過ぎると反応無くなるようである。

 昼飯の時間になり、どうしようか迷ったが、これから午後に反応が良くなることはなさそうなので、体力温存のためにも沖上がりすることにする。

3日目のポイント(今日行ったのはたぶん青く囲ったあたり)

 実際には、昨日午後駄目だったからといって、今日もそうだとは限らないのだが、午後は駄目そうだと思っている時点で集中力は欠けるし、そうなると投げ続けることが苦痛になるし、よしんば魚が出たとしても腑抜けたファイトで獲れるモノも獲れないという状態に陥るだろう。腰の状態は幸い悪くなっていない。ここは体を休めて次のボート日、朝の良い時間にキッチリ集中して釣りできるようにコンディション整えるのが得策だという判断である。

 港に戻って、ランチを食らってから小物釣りタックルを出す。タナゴ釣りに使っている延べ竿「白滝」。右手の握力が無くなるまで釣りまくったとしても、このタックルなら左手で扱えるということで控えのタックルとして選択したのだが、釣りまくりにはほど遠い。現実は厳しいモノである。あまり釣れていないけど体力温存のために登場いただいた。餌も魚肉ソーセージを準備してありそのへんの抜かりはない。

 最初、沈んでいる車か何かの周りで始めたが、石垣のあたりや港の角やドックでも、風波で最初はあまり見えなかったが、釣り始めると小魚はウジャウジャと居た。フエダイ系が真っ先に飛びついてくるので、狙っていたスズメダイ系はあまり釣れなかったが、フエダイ系も何種類も居るようで、浮きを眺めつつ小気味よい引きを楽しんだ。

 ガイドにもうけていた。「その竿のラインウェイトは何番だい?」と聞かれたので「0.1番ぐらいかな。」と答えておいた。

ポイント

スズメダイ系フエダイ系白縦スジフエダイ系?フエダイ系白しっぽ黒点フエダイ系黄色縦縞フエダイ系白赤エッジフエダイ系瀬赤腹黄色エッジ白

 3時頃にトラックが迎えに来てホテルに帰る。荷台で揺られながら、ロウニンアジ20キロUP釣れる確信があるとか書いて出てきたけど、この調子だとあかんかもしれん。そのときはどう釣行記を書くんだろうな、とか考える。おちゃらけて笑ってごまかすか、それとも釣れない釣り師の頭の中のグチャグチャの想念をぶちまけるように書いてしまおうか。

 釣りに出ればシビアな状況に出くわすことは珍しくも何ともない、誰にもどうにもならないこともあるけれど、それでも上手い釣り手は少しでもチャンスがあればモノにして何とか釣りにかたちをつける。今日の当方にはチャンスはたしかにあったのにそれを逃してしまった。歯がゆいというか情けない。上手い人ならもっとルアーやそのアクションのバリエーションでチャンスを広げていたかも知れないとも思ったりする。

 まだボートの日が1日残っているにも関わらず思考がネガティブに暗い方向に向かってしまうのを止められない。

 部屋に戻ってからは、いつもの洗濯、シャワー、明日の準備、食事の他は漫画を読んで、頭によけいな後ろ向きな思考が浮かばないように現実逃避。こういう時単独行は寂しいと感じる。仲間がいればあれこれ話して無聊も紛れようというものだが。

 早めに寝る。明日はトラックでボーンだ。

 

 

<25日:トラックでの釣り2日目>

 いつものようにトラックの荷台に揺られ今日はボーンフィッシュポイントを目指す。わりと早く幹線道路を抜けてラグーン向けて細道に入る。トラック一日目の逆のコースのようだ。帰り際に見た塩田のような施設の横を通りトラックは進んでゆく。

 

 ほどなくしてポイント到着。最初のポイントはひょうたん上にくびれたラグーンのくびれて浅くなっている場所。ガイドの選んだ場所で立ち込んで魚が回ってくるのを待つ。今日も風があるが、ロッドは8番の軽い方にした。

ポイント

 ガイドが見つけて当方が投げるのを3回繰り返したあたりでヒット。8番ロッドが曲がり、ラムソンのドラグが「ニィーーーー!」とニイニイゼミのような甲高いラチェット音を響かせて逆転する。オレンジのバッキングが出る。やったりとったりしてランディング。なかなかの良型。フライは自作の小オレンジ。

4日目良型ぼーん(1匹目)

