PENNスピンフィッシャー総論 -偏屈なオッサンが世界の片隅でリールへの愛を語る-
スピンフィッシャーは、海のルアーフィッシングでは定番でした。「でした」と過去形で書かざるを得ないのが寂しいですが、最近は日本製の高性能リールに押しまくられてめっきり使っている人を見なくなり、釣り具屋の棚からも消えたり、端のほうで寂しそうにしていたりします。
代理店もペンリールジャパンがなくなり、今はエイテックという大物竿など作ってるメーカーが代理店となっています。トローリングや大物用の両軸受けリールであるぺンのインターナショナルやセネターはかわいがってもらえそうですが、スピンフィッシャーシリーズは新機種(番手表示が3桁に戻りました)も一部しか扱わないようで寂しい限りです。
もちろん今のスピニングリールの市場の傾向を見れば、スピンフィッシャーのニューモデルがガンガン売れるとは考えにくく、代理店としても積極的に日本市場で勝負しようとは思わないだろうということは理解できます。
しかし私は思うのです、「PENNスピンフィシャーはもう日本では時代遅れのリールなのか?」、「日本製の高性能リールや費用対効果に優れたリールにスピンフィッシャーは劣るのか?」、断じて「否!」と。
ちょっと流行からは外れてしまった感は否めないものの、流行なんて物事の本質とはあんまり関係ないことです。私はスピンフィッシャーは決して買って損のない価値のあるリールだと信じて疑いません。
むしろスピンフィッシャーを使い続けるということには、釣りを続ける上でかなりのメリットがあると考えているのです。10年使って分かる良さがあると思うのです。その良さについて微力ながら私が皆さんにお伝えすることにより、一人でも多くのスピンフィッシャーファンが生まれてくれるように願っています。
皆さんだまされたと思って是非スピンフィッシャーを買って10年使ってみてください。
なぜスピンフィッシャーファンを私が増やそうとしているのかはおいおい書きたいと思いますが、これから私が考えるPENNスピンフィシャーの魅力、利点のそれぞれについて具体的に説明し考えを書いてみたいと思います。文字ばかりでかなりの長文ですのでお時間ある時にどうぞ。
私が考えるスピンフィッシャーの魅力、利点は大まかに分けると、
① 必要充分な堅牢性、使い勝手のよさ
② メンテナンスのしやすさと楽しさ
③ 相応の価格
④ モデルチェンジのサイクルが長い
⑤ 格好良さ(雰囲気や過去の実績など数値化できない魅力)
です。
まず、1点目の「必要充分な堅牢性と使い勝手の良さ」についてです。
10年以上昔であれば、高機能な日本製リールに対してスピンフィッシャーは「丈夫である」ということで、ハードに使われる海用リールとして確固たる地位とシェアを持っていました。
スピンフィッシャーユーザーは日本製リールに対して「瞬間逆転防止機構なんて壊れる箇所が増えるだけじゃねーか。」、「ベアリングの数ばかりむやみに増やしやがって、そのくせ潮かぶったらキコキコいいはじめるようじゃ使えねー!」、「所詮いいのは店頭で回したときだけだね。」とさんざんこきおろしていたものです。
しかしながら、現代のメイドインジャパンの高級リールをみるとどうでしょう。
精度の良さや高機能はもとより、堅牢さにおいてもボディーに丈夫な金属素材を使用し、ギヤなどパーツもペンが一部真鍮(ブラス)っぽい素材なのに対し、ステンレス系?の高強度の素材を使用していて、メーカー発表のデータを見る限り堅牢さにおいても驚くほどの高いレベルにあると考えざるを得ません。
少なくともスピンフィッシャーより堅牢であるということを認めるのは悔しいけど仕方ないようです。
よっぽど安いクラスのものでない限り最近の日本製リールは丈夫です。最近すぐに壊れたという悪評はとんと聞きません。
実際、一緒に釣りに行く相方には初心者向けクラスの日本製リールをあてがっていましたが、5年くらいメンテナンスもせずに全く問題なく使用できています。
じゃあスピンフィッシャーはダメなのか?というとそうではないと思います。
堅牢さは相変わらず信用できるレベルにあると思います。
私が船でのシイラ釣りや岸からジグやでかいミノーを投げまくる釣りに多用していたスピンフィッシャー5500SSは大きな不都合が生じるまで、具体的にはリール中心の軸周りのパーツが壊れるまで10年かかりました。
ベールアームのスプリングの定期的な交換などはしていましたが、10年酷使できるリールというのは充分堅牢だと思います。
この5500SSより小さいリールを使用する釣り、船でのシイラ釣りから、普段良くやるシーバス釣りなどでペンリールの堅牢性は全く問題ないレベルにあります。
使い勝手もこのクラスは本体がグラファイト樹脂系の素材であることからそこそこ軽く(シリーズ初代は金属製です)、新型では改良されていますが、多少遊びがあるのも別に慣れていれば気になることはありません。ドラグ性能も充分スムーズで信用できます。
ハッキリいってこの手の釣りにはそんなに高機能なリールも高強度のリールも実用上は必要ないだろうというのが正直なところです。
別に最高レベルの高性能リールを使っても問題ないですが、スーパーに買い物に行くのにレースに使うような車使わなくても、コンパクトカーで充分じゃないかと思うのと同様普通のリールで良いんじゃないのと思うのです。
まあ、渋滞しまくる狭い町中で見栄張ってでかいエンジンの高級車乗るようなご趣味の人もいますから人それぞれかもしれませんが、私はそう思うのです。
次に6500SS以上の大きなリールについて堅牢性と使い勝手を考えてみます。
このクラスのリールは、メタルジグを使ったジギングや馬鹿でかいポッパーやペンシルを投げまくる釣りに使われます。対象となる魚はマグロやロウニンアジ、カンパチなど力のある海の魚が多く、当然リールにも堅牢さがもとめられます。
スピンフィッシャーシリーズもこのクラスには金属製の本体を採用しており、今も昔からの定評に違わず堅牢なリールであるといって良いと思います。
ただ、よくスピンフィッシャーシリーズの改造パーツとしてハンドルが売られており、これがなぜ必要なのか良く理解できなかったのですが、ある時入手した中古の9500SSを分解していて納得しました。ハンドルを止めているピンの部分がハンドルを巻き取る力が強くかかることによって曲がることがあるようです。以前の持ち主がどんな力持ちだったのか分かりませんが、確かに曲がってました。
非力な私が使っている分にはそういうことはないので純正のハンドルを使っていますが、力自慢の人が使う場合はハンドルを交換した方が良いかもしれません。
次に使い勝手についてですが、よく問題になるのは逆転防止機構の遊びが大きいのでジギングやポッピングの時にガチャガチャとうるさいことです。
まあ慣れてしまえばどうということ無いですが、気になる場合は新型を買えば遊びの問題は解決されています。
私は瞬間的な逆転防止機構は「よく壊れる」ということを昔に吹き込まれたせいで付いて無い方が好きです。ジギング時のガチャガチャいう音も調子よくしゃくれているとリズミカルに聞こえてきてオツなもんです。
とあるホームページにスピンフィッシャーはジギングで使うと、遊びのぶんガシャンガシャンと逆転してその衝撃ですぐに逆転防止のストッパー部分が壊れると言い切ってあり驚きました。
今までそんな経験は一度もないし、聞いたこともありません。確かに負荷がかかる場所なので長期的には壊れても不思議ではないので、私は念のため逆転防止のギアとストッパーは部品を予備で持っておくようにはしています。
しかし、本当に使ってすぐに壊れた事例があるのでしょうか?おそらく、釣具屋が高いリールを売りたくてホラ吹いたのを鵜呑みにしたのだと推測していますが、そんなのまともに信じるなんて素人丸出しでかっこわるいナーと思うと同時に、我が愛するスピンフィッシャーを貶められて怒りに震えました。
ちょっと海のルアーをかじった人なら、私のようなヘタクソがどうこういうより、チャーマスこと北村秀行氏やフィッシャーマンの鈴木文夫氏もその昔はスピンフィッシャーの9500SSでガンガンでっかい獲物を仕留めていたことを思い出していただき、そんな簡単に壊れる代物ではないと納得いただけるでしょう。
次にドラグですが、私のような普通レベルの釣り人には特に問題ないでしょう。ドラグテンションを10kg以上かけて強引に魚を止めてしまう場合等特殊な使い方をする場合には、純正パーツではそこまでドラグが締まらないので、マニアックな釣具屋で売っているような強化パーツを組んでやる必要があるかもしれません。
スピンフィッシャーが日本製高級リールにどうしても勝てない部分は、「軽い」ということかもしれません。
使っているときの道具の重さは、竿やルアーも含めたバランスなどに大きく影響され、リール自体の自重の違いは使用上は思ったほど気にならないものなのです。しかし、リールの精度に起因するのだと思いますが巻き取りの軽さはさすがにメイドインジャパンはすばらしい。店頭でクルクル回すだけでも認めざるを得ません。
私はちょっとさわった程度なのでハードユーザーからの聞きかじりですが、1日中100mを超えるような深さにジグを沈めてしゃくる行為を繰り返すとなると、巻くのが軽くて楽なのは大変助かるとのことです。
たしかに、ジギングのしんどさを考えると巻き取りの軽さは大きな魅力かもしれません。
道具は、なるべく良いのを使った方がいいに決まっているので、じゃあ大きいルアー用のスピニングリールは日本製の高級リールを使うべきだということになりそうですが、性能だけをみて単純にそうとも割り切れないところがあるので私はスピンフィッシャーを使っているのです。
2点目以降で書きますが、単なる性能だけではない10年使うことを前提とした総合点で考え始めると、「やっぱりスピンフィッシャー」、「多少重いのは体を鍛えて対応する」という選択肢も出てくるのです。
2点目の「メンテナンスのしやすさと楽しさ」についてですが、今の日本製リールのほとんどは、基本メンテナンスフリーで定期的なメーカーメンテナンスをお勧めするということになっています。自分でメンテナンスしようにも造りが複雑すぎて私のような素人には分解不能です。
定期的にメーカーメンテナンスを受けていればほとんど故障することなく実用上問題ないはずですが、実際にはメンテナンスのタイミングはつかみにくく、ついついどこか支障が出るまで使ってしまい、ブチ壊れて初めて釣具屋さんに持って行くということになりがちです。
釣具屋さんに持って行くとメーカーさんに出しますということで1月程度の期間が修理にかかります。
その間釣りしないわけにも行かないので結局もう一台買うことになったりして困ります。
スピンフィッシャーでもブチ壊れて修理に出さなければならない状態にはなりますが、多少の故障はパーツの取り寄せで何とかなります。代理店がペンリールジャパンの時には在庫があれば1週間以内に取り寄せ可能で次の釣行に間に合ってました。
エイテックに代理店が変わってからも1週間とはいきませんが充分早いです。
しかもスピンフィッシャーの場合故障するパーツは、だんだん弱くなってくるベールアームのスプリングがほとんどで、常備しておけば調子悪くなっても自分ですぐ直せます。
私は最近は中古で安く手にいれたスピンフィッシャーをスペア兼部品取り用に何台かキープしたりもしていますので、リールが故障して釣りに行けないということは全くありません。
それから、ブチ壊れるときの前兆についてですが、相方が人様からもらってきて愛用していた日本製のそこそこ高級なリールは、前回釣行まで問題なく動いていたにもかかわらず、遠征先でいきなり回らなくなりました。
メーカーに修理に出したら、一月後、ギアの摩耗が原因ということで部品交換で返ってきました。
前回まで調子よかったのにいきなり動かなくなるというのは、精度が高すぎて遊びが足らんのではないかと疑っています。1例しかみていないので推測の域を出ませんがどうなんでしょうか?
スピンフィッシャーの場合、多少ギアが摩耗してもゴロゴロいいながら回っています。
まだメインギアを交換しなければならない程使ったリールはありません。実用上充分丈夫なギアだと思います。
私は日本製リールより巻き取りにスムーズさが無い程度のことは我慢できますし、釣りする上ではそんなに困りません。むしろいきなり前兆もなく壊れられると困ってしまいます。
壊れたときに、簡単に直せるような故障なら自分で直せる。普段からグリスアップや注油などの手入れができるというのは、実用的な面のほかに「リールいじっていると楽しい」という面でも愛着がもてて良いリールだと思っています。
どうも、中を開いてみるわけにはいかないけれど、すごいメカが詰まっていて理屈は分からんがすごく高性能というモノが私は苦手なようです。信用できません。その最たるモノがパソコンで無いと仕事にならないぐらいに困るのに、ちょっとした不都合が素人では全く解決できずものすごい支障を生じるというところが全くもって気にいらないです。
その反対の安心感、どういう仕組みで機能しているのか分解バラバラにして理解していることが私にとってはとても重要なことなのです。私は道具を信頼するうえでそういうことが根っこの部分にあると感じています。
次に3点目の「相応の価格」という点ですが、スピンフィッシャーはそう安いリールではないです。
実売で2万円前後の価格ですから、まあ中級程度の価格です。ずっと値段変わってませんから信じがたいかもしれませんが昔は高級なリールだった時代もあります。
同程度の値段の今の日本製リールはかなり高性能です。単純比較するとスピンフィッシャーは割高感がありますが、それでも長年使えることの利点などを総合的に判断するとまあまあ妥当な価格かなと納得できます。
その倍以上するような価格のリールは今時珍しくないですが、それを使えば倍サカナが釣れるか、倍快適に釣りができるかというとそこまで差は無いのではないかと思っています。まあ、買う人が納得すればべつに問題ない話ですが、私は自分の力量に不相応だったり実際の釣りに必要な以上の機能を備えていたりする高級な道具に魅力を感じないということです。
オレごときが、10万円もするリール使っていたら格好悪いのではないかという変な美意識があったりします。
逆にいうと年も食ったし、スピンフィッシャーのような渋いリールがボチボチ似合うようになってきたかなと思ったりもします。
それから見逃されがちですが、実用上の問題として価格面でスピンフィッシャーが良い点として替スプールがだいたい5千円以下というリーズナブルな値段で手にはいることがあります。
替スプールの数はあればあるほど便利です。太さや素材の違うラインを巻いた替スプールをいくつも用意しておけば、リール一つでいろんな釣りに対応できます。
釣り場でもラインブレイクやライントラブルの際にいちいちシステム組み直していれば良い時間帯を逃してしまいますが、替スプールをいくつか用意しておけばスプールごと交換して素早く対応できます。
いろんな釣りを長い期間楽しむ釣り人にとってスピンフィッシャーは値段相応かそれ以上の価値があると思います。
最近は中古だと半額以下で手にはいることもあります。多少不都合あるようなジャンク扱いのものでも、パーツの入手が簡単なのでチョチョイと直して結構お得な買い物になったこともあります。
同型のリールを複数台持っていると、故障時のスペアにも使えますし、船に竿を何本か持ち込むときに、同じ型のリールを付けておいてスペアスプールを共用できる等々非常に便利に使えます。
次に4点目の「モデルチェンジのサイクルが長い」ことについてですが、モデルチェンジのサイクルが短いと、せっかく手に馴染んだお気に入りのリールが短い期間で使えなくなってしまうことが非常に残念で不都合だと思います。
基本的に修理は生産中止から10年受け付けてくれるはずでその間パーツもメーカーが保存しているのですが、本体自体はモデルチェンジすると中古市場で探すしか入手できなくなります。また、ありがちなのですが、メーカー自体が潰れてしまうと10年の修理もおぼつかなくなります。
全面的なモデルチェンジがあれば仕方ないので買い換えることになり、メーカーとしてはそれを狙っている部分もあると思うのですが、10年馴染んだリールが次のモデルではガラッと変わっていて使い勝手も見た目も違ってしまうとなると、いったい次は何を買えば良いんだか悩んでしまいます。
モデルチェンジしなければならないほどリールの機能に関して釣り場で困っている、改良を求めているということはあんまり無いのではないかと思います。性能が良くなっていくことに反対するわけではないですが、スタンダードなモデルはなるべく変更点を減らしてパーツも共有してくれると一生使えるのになと思います。実際にはほとんどの釣りの場面で10年前の道具でも不都合無く釣れるのではないでしょうか。
その点スピンフィッシャーのモデルチェンジの期間の長さと、基本設計を大きく変えず共有できるパーツは共有する方針は真に顧客を大事にする姿勢だと思います。
スピンフィッシャーの今に直接つながる最初のモデルは、おそらく新型からみて2代前のアウトスプールで750SSというように3桁の番号が付いたシリーズだと思います。
そのへんの歴史的な話には疎いのですが、初代は全シリーズ金属製で550SSあたりが、日本の海のルアー黎明期にはシーバスにシイラにと活躍していて、ある種ステータスシンボルでした。
その次の2代目モデルが、1990年代半ばぐらいに登場して4300SSというように4桁の番号をもち中小型機種がグラファイトボディーのものです。途中ハンドルが変更になったり、ラインローラーにベアリングが入ったジャパンモデルが出たりとマイナーチェンジを経ながらも、今も日本の釣具屋では普通このモデルが置いてあります。一番なじみ深いシリーズではないでしょうか。
このシリーズと、初代はかなりの部分のパーツが共有できます、スペアスプールが共有できるのが最も便利な点です。日本のリールのスプールが長くなったり、浅溝になったり元に戻ったりするのを横目にスタンダードな形のまま続いています。使用上特に不都合感じません。
また550SSはベールアームのスプリングが特殊な形ですが、他のモデルはスプリングが共有できて修理用にストックしておくにも便利です。
ハンドルについてはマイナーチェンジがあった部分なので、できない場合もありますが共有できることも多いです。
7の付く大型のモデルなど外見ほとんど同じなので、内部も全く同じかと思うと内部構造はレイアウトも若干変更されていたりして、改良すべきところは変えていることがうかがえます。
そして3代目にあたる最新のモデルは、番号が3桁に戻り中小型のグラファイトボディーのものには450SSgというようにgが、金属ボディーのものにはメタルのmが付けられています。
たしか2005年くらいからアメリカ本社のホームページ等に出始めて、2代目としばらく並行して売られていて、何だろこれ?とその位置づけを不思議に思っていたのですが後継機でした。2007年になって日本の釣具屋でも扱うところが出始め、アメリカの釣具通販サイトからは2代目が姿を消しました。
さすがに、10年ぶりぐらいのモデルチェンジで機能面でも多くの変更点があるようなので、私もしばらくは2代目を使うとしても、次はスピンフィッシャーではなく別のリールを探さないとだめかなと寂しく思っていましたが、なんと3代目も小さい2モデルを除きスペアスプール共用できるということで、今までそろえてきた替スプールふくめたリール体制を引き続き使用しながら徐々にバトンタッチして行けそうです。これで私は残りの釣り人生、スピニングリールについてはスピンフィッシャーを信じて使っていればいいのだなと確信しました。
3代目新型は、ハンドル逆転のクラッチが省略されたり(逆転防止機構をローターそのものに付けているので逆転は構造的にできない)、メイドインチャイナになっていたりとコスト削減が図られている部分も目立ちますが、機能的には逆転防止機構が今時風に遊びのほとんど無いものになっていたり、良く交換が必要になるベールアームのスプリングが耐久性のあるバネ状のものになっていたりとかなり頑張った感じがする仕様となっています。
2台ほど買ってみました。使い心地は今のところ問題ありません。ジギングしてもガチャガチャ鳴らないのは寂しいような気もしますが快調です。しばらく使ってみて問題なければ、2代目軍団のくたびれたやつから引退させて代替わりさせたいと思っています。
おそらく、新型の評価は、このモデルの肝と私がみている逆転防止機構の精度と耐久性、それから中国製になったことによるばらつきなどがでないことできまると思っています。
ここで問題になるのが、新型がなかなか日本では手に入れにくいということです。
まあ、アメリカから通販で手にはいるのですが、パーツや替えスプールは扱っているところも少なくいちいち個人輸入するのは面倒です(本体はメジャーなカベラスとバスプロショップスでも入手可能、パーツは「Scott's Bait & Tackle」というところで扱ってます)。
両軸受けの大型リールでは確固たるシェアがあるPENNなので、日本の中小メーカーのように潰れて無くなる心配はしなくて良いと信じますが、日本で手に入りにくいのは面倒です。
私が、スピンフィッシャーファンを一人でも増やしたい、とこんな文章を書いているのも、このすばらしいリールのことを良く知ってもらいたいというスピンフィッシャーへの愛情の他に、日本で人気が出ることにより取扱店が増えてパーツなどが手に入りやすくなると便利だからという下心があるのです。
皆さん是非買ってください。新型売ってなかったら、店の人に取り扱ってくれるようにプレッシャーをかけてください。ひとつそこのところよろしくお願いします。
最後に「格好良さ」ですが、まあ好みの問題といったらそれまでですが、趣味の世界である釣りにおいては重要な問題でもあります。
何が格好いいって聞かれても困るのですが、少なくとも流行を追ってコロコロとモデルチェンジするようにみえるリールを横目に、自信満々で我が道を行く姿勢は格好良いと思います。
マイナーチェンジならいざ知らず、基本設定まで短い期間で変えなければいけないということは、しっかりとした設計思想なりビジョンがなかったようにみえます。
単に売るために新しい機能を付加して設計しましたというような軽薄なモデルチェンジにはつきあいたくないと思います。
割と日本人は新しい物好きで、ちょっとでも改良されればその方が望ましいと感じるというか人気が出るように思えるので、私のような偏屈な人間は少数派かもしれません。
メーカーもお客が望むから、期待に応えてそういう製品を精一杯開発しているのが実態なのでしょう。
コロコロとモデルチェンジするリールが好きでないといっても、逆に機能的に支障を生じるくらい古くなってくると我慢できなくなります。これもどこまで我慢するかは全く個人的な感覚だと思いますが、私はインスプールのリールは全くだめです。扱えません。
カージナルやミッチェルのインスプールのリールは、なかなかデザイン的にもシックで良いなと思わないでもないのですが、私はキャスト時に左手でラインの出を微調整してそのままベールアームを左手で起こすやり方を取っているので、右手の人差し指でラインの出を調節してハンドルを回してベールアームを起こすことを前提としたインスプールのリールは使用上問題が生じます。無理にベールアームを左手で起こすとインスプールのリールの多くは壊れてしまうのです。
一般的にはスピニングリールのキャスト時の糸の出の調整は右手の人差し指でやるものですが、大きいリールだと人差し指が届かずそうもいかないので、左手の指全体で包むようにして行います。私は大きいリールと小さいリールとでやり方を変えられるほど器用ではなかったので小さいリールでも左手で調整しています。
ということで、アウトスプールのリールでかつスタンダードな設計を有し長く使えるスピンフィッシャーに落ち着いたというわけです。
見た目も昔は金ぴかで派手な気がしましたが、今みるとむしろクラシカルな黒いボディーにスプールが真鍮色というのは渋くて良いと感じます。新型も基本的に似たような見た目の味わいを持っていて、性能の評価はこれからとしてもデザインはなかなかに良いのではないかと思っています。旧シリーズ愛用者にもそれほど違和感ないのではないでしょうか。最初は今一なデザインかなと思いましたが、使い始めてすぐになじめました。
おそらくアメリカでも釣り好きのオッサンたちが、スピンフィッシャーを買って10年単位でぼろぼろになるまで使い込んでいるのではないかと想像するのですが、そういう使い方がしっくりと似合うこのリールの個性が好きです。
それから、やはり日本の海のルアーの黎明期に活躍したリールなのでその強い印象があり、私にはどうにも格好良いリールとして感じられるのです。何というか海の男の無骨な道具という感じが良いんですよね。
今の若い人には、日本製のハイテクリールこそが海に立ち向かう象徴と感じられているのかもしれません。それはそれで当然のことかと思いますが、そういうリールに飽きたらスピンフィッシャーもいいですよとお勧めしておきたいです。
ここまで、スピンフィッシャー全般について書いてきましたが、別途個々のモデルについても、私の思い出や使い方、あわせる竿等について書いていきたいと思います。
別に読みたくもないような釣果自慢の部分もあるかと思いますが、そこは釣り人の性で書かずにいられないということでご容赦いただきたいと思います。
(2008.2)
○2012年12月2日のブログから転載
スピンフィッシャーお前もか!

休憩休憩、缶コーヒー買ってきたよ!俺キリマンね。みんなも選んでね、ロンギヌスは?コナ?はいコナね。アルビヌスはいつものブルマンね。じゃあ最後残ったから、ブルータスお前モカ。
聞いたときは面白いネタだと思ったのだが文字にしてみるとそれほどでもない。まあそんなことはどうでもいい。
どうでも良くないのが、PENNスピンフィッシャーのモデルチェンジである。
釣り雑誌も買わないし、新しい道具にもあまり興味がないので、スピンフィッシャーの新しいシリーズ「V」が出るという事も、教えていただいて初めて知ったぐらいなのだが、「V」はスペアスプールの互換性もないし全くの別物のリールのようなので、漠然と3桁SSG・SSMシリーズは引き続き、メイドインチャイナの安価なベーシック機として続くんだろうなと思っていた。
シーバスやら出張やら渓流やらに使っている430SSGは、使用頻度は顛末記の写真をチェックしていただければ分かると思うが、5シーズンを使い倒したといって良いと思うけれど、普段はラインローラー、ハンドルノブ、メインシャフトへの注油と、1度逆転防止の油が切れたので分解注油を行っただけの簡単メンテで全く問題無く使用できているので、実釣における耐久性も問題無いと判断し、総合評価で「合格」を与えて、残りの釣り人生においてこのサイズのリールはSSGで行こうと決めて、正規に輸入されていないサイズなので、米国釣り具通販大手のバスプロショップスに発注をかけようとしたら、2012年生産終了ですでに在庫無し状態であった。
ようするに、「V」はフルモデルチェンジしたスピンフィッシャーの後継機で、今回SSG・SSMのモデルは6年程度でマイナーチェンジもほとんど無いまま生産終了してしまったということである。
売れなかったのだろうという事は想像に難くないが、当方はリールというのはメーカーの研究室でいくら良い数値が出たとしても、実釣では研究室では思いもしていないような使われ方をしたり、落としたり潮かぶったりという複合的な要素により様々な不都合が生じるので、そういう釣り人が壊したリールのデータをフィードバックしたマイナーチェンジで、実釣上のバランスの取れたリールとして仕上げていくものだと思っている。実験室でクルクル回ったときのデータに基づくスペックなど糞ほども役にたたん。
そのことは、最初ステラが出たときの評判の悪さ、トーナメントにインフィニットが搭載された初期のぶっ壊れまくった事例などにも現れている。最初からダイワ・シマノのハイスペックモデルも使えるリールだったわけではないという事実。
そういう意味で、4桁スピンフィッシャーはその前の3桁スピンフィッシャーから大きく設計を受け継いで、細かいマイナーチェンジを繰り返しながら最終的にはSSJシリーズという形にたどり着いており、当方のメインリールはやっぱり4桁スピンフィッシャーで良いんだと思っている。実績の積み上げが半端じゃない「たたきあげ」のリールだと思う。
で、430SSGだが、やっと耐久性も合格と判断できて少なくとも5年は使えるリールだし、たぶんパーツ交換しながらあと10年くらい持つかも知れないという感触がもてたので、買おうと思ったのにモデルチェンジである。最近のリールはどこもモデルチェンジ早いけど、それってようするに今の市場には「5年間実釣で耐久性が試されたリールが無い」ということなんだろう。よくそんないつ壊れるかわからん危なっかしいリールを使う気になるな、と思うのは当方だけだろうか。軽量が売りのリールってモデルチェンジする頃には「ちゃんと壊れる」ように作ってあるんじゃないか、というのはゲスの勘ぐりだろうか?
実は、めちゃくちゃなロングランで昔から売っているスピニングがあることは知っている。意外に思うかも知れないがダイワである。アメリカ市場用だと思うが日本でウィスカートーナメントSSという名で売っていたのと同型らしいリールがSSトーナメントの名前で今でもバスプロショップスのカタログに載り続けている。小型リールをどうするかで当方がスピンフィッシャーと迷った候補のリールでもあった。どちらを選んでいても正解だったのかも知れない。アメリカ人はこういううわついていないベーシック機を買い支えるぐらいには道具を見る目があると思うとちょっと尊敬する。
SSトーナメント買っても良いかなと思ったが、やっぱりスピンフィッシャーが好きなので、今回、430SSGはネット店舗だけで小商いしているような釣り具輸入元にお願いして、アメリカの問屋に問い合わせてもらって2台確保した。
SSG箱売りじゃなくて、ブリスターパックというのだと思うが、安パッチい感じになってしまっているが、まあその程度の気安いリールである。
末永くお付き合いよろしくお願いします。
○2012年12月22日(土)のブログから転載
スピンフィッシャーを普及させるのが、当方がサイトを立ち上げた目的の一つなので、私の愛するスピンフィッシャーが生産を終えた今、サイトはたたんでも良いのかもと思わなくもないが、週末ごとの釣りの楽しさを「釣りって楽しいんだゼ」ということを伝えるのも重要な目的だったので、週末顛末記はこれからも続いていく予定です。
(2013.3.28)
○2016年3月6日(日)のブログから転載
最近、周りの釣り人二人から別々にPENNスピンフィッシャーのパーツ取り寄せについて相談があり、既に市場には第5世代の「V」が出ている時代に第3世代のパーツはさすがにもう正規輸入代理店を引き継いでいるピュァフィッシングジャパンにも在庫が無いのが多いようで、ではいっちょ「
Scott’s Bait and Tackle」で共同購入しましょうかということになった。
アメリカ本国のPENNのパーツを通販で扱っているお店で、過去すべてのPENNのリールについてパーツリストがあり、まあ古いリールについてはさすがに欠品となっているパーツも多いが、80年代半ばぐらいに生まれた第3世代(インスプールの700番台のを第2世代、3桁と4桁のSSのつくモデルを第3世代と定義)のパーツぐらいはまだまだ平気でストックしていて、東洋の端っこの島国からでもネットでポチッとすると、チマチマと小袋に入れたパーツをジップロックとかにまとめて送ってくれる。アメリカの郵便のUSPSとか使って航空便で来るので海外発送には送料それなりにかかるが、金で済むのならお安い御用で実にありがたく頼りになる。
今回私が購入を予定しているのは、4400ss、4500ss、5500ssのベールアームスプリングやドラグワッシャー等の消耗品といって良いパーツを中心にその他こまごまと。
90年代初頭に生まれた第3世代後半の4桁スピンフィッシャー全サイズを保有している人間としては、全サイズの消耗品的パーツを持っておきたいところで、金属ボディーの7500ssとかの分はすでに十分なストックがあったのだけど、グラファイトボディーの5500ssより小さいサイズの分を買い増ししておこうという感じである。
と聞くと、全サイズのチマチマとしたパーツをそれぞれ買うなんてめんどくさそうに感じるかもしれないが、実はそうはならないのである。
そこがPENNの偉いところでもあるのだが、消耗品的パーツをはじめ多くのパーツが共通なのである。極端な話、5500ssから4400ssはボディーとかメインギアといったサイズを変えていることによって違うのが当たり前の部分以外はかなりの部分がパーツ共通なのである。5500ssの展開図とかをみてパーツナンバーを確認すると「10-440」というようにサイズ違いはもとより第3世代初期の3桁時代から共通のパーツを使い続けているのが見て取れる。中には「56-710」とか700番台の第2世代から引き継いでいるらしいパーツも見受けられる。
というような自分でリールをメンテする人間にとってありがたい設計は、本来は専用設計を避けて共通パーツを使い回すことによって製造やら修理のコストを下げたいという造る側の都合だったのだと思うが、そういう優れた設計で「修理がしやすい」ことがベースにあって、未だに20年以上も前の設計のリールのパーツが手に入るというような異様な長寿命リールを生み出しているのだと思う。みんなが自分で直して使ってるリールだからパーツを売る商売が成り立つのだろう。
似たような長寿命のリールにはベイトリールの世界ではABU社アンバサダーがある。こちらのパーツは「プロショップ藤岡」とかで結構手に入るし、強化パーツとかを造っている小規模工房も結構ある。ABUは日本じゃPENNと比べるべくもない人気リールなのでパーツ商売は日本でも十分成り立つようである。
今時のメイドインジャパンのリールは製造中止から数年しかパーツがメーカーに無いそうである。5年しないうちにモデルチェンジで、そもそも共通パーツもくそも素人がバラして修繕するようにはなっていないリールについて、パーツを確保してまで使おうと考える人はあんまりいないだろうってことで、パーツ取っておく必要性も薄いのだろう。次のモデルがでるまで使って壊れたらおさらばよという割り切りもあるんだろうけど、あまりにもそれじゃあ寂しくないかい?と昭和の男は思うのである。
というような状況を鑑みて、今売っている最新のメイドインジャパンのリールを買うより、20年以上前の設計の中古のPENNを買う方が、今後10年とかのパーツの手に入りやすさは、それでもむしろ古物PENNが勝ってそうな感触なのである。
あんまり古いリールを他人様に薦めても仕方ないのかなと思っていたところだが、割と「自分でメンテするなら今でも中古のPENN買って損はないですよ」と言って良いような状況があり、第3世代のスピンフィッシャー入手しようとしている人に「今時やめた方が良いっスよ」などとはいわず、同好の士が増えるのを喜んでいるところである。

パーツの相談があった2人のうち1人はカヤック一緒に乗ったりしているY君で、近々南の島に栄転が決まっているのだが、私と一緒にロウニンアジの釣りを始めた共通の先輩から、「デカいロウニンアジを釣ってこい」と勅命を受けスピンフィッシャー7500ssとフィッシャーマンのGIANTを受け継いだところである。実はうちの同居人も借りてGT釣りまくったという由緒あるタックルだが、また若い釣り人に受け継がれて新たな物語が紡ぎ出されていくだろうと思うと非常に喜ばしい。
PENNとかABUとか20年を超えて使える道具たちは、たとえは親から子へと世代を超えて受け継がれていくのに値する変わらぬ価値があると感じているところである。
フライタックルなんかは構造シンプルで、それこそ100年前の骨董的なリールとかでも今でも使えて、親子3代で使ってるなんてのもあり得るんだが、そういうのって最新鋭のハイテク満載の道具よりも格好いいと思うのは、私のような道具フェチの偏屈な男だけだろうか。
たとえば、80年代初期のアンバサダーを父親にもらって使ってるなんていうのは、現実に日本でもあり得る話だと思うけど、80年代初期のアンバサダーを私が今少年でそれを譲り受けて使ってみたとしたら、その素晴らしい贈り物に最大限の感謝を捧げることになるだろうということが容易に想像できる。
ぶっちゃけ20年も30年も使えてしまう道具を造ってしまったら釣り具メーカーとしては大失敗で、壊れないから道具が売れなくなってしまうというのはよく分かる。よく分かるんだけど、全部のメーカーの全部のモデルが5年もしないうちにモデルチェンジしなきゃならないのか?と大いに疑問に思うしいつもグチグチ書いているが不満にも思っている。
ダイワが実はアメリカ市場ではトーナメントSSを長年売り続けていたように、「こいつは多少売れなくても売り続けます」というモデルも、商品としては有りなのではないだろうか。そういう商品を買い支えるだけの目利きを我々日本の釣り人も持った方が良いんじゃなかろうかと常々思うところである。
最新のリールでも竿でも、その宣伝文句とか煽り記事に最近は心の底から「どうでもいい」と思うような不感症のオッサンのボヤきではある。
(2016.3.6)
○2016年4月2日(日)のブログから転載

PENNスピンフィッシャーの第3世代、第4世代が生産を終えてからもう数年。未だ私はこの世代、特に第3世代を再び作るべきだと考えております。今第3世代の4桁ssを作るならどこをどうするのか・・・という狂人の妄想のようなブログです。
すいませんTAKE先生のサイトの「
私の夢」というページのまねっこ企画をやろうと思いつき、冒頭の文章もオマージュを捧げさせていただきました。
最近TAKE先生の電子版の本を立て続けに読んだッス。「80年代リールの歴史」というのを読んだら、面白くて止まらなくなり、最近出た「Cardinal」も読み、「オレ、インスプールのリールは手でベール返しちゃうから使えないんだよね」ということで読んでなかった「Let’s Inner Spool!」も読んじまい、「最近のスピニングリールってあんまり興味ないのよね」ということで読んでなかった「TACKLE RESEARCH[スピニングリール編]」も読んじまった。相変わらず最高に面白いリールの細かい技術的な蘊蓄やら愛ある解説。
勢いついてしまってサイトの方もあちこち読み直して「私の夢」のページで「ステラでも使ってろ!(不適切な発言をお詫びします)」とかの暴言に大ウケ。最高に楽しめました。
「道具というのは、実用的だからカッコいいし、美しいのです。」ってあたりの美学!
私の場合、TAKE先生ほどはリールという物について専門知識は無く詳しくないので、要望も本家ほど細かくマニアックに面白くはならないとは思いますが、それでもまあ自分なりに書いてみます。

スピンフィッシャーの5500ssより下のサイズは金属製の第3世代前期3桁ssでも、グラファイトボディーの第3世代後期4桁ssでも、瞬間逆転防止機構(メーカーによってはインフィニットアンチリバースとかいうやつ)がついてシンプルなメイドインチャイナの第4世代のssgでも正直どれでもOK、そんなシビアに性能面を要求されることはないように思っています。
強いて言えば、3桁ssは小型リールに金属ボディーは重くてごつすぎる気がするのと、ラインローラーにはssgのようにベアリングが入っているのではなくて、スリーブ噛ましてある方が放置後に錆びて固まっていたりしないので良いかなと思います。スリーブ方式でもちゃんと回ってますし糸ヨレそんなにした記憶が無いです。TAKE先生が糸ヨレ対策に「ラインローラーのベアリングにオイルじゃなくてグリスをちょっと効かせてテンション掛かっていないときに回りすぎないようにする」というのを紹介してました。低いテンションでラインローラーが回りすぎるとかえって糸ヨレするという可能性があるそうです。
もろに海水を浴びる外側に付いてるラインローラーに、錆びるのがわかっているベアリングが付いているのはトラブルの元かと。
でもって、内部のベアリングについては浸水したりすると錆びますが、そういう時は交換するのが錆びないようにクソ高くてめんどくさい機構を組み込むより手っ取り早い解決策だと思います。内部については、たまにしかないトラブルなのでそういう割り切りでいきます。
と言うことで私の理想とするスピンフィッシャーは4桁ssのラインローラーにベアリングが入ったss「j」じゃなく普通のssがベストで、いじるとしたらベールアームスプリングを今時の心棒入りのグルグルコイルスプリング方式の耐久性高い物にしておくと、なにも文句が無くなるように思います。まあ5500ss以下のサイズはそれほどバネ交換必要なくバネ備蓄で対応でも十分なので4桁ssで不都合感じたことありません。4400ssは糸ヨレ多いという噂がありますが、ナマジ的にはそんなことは無いように感じているのでそのままで良いかと。4200ssは使わないのでナマジ的には省略。
ということで、5500ssも4500ssも4400ssも既に一生使う分ぐらい本体も消耗パーツも備蓄しているので、個人的には心安らかです。この心安らかさを多くの人と共有するためにもう一回4桁ssを4300ssから5500ssまでベールアームスプリングだけ改良して復刻してくんなまし、というのが小さい方のサイズについての「私の夢」です。
第4世代の440ssgから550ssgについてはベールアームスプリング改善されているので、こいつのラインローラーをベアリング方式からスリーブ方式に変えても何ら問題ないリールかも知れません。ラインローラーにまめに注油してベアリング錆びさせたりしない人にはssgお薦めです。実際私が日常的に使ってる430ssgはまめに毎回釣行後注油しているのでベアリング錆びさせてません。錆びは遠征で使うような使用間隔が開くリールで起こります。
また、ssgでも430ssgより小さいサイズはベールアームスプリングが改善されず昔のままです。PENNはわりと真面目なメーカーなので耐久試験して430以下のサイズだとそれほど力が掛からないので昔の形でOKだという結果が出ているのかも知れません。確かにこのサイズでベールアームスプリングを交換した記憶はありません。


4300ssサイズはssgの耐久性をみたくて現在は430ssgを使うことにしてますが、実は私このサイズは第三世代の3桁ssの430ssと4桁ssの4300ssも過去使っていて、第4世代ssgも含めた3機種全部使ったことがあります。このうちどれが一番好きかと聞かれれば、やっぱり実は4桁です。3桁ssは金属でちょっと重い。小型リールは軽い方が良いように思います。
ssgも悪くないというか好きですけどベールアームのラインローラーとは逆側の金具が錆びるのが「デキ」で唯一気に入らない点で減点。ベールアームだけ買ってありますけどね。
もう一点気に入らないのはメイドインUSAじゃなくなったということか、これは気分の問題で、現時点で世界の工場である中国の技術に問題があるという話ではない。ないけどディスイズザリールフロムユーエスエ~という気分が楽しめないジャンよという話。

私が4300ssをどれぐらい好きかというのは、東北時代の2年ほどでナマジの指がハンドルこんな感じに塗装を剥がしたという事実から推測していただければと思います。
430ssgはssgの耐久性をみたくて使ってると書きましたが、具体的にはワンウェイクラッチとかいう逆転しないベアリングが鎮座している「瞬間逆転防止機構」が、どのくらいで不具合生じるのかみようとしてます。が、ずっと不具合生じないのと違うのか?と疑い出すぐらいにこれまでたまの注油だけで特に問題なく使えてます。2008年からなので、もうかれこれ8年使ってますが壊れません。
重いルアーやデカい魚の強い引きに対応する大型リールでどうかはまた別ですが、小型リールでssgについているような瞬間逆転防止機構は十分耐久性もあるとみて良いのかなと思っています。
瞬間逆転防止機構の本来の目的であるアソビが無いという巻き心地に関する部分は「正直言って、心の底からどうでもいいよ。」と思っています。別にいらんがな。

続いて、4桁ssだと6500ssから9500ssのサイズ。
このクラスは重いルアーとか使ってでかい魚釣ることが想定されているので第3世代前期3桁ss、第3世代後期4桁ss、第4世代ssm共通して金属ボディーで頑丈な造りになってます。
7500ssを長らく遠征の友として使ってきて、不都合は、①だんだん弱くなっていくベールアームスプリング、②キャスト時にベールがかえってしまって逆転防止関係のパーツが壊れる、③スリーブ方式のラインローラーを改造パーツを使ってボールベアリング入りラインローラーにしていたら錆びた。ぐらいです。
これを4桁ssの改善でどうにかするなら、まずは小型と同様ベールアームスプリングだけ耐久性の良い物に改良。キャスト時にベールがかえるのは最近のリールについているベールを返した時には「ローターの回転にブレーキが掛かる機構」を組み込むことにより回避。ラインローラーは純正のままスリーブで良いんじゃないのと、最近トローリングロッドを入手してラインローラーみていてもベアリング入ってないことからもそう思ってしまう。無くてもいけるはず。と思う。

第4世代ssmのベールスプリングは改良済み、ベールが返るのも逆転防止関係のパーツがシンプルに逆転しないベアリングだけなので壊れないという可能性もあるが、今のところキャスト時ベールが返ったことが無いのでなんともいえない(ひょっとして改善済みか?)。ssmの耐久性は950ssmで見ているところだが単発のやりとりでどうこうなることは無かったが、悔しいことに長期間の使用のデータがとれるほど950ssmという男らしいサイズのリールに出番が無いので正直どうともいいかねるところ。
ということで、実績と信頼の4桁ssのベールアームスプリング、ベールを返した時のローター回転ブレーキの改良を加えて復刻というのが大きいサイズの方の「私の夢」です。
とグチャグチャ書いてみましたが、「そんなもん、PENNならバトルでもスピンフィッシャーVでも買えば解決やん!」というご意見もあるかと思いますが、何というか慣れ親しんだ形とか使い心地とか、今まで使ってきたリールともパーツが共有できて何かと便利とか、そういうのも大事だなと、特に第3世代スピンフィッシャーの後にスペアスプール共有できる形で第4世代が出てきた時の感動を憶えているので、「ナマジの夢」はこんな感じになるのです。
「あなたの夢」のリールはどんなリールですか?何じゃらわけのわからん機構がゴテゴテついてたり、やたら高価な素材とか使いまくったりの成金主義のリールだったら軽蔑しまッセ。
書いてて改めて認識したけど、どうにもこうにもスピンフィッシャーが好きだ。大好きだ。狂おしいほどに愛させてもらう。
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(2016.4.14)
○2016年4月24日(日)のブログから転載

第3世代のスピンフィッシャーは大別すると小型機種も含め全機種金属製だった3桁時代と、5500ss以下の小型機種がグラファイト製になった4桁時代に分けられる。
ところが、同じ4桁時代でも顧客からの要望や故障情報やらを反映させてだと思うけど、マイナーチェンジを繰り返して改良を重ねていたリールなので、細かい違いが年代ごとにあるし、心臓部のギア方式の変更なんていうのもどうも4桁時代に行われてきたようだ。
3桁時代にもマイナーチェンジはあったのだろうけど、我が家には430ssとJOSさんにもらった750ss、550ssぐらいしかないので比較のしようがないが、4桁ssについては、スペア兼部品取り用として同じサイズが何台も転がっているので、分解清掃しながら観察した結果などを整理してみたい。

ただ、我が家にもすべての年代のモノが転がっているわけではなく、ある程度推測で書いている部分もあり、その部分は推測であることが分かるように書くにしても、間違っていた場合責任はすべて私にあるとは思うところ。でもまあ、あんまり厳しい目でみずに生暖かく見守っていただければと思う。
心臓部のギアの変更があったと書いたけど、4桁になったときと同時にギア方式の変更があったのは、2チャンネルの「PENNリールスレ」情報というユルいネタによると4200ss。
3桁時代420ssと430ssがウォームギア、440ss以上がハイポイドギアだったのが、4桁時代に突入と同時に4200ssは今のリールの標準的なギア方式であるハイポイドフェースギア方式に変更されたらしい。
逆に4桁時代突入とともにギア方式まで変わったのはどうも4200ssだけの模様。
430系は430ss、4300ssともにウォームギア方式。ついでに第4世代に入って430ssgもなぜか伝統のウォームギア方式を守っている。SUZUKIさんとPENNネタの情報交換していたときに、全世界で最後まで作られたウォームギア方式のリールが430ssgじゃないだろうかとおっしゃっていて、確かに2012年の製造中止後にウォームギア方式のスピニングリールってこれまた同社のインスプール700番台の2012年頃の復刻版ぐらいしか思いつかない。復刻版の時にPENNリールスレで「よくウォームギアの製造技術残ってたな」と書き込んでいた方がいたが、残ってたもなにも現役で作ってたから作れてあたりまえっちゃあたりまえなのである。
なめらかで耐久性が良いが巻き上げ効率は良くないというウォームギア方式は、例えば昔のABUのカージナルとかに使われていた方式で、それ程は巻き上げ効率よく重いルアーを巻き取ったり強い魚とやりとりをしなくていい小型リールには適しているという判断だったのかなと推測している。
じゃあ、なんで4200ssはハイポイドフェースギアなのかというと、試験的な意味合いがあったのではないかと私は推理している。
420系ってこういっちゃなんだが「ミソッかす」である。正直小型リールは430系があれば事足りて420系は出番がないように思う。そういう扱い的にも対象魚種的にも実験しても支障が出にくい小型クラスで市場の評判なり故障具合なりをみて、TAKE先生いわく、大森製作所がスピニングリール用に育て上げた、後の標準となるハイポイドフェースギア方式を他の機種にも広げていったのではと推測している。
ぜんぜん搭載されているギアの方式なんて気にしてなくって、TAKE先生の本読んで750ssに搭載されているギアがハイポイドギア方式という独特のモノだと初めて知ったぐらいである。
ここで、出てきたギア方式をちょっと説明しておきたい。言葉で書いてもわかりにくいのでググってもらうなりした方が手っ取り早いけど、いずれも回転の方向を90度変換するスピニングリールに使われる方式で、床屋グルグルみたいな「斜めに山を切った円筒形のギア」に「側面に山を切ったギア」が接触しているのがウォームギア、「斜めに山を切った円筒形のギア」に「片側の平面に斜めに山を切ったギア」が接触しているのが、ハイポイドフェースギア、「傘の上面に斜めに山を切ったギア」がちょっと軸をずらして2つ接触しているのがハイポイドギアという感じ。

でもって、漠然と4桁グラファイトの4400ssとかも、グラファイト化とともにハイポイドフェースギアになったんじゃないかと思っていたら、使ってるスピンフィッシャーの分解メンテしていたところ、4桁ssでも最初の頃の金色ハンドルの4400ssは左の写真のようにハイポイドギアで、その後の黒色ハンドルの4400ssはハイポイドフェースギアだとよく見たら気がついた。先ほどの4桁化に伴い4200ssで「お試し」後、他のモデルにも採用していったという推測はこの辺りの事実をもとにしている

4桁グラファイトボディーは初期の金ハンドルのモデルがハイポイドギア、黒ハンドルがハイポイドフェースギアという整理で納得しかかっていたら、次に分解した金ハンドルの4500ssを見て何が何だか分からなくなってしまった。
右の写真のとおり、ハイポイドフェースギアが搭載されている。
金ハンドルの初期型からハイポイドフェースギアが搭載されていたら、4300ssが最初にハイポイドフェースギアが搭載されたスピンフィッシャーというネット情報も間違っていることになるし、そもそも4400ssの金ハンドルにはハイポイドギアが付いていることとも並びがとれていなくて整理が付かない。なんでだろうと主にネット情報などを調べてみると、ギアの方式までは言及されていないが、どうも金ハンドルのモデルでもギア比が5.1:1のモデルと4.6:1のモデルがあるようだ。5.1:1は第三世代の450ssと同じで、4.6:1のほうは黒ハンドルの4桁後期型4500ssと同じだと考えると、同じ金ハンドルでもギア方式が2種類ある臭い。
くだんの金ハンドルの4500ssのハンドルを1回転させたら、ローターは4回半をちょっと超えたところまで回った。4.6:1で間違いなさそう。うちに転がってた金ハンドルの4500ssは金ハンドルでも後の方に作られた「ローギア」モデルのようだ。
ずいぶん前に(今調べたら2012年だった)イギーさんから、4500ssと5500ssの初期型はギア比が高いんですという情報をいただいていたが、私のもっている件の金ハンドルの4500ssはギア比を示すプレートが剥がれ落ちており、ギア比が高いと聞いても「そうなんだ、ぜんぜん違いわからんかった~」と思っていたが、違いが分かるわけがない。だって黒ハンドルとギア比同じなんだもん。違いの分かる男ぶって「イヤーちょっと巻き取りスピード違うなとは感じてたんですよ」とか書かずに恥もかかずにすんで良かったと胸をなで下ろしている。
ということで初期型のギア比の高い方をパックリご開帳してみて、中にハイボイドギアが鎮座していたら初期型金ハンドルにも初期型ハイギア型と初期型(の「後期」と書くと変な表現だが)ローギア型があるという整理で一件落着となる。

なるので、中古屋のウェブショップで探してちゃんとギア比のプレートが残ってて「5.1:1」となってるやつを買いました。同サイズいくつも持ってるのにアホだなと思うけど、まああって困るもんじゃないし使えばいいや。
開けてみました。推理どおりハイポイドギアが鎮座してましたというめずらしい名探偵ぶり。
おそらくグラファイトボディーの4400ss、4500ss、5500ssは同様にギアの変遷があったのだと考えるとしっくりくる。
他にもssjになったときにラインローラーにベアリングが入ったとか、それと同時期あたりに逆転防止のラチェット周りに改良が入ったとか細かいマイナーチェンジはあるけどすべては把握し切れていない。でも大筋は4桁化したときにギアはそのままボディーがグラファイト化、その後ギア変更、その後ハンドルが黒に変更という流れだったのだと思う。
と、グラファイトボディーの4桁についてはスッキリしたが、メタルボディーの6500ssから9500ssがスッキリしきらない。
7500ss以上は最終のssjでもハイポイドギア方式でギアは3桁時代からずっと変わっていないと、我が家にある7500ssj、7500ss、750ssをみても「Scott’s Bait and Tackle」にあるssjの展開図をみても思っているのだが、ネット上に「2002年以後のすべてのSSJがハイポイドフェースに移行した」という情報があり、ひょっとしたらうちにあるのより新しいssjでハイポイドフェース搭載機があるのかも知れない。
ところが、ssj時代に突入していない世代の我が家に2台ある6500ssをあけてビックリ。片方はハイポイドギア方式だがもう片方に「ハイポイドフェースギア」が鎮座している。ハイポイドフェース化はssjの時代に行われたという前記の情報と合致しない。
ギア比はどちらも4.7:1で3桁650ssが4.8:1なので、4桁になる時点でもギア比の変更があったのは裏付けられるが、その後いつハイポイドフェースギアが搭載されたのかまでは特定できない。
いずれにせよ650系については、4桁になった時点では最初はハイポイドギアで、ssjより以前にハイポイドフェースギア化したとみるのが妥当だろうか?4桁ssになってからはハンドル変更とかもなかったようで情報が出てこないのでお手上げでござります。現時点で迷宮入りだなこりゃ。中古で買ったのでニコイチとかでギア載せ替えてたりする可能性もある。
750系以上に最終的にハイポイドフェースギアが採用されたのかどうか、6500ssのハイボイドフェースギア採用はいつ頃だったのか、誰か知ってる人がいたら教えてね。
チョコチョコと改良加えてマイナーチェンジ繰り返して長く作ってきたリールなので、年式によって細かい違いがあるようでちょっとすべてを把握するのは難しいのかも。
製造コストと性能面見ればハイポイドフェースギアなんだろうけど、そうじゃないカージナルとかにも使われてたウォームギアとかPENN伝統のハイポイドギアとかいろんなのがあるのも、それ自体が面白いと思ってしまうナマジであった。
こういうのはマニアックなPENN使いなら当然一般常識的に知っていることなのかも知れないけど、あんまり内部の機構がどうこうとか、そもそもギア比すらあんまり気にしてなくて、ギア比低かったら一所懸命巻けばいいんだろうぐらいに思ってたナマジ的には知らんかったことであり、まとまった知識として整理された情報がネット上にも見あたらなかたことから、ちょっと書きとめたところである。
間違ってたらご指摘ください。7500ssj、6500ss情報に限らず正しい知識を得ることができれば嬉しい。
(2016.4.24)
好き好き大好き寵愛してる。

諸君 私はPENNが好きだ
諸君 私はスピンフィッシャーが好きだ
諸君 私はPENNスピンフィッシャーが大好きだ
4400ssが好きだ
430ssmが好きだ
7500ssが好きだ
9500ssが好きだ
950ssmが好きだ
4500ssが好きだ
5500ssが好きだ
706zが好きだ
4300ssが好きだ
近所で 珊瑚礁で 河川で 渓流で 黒潮で
護岸で 地磯で 湖沼で 干潟で 水路で
水辺で使われる ありとあらゆるPENNスピンフィッシャーが大好きだ
水面で一心にバチを食っているシーバスにモグラ叩きでルアーを投げ込んでいくのが好きだ
アワせた直後空中高く跳び上がったシーバスが水中に戻って4400ssに重みを伝えてきた時など心がおどる
私の操る7500ssがロウニンアジの泳力を受け止める様が好きだ
悲鳴を上げて逆転するドラグがそれでもラインを切らさず持ちこたえた時など胸がすくような気持ちだった
4300ssのスプールに左手を添えて道糸の放出を調整し思う場所に投げ込んでやるのが好きだ
恐慌状態のイワナがルアーに追いすがってくる様などはもうたまらない
カヤックの上で4500ssのドラグを滑らかに滑らせながらワカシが疾走していく様をみる時など絶頂すら覚える
諸君 私はスピンフイッシャーを望んでいる
「PENN!! PENN!! PENN!!
」
よろしい ならばスピンフィッシャーだ
一心不乱のスピンフィッシャーを!!
我らはすでに時代遅れなのかもしれない
だがスピンフィッシャーは一騎当千の古強者だと私は信仰している
メイドインジャパンの高級機種を崇拝している連中に恐怖の味を思い出させてやる
天と地のはざまには奴らの哲学では思いもよらない事があることを思い出させてやる
状況を開始せよ
征くぞ諸君
ほんとすいません。714と714Z買っちゃいました。
とりあえず今使ってる人生初のインスプールのスピニングリールである「トゥルーテンパー727」は調整もすんで快調だし、”釣れてる時は道具を換えない”は鉄則だと思うので、少なくとも今期はトゥルーテンパー先生にインスプールのなんたるかを教わりつつ修行するんだろうなと思ってて、どうせ自分のことだから次はPENNのインスプールに手を出すのは分かってるにしても、とりあえずは鬼が笑うような先の話だし、考えないでおこうと一旦放置することに決めた。そのうち本国人気に応えて大型インスプールを復刻生産しているピュアフィッシング社が小さいインスプールも復刻するかもだしその時買えばいいやとも思ったのは以前書いたとおり。
しかし、一旦放置と決めた次の瞬間からもうPENNのインスプールのことしか考えられなくなってしまったのだよ諸君。
気付けばネットオークションで落札相場調べてたり、使ってる人の評価を読んでみたり、昔のPENNリールジャパンやコータックのカタログで糸巻き量とか調べてみたり。
「もうコレは買うしかしかたないナ」
と観念して、ネットオークションで”第1世代”緑の714と”第2世代”黒金の714Zを落札した。
幸いPENNスピンフィッシャーはカーディナルやミッチェルのような人気機種じゃないので、70年代の緑の時代のモノでも写真の箱入り娘で多少スレ傷がある程度のものが1万円台前半、90年代の半ばまで第4世代と並行して現役で売られていた714Zなど単なる中古価格でしかなく7千円ぐらいが程度良いやつの相場である。ポチッとナってなもんである。入札私だけで、だいたい相場の値段だった開始価格で落とせてあんまり人気がなくて助かった。