 毎日朝、サンキラーという「太陽殺してどうするねんッ!」と突っ込みを入れたくなるような商品名の強力な日焼け止めを塗りまくり、お昼時には塗り直してもいるのだが、さすがに南の島の紫外線は強烈で、ホッペのあたりとかが日焼けでひりひりし始めた。で、手ぬぐいでほっかむりして釣りをする。手ぬぐいはバンダナより大きくてつかいでがある。写真で見るとあやしいオッサンだ。日本の街中歩いていたら取り押さえられるだろう。

 その後、くびれの向こう岸のラグーンに向かってニョキッと突き出したかたちのサンドバーで、JOSさんにもらったクリーム小で連発するがバラしまくり。2匹追加する間に5匹バラした。どうもドラグが緩すぎてテンションがうまくかかっていなかったようだ。なるべく遠くまで走らせて楽しもうと欲をかいて失敗した。

普通

 その後はドラグをしめて、くびれをはさんだサンドバーの反対側の浅場と、くびれをトラックへの帰りに再度ねらって、コンスタントに8匹まで釣果を伸ばし、小ロウニンアジもゲット。フライはちょっと重めの黄色のとオレンジの。面白いもので、小さくてもロウニンアジはロウニンアジの引きでボーンとは全く引きが違う。ダッシュが止まっても素直に寄ってこず横に回るようにしながら抵抗する。

ボーンボーンボーンボーンボーン小ロウニンもいっちょボーン(釣果)

 浅場ではデカいモンガラカワハギの仲間がテイリングしていて狙ったら食ったのだが、あわせても口が堅くて上手くかからなかったのかフッキングしなかった。赤黒くてなかなか魅力的な獲物だったが残念。

 

 11:30ころに昼食を取る。その後1カ所広く浅くラグーンに突き出したサンドバーのポイントを狙ったが、白濁りで魚を見つけるのが難しく、ブラインドで小型を3匹かけて1尾追加したのみに終わった。

4日目この辺かな?(たぶんこの辺か?)

 

 風も強くなり濁りも出てきたこともあって、13時過ぎに、明日のボートロウニンアジ狙い最終日に向けて早上がりして備える。

 

 宿に戻ってフライタックル洗う前にちょいと目の前のリーフでフライ振ってみた。大きめの石(石といっても元は珊瑚だが)や珊瑚の周りから黄色いフエダイが群れでワラワラ追ってきて入れ食い状態。30分ほどで10匹くらい釣って終了。

 イエロースナッパー?

 部屋の前に隣の米国人オヤジ3人組が何か黒くて長いポールを立てていた。何してんだろうなと見ていると、どうも部屋の中では通信しているような話し声が聞こえる。3人はアマチュア無線愛好家のようだ。クリスマス島だと飛んでいる電波が少なくて無線に好適とかそういう理由があるのだろうか?いろんな趣味の人がいるもんだなと思う。

 

 2日連続で早上がりで体調回復に努めたので、それなりに疲れてはいるしあちこち痛くもあるのだが、腰の嫌な違和感は消えているし全体的に体調は良くなっている。明日のボートロウニンアジ狙いは何とか闘えそうである。一時は体がしんどすぎるなら3日目のボートはロウニンアジ狙いを断念して、大物ボーンを探しに有名ポイントであるパリスフラットあたりに行こうかとも考えていたがその必要はなさそうだ。

 とにかく、朝の活性高い時間帯はチャンスらしいのは理解できた。ものにできるかどうかは別として、やれるだけのことをやるだけだと明日の準備をする。

 あまりいろいろ考えると、また、思考がよけいな不安の方向に行ってしまう気がしたので、漫画読んで現実逃避に努める。

 

 その日は、西森博之「天使な小生意気」をクククと笑いつつ読んで、次に遠藤浩輝「EDEN」を戦闘描写のえぐさに唸りつつ読んでいたところ、おもわず「オオッ」と驚いてしまった。銃を向ける敵に対して、ナイフを投げてその銃口に「カッ」と命中させて発射できないようにしてしまうというシーンがあったのだが、そっくりそのままのシーンがちょっと前に読んでいた「天使な小生意気」にもあったのである。

銃口にナイフが「カッ」(銃口にナイフ)

 どちらかがまねしたのかと思って、そのシーンが載っている巻の初版発行年月日を調べてみるとどちらも2000年で若干「EDEN」の方が早く出ているが、まねなどしたらすぐにばれて非難を浴びそうな近い時期であり、どうもそれぞれが別個に偶然同じようなシーンを書いたように思える。元ネタがあって2人ともそれをヒントに書いていたという可能性もあるが、そうだとしても遠く日本から離れたこのクリスマス島の本棚に、どういう経緯でかはわからないけれどたまたま並べられた漫画から、たまたま手に取った2作品に酷似したシーンが出てくるというのは、奇跡的な出来事、意味のある偶然のような気がした。

 明日の釣りの奇跡的な結果を暗示している吉兆ではないのだろうかと、ポジティブに思い込んでみようとする。

 結構あきらめモードだったけど、明日は案外釣れるんではないだろうか。とにかく寝て明日を待つ。明日になれば結果はいやでも明らかになるだろう。

 

 

<26日:ボートでの釣り3日目>

 朝起きていつものようにストレッチ、ラジオ体操第一をするが、腰は大丈夫そうだし肩や手首もそれほど痛くない。体調は良い感じだ。今日のために2日早上がりで体力温存した成果が出ている。

 今日は迎えに来たトラックに、小さな女の子が学校までの便乗なのか乗っている。きっとこの子は幸運を運ぶ天使で当方に釣果をもたらしてくれるんじゃないか、と都合の良いこじつけをしてみる。体が調子よくなっているのとリンクしているのか、精神的にも上手く気分をあげていく方向に持っていくことができているように感じる。良い傾向だこの調子で今日は投げ抜こう。

天使?(エンジェルちゃん)

学校(学校)

民家(民家)

 「弐号機」とも今日が最後である。とにかく朝の9時くらいまでが重要な時間帯なので最初から集中していきたいと、気合いを入れつつ出航。船は南へ向かう。当方もそちらの方がロウニンアジに関しては反応が良かったように感じていたので異論はない。

 8時前ぐらいにポイントについて、Sポップ緑で始める。アクションはもう割り切ってオッサンポッピングだけで勝負する。結構持ってきたペンシルには出番が無くて申し訳ないが、また別の機会もあるだろう。

 開始してほどなくして1発目、かかったがすぐにばれた。ガイドは大きかったといっているが、重量感や引きからはそれほど大きいとは感じていなかったので、あまり気にせず次を狙う。

 すぐに2発目がきたが、食うとこ見えたが赤かった。明らかにロウニンアジよりは引きが弱い。すんなりあげて60くらいのバラフエダイ。

BD(BD)

 3発目もかかりどころが悪かったのかフッキング直後にバラし。嫌な雰囲気が流れかけるが、すぐに4発目がきて、これをゲット。10キロくらいか。

1(1匹目)

 ほどなく追加。ちょっとサイズアップ。

2(2匹目)

 今日は明らかに活性高いように感じる。そろそろ9時だがまだいけそう。

 3匹目は浅い場所でリーフの際近くでポッパーを着水直後に食って横っ走り。ふけていたラインがビューと水を切る。慌ててラインを回収してフッキングをガンガンかます。リーフの浅い方には突っ込まず横に回るようにしながら6キロドラグをジリジリと出していく。船で沖に誘導してくれているので両手を伸ばして竿をホールドして耐えていると、魚はうまく沖側に泳ぎ出した。寄せに入る。結構重い引きでラインはジワジワと出る。すぐに回収・挽回できるがなかなか浮いてはこない。慌てずにポンピングで少し巻いては少し出されを繰り返すうちに、巻く分が出される分より多くなり魚が浮き始める。

 見えてきた、今回の旅では一番のサイズだ。ガイドが口にギャフをかけて取り込んでくれた。なかなか良いサイズだ。

 15キロはあると思い量ってみると17キロ。長さは1m10cm。自己記録2位だ。良い感じでサイズアップしてきている。

3 17kg(3匹目)

17キロ

 さすがに少し疲れたので、水を飲みつつ取ったばかりの写真を確認する。このくらいのサイズであれば、なかなかに迫力はある。とりあえずサイトのトップ画面を飾る写真は確保できたかなとホッと一安心する。このまま20キロUPが獲れなくても、すでに惨敗から惜敗ぐらいには持ち込んだだろう。

 しかもまだ釣れそうな海の状況。17キロも当方の限界ファイトという感じではなかった。まだ、止まらないダッシュをスプール抑えて止めたり、それでも間に合わず竿を魚に向けてしまい綱引き勝負、等の対応策が必要な魚はかけていない。