「おいおい、買うのなら同じ機種を2台じゃないのか?」と玄人衆なら思われるかもしれない。もう生産してない機種なら予備機としてや部品取りを考えると、同じのを2台買うのが、収集ではなく実戦投入を目的とするなら理にかなっている。特に同じスプールが2個手に入るのは大きい。
でも心配ご無用。スピンフィッシャー714と714Zは実は”色違い”といって良いぐらいの機種で、設計もほとんど変わっておらず、部品もほぼ共通なのである。
なので、左の写真のような着せ替え人形的お遊びもできる。意外と黒銀は渋くていいジャン。
スピンフィッシャーの歴史は1961年にまで遡る(「ベールアームは世界を回る」「
MYSTIC REEL PARTSホームページ」参照)。
その歴史をチョイと紐解いてみると、一番最初の機種はおそらく「700」でローターのカップが多分その後の機種のように鋳造(ダイキャスト)してから内側を削ったものではなく、筒状の上部と叩き上げたカップ状の下部を溶接しているらしいことがローター上部と下部の色の違いから見て取れる。
ただ、この初代から内部のギアだのの機構はお馴染みのウォームギア方式が鎮座してたりして、90年代の半ばまで「Z」シリーズに引き継がれて続いたスピンフィッシャーのインスプールのリールは、基本的に同じ設計を使って30年以上マイナーチェンジを繰り返して生産されてきた超御長寿シリーズなのである。小型の714についても箱に入ってた取説に「1975」年の文字が見えるので70年代には登場していたようである。ちなみにスピンフィッシャー714のミドルネームは「ウルトラスポーツ」のようで714Zにもミドルネームは受け継がれているのが本体側面に見て取れる。ちなみに一番小さい716、716Zのミドルネームは「ウルトラライト」。他もミドルネーム?あるんやろか?
”PENN公式”と言って良いピュアフィッシング社の整理では緑の(たまに青も見かけるけど、百貨店別注の茶色もあったそうな)700番台が”第1世代”で、黒金の「Z」付きの700番台が”第2世代”とされているけど「MYSTIC REEL PARTS」さんところの整理では、むしろ「Z」付こうがインスプールの700番台(とアウトスプールの747と757)は全て”第1世代”で、逆に公式では”第3世代”にまとめられている”3桁ss”と”4桁ss”が実は世代が違っていると整理している。外見で見れば同じアウトスプールで似ている3桁ssと4桁ssが意外に設計に変更が加わってること、外見が緑から黒金に大きく印象を変えた無印とZ付きの700番台が実は色違いに近いことを知ると、ピュアフィッシング社の公式見解より「MYSTIC REEL PARTS」社の整理の方が的を射ていると思える。両者の整理の観点が、視覚的に分かりやすく歴史を示したいのと、部品を注文する都合上設計等の実態を反映させているのと、というそもそもの目的の違いがあってどちらが間違いということではないのかもしれないとは思うけどね。さらにいうなら細かな仕様変更が繰り返されてきているので同じ世代でも年式や”ssj”のように販売地域によっての違いがあったりするので簡単に整理なんてできないよね。
一番上のずらっと5台並べた写真は、下から714、714Z、430ss、4300ss、430ssgでスピンフィッシャーでは2番目に小さいサイズのリールで渓流やらシーバスなんかで使う機種達なんだけど、714、714Zを分解して内部構造把握しつつ使えるように調整しようと思ったら、他の後継スピンフィッシャー達との違いもなかなか面白かったのでコレからちょっとその辺について紹介してみたい。

まずは、714と714Zの公式第1世代と第2世代の違いについて「最大の違いは色の違い!」と書いてしまうとズルッとずっこけてしまうかもしれないけど、結構真面目に色とか外見とかって性能やら内部機構やら以上にリールにおいて重要な要素だと思うんですよ。だって、スピンフィッシャーっていったら黒金仏壇カラーで、その印象は「海で強いぜスピンフィッシャー」な性能面の印象と分けがたく関連づけられて確固たるイメージが形作られるに至ってて、ピュアフィッシング社の下での第5世代「SSV」や新しく出たばかりの第6世代「SSⅥ」もその配色を踏襲しているぐらい重要な要素になっている。その違いが小さかったとは思えない。
色以外の変更としては、大きいモノでもサイドプレートが重い金属製から樹脂製に変更されて軽量化が図られていること、あとは本体のハンドル軸の根元に注油穴が設けてあったのが入手したZでは省略されていたこと、ドラグノブの形状がちょっと違うぐらいのもので正直設計的にはマイナーチェンジだと思う。むしろサイドプレートをあけて違いに驚くのは714のグリスの盛りっぷりで「日本よ!コレが本場米国70年代方式のグリスシーリングだ!!」とでも言わんばかりで、面白すぎたのでそのままの状態を保存すべく714のグリスについては”ソッ閉じ”しておいた。プレートの方にギアの形が分かるぐらいに水色のグリスが盛り上がっているのが写真でおわかりだろうか。

ハンドル軸根元の注油穴については、430ssとの関係もあって面白い。この部分に注油穴を設けてあるのは、実は手元にあるのでは714と430ss。
多分コレ、714Zに注油穴がないのは途中から省略されたんだと思う。714Zと430ssはインスプール版とアウトスプール版の兄弟機だと思っている。1枚目の写真で比較してもらってもハンドルの上のあたりの本体の丸いちょっと官能的な感じの曲線なんかも同じで、それは2枚目の写真見れば明らかなようにでっかい真鍮製のウォームギアが鎮座しているからそういう曲線になるんである。機能美っていっていいでしょ。
で、この3機はローター除いた内部の機構はほとんど一緒で430ssで逆転防止がカリカリ鳴らないサイレントドック方式になってるくらいで、だいたい一緒なのは写真でも分かるだろうか?714は内部も緑。
こいつらにはベアリングがローター軸に1個だけで、しかもハンドル軸は片軸で支えている形なので支えているハンドル側のスリーブは長くて、途中に”油溜まり”の部分を設けた真鍮製のものである。そういう長くて摩擦面が大きいスリーブには注油が大事ということで油溜まりの所に注油穴がわざわざ開けられてたんだと思う。
ちなみに、より新しい4300ssと430ssgのウォームギアはおそらく軽量化のためだと思うけど小さくなっている。この2機についてはオシレーションカムが一枚板を加工したモノから鋳造一体成型ものに変わっている程度で2機間で大きくギア方式を変えたモノではなく共通している。
3桁430ssから4桁4300ssになった時には、スプールは共通のモノにしつつも、内部の設計を大きく変えており、この大きさにおいては、単にボディー素材が金属から樹脂素材に変わったことに伴うマイナーチェンジにとどまらず大きなモデルチェンジがあったと整理して良いように思う。ボディー素材とギアの他に、もう一つこの時の大きな変更を指摘するなら、ハンドル軸の両サイドにボールベアリングがぶち込まれて、ハンドルが左右どちらにも付けられるようになっているところか。
話を714Zの「注油穴の省略」に戻すと、アウトスプールの430ssには注油穴があるのになぜそれより古い設計の714Zで省略されているのかと疑問に思うかも知れない。これは設計自体が714Z(実質714)よりアウトスプール化した430ssのほうが新しいのは事実なんだけど、714Zのほうが長く製造されていたから、経費削減かなんかで後年製造された714Zでは省略されていたとかじゃないかと、推定でしかないんだけど思っている。1995年のコータックのカタログでは714Zが健在でまだ注油穴が残っており、アウトスプールの430ssは既に4300ssに代替わりしていることが確認できる。私の手元に来た注油穴無し714Zはそれより後年の製造なのかなと想像して楽しんでいる。
こういう、部品を同じ世代の”大きさ違い機種”はもちろん、世代超えていろんなモデルで共通にしてしまうというのは「せっかくニューモデル買ったのに古いのと同じところばっかりで新鮮味がないジャン」と、アホな客に思われてしまいがちだけど、進化した部分や設計思想に基づいて変えた部分以外を「変えない」というのは、新しく設計し直したり金型作ったりという経費が削減できて製品単価を抑えることができて売る側も買う側も利点が大きいはずである。また、共有部品で長く修理が可能になるのなんかは、ちょっと売る側は困るカモだけど使う側からしたら良いところばかりなのに、今のリールは同じ時代の旗艦機種の本体設計を流用して、素材やら部品やらの経費抑えた普及機作るなんてのはあるけど、世代間はあんまり共通の部品なんて使ってなくて「モデルチェンジ後は買い換えてネ」という売る側の都合ばかりが強く感じられてあんまり気分良いもんじゃない。
ダイヤモンドキャリアーがベールスプリング折れて、ナマジ的次世代小型主力機を選定する際にダイワトーナメントssと4300ssで比較検討した末に4300ssで行くことに決めて、やっぱりぶっ壊れたときの予備機は欲しいなと思ってたときに釣具屋の棚に眠っていた430ssを発見して、スペアスプール共通ということで即購入。実釣でも感触を確かめていたところ、まだ雪深い季節の岩手の渓流で雪道でコケてハンドルを折ってしまった。まあ一人で携帯も持ってない時代に山に入っており、足でも折ってたら遭難沙汰で430ssのハンドルが代わりに折れてくれて助かったと思うことにしようと、すでに4300ssに代替わりして久しいし、取り寄せようにもハンドルだけはもないだろうなとSスイにダメ元で聞いてみたら、あっさり「大丈夫ですよ。430ssのハンドルはインスプールの714Zと共通で714Zはまだ売ってますから部品在庫あるはずです。」との回答。無事430ssも復活して、やっぱりPENNだなコリャとPENN愛というかPENN信仰が深まったのであった。

今回も714Zを使う前提で部品を買い足ししようと、ついでにあれこれ足りなくなりそうなのがないかチェックしていたら、部品使い回しの多さのおかげで、実際に在庫しておかなければならない部品種類数が少なくて済むことに改めて感心した。714と714Zのドラグパッドは純正は白いテフロン製なんだけど、もう「MYSTIC REEL PARTS」さんにも在庫がないということで一瞬焦ったけど、説明読むと「パーツナンバー56-440を耳切って使えばいいんですよ」てなことが書いてある(訂正:大きさ確認したら耳付きのままで少し隙間が空くけど使えた)。パーツナンバー56-440は黒っぽい灰色のカーボン製の3方耳付きのドラグパッドであり440ss、4400ss、440ssg、430ss、4300ssに共通で714系にも使用可能な使い回しの効く部品なんである。という例で部品共通が便利というのがおわかりいただけるだろうか。
ということで、どこを第2世代と第3世代の切れ目とするかは別にして、大きな変更に伴って変えるところだけ変えてきたスピンフィッシャーの歴史について、同じ大きさの機種が”公式”の第1世代から第4世代まで5台揃ったので、ついでにと重量とかも測ってみたら、これまた面白い結果が出てきたので、ナマジ推論と合わせてご紹介したい。

早速計測結果を書いていくと、714:275g、714Z:254g、430ss:260g、4300ss:248g、430ssg:283gとあいなりました。
ちなみにライン巻いてない空スプール状態で、グリスやオイルは入れたままの湿重量。
714から714Zの間で20gぐらいの減量に成功しているのは、片軸でハンドル軸を受ける設計だと強度とかは必要ないサイドプレートを樹脂化したのが効いてるのと、地味に714のグリスシーリングの”グリス重”が効いてるのかも。
でもって714Zをアウトスプール化した兄弟機430ssは5グラムほど重い。インスプールの方がシンプルに軽く作りやすいというTAKE先生説を裏付ける結果。まあ5グラムなんてワシャ気にならんけどね。
でもって4300ssはでっかいウォームギアがこのクラスでは過剰だろうという意図からかギアを小型化し、本体も軽量化のため樹脂製にしたかいあって、最も軽い248gを記録した。他のメーカーの同程度の糸巻き量のリールと比較したらそんなに軽くないのかも知れないけど、軽量な小型リールにしたいという意図が明白に分かるモデルチェンジだったのだと思う。ちなみに糸巻き量は8lbで160ヤード。2号150mってところで日本製だと2000番程度か。
でもって、人生後半を任せることにしている430ssgがまさかの最重量283g。どないなっとるねン。逆転スイッチすら省略のこれ以上無いぐらいにシンプルな造りなのにどこで目方食ってるんだ?としげしげ眺めてみると、なんとなくカッチョ良い今時風のハンドルが怪しいので、4300ssのハンドルと比較してみた。結果、4300ssハンドル:25gに対して430ssgハンドル:33gとこれだけで8グラムも違っている。TAKE先生のお言葉「ハンドル軽いは七難隠す」を信じるならとんでもねえ改悪である。
たぶんおケツの金属部品も重いんだろうし、550ssgから下の大きさの機種で共通という逆転防止機構の一方通行のベアリングもこのリールに対しては過剰な丈夫さで重くなる要因かも知れない。
ただ、この430ssgが人生後半を任せるに値するリールだという確信は私の中で全く揺らがない。だって使ってて重くもないし、丈夫なことは証明してあるし、なんと言ったって快適に魚釣れてるモン。いいリールだもン。重い分丈夫で安心だモン。
重さとか、ベアリング数とか値段とかのカタログ数値、人様の評判なんてそれほどあてになんないって話だと思う。使ってみて自分に合ってるかどうか、使いやすいかどうか、好きになれるかどうか、それだけのことだと思う。
小型リールにおいて自重の重い軽いはハッキリ言って気にしたことすらない。4300ssから430ssgに変えたときも、重いとは思わなかったし今回測るまで知るよしもなかった。
でも回転の重い軽いや特性の違いは気になる程度に違うと思っている。ローターが金属で回転に慣性力が強く働いて回り続ける傾向のある430ssと樹脂製ローターの4300ssでは4300ssの方が巻き取りや回転が軽く感じる。
ただ、渓流ではそれほど慣性力の強いローターの利点を感じることはなかったけど(悪いとも感じなかった)、海のおもいっきりルアーを早曳きしなければならないような状況では”回り車”のように勢いついて回り続けてくれる重いローターは使いやすくて有利だと感じてた。今時息止めての高速巻きなんて流行らんからローター重いリールが評価されることなんて無いだろうけどさ。
てなぐらいで使い方やら個人の好みによって、どんなリールがイイかなんて違って当たり前。
私は430ssgのというか第4世代スピンフィッシャーの、とにかく経費削減して単純化して部品削れるだけ削りつつ、スピンフィッシャーらしさは出して安っぽくならないようにという、身も蓋もない方針に基づいて作られただろう必死さと、ある程度スピンフィッシャーらしさが残せている風合いに好ましさを感じる。ハンドルなんか軽きゃいいんじゃと安っぽい見てくれのが付いてたら、ただでさえ樹脂製で安っぽいのにデザインで見るところネエじゃん。”PENN使い”にとって8gぐらいはどうてっことねえよと思うのである。全体で35gも違うって?そんなモンは誤差のうちじゃ。ゴチャゴチャいうてると9500ss(1kg近くありまっせ)でぼてくりまわすゾ、体鍛えとけヤ!!
ということで430ssgを最後の小型スピニングと心に決めつつも、714Zにも浮気してみるついでに、新型の第6世代やまだ触ってない第5世代も使ってみようかと検討してはみた。結果、それは止めておこうということになった。
多分VもⅥも良いリールなんだろう。Ⅵはまだ謎の部分は多いけど、ⅤはPENNらしく丈夫でメンテナンスしやすくて黒金なのは写真と展開図見ただけで分かってしまう。ドラグも相変わらず良いんだろう。
でも、既に日本のリールと一緒で同年代の他のシリーズとの基本設計とかの共用という方式になってきているようで、Ⅴの展開図見て部品番号でみる限り昔のシリーズとの部品共有はなく、世代間断絶みたいなことになっている。
第4世代が出たときには、4桁第3世代で充分間に合ってたけど、スペアスプール共通という世代間をまたぐ使い回しが効くのは愛用者には実にありがたいと感動して、一票入れるつもりで買ったけど、VとⅥにはそこまでして買い支える義理を感じない。
VにもⅥにも10500という50ポンドナイロンモノフィラが255ヤード入るとんでもない糸巻き量の超大型機が用意されているので、磯からサメとか釣るのにスピニングで太いナイロンラインの糸巻き量が欲しいときにはお世話になるかも知れないし、6500サイズに設けられているマニュアルピックアップ方式のベールレス仕様機も気になるけど、とりあえずは必要ないかなと。
それから、根っこの部分で、世代が新しくなる毎にやっぱり部品数が増えて、スピンフィシャーですら複雑化しているということが、自分にはあんまり好ましく思えないというのがある。
もちろん部品が増えて複雑化した分性能や機能が上がっているのだろう。それは悪いことじゃないのかもしれない。でも、自分が釣りを続けて上手くなっていく過程において、そういう複雑で高性能な道具を使いこなせるような方向を目指しているのかと言えば、明確に違うはずである。
できるだけ単純化して、面倒臭くねぇ道具と技術で釣れるようになりたいと思っているのである。
私は魚を飼うのも好きなんだけど、観賞魚飼育においてとても参考にさせてもらい、いろいろと蒙を啓いてもらったサイトに
「■GOOD AQUA■」というのがあって、その中で管理人さんが「上級者になるほど、高額で複雑な機器を使うというのはおかしいだろう、水槽管理が上手くなればなるほど道具に頼らなくて良いはずである」という趣旨のことを書いておられて、当時常識となりつつあった水草育成に二酸化炭素を添加する方式を前提とした、水の攪拌が少ない外部濾過装置等を使わず、ホームセンターで売ってるような60センチ規格水槽にセットの上部濾過槽とショボい照明を使って二酸化炭素の添加も行わず、その条件でも育成可能な水草を適切に選んだりしながら充分美しい水草水槽を育て上げていた。

我が家の水槽における水草育成は、限られた水量の中に二酸化炭素を多く溶かし込むのは難しいし限界もあるけど、空気中には近年の増加が問題視されるぐらいの二酸化炭素が含まれているので、水中は根っこの繁茂を楽しむモノと割り切って、水上葉を展開する水草でお茶を濁している私である。
でも、釣りにおいては道具に頼りすぎない、真に自分に必要な道具を適切に選び、その道具に見合った技術で釣りができるところを目指して行きたいと思っている。志は高いのである!エッヘン。
そう考えると、インスプールで単純な第1世代が必要な場面はあるかも知れないけど、第5世代以降の高性能さはワシにはあんまりいらんのじゃなかろうか?
古くからの愛用者に対するサービスも含んでいるだろう古い機種の復刻とかあったら一票入れるか考えるだろうし、感心するような単純かつ新しいスピニングリールが出てきたら喜んで買いたいと思うけど、単に高性能化するだけじゃ今更買う気にならんのよねというのが正直なところ。
そう思って、もうスピニングリールなんて新たに買うことはないだろうと思ってたら、インスプールなんて思わぬ方向に求める答えの手がかりがありそうだったりして、世の中わからんもンである。
思いもよらない意外なところから新しいスピニングリールが出現するかもしれないよ。なんてネ。
次回は714Zの調整ネタの予定。まだ続くのですじゃ。お楽しみに。
今回スイマセン、皆さんにお伝えするマニアックな情報があるとか、面白いネタに突っ込んでるとか、そういう人様に読んでいただけるような内容にあんまりなりそうにないっていうか、ナマジのお部屋の蔵の整理のための作業記録のような、そんな感じでヌルッと行かせてもらいます。
前回、430ssgについて「同じリール3台確保しているので、修繕した個体があと5年持ってくれれば15年使えたことになるから、残りの2台で30年持つ計算になるので35年経ったらそろそろお迎え来てるだろうからちょうど良い感じである。」と書いたところだけど、そういう考え方で行くと、そろそろ人生の終末も見えてきた今日この頃、ワシんちの蔵に眠ってるスピンフィッシャーって、アホのように買ってあるけど実際のところは何台あったら足りるのか、ちょっと考えてみるかと蔵をほじくり返してついでにエクセルで管理台帳作ってという”棚卸し”作業をしてみた。

ちゅうわけで、小っちゃい方から行ってみるとまずは最小の4200ssは1台こっきりで替えスプールもなしなだけど、小型スピニングでスプール径が小さいのはあんまり好みじゃなくて、径が小さい分巻き取り速度が落ちるのを利用してゆっくり巻く釣りにでもとメバル釣りに使ってみたけど、イマイチしっくりこず、結局4300ssでいいやとなって使っていない。
今後も使う予定はないのでなくてもいいぐらいで、なにか用途が出てきたら使うのに置いてはおくけど、たぶん使わないので壊れようもないだろうから、残りの人生この1台で問題ないだろう。

お次が、小型スピニングの主力サイズで4桁第3世代の4300ssのサイズ。
主力の第4世代430ssgが前回書いたように3台確保してあって、うち一台はごらんのようにブリスターパックに入ったまま未開封でたぶん430ssgだけでも間に合ううえに、先代の4300ssと430ssの第3世代コンビもまだ充分使える状態のうえに、インスプールの第2世代714Z、第1世代714のコンビも確保したところであり一生困らないはず。
かつ、この大きさのリールは復活させたダイヤモンドやらウィスカーSSトーナメントもあるうえに、樹脂製の安ダイヤモンドもあるので弾数的には何の問題もないだろう。
一番出番のあるサイズなのであれこれ使って遊びたい大きさ。
次に陸っぱりシーバス用のもう一つの主軸の大きさである4400ssについてだけど、手前の2000年から使ってる個体がまだまだ快調で、この春も使い始めたときに「スピンフィッシャーって巻きも滑らかで、丈夫さとドラグだけのリールってこともないな」と、昨年使ってた古いインスプールと比べたからかもしれないけど今後もこの大きさは4400ssにまかせて安心である。
新品から20年近く使ってベアリングやらドラグパッド、ベールスプリングなんていう消耗品的パーツは交換したけど、ギアとか本体とか全くもって”消耗”した気配がないので、現状のドングリノブの個体との2台体制がいつまで持つのか、ワシが死ぬまでもつンとちゃうか?という感じで予想すらつかない状態なので、もしこいつら2台が修理不能に壊れたとしても、新品に近い状態のが予備として2台確保してあるので充分だと思う。スペアスプールも3個ナイロン用、3個PE用に確保してありこれまた充分抜かりなし。

次はカヤックシーバス用の主力として使ってた4500ss。ショアジギングとかデカいルアー投げる陸っぱりシーバスにも過去使ったことがあり、ナイロン14ポンド、PEの2号とか使う釣りに使うんだけど、最近カヤック乗ってないので出番がない。
出番がないので消耗しようがなく、今使ってるハンドルノブ自作の中古個体と、樹脂製ノブ金ハンドルの2台があれば良いハズなんだけど、なぜか6台もある。
1台は初期のドングリノブのはギア比が違う高速巻き仕様だと聞いたので追加して買った記憶があるけど、他にも予備に3台も買ってしまっている。
もちろんスペアスプールの在庫もバッチリ。今後体力回復してカヤック乗れるようになったらまた活躍するにしても、やっぱり4台あれば足りるだろという気がする。キレイめの個体で値段付きそうなヤツを売りはらうとかしたほうが良いのかしらと、アタイ迷っちゃう。

でもって、釣りをされる人のおうちならどこのご家庭にもきっと何台かはあるだろうという5500ss。
ほぼ船でのシイラ・カツオ釣り用でたまにショアジギングやらにも使った程度のはずの5500ss系が3桁時代の550ssも含めると7台もござる。
たぶん、この大きさはシイラ・カツオ釣りの定番機だったこともあって弾数が多いので、中古屋とかで安いの見つけるたびに「あっ予備に買っとこ」とレジに持っていったんだろうことは想像に難くない。
船にも乗らなくなって久しいので、これまた減るもんじゃなし、我がスピンフィッシャー最初の1台である左下の個体と、JOSさんから引き継いだスピンフィッシャーの名を日本に知らしめた伝説的名機550ssと、やっぱりギア比の高い初期型ドングリノブの5500ssと予備1台ぐらいの4台で多分一生困らない。3台売りに出すかとも考えるんだけど、そんなに値段の付くリールじゃないうえに、実用品なので中古の軽自動車があまり安くならないのと似た感じで中古の値段が下がりもしないので、まあ金に困ってからで良いかという気もしてアタイやっぱり迷っちゃうの。
そもそも予備機を確保しておかねばと思ったのは、製造終了後何十年もパーツが手に入るなんて、さすがに想像もしてなかったので部品取りするつもりで買ったりもしてた。なので米本国でPENN(というかピュアフィッシングか?)公式のパーツ配給・修理サービスとなったらしい
「MYSTIC REEL PARTS」さんが潰れない限り、予備機って実はいらんのじゃないかという気もしてきている。さすがに在庫無しの部品も出てきてるけど消耗品的なのはまだまだ大丈夫そうである。

お次は、6500ssでここから4桁スピンフィッシャーは金属ボディーになる。ちなみに6500ss、7500ss、8500ssは外蹴り方式、3階建てドラグ、ギア方式と共通点が多く、部品も共通が多い兄弟機。
同じように内蹴り方式、3階建てドラグの5500ssと4500ssが兄弟機で、4400ssはドラグが1枚で大きくてちょっと違うし、4300ssはギアがウォームギアで4200ssとも何か違うと思っている。9500ssが3桁時代にはなかった大きさで特別な大物専用機なのは以前書いたとおり。って私は整理してます。
ただ、この6500ss2台のうち、1台は我が家にある7500ssとも共通のローター軸のギアが傘状のハイポイドギア、1台が現代リールの標準的ギアであるハイポイドフェースギアが入ってて、このアタリのギア方式の違いはPENNってABUやミッチェルと違って、値段が付くようなリールじゃないので「見分け方」的な情報があんまり出てこない。多分米本国のマニアのサイトでも探せば一発なのかも知れないけど、英語イマイチわからんのよね。でも「MYSTIC REEL PARTS」さんところで見る限り、やっぱり途中で変更あったようで、6500ss~8500ssのギアは新型(”新”っていうのもへんか?)ではハイポイドフェースギアで、古いハイポイドギアから交換するときは当然ながらローター軸とハンドル軸のギアセットで交換してね、となっている。古いハイポイドギアのほうはさすがに欠品になってるけどハイポイドフェースギアの方はまだ入手可能で、ギア摩耗してすら互換性のあるパーツ入手できて使い続けられるって改めて凄いな。しかも一つ前の3桁650ssからだ。
出番は、男らしく20LBナイロンと3号PE鱈腹巻いたスプール用意して、ターポン様とナルトビエイという怪魚をやっつけるための遠征に持っていったけど、ゴメン6500ss実力発揮させてやれんくて、いまだボウズリール。2台ありゃ充分な丈夫なヤツなのでいつかコイツが似合うような獲物をモノにしたい。

7500ssが似合う獲物は、長い時間が掛かったけど釣ることができた。使ってきた7500ssとこれまたJOSさんから引き継いだ3桁750ssは今後出番がなくても手放すつもりはない。ワシが死んだら誰か使ってくれ。
ただ、もうこの大きさのリールを使うロウニンアジの釣りとかを今後やらないかというと、まあ体力的にできないかも知れないとは思うけど、それでも死ぬまでにもう一度だけクリスマス島に行ってコイツで力一杯の釣りをしてみたいと思う。
思うのでとりあえずどちらも予備機も用意してある4台体制は維持しようかと思う。以前予備に買った7500ssjにハイポイドギアが入っててネット上ではssjにはハイポイドフェースギアが入っている的な情報があったのでなんだろね?とか書いたけど、多分ギア方式の変更とssj化は関係なくて、本国のほうで手間の掛かるハイポイドギアの在庫が切れてハイポイドフェースギアに移行した時期と、日本でラインローラーにベアリングが入ってないと売れねえジャンということで「ssj」を企画したのがたまたま同時期で、在庫のスピンフィッシャーにラインローラー周りだけ換装して日本で「ssj」として売ったので、もとの個体がハイポイドギアの残りの在庫だったヤツは我が家にきたヤツのようにハイボイドギアが入っているのだろう。
ちなみに第4世代750ssmのギアは、逆転防止の方式が違うのでローター軸のギアは別物だけどハンドル軸のギアは7500ssの最後の方のハイポイドフェースギアと共通。第4世代は第3世代の後ろの方と陸続きな感じのするリールなんである。第4世代は近代的な設計になった第5世代と人気と実績の第3世代の狭間で短命に終わった不人気世代だけど、スピンフィッシャーの歴史を色濃く引き継いで生まれた良いリールだよと書いておきたい。

でもって大型で1台ずつのをまとめて写真撮ってみた、706Zと8500ss。
706Zはかなり気になる存在なので、このインスプールでベールアームレスという単純で古めかしくも質実剛健な感じのリールを使いこなすのは今後の課題の一つとして取り組んでいく所存。
8500ssはゴメンナサイ。正直出番なさそう。持ってる大きさでコイツだけ使ったことがないし今後も使うことが想定されないリールで、魚を釣るために生まれてきた道具に対して申し訳ないけど、我がコレクション?の一つとして蔵に眠ってくれたまえ。買ったときは使うつもりでスペアスプールも入手したんだけどね。

トリは漢のリール9500ss、と950ssm。
もうちょっと体力戻したら、9500ssを持って磯にあがって”岸からのサメ”を狙ってみたいと思っている。
950ssmで多分人生最大魚のクロトガリザメを釣ってるけど、やっぱり大型リールの逆転防止機構としてはラチェット式の方が確実性があって、不具合による突発的な逆転とかの事故の危険性が低いので”大物”釣るには第3世代の特別な大物専用機である9500ssを携えて磯に上がりたい。このリールで何か不足が生じたら、それはスピニングリールの限界であり、両軸受けのリールにお出まし願うという整理で、自分の中で最強のスピニングだという確信を持って使っていきたい。
950ssmは殿堂入りで蔵に眠ってもらおう。
スピンフィッシャー現時点で我が家に36台あり。
「確かPENNだけで40台ぐらいあるとか書いてなかったっけ?」と突っ込みを入れた皆様、またナマジは嘘書いてやがったと思わないように。
スピンフィッシャーだけがPENNじゃないでしょ。ってことでインターナショナルⅡ30SW、セネター2台、545GS、インターナショナル9752台でPENN社製のリールは我が家に42台転がってます。両軸はスピニング以上に丈夫なので、予備機とか不要かなと考えて既に545GSは1台ネットオークションで売り、インターナショナル975も丸ABUとかぶるし1台売ろうかなとかも検討しちょります。
写真は両軸除いた36台格好良く並べようとしたけど、並ぶような台数じゃなかったので積んでみた。もっと大事に扱ったれよとお叱りを受けるかもだけど、わざと雑な感じに見えるように積みつつも丁寧に積み上げておりますのでご容赦を。よい子は真似しないでね。
我が人生でスピンフィッシャーが不足することはなさそうであり、ホッと胸をなでおろしたところである。
よしんば津波がきたりして全部持っていかれても、スピンフィッシャーなら中古の弾数多いし安いからまた買えば良いだけである。
(2019.2)
スピンフィッシャーじゃないけど面白いPENNのスピニングです。(2019.6)
コロナ禍で緊急事態宣言が6月20日まで延長される中、当然のようにそれにあわせて港の”釣り自粛”の看板の日付もペタッとテープ貼って更新されてて、豆アジはよ釣りたいのにどうにもならず、シーバスはセイゴも狙うと難しいもんで思うようには釣れず、チヌなんか初めっからアテになるほど釣れる魚じゃないのは良いとして、我が心のオアシスであったウグイちゃんまでなんか今年は難しくて、にっちもさっちもいかない状況。
ってのが
先日の素晴らしい釣果までは、ゴールデンウィーク前ぐらいからダラダラと続いていて、魚が釣れないと悪化するのが”スピニング熱”というのは、もうガチガチ鉄板のお約束で、売るほどリール持ってるくせに、それでもなんか出物はないかとネットの海をさまよって、程度悪いけどものは試しにと3300円で入札したら3100円で落札できてしまったのが、冒頭の写真の「PENNスピンフィッシャー712」。大きさ的には4400ssと同じぐらい、っていってもPENN使いの人にしか分からんと思うけど、カージナルC4とだいたい同じ大きさで2号か3号のナイロンライン巻いてシーバス狙うような大きさ。4400ssも売って整理したけどそれでも4台確保してあるし、カージナルC4もあるし大森なら”No.2”の大きさだけどそれも何台も蔵に転がってる。落札して届く前には既に”やっちまった”と反省する。インスプールで緑の712と黒金の712zはそんなに需要があるとも思えないんだけど、弾数も少ないのでネットオークションに出ると7,8千円はしてて意外に値が張るんだけど、今回安かったのは銘板が落っこちてるのはPENNではある種お約束なのでまだ良いとして、本体の背中と足下に名前を電気でバチバチと彫る方式で彫ろうとして失敗してて、なんて書いてあるのか良く分からんローマ字が掘ってあるというとってもよろしくない見た目が原因。ワシの場合PENNはインスプールでもあくまで”実用機”扱いだけど、普通の人はこの手のインスプールのスピニングは古き良き時代を楽しむための”アンティークタックル”として求めるわけで、こうも外見が悪いと整備して売りさばこうにも買った値段以上の値段が付く未来がまるで予想できない。送料入れて4千円チョイ、それだけあれば大豆製品ばっかり食ってないで肉かなんかでも食えたはずである。
ということで売れないとなったら使うことを想定してスペアスプールでも確保するかと、その他の部品在庫も確認しておきたくて「Mystic reel parts」さんのホームページを開いて、衝撃を受ける。普段ワシ英語のサイトは英語能力が貧しい限りなのでグーグルクローム様の自動翻訳で「常に日本語に翻訳」で閲覧してるんだけど、たまたまクローム様の更新に伴って設定が初期化されてたのか原文で表示されて、コレまでコロナ禍関連で海外発送について「完全に停止しました」となってるのを見て、早くコロナ禍終息して発送再開して欲しいな、と無邪気に思ってたんだけど、原文には「Stopped Permanently」となってる。パーマネントリーってワシの英語能力では知らんだけで”完全に”って訳すのか?美容院でかける”パーマ”はパーマネントウェーブの略ってぐらいで、意味的には誇大広告だと思うけど”恒久的な巻髪”っていうような意味で、”恒久的に”今後も基本的にずっと続きますっていう意味だろって、詳しい説明のページに飛ぶと、「郵便料金高なったし、関税も高いし、運送は遅延が多いし、クレームが多くてうちとこみたいな中小企業では海外発送対応はもう対応ようしまへん。世界のお客さんスンマセン。米国にある輸入代行業者とか使ってください。」っていうようなことが書いてある。そんな殺生な!郵便料金の改定とか5年は前の話だと思うので直接的な引き金はコロナで物流が混乱したのが原因だろう。ワシ的にコロナ禍において魚港の実質禁漁の次に被害がデカい。基本的に今保持しているスピンフィッシャーの部品は一生使う分を想定して在庫していて、欲しいのは予想外に出番が増えたインスプールの714zと720zのベールスプリングぐらいだったので、まあそういうことならと速攻で「須山スプリング」さんに現物見本送って10個ずつ作ってもらう注文入れたんだけど、長期的にはどうにかせねばなと、輸入代行業者も調べてみたりした。けど、使うとなると面倒くせぇし当然手数料が掛かって割増になるしで、ミスティックさんにはコロナ禍終息後で良いので国際配送是非復活お願いしたいところである。泣けてくるぜまったく。このコロナ禍に海外発送遅れたりなんだりでミスティックさんにクレーム入れるのが馬鹿ってもので、そんなもん状況考えたら想定できるだろって話で馬鹿のせいでエラい迷惑である。まあスペアスプールは34ドルもしてて、送ってもらったら中古で一台買えるぐらいにはなるので現実的じゃないようでもあるけどね。古い製品のことで今のPENNの輸入元のピュアフィッシングジャパンが何とかしてくれるともおもえんしな。
というわけで、中古で”部品取り個体”とか部品そのものを探すのもありかなと考えるにしても日本じゃ弾数少ないし米国中心のネットオークションなら「イーベイ」かなと思うも、イーベイに出品してる人も”海外発送いたしません”って人が多いので、ちょっと調べたらこれも代行サービスはあって、送料を節約するのに向こうで留め置いてまとめて配送とかもしてくれるらしい「セカイモン」とかいうところに登録してみた、けど眺めてみると米本国でのPENN需要はさすがに侮りがたく、けっこう強気のお値段設定で手数料送料かけてまで手が出るようなのはなかなかないのが実態のようだ。まあこれは金に糸目をつけない背に腹かえられない事態用だなといまのところ思うんだけど、登録しちまったら覗いてしまうのでひょっとしたら既に足がズボッとはまってしまっているのかもしれない。704の古いのとか、米本国じゃZの復刻版が出たぐらいの人気があって超売れたんだろうとは思うけど弾数多くてそそられるものはある。
ちゅうわけで、スペアスプールも入手の目処はたたず、売って元が取れる筋も見えてこずでどうしたものかと思うけど、まあ手元に来ちまったものは仕方ないということで、まずは分解清掃して使える状態に復旧しておくかと、久しぶりの全バラし整備にちょっとウキウキ。プラモデルなら組み立てるだけだけど、リールだと分解して掃除して注油して組み立てってできてとってもお得だと考える、のはさすがに無理があるけど楽しくはある。これがまた、この時代のPENNは超単純明快で、部品数50ぐらいしかないのでサクサクと分解してパーツクリーナーでシュッシュと古いグリスを落とした状態がこの写真。ハンドル軸周りのギアが抜けてないのがご愛敬だけど不安になるぐらい部品数少ないのがおわかりだろうか?ベールレス機の「
706z」だとさらに部品数少ないし、第4世代の逆転防止周りを一方通行のベアリングだけにして逆回転無しに割り切った「
430ssg」も部品の少なさでは良い線いってるけど、部品数50ぐらいって、銃の世界だと「コルトガバメント」がそのぐらいの部品数で、製造も整備も簡単なので100年から前の設計だけど、今でもライセンス生産で途上国とかで造られてその国の軍や警察が使ってるとかいう話を聞く。単純で信頼性の高い道具は武器でも釣り具でも現場で長く愛されるっていうのは同じなんだなと実感できる。
見ても分かるように、緑の時代のZの付かない古い機種で、まずは細かい所で恐縮なれど、油切れてどこも重くなってたので、分解前にネジ周りにCRC666を吹いてしばらく放置しておいたんだけど、なにげにハンドルノブとハンドル根元の注油口が凝ってて面白い。写真では分かりにくいかもだけど、ボールペンのペン先みたいな感じで丸い頭が顔を見せてるので何だろうと思ったけど、これ下からバネかなんかで球状の蓋を押し上げてる構造のようで、真ん中の丸いのを潤滑油のノズルの先で押さえると隙間ができて油が注せる。ハンドルノブのは後年のモデルでは開放しっぱなしの穴だし、ハンドル根元の注油口は普段はねじで蓋する方式を経て後年省略となってしまった。昔の方が職人さんが技を効かせてたって話は良く聞くけど、確かにこういう細かい所に凝った仕組みを使ってるのは、今みたいにせせこましく経費削減のことを考えないといけなくなる以前の”良き時代”を感じさせてくれる。とともに、やっぱりPENNってセネターとか庶民的な両軸だけど、トローリングの世界でインターナショナルシリーズっていったら高級トローリングリールの代名詞で、スピンフィッシャーもこの時代は細かい所まで贅を尽くした高級品だったのかなという気がした。
高級品説を裏付けるもう一つのポイントがスピンフィッシャーにしては珍しく、スプールが樹脂性だというところ。てっきりアルミを緑に塗ってあるんだと思ってたので意外に思うと共に、PENNの樹脂部品ってワンタッチのドラグノブがよくヒビが入ってる印象があるけど大丈夫かな?とちと不安になる。けど現状普通に生き残ってるということは大丈夫で、当時の最新素材であったであろう樹脂素材をおごって軽量化を図ったんだろうか。アルミ製のと互換性あるの?っていうのは不安だけど、アルミの方だとなぜかドラグノブが550ssgのが使えるそうなので試してみたら、この樹脂性スプールでも使えたので大丈夫そうではある。

樹脂性スプールだけど、真ん中には金属のスリーブが入っていてドラグは3階建て方式で今の4500ssとかのドラグパッドがそのまま使える大きさで、ドラグパッドは今のカーボンシート剥き出しの感じよりは樹脂でしっかり固めてある。ドラググリス塗って調子をみたら当たり前にドラグとして良い感じに機能している。面白いのはドラグパッドの一番上の主軸に固定される金属ワッシャーと、ドラグノブのドラグを押さえる金属面に穴ぼこと出っ張りがそれぞれ設けられていて、ドラグを締めていくと、ドラグ効くあたりになるとカチカチと締める感触が得られるとともに、締めたドラグが不用意に変わってしまわないようになっている。4400ssとかユルユルドラグで使ってると、ベール起こすときとかに触ってしまうのかドラグが緩んでしまってるときがあったりするけど、これだとそういうことは無いだろう。芸が細かい。ちなみに4桁第3世代スピンフィッシャーのユルユルドラグ時のドラグ緩み問題は、スプール共通でドラグノブが防水パッキン付きに進化している第四世代スピンフィッシャーのドラグノブに交換してやるとほぼ解決できる。なのでssg自体は430ssgしか持ってないけど、4400~5500ssには第4世代ssgのドラグノブを付けている。ので先ほどスプールの互換性の間接的な確認に使った550ssgのドラグノブは我が家では5500ssに装備されていたのである。
他にも最新素材を惜しげもなく投入したんだろうなと感じたのがラインローラー。オークション時の写真にもなんか濃い灰色っぽい色で写ってて素材が不明だった。硬質クロームメッキが剥げて地金が錆びてるのかな、あるいは黒っぽく見えるタングステンとかの堅い金属かなと疑問に思ってたけど、届いてみるとどうも質感からいってセラミック系のようである。掃除して注油してやったらちゃんと回ってる。錆々に腐蝕してたらどうにもならんなと一番心配していたけど、流石PENN腐蝕には強い素材を使ってございます。
あと面白かったのは、ベール反転機構の反転レバーを蹴飛ばす部分が、714zではアルミでベアリングを押さえる蓋が作ってあって、そのアルミに穴を設けてそこから蹴飛ばすためのステンレスの部品が飛び出してるんだけど、712では男らしくベアリングを押さえる蓋自体が真鍮で、その真鍮をちぃと曲げて尖らせて蹴飛ばす方式になってる。スプール樹脂製で軽くしても、本体部品はあくまで錆に強く耐久性のある素材で作ってるところがPENNなのであった。っていう作り方してたのを、714と716という”スパースポーツ”だったり”ウルトラライト”だったりする小型機を造るにあたって、真鍮部品でアルミに置き換えることができる部分はアルミに、ってやったんだけど蹴飛ばしはやっぱり耐久性考えるとアルミじゃ不安だ、ってなってわざわざステンレスの部品を追加したんだろうなと思うと、PENN社の錆びないように、壊れないようにっていうこだわりが、設計思想が、やっぱりとっても頼もしく感じられるのであった。
という感じで、なかなかにスピンフィッシャーの歴史を、古き良き時代のアメリカの物作りを感じさせてもらえる分解清掃だったんだけど、1つ不具合が生じてて、腐蝕でスリーブが太ったのかあるいは何らかのゆがみでも生じているのか、ハンドル軸のギアが抜けてくれなかった。コイツ抜けないと逆転防止関係もちょっと抜きにくいので、仕方ないので、抜けるところまで引っ張っておいて、ブラシとパーツクリーナーのノズル突っ込んでゴシゴシシュッシュと古いグリスを除去して、最後はいつものように、青いグリスを特盛りにしてグリスシーリングで仕上げておいた。力技で無理矢理抜くとろくなことがないというのは経験則で学んでいる。
グリスとオイルがまだ馴染んでないし、組み直してアタリが取れてない感じもあって、やや巻きが重いけど、もともとウォームギアは重めでしっとり滑らかな巻き心地が売りでもあるし、経験的に使ってればちょうど良い塩梅ぐらいには軽くなってくると思ってる。ハンドル軸のギアが抜けなくなってるのも回して適度に削れれば抜けてくれると信じたい。
とりあえず分解清掃しての整備は無事終了で使用可能な状態になって、破損している部品とか探さねばならんこともなくて、とりあえずめでたしめでたし。お野菜の色を料理に生かしたいなら白出汁白出汁という感じだけど、じゃあコレが良い値段で売れるかというと、最初に書いたように絶対に3千円ぐらいにしかならない。ワシが半日がとこかけた手間暇など誰も評価してくれないっていうか、書く分には「分解清掃済みで使用可能」って書いても、それ確認しようがないって話で、やっぱり見た目をどうにかせねばならんっていうのが、リール売りさばくなら重要なんだろうなと思う。
ワシの苦手な分野である。新品で買ったのならともかく、中古で買ったリールの塗装が剥げちょろげてようが、銘板がなくなってようが、機関がちゃんとしてて魚釣れればイイじゃんって正直思ってるので、手に入れたリールをきちんと機能するように整備してやろうっていうのはやる気満々で取り組めるけど、美しい外観にしようっていうのはあんまりやる気わかないのよね実際。
塗装技術で元のとおりとまでいかなくても、緑一色に塗り直すだけなら何とかなるだろうって気もするけど、丈夫な塗装にするにはどうすれば良いかとか全く知識がないので手が出せない。車用品店でスプレー塗料買ってきてプシュプシュやればできるのなら簡単だけど、全く一緒の色目の塗料が手に入らなければ今塗られている塗料を剥がす必要があるのか無いのか?とか悩ましい問題はありそうで、そんなに簡単ならみんな自分でリペイントするだろうと思うけど、ルア-のリペイントなら珍しくないし、ワシも簡単なのならできるけど、リールのリペイントって工房に頼んだら良い値段してる印象しかなく、素人にどうにかできる気がしない。
じゃあなんか素人にできることはないか?って考えて、以前
アルチェードの「2CS」をいじったときに、シールベタベタ貼って上からウレタンかエポキシでコーティングして”痛リール”をつくったろうかしらん。って考えたのを思い出して、シールでごまかすっていうのは割と簡単で良いかもしれん。ダメだったら剥がせば原状復帰できるしなと思いついて、とりあえず試してみました。
せっかくのアメリカンなリール、アメリカンポップカジュアルな雰囲気でアンディ・ウォーホルとまではいかなくても、たとえばフェンウィックのグラス竿のロゴ「FENGLASS」とかの良い塩梅のくだけた気安い感じを目指してみたい。
銘板は
720の”お魚銘板”の感じを取り入れて、背中は赤地に白文字のPENNのロゴの配色で「SPINFISHER」、フット側はアメリカンな感じを前面に星条旗背景に「U.S.A.」ときたもんだ。シールプリントできる光沢紙を買ってきて大きさいくつか用意して最初は普通の紙で試し刷りして大きさ微調整して刷ってみる。
この時点ですでに失敗臭は漂ってたけど、貼ってみたら案外決まるかもと貼ってはみた。
ご笑覧あれ。
ダメだコリャ!
徹底的に美的センスに欠ける代物になってしまっていて、これでウレタンコートかけて完成させようって気には当然ならず、ペリペリッと剥いでおいた。まあ何事も経験である。ワシは美的な方向を目指してもダメだというのが分かっただけでも良しとしておこう。
丸い銘板は素人臭くも悪くはないけど、緑に赤地はドぎつすぎたし、星条旗にいたってはアホにしか見えん。まあ実際アホなんだろうけど、712自体は断じてアホじゃないから相応しくない。
この見た目でネットオークションにかけたら、3000円以下の値段しかつかず、落札者は届いたらまずシール引っぺがしてウレタンが残ってたら有機溶媒で拭き取ることだろう。
とりあえず、見た目は無視して2号ナイロンでも巻いて使ってみるか。ってところにおちついたけど、いろいろ勉強になったし”おうち時間”の暇もつぶせていい”遊び道具”ではあった。4千円がとこの価値は充分あったと思うことにしよう。
良い魚も釣れて、スピニング熱は寛解してくれるんじゃないかって思うけど、それはさておき、とにかく早くコロナ禍落ち着いて近所漁港で豆アジ釣れるようになってくれと願わずにいられない今日この頃。皆様も悪い病気をこじらせないようにご自愛ください。
昨年に引き続き、春のシーバスシーズン不調に沈んでいると、当然のことながら悪い病気が出てくる。もう慣れたけど、いちおうアタイ病気が憎いと言っておこうかしら?
そんなスピニング熱悪化に拍車をかけたのが、某ネットオークションに1円スタートで釣り具を出している”W○VE”という釣り具買い取り専門店。ここは店舗は買い取りのみで、販売はネットオークション等で行ってるという商売なんだけど、これがマニアがお亡くなりになって秘蔵品が持ち込まれたのか?中古釣具屋がつぶれて在庫が放出されたのか? とにかく、国内のネットオークション等ではめったにお目にかかれないようなレア機がガンガンと出品されて、一時沼の底の方でナブラが立っていた。
乗るしかない、このビックウェーブに!とワシも参戦。戦果(戦禍)はPENNが青い「スピンフィッシャー704」と緑の「スピンフィッシャー700」、シェイクスピアの「シーワンダー2090EJ」、大森が「カーボンTB303」の4台。と使いどころが全く自分でも分からん大型機が勢揃い。TB303はリアドラグを活かしてブン投げ泳がせで、ドラグユルユルでアタリを待って、魚が食ってジージードラグが鳴り始めたらあらかじめ想定してたドラグ数値までギュッと締めてアワセ食らわす、なんてのに使えるかなとも思ったりだけど、他は704は実用性はあるだろうけどインスプール大型PENNということでは706zとかぶるし大きさ的には6500ssとかぶるしでどうにもこうにも。700もまあいい、ハンドル形状がクルリと反転して収納する形になる以前の初期モデルではないにせよ、スピンフィッシャーの始まりの機種なのでPENN偏愛者としては押さえておいてもいいだろう。だがシーワンダーにいたっては、どうすんのこれ?って自分でも思うぐらいだけど、コレが意外にどういう需要か競りまくって、2台同時に出てた時に”2台以上同機種が出たときは明らかな瑕疵がある個体の方が皆落とせそうに思うので競り上がるの法則”を読み切って状態良い方に突っ込んで見事に隙間を付いて落札。したのはいいけどやっぱりどうすんのこれ?
しかしながら、これでも競り負けまくったので余計なリールをそれほど増やさずに戦禍は抑えられた方だったとも言える。たった4台ぐらいどってことないやね。ちなみに競り負けたのは、様子見で低額入札してたのも含めてPENNが「710」「712z」「720」「430ss」、シェイクスピア「2071」「シーワンダー2080」「シーワンダー2090」×3「スピンワンダー2064」、オリム「トゥルーテンパー727」×2、「トゥルーテンパー707」×2、フルーガー「シュープリーム551」、大森「ダイヤモンドマークⅤ」「カーボンTB303」×2「アルフォード25」×3「マイコンTB302 3台セット」、メップス「スーパーメカ」、とコレ読んだだけで沼の底の皆様にはどんだけケッタイなスピニングが出てきていたかお分かりいただけるだろう。っていうかおそらく当方同様にナブラに突っ込んでたんではないだろうか。そう、これだけの大放出祭りになるとお好きな人は気がついて、ネット上で人山が立つのが可視化できるかのごとき注目度の上がり方で、フルーガー「シュープリーム551」はお気に入りのシェイクスピア2062系同型機なので欲しかったのと、「アルフォード25」はもの自体はダイヤモンドキングと同型機っぽいんだけど、色目がもろに緑白銀のPENNの”グリーニー”カラーでこれは入手せねばと思って、そこそこ気合い入れて金額突っ込んだけど、競った相手全く引く気配なしで火傷しないうちに敗走決め込んで芋引いてしまった。アルフォードは計3回敗退。

今回異常だったのは、種類数も多かったけど、同じ機種がいくつも出てきて、かつそれが2週以上にわたって出てきたので、1回競り負けてもすぐにリベンジマッチの機会が巡ってくるという「釣り具との出会いは一期一会、迷ったら買っておけ、次買おうなんて思っても次は売ってない」という、釣り具蒐集の道ではワシなど及びもつかん深度に潜られているツーテンの虎ファンさんのお言葉に反する状況が生じていて、正直頭が混乱したまま入札を繰り返していた。幸い人山状態で競り負けが多くて今考えると被害が少なくて済んだけど、入札中は携帯に高値更新の報が入る度にブチ切れて「コレで文句ねえだろ!!」と相場無視の大枚突っ込みたくなるのをかろうじて抑えているような有様。落札したPENN2台はまあ相場どおりで、シーワンダーは結局6台出てきたんだとおもうけど、競り負けまくりつつも、前述したように1台をその中で一番低い落札価格で競り落としたし、「カー
ボンTB303」は3台のうち1台をこれも安値で落札と、頭おかしくなりそうな(おかしいのか?)中でも冷静に切り抜けられたと安堵している。ちなみに「カー
ボンTB303」となってたので、マイコンTBシリーズに樹脂ボディーの後継機があったのか!という全く初耳に水の情報で驚いたんだけど、我が家に来たのを見たらカーボンちゃうやんけ?という金属本体で「カーソン(carson)」ブランドにOEM提供してたマイコンTBシリーズでございましたとさ。”S”の字体が角出てて確かに”b”に見えなくもない。
一連の出品されたお宝?スピニング達、おそらく海外の釣具屋が潰れた倉庫流れ品をまとめて買い取ったいわゆる”バッタ品”とかじゃなかろうか?個人の蒐集品にしては同じ機種がかぶりすぎている。かつ品揃えがバタ臭い。シーワンダーって600g越える大型機でっせ、こんなもんいくら好きでも6台は集めんだろうって話。ワシ結構好きな方だと思うけど6台はいらん。あと箱入り娘率の妙な高さも個人じゃなくて業者臭い。
でもって、さてコイツらを分解整備してネタにしましょうか、っていかないのが目下の状況。とにかく整備待ちの機体が多すぎて完全に渋滞起こしている。今回の戦果の4台は2台は箱入りデッドストックっぽいぐらいで状態も良く整備は急がない。急ぎの案件は昨年使ったリールだったけどこれはなんとかカタがついた。ただ、謎の大放出祭りが始まる直前は韓国日吉釣具に端を発してちょっとKOREA方面に症状が出かかってて整備に手間くうリアドラグ機が2台整備待ちで、1台は使うかもなので急ぎたいし、その他にもメイドインジャパンな変なのが3台。さらに物々交換でやってきたアーリーアメリカンな素敵な1台もあり、そして、昨年11月に5台まとめて買って余りにボロいのが多いので、CRCぶっかけてビニールに突っ込んだ上で箱にぶち込み念のためビニール袋で覆ったまま放置中のジャンクリールが静かに眠っている。2台は単純な分解整備だけど2台は欠損ありの手がかかりそうな個体で、もう一台は面白い機構のリールらしいけど錆が酷くてこれも苦戦しそうで、手を出すのが正直おっくう。とはいえ夏になると作業ブース(台所の隅)が暑くて機械油にまみれて作業したくなくなるので、それまでにコリアンな1台と面倒なジャンク5台はやっつけてしまいたい。
ということで、当面は韓国リアドラグ機と箱に封印されし5台をやっつけてブログネタにしようと思っておりますので、お好きな方はお楽しみに。デッカいシーワンダーとか早くご開帳して内部構造を堪能してみたいところだけど、順番からいって秋以降になりそうな気配になっております。
ということでボチボチといってみますかね。
※ てなことを書いていたらまたアルフォードが出て来て4度目の勝負!オレたちの戦いはこれからだぜ!! ー完ー
<オマケ情報>ドラグネタ書いたのでついでにご紹介。デカいの掛けたらドラグノブのアタリ面が熱で溶けた、といううらやまけしからん書き込みをいただいてて、その時に話題になった4桁第3世代スピンフィッシャーのドラグノブが、後期型ではアタリ面を樹脂製から真鍮製に変えてアップデートしてあるっていう、そのアプデ前と後の比較写真です。さらに第4世代ssmになると防水ゴムパッキンがつきます。そして第3世代にも適合します。4桁PENNをワシが史上最強のスピニングリールだと思ってるのは、こういう実際の釣りの現場からの不具合報告等を受けて「次のモデルで対応します」って新しい製品買わそうとするんじゃなくて、細かい改良を加えたマイナーチェンジで対応していて、かつ同機種の古いバージョンも部品交換で対応できるという、長く使う顧客が嬉しい対応を繰り返した末に実用性抜群のリールに仕上がっていってるからなんです。要するに”現場たたきあげ”のスピニングだってこと。最後SSJでラインローラーにボールベアリング入れたのは蛇足だと思うけど、7500ssなら原型になった70年代末登場の「747」から、80年代登場のギアがハイポイドギアなだけで多くの部分が共通の3桁「750ss」を経て1992年登場2005年廃盤の7500ssまでは、ほぼマイナーチェンジの域でしかなく都合30年近く売り続け、かつその後の第四世代「750SSM」にもスプールは共通で引き継ぎバッチリという、問題無いところは頑固なまでに変えない気質をワシャ愛さずにいられないのじゃ。ご理解いただけただろうか?5年やそこらで総取っ替えせにゃならんようなショボい設計はしてなかったってことだと思うんだけど、どうでっしゃろ?
ワシ常々釣り具と釣り人の関係は一期一会というか、それぞれの好みや道具の使い方とか想い出とかで、良いも悪いも変わってくるものなので、相対的なその釣り人にとっての最高の釣り具というのはあり得ても、全釣り人共通で絶対的な一番の道具などというモノはあり得ないと思っている。
大メーカー様が、ヘッタクソでも問題なく使えるように技術の粋とボールベアリングをこれでもかと突っ込んで恐ろしい値段になってる高級リール様とかワシ金積まれても使わんぐらいに嫌悪してるけど、好きな人にはたまらん魅力があるんだろう。何が良いのかサッパリ分からんけど、おそらくそういう人には瞬間的逆転防止機構の搭載される前のPENNだの大森だのの良さは、ましてやボールベアリングすら入ってない原始的なベベルギア機の丸ミッチェルとか、それこそ何が良いのかサッパリ分からんだろうからおあいこである。お互い好きなモノを好きに愛でておけばいい話である。
とはいえ、大森製作所謹製のダイヤモンドリールは古いスピニングが好きな人種には評判が良く、大森沼の住人はスピニングではミッチェル沼、ABU沼に次ぐ人口を誇っている気がする(当社調べ)。
そんな大森スピニングだけど、ここがイマイチとイの一番にあげられるのが、スプールエッジの形状で、スプールの糸巻き部分上面がなだらかな傾斜になっていて、スプールいっぱいにラインを巻くと、端の方はスプール上下の幅を超えていてラインが崩れてグズグズになってラインがドバッと出ていくトラブルになりかねないし、ライン放出時に斜面に広く当たって出て行くのでラインの放出性的にも良くないという理屈である。右がその大森スピニングのスプールの例で「タックル5No.1」のもの、左が糸巻き部分上面が真っ直ぐの優等生の例でPENN「スピンフィッシャー4300SS」でPENNはやっぱり分かってるなっていう感じ。
とはいえ、実際にはラインをスプールの直径ギリギリまで巻かず糸巻き量少なめで運用してやればトラブル自体はあんまり気にならず、実際の運用時は写真の「タックルオートNo.1(スプールはタックル、タックル5と同規格)」ぐらいの糸巻き量にしてるんだけど、ワシ遠投性とか気にしない近距離戦特化型の釣り人なので困ってはいない。いないんだけど愛する大森スピニングの欠点とされる部分が解消できれば、それはそれで気分が良いだろう。スプールの形状を変えるとなると、どっかの小工房にお願いしてアルミから削り出してもらうぐらいしか手がないように思えるかもだけど、そんな金のかかる人任せなことをワシがやるわけがない。
じゃあどうするんだって話だけど、ゆうてワシZEBCO「
15XRL」では割れて上部欠損したスプールを再建したぐらいで、なんなら日曜大工で樹脂素材主体にスプールそのものを作るのも不可能ではないと思っている。思っているけどさすがにそれは時間がかかるしめんどくさい。こんなもんスプールエッジの形状だけ真っ直ぐにしたいのなら、シャンプーハットみたいな輪っかを作ってスプールに填めて固定して、適当にそれっぽい形状にしてやれば良いだけじゃん。ということでおあつらえ向きにちょうどいじくって遊ぶのに良さげな「タックルNo.1」が送料込み1980円でネットフリマに出てたので確保、そのうちコイツでやっつけてみよう、と思っていたら先にいじくった
外蹴りアウトスプール版「マイクロセブンNo.1」でラインローラー固定ナットが固着してるのをネジ切ってしまうという失態を犯してしまい、その時にとりあえず問題先送りにして、ベール周り両機種共通なのでタックルの方の正常なベール周りをマイクロセブンにとりあえず移植してその場しのぎしてあった。なので、ネジ切ったラインローラー周りの再建も今回やらねばならない宿題となっている。ということで、スプールエッジの形状改良と壊してしまったラインローラー周りの再建が今回のお題であります。
それではスプール改良からいってみよう。
まずは何はともあれ現状把握からだなと採寸から始めてみる。今回スプール上下幅にスプールの糸巻き部分の幅を合わせるのも重要なのでまずはそこから。単純クランク方式の場合、どう考えても主軸に刺さってる棒の上下の幅がスプール上下幅のハズなので測ると約11mmというところ。スプ-ルの糸巻き部分は上端まで測ると約16mm。ちなみに直径は下のスカート部分で47mmあるのにスプール上部では42.5mmと小さくなっていて、インスプールだと下がったときにライン放出がローターと干渉しないように下の方が直径大きい必要はあるけど、アウトスプールの場合は同じで良いはずなので、これも修正するとスプール直径大きくなって”直径大きめのスピニングは使いやすい”と思っているので良い具合の改良になるはず。高さ的には5ミリ、スプール上面からスプールエッジが下にくる位置に輪っかを填めてやれば良いことになる。5ミリって大きいけど実際には現状のスプールエッジは丸く滑らかに立ち上がってるので、スプールエッジと呼ぶべきラインが当たるカド自体は2,3ミリ下がる程度という印象。