 次こそそういう獲物がかかることを祈ってルアーを青のSポップに替えてキャストを再開する。

 9時過ぎてもまだまだ反応がある。10キロクラスだが4匹目、5匹目と順調にキャッチ。「巻いてからあわせ」ができているのか、魚のバイトの仕方が変わったのか、フロントフックが口の蝶番の所にかかるようになってきてバラシがしばらく無い。加えて、なぜか珊瑚の隆起が見えているような浅いエリアであってもラインブレイクがない。かかると魚は横に回り始め、船が沖に誘導するとうまく沖に向かって泳ぎだしてくれる。それでも潜れば根ズレしそうなものだが、珊瑚の隆起が比較的平坦なのだろうかブレイクはしそうな気配がない。とにかく体は連続キャッチでしんどくなってきたが、ファイト自体は慣れてきて上手くできている気がする。いつ来ても20キロ獲れそうな気分だ。

4(4匹目)

5(5匹目)

 6匹目はまあまあサイズの15キロ。7匹目は持つのがしんどいので甲板での写真のみで即リリース。8匹目も持つのがしんどいのでガイドに持ってもらう。

6(6匹目)

7(7匹目)

8(8匹目)

 11時を過ぎると、アタリが無くなった。しかし1日8匹はロウニンアジのキャッチ数自己記録である。なぜか理由は全くわからないが、今日の海は機嫌が良いようだ。前回までが異常事態で、むしろこれがクリスマス島の海の実力なのかもしれない。

 12時ころに昼ご飯を食べ休憩。13時から同じ海域の西の端のエリアを釣るが反応無く、休憩と共に移動する。

 14時頃から、移動後のポイントで始める。移動後のポイントは島の西側で朝移動中にベイトが跳ねるのが見えたりイルカが居たりして気になっていたポイントだ。

 5日目(5日目のポイントはこのへん?)

 投げ始めると鳥もやってきた。前回もいた頭が白くて体が黒、しっぽがとんがっているカツオドリと、灰色のボディーに首に黒い三日月、尾の先が丸いのがいてキャストするポッパーを追いかけたりポッピング中のポッパーを突こうとしたりしている。写真撮りたくもあるのだが、釣ってる最中によけいなことをするとチャンス逃しそうで、ほんの数分のことだが踏ん切りがつかない。

 もう日も高くあまり期待はしていないが、確率が低いとしても20キロのロウニンアジが出る可能性のある海域で投げることができる時間は貴重である。日本に帰ればやりたくてもなかなか次の機会までは遠いだろう。さすがに体はしんどいが明日は釣りにならなくても良いぐらいの気持ちだ。15時のストップフィッシングまで投げきるつもりで淡々とオッサンキャストを繰り返す。

 ポッパーは、意外と真昼に実績の高い黒系のルアーをということで、サーフェスブルGTの黒紫、バックテール付きを選択している。

 しばらく何の反応もない時間が続き、このまま終わりそうな雰囲気だった。

 しかし、14時半頃にパコンとかわいい音を立てて何か小型の魚のバイトがあった。ベイトか、潮か、時間か、海底地形か、何かはわからないけれど魚が食ってくる条件が、今ここにあるのは確からしい。ようするに一発来そうな感じがしていたので、気合いを入れ直して投げる。

 2投目か3投目か。

 それはドカンと突然横っ飛びにルアーを咥えた、20キロはありそうな魚体と背ビレが見えた。「嘘だろ!オレの釣りにこんな劇的な逆転劇なんて信じられん。」という感じだったが、しっかりフッキングをかます。直後、魚は首を振りながら横走りで水面直下を走り始める。「???」ロウニンアジではないようなひきっぷりだ。バラクーダかと思ったが、背ビレを見ているのでそれはない。船も追い始めてくれて、いぶかりながらも慎重にポンピングしながら距離をつめる。水面近くを寄ってきた。「TUNA〜!」ガイドと同時に叫んでいた。ボート1日目のキハダより明らかに大きいサイズでやはり20キロありそうだ。しかもかかりどころはラッキーにもリアが口でフロントが下顎にかかって、魚体はひっくり返りそうになって泳ぎづらそうにしている。「これは獲れる!」千載一遇のチャンス到来に興奮しまくるも、体はヘロヘロなので無駄な力を使わず、楽なフォームでポンピングでプレッシャーをかけていく。船の下についてから結構粘ったが、それでも前に釣った16キロよりおとなしいくらいで、何とか浮かせてガイドにギャフを入れてもらう。ギャフ入れ1度仕切り直したが、頭にがつんとギャフがはいり、木の棍棒でバッコンバッコンととどめを刺す。

とどめ(とどめ中)

 ガイドはギャフ片手で持ってひょいっと20キロありそうな魚体を船上にあげてくれる。パワフルなおっちゃんだ。ファイト時間は10〜15分程度か。

 結構背ビレが伸びていてかっこよかったので、片膝に乗せてキメて写真撮りたかったが、いかんせんこのオッサンは軟弱でファイト後ということもあり、しっぽ持ってポーズとるのが精一杯。しかしつかんで実感するが尾びれもでかいな。