でもって、どうやって輪っかを填めるか色々悩んだ。輪っかを切らずに填めるのはワシ手品師でも何でもないので難しい。難しいということはできるのか?と聞かれれば、一旦スプールを上下に切って填めてからスプールをカスガイ使って上下くっつける方法がないこともない。ZEBCO「15XRL」のスプール再建したときの方法の応用である。でもスプールぶった切るのは強度面やら切ることで短くなるおそれやらなにやらで、あんまりやりたくない。かといって輪っかの方を何枚にも分けて貼り付けると今度は輪っかの強度面と水平の確保に問題が生じそう。妥当な落としどころとしては、輪っかに1箇所切れ目入れて捻って突っ込んでやるのが無難に思う。でもってその材料としては1mmのアルミ板でいくか、0.8mmのFRP板で行くかで検討して、捻って曲がった後の復元性が良くて水平が出しやすいFRP板で行くことにした。FRP板は薄くて丈夫なので一部ルアーのリップにも使われていて、この手の薄いFRP板は電子機器の基板に使われているので”基板リップ”と呼ばれている。我が家にあったのもまさに基板リップとして使うために買ったモノで、ハルコ「ソーサラー」の元のリップが薄くて弱くボックス内で割れてしまったのでその修理用だったけど、ほとんど余らしていたので出番があって良かった。
作成手順としては、外周はスプール糸巻き下面の直径にあわせて47mmでいくので直接スプールおいて油性ペンでなぞる。糸巻き部分が11mmにする位置に填めるには内径は35mmぐらいなので、外周から6mmの位置に点を打っていって内周を手描きする。
FRP板はわりと丈夫でカッターでは切りにくいけど金切りバサミやニッパーは使えるので金切りバサミで大まかに切り出していく。
1箇所内側に向けて切り込みを入れて、金切りバサミで大まかに直線的な穴を開けた後、ニッパーでバチバチと3角形を切り取っていく感じで内周を円に近づけていく。
大まかに輪っかの形になったら、サンドペーパーでひたすら削って円形に仕上げていく。
ヨッシャできた!と捻ってスプールに填めてみたら糸巻き部分が1ミリぐらい狭い。FRP板の厚さを考慮してなかったというお粗末。まあ削り足りなかった分には追加で削れば良しで、幅5mm弱でちょうど糸巻き部分の幅というか高さが11mmになる仕上がり。
ここでちょっと迷ったのが、1箇所切れ目を入れたんだけど、これはカスガイなり穴開けて縛るなりした方が良いのか?接着剤でくっつけただけでは開いてきてしまわないか?ということだけど、カスガイにしろ縛るにしろ出っ張ると引っかかって塩梅悪いので、0.8mmの板に0.4mmの溝掘って出っ張らなくするとか面倒くせえことこの上ないので、5mm弱の幅に巻かれたラインの圧力は外側ということもあるしたいしたことないだろうということで、とりあえず接着のみで行く。開いてきてしまったらまた考える。
輪っかの水平を保つために11mm幅に切った厚紙で下支えしつつ、瞬間接着剤塗って最初は細いティッシュで作った紙縒りをグルッと巻いて、瞬間接着剤塗って、隙間に合わせて太らせた紙縒りをグルッと巻いて、外周まできたらサンドペーパーで形を整えてエッジの角が立たないようにFRP板の面取りもしてから、主軸に刺して固定してロッド回しで回しつつエポキシでコーティング。スプールとFRP板の段差も切れ目もエポキシである程度ならしておく。最後黒のタッチペンで色塗ってスプールはこれで完成。
スプール共通のタックル5で試してみたら、上下幅ちょうどよくラインがキッチリと巻かれて良い塩梅に仕上がっている。
よっしゃ、スプールは上手いこといった。次は懸案のラインローラー固定ナットをネジ切ってしまっているところの再建である。以前「ラインローラー周りを再建する計画は準備していて、プランA及びBを既に立案済みで上層部(ワシ一人で現場と上層部兼任だけどな)のゴーサインを待っている状態」と書いたところだけど、プランAは機能回復というか修繕に近いんだけど技術的には難しくて失敗しそう。プランBは技術的には難しくなさそうだけど、ちょっと元と同じような機能には戻らなくて”改造”の範疇になる。プランAで失敗してからプランBに切り換えることは可能なので、いっちょ難易度高いプランAに挑戦してみる。現状は写真の様にナットが填まってたネジが根元近くで折れて、折れた残りはナットの中で回収不能になっている。どうするねんコレ?
って考えて、難しそうだけど寸法的にはギリギリできなくもない。とワシが立案したプランAが、流行の?性転換モノ的な方法で、もともとはローラーが填まる軸から伸びた棒が雄ネジになってて雌ネジ切ってある円錐形ナットで締めてたんだけど、雄ねじの部分、いうなら”息子スティック”にあたる部分がもげてしまった状態なので、もう雄ネジとしては機能し得ないので、逆に穴を掘って雌ネジ化しようというものである。っていうても、ローラーが填まってる軸は2.7mmしか直径がない。穴掘ってバネを利用して雌ネジのネジ山をつくる”リコイル”で2ミリのネジを使おうと思うと、バネを入れる関係から2mmの穴では足りず2.5mmの穴を開けなければならない。整理すると2.7mmの真鍮の丸棒に2.5mmの穴を開けなければならないという、ちょっとズレたら穴が横に開いてしまいそうな危うい作業工程である。
まあ失敗したらプランBだよな、という逃げ道は作ってあるし、ローラーが填まってる軸がダメになったら真鍮パイプ利用で軸から再建するプランCも追加で試してみてもいい。
ということで”ままよ”とプランAにまずは挑戦してみる。
はじめに、余ってる雄ネジの部分を金鋸で切り落としてラインローラーの填まる円柱部分だけにする。
そして、まずは細い1mmのドリルから穴掘っていくんだけど、最初のこの時に穴が真ん中に真っ直ぐ掘れるかどうかが、成功と失敗を分ける分水嶺なので、写真では電動ドリルが写ってるけど、ドリルでいきなりギュィーンッて回すと真ん中からズレることが多いので、まずはドリルの刃?単体で手で持ってキリのようにグリグリと回して、少しずつで良いので真ん中に真っ直ぐな穴の取っかかりを作ってやって、そこからは小型万力に固定して、真っ直ぐ上からになるよう気をつけつつ電動ドリルでドリドリと穴掘ってやったら上手くいった。最初で失敗したら修復はほぼ不可能。素材的には真鍮にクロムメッキなので金工用のドリルなら問題無く穴は掘れる。あとはドリルの太さを順に太くして穴を拡張する。
で、穴拡張して仕上げていくときに2mmのドリルで軸の長さぐらい穴を掘って、2.5mmのドリルの時は、その半分ぐらいリコイル用のバネが納まるぐらいの穴で止めておく。リコイルのバネで作った雌ネジを越えて雄ネジが収まるので、穴の底に雌ネジ部分があるより雌ネジ部分全部使えて、突っ込む雄ネジの長さは雌ネジ越えていい余裕があるので大雑把で良くなる。
リコイル用の道具でバネを巻いて直径小さくしてから穴に挿入して、中で巻きを緩めて2.5mm部分の底に設置。
長さ調整していない長いネジで試してみると、しっかりネジとして機能してバネが抜けてきたりもしないようだ。樹脂とかに”リコイル”を使うとバネの引っかかりが弱くて抜けてきたりするけど、真鍮だと適度に堅いのでしっかり噛んでくれるようだ。
最後、雄ネジの長さを切って調整して、ベールアームの穴よりネジがだいぶ細いので間を埋める仕掛け用パイプ切ったリングを噛ませて、ネジの頭の手前に緩み防止のワッシャー填めてネジ締めてみた。良い塩梅に締まって固定できて、ちゃんとラインローラーも回転してくれて問題なさそうで、思ったより上手くいった。なんでも試してみるモノである。
ということで、今回の大ネタは無事成功したので、いつものようにグリス盛り盛りで組んでやるんだけど、ちょっと小ネタもございます。
一つは逆転防止のスイッチが欠けてるので、ちょっとお化粧直ししておきました。
まあ、欠けてても機能に問題ないっちゃないんだけど、見た目良い方がイイかなと、割れた面に2箇所1mmドリルで穴開けてステンワイヤーを刺して骨組みにして、れいによって、ティッシュを瞬着で固めてそれっぽい形に成形して、ナイフとヤスリで適当に形を整えて銀色のスプレー塗料で目立たないように塗装。雑な仕事だけどまあこんなもんで良いでしょう。
もういっちょは、今回の「タックルNo.1」はありがちなんだけど、右巻でこの時代のハンドルネジは左右別で左巻きにするには交換が必要なんだけど、そんなもん付いてないって話で、いただきものの自作「大森No.1、No.2用左右別型ハンドルネジ左」を使っても良かったんだけど、ちょうど部品売りで「オートベールSS」のハンドルが手に入ったので今回そちらを使うことにして、”左ねじ”は温存した。で、オートベールのハンドルには「2ボールベアリング」とかシールが貼ってあるし、ボロくて塗装ハゲハゲだったりもしたのでタッチペンの黒で塗装して使った。
というわけで、いっちょ上がり。
今回いじったローラーを固定しているネジは念のため引っかかったり抜け落ちたりしないように、エポキシを盛ってツルンとさせておいた。ナットがなくなった分軽くなって回転バランス崩れてプルッたらオモリ追加で調整だなと思ってたけど特に問題なくクルクル回ってる。
スプール上面は”アルミ感”を残すため輪っか状に塗り残した部分を設けたけど黒一色の方が表情は引き締まるか?そのへんの美的センスはワシには欠けてるのであまり気にしないでおこう。田舎ヤンキーの改造車みたいにケバゴテしてなければ見た目なんぞ何でもイイや。
ハンドルノブの形が、大森三角パドル型になったのも案外違和感ない。ハンドルノブはどうせ”改造”するなら好みの形にしたくなるところだけど、意外にどんなハンドルノブが良いのかって難しくて、たとえば世間的に評判の良い”ミッチェルのひねりハンドルノブ”だけど、最初摘まみやすく感じて「コレがミッチェルの捻ったハンドルノブか!」と感動したけど、ワシわりとしっかり摘まむのか摘まみやすくて指の同じ所にノブが当たってると長時間の使用では痛くなってくる。たいした痛みでもないので丸ミッチェルのハンドルノブわざわざ換える気はないけど、ハンドルノブの形状は実際摘まんだり握ったりして使ってみないと評価できないもので、手の形や大きさもツマミ方も個性があるので、自分に合ったものがどういうモノかさえ難しい。とりあえず大森三角パドル型は摘まみやすく痛くもならないのでワシ的には合格なので換える必要はないだろう。
さて組み上がったし、ラインも巻いてみる。
ちょい後ろ巻きになってしまってる気がするけど許容範囲。しっかり糸巻き部分の上下幅一杯つかってラインが巻けている。
ワシはトラブルの少なさ重視でラインはあまりいっぱいいっぱいまで巻かないので、この状態で直径42mmラインが巻かれている。上の方に写真がある、元のスプール形状で少なめに巻いているタックルオートNo.1の巻いたラインの直径が37mmなので、実質5mm糸巻き部分の直径が大きくなっている。スプール糸巻き上面を真っ直ぐにしたのでラインの放出性も良くなってるはずだ。スピニングリールの改造っていうと、世間ではボールベアリングの数を増やしたがるようだけど、そんなもん少なくとも飛距離にはあんま関係ないはずで、あれほど飛距離にこだわるのなら、スプール形状いじって然るべきだと思うけど、あんまりそういう改造は聞いたことがない。なんかご大層な高級リール様のようにスプールエッジには特殊な堅い素材とか使わねばならんので”いじれない”と思ってるのかもだけど、耐久性とかはともかく飛距離に関係してくるのは”形状”であって素材は滑りやすい方がイイだろうけどまあ普通に磨いた樹脂でもアルミでも上等のハズである。あとはスプールの直径、純テーパーか逆テーパーか、オシュレーションが密巻きか綾巻かとかでも放出性が違ってくるというところか?飛距離にこだわるなら純テーパーのスピニングだってあって良いのに、昔みたいな純テーパーのルアー用スピニングってとんと見なくなった。今回の改造は、ライン放出性を良くする”飛距離に直接的に効く”改良だったということは自慢できる気がしている。
しているんだけど、スプールエッジの形状について、大森のアルミの時代と樹脂製の時代のを比べたりしているうちに、ちょっとワケが分からなくなってきて、本当に今回の”改良”は自分にとって必要だったのか?という気がしてきて、改めてもうちょっと頭を整理してみることにした。長くなってるけどもうちょっとお付き合い願いたい。
ワシが大森製作所が存在した当時に愛用していたリールは
「キャリアーNo.1」と「マイコン302TB」である、これらの機種は大森製作所の
”黄金期”最後の方にでてきた機種で、キャリアーは本体も樹脂製だけど、本体金属製のマイコンTBシリーズもスプールは樹脂製で、これまでワシ「後の方に作られたこれらの機種はスプール上面の傾斜がきつくなくなってて改善されていて使いやすかった」的なことを書いてきた。スプールがアルミから樹脂に変わったときに金型新しく作る時に改善したんだろうなぐらいにボンヤリ認識していた。なので、今回傾斜きつめのアルミスプールのタックル、タックル5、タックルオートをいじりつつタックルのスプールを改造してみて、じゃあどのぐらい違うんだろうって、タックル5No.1、キャリアーNo.1、スプール同じだけどマイクロセブンC1、マイコン301TBのスプールを並べてみて、比較してみた。それが上の写真である。
ナンジャコリャ?キャリアーもマイクロセブンCもタックル5と形状一緒やんけ!マイコン301TBのスプールだけスカートも長いし糸巻き上面の傾斜も微妙になだらかな気がするけど、キャリアーもマイクロセブンCもきっちり傾斜してるやん。どゆこと?またワシ嘘書いてやがったな!あいすんませんなぁ。堪忍したってくんなまし。
マイクロセブンCシリーズもそこそこ使ったし、写真のキャリアーNo.1とマイコン302TB、301TBは若い頃の愛機なので散々使い倒した。その時に、飛距離的に別に困りはしなかったのはワシの釣りが近距離特化型だから参考にならんにしても、ラインがドバッと崩れて出たとかのトラブルもなかったと思うし、今もちょくちょく使ってるマイクロセブンCシリーズも使いやすいリールでトラブルとかは少なくて快適なリールだと感じている。スプールの糸巻き部分に対してスプール上下幅が狭いスピニングは、巻いたラインの上下が崩れてトラブルが多いという理屈じゃないのか?明らかにその理屈に自分の感触が反している。いかに理屈から言ってなさそうであっても、現実にそうなっているのならそれが正しく、かつ、そうなる理由が隠れているはずである。その理由は何か、ここに来てパソコン椅子探偵の推理の時間である。
ひょっとして、とノギス片手にライン少なめで運用しているタックルオートNo.1の糸巻き部分の幅を測ってみたら、謎はたぶん解けた。すまないが大森沼の関係者を呼んでくれたまえ。
写真では分かりやすいように、スプールが上がって下がってする1回分ラインの色を変えてあるんだけど、ワシが経験則で少なめに巻いているラインの状態で、ラインはスプール上下幅一杯11mmに巻かれているのである。それより幅が広がるところまで巻いてない。なので上下部分で崩れたりはしない。単純明快。本体タックル5だけど同じ単純クランク方式なので気にしないで欲しい。というか、ワシがさっき書いたタックルオート、タックル5,タックル、キャリアー、マイクロセブンC、マイコンTB、どの機種もハンドル一回転でスプール上下一往復の単純クランク方式で、ということは綾巻でありラインの放出性はイマイチでもトラブルは少ない方式で、かつ、少なめに巻いたラインが放出するときには斜めったスプール上面の傾斜に多く当たって出て行くのでこれもライン放出性は悪いけどトラブルは少なくなる要素。つまり、大森スピニングのような放出性の必ずしも良くない糸巻き上面に傾斜が付いているスプールに少なめにラインを巻いて運用するとラインがドバッと出ていくようなトラブルはむしろ軽減されるのである。って言うかワシはそういうトラブルは記憶にないぐらいで極めて少なかったはず。知っててそうしてたわけでも何でもないけど、自然とそうなっていったし、近距離特化型でトラブルなく使えるリールが良いリールと思ってるワシにとって、形状いじってない元の大森のスプール形状が実は合理的というか合目的的だったのである。
ワシ、今回スプールの改造が上手くできた時点で、これから大森スピニング片っ端から糸巻き上面真っ直ぐに改造してやろうかと思ってたけど、むしろそのままがイイと理解した。飛距離重視の人には参考になる改造になったかもだし、ワシも勉強になって良かったけど、若干無駄骨臭がしないでもない。
よく考えれば、今時の高級リール様でも、単に放出性重視なら必要のない、糸巻き部分の上にちょろっと斜めに出たひさしのような出っ張りが設けられていたりする。要するにスプール上下減速式にして密巻きにしてたりしていて、放出性が良すぎるとラインがドバッと出てしまうトラブルとかが増えるので、ライン放出時にわざとちょっと当てて、そういうのを防ぐ仕組みを設けているのだろう。減速式は巻くの軽くなるしで高級機種では入れたいだろうし、そうするとそのままだとトラブルが多い、なので逆テーパーつけたりスプールエッジに”ひさし”つけたりラインの放出性は悪くなるけどトラブルの減る仕組みを設けているということだと理解した。
最近流行の釣りが、アジングだの管釣りの鱒だので軽いルアーを使って、かつ前者だとフロロだエステルだといったあんまりしなやかじゃないラインも使うので、放出性重視でカッ飛び仕様にしてしまうとトラブル多くて使いにくいっていうのも、今時のリールにやたらライントラブル防止のための工夫が多い背景なんだろう。まさにヘッタクソが、カッ飛び仕様までいかなくても、普通のスピニングでそういう軽い仕掛けの釣りをしたら不具合多くて困るだろうなと想像に難くない。メーカーさんある程度マッチポンプでそう仕向けてる部分もあるけど、ちゃんと釣り人の程度と釣りに合わせた道具を売ってるってことか?
ただ、そう考えると、そんな極端な軽いルアーを使わないシーバスとかでは、今時の高級機種やその機構を真似した下位機種では、トラブル少ないのは良いけど放出性良くなくて飛ばんがな、って遠投派のシーバスマンは思ってしまうかも。そういう人は今の逆テーパーのスプールじゃなくて投げリール由来の純テーパーが付いてた時代のスピニング、たとえば
ダイワの革命機「ウィスカートーナメントSS」とか今こそ出番じゃなかろうか?そこまでじゃなくても、スプールエッジの角がキリッと立ってるミッチェルとか飛距離的には優秀なはずである。たしかに丸ミッチェルはプラナマチック入ってなくても良く飛ぶように思うところ。スプール径大きめも効いてるんだろうけどな。
逆に、ライントラブル防止策で、ライン少なめに巻いた大森スピニングをライトタックルの釣りに使うというのもありではないかと思えてくる。なにしろ、さっき書いたようにスプールエッジに大きな”ひさし”が付いてる状態だし、綾巻でもありライントラブルに強いのはワシ実感してきたところ。
ついでに、PENN4桁スピンフィッシャーでも4400SS以上のモデルはぬこさんが”
原始A-RC”と書いてたように、真っ直ぐな糸巻き上面にちょっと”ひさし”が突き出てる形状になっていて、純粋なライン放出性よりトラブル防止をやや重視している感じ。まあ昔っからこの手の工夫はあったって話で、スプールエッジ、糸巻き上面の形状は各社各時代で想定する釣りやら釣り人やらによって適切と考える形状を選択してきていたようで、釣り人はそれらの違いを認識しつつ選べる程度には各種スピニングがこれまで世に出ている。まあワシ認識あんませずに経験則でトラブル少ないリールをトラブルおこさないように使ってきたわけだけどな。あと細かい話だけどラインの放出性の良さが即飛距離向上を意味しないっていうのもある。何じゃそれ?って話かもだけど、例えば固定重心のミノーとか投げるときに、ある程度放出性が悪くてラインの抜けが悪くてルアーがライン引っ張って飛ぶ形になると、ルアーの飛行姿勢が安定して飛距離が出るとか、そういう細かい例外もチラホラある。
という感じで、まあ道具っていうのは、それを使う人の好みや技術はもちろん、使う状況や仕掛け、調整具合、重視すべき要素なんてのが種々絡んで、一筋縄ではいかず、最初に戻るけど「釣り具と釣り人の関係は一期一会」「相対的なその釣り人にとっての最高の釣り具というのはあり得ても、全釣り人共通で絶対的な一番の道具などというモノはあり得ない」って話で、少なくともどういった機能がどういう理屈で働くようになっているのか、自分の釣りに必要とされる機能はどういったモノか、というのをなるべく理解していないと、フォーミュラ-カーで山道登るようなアホな道具の選択になりかねないので、皆さんよく勉強しておきましょう。
ワシも今回、スプール糸巻き部分上面が斜めってるのは必ずしもスピニングリールにおいて欠点だとは限らないってことを理解できて、蒙を啓かれる思いで大変勉強になりましたとさ。
古今東西史上最高の実用機はPENN社4桁スピンフィッシャー
(当社比)。
釣り具に求められるものは、必ずしも性能や実用性だけでないことは重々承知で、ややジャジャ馬な丸ミッチェル使いこなす楽しみなんてのも知って、そういう実用面以外も大事だと改めて思うようになったけど、今時のリールが高性能高機能を謳ってるわりには、ぜんぜん道具として実用度が高くなさそうに思うのであえて書く。実用性にこだわるなら、4桁PENNで事足りる。今時のハンドルもたためン、水辺で使うのに浸水したら不具合生じるようなクソリールよりは少なくとも実用性が高いと改めて書いておきたい。
でもって、今6台の4桁PENNを整備しているところなんだけど、最近ワシもうちょい古い時代のインスプールの714zをシーバスでは主に使ってるし、4桁は青物とか狙うのに4500ssをたまに投入するぐらいで出番作れていないのになぜ6台も整備する必要が出てきたのか?縁というのは実に妙なるもので、当ブログの読者様から「実はペンリールを整理していた所、使わないリールなどが出てきたので是非ナマジさん引き取って頂けないでしょうか?ヤフオクなど出品も面倒でしないので受け取って頂けるとありがたいです。」とのメールがあり、まあワシも好きなほうなのでありがたく頂戴したところ、送られてきたリールたちをみて「しまった、軽くホイホイともらってしまったけど、これはモノが良すぎる!」とちょっと焦った。使い古してボロボロのを何台かもらって使えるように整備してやろうぐらいのつもりでいたけど、1台やや回転重くなってるのがある程度で、特に整備無しで実戦投入しても問題無さそうなのが、スペアスプールも豊富に6台。具体的には5500ss(j)3台、4500ssj、4400ss、440ssで、そんなに値段がつく機種ではないにしても実用機としての根強い需要はあって、1台5千円ぐらいはヤフ○クとかに流しても値が付きそう。銘板ハゲ個体すら一台しかなく状態は良好。
さすがにこれは申し訳ないと「オクで売るので半額返させてください」等と提案してみるも「ブログ楽しませてもらってるお礼です、老後の資金の足しにでもしてください」とやんわり断られてしまった。ここでご厚意を固辞するのが不粋なのは自明なので、ありがたくいただくことにした。特に、ドングリノブとコーヒーミル型ノブの個体は、PENNのT字ノブは軸がやや太く指の腹が痛くなってくるのであまり得意でないワシには好適で、中型機のコーヒーミル型ハンドルは中古市場でも弾数少なく貴重なので実用面でありがたくもある。
とはいえ、わしの釣り人人生はこれまでも諸先輩方や仲間にいろんなモノを有形無形問わずいただいてきてばかりである。いかがなモノかと思わなくもない。とても素敵なエピソードで何度か紹介したネタだけど、スピルバーグ監督がインタビューで「あなたは既に充分なお金も名誉も得ているのに、なぜまだ映画を撮り続けるのですか?」というクソみたいな問いに「オレはディズニーに神聖な負債があるんだ。だから映画を撮り続けなければならない」と答えていて、いたく感動した。ワシも諸先輩方や、釣りの技術や文化を創造してきた先人達にシャレにならないほどの神聖な負債がある。良くしてもらった本人に返す機会があれば返しても良いんだろうけど、彼らはワシからの見返りなど期待もしていなければ、彼らに受けた恩に報いるだけのものを返す術もぶっちゃけ持ち合わせていないし、遠い先人とかであれば返しようもない。ただ、ワシが負債を返すのを、彼らが若輩者であるワシにしてくれたように、ワシの後輩である若い釣り人やらに返すというのは、神聖な負債の返し方としては上等で真っ当なものであり、そうやって技術だ文化だ精神だというものは引き継がれていくのが正しいのだろうと思う。微力ながらワシもそう思って、釣具屋さんにあんまり騙されすぎないように、こんなブログを書いたりしているし、迷える子羊たちにヒントになるような釣りに関するアレコレを書いたりもしている。釣りの面白さ、楽しさ、苦しさ、難しさをも伝えたいと、丸ボウズくらったり手ひどい失敗したりとかもなるべく包み隠さず釣行顛末記の方には書いている。そういった聖なる負債の返済の一環として、今回、新春お年玉企画として、縁あってわが家に来た4桁PENNのうち、とりあえず確保したい3台を除いた3台を、4桁スピンフィッシャーの良さを知ってもらって、実用度の高いリールっていうのはこういうモノだよってのを実感してもらうために、きっちり整備して読者にプレゼントしてしまおう、というつもりでいたところ、お屠蘇気分を吹っ飛ばす北陸の地震で企画は一旦お蔵入りとした。
で、まだまだ被災者はインフラの復旧もままならない中ご苦労されているとはいえ、ボランティアの募集も始まったようで、次の段階に移行しつつはあるようだ。ということで、そろそろ良い頃合いかなと蔵から企画を出してきたんだけど、ワシ良いこと思いついた。これ自主的チャリティーオークションにしてしまって、得たお金を能登半島地震関連に募金してしまえば、4桁PENNが欲しい人にリールが渡って、かつ復興の一助にもなる。ワシは整備と出品の手間ぐらいで、元の持ち主の方も悪くない使い方だと思ってくれるだろう。ということでチョイチョイとパーツを組み替えたりしつつ比較的綺麗でかつ、売りやすいラインローラーにボールベアリングが入ってる”ssj”な5500ssjと4500ssjとをヤフオクに出して売上金を全額寄付。残りの一台5500ssは銘板片ハゲ個体なので値段つきにくいし、コイツは読者への遅いお年玉ということで一名様に送料もこっちで持つのでプレゼントしてしまいたい(海外の方は送料高いので無理です)。お年玉の方は使って気に入らなければ売っぱらおうがなにしようがかまわないけど、最初から転売目的は遠慮してください。何釣りに使う予定か等を書いてサイトのホームページ下の方にあるメールアドレスまで「5500ss希望」と明記のうえ、送り先、氏名と電話番号を書いてご連絡ください。着順とメール内容を考慮して、こちらで一名様に発送させていただきます。ヤフオクの方は、商品説明の隅の方に括弧書きで(売り上げは寄付する予定だけど落札者に個別に報告とかするつもりないのでブログ読者以外は気にしないで)との旨書いて出品中です。締め切りは17日(土)の夜ですのでふるってご参加ください。売り上げ寄付した証拠の画面はプリントスクリーンででも保存して後で当ブログでご報告かなと考えております。
というわけで、久しぶりの4桁PENNの全バラしフルメンテ、改めて気がつくことなどもあったので、4桁PENNの宣伝がてら、その設計やら何やらを紹介してみたい。とりあえず4500ssと5500ssは大きさが違うだけで設計等はほぼ共通の兄弟機なので、4500ssjを例にご託を述べてみたい。
まああれだ、リールの本質は”糸巻き”と言われるぐらいでスプール周りのデキの良さ作りの丁寧さを見てもらえれば、このリールがいかに実用度が高く、戦闘力が高いかご理解いただけるかと。
ドラグは3階建てでカーボンシートのバッドと、別にどうということはないように見えるかもしれない、ただカーボンのドラグパッドにはインターナショナルやセネターといったトローリングというドラグが重要な釣りでPENN社が培った技術がこめられており、スピニングへの採用に関しては先駆者的な存在でもある。多少調整幅が今時のスピニングより狭い程度で、ドラグの性能自体はPENNに勝てるモノがあるとは到底思えない。トローリングの世界での圧倒的な実績を考えると昨日今日ドラグを付け始めたメーカーのドラグが魚掛けてからの性能でPENNを凌駕することなどありえんぐらいに思っている。そのぐらいPENNのカーボンドラグパッド”HT-100”は信頼性が高い。調整幅がやや狭いけど、だいたいそのリールの大きさで狙う魚に相応のドラグ値あたりにドラグノブ締めていってキュッと締まる前後で決まるようにはなっていて、気に入らなければ緩めるなら一枚テフロンパッドに締めるなら一枚赤ファイバーワッシャーにとかで調整は可能。あと、初期のドラグノブは樹脂製だったけど、途中からドラグワッシャーを押さえる部分は真鍮製になっていて、高速でスプール逆転してドラグが熱くなってドラグノブが溶けることがないように改良されている。ドラグはそのぐらい熱を持つということは知っていると、ペットボトルの水掛けて冷却したりと対策もとれる。
でもって、ドラグがブッ刺さっている軸は真鍮で太くしてある。これ理屈は良く分からんけどドラグの作動が安定するようには感じていて、アメリールだと60年代製造のシェイクスピア「2062」も既にそうなっていて、干からびてた皮のドラグパッド換えてやったら調整幅、作動の滑らかさ共に文句なしの状態に調整できた。軸が太いのが安定性に寄与するのなら、ボールベアリング噛ませるのも軸?は太くなるわけで安定性の面では役立っているのかもしれないが、何度も書くけど負荷が掛かった”重い”状態で回転して機能するドラグにボールベアリングの軽く回る”低摩擦生”は全く必要ないだろうと思う。ポリアセタールのブッシュでもカマしとけば軽くて安くて充分だろうと思う。アホかと。あと、この真鍮製の軸、実は割れます。といっても割るのにワシぐらいのヘビーユーザーで10年ぐらいかかったけど、当時はすぐにPENNリールジャパンから部品取り寄せ可能で問題生じず、後に「ミスティックリールパーツ(当時のスコッツ)」さんで予備確保しておこうと思ったら実際に割れた5500ss用のは売り切れていて、ハードに使い倒すとやっぱり割れるようなのである。ちなみに4500ssのは在庫あったので確保してある。真鍮の部品が割れるぐらいに海のルアーとかやってると道具は酷使するわけで、ドラグなんて滅多に使わない内水面の釣り中心の場合とは道具の評価基準も自ずと違ってきてあたりまえである。
ということで、本体は4桁になって樹脂性になってもスプールは丈夫なアルミ製。でも丈夫なアルミ製だとしても真鍮の軸が割れるぐらいにドラグを使うことを想定すると、軸をアルミで直受けすると削れる。なので、ポリアセタールかなんかの黒い樹脂製のスリーブが入れてあるって思ってたけど、今回よく見てみたらスリーブには真鍮製のものもあるようで、いずれにせよ回転部分は直受けせずにスリーブ入れるという丁寧な仕事ぶりなのである。下の写真の右が樹脂スリーブ入りで左が真鍮スリーブ入り。
スプールエッジの形状も真っ直ぐで端だけちょっと斜めってて、今時のスピニングと機能的にあんま変わらん。この4桁PENNのスプールから、今時の高級スピニングのスプールがなにか進歩して明らかに優れている点ってあるんだろうか?ワシ思いつかないんだけど?かつ、ボールベアリングまで入れてクソ高くなってるとおいそれと替えスプール体制組めんだろって話で、新品で2千円台とかで売ってて替えスプール2個3個と用意していろんな釣りに対応できたりしてた4桁PENNのアメリールらしい質実剛健、実用的で無駄のない造りは”戦闘能力”高いなと思うのである。替えスプールは増やすと如実に効果がある買う価値のあるモノだと思うけど、今時の高級リールのユーザーってちゃんと替えスプール用意してるんだろうか?替えスプールだけで何万とかしてまっせ。

次にパカッと本体蓋を開けていく。ギアとスプール上下機構(オシュレーション)は普通。どってことない仕様でローター軸のギアは真鍮、ハンドル軸のギアは真鍮の軸を鋳込んだ亜鉛、と真鍮と亜鉛の経済的なハイポイドフェースギア。スプール上下機構もハンドル軸から回転を持ってくる単純な減速式で、今時のみたいにカムがS字になってたりしないので巻き上がりは上下に盛り上がりができる。けどまあ気にするほどでもないかなと思ってる。端が崩れてドバッと出るライントラブルとかは糸巻き量を減らせばどうにかなるし、スプール上下幅と糸巻き幅をキッチリ合わせたければスプール下面に板でも貼って調整してやってもいい。ワシャそこまでやるのは面倒なので、スプール座面のテフロンワッシャーを薄いのに換えて前巻き気味にして使ってたりもするけど、そのままでやや糸巻き量少なめ運用が面倒が無くて良いかなと思ってる。特に尖ったところのない”普通”の安っぽくさえあるギア周りである。ハンドル軸が真鍮でネジ込みハンドルになってるのは丈夫で良いけど、こんな安デキのギアで大丈夫かと、今時の”我が社のギアは特別製で素材からして強度があって”とかやってるのを目にしていると思うかもしれない。でも大丈夫なんである。回転の軽さとか本体の軽さとか気にせず、充分な余裕を持って設計しているんだろうとおもうけど、この4桁PENNのハイポイドフェースギア、ワシいまだギアが逝くまで使い潰した個体はないっていうぐらい長持ちします。超ジュラルミン?鍛造?そんなもんどうでもいいから、充分な分厚さと接触面を確保して設計しておけって話なんだと思う。どうせ魚釣るときには魚が掛からなくってもルアーの重さとかが掛かった状態で巻くんだから、リール空回ししたときにいくら軽く回っても意味ねえっちゅうの。ギア比やらギア方式を効率よい方式に変えるのならいざしらず、空巻きした時に軽くまわる性能が魚かかったときに軽く巻けることに有利に働くとは思えない。マイナスには働かなくとも無視できる程度の差でしかないだろう。例えばシャッターの上げ下ろしの手巻きウィンチとか、ベアリングもクソもないようなキリッキリやかましい代物でも、ギア比が適正ならキリキリ巻いてるとちゃんとシャッター動いてくれる。あれにベアリング入れて空回り時クルックルに仕上げたとしても軽く回せるようになる理屈が無い。油ぎれで重くなってたらさすがにまずいだろうぐらいのことはあるにせよ普通に回ってれば充分で、空回しでクルクル軽く回ることと魚が掛かったときに力強く巻けることにはあんまり関係がない。よっぽど軽い仕掛けやルアーを使う場合は空回しと同じような巻き心地で釣りができるのかもしれないけど、そうなってくると巻きが軽すぎるときに起こりがちな”巻き感度”が悪くなるという不具合も生じてくる感じで、空巻きで軽く滑らかに回ることに実釣上の優位性などほぼ無いと思った方がいいと思う。
本体樹脂製なんだけど、本体蓋留めているネジはタップネジを樹脂に直接ねじ込んでるんじゃなくて、金属製の雌ネジを填めてあって、分解清掃等メンテナンスを前提として設計されていて好感の持てるところ、スピンフィッシャー第4世代の430ssgは使ってるウチにネジ山潰れてきてリコイルで修復した。
あと分解清掃で憶えておいた方がイイのがハンドル軸のギアを抜く順番で、本体蓋開けてすぐに抜こうとしても抜けない。なぜならスプール上下用の歯車が主軸と逆転防止のスイッチ用の軸に邪魔されて抜けないから。まずネジ2つでガッチリ止めてある主軸を抜いて、しかる後にハンドル軸のギアを抜くというのがお作法です。

でお次はローター周りバラしていくんだけど、この個体はラインローラーにベアリングが入っていて、かつ規格品の小さいボールベアリングにあわせたのか、ラインローラーの填まる軸の太さがそれまでと違う新規格になっている。そして、その太さの違うベールワイヤーの軸に銅色のボールベアリング入りラインローラーが填まっているので、社外品のボールベアリング入りラインローラーを組みこんだのではなく、コイツは4500ssの終盤にでた4500ssjなんだろうと思う。ベールワイヤーごと交換してssj化するのも良くやられていたので、その可能性もあるけどとにかく仕様としては4500ssj。これが、つねづねこんな潮かぶりやすいところにボールベアリング入れたらいかん、と言っているのを裏付けるかのように錆が出ている。この位置のボールベアリングの錆を防ぐには毎回塩抜きでパーツクリーナーやCRCに漬ける必要があって、海で釣りする人には一般的な水道水でジャブジャブ洗った程度では塩残ってしまう。だったら錆びないポリアセタール樹脂入りの旧型のラインローラーの方が良いじゃないか、ということなんだけど、シーバスぐらいまでは全くそうだと思う。陸っぱりの青物でもそれで足りる。でも船でシイラカツオ釣りに行ったら、なんかエラいのが掛かってしまった、っていう状況は想定の範囲内である。具体的には10キロ越えるようなマグロ系、メーター軽く越えるようなサワラ系、あるいはカジキ系のような、ある程度重さもありつつ速い魚だと、ラインローラーにベアリングがあった方が安心なんである。ラインローラーの回転に掛かる力(摩擦力≓回転の重さ)は、ラインを引っ張る力と引っ張る早さの2乗に比例するはずで、設定してたドラグ値で速度が落ちていく程度の大きさの魚はいかに速くてもラインローラーの限界を超えることは無い。カツオとか速さは特筆モノだけど、普通2キロとかのドラグを逆転させながら加速していくほどではない、これが重さも速さもある想定外の大物だと、設定したドラグ値を屁ともせず加速していき、速さの2条に比例するが故にある程度の速度に達するとアッサリとローラーの回転を止めるほどの摩擦力が生じてしまい回転が止まり、固定式のラインガイドに成り下がりかつ90度一番角度を付けてラインを曲げている摩擦がキツい部分がローラーの部分なので「バンッ!」と破裂音を残して切れてしまう。んだと思うんだけど、まあ理屈はこれであってるのかどうか知らんけど想定外の速度で走られるとラインローラーで切れるっていうのは現象としてあると思う。なので、マグロやらがでてきそうな海域に船をだすとかの場合は、ラインローラーにベアリングが入ってるのは安全策として機能しえる。元々のラインローラーの回転にかかる力、引っ張る力がボールベアリングが入れば軽くてすむようになり、かなりの状況に対応できるようになるだろう。ということで、ワシは船で沖に出るときは念のためボールベアリングあった方が良いかな、って思って、陸っぱりなら青物狙いであってもマグロなんぞかからん!(とは限らんけどな)と割り切って手入れが面倒じゃないボールベアリング無しの樹脂製スリーブ入りを選択している。まあこの辺は、毎週、毎夜のように行くシーバス用のリールで毎回塩抜きとか面倒だけど、年に2、3回とかのシイラカツオ船ならその時ぐらいは塩抜きするかっていう感じかと。