 とりあえず写真撮って、長さを測る。尾叉長120cm、全長130cmというところ。200キロになる魚の20キロぐらいだが、当方にとってはとても価値ある大きな魚だ。相模湾でこてんぱんな目にあった仇をクリスマスでとったぜ。

 嬉しい。嬉しい。嬉しい。

キハダマグロ20キロUP(キハダマグロ20キロUP)

キハダ130センチ

 船艙にキハダを格納して、そろそろ3時なので終了かと思ったが、ガイドはまだ出るはずだからもうちょっと続けようと言ってくれた。

 投げ始めてわりとすぐに来た。後ろから追ってきて背ビレを出してしぶき蹴立ててバイトするが、1回空振りでその場でルアーを細かくポッピングさせていたら再度食ってきて超興奮。かかった。しかしすぐばれた。

 しかし、投げ続けていると、別個体だと思うが再度後ろから追ってきて、短くポッピングして誘ってやると体を見せて襲いかかってきて食ってかかった。フッキングをかまして、寄せにはいる。釣ったやつより引きが強いが、それでも船から視認できる位置までは比較的早く寄せてくることができた。サイズは釣ったのと同様だが今回は普通に口にかかっているだけで、元気にエンジン全開の船と併走している。マグロの巡航速度で泳がせていてはいつまでも走り続けられてしまう。とにかく船の下に魚を持ってこないと、スタンディングファイトでは力がかけにくい。ポンピングでプレッシャーをかけてみると、うまく潜る方向に泳ぎ始めた。船の下についてたぶん深さ10〜20mぐらいの所を余裕で泳いでいる。下は珊瑚礁だと思うが水深はそこそこあるので根ズレは気にしなくてよさそう。

 どうするか?慎重にいくなら時間をかけて弱らせてじっくりあげていくのだが、あいにくそんな長時間ファイトをかます体力は残っていそうにない。

 であれば、とにかくポンピングして、いやがってダッシュすることで疲れるのを狙うか、あげてきて水面近くに寄せていやがらせてダッシュさせて疲れさせるか、いずれにせよ勝負のポンピングでプレッシャーをかけて早期決着を狙うしかない。

 腕を伸ばしたまま、足腰を使って力強くポンピング。最初は巻いた分出されるだけで全然よってこないが、5分くらいするとジリジリと寄り始める。ダッシュさせずに浮かせられそうだ、ショックリーダーがみえ、ガイドがギャフを用意する。このまま一発でギャフ入れ決まってくれればそれに越したことはない。と安易なことを考えていたら、水面近くに来て突然、方向転換して船尾方向に猛然とダッシュ。ドラグ鳴らして突っ走る。船底にラインがこすれるのをかわそうとロッドを下に突っ込みうまくかわせた。と、思ったがリーダーがペラに巻いてしまいブレイク。さすがにまだ余力いっぱい残していたか。

 残念だが、今の当方では手堅く獲れるような魚ではなかったようだ。早期勝負にでて裏目に出たが仕方がない。ベストに近い手を尽くした感触があったことと、1尾ゲットしている余裕からか結構納得していた。

 ルアーをすっかりキハダ御用達ルアーの感があるサーフェスブルGTの黒紫はもう無かったので、青銀を結んでしばし投げるが、反応無く終了とした。かなり満足している。体も疲れた。あちこち痛い。

 

 港に戻る。

岬の鳥(港前の岬には鳥がいつも群れる)

 荷物を船から降ろし、トラックに積む。キハダを20キロばかりで量ってもらったら、しっぽがまだ地面についている状態で20キロ振り切った。ガイドは「50ポンドぐらいだと思うよ。」とのことだった。23キロというところか。

港にて(荷下ろし、ありがとう「弐号機」)

 トラックにゴトゴト揺られていくと、釣ったキハダが転がっているのが目に入る。あらためて結構でかいなと感激する。

荷台に乗せて

 前回のマグロはちょっとドナドナな気持ちだったが、今回はトラックに大漁旗突き立てて「兄弟船」でも流したい気分だ。

 ロウニンアジ狙いに来て目的外のキハダマグロで喜んでいるようでは、本命の大型には迫れないのかも知れない。そうであったとしても、当方は20キロもあるキハダが釣れたら喜ばずにはいられない。