ローター周り続いて、ベール反転機構とベールスプリング。
なんてことはない、3巻きになって、多少耐久性ありそうとはいえ普通のベールスプリング、そして2つのバーツでベールを反す、ベール反転機構。特に変わったものが入ってるわけじゃないけど、特徴としてはベールスプリングがベールワイヤーのお尻側に入っていて、ベール反転機構がベールアーム側に入っているということか、これ5500ssとも4400ssとも共通の設計。って書くと550ssオーナーから嘘つけ、とお叱りをいただきそうだけど、そのへんの話はまた別途まとめてみたいと思っております。5500ssと4500ssはローター周りも含めて共通の設計が多い兄弟機です。でも550ssと450ssは必ずしもそうじゃないのよね。
で、ローターの下にはストッパー関係が鎮座している。
ローターの下には当然雨水も入ってくれば、水没させれば塩水も入ってくる、この位置に瞬間的逆転機構を入れているスピニングをこれまで口汚く罵ってきた。アホかと。濡れたら困るんなら大森やカーディナルCとかのように本体内に入れておけよと。でもPENNのこれは何の問題もないと思っている。
見たら分かると思うけど、真鍮ステンレスアルミと濡れて困るような素材の部品はまったく見えない。下に鎮座しているステンレスボールベアリングへの浸水が”グリスシーリング”で防ぎきれなかった場合、ベアリングが錆びて交換とかになるけど、水没したところで、この部分に塩水かぶったって当座は別にどうともならん。だから別にこのリールにご大層な防水性能なんてのは必要ではない。常々書いているように瞬間的逆転防止機構なんていう、利点がしゃくったときにガチャガチャいわないぐらいしかない、水で濡れると困る機構を水辺で使う道具であるスピニングリールに入れるからアホみたいなリールになってしまうんである。馬鹿くせぇ話である。
上の写真の手前に見えている真鍮の部品はベール反転の蹴とばしである。樹脂でもいけるだろうけど、そこはPENNしっかり金属にしてある。ただ見ての通りローターブレーキの類いは付いていないので、キャストがぶれると意図しない反転がガッシャーンと起こるときはある。ちょっと適切な場所がないのでマジックテープ貼り付け型のローターブレーキ追加は難しく、やるなら大森式に薄い銅板でも曲げてれいの“簡易ローターブレーキ”を追加するほうが簡単かもだけど、もっと簡単で抜本的な方法として、邪道ではあるけど、ベール反転機構の部品2つを取っ払ってハンドル回ってもベールが返らないので手で返す”マニュアルベール反転機”にしてしまうという処置がある。実際ワシ4500ssはそれで運用している。ワシ、ライン放出の調整は右手人差し指で行ってハンドルでベール返すのも、ライン調整左手でしてそのまま左手でベール反転させるのもどちらもできるので使える外法。まあ、正道はぶれずに真っ直ぐ投げておけば意図しないベール反転は起きないはずで、キャストがきちんとできるように練習しておけって話なんだろう。でも人間たまにミスるもので、良いところでミスるとムカつくので、外法をもってことをしのいでおるしだいであります。
分解進めていくときにストッパーを外すときにはお作法があって、下の写真の様にドックの金属板の爪でラチェットをはさんだまま2つの部品を一緒に抜いてやらないと外れない。填めるときも同様。で、このストッパーは真鍮でガッチリしてるのでとても丈夫。ドックの爪が経年劣化で割れることがあるので予備部品は確保してあるけど、ラチェットはなかなか壊れない部品で、結局スピニングリールで強度がいるのは、アワせ喰らわしたり、魚が突っ走るのを止めたりというときに逆回転を止めているストッパーと、高速で魚が突っ走ってるときに作動しているドラグ周りであり、それ以外の部分の強度なんてそんなにいらんと思っている。ギアなんて亜鉛と真鍮のハイポイドフェースギアで充分、ボディー剛性?樹脂で結構、剛性とか五月蝿いこと言ってハンドルもゴリ巻きで壊すヤツはスピニングの使い方が分かってないってだけでPENNなら純正品で充分。ゴリ巻きが必要ならそもそも強度が出しにくいスピニングにこだわらずベイト使えって話で、投げるのが難しいっていったって、それをどうにかするのが”釣り人の腕”ってもんだろうと思うし、今時”DC”とか最適なブレーキを制御してくれる機構とかもあるんだろ?ベイトで投げとけって。スピニングはゴリ巻きせずにポンピングで竿で稼いだだけ巻き取る。基本のキだとワシャ思うんじゃけど、磯に乗って記録魚狙うような人除いて大型魚狙いでベイトでキャスティングってなぜか流行らんのよね。
という感じで、それほど複雑なリールじゃないのでサクサクと分解できる。難しいところも特になく整備性は極めて良いのがPENNの魅力でもある。
今回樹脂製本体ということで、本体の汚れはCRC吹いてぬぐっておくぐらいにとどめている。パーツクリーナーはそこそこ強力なので、金属本体でも塗装剥げたりはやらかしているので、使う時は注意した方が良さげ。樹脂製本体は塩水でも錆びることがないのは大きな利点。
ラインローラーのベアリング始め、ボールベアリングは針で突っついてCクリップ外してシーリングが外せるものについてはハズしてパーツクリーナーで洗浄してから、耐塩性重視のマキシマグリスをぶち込んでやる。これで多少は塩に耐えてくれると期待したい。でもまあラインローラーのボールベアリングはマメに塩抜きしないとダメだろうなとは思う。
組むときは、金属パーツにはグリス盛り盛りでもってやり、ドラグにはPENN純正を盛ってやったので、ドラグもバッチリだろうと思う。
基本的には、放置でも大丈夫なリールなので、ラインローラーのボールベアリングの塩抜きはマメにしておくべきなんだけど、その他にはドボンと水没させてプクプク内部に海水が入ったとかがなければ、これといって分解整備の必要がないぐらいで、海から帰ってきたらシャワーとかでジャバジャバ洗って乾燥、ハンドルノブの根元、スプール外して主軸の根元への注油、ラインローラーへの注油ぐらいの外回り注油だけで5年、10年と好調に使えると思います。スペアスプールも2個付いて、戦闘能力は充分。これはお買い得でっせ。ベールスプリングは交換必要になるので須山スプリングさんに作ってもらうか自作しましょう。
5500ssjと5500ssも同様に分解整備。
”勝手にチャリティーオークション”用の4500ssj、5500ssj、お年玉読者プレゼント用5500ssもスペアスプールは2個付きです。ただ、プレゼントの5500ssにつけたスプールのウチ1個は純正ではない樹脂製のパッドが入ってます。調整幅は増えた感触だけど耐久性とかはどうなのか使ってないのでぶっちゃけ分からんところ。たまにPENNのドラグパッドをフエルト製に換装してあるのとか目にするけど、PENNのHT-100という信頼性の高いドラグパッドを調整幅増やすため程度の理由でわざわざ交換する意味が分からんなと思っちょりますが、何かワシの思いつかん利点あるのかも。ないのかも。
ってことで、瞬間的逆転防止機構が搭載される前の4桁スピンフィッシャーって、使ってて問題のない機能、丈夫さ、耐腐食性、メンテナンスのしやすさ、特筆モノのドラグの良さ、モロモロ勘案すると、買ってずっと使える一番面倒のないスピニングだと思うので、まあ評価基準が違えば自ずと答はまた違うんだろうけど、海での釣りが多くて、雨や波飛沫をかぶっても釣りをして、毎回全バラするほどまめじゃないけど、道具いじるのが好きならば、4桁スピンフィッシャーはそんなあなたのためのスピニングです。お年玉希望、オークション参加お待ちしております。
※お詫び:普段からクドクドと同じことを繰り返す芸風ではありますが、今回珍しく風邪ひいて(38度以上の熱が出てたのでインフルやコロナだったかも)熱にうなされつつ書いてたせいか、さらにネチっこく妄執的な書きぶりになっておりますことを伏してお詫びします。健康って大事。
<ご報告>”勝手にチャリティーオークション”無事終了。募金しますというのがオークション参加者の財布の紐を緩める免罪符になったのか、予想より高額で落札いただきました。5500ssjが9,801円、4500ssjが11,001円とスプール2個付きとはいえ相場5~7千円のところ1万円前後まで値が上がり正直「募金するとか書かずにしれっと老後資金の足しにしときゃ良かった」と邪な思いもあったりなかったり。いずれにせよオークション参加者の皆様、落札者様ありがとうございます。2月20日に早速一番手軽なYahoo!基金の「令和5年能登半島地震 緊急支援募金」に20000円+1000円の21000円募金しておきました。売上合計20802円ですが募金が100円単位なので面倒くせえのでワシからもチョイ出してます。ついでに書くと売上金全額ワシの懐に入ってくるわけじゃなく手数料Yahoo!様にもってかれますが、それもワシからの寄付ぐらいのつもりでいかせてもらいました。プリントスクリーンで切り貼りした画像ぐらいナンボでも加工可能ないまどきではありますが、ちゃんと寄付しておりますのでそこは信用いただければと思います。被災された方々の日常が一日も早く戻り復興するようにお祈りします。
売るためのとってつけた機能ではなく、釣り場からの要望とかの反映
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4200ss~9500ss |
薄々読者の皆様お気づきかもしれませんが、ワシ「
PENN」についてはちょっとうるさいよって感じで、このところ
4桁スピンフィッシャーを分解整備してたんだけど「そもそも一括りに4桁スピンフィッシャーと言うけれどもニッチャァ」って感じでネットリじっくり書くこと沢山あって、前回あれほどネチクリネチクリと書きまくっても、まだ書き足りない。っていうか書きまくってたら収拾つかなくなって分けて書き残してた分をちょいと整理したのが今回のネタでございます。れいによってこれまでも書いてきたことの繰り返しにもなるだろうし、先週書いたことさえまた書いてるかもしれない。それでも書く。なぜならワシが書きたいから書くのである。熱暴走して頭おかしくなってるのかってぐらい書く。
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550ss,5500ss,4500ss
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前回チラッと書いたけど4桁5500ssは3桁550ssの直系じゃなくてむしろ3桁450ssの直系であるとか、久しぶりに4桁スピンフィッシャーをいじってて改めて気付いたこともあり、そのへんを整理した感じの内容になる予定で、前回のネタが「4桁スピンフィッシャーの薦め」的な一般的?なモノだったのに対し、今回のネタはPENNに興味の無い人には一切楽しめそうにない重箱の隅をつつくようなネタで、主に
3桁から4桁への変遷過程を推理しつつその辺りを行ったり来たりしつつ書いていきます。PENN沼の皆様におかれましてはそこそこ楽しめる内容になると思いますので楽しんでいってくださいね。
スピンフィッシャーの3桁と4桁の違いというと、3桁は全モデル金属本体で4桁になると5500ss以下が樹脂製本体になるという大雑把な印象が一般的だと思うけど、実は正確ではない。なぜなら3桁にも樹脂製本体のが存在するからである。
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5500ss,4500ss,4400ss |
3桁シリーズのうち、最初実は
440ssも
450ssも左ハンドル専用の金属本体の機種だった。形式は
420ssや
430ssがそうであったように、
インスプール時代のZシリーズをアウトスプール化したような外観。おそらくウォームギア機。しかしこのモデルは短命だったらしく「
ミスティックリールパーツ」さんところの写真などで外観の写真しか見たことがなく、オークションでも出てきたのを見たことがない、内部のギア方式とかは不明。ちなみにミスティックリールパーツさんところの450ss、440ssの冒頭写真は左専用の初期型だけど、展開図やパーツリストはその次の左右両用版になっている。この左右両用版になった時点で、なぜか440ssはカーボン樹脂本体、450ssは金属本体と分岐している。この時の2機種の機構が実は4桁
4400ss、
4500ss、
5500ssの元になっていて、ベールアーム側に反転機構を、反対側にベールスプリングを持ってくる構造はここから採用されている。なので、3桁
550ssと4桁5500ssとではボディーが金属製から樹脂製に変わったということだけでなく、設計が550ssより後発で改良が加えられた450ssの後期型に寄せられていて、ベールスプリングの巻き数も増えて耐久性も増しているのである。ちなみに3桁から4桁にかけての変化として、ギア方式がスパイラルベベルギアの中心軸をズラしたようなハイポイドギアから、今のスピニングの標準的なギア方式であるハイポイドフェースギアに変わったことを把握している方も多いだろうけど、私の見てきた限り、4桁になっても初期の頃は余ってたハイポイドギアぶち込んでたのか、ハイポイドギアの4桁
6500ssとかが存在するのを確認している。
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ドングリノブ、樹脂ノブ金ハンドル、樹脂ノブノーマル |
ついでに、
4400ss、
4500ss、
5500ssの初期型はドングリノブが付いてるタイプで、これらは
ギア比が大きいハイスピードタイプになっている。なぜなら、これら初期4桁中型機も3桁に搭載されていたハイボイドギアを突っ込んでいて、ギア比も5.1:1の3桁後期のギア比を当然ながら踏襲しているからである。その後4桁の当該3機種はドングリノブではない金ハンドルの時代になって、4桁では標準的なギア比4.6:1のハイポイドフェースギア搭載に変更されている。そして黒ハンドルT字樹脂ノブのよく見るハンドルの時代に移行していく(写真はすべて4500ss)。
おさらいでスピンフィッシャーZシリーズから3桁そして4桁への推移を見ていくと、まず
小型機の
716z、
714zはそのまま金属本体の左巻き専用機で、ギア方式も互換性があるぐらい同じな
ウォームギアを踏襲して3桁
420ss、
430ssに引き継がれ、4桁に移行する際に樹脂本体になるとともに内部のギア等を一新、
4200ssではハイポイドフェースギア採用で”大森っぽい小型スピニング”に、
4300ssはギア方式こそウォームギア方式を踏襲するも、ハンドル軸のギアは小型化され左右両用になって生まれ変わった。ただ両機ともに3桁時代とスプール互換性はあって双方持っているとスペアスプール体制が組めて便利だったりする。
Zシリーズのその前身というか色違いの”グリーニー”な716、714から4桁まで小型2モデルはずっとワンタッチスプール採用で、惜しむらくは第4世代の”ssg”になるとワンタッチスプールが廃止で小型機についてはスプール互換性がなくなる。ギアは中型も含め4桁と同様の形式のものを踏襲している。
同じ型番のモデルでも発売年とかで微妙にちがってて、716、714と716z、714z初期が実は単なる色違い程度の違いなんだけど、716Z、714z自体は90年代まで4桁と並行して作られていた超ロングセラー機なので、細々した違いが生じている。古いのはハンドル根元に注油穴が開いていて、本体蓋が金属製。新しいのは注油穴省略で本体蓋も樹脂製に変更されている。
4200ss、4300ssも細々とした変更が加えられていて、後期型はハンドルが改良されて写真上の上の方の半月型にギザギザが入ったタイプに変更されている。前期型のハンドルノブは掃除がしにくくて回転が悪くなりがちなのでそのあたりの改良だと思う。あと、ワンタッチの爪が金属の三枚羽タイプから後期型は、白い樹脂製の取り替え式の爪を填める方式に変更されていて、金属の爪は折れると主軸ごと交換なので、爪だけ交換方式は経済的で良い。今時のリールでワンタッチ式スプールってほぼ絶滅(ミッチェルブランドの最近?の機種にカートリッジ式があったっけ?)してるけど、素早くスプール交換できてドラグもいじらなくて良いのは実用面で大いに利点だと思うけど、まあ実用面なんて売れるか売れないかにあんま関係ないってのがここまで証明されてしまうと、流行じゃなくて売れそうにない機構はわざわざつけんのだろうな。大型リールで付いてたのはメタロイヤルフィッシングサファリとかのリョービ勢が最後だったけど、リョービも釣り具部門売るハメになったし、ホント良いモノ作ってりゃ売れるってワケじゃない。
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712,440ss,4400ss |
中型機に移ると、初期の左巻き専用440ssが
712zと同サイズなのかは実物確認してないのでなんともあやしいけど、先ほど書いたように初期版の440ssはZシリーズみたいな形状の左巻き専用の本体なのでその可能性はあると思っている。コイツの中身は不明だけどおそらくウォームギア機で、次にでた後期?
440ssは、設計から言ってほぼ4桁
4400ss同様の仕様だったようだ。本体樹脂製で712z(写真は712)ではドラグが3階建てだったのが、440ss及び4400ssでは直径の大きな1階建て方式になっているので、おそらくアウトスプール化した初期440ssのときに変更してから踏襲しているのだろう。4400ssより大型の4桁には終盤日本仕様の”ssj”モデルがあって、コイツには元は
9500ssにしかなかったラインローラーのボールベアリングが入った。4400ssは途中からギア方式がハイポイドフェースギアに変更されているが、初期のドングリノブ個体にはハイポイドギアが入っていて、440ss後期樹脂本体版と4400ss初期ハイポイドギア版は同一仕様ではなかろうか?っていう感じで意外にズルズルとちょっとずつ微修正加えながら改良されていってるというのが、このことからもうかがえる。ちなみに、3桁に金属本体じゃなく樹脂本体のがあったと書いたけど、ということで440ssの後期型?がそれ。写真ではかすれかかってるけど「GRAPHITE」の印字が読める。叩いて確かめると確かにコッコッて感じの樹脂製の音がする。
あと細かい話だけど4400ssの時代にスプールの上部の形状が変更されている。旧型は稀にラインがドラグノブの下に巻いてしまうことがあるけど、新型はそうならないようになだらかに傾斜させてある。
写真左が旧型スプールwith初期4400ss、右が新型スプールwith後期4400ss、440ssgドラグノブを添えて。って感じで第4世代440以上の機種はスプール3桁4桁と互換性があり、当然ドラグノブも互換性あるんだけど、後発の第4世代ssg、ssmのドラグノブは効果あるんだかないんだか防水パッキンが追加されていて、それとは別にドラグノブの止まりが良くなってて緩みにくくちゃんと進化してるので可能な範囲で換装してある。
ついでに書くと
以前書いたように、大型機とかのドラグノブは当初樹脂製だったのが4桁後半にはドラグワッシャー押さえるアタリ面が金属製にアップデートされている。も一つついでに書くなら4400ssとか中型機は逆転防止のラチェットの歯が6(4もあったかも)から8へと増やされていて、途中からドックを留めるEクリップが追加されている。
ラチェットの厚みがEクリップ有り無しで違うようで互換性無いので注意が必要。(追加註:最終モデルでラチェットを爪ありドックではさむのではなくダイワっぽく針金パーツで主軸の回転を利用して消音化してる爪無しドック版も存在した様子、互換性有る無しはこの最終モデルとそれ以前かも?)
次に、初期450ssと710zが大きさ的に対応しているのかはこれまた怪しいところだけど、700zが550ss、704zが650ss、706zが750ssと一応糸巻き量的にはやや近いので、710の本体形状をそのまま活かして初期450ssは作られたと考えた方が自然かなと思っている。450ssの後期版は440ssとは違って金属製であり、ひょっとしたら後期版440ssと450ssを同じような設計で金属本体と樹脂本体とを作って市場に出して、故障の出方や評判を見て次のシリーズである4桁の設計に生かしたのではないかと愚考する。結果、樹脂製本体は時流でもあり、市場でのユーザーの評価も悪くなく「すぐ壊れる」なんてクレームも上がってこないので「よっしゃ中型機までは樹脂製本体でいいな」という判断になったんだろうと思う。で、設計的には似た感じの440ss並びで樹脂本体化して4500ssになったという流れか。
でもって、550ssは登場初期から700zをアウトスプール化しただけの設計ではなく、最初から
左右両用ハンドルの金属本体モデルで、かつスプールとか共通だけど意外と後継機の5500ssとは設計が違う。5500ssでも途中からギアがハイポイドギアからハイポイドフェースギアに変わってるのもあるけど、写真右が550ssだけどベール反転がベールアーム側にあって、かつベールスプリングもそっちに入ってるので、回転バランスから考えても後期440ss、450ssで始まったベールスプリングがベールアームと反対側にあってベールアーム側には写真左のようにベール反転機構が入ってる5500ssの設計の方が重量分散してて良さげだし、何よりあの
ウニャァっと伸びてる2回巻きのベールスプリングより、5500ssにも採用された後期450ss、440ss方式の
3回巻きスプリングの方が、どのみち1.5倍ぐらいじゃ定期的な交換は避けられないにせよ長持ちはする。ということで、5500ssは550ssの直系というよりは、後期450ssの直系に近いのかなと思っている。550ssをまず発売して、その問題点や左右両用の好評さとか勘案して改良した設計が後発の後期450ssだとも考えられる。樹脂本体という点では後期440ssの設計を5500ssに反映したとも言えるけど、440ssはドラグが1階建てで、4500ss、5500ssはドラグが3階建てになる点で設計上の違いが大きい気がする。というような紆余曲折ありつつも4500ssと5500ssは樹脂製本体、ベール反転機構とスプリングが分散式、ドラグが3階建てと共通の設計思想で、糸巻き量違いの兄弟機だとワシの中では分類している。
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8500s,7500ss,6500ss
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で、兄弟機という点では大型機に移って650ss、750ss、
850ssは糸巻量違いの兄弟機だとこれまた思っている。アウトスプール化の時におそらく750ssの元になった
757をベースに設計されたんだろうと思うけど、とにかく単純丈夫な鋳造アルミ本体の外蹴り機でぶっ壊れるところが少ない。
ベールスプリングと
意図しないベール返りで壊れるストッパー周りを用意しておけば、遠征先でも困ったことがない。ストッパーはよしんば壊れても予備のカチカチ鳴る方を使えば当座はしのげる。っていう感じでこの3桁3機種はこれはこれで完成形に近く、4桁
6500ss、
7500ss、
8500ssになってもギア方式がローター軸のギアを真鍮製のかさ歯車に斜めに溝を切らにゃならんようなハイポイドギア方式(ハンドル軸は真鍮だったりアルミっぽい素材だったりなんだりかんだり)から、安価で製造しやすいローター側真鍮、ハンドル側真鍮芯亜鉛鋳造のハイポイドフェースギアに順次(
最初の頃の4桁にハイポイドギアが入ってることがある。ギアはセットでなら互換性あり)換えたぐらいでほぼ一緒、最後の方でssjにはラインローラーにベアリングが入ったけど、まあこのクラスのマグロとかが掛かる可能性があるようなサイズのリールには社外品のボールベアリング入りラインローラー入れるのは普通で、ボールベアリング嫌いのワシでも念のため入れちょったぐらいであり、あんまいじる必要もないリールだったわけである。ハンドルピンが曲がるって?それはスピニングリールの使い方を分かってなくて”ゴリ巻き”して壊しているだけであって、ポンピングで竿で稼いだ分だけ巻いてりゃ純正ハンドルでも壊れないって話は
証明済み。ついでに書くと7500ssと8500ss(750ssと850ssも)はスプールとそれに伴ってローター周りの大きさ変えただけっぽくて、
ギアも共通で本体蓋さえ共通の仕様。っていうのに
銘板ハゲ個体の7500ssj用の銘板付きの蓋探していて気がついた。
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9500ss |
そして、4桁から投入の超大型機
9500ssは最初っからマグロとかドラグ使って走らせまくって獲るための機種として設計されている。どっかの大手メーカーさんがさも新しい技術のように宣伝してた、
スプール裏面の広い面積を使ってデッカい直系のドラグパッドを用いる方式を90年代には採用し、尋常じゃない速度で走る魚にラインをくれてやって対応するべく、糸巻き量は30lb340ヤードと新品のスプールに糸巻くとくたびれる大容量。そして最初っからラインローラーはボールベアリング入り。黎明期のジギングで数々の記録がこのリールで打ち立てられたのは必然だったのかと。そういうのを狙って設計されています。
っていう具合で、4桁スピンフィッシャーには、インスプールの70年代から脈々と引き継がれてきて、PENN社のそしてPENN使い達の知識やら技術やら情熱やら要望やらが詰まって形作られていった究極の実用スピニングだとワシャおもっちょるのさ。
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950ssm,430ssg |
第4世代と呼ばれる
3桁ssg、ssmシリーズも逆転機構を一方通行のベアリング一個に任せてしまって簡略化し、ギア方式は踏襲、小型モデルを除き引き続きスプール共通な、単純設計で丈夫なスピンフィッシャー直系のシリーズだと思うけど、諸悪の根源”瞬間的逆転防止機構”はPENN社をしても完璧には設計しえず、
430ssgは使いやすくて気に入ってるけど、冬の東北に持っていくとグリスの粘度が上がって逆転防止が効かなくなる。とかいうのを何とかしようとすると、結局PENN社でさえ日本の大手と一緒で、やれ防水性がとか、本来水辺で使う道具に入れちゃダメな種類の濡れるとダメな機構を入れたがために面倒くせえことになっていて、
Vや
Ⅵも使ってみたいけど二の足を踏んでしまうのである。
という感じで、4桁中心に細かいネタをあれこれ突っ込んでみました。この手の”何年式モデル”みたいな話は歴史の長いリールではお馴染みのネタだけど、丸ABUやらミッチェル408、308やらほど我が国では人気がないPENNスピンフィッシャーについて、誰か書いてくれると良いなと思いつつ、ワシぐらいしか書かんか?と諦めて書きました。と言いつつ年代書いてないけどミスティックさんところで調べれば分かるし細かい年数とかは興味ないので無視。ちなみに樹脂製の4桁スピンフィッシャーにはデカールの下とかどっかに製造年が刻印されてたりするけど、本体パーツを作った製造年でしかなく同じ本体で中身の仕様がヘタするとギアごと変わってたりするのは書いたとおりであり、あんまアテにならんと思ってます。でもって全体的な設計変更や新機種投入の経緯を見ていくと、タイトルに書いたとおり、往年のPENN社は売るためのギミックぶち込んで新製品をドーン!っていうのはあんまりやらなくて、故障対応なり要望なりを受けてだと思うけど、チョコチョコとしたマイナーチェンジでの対応が多くて、新製品出すときも事前に前のモデルの後期型とかで試した変更を良かったら採用とかいう感じで、いきなりわけわからん機構を実戦導入とかは避けて、仕様を一気に換えてしまうようなことが少ないのが分かる。パーツも古いのがそのまま使えるようになってたりして、その分の金型代やら開発費やらは抑えられていたハズである。機能的に変わらないところでも、新型ではデザインだけ換えて目新しく見せて売るのに全力投球な国内大手とかとは、リール作りの姿勢が全く違っていたといって良いだろう。
でもまあ、PENNもピュアフィッシング傘下に入って、スピンフィッシャーもⅤやⅥは古い機種と部品互換性とかもあんまりなくなってしまった。でも、Ⅵとかもういじるところあんまり無いなという感じなのか、モデルチェンジしばらくしてなくて、ずいぶんなロングセラーになっている。コロコロ新製品出すのは別のシリーズに任せて、スピンフィッシャーは長く使える基本性能で売るとかなら、ピュアフィッシングさんも分かってらっしゃると評価するけど、実際のところどうなんだろ?
714zや706zの復刻ものとかもあるので、潜ろうと思えばさらに沼の深くに潜っていくことも可能かもだけど、まあ息がそこまでつづかないので、今宵はこのへんにしとうございます。まあまあスッキリするぐらい書けたかな。
<業務連絡>17日土曜朝現在、お年玉プレゼントの5500ssに応募者無しです。このブログ読んでるような沼の住人はみんな5500ssは余らせてるのか?引き続き募集中です。勝手にチャリティーオークションの方は2台とも入札有りですがこちらも引き続き参加お待ちしてます。
PENNにあるまじき凝ったスピニング「スピンフィッシャー704」
昨年の某中古釣り具買い取り大手による
”謎のデカアメリール&マイナー大森大放出祭り!”でナブラに突っ込んでしまい、
狂乱索餌状態で購入したモノの、ちょっと時間が経って冷静になると、使うあてがあるでなし、大型機は売りに出しても値がつかんしで、7392円(送料別)はやり過ぎだったなと、やや反省して後悔もしていた。
しかし、今回分解整備してみて、まったく7392円(送料別)は安かったと心の底から思って、ちょっと興奮を抑えきれない。この手の大型インスプール機が米国の釣り人、特に東海岸のストライパー野郎どもに人気なのは知ってたし、ベールワイヤーのないマニュアルピックアップ機の706zとフルベール機の今回のブツである704の後継機704zが2020年前後とかの最近にも復刻版が出てるぐらいに支持されているのも知ってはいた。いたけど706zは持ってるので、あんな感じの単純で壊れる部品が少ないところが共通の魅力なんだろうぐらいに思ってた。しかしながら、いざ分解整備してみると意外にあれこれと凝った設計で整備には思ったより時間がかかったんだけど、その凝った設計で奢られている機能は、今日の我が国大手製スピニングがやっと取り入れて追いついたぐらいの有用な機構で逆にいらんものは付いてなくて驚くほど完成度が高いと唸らされる。704の登場は1966年となっていて60年代のスピニングでっせ。今時のエラそうなスピニングがそこから何が進化したっていうのか?いらんもんが付いて蛇足状態で退化しかしてないんじゃないの?そのあたりを、ボチボチと分解の様子を報告しつつ説明していきたい。
分解はいつものようにスプール周りからいっておく。まああれだ、あたりまえのようにこの時代のスピニングにも3階建てのドラグが入っている。
ドラグパッドの素材自体は、1枚がテフロンで他の2枚が赤いファイバーワッシャーに近いざらついた手触りの樹脂製で、なんだろ繊維が見えてるのでグラスファイバーのFRPかなんかだろうか?かなり摩擦が大きくてキュッと締まる感じで、締まりすぎるのを1枚滑りの良いテフロンで良い塩梅に調整しているようだ。ドラグノブにバネも入ってるので調整幅もそこそこあるし、今時のドラグがここからどれだけ進化したんだって話。
スプールは主軸に直接ブッ刺さってるわけじゃなく、この時点ですでにスプールの乗る台座のうえにはドラグを受けて安定的に作動させるため太い軸にした真鍮の部品が主軸に刺さっていて、後のスピンフィッシャーシリーズにも踏襲されていく。スプールと同期する6角ワッシャーが1枚多いのは底が平面じゃないので底に填めているのが1枚。でアルミ製スプールなんだけど、アルミ直受けではなく真鍮スリーブが入れてあるのもスピンフィッシャーの良き伝統。ドラグ周りに関してはドラグパッドの材質やらドラググリスの最適化とか細かい改良はあったとしても、この時点ですでにほぼ完成形である。アホをカタログ上のボールベアリング数で釣るためにドラグの軸にまでボールベアリング入れたりしているのは、何度もしつこく書くけど愚の骨頂で、最近さすがにダイワさんはちょっと反省したみたいで、ネットフリマに「セル○ートフルベアリング化キット」とかいう馬鹿丸出し臭のする品が売りに出されてたので、セ○テートみたいな上位機種にいまさらボールベアリング追加する隙はないんじゃないの?っておもったけど、どの位置のか確認してみたらドラグ関連の位置で、どうやらメーカーとしてもやっぱりいらんと判断したようだ(過ちを認めるのは立派)。にもかかわらず、メーカー公式に逆らって、かつ、どう考えてもドラグの機能にボールベアリングの低摩擦性は必要ないのに、わざわざ「フルベアリング化キット」なる”ヘビの足”を安くもない金額で売りに出す者が居て、買いたがるマヌケも多いのが我が国の釣り具市場だと改めて認識させられウンザリである。
本体に移って蓋パカッと開けていくと、まあこのあたりは
714zとかでもお馴染みの単純明快なウォームギア機って感じで、ハンドル軸のギアはステンの芯で真鍮製、ローター軸のギアはステンレスと定番安心の組み合わせ。ハンドル軸は左巻き専用機なので片軸受けで軸は長い真鍮スリーブで受けられている。逆転防止のストッパーはハンドル軸のギアの下にあるラチェットに掛ける旧式のものだけど、それでなにか不便があるか?って話で、本体内にあるから防塵防錆性も良い。遊びを小さくして適正化、空いてる空間にデカいのを入れて強度を確保とかはローター軸のギア周りに持ってくる方式のほうが優れているかもだけど、諸悪の根源”瞬間的逆転防止機構”の邪魔くささに比べたら、たいして劣っている方式ではないと思う。スプール上下は単純クランク方式でウォームギア機の巻きの重さに追い打ちかける形かもだけど、スプールが直径大きいわりに幅が狭く上下幅がそれほどあるわけではないので、巻いて特段重く感じるほどのことではない。滑らかで耐久性が高いけどちょっと重い、っていうウォームギア機の”味”のうちと思っておけば良い程度だと思う。
ここまでは、60年代にすでにスプール周りがほぼ完成されていることに驚きはしたけど、言うてPENNだし、わりとあたりまえって感じではあった、でもローター周りに手を付け始めると、次々に「オオッ!」と心の中で驚きに声を上げるような設計が見えてくる。
まずは、ラインローラーに樹脂製スリーブが入っていることに驚く。704自体は1966年の発売となっているけど、これまでも書いたようにPENNスピンフィッシャーは細かなマイナーチェンジを繰り返して最適化していったようなシリーズである。この個体自体が60年代の製造なのか、その後のマイナーチェンジを受けた機体なのかちょっとわからない。でも新しくても黒金の「z」シリーズになる70年代中頃以前とかのはずで、PENNのこの形のラインローラーはその形状から、あるいはPENN社の得意分野がトローリングであったことからも、トローリングロッドのローラーガイドからの形状や機能の流用だろうと思っていて、ローラーガイドには最終的にはボールベアリング入りも登場しているけど、ローラーガイドに樹脂製スリーブが入っていた時代があって、そこからの流用とかだろうか?同じアメリールのシェイクスピア「2062」でも60年代E系には樹脂製スリーブが入ってなくて、70年代のD系になると樹脂製スリーブ入りになる。大森製スピニングも似たような感じで60年代の「
マイクロセブンDX」では真鍮のスリーブで、70年代の機種になるとお馴染みの樹脂製スリーブ入りとなる。704zの樹脂製スリーブ入りが、60年代からのものだとしたら、樹脂製スリーブ入りラインローラーの”元祖”はPENNスピンフィッシャーシリーズだという可能性がでてきた。これまでワシ、真鍮スリーブ入れてた大森が新素材で滑りが良くて耐摩擦性に優れるポリアセタール樹脂がでてきて、こりゃ良いや!と真鍮から樹脂に素材変更っていうのが”本家”かなと思ってたけど、トローリングロッドのローラーガイド由来でPENN元祖説が新たに出てきた。いずれにせよ現在でも多くの場合過剰装備でしかないボールベアリング入りラインローラーより、単純で錆びにくく最適解に近い樹脂製スリーブ入りラインローラーがすでにPENNではこの時代に採用されていたという事実に唸らされる。ちなみに大型機以外のグリーニーな
714とか
712ではスリーブ入りではなかった。
つぎに、細かい所だけどベールスプリングがベールアーム側と反対側(矢印のところに取り外したのが写ってる)の2箇所に入ってるのを見て「インスプール時代のカーディナルみたいやんけ!」と驚く。巻きの多いバネ2つ採用なら耐久性が良く、かつ片方壊れても片方で釣りが続けられるというカーディナル3とかと同様の工夫。なんかPENNらしくないというかアメリールらしくないってぐらいに丁寧に設計されている。「耐久性が必要?だったらバネをぶっとくしておいたぜ、ハッハッハー、ガシャーン(壊れそうな勢いでベールが反転する音)!」っていう印象をアメリールに持ってるのは偏見だろうか?ワシってばレイシスト(差別主義者)?
ベールアームとベール反転機構は反対側に持ってきてあって、これは714zとかとも共通のPENNお得意の方式で、重量分散して回転バランスをとってある。あるけど、それでもちょびっとバランス取りの錘が填めてあるのが見て取れる。と同時に傘の骨かってぐらいにローターの底の梁が放射状に沢山設けられていて、そこは丈夫さには定評のあるPENN社製、頑丈に作ってまっせという感じがしていかにも頼もしいところ。
でもってお次が今回の目玉。ローターをパカッとハズしてみたら、なんか見慣れない黒いタイヤみたいな輪っかが鎮座している。タイヤと書いたのはこれ素材がゴムみたいな弾力のある樹脂でできてるからで、最初意味が分からなかった。でどうやって分解してきゃ良いンだろうといじくってると、単純に引っぱがしたら良いだけのようで、3箇所で下の”蹴飛ばし”兼”ボールベアリング押さえ”の真鍮部品から飛び出てるキノコ型の突起に刺さってるのを剥がす。
ここまでバラすと「アッこれアレかも?」と思い当たる。ベール反転の”蹴飛ばし”自体はベアリング押さえの真鍮リングから立ち上がっている坂状の板部分で間違いないんだとは思う。ただ、ベール開放レバーがその坂を登る前に、どうもやんわりとこのゴム状樹脂の上に当たっていて、ベールを起こした状態で回転にブレーキをかけているんではないだろうか。要するに”ローターブレーキ”なんじゃないだろうか?と思って、軽く組み直して試してみると正解!ベール起こした状態ではちょっと回転重くなってる。704zの展開図で確認しても、部品番号21B-704で「Rotor Brake」となっているのが確認できる。ローターブレーキ自体は量産型スピニングの元祖ミッチェル「300」の昔から存在していて、投げるときにローターが回ってしまい意図せずガシャンとベールが返ってしまうのを防ぐ機能として、いろんな仕組みでいろんなメーカーが作っていて、珍しくはない機構である。でも、スピンフィッシャーに搭載されているとは意外だった。なんかZシリーズの大型機には付いてるというのを目にしたような記憶もそういえばあるけど、アウトスプールの時代になると、VやⅥは知らんけど、外蹴りにはつけようがないし、内蹴りの中小型機にもローターブレーキは付いてなくて、PENNとローターブレーキというのは自分の中で結びついていなかった。なにしろストライパー野郎どもの巣窟である「ストライパーソンズ」とかのネット上の情報交換サイトとかをみても、「手に入れた710がすぐに勝手にベールが返ってしまって上手く投げられません」という相談に「ベールレス機に改造すればベール周りのトラブルとはおさらばさ!ハッハッハー」とかいう回答がごく当たり前のように上がっている状態で、東海岸系の釣り人はとにかくベールアームを引っぺがしたがる印象があり、704系のフルベールをベールレスのマニュアルピックアップ機に改造するパーツとかは、あっちのネットオークションサイトでも珍しくないのを知っているので、まさか704にローターブレーキが付いてるとは不意を突かれた。なんでローターブレーキ付いてる機種をマニュアルピックアップ化するかね?まあパーツ少なくなって面倒がなくて良いってのがストライパー野郎どもの気質なのだろう。ということにして深く考えないでおこう。何しろヤツらはベールレスにしたがる。スピンフィッシャーだとアウトスプールの4桁とかの大型機をベールレスに改造するキットも目にするし、VやⅥにいたっては公式でマニュアルピックアップ機が準備されているぐらいに根強い需要がある。ある種の様式美かなんかだろうか?そういえばPENNのスピニングの旗艦機であるトルクにも公式のマニュアルピックアップ化パーツが用意されている。
それはともかくローターブレーキって、変なところでベールを返さず真っ直ぐ投げられてミスしなければ無くても良いと言えば良い。でも人間ミスするし真っ直ぐ以外に投げにゃならんこともあるので、付いていればありがたい機構である。ワシ、バチ抜けシーバスで愛用してた4400ssは、柵にもたれるようにして上半身捻りつつ斜め上流に投げる場面が多く、どうしても捏ねて投げてしまい、4400ssはローターブレーキなど付いてないのでガッシャーンと意図しないベール返りを起こしがちであり、チョイ前に書いたけど内蹴りの部品を取っ払って、ハンドル回転ではベールが返らないようにしてしまって、ベールは左手で返すマニュアルベールリターン機として運用するという外法で対処しておりました。良い子は真似しないように。って感じなんだけど、21世紀になってやっと国産のスピニングにもローターブレーキに相当する機構が付くようになって、50年から昔のリールにやっと追いついてやがるって話なんだけど、これがまた再度退化しやがった事例を目にして、ちょっと腹に据えかねたので書いてしまう。昨年お客さんが使ってたリールが最近の安いシマノで、安シマノには「ナビ」で良い印象があったので、どんなもんかとちょっと使わせてもらったら怒りが湧く代物だった。ローターブレーキ付いてねえんでやがる。まあ安い機種なのでそれはそれで仕方ないのかもだけど、ローターブレーキ無しで意図しないベール反転をどう防いでいるかというと、元の木阿弥日本製スピニング暗黒時代よろしく、ベール返りを重くして返りにくくしてしまっていた。とてもじゃないけどハンドル巻いてベール返せんがな。初心者がこんなリール買って正しく利き手人差し指でライン放出調整しつつ、逆の手でハンドル巻いてベールを返すってお作法が身につくわけがない。大手が初心者にちゃんとした道具でちゃんとした方法教えなくてどうするよ?経費の関係で削るんならもっと削るべきところあるだろうって話で、少なくともベールがガシャーンと返ってしまってもハンドル回して軽く返るようにはしておくべきで、それなら正しい投げ方でないと投げられないので、使いにくくても練習にはなる。もっと言うなら瞬間的逆転防止機構を削ったら、防水もしなくて良くなって安くできるしリールとしての実用性は上がるし、なぜそうしないのか?初心者がアソビが無いかあるかとか気にするかよ、値段とブランドだけ見て買ってるだろって思うけどどうなのそのへん。少なくとも高級機種ではできるちゃんとしたお作法が安いヤツではできないってのは、御社の姿勢が問われる話だって誰もいわんのか?その時ワシが使ってたリールが、これがまた韓国日吉釣具の「ゴールドスピン」っていうベールの返りも軽く、簡易ローターブレーキもちゃんと付いてる実用性抜群の良くできたリールで、お客さんに比較のために触らせたら「全然違うじゃん」って道具詳しくない人でも分かったよ。まあ、ワシ、左手でライン放出調整してそのままベール返すのもやるし、マニュアルベールリターン機にしたりの外法で対応してたりもするので、正しい方法がどうこう言える義理じゃないかもだけど、安い機種に手を抜いて、安い機種を買う層である初心者が正しい方法を学ぶのを邪魔するのは大手がやっちゃダメなことだと思い、正直頭にきたって話である。皆さんもし釣具屋で安いシマノスピニングを触る機会があったらハンドル回してベールの返りを確かめてみてください。”うへぇ”ってなること請け合い。

まあ脱線から戻って、なんにしろこの704というリール、ローターブレーキは付いてるし、ベールスプリングは2個ついてるしで、大きさこそ違えどまるで名機「カージナル3」とかのような仕様で、PENNにはあるまじき凝った仕様のイカしたスピニングなんである。無駄なモノは付いてない、必要なモノは揃ってる。丈夫さは折り紙付き。そりゃ米本国で最近になって色違い的後継機である704zの復刻版が出るわけである。今使っても何の問題もなく使えるだろう。復刻版が出たときにアマゾンの米国でのレビューとか読んだけど、「今までも使い続けてきたけど、これでこれからもずっと使い続けられる」とか書かれていて、あっちのお好きな野郎どもに愛されまくってきたのがうかがい知れる感じだった。
まあわが家にある洋物の釣り本でも、東海岸なシーンには704やらミッチェルの大型インスプールやらが見切れている。ついでにフロリダのコビア(スギ)釣りのシーンでも左ミッチェル右706zという感じに見切れている。チョイ古い写真ではあるけど、今でもあっちの塩水系の釣り人はけっこうインスプールスピニングは好きな印象で、海だからってエラそうな高級スピニングしか使ってない我が国の、皆と一緒じゃないと不安な腰抜けどもと違って、好きなモノは好きなフリーダム具合、それがUSA!オーイェス!!
ということで当初は使う気はなかったんだけど、コイツでガツンと青物でもやっつけて、今時の高級スピニングがなんぼのもんじゃ!50年前に必要充分な実用性のあるスピニングぐらいもうできてたんじゃ!というのを証明したくもなってくる。そんなもんワシが証明せんでも、いやっちゅうぐらいストライパーソンズが証明してるだろうけど、「あっちは匹数制限とか規則もしっかりしてて、魚も多くて釣りやすいだろうけど、日本じゃ魚はスレてて遊んでる余裕はない」とかクソみたいなこと言い出して、そんなもんどこでも魚がスレてるのなんぞ世界共通じゃ、アマゾンの奥地に行っても原住民のガイドのカヌーに日本の釣具屋のステッカー貼ってあるぐらいで、魚スレてないところなんてそうそうあるわけねぇだろバーカ、ストライパーソンズも東海岸大都市圏のスレッスレのストライパー向こうに回して、インスプールの愛機で気合い入った塩辛い釣りしてるのぐらい想像つかんのかね?つかねぇから遊べねえし楽しめねぇんだろうな、って哀れんじゃうよワシ。
で、使うとなるとちょっとアップデートできる部分はしておくかという気はする。PENNは第4世代までは古いシリーズの部品で使えるモノは使いつつ設計していて、逆にマイナーチェンジ後や新しい機種の改良された部品を古い機種に取り付けるのも可能だったりする。50年前のリールが完成度高いので設計イジってない部分もあって90年代の4桁とか21世紀の第4世代とかと部品共有できたりするという驚きの事実。750ss系用のとかが使えます。ドラグ周り、そのままでもイケそうだけど、信頼のカーボンシート製のドラグパッド「HT-100」に2枚か様子見て3枚交換しておくとモアベターかなと。さらにはドラグノブはワッシャーを押さえる面が樹脂製から熱に強い真鍮製になって、さらに防水パッキンが付いた第4世代のものに交換すると憂い無しだろう。陸っぱり青物ならラインローラーは樹脂製スリーブ入りで充分だろうけど、もしこの記事を読んで船で沖に出て704でマグロとかをとなったらラインローラーは部品番号
35-704、スリーブ35A-704で5500ssにも引き継がれて使われている部品であり、つまり社外品の5500ss用のボールベアリング入りラインローラーも使用可能(写真下が装着例)で換装しておけばなお安心。糸巻き量的には704zが235y/20lbでだいたい6500ssの220y/20lbと同じぐらいで、PEの4号250mぐらい巻ける。100キロのクロマグロは無理でも20キロぐらいまでのキハダとかならイケるでしょ。円安のおり割高になるけど海外のネットオークションには様々な時代の色違いやらなにやら弾数豊富に出品されている人気機種なので入手は比較的容易。なーに円安だろうと今時の高級リール様ほど金食い虫じゃないって。
ワシ的にはまずは6500ssで魚釣ってないってのを脱却させたいので、そっちを優先だけど、いつになるか分からんけどそれが終わったら、704や706zで漁港の堤防から青物やっつけるとかいうのは長期的な課題として頭に入れておこう。堤防から青物自体は簡単じゃないけど、その時の道具的にインスプールの時代のPENNが充分以上に働くだろうことは確信している。
PENN「スピンフィッシャー704」なかなかに良い買い物だった。
<事務連絡>”勝手にチャリティーオークション”は無事終了。報告は元ネタの方でさせてもらってます。お年玉の5500ssに応募者いまだなしです。タダでっせ!誰かもらって使ってやってください!!
スピンフィッシャーはこのあたりから始まる
最初のスピンフィッシャーである「 スピンフィッシャー700」はミスティックさんところでみると、
前回の704等と同じく1966年発売となっているけど、これから書くようなモロモロ勘案すると、
ORCA(オールドリールコレクターズアソシエーション)で識者が書き込んでいるように
1963年カタログ掲載(≓発売)と見て良さそうだ。スピンフィッシャーに詳しいマニア氏の英語サイトがあったんだけど、ブックマークしてあったけど既に閉鎖されているようで残念(いまどき個人管理のウェブサイトなんて絶滅危惧種だな)。ORCAでも写真が上げられているけど、最初のモデルはハンドルがわが家のと形状が違いクルッと反転できないタイプ。わが家のは例の”
謎のデカアメリール&マイナー大森大放出祭り!”で入手したものだけど、ハンドルは704と同じ仕様である。同時期に製造された個体だろうなと想像できる。それでも60年代中盤からから70年代始めのリールである。初期モデルでなくても半世紀は前の個体で充分に歴史を感じさせてくれるなかなかの品である。PENN好きとしては1台ぐらい持ってても良いなと思って気合い入れて入札して意外と値段釣り上がらず6600円(送料別)で落札。イイ買い物だったんじゃなかろうか。それにしてもORCAで話題に上がってるマイクC氏の「PENNの本」が読んでみたい。っていうかあっちのコレクターの自費出版本とか手に入れるにはどうすりゃ良いんじゃ?まあ手に入れても自動翻訳かけられるデータ形式じゃないと読めンけどな。船上のガイドさんの英語とかわりと分かる”洋上英会話”がそれなりにできる方なので、釣りの話なら読めるだろうと「トラウト・バム」が面白かったジョン・ギーラック氏のKinndle版「フールズパラダイス」の英語のを買ったけど読めんかった。東氏ギーラック本もっと翻訳してくださいプリーズ。
まあ、枕はこのくらいにしていつものように分解整備。いつものようにスプール周りから。
最初っからスプールを乗っける台座の上には真鍮で太らせたドラグ部を受ける部品が乗っていて、かつスプールの方にも真鍮スリーブが入っててアルミ直受けではないっていうところが、栴檀は双葉より芳しな感じである。
でドラグなんだけど、ドラグノブにはバネが入っていてそれなりに調整幅も出ている。700では3階建てではなくて1階建ての単純なドラグ構成になっているけど、そこそこの効き具合と滑らかさで存外悪くない。ドラグパッドは704にも使われていた、樹脂に繊維を混ぜて固めたような謎素材なんだけど、意外に重要なのはスプール裏面と座面に入ってるワッシャーだと思う。今時のリールなら3階建てのドラグの仕事を邪魔しないように直径小さめで滑りの良いテフロンのワッシャー入れてるかアホみたいにベアリング入れてるかだろうけど、当然ながらドラグ全体の”効き”としてはこのスプールの下のパッド等の摩擦力って含まれてきて、昔の日本製リールにここに摩擦力の大きなファイバーワッシャーが入ってるのは、ギッチリ締まらないとクレームが来るような“投げ釣り”偏重の我が国釣り具市場の要望にあわせて全体として締まりを良くしていたんじゃないかと思っている。でもって、この700のスプール座面には上の写真でも分かるように結構大きめの直径のが入っててスプール裏側にもそれを受ける面を設けてある。ちなみに材質は皮。スプール座面のワッシャーの直径を大きくしてドラグとして機能させるのは後の
9500ssにも繫がるようなそうでもないような。ともかく単純な設計ながら割と良い塩梅のドラグになってるのはさすがPENN、”さすペン”という感じ。
本体蓋パカッと開けると、まあここはもう700番台インスプールではお馴染みのステン芯真鍮のハンドル軸ギアにステンのローター軸ギア、単純クランク方式にハンドル軸ギアの裏にラチェットがあって、そこに掛ける逆転防止機構。以前の持ち主は良く分かってらっしゃった感じでグリスグッチャリ。とここまではいいんだけど、ちょっと危なかったのがグリーニーな塗装。ちょっといつもと塗料が違う感じなので念のためと、パーツクリーナーかけるまえにスプール裏面を試しにとティッシュにパーツクリーナー液付けて拭いてみたら、写真の様に塗料溶けてきやがる。
ダイナミックで失敗しておいて良かった。ダイワの作ったパチモンとではさすがにワシの中での重要性は月とすっぽんである。ということで今回グリーニーな本体やらスプールやらはパーツクリーナーではなくCRC666ぶっかけてティッシュで拭き拭きして古いグリスとかをぬぐい落として作業を進めた。
でもって、700の写真とか見る度にローターが下の方だけグリーニーカラーじゃなくて金属剥き出しなのはなんでじゃろ?と疑問に思っていた。海外オークションサイトとかで見てると、同じ色で下まで塗られている個体とかもあるので、初期の頃はアルミ鋳造一体成形では強度が出せないので、下部だけステンとかの丈夫なのにして継いでるとかか?と想像していた。704のローターにこれでもかというぐらい梁が入れられて強化されているのを見てその思いは強まってたんだけど、バラしてみたら大ハズれ。なんのことはないローターが円筒形で、色の違う下のカップ部はボールベアリングとローター軸のギアを押さえているリングと一体のもので、ついでにこのカップを本体に止めているネジの一つが大きく凸ってて、ベール反転レバーの蹴飛ばしを兼ねている。初めて見る面白い設計。ちなみにベール反転機構はベールアームと反対側に入ってて重量分散されてるのは後のスピンフィッシャーに引き継がれていく方式。多分だけど後の時代の700には704みたいにカップまで一体成形のもあったんだと思う。
ベール周りに移っていくと、ラインローラーは灰色の素材がちょっと分からんモノなんだけど回転式で軸には油溝が切ってある。色的には酸化アルミ系のセラミックに見えるけどこの時代そんな素材あったのか疑問。
ちょっと重めの質感からいってタングステンかなと思うんだけど、横から見るとなんかスリーブを填め込んだような段差が見て取れて、そのへんも謎なんだけどまあわからんもんはわからんわい。
ちょっと小ネタで面白かったのが、このリール、ボールベアリング一個使ってて、片面シールのステンレス製なんだけど「Maid in USA」でこの手の細かいボールベアリングって北欧やアジアあたりで作ってたんだと思ってたけど、米国製のもあったのね。って意外だった。でも今ググったらミニチュアベアリングの世界シェアは一位ミネベア(日本)、二位SKF(スウェーデン)、三位RBC(米国)と米国製ワシが知らんだけだった模様、そら工業国だしあたりまえか。そのわりにリールに入ってるのみかけんけど無印のは米国製だったりするんだろうか?米国製は誇らしく「Maid in USA」って入れるよね?
ベールアームのブチ当たるところのストッパーが、キノコ型のゴムをバネで補強したような代物なんだけど、残念ながら経年劣化か割れ始めている。ぶっといナイロンショックリーダーと適当なスリーブとかで新しくこさえても良いんだけど、このリールは使用の予定はなく、なるべく元の状態を維持したい。仕方ないのでセメダインスーパーXで固めておくんだけど、右の写真なにやってるのかというと接着面を圧着するのに輪ゴムを使ったんだけど、輪ゴムそのまま使うと当然はみ出した接着剤で輪ゴムもくっついてしまう。なのでスーパーXの取説読んで接着できない素材となっているポリエチレンの袋の切れっ端をはさんで固定して接着。という接着剤の使い方の細かい技です。接着剤を使う時、そいつが何と何をくっつけるのかを知ってるべきなのは当然として、何と何がくっつけられないのかを知ってると意外に応用が効きます。
てな感じで、独特だけど単純な設計でサクサク分解終了でCRCかけて拭き拭き、金属部品はパーツクリーナーでピカピカに、仕上げはいつものようにグリスグッチャリであと50年は良い状態で保存可能かなとおもっちょります。
使って使えないリールではなく、実釣能力は充分あると思うけど、使わず保管という選択になったのは、一つには歴史的な資料価値のある1台だと思うっていうのと、もう一つにはぶっちゃけ704と使い分けどころがないのと違うか?っていうところ。
700の糸巻き量は250y/20lbで番手的に704より小さいんだと思ってたけど704zが前回も書いたけど235y/20lb(ついでに6500ssが220y/20lb)とやや700のほうが大きいぐらいで、700番台については下二桁が10以上のが700より小型、一桁が大型と思ってたけどどうも違うようである。一番下の写真見れば分かるように700、740,6500ssはだいたいサイズ感一緒である。
てなことや、設計が704に比べると詰め切ってない感じ、発売年が他の700番台より先ということを考えると、700は先行試作版的な意味もある、エヴァンゲリオンでいうところの零号機で、704やら714の改良が加えられたグリーニーな後発機がある意味完成形の初号機、Zの時代が我々がスピンフッシャーと聞いて想像する黒金になった本物のスピンフィッシャーで2号機、3桁が色目的には黒だけどちょい縁起悪いなな3号機、4桁が米国で(人気)爆発した4号機ってところか?例えると余計わけ分からんけど、とにかく700はPENNらしい海を想定した大型機の系譜の始祖にして、基本的な構造は整ったものの、ドラグやラインローラー、ローター形状等に改良の余地のあるプロトタイプ的な機種だったんだろうなと思いましたとさ。最初の機種がこの大きさってところが”さすぺン”。
スピンフィッシャーは最初からスピンフィッシャーそのものだったけど、歴史を見ていくと、何度も書くけど少しずつ改良を加えられて進化していったんだなと、改めてその長い歴史に敬意を抱くところである。
最後の大物!シェイクスピア「2090EJシーワンダー」
あれだ、シェイクスピアが大森とかにスピニング作らせる前の”20××シリーズ”は日本じゃ全然人気ないけど、今まで触った
「2052」系も
「2062」系も素晴らしいデキで、本国ではフルーガー版とかテッドウィリアムズ版とかも出るぐらいの人気機種で、なぜ、日本じゃ鱒向きサイズの2052系はともかく、シーバス好適の2062系が全くといっていいぐらい人気がないのか?なにせ以前ネタにしたように3つぐらい入札しておけば1つぐらい落とせるだろうと考えたら、3つわが家に来てしまったぐらいである。でも、整備して干からびてた皮のドラグパッドだけフェルトに換装とか調整して整備してやれば絶好調で、
80超のスズキ様も連れてきてくれたし、3台確保して(既にあった1台を含めて4台所有)まったく問題無かった、むしろ幸運だったと思っている。
で、そんな日本じゃマイナーな
アズキメタリック色の中小型機ではなく、さらに輪をかけてマイナーな600g超の大型機(PENNだと
704とかに近い大きさ)が、れいの
”謎のデカアメリール&マイナー大森大放出祭り!”で入手したデカアメリールの最後のお楽しみの1台、シェイクスピア「2090EJ」である。なんで、2台あるのかって?あれだ、日本の中古釣り具市場じゃ全く需要無くて、お祭りの時に落とした箱入り未使用品でさえ3千円しなかったんだけど、これがその後ヤフ○クで同時期に2台別の出品者から出てきて、片方は8千円とかの「そりゃ買う人おらんわい」っていう開始価格だったけど、もう1台は3千円というマウスの摩擦抵抗が軽くなる程度の値段だったので、どうせワシしか入札せんだろうと3020円で入れておいたら開始価格でアッサリ落札。まあ箱入り新品を分解するのはネジとか分解跡が残りそうで気が引けるので、ラインも巻いてあって使用済みの個体を分解整備することとした。正直2台もいらんなとちょっとだけ反省。箱入りの方は箱書きや取説は写真撮ってデータ化したので売りに出したいところだけど、3千円でも買い手が付くかどうかなので売っても仕方ないので、欲しい人は物々交換とか可能なのでご連絡を。
なんで最後のお楽しみに残してあったのか?っていうと、これシェイクスピア製で”E”が付く機種ってことは60年代の発売(もっと書くなら
E=6、j=2で62年製)のはずなんだけど、ハンドル回してみると、思ったより軽く回ってくれる。巻きが重くなりがちなウォームギア機のハズなのになんで軽いんだろう?って考えると、たぶん一つにはギア比が低いからで、箱書きによると3.2:1と低速。同時代のPENNの700や704が3.8:1なのでそれと比べてもかなりトロ臭い。かわりに軽く巻けるというかパワーがある。もいっちょの理由がこの時代のウォームギア機には珍しくスプール上下(オシュレーション)が減速式で、1/2弱ぐらいの減速割合になってるのも巻きの軽さには貢献してるんだろう。どんなオシュレーション機構が入ってるのかお楽しみってところである。あとパッと見て独特なのが本体と脚が別々でボルトで固定されているところで、ちょっと個性的な癖のある機種であることは見て取れるのでバラすの楽しみである。
ということで、早速分解していこう。いつものようにまずはスプール周りから。はい、台座から伸びるドラグを受ける部分の軸は亜鉛あたりの金属で太くしてあります。スプール座面のワッシャーは革、“6D(6枚円盤)”3階建てのドラグのドラグパッドも革製、比較的良い状態で残ってるので、実際に使用するとかでなければこのまま温存で良いだろうと思う。スプール裏のドラグの音出しは逆回転防止のタイプ。と今時のスピニングを知っていれば、何のことはないんだけど、このリールこの個体は”EJ”で62年製造のようだけど、「2090シーワンダー」自体は
ネットで調べたところ59年からあるシリーズの模様で、そのぐらい前に既に今の中大型スピニングのドラグの基本型はできていたということ。さらに遡るなら50年代の初めに登場したらしい
ミッチェル「302」がやはり3階建てなので、そのあたりまで溯れるし、
いまだもってそこからたいして進化していないのが見て取れる。
続いて本体蓋をあけていくと、入れ直したらしい白いグリスが劣化もしておらず滑らかな状態で、これも軽い回転の一因だろうなという感じ。まあ洗浄して青グリスぶち込んでしまうけどな。
パカッと開けてハンドル軸のギアの上に小径のギアが付いてて、それが蓋側の棚の上に乗ってるギアを回転させるような構造で、一瞬「ナンジャコリャ」と戸惑うんだけど、本体蓋銘板の出っ張りのところに格納されているギアを外すと、あぁそういうことかと理解できる。棚に見えたのは実はオシュレーションカムで、写真右下のオレンジで囲った部品なんだけど、これがハンドル軸のギアの回転を使って回される”棚の上のギア”の凸部に溝を填めて上下させることにより後端で主軸とネジ留めされているので、スプールを上下させるという仕組み。この時代、まだハンドル軸のギアの下?には写真の様に逆転防止が入ってたので、この位置に歯車を入れて、その上に主軸に固定したオシュレーションカム設けてスプールをを上下させる方式は採られておらず、大型スピニングの減速には大森も「スーパーセブン」や「スーパー2000」で独特の方法を採用して試行錯誤していた。一方PENNは”ウォームギア機には単純クランク方式”という割り切りなのも個性があって面白い。PENNはスピニングにおいては堅実路線。確かにその割り切りには単純な設計で整備性良くトラブルが少ないだろうという利点もあり一つの方向性。あとウォームギア機はギアが重ならず横並びになるので本体が薄っぺらくなるのがカッコ良くて好きなんだけど、シーワンダーでは上の方の4方向からの外観写真を見てもらえば分かるように、蓋側からの見た目は棚のようなオシュレーションカムの分上下幅が出てるし、オシュレーションのギアの入ってる銘板の部分が凸ってしまって、ハンドル側からみたスッキリとした外観より、太って野暮ったく見える。重量もその分増加しているだろう。とはいえ重い仕掛けや魚を相手にする大型リールにおいては巻きが軽いのは売り文句にはなるだろう。

ハンドル軸のギアは鉄系芯の真鍮というより銅という感じの色の素材、ローター軸のギアはステンレスなんだけど、ローター軸には1個ボールベアリングが填まってるんだけど、これが”Maid in USA”で60年代のアメリールには米国製ボールベアリングが入ってるんだなと細かい所でおもしろがったんだけど、もいっちょ細かい所でこのベアリング上の写真の様に片側シールタイプでギア側が開いてるんだけど、下の写真の様にテフロンっぽいワッシャーで蓋をして、ゴムリングで留めている。回転部分のシーリングなんて完全には難しいだろうから、このぐらいの接触型のシーリングで充分だと思う。っていうかそれで大丈夫な濡れてもこまらんような素材にしておけ、あるいは整備しやすくしておけ、ってしつこくしつこく書いておこう。細かいところも丁寧に作ってるのは、オシュレーションカムの溝に填まるギアからの突起に金属のブッシュが被せてあるのとか、ハンドル根元の給油穴を蓋するネジにゴムの輪っかのパッキンが付いてるのとかにも表れている。
次にベール周りを見ていくと、まずは開いたときの角度が写真左のようにどこで開いてもベールが邪魔にならず投げられるぐらいにフルオープンなのが特徴。ラインローラーは直受けで軸に油溝。あとラインローラー導入部はステンのベールワイヤーにロウ付けで形成してあって、ベールの開放角といい、「オービス100」とか作ってたザンギ(コプテス)とかのイタリアリールを思い出させる。ギア方式も、先行していた海用大型のミッチェル302がベベルギアなのを、巻き心地の良いウォームギア機をということで、イタリアやドイツのスピニングあたりを参考にしたのかなと想像する。ABUもまだ「444」とかでベベルギアの時代だったはず。まあミッチェルの影響はモロにあったんだろうけど「302」の対抗馬として出すには、高級感のあるウォ-ムギア機にして、あっちにはプラナマチックな減速機構があるからってことで減速オシュレーション機構も頑張って搭載したのかなと。
塗装が同じ色なので全く気がついてなかったけど、こいつPENN「
スピンフィッシャー700」と同じで、ローターは円筒部分だけで下のお椀部分とは分離されるタイプ。そしてベール反転機構をベールアームと反対側に持ってきて重量分散して回転バランスを取ってる所や、ベール反転レバーのローターの外に出てる部分が縦型なのも、まんまPENN「700」と同じ方式で、PENN710系(700系からアウトスプールと
720と722を除いた機種)の元ネタはこれだったのか?とちょっと驚いて、正直ショックでもある。
同じシェイクスピアの米国製インスプールでもアズキ色の中小型機ではローター形状もベール反転機構も違っていたので”アメリカンな感じの単純明快なウォームギア機”という共通点は感じていたけど、PENNのインスプールの近い元ネタがシェイクスピアである可能性には気がついていなかった。縦型ベール反転レバーはPENN710系に共通で採用されていて、むしろアズキ色シェイクスピアより直系の子孫のようですらある。ちなみに「2090シーワンダー」の発売が1959年、PENN「スピンフィッシャー700」の発売が多分1963年とのこと。いやはや買っておいて正解。PENNのというかスピニングの歴史においても重要な1台な気がする。
さらに、ローター外して残ったカップには、なんか大森やら日吉やら古き良き日本のスピニングで目にするような”簡易ローターブレーキ”が入っている、写真左の緑の矢印の位置の、カップを本体に固定するボルトが頭がデコらせてあってベール反転機構の”蹴飛ばし”になってるんだけど、その手前にオレンジの矢印のあたりにステンの薄い板バネでやんわりとブレーキが効くようにしている。写真右が部品単体。この方式の元祖ってどこなんだろう?ってところまでは分からないけど、少なくとも大森はシェイクスピアに学んだっていう可能性が高いように思う。ついでに回転バランスをベール反転機構とベールアームを反対側に持ってきて取る方式もシェイクスピアの影響かも。ワシの好きなスピニング作ってる2大メーカーであるPENNと大森製作所がどちらもシェイクスピアの流れを汲んでいるってのはなかなかに味わい深い。どうりで2062系とか手にしっくりくるわけだ。
で、脚がナット留めされてるのは、ハメ殺しかなともおもったけどちゃんと外せた。脚が外せるのはフライリールでは珍しくないんだけど、海で使うとそこの隙間に潮噛みして、腐蝕して固着したりするので、シリコンコーキング剤とかで防水したりするので、コイツにもせっかくなので防水処理を施しておいた。合わせる面に青グリスを薄く塗布してナット締めて留めてから、隙間に
ボンドスーパーXをヌリヌリして固める。なんで通常は鋳造一体成形するところを2回に分けてナットで固定なんていう面倒臭いことをしたのかな?まあ当時の鋳造技術では長く伸びた脚の先まで綺麗にアルミを流し込みきれない、とかの技術的な問題が、この大きさになってくるとあったとかか?マンガで美少女フィギュア作るのに、全身一発型取りでは樹脂が隅々まで行き渡らないので、髪とか手足とかは分けて作ってから接着した方がイイ、とか描かれてたのを読んだけど似たような話か?スピニングの脚をナット留めというと、ドイツのダム「クイック・スーパー」が思い浮かぶけど、ダムも戦前からスピニング造ってたような老舗中の老舗なので、参考にはしたんだろうなと思うところ。あと、しょうもない裏技として脚の向きを逆にしたらミッチェル500系みたいにリールフット指に挟まず投げられるようにできるなと思いついたけど、だからどうしたって話であんま意味ないな。
”Built like a fine watch(素晴らしい時計のように作られています)"と、この時代のシェイクスピアリールの箱書きには誇らしく記されているけど、時計ほど繊細には作られてないとは思うにせよ、確かに丁寧に作られていて古き良き米国の職人魂というかクラフトマンシップを感じる良い仕事だと感心した。
先行者達の良いところを取り入れつつ後のスピニングリールに引き継がれていった工夫の数々。スピニングリールの生き証人的な一台だと、キワモノ扱いで入手したけど認識を改めたところである。
ただ、こいつの実戦投入の場面があるかって想像すると、今一ピンとこない。このクラスのスピニングでは先に魚を釣らせたいリールがPENNだと「6500ss」「704」とか他に大森大型機とかも順番待ちなうえに、3.2:1という低速機の出しどころが想定しにくい。
おそらくそれは発売されていた当時でもそうだったんだろうと思う。軽い仕掛けやルアーを遠くに投げるのがスピニング本来の仕事だとすると、このクラスのリールの出番は砂浜での遠投とかだと思うけど、遠投すると低速機なので回収がトロ臭い。あと凝った設計の分自重が重い。じゃあ糸巻き量の多さと巻き上げの力強さを活かして船からの底釣りとかか?と思うけど、それなら両軸使っとけって話だと思う。ウォームギア機の仕事じゃないだろ。
実際、以前にも紹介したように
東海岸とかのサーフでのストライパー狙いとかの光景ではインスプールのPENN「704」やミッチェル「302」とかはよく見かけるけど、シーワンダーはあんまり見ない。ミッチェル「302」は触ったことないのでなんとも言えないけど、PENN「704」については、後発で先輩達の良いところ取りをしつつ、余計なモノは取っ払って、オシュレーションをクランク方式に割り切ったように、単純化して最適化して堅実な物作りをしているという気がする。PENNは両軸の世界では偉大な開拓者として今日見られるトローリングリールとかを創造してきたんだろうけど、スピニングは先行者の技術を真似つつ、いらんものを削って丈夫な”海に強い”実用機に仕上げて、それが紛れもない個性になっているんだと感じている。
単に同じ”アメリール”つながり程度に思ってたシェイクスピアとPENNが、1950~60年代のインスプールスピニングを見ていくと、シェイクスピアがあって、PENNがある、ついでに大森もあるっていうのが理解できて、今回の大物は物理的にも大きかったけど、スピニングの歴史においても大きな意味があったんではないかと思うにいたり、買ったことに一片の後悔もなくなったのである。実に面白かった。堪能しました。
まだワシが知らんだけで、マイナーでも味わい深いスピニングはいくらでもあるのかもしれない。そう思うと”スピニング熱”は冷めそうにないのである。アタイ病気が憎いっ!
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久しぶりに自分で読み返して気がついたけど、6500SSから上の大きさのベール反転は”外蹴り”方式なので、通常使われる方式の投げるときのベール反転を防ぐ”ローターブレーキ”は実装不能ですね。
大きいサイズの意図しない反転防止には外蹴りの”蹴飛ばし”部分を切り取ってしまってベール反転を”マニュアル式”にしてしまって、左手で返すっていうのが簡単で現実的かと。
大型リールでは投げるルアーとかが重くなって右手の人差し指のサミングでは飛距離調整まではできないので左手でライン放出を調整してその左手でベールを返すのが現実的でもあるのでハンドル回してベール返す機構は無くてもいけるかと思います。