 もしこれで喜ばないような精神構造なら「釣りなどやめてしまえ!」とさえ思う。20キロのマグロが、背ビレを出して水面しぶき上げながらルアーにドカンとバイトしてきて、それが面白くないなんて思うことがあるわけがない。

 

 トラックの上で今日の写真を見返してみる。目標の20キロUPのロウニンアジこそ釣れなかったが、それはまた次の機会に狙えばいい。今日は、集中力を保って投げ続け、勝負し続けることができた。8匹のロウニンアジを釣り、バラフエを釣り、キハダを3発かけて1匹仕留めた。上出来だと思う。

 思うように釣れていなかった昨日までも、勝負に出てクリスマス島に来たこと自体は全く後悔する気はなかったが、今日これだけ釣って、体調やメンタル面のコントロールを何とかはかりながら、精神的に弱く、体力も衰えたオッサンが結構やれたことに深く満足を感じている。オレはまだ、40過ぎても、ヨレヨレのオッサンでもやれると自信を持った。

 

 ホテルに帰り、ロウニンアジ用の道具を片付ける。GIANTばかり使っていたので、サブのイエローテール7fの出番はなかったが、予備ロッドがあるという安心感はいつも感じながら釣っていた。またいつかこいつとも良い釣りをしてみたい。GIANTはやっぱり良い竿だった。今時のGTロッドの基準からすれば「弱い」のかも知れないが、当方のような体力的に恵まれていない人間にとっては竿が曲がってショックを吸収してくれる分体に優しい扱いやすい竿だと思う。これからも共に釣り場をめぐっていきたい。PENNスピンフィッシャー7500ssは今回も問題なく快調だった。当方の腕力で扱う範囲ではノーマルで全く問題は生じないと感じている。これからもよろしく。

GTタックル(GTタックル)

 最重要の釣り具である、当方の体、洗面所の鏡で見ると、薄い胸にはあばらが浮いていてよくこんなヒョロい体で頑張ったモノである。腹筋ちゃんと割ってきたのは我ながら立派な準備だったと思う。あちこち痛いがもう一日あるので明日もよろしく頼む。

腹筋(セミヌード)

フェイタス(フェイタスにはお世話になった)

 

 充実感を感じつつ夕食を済ませ、外に出ると夕焼けがきれいだった。空は上の方から黒からネイビーブルー、その下地平線付近がオレンジに染まり、椰子の木のシルエットが南国ムードを醸し出している。コンデジではうまく撮れないから目に焼き付けておこうと思う。昨日まで下を向いてトボトボ歩き漫画に逃げていたのが嘘のような余裕の心境。

 夜また写真を眺めてから眠る。明日は何匹かボーンが釣れてくれればそれで良い。旅は終わりに向かっている。

 

 

<27日:トラックでの釣り3日目、釣り最終日>

 朝起きると、さすがに昨日の疲れが残っていて体もあちこち痛い。特に船上で踏ん張った両足の親指が痛く、右足の人差し指も爪の中が内出血している。まあ、今日はユルユルとやればいいさ。

 迎えに来たガイドは、「今日ボーンやった後、スナッパー釣りしていいかい?」と聞いてきた。ようするにガイドのお仕事しつつ「おかず」釣りをしても良いかという話である。

 ボーンをガリガリ釣りたい釣り人なら怒りそうな申し出だが、当方はスナッパー嫌いじゃない方だ。どうせ今日の体調では午後までは集中力も持つまい。彼等ジモティーの普段の釣りを見学させてもらうのも悪くはない。了解して出発する。途中ガイドの家によってスナッパー用のクーラーボックスをトラックに積む。

 

 道沿いの民家では、鳥が放し飼いされていたり豚がつながれていたりといった光景をよく見たが、ガイドさんちにも豚が居た。豚以外の鳥、犬、猫はつながれていなくて集落のあたりを自由に歩きまわってのんびりとした雰囲気を醸し出していた。

豚(豚)

アダンの木(アダンの木)

 2日目と同じ所から幹線道路を外れてラグーンへの道へ入っていく。途中塩分濃度濃そうな塩湖の湖岸を通ったのだが、風で泡だっていわゆる「波の花」が湖岸に雪のようにつもっていた。

波の花(波の花)

 今日は、トラックで浅瀬を渡ってポイントに向かう。

浅瀬を渡って

白い鳥

 ポイントに到着して、釣り始める。ラグーンとラグーンが硬い岩盤の丘を境に接していて所々丘が切れて水路になっている。その水路の流れ出しのフラットに立ち込んで魚を探す。一匹目はゴートフィッシュと呼ばれているヒメジの仲間。

ゴートフィッシュ(ゴートフィッシュ)

 次に結構良いのがかかってバッキングまで出た。フライは自作の小オレンジ。タックルは10番。わりとこれで満足してしまった感じ。

1尾目良型(1匹目良型)

 丘を越えて反対側のラグーンの長ーいサンドバーを攻めていく。フライはガイドにもらったモノを使う。オレンジのいかにもクリスマス島らしいパターン。今日は良く魚が見えた。ミルクフィシュを間違えることはあいかわらず多かったが、ガイドが見つけるのと同時ぐらいに見えることも結構あった。前回までは黒っぽい影のように見えていたが、今日は良く言われているように緑っぽく見えた。

 サンドバーを行って、帰ってきて、13匹まで数を伸ばす。うち1匹はバッキングまで引き出してくれた。

 道中、ガイドさんとボツボツ話しながら釣っていた。「またこの島に来たいか?」、「もちろん。できれば帰りたくないぐらいだけど、日本にはパートナーと仕事が待ってるからね。」。

ファイトファイトファイト

良型(釣果)

高く飛ぶ鳥

 丘の切れ目が2カ所あっていずれもその周辺には浅瀬ができていてそこを狙う。

切れ目

 一カ所目、60ありそうなのがウロウロしていて、フライを何度かチェンジしてやっと食わせたが、あわせ切れ。あわせたら竿をたててタメて切られないようにとJOSさんにアドバイスうけていたのでこれまでうまくいっていたが、今回はダッシュの始まるタイミングで遅れてカウンター気味にあわせてしまい3号フロロが結び目から切れた。

 次の切れ目、丘の上から水路のボーンを見つけて14匹目ゲット。水路を渡って対岸の浅瀬にまたも良いのを発見したが、キャストしたら着水が近すぎて逃げてしまった。

 どうにも締まらない、よく見えているしキャストも風の中結構できているのだが、釣りするうえで大事な何かもう一歩を埋める要素が自分から抜けてしまっているようだ。

 11時半近かったので、ボーン狙いは終了して、昼食後スナッパーを狙って適当に釣れたら釣りの全日程を終了することにした。

6日目ポイント(今日はこの辺?)

 昼食後のスナッパーフィッシングは、元珊瑚の岩盤が流れでえぐれているポイントで釣った。運転手さんはごっついスピニングロッドにリールなしでラインを結んでフライをつけたタックル。ガイドさんは当方の8番タックル、当方は引き続き10番で釣る。

おかず釣り(おかず釣り風景)

 いっぱい魚はいるのでバンバン釣れる。サイズは15センチ前後。3種類いて、当方はうち2種類釣った。

イエロースポット(スナッパー2種)

 10分ぐらいで飽きたので、フグを探したり、岩盤の上に魚を置いて鳥を呼び寄せて撮影などしていた。

寄ってきた鳥その2(やってきた鳥)

 2人はその間も大漁ペースで釣っていたようだ。今夜はご近所さんにも配って食べるのだろう。

 13時頃終了。

 帰り際、前を行くガイドさんの足下でびっくりしたちびフグがふくらんで浮かんで来た。捕まえて愛でる。この愛らしい魚が当方が、クリスマス島で最後に触った魚となった。

浮きフグちびフグ(ちびふぐ)

 14時頃ホテルに到着。ちょっと早いが左の股関節も痛み出していたし良い潮時だったと思う。よく遊んだ。

玄関(玄関)

 タックルを洗い、洗濯し、シャワーを浴び、明日の釣りの準備ではなく帰る準備をする。旅の終わりはいつも少し寂しい。

ロッドたち(タックル)アタリフライ(活躍フライ)

帰り支度(バック)

 

 

<28日〜27日帰国>

 28日クリスマス島からの帰りの便は朝7時台発と早いので5時にホテルを出る。朝食食ってる暇がなさそうなのでキャンセルしようとしたが、サンドイッチを作って持たせてくれた。ホテルの従業員さんも親切でいい人達だった。

 まだ暗い空港で出国手続きをして、待合室でサンドイッチ食べる。

 定刻出発でクリスマス島から離脱する。さようならクリスマス島。またいつかきっと。

 

 ホノルル空港で入国審査。イミグレの係のオッサンに、聞かれてクリスマス島に釣りに行ってきたと言ったら、興味を持たれてしまい「ボーンフィッシュ食べたか?」とか「ハワイではフィシュケーキ(なんじゃそりゃ?)にして食べるんだ」とかウダウダと長引いてしまった。トイレに行きたかったのに。

 

 JALの預け入れ荷物の係のおねいさんは不慣れな人だったのか、当方の荷物のクリスマス島出発の日付けが28日になっていることを不思議がっていた。日付変更線を越えて1日戻ったということを理解していないようだったので、「未来から来ました。」と言っておいた。ハワイでは今日は27日である。おねいさんはその後ベテランの人の説明を聞いて理解していたようだ。

 

 チェックインして、また、手荷物検査でめんどくさいチェックを抜けて、戻ってきましたホノルル空港。クリスマス島では土産など買う暇も場所も無かったので、同居人には形だけでも土産を持ち帰らねばと干しマンゴーなどというどうでもいいような土産を買ってみる。

 

 帰りの機中では、予定通りパイレーツオブカリビアンの続きを見た。面白かった。人魚がキュートだった。機内食食って、その他映画を2本ほどダラダラとみて28日夕方成田到着。同居人に結果概要をメール。成田エクスプレス、タクシーで帰宅。

 

 家にたどり着いて、ブログに帰国報告。いくつかいつもお邪魔している掲示板にただいまの挨拶。釣友ケン一に電話。

 

 面白かった。行って良かったと思う。

 

 こうして今回の旅は終わった。

 

 

<あとがき>

 釣りに「絶対」は無い、努力しようが実力があろうが、結果は魚の機嫌一つでどうとも転ぶし、時化て釣りにならないことすらある。それでも今回「絶対」に目標の魚を釣りたかった。釣ってハッピーエンドの釣行記を書きたかった。

 それはもちろん自分のためにというのはあるけれど、今回は、なぜか自分以外の人に釣ってその結果を見せたかった。下手くそが頑張って、長年の夢をあきらめず挑戦し結果を出すことができたと報告したかった。

 一生懸命釣りしているけれど、持って生まれた才能があるわけで無し、好きなだけ釣りに行ける環境にいるわけでなし、なかなか思うような結果に恵まれない釣り人は沢山いると思う。それでも釣りが好きな、自分と同じような釣り人に、自分の実力を見極めて、他人の釣った大物は気になるけれどひとまずほっておいて、自分の身の丈に相応の「大物」を心に常に泳がせて、それを釣るための努力や工夫を、限られた割ける時間の中で続けて、何度失敗してもあきらめず、思いを胸に挑戦するならば、その「努力は報われるんだ!」と声を大にして言ってあげたかった。それを釣果で示したかった。

 「努力は報われる」なんていうのは、釣りに限らず実際の世知辛い世の中では甘ちゃんの戯言にすぎない。そのぐらいのことは痛いほど分かっている。

 日々精一杯生きていた人々が津波にのまれた。不景気で一所懸命働いていた会社がつぶれる。頑張って勉強して大学でたけど仕事がない。世の中は不条理で非情だ。

 先行き不安な情勢に、努力してもしょうがないという気さえしてくる。

 それでも、今日、明日と生きていくためにはコツコツ努力して生きていくしかないと、要領よくは生きていけない自分のような人間は思っているはずである。

 そういう自分も含めた弱く平凡な人に、努力が報われるハッピーエンドもあるんだよ、夢や目標があるなら努力する価値はあるんだよ、と言ってあげたかった。それをデカイ魚の写真付きで示したかった。

 

 結果は何というか「ナマジらしい」というのか、目的の魚ではないキハダマグロで20キロを越えて喜んでしまうというオチがついて、まあなんというか「努力しても、目標は達成できないときもあるけど、それでも結構面白いことも起こったりするんだゼ。」というようなことを示すことになってしまった。まあそれはそれで有りといえば有りなのかなと思ったりもする。

 

 普通の勤め人で、遠征に行けるのは年1度か2度、健康面に不安も抱えているし、年くって体力の減退も著しい、精神的にも小心者で釣れないとすぐ落ち込む、センスもなければ最新鋭の道具も持っていない。そういう人間だからこそ、釣りの上手いプロには書けない釣行記が書けたんじゃないかと手前味噌ながら思うのである。

 

 今回の釣行について、長々と自身の胸の内も吐露して書いてみた。自分のような下手くそ釣り師にしか書けない仕事だと思って書いてみたところである。

 楽しんでいただけたなら幸いです。

 

 それでわ、またどこかの水辺で。

 

−おわり−

 

   2011年 後半  

 GTルアーとロウニンアジ用釣り具論 

 PENNスピンフィッシャー7500ssのベールスプリング交換 

  恵まれていない者、汝は幸福である 

 ボーンフィッシュはなぜ速いのか 

 HP

(2011.9、10